無線通信装置
【課題】どの無線通信媒体に対しても良好な通信特性を得ることができる無線通信装置を提供する。
【解決手段】非接触ICカードが通信可能領域に進入した際に当該非接触ICカードから固有の情報(ID情報)を取得し、通信不可能状態の発生を条件として当該非接触ICカードの固有情報に基づき当該非接触ICカードの種類を判別し、この判別結果に基づき当該非接触ICカードとの通信特性(共振回路の共振周波数やQ値)の最適化を行なう。
【解決手段】非接触ICカードが通信可能領域に進入した際に当該非接触ICカードから固有の情報(ID情報)を取得し、通信不可能状態の発生を条件として当該非接触ICカードの固有情報に基づき当該非接触ICカードの種類を判別し、この判別結果に基づき当該非接触ICカードとの通信特性(共振回路の共振周波数やQ値)の最適化を行なう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、電磁誘導結合により誘起された電力で駆動される非接触ICカード(無線通信媒体)と非接触(無線通信)でデータの送受信を行なう非接触ICカードリーダライタなどに適用して好適な無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の非接触ICカードリーダライタは、上位装置に接続されていて、この上位装置は非接触ICカードリーダライタに対しデータの送受信に関するコマンドを送出するとともに、非接触ICカードリーダライタから非接触ICカードとの通信結果などを受取るようになっている。
非接触ICカードリーダライタは、非接触ICカードと通信を行なうためにループアンテナから所定周波数のASK(振幅偏移)変調信号を送出し、非接触ICカードが非接触ICカードリーダライタの通信可能領域内に入ると、非接触ICカードリーダライタのループアンテナと非接触ICカードのループアンテナとの間に発生する電磁誘導結合により非接触ICカードに動作用の電力が供給される。非接触ICカードは、受信データに対する応答を負荷変調により行ない、非接触ICカードリーダライタは、この負荷変調データを包絡線検波により検出し、復調回路にて復調され、その復調データが上位装置へ転送される(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−187916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、印刷会社や電機メーカをはじめとする各社で非接触ICカードの製造や販売が行なわれているが、それぞれ通信特性が異なるため、全ての非接触ICカードに対して最適な通信特性を持つよう、あらかじめ非接触ICカードリーダライタの通信特性を調整するのが不可能である。このため、ある特定の非接触ICカードに対して通信特性が最適となるよう調整するには、ある程度他の非接触ICカードとの通信性能を犠牲にせざるを得ないという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、どの無線通信媒体に対しても良好な通信特性を得ることができる無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の無線通信装置は、無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なうためのアンテナを有し、このアンテナを介して無線通信媒体との間で無線通信を行なうことによりデータの送受信を行なう無線通信装置において、無線通信媒体が通信可能領域に進入すると、前記アンテナを介して当該無線通信媒体との間で無線通信を行なうことにより当該無線通信媒体から固有の情報を取得する固有情報取得手段と、この固有情報取得手段により固有情報を取得した後、当該無線通信媒体との通信状態を監視する通信状態監視手段と、この通信状態監視手段により当該無線通信媒体との通信が不可能になったことが検知された際、前記固有情報取得手段により取得された固有情報に基づき当該無線通信媒体の種類を判別し、この判別結果に基づき当該無線通信媒体との通信特性を最適値に調整する通信特性調整手段とを具備している。
【0006】
また、本発明の無線通信装置は、無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なうためのアンテナを有し、このアンテナを介して無線通信媒体との間で無線通信を行なうことによりデータの送受信を行なう無線通信装置において、無線通信媒体が通信可能領域に進入すると、前記アンテナを介して当該無線通信媒体との間で無線通信を行なうことにより当該無線通信媒体から固有の情報を取得する固有情報取得手段と、この固有情報取得手段により固有情報を取得した後、当該無線通信媒体との通信状態を監視する通信状態監視手段と、この通信状態監視手段により当該無線通信媒体との通信が不可能になったことが検知された際、前記固有情報取得手段により取得された固有情報に基づき当該無線通信媒体の種類を判別し、この判別結果に基づき前記アンテナの出力レベルを最適値に調整するアンテナ出力調整手段とを具備している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、無線通信媒体が通信可能領域に進入した際に当該無線通信媒体から固有の情報を取得し、通信不可能状態の発生を条件として当該無線通信媒体の固有情報に基づき当該無線通信媒体の種類を判別し、この判別結果に基づき当該無線通信媒体との通信特性の最適化を行なうことにより、どの無線通信媒体に対しても良好な通信特性を得ることができる無線通信装置を提供できる。
【0008】
