説明

無線通信装置

【課題】 外部機器に接続された接続線にアンテナからの高周波電流が流れて、アンテナのインピーダンスマッチングが崩れ、アンテナ利得が低下するといったことを防止する。
【解決手段】 アンテナ2が接続されたプリント基板3に、接続線10が接続され、接続線10は外部機器に接続される。接続線10にフェライトコア20が取り付けられる。フェライトコア20によって、接続線10が高周波的にショート状態とされ、外部機器のインピーダンスが高くなり、アンテナ2からの高周波電流がプリント基板9を通じて接続線10に流れなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メータ等の外部機器がプリント基板に電気的に接続され、このプリント基板をグランドプレーンとした接地アンテナを有する無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動検針システムにおけるガスメータ等の外部機器が接続された無線通信装置は、例えば429MHz帯の特定小電力無線を使用して、端末通信装置とデータ通信を行う。
【0003】
この無線通信装置を図5に示す。箱体1にアンテナ2が取り付けられ、プリント基板3が箱体1に内装される。プリント基板3上に、無線信号の送受信を行う高周波回路4、外部機器との通信を行うための外部有線インタフェース回路5、無線通信や外部機器との通信を制御する制御回路6およびアンテナ2と各回路とのインピーダンスマッチングを行うマッチング回路7が実装され、各回路が印刷配線によって接続される。さらに、プリント基板3に、電池8および端子台9が実装される。端子台9に、外部機器と電気的な接続を図るための接続線10が接続され、接続線10は箱体1から外部に引き出される。
【0004】
そして、アンテナ2はプリント基板3に給電部11を介して接続される。アンテナ2は、プリント基板3上に形成されている導電部をグランドプレーンとする1/4波長のホイップアンテナとされ、整合した接地型アンテナを構成している。無線周波数の高周波電流は、破線で示す矢印のように、アンテナ2を流れ、給電部11を経て、プリント基板3をグランドプレーンとする。このような接地型アンテナは、特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2002−374112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1/4波長のホイップアンテナにより接地型アンテナを構成する場合、グランドプレーンの適切な大きさは、使用する無線周波数の波長で決定される。例えば、無線周波数429MHzでは、波長は約70cmであり、1/4波長は、約17.5cmとなる。したがって、上記のようにアンテナを構成するには、プリント基板の導電部長さが1/4波長以上であることが必要となる。
【0006】
しかしながら、近来の制御回路設計技術により、制御回路等を搭載するプリント基板は小型化されている。プリント基板の導電部長さが1/4波長を下回ることになり、このグランドプレーンは使用無線周波数に対して過小である。そこで、アンテナと高周波回路との間にマッチング回路を追加することによって、アンテナとのインピーダンス整合を行っている。すなわち、等価的にグランドプレーンを大きく見せかけ補償するために、マッチング回路によって、グランドプレーンとインピーダンスマッチングするようにアンテナ電流を制御する。
【0007】
しかし、外部機器が接続される無線通信装置では、プリント基板に外部機器への接続線が接続されているので、接続線を通じた外部機器への高周波電流の流出が発生する。接続線のインピーダンスが変動し、アンテナとグランドプレーンとのインピーダンスマッチングが最適状態を外れ、グランドプレーンの効果が不安定となる。そのため依然として、この接続線の影響により、グランドプレーンの大きさが変わることになり、アンテナ利得が低下して、安定した無線通信の動作が困難である。
【0008】
また、接続線のない状態でアンテナのインピーダンスマッチングをとった場合、使用中における接続線を通じた外部機器への高周波電流流出により、アンテナのインピーダンスマッチングが崩れる。そのため、アンテナ利得が低下して、無線通信性能が劣化してしまう。
【0009】
本発明は、上記に鑑み、接続線からの高周波電流の流出を防ぐことにより、安定した無線通信を行える無線通信装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、箱体に、無線通信用のアンテナと、プリント基板に形成された無線通信回路とが設けられ、前記アンテナが前記プリント基板に接続されて、該プリント基板をグランドプレーンとした接地型アンテナが構成され、前記プリント基板に、外部機器を電気的に接続するための接続線が接続され、該接続線に高周波電流が流れないように接続線を高周波的にショートする高周波電流抑止手段が設けられたものである。
【0011】
高周波電流抑止手段は、高周波電流のエネルギーを吸収する抵抗素子、あるいは高周波電流のエネルギーを反射させることによって電流の通過を阻止するインダクタンス素子等を用いて、接続線を高周波的にショート状態とする。このとき、プリント基板側から見て、外部機器が見かけ上、高インピーダンスとなる。その結果、接続線にアンテナからの高周波電流が流れにくくなる。
【0012】
そして、無線通信回路は、マッチング回路を有し、接続線が高周波的にショートされた状態でアンテナのインピーダンスマッチングが最適となるように前記マッチング回路が調整される。
【0013】
高周波電流抑止手段は、接続線に対してフェライトコアを取り付けてなるものである。フェライトコアは、接続線に流れる電流により発生する磁界を吸収して、高周波電流のエネルギーを減衰するので、特に高周波数の電流に対して効果的である。なお、高周波電流抑止手段を設けても、低周波電流の流れは阻止されないので、外部機器との通信等は可能である。