また、本発明によれば、無線通信媒体が通信可能領域に進入した際に当該無線通信媒体から固有の情報を取得し、通信不可能状態の発生を条件として当該無線通信媒体の固有情報に基づき当該無線通信媒体の種類を判別し、この判別結果に基づきアンテナ出力レベルの最適化を行なうことにより、どの無線通信媒体に対しても良好な通信特性を得ることができる無線通信装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、第1の実施の形態について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る無線通信装置としての非接触ICカードリーダライタの構成を概略的に示すものである。この非接触ICカードリーダライタは、そのアンテナ部に無線通信媒体としての非接触ICカードが翳されることで、当該非接触ICカードとの間で電磁波を用いた無線通信を行なう場合の例を示している。
【0010】
図1において、非接触ICカードリーダライタ1は、コマンド送出や応答処理を行なう上位装置2に接続されていて、アンテナ部に非接触ICカード3が翳されることで、当該非接触ICカード3に対しデータの読出しや書込みなどのデータ送受信を行なうように構成されている。
【0011】
非接触ICカードリーダライタ1は、非接触ICカード3との間で電磁波を用いた無線通信を行なうためのアンテナ(たとえば、ループアンテナ)11、アンテナ11を含む共振回路12、共振回路12を介して非接触ICカード3との間で送受信を行う送受信回路13、全体的な制御を行なう制御手段としてのCPU(セントラル・プロセッシング・ユニット)14、および、外部から供給された電力を動作電源として送受信回路13およびCPU14へ供給する電源回路15を有して構成されている。
【0012】
共振回路12は、CPU14から供給される共振回路定数制御信号b0,b1,b2,b3によって回路定数(共振周波数、クオリティファクタ(Q値))が切換制御されることで、非接触ICカード3との通信特性が最適地に調整されるようになっており、それについては後で詳細を説明する。
【0013】
CPU14には、たとえば、ROMあるいはEEPROMなどのメモリ16が設けられている。メモリ16には、たとえば、図2に示すような形式のデータがあらかじめ格納されており、判別した非接触ICカード3の種類から共振回路12への共振回路定数制御信号b0,b1,b2,b3のビットパターンを決定するようになっている。
【0014】
すなわち、メモリ16には、図2に示すように、当該非接触ICカードリーダライタ1で処理する非接触ICカード3の種類(たとえば、カードA〜D)ごとに共振回路定数制御信号b0,b1,b2,b3のビットパターンを決定するデータがあらかじめ記憶されている。
【0015】
共振回路12は、たとえば、図3に示すように、アンテナ11、このアンテナ11に並列接続される複数(この例では2個)のコンデンサC1〜C2および抵抗R1〜R2、これら複数のコンデンサC1〜C2および抵抗R1〜R2に対しそれぞれ直列に接続されるスイッチ手段としての複数(この例では4個)のトランジスタT1〜T4を有していて、複数のトランジスタT1〜T4をCPU14からの共振回路定数制御信号b0〜b3により選択的にオン,オフ制御するように構成されている。
【0016】
複数のコンデンサC1〜C2は、当該共振回路12の共振周波数を所望の値に切換え設定するためのもので、それぞれ異なる所定の値(容量)、たとえば、共振周波数が等間隔に変化するような値に設定されていて、共振回路定数制御信号b0〜b1により複数のトランジスタT1〜T2を選択的にオン,オフ制御することにより、所望のコンデンサ(共振周波数)が選択されるようになっている。
【0017】
複数の抵抗R1〜R2は、当該共振回路12のQ値を所望の値に切換え設定するためのもので、それぞれ異なる所定の値(抵抗値)、たとえば、Q値が等間隔に変化するような値に設定されていて、共振回路定数制御信号b2〜b3により複数のトランジスタT3〜T4を選択的にオン,オフ制御することにより、所望の抵抗(Q値)が選択されるようになっている。
【0018】
なお、共振回路定数制御信号の数および複数のコンデンサ、抵抗の数は上記例に限ったものではなく、より多くの数であってもよい。数が多くなるほど細かく、かつ、精度の高い定数制御が可能となる。
【0019】
また、非接触ICカード3は、内蔵するメモリにカード固有の情報としてカード製造IDがあらかじめ記憶されていて、非接触ICカードリーダライタ1からのポーリングコマンドに対するレスポンスとして当該カード製造IDを送信するものとする。カード製造IDは、製造者コード、製造機器コード、製造日付、製造シリアル番号などの情報で構成されている。
【0020】
次に、このような構成において第1の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタ1の動作を図4に示すフローチャートおよび図5に示す動作の概念図を参照して説明する。
非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、定期的にポーリングコマンドを送信し、非接触ICカード3の接近を待機する(ステップS1)。ここで、非接触ICカード3が通信可能領域E1に進入すると、ポーリングコマンドを受信した当該非接触ICカード3から送信されるカード製造IDと製造パラメータからなるレスポンスを、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は受信する(ステップS2)。
【0021】
その後、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、当該非接触ICカード3との間で相互認証やデータの読出しあるいは書込みを行なうが(ステップS3)、ここで非接触ICカードリーダライタ1の通信特性が当該非接触ICカード3に対して最適化されていない場合、通信可能領域E1の中に図5に示すように通信不能領域(ヌル領域)E2が発生する。
【0022】
非接触ICカード3が非接触ICカードリーダライタ1のアンテナ11に接近していき、ヌル領域E2に進入すると、相互認証やデータの読出しあるいは書込みにおいてコマンドのレスポンスタイムアウトが発生する。
【0023】
そこで、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、まず相互認証を行う通信の際にレスポンスタイムアウトが発生したか否かをチェックし(ステップS4)、レスポンスタイムアウトが発生した場合、先に取得してあるカード製造IDから当該非接触ICカード3の種類を判別し、この判別結果に基づき共振回路12の共振周波数およびQ値を最適値に調整する(ステップS5)。
【0024】
すなわち、CPU14内のメモリ16には、図2に示すような形式のデータがあらかじめ格納されており、このデータを参照することで、判別した非接触ICカード3の種類から、共振回路12への共振回路定数制御信号b2〜b3のビットパターンを決定する。ここで、たとえば、カードAが接近した場合は図2のデータから共振回路定数制御信号は、b0=0、b1〜b3=1となり、図3の例においてb0=0、b1〜b3=1としてトランジスタT1はオフ、トランジスタT2〜T4はオンとすることで、回路定数を切換えて共振回路12の共振周波数およびQ値をカードAに対して最適値に調整する。
【0025】
その後、CPU14は、ステップS3に戻り、当該非接触ICカード3に対してレスポンスタイムアウトとなったコマンドを再送信し、再び通信を行なう。ここで、CPU14は、再びレスポンスタイムアウトが発生したか否かをチェックし(ステップS4)、レスポンスタイムアウトが発生した場合は再び同様な処理を繰り返す(ステップS5)。
【0026】
ステップS4において、レスポンスタイムアウトが発生しなかった場合、CPU14は、次にデータの読出しあるいは書込みを行なうが(ステップS6)、この通信の際にレスポンスタイムアウトが発生したか否かをチェックし(ステップS7)、レスポンスタイムアウトが発生した場合、ステップS5と同様な処理を行なう(ステップS8)。
【0027】
その後、CPU14は、ステップS6に戻り、当該非接触ICカード3に対してレスポンスタイムアウトとなったコマンドを再送信し、再び通信を行なう。ここで、CPU14は、再びレスポンスタイムアウトが発生したか否かをチェックし(ステップS7)、レスポンスタイムアウトが発生した場合は再び同様な処理を繰り返す(ステップS8)。
ステップS7において、レスポンスタイムアウトが発生しなかった場合、CPU14は、当該非接触ICカード3とのデータの送受信処理を終了する。
【0028】
以上説明したように第1の実施の形態によれば、ポーリングコマンドのレスポンスとして取得したカード固有情報であるカード製造IDから接近した非接触ICカード3の種類を判別し、当該非接触ICカード3がヌル領域E2に進入した時点で共振回路12の共振周波数およびQ値をカードごとに最適化することによって、非接触ICカード3ごとに非接触ICカードリーダライタ1の通信特性を最適化して、どのカードに対しても良好な通信特性を得ることができる。
【0029】
次に、第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタの構成は、上述した第1の実施の形態と同様であるので説明は省略する。
【0030】
以下、第2の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタ1の動作を図6に示すフローチャートおよび図7に示す動作の概念図を参照して説明する。
第1の実施の形態と同様、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、定期的にポーリングコマンドを送信し、非接触ICカード3の接近を待機する(ステップS11)。ここで、非接触ICカード3が通信可能領域E1に進入すると、ポーリングコマンドを受信した当該非接触ICカード3から送信されるカード製造IDと製造パラメータからなるレスポンスを、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は受信する(ステップS12)。
【0031】
次に、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、第1の実施の形態と同様、先に取得したカード製造IDから当該非接触ICカード3の種類を判別し、この判別結果に基づき共振回路12の共振周波数およびQ値を最適値に調整する(ステップS13)。
次に、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、当該非接触ICカード3との間で相互認証やデータの読出しあるいは書込みを行なう(ステップS14)。
【0032】
以上説明したように第2の実施の形態によれば、カード固有情報であるカード製造IDを受信した時点で共振回路12の共振周波数およびQ値をカードごとに最適化することによって、非接触ICカード3に対して非接触ICカードリーダライタ1の通信特性が最適化されていない場合でも、非接触ICカード3がヌル領域E2に進入する前に通信特性を最適化することができる。
【0033】
次に、第3の実施の形態について説明する。
図8は、第3の実施の形態に係る無線通信装置としての非接触ICカードリーダライタの構成を概略的に示すものである。第3の実施の形態の第1の実施の形態と異なる点は、共振回路12の回路定数を制御する手段はなく、その代わりに、電源回路15は、CPU14から供給される電源回路制御信号によって送受信回路13へ供給する電源電圧を制御するように構成されている点にある。したがって、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0034】
第3の実施の形態では、メモリ16には、たとえば、図9に示すような形式のデータがあらかじめ格納されており、判別した非接触ICカード3の種類から送受信回路13への供給電源電圧を決定するようになっている。
すなわち、メモリ16には、図9に示すように、当該非接触ICカードリーダライタ1で処理する非接触ICカード3の種類(たとえば、カードA〜D)ごとに送受信回路13へ供給する電源電圧の値があらかじめ記憶されている。
【0035】