【0014】
プリント基板に、接続線を接続するための端子部が設けられ、該端子部の近傍にフェライトコアが配される。箱体内に、フェライトコアを位置決めする保持部が設けられる。フェライトコアは、プリント基板に近い位置に配置するのが好ましく、接続線に流れ出す高周波電流を低減できる。そして、フェライトコアを位置決めしておくことにより、接続線に対してフェライトコアの位置ずれを防止でき、接続線のインピーダンスの変動をなくせる。
【0015】
また、接続線は、箱体内から外部にブッシュを通って配線され、フェライトコアが前記ブッシュに装着される。ブッシュは箱体内への水等の侵入を防ぐものであり、これを利用してフェライトコアを取り付けることができる。したがって、フェライトコアの位置決めもできる。
【0016】
フェライトコアが2分割された構造である場合、箱体は、開閉可能なケース本体およびカバーを有する箱体において、分割されたフェライトコア部品がそれぞれ前記ケース本体とカバーとに設けられ、前記ケース本体に対して前記カバーを閉じたときに、2つのフェライトコア部品が組み合わさって、接続線の貫通した前記フェライトコアが形成される。
【0017】
このような構造にすれば、箱体を組み立てることにより、自動的に接続線に対してフェライトコアを取り付けることができ、作業が容易となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、接続線を通じて外部機器が接続されても、接続線に高周波電流が流出するのを防止でき、外部機器の接続に関係なく安定したグランドプレーンを形成できる。したがって、アンテナのインピーダンスマッチングを最適な状態に維持でき、アンテナ利得の減少を防止でき、安定した無線通信動作を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本実施形態の無線通信装置を図1に示す。無線通信装置は、自動検針システムに使用されるものであって、図5に示した従来のものと基本的な構成は同じである。自動検針システムでは、センタ装置と端末網制御装置とが通信回線を通じてデータ通信を行い、端末網制御装置に無線親機がケーブルを介して接続され、無線親機と無線通信する無線子機が設けられる。無線親機や無線子機には、ガスメータ、水道メータ、電気メータといったメータやセンサ、スイッチといった接点機器等の外部機器が接続線10を介して接続される。
【0020】
ここで、本実施形態の無線通信装置が無線親機あるいは無線子機として使用される。メータ等の外部機器からのデータが、無線通信装置から端末網制御装置を経てセンタ装置に送信される。無線親機の場合には、端末網制御装置のような上位の通信機器が接続されることがあり、これも外部機器とされ、無線通信装置は、センタ装置からのデータを外部機器を通じて受信する。
【0021】
本無線通信装置では、接続線10にアンテナ2からの高周波電流が流れないように、接続線10にフェライトコア20が取り付けられている。フェライトコア20は、箱体1の外側に取り付けられ、箱体1から外部に引き出された接続線10が、筒状のフェライトコア20を貫通して配線される。
【0022】
このフェライトコア20は、接続線10を高周波的にショートして、回路側から見て接続線と外部機器とのインピーダンスを高周波的に高くする高周波電流抑止手段として機能する。すなわち、アンテナ2からの高周波電流がプリント基板3の導電部を通じて接続線10に流れたとき、フェライトコア20が接続線10から発生する磁界を吸収することにより、高周波電流が流れにくくなる。すなわち、接続線10が高インピーダンスとなる。これによって、高周波電流の伝播が抑えられ、接続線10を通じた外部機器への高周波電流の流出が防止されるので、アンテナのインピーダンスマッチングが崩れず、アンテナ利得の低下を防止できる。したがって、外部機器が電気的に接続されても、無線通信性能には影響されない安定したグランドプレーンを実現でき、無線通信動作が安定する。
【0023】
ここで、フェライトコア20がプリント基板3に近いほど、高周波電流の流れる距離が短くなり、高周波電流の流出抑止効果が高まる。そこで、フェライトコア20を箱体1の内部に配置する。プリント基板3からフェライトコア20までの距離が短くなり、外部機器の接続に影響されずに安定したグランドプレーンを形成できる。
【0024】
接続線10は端子台9に接続されているので、図2に示すように、フェライトコア20を端子台9の近傍に配置するとよい。このとき、フェライトコア20を位置決めするための保持部21が設けられる。保持部21は、端子台9の近傍に設置され、フェライトコア20を挟み込んで保持する。フェライトコア20は、プリント基板3のより近くに配置されることになり、高周波電流抑止の効果がさらに高まる。しかも、保持部21によりフェライトコア20の遊動が規制されるので、フェライトコア20を貫通して配された接続線10の位置ずれがなくなり、インピーダンスの変動がなくなる。
【0025】
また、他の実施形態を図3に示す。箱体1は、下ケース22、本体ケース23、カバー24によって構成され、壁面等に固定される下ケース22に本体ケース23が取り付けられ、本体ケース23の下部は開口され、この開口を覆うカバー24が開閉可能に設けられる。そして、接続線10は、本体ケース23の下部に形成された貫通孔を通って外部に引き出される。この貫通孔には、接続線10の保護および箱体1内部への水、異物等の侵入を防ぐ目的でゴム製ブッシュ25が嵌め込まれ、接続線10がブッシュ25を貫通している。
【0026】
このブッシュ25にフェライトコア20が取り付けられる。ブッシュ25は本体ケース23から外部に突出しており、この突出部分がフェライトコア20を貫通して、フェライトコア20がブッシュ25に係合される。
【0027】