次に、このような構成において第3の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタ1の動作を図10に示すフローチャートを参照して説明する。
非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、定期的にポーリングコマンドを送信し、非接触ICカード3の接近を待機する(ステップS21)。ここで、非接触ICカード3が通信可能領域E1に進入すると、ポーリングコマンドを受信した当該非接触ICカード3から送信されるカード製造IDと製造パラメータからなるレスポンスを、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は受信する(ステップS22)。
【0036】
その後、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、当該非接触ICカード3との間で相互認証やデータの読出しあるいは書込みを行なうが(ステップS23)、ここで非接触ICカードリーダライタ1のアンテナ出力レベルが当該非接触ICカード3に対して最適化されていない場合、通信可能領域E1の中に通信不能領域(ヌル領域)E2が発生する。
【0037】
非接触ICカード3が非接触ICカードリーダライタ1のアンテナ11に接近していき、ヌル領域E2に進入すると、相互認証やデータの読出しあるいは書込みにおいてコマンドのレスポンスタイムアウトが発生する。
【0038】
そこで、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、まず相互認証を行う通信の際にレスポンスタイムアウトが発生したか否かをチェックし(ステップS24)、レスポンスタイムアウトが発生した場合、先に取得してあるカード製造IDから当該非接触ICカード3の種類を判別し、この判別結果に基づき送受信回路13への供給電源電圧を決定することで、アンテナ11の出力レベルを最適値に調整する(ステップS25)。
【0039】
すなわち、CPU14内のメモリ16には、図9に示すような形式のデータがあらかじめ格納されており、このデータを参照することで、判別した非接触ICカード3の種類から、カードごとに最適な送受信回路13への供給電源電圧を決定する。ここで、たとえば、カードAが接近した場合は、図9のデータから送受信回路13への供給電源電圧は5ボルト(V)となり、アンテナ11の出力レベルをカードAに対して最適値に調整する。
【0040】
その後、CPU14は、ステップS23に戻り、当該非接触ICカード3に対してレスポンスタイムアウトとなったコマンドを再送信し、再び通信を行なう。ここで、CPU14は、再びレスポンスタイムアウトが発生したか否かをチェックし(ステップS24)、レスポンスタイムアウトが発生した場合は再び同様な処理を繰り返す(ステップS25)。
【0041】
ステップS24において、レスポンスタイムアウトが発生しなかった場合、CPU14は、次にデータの読出しあるいは書込みを行なうが(ステップS26)、この通信の際にレスポンスタイムアウトが発生したか否かをチェックし(ステップS27)、レスポンスタイムアウトが発生した場合、ステップS25と同様な処理を行なう(ステップS28)。
【0042】
その後、CPU14は、ステップS26に戻り、当該非接触ICカード3に対してレスポンスタイムアウトとなったコマンドを再送信し、再び通信を行なう。ここで、CPU14は、再びレスポンスタイムアウトが発生したか否かをチェックし(ステップS27)、レスポンスタイムアウトが発生した場合は再び同様な処理を繰り返す(ステップS28)。
ステップS27において、レスポンスタイムアウトが発生しなかった場合、CPU14は、当該非接触ICカード3とのデータの送受信処理を終了する。
【0043】
以上説明したように第3の実施の形態によれば、非接触ICカード3がヌル領域E2に進入した時点でカード製造IDを基にアンテナ11の出力レベルをカードごとに最適化することによって、非接触ICカード3ごとに非接触ICカードリーダライタ1の通信特性を最適化して、どのカードに対しても良好な通信特性を得ることができる。
【0044】
次に、第4の実施の形態について説明する。
第4の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタの構成は、上述した第3の実施の形態と同様であるので説明は省略する。
【0045】
以下、第4の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタ1の動作を図11に示すフローチャートを参照して説明する。
第3の実施の形態と同様、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、定期的にポーリングコマンドを送信し、非接触ICカード3の接近を待機する(ステップS31)。ここで、非接触ICカード3が通信可能領域E1に進入すると、ポーリングコマンドを受信した当該非接触ICカード3から送信されるカード製造IDと製造パラメータからなるレスポンスを、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は受信する(ステップS32)。
【0046】
次に、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、第3の実施の形態と同様、先に取得したカード製造IDから当該非接触ICカード3の種類を判別し、この判別結果に基づき送受信回路13への供給電源電圧を決定することで、アンテナ11の出力レベルを最適値に調整する(ステップS33)。
次に、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、当該非接触ICカード3との間で相互認証やデータの読出しあるいは書込みを行なう(ステップS34)。
【0047】
以上説明したように第4の実施の形態によれば、カード固有情報であるカード製造IDを取得した時点でアンテナ11の出力レベルをカードごとに最適化することによって、非接触ICカード3に対して非接触ICカードリーダライタ1の通信特性が最適化されていない場合でも、非接触ICカード3がヌル領域E2に進入する前に通信特性を最適化することができる。
【0048】
なお、前記第1、第2の実施の形態では、共振回路12の共振周波数およびQ値をそれぞれ制御することで通信特性を最適化する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、共振周波数およびQ値うち少なくともいずれか一方を制御することで通信特性を最適化すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1、第2の実施の形態に係る無線通信装置としての非接触ICカードリーダライタの構成を概略的に示すブロック図。
【図2】第1、第2の実施の形態に係るCPUに内蔵されたメモリに格納されているデータ例を示す図。
【図3】第1、第2の実施の形態に係る共振回路の構成を概略的に示す模式図。
【図4】第1の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタの動作を説明するフローチャート。
【図5】第1の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタの動作を説明する動作の概念図。
【図6】第2の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタの動作を説明するフローチャート。
【図7】第2の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタの動作を説明する動作の概念図。
【図8】本発明の第3、第4の実施の形態に係る無線通信装置としての非接触ICカードリーダライタの構成を概略的に示すブロック図。
【図9】第3、第4の実施の形態に係るCPUに内蔵されたメモリに格納されているデータ例を示す図。
【図10】第3の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタの動作を説明するフローチャート。
【図11】第4の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタの動作を説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0050】
1…非接触ICカードリーダライタ(無線通信装置)、2…上位装置、3…非接触ICカード(無線通信媒体)、11…アンテナ、12…共振回路、13…送受信回路、14…CPU(制御手段)、15…電源回路、16…メモリ(記憶手段)、E1…通信可能領域、E2…通信不可能領域(ヌル領域)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、電磁誘導結合により誘起された電力で駆動される非接触ICカード(無線通信媒体)と非接触(無線通信)でデータの送受信を行なう非接触ICカードリーダライタなどに適用して好適な無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の非接触ICカードリーダライタは、上位装置に接続されていて、この上位装置は非接触ICカードリーダライタに対しデータの送受信に関するコマンドを送出するとともに、非接触ICカードリーダライタから非接触ICカードとの通信結果などを受取るようになっている。
非接触ICカードリーダライタは、非接触ICカードと通信を行なうためにループアンテナから所定周波数のASK(振幅偏移)変調信号を送出し、非接触ICカードが非接触ICカードリーダライタの通信可能領域内に入ると、非接触ICカードリーダライタのループアンテナと非接触ICカードのループアンテナとの間に発生する電磁誘導結合により非接触ICカードに動作用の電力が供給される。非接触ICカードは、受信データに対する応答を負荷変調により行ない、非接触ICカードリーダライタは、この負荷変調データを包絡線検波により検出し、復調回路にて復調され、その復調データが上位装置へ転送される(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−187916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、印刷会社や電機メーカをはじめとする各社で非接触ICカードの製造や販売が行なわれているが、それぞれ通信特性が異なるため、全ての非接触ICカードに対して最適な通信特性を持つよう、あらかじめ非接触ICカードリーダライタの通信特性を調整するのが不可能である。このため、ある特定の非接触ICカードに対して通信特性が最適となるよう調整するには、ある程度他の非接触ICカードとの通信性能を犠牲にせざるを得ないという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、どの無線通信媒体に対しても良好な通信特性を得ることができる無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の無線通信装置は、無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なうためのアンテナを有し、このアンテナを介して無線通信媒体との間で無線通信を行なうことによりデータの送受信を行なう無線通信装置において、無線通信媒体が通信可能領域に進入すると、前記アンテナを介して当該無線通信媒体との間で無線通信を行なうことにより当該無線通信媒体から固有の情報を取得する固有情報取得手段と、この固有情報取得手段により固有情報を取得した後、当該無線通信媒体との通信状態を監視する通信状態監視手段と、この通信状態監視手段により当該無線通信媒体との通信が不可能になったことが検知された際、前記固有情報取得手段により取得された固有情報に基づき当該無線通信媒体の種類を判別し、この判別結果に基づき当該無線通信媒体との通信特性を最適値に調整する通信特性調整手段とを具備している。