これにより、接続線10はフェライトコア20を貫通して配線され、フェライトコア20により高周波電流の流出が防止される。また、フェライトコア20はブッシュ25によって固定されるので、外れたり位置ずれすることがなくなり、フェライトコア20の効果を半永久的に維持できる。
【0028】
また、フェライトコア20は、筒状に限らず、分割フェライトコアを用いてもよい。図4に示すように、フェライトコア20は2分割され、半円筒状の2つのフェライトコア部品26、27を組み合わせてなる。一方のフェライトコア部品26は、本体ケース23の下部に取り付けられ、他方のフェライトコア部品27は、カバー24に取り付けられる。接続線10は、2つのフェライトコア部品26、27に挟まれて配線される。
【0029】
本体ケース23のフェライトコア部品26の上を通るように、接続線10が置かれる。本体ケース23にカバー24を被せると、2つのフェライトコア部品26、27が嵌合して、筒状のフェライトコア20が形成され、接続線10はフェライトコア20を貫通して、箱体1から引き出されることになる。
【0030】
このようなフェライトコア20の構造にすれば、箱体1を組み立てることによって自動的にフェライトコア20を接続線10に対して取り付けることができ、取付作業が容易になる。
【0031】
ところで、上記の無線通信装置は必ず接続線10を介して外部機器と接続される。そこで、接続線10にフェライトコア20を取り付けた状態において、アンテナ2のインピーダンスマッチングが最適状態となるように、マッチング回路7を調整しておく。マッチング回路7は、例えばコイル、コンデンサ、抵抗等の各素子によって構成され、所定の共振を生じさせる一般的な回路である。アンテナ2のインピーダンスとプリント基板3の導電部とのインピーダンスの整合がとれるように、各素子が選定される。
【0032】
このように、接続線10が高周波的にショートされた状態でアンテナ1のインピーダンスマッチングが最適となるようにマッチング回路7を調整することにより、個別の無線通信装置の設置状況や外部機器の接続状況に関係なく、高利得なアンテナを実現でき、安定した無線通信を確立することができる。
【0033】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。本無線通信装置は、自動検針システム以外にセキュリティシステム、監視システム等のデータ通信システムにおける無線通信可能な通信装置としても利用できる。
【0034】
また、高周波電流抑止手段として、フェライトコアを用いる代わりに、高周波的にインピーダンスを増大させる素子であればよく、コイルあるいは抵抗を接続線に接続して、接続線に流れる高周波電流を遮断するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の無線通信装置の内部構造を示す図
【図2】他の形態の無線通信装置の内部構造を示す図
【図3】他の形態の無線通信装置を示し、(a)は箱体の正面図、(b)は箱体の側面図、(c)は箱体の底面図、(d)はカバーを開けた箱体の内部正面図
【図4】分割フェライトコアを用いたときの箱体の分解斜視図
【図5】従来の無線通信装置の内部構造を示す図
【符号の説明】
【0036】
1 箱体
2 アンテナ
3 プリント基板
4 高周波回路
7 マッチング回路
10 接続線
20 フェライトコア
21 保持部
22 下ケース
23 本体ケース
24 カバー
25 ブッシュ
26 フェライトコア部品
27 フェライトコア部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱体に、無線通信用のアンテナと、プリント基板に形成された無線通信回路とが設けられ、前記アンテナが前記プリント基板に接続されて、該プリント基板をグランドプレーンとした接地型アンテナが構成され、前記プリント基板に、外部機器を電気的に接続するための接続線が接続され、該接続線に高周波電流が流れないように接続線を高周波的にショートする高周波電流抑止手段が設けられたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
高周波電流抑止手段は、接続線に対してフェライトコアを取り付けてなることを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
プリント基板に、接続線を接続するための端子部が設けられ、該端子部の近傍にフェライトコアが配されたことを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
箱体内に、フェライトコアを位置決めする保持部が設けられたことを特徴とする請求項3記載の無線通信装置。
【請求項5】
接続線は、箱体内から外部にブッシュを通って配線され、フェライトコアが前記ブッシュに装着されたことを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項6】
箱体は、開閉可能なケース本体およびカバーを有し、フェライトコアが2分割された構造とされ、分割されたフェライトコア部品がそれぞれ前記ケース本体とカバーとに設けられ、前記ケース本体に対して前記カバーを閉じたときに、2つのフェライトコア部品が組み合わさって、接続線の貫通した前記フェライトコアが形成されることを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項7】
無線通信回路は、マッチング回路を有し、接続線が高周波的にショートされた状態でアンテナのインピーダンスマッチングが最適となるように前記マッチング回路が調整されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−279677(P2006−279677A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97497(P2005−97497)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】