【0006】
また、本発明の無線通信装置は、無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なうためのアンテナを有し、このアンテナを介して無線通信媒体との間で無線通信を行なうことによりデータの送受信を行なう無線通信装置において、無線通信媒体が通信可能領域に進入すると、前記アンテナを介して当該無線通信媒体との間で無線通信を行なうことにより当該無線通信媒体から固有の情報を取得する固有情報取得手段と、この固有情報取得手段により固有情報を取得した後、当該無線通信媒体との通信状態を監視する通信状態監視手段と、この通信状態監視手段により当該無線通信媒体との通信が不可能になったことが検知された際、前記固有情報取得手段により取得された固有情報に基づき当該無線通信媒体の種類を判別し、この判別結果に基づき前記アンテナの出力レベルを最適値に調整するアンテナ出力調整手段とを具備している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、無線通信媒体が通信可能領域に進入した際に当該無線通信媒体から固有の情報を取得し、通信不可能状態の発生を条件として当該無線通信媒体の固有情報に基づき当該無線通信媒体の種類を判別し、この判別結果に基づき当該無線通信媒体との通信特性の最適化を行なうことにより、どの無線通信媒体に対しても良好な通信特性を得ることができる無線通信装置を提供できる。
【0008】
また、本発明によれば、無線通信媒体が通信可能領域に進入した際に当該無線通信媒体から固有の情報を取得し、通信不可能状態の発生を条件として当該無線通信媒体の固有情報に基づき当該無線通信媒体の種類を判別し、この判別結果に基づきアンテナ出力レベルの最適化を行なうことにより、どの無線通信媒体に対しても良好な通信特性を得ることができる無線通信装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、第1の実施の形態について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る無線通信装置としての非接触ICカードリーダライタの構成を概略的に示すものである。この非接触ICカードリーダライタは、そのアンテナ部に無線通信媒体としての非接触ICカードが翳されることで、当該非接触ICカードとの間で電磁波を用いた無線通信を行なう場合の例を示している。
【0010】
図1において、非接触ICカードリーダライタ1は、コマンド送出や応答処理を行なう上位装置2に接続されていて、アンテナ部に非接触ICカード3が翳されることで、当該非接触ICカード3に対しデータの読出しや書込みなどのデータ送受信を行なうように構成されている。
【0011】
非接触ICカードリーダライタ1は、非接触ICカード3との間で電磁波を用いた無線通信を行なうためのアンテナ(たとえば、ループアンテナ)11、アンテナ11を含む共振回路12、共振回路12を介して非接触ICカード3との間で送受信を行う送受信回路13、全体的な制御を行なう制御手段としてのCPU(セントラル・プロセッシング・ユニット)14、および、外部から供給された電力を動作電源として送受信回路13およびCPU14へ供給する電源回路15を有して構成されている。
【0012】
共振回路12は、CPU14から供給される共振回路定数制御信号b0,b1,b2,b3によって回路定数(共振周波数、クオリティファクタ(Q値))が切換制御されることで、非接触ICカード3との通信特性が最適地に調整されるようになっており、それについては後で詳細を説明する。
【0013】
CPU14には、たとえば、ROMあるいはEEPROMなどのメモリ16が設けられている。メモリ16には、たとえば、図2に示すような形式のデータがあらかじめ格納されており、判別した非接触ICカード3の種類から共振回路12への共振回路定数制御信号b0,b1,b2,b3のビットパターンを決定するようになっている。
【0014】
すなわち、メモリ16には、図2に示すように、当該非接触ICカードリーダライタ1で処理する非接触ICカード3の種類(たとえば、カードA〜D)ごとに共振回路定数制御信号b0,b1,b2,b3のビットパターンを決定するデータがあらかじめ記憶されている。
【0015】
共振回路12は、たとえば、図3に示すように、アンテナ11、このアンテナ11に並列接続される複数(この例では2個)のコンデンサC1〜C2および抵抗R1〜R2、これら複数のコンデンサC1〜C2および抵抗R1〜R2に対しそれぞれ直列に接続されるスイッチ手段としての複数(この例では4個)のトランジスタT1〜T4を有していて、複数のトランジスタT1〜T4をCPU14からの共振回路定数制御信号b0〜b3により選択的にオン,オフ制御するように構成されている。
【0016】
複数のコンデンサC1〜C2は、当該共振回路12の共振周波数を所望の値に切換え設定するためのもので、それぞれ異なる所定の値(容量)、たとえば、共振周波数が等間隔に変化するような値に設定されていて、共振回路定数制御信号b0〜b1により複数のトランジスタT1〜T2を選択的にオン,オフ制御することにより、所望のコンデンサ(共振周波数)が選択されるようになっている。
【0017】
複数の抵抗R1〜R2は、当該共振回路12のQ値を所望の値に切換え設定するためのもので、それぞれ異なる所定の値(抵抗値)、たとえば、Q値が等間隔に変化するような値に設定されていて、共振回路定数制御信号b2〜b3により複数のトランジスタT3〜T4を選択的にオン,オフ制御することにより、所望の抵抗(Q値)が選択されるようになっている。
【0018】
なお、共振回路定数制御信号の数および複数のコンデンサ、抵抗の数は上記例に限ったものではなく、より多くの数であってもよい。数が多くなるほど細かく、かつ、精度の高い定数制御が可能となる。
【0019】
また、非接触ICカード3は、内蔵するメモリにカード固有の情報としてカード製造IDがあらかじめ記憶されていて、非接触ICカードリーダライタ1からのポーリングコマンドに対するレスポンスとして当該カード製造IDを送信するものとする。カード製造IDは、製造者コード、製造機器コード、製造日付、製造シリアル番号などの情報で構成されている。
【0020】
次に、このような構成において第1の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタ1の動作を図4に示すフローチャートおよび図5に示す動作の概念図を参照して説明する。
非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、定期的にポーリングコマンドを送信し、非接触ICカード3の接近を待機する(ステップS1)。ここで、非接触ICカード3が通信可能領域E1に進入すると、ポーリングコマンドを受信した当該非接触ICカード3から送信されるカード製造IDと製造パラメータからなるレスポンスを、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は受信する(ステップS2)。
【0021】
その後、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、当該非接触ICカード3との間で相互認証やデータの読出しあるいは書込みを行なうが(ステップS3)、ここで非接触ICカードリーダライタ1の通信特性が当該非接触ICカード3に対して最適化されていない場合、通信可能領域E1の中に図5に示すように通信不能領域(ヌル領域)E2が発生する。
【0022】
非接触ICカード3が非接触ICカードリーダライタ1のアンテナ11に接近していき、ヌル領域E2に進入すると、相互認証やデータの読出しあるいは書込みにおいてコマンドのレスポンスタイムアウトが発生する。
【0023】
そこで、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、まず相互認証を行う通信の際にレスポンスタイムアウトが発生したか否かをチェックし(ステップS4)、レスポンスタイムアウトが発生した場合、先に取得してあるカード製造IDから当該非接触ICカード3の種類を判別し、この判別結果に基づき共振回路12の共振周波数およびQ値を最適値に調整する(ステップS5)。
【0024】
すなわち、CPU14内のメモリ16には、図2に示すような形式のデータがあらかじめ格納されており、このデータを参照することで、判別した非接触ICカード3の種類から、共振回路12への共振回路定数制御信号b2〜b3のビットパターンを決定する。ここで、たとえば、カードAが接近した場合は図2のデータから共振回路定数制御信号は、b0=0、b1〜b3=1となり、図3の例においてb0=0、b1〜b3=1としてトランジスタT1はオフ、トランジスタT2〜T4はオンとすることで、回路定数を切換えて共振回路12の共振周波数およびQ値をカードAに対して最適値に調整する。
【0025】
その後、CPU14は、ステップS3に戻り、当該非接触ICカード3に対してレスポンスタイムアウトとなったコマンドを再送信し、再び通信を行なう。ここで、CPU14は、再びレスポンスタイムアウトが発生したか否かをチェックし(ステップS4)、レスポンスタイムアウトが発生した場合は再び同様な処理を繰り返す(ステップS5)。
【0026】
ステップS4において、レスポンスタイムアウトが発生しなかった場合、CPU14は、次にデータの読出しあるいは書込みを行なうが(ステップS6)、この通信の際にレスポンスタイムアウトが発生したか否かをチェックし(ステップS7)、レスポンスタイムアウトが発生した場合、ステップS5と同様な処理を行なう(ステップS8)。
【0027】
その後、CPU14は、ステップS6に戻り、当該非接触ICカード3に対してレスポンスタイムアウトとなったコマンドを再送信し、再び通信を行なう。ここで、CPU14は、再びレスポンスタイムアウトが発生したか否かをチェックし(ステップS7)、レスポンスタイムアウトが発生した場合は再び同様な処理を繰り返す(ステップS8)。
ステップS7において、レスポンスタイムアウトが発生しなかった場合、CPU14は、当該非接触ICカード3とのデータの送受信処理を終了する。
【0028】
以上説明したように第1の実施の形態によれば、ポーリングコマンドのレスポンスとして取得したカード固有情報であるカード製造IDから接近した非接触ICカード3の種類を判別し、当該非接触ICカード3がヌル領域E2に進入した時点で共振回路12の共振周波数およびQ値をカードごとに最適化することによって、非接触ICカード3ごとに非接触ICカードリーダライタ1の通信特性を最適化して、どのカードに対しても良好な通信特性を得ることができる。
【0029】
次に、第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタの構成は、上述した第1の実施の形態と同様であるので説明は省略する。
【0030】
以下、第2の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタ1の動作を図6に示すフローチャートおよび図7に示す動作の概念図を参照して説明する。
第1の実施の形態と同様、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、定期的にポーリングコマンドを送信し、非接触ICカード3の接近を待機する(ステップS11)。ここで、非接触ICカード3が通信可能領域E1に進入すると、ポーリングコマンドを受信した当該非接触ICカード3から送信されるカード製造IDと製造パラメータからなるレスポンスを、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は受信する(ステップS12)。
【0031】
次に、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、第1の実施の形態と同様、先に取得したカード製造IDから当該非接触ICカード3の種類を判別し、この判別結果に基づき共振回路12の共振周波数およびQ値を最適値に調整する(ステップS13)。
次に、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、当該非接触ICカード3との間で相互認証やデータの読出しあるいは書込みを行なう(ステップS14)。
【0032】
以上説明したように第2の実施の形態によれば、カード固有情報であるカード製造IDを受信した時点で共振回路12の共振周波数およびQ値をカードごとに最適化することによって、非接触ICカード3に対して非接触ICカードリーダライタ1の通信特性が最適化されていない場合でも、非接触ICカード3がヌル領域E2に進入する前に通信特性を最適化することができる。
【0033】
次に、第3の実施の形態について説明する。
図8は、第3の実施の形態に係る無線通信装置としての非接触ICカードリーダライタの構成を概略的に示すものである。第3の実施の形態の第1の実施の形態と異なる点は、共振回路12の回路定数を制御する手段はなく、その代わりに、電源回路15は、CPU14から供給される電源回路制御信号によって送受信回路13へ供給する電源電圧を制御するように構成されている点にある。したがって、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0034】
第3の実施の形態では、メモリ16には、たとえば、図9に示すような形式のデータがあらかじめ格納されており、判別した非接触ICカード3の種類から送受信回路13への供給電源電圧を決定するようになっている。
すなわち、メモリ16には、図9に示すように、当該非接触ICカードリーダライタ1で処理する非接触ICカード3の種類(たとえば、カードA〜D)ごとに送受信回路13へ供給する電源電圧の値があらかじめ記憶されている。
【0035】
次に、このような構成において第3の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタ1の動作を図10に示すフローチャートを参照して説明する。
非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、定期的にポーリングコマンドを送信し、非接触ICカード3の接近を待機する(ステップS21)。ここで、非接触ICカード3が通信可能領域E1に進入すると、ポーリングコマンドを受信した当該非接触ICカード3から送信されるカード製造IDと製造パラメータからなるレスポンスを、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は受信する(ステップS22)。
【0036】
その後、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、当該非接触ICカード3との間で相互認証やデータの読出しあるいは書込みを行なうが(ステップS23)、ここで非接触ICカードリーダライタ1のアンテナ出力レベルが当該非接触ICカード3に対して最適化されていない場合、通信可能領域E1の中に通信不能領域(ヌル領域)E2が発生する。
【0037】
非接触ICカード3が非接触ICカードリーダライタ1のアンテナ11に接近していき、ヌル領域E2に進入すると、相互認証やデータの読出しあるいは書込みにおいてコマンドのレスポンスタイムアウトが発生する。
【0038】
そこで、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、まず相互認証を行う通信の際にレスポンスタイムアウトが発生したか否かをチェックし(ステップS24)、レスポンスタイムアウトが発生した場合、先に取得してあるカード製造IDから当該非接触ICカード3の種類を判別し、この判別結果に基づき送受信回路13への供給電源電圧を決定することで、アンテナ11の出力レベルを最適値に調整する(ステップS25)。
【0039】
すなわち、CPU14内のメモリ16には、図9に示すような形式のデータがあらかじめ格納されており、このデータを参照することで、判別した非接触ICカード3の種類から、カードごとに最適な送受信回路13への供給電源電圧を決定する。ここで、たとえば、カードAが接近した場合は、図9のデータから送受信回路13への供給電源電圧は5ボルト(V)となり、アンテナ11の出力レベルをカードAに対して最適値に調整する。
【0040】
その後、CPU14は、ステップS23に戻り、当該非接触ICカード3に対してレスポンスタイムアウトとなったコマンドを再送信し、再び通信を行なう。ここで、CPU14は、再びレスポンスタイムアウトが発生したか否かをチェックし(ステップS24)、レスポンスタイムアウトが発生した場合は再び同様な処理を繰り返す(ステップS25)。
【0041】
ステップS24において、レスポンスタイムアウトが発生しなかった場合、CPU14は、次にデータの読出しあるいは書込みを行なうが(ステップS26)、この通信の際にレスポンスタイムアウトが発生したか否かをチェックし(ステップS27)、レスポンスタイムアウトが発生した場合、ステップS25と同様な処理を行なう(ステップS28)。
【0042】
その後、CPU14は、ステップS26に戻り、当該非接触ICカード3に対してレスポンスタイムアウトとなったコマンドを再送信し、再び通信を行なう。ここで、CPU14は、再びレスポンスタイムアウトが発生したか否かをチェックし(ステップS27)、レスポンスタイムアウトが発生した場合は再び同様な処理を繰り返す(ステップS28)。
ステップS27において、レスポンスタイムアウトが発生しなかった場合、CPU14は、当該非接触ICカード3とのデータの送受信処理を終了する。
【0043】
以上説明したように第3の実施の形態によれば、非接触ICカード3がヌル領域E2に進入した時点でカード製造IDを基にアンテナ11の出力レベルをカードごとに最適化することによって、非接触ICカード3ごとに非接触ICカードリーダライタ1の通信特性を最適化して、どのカードに対しても良好な通信特性を得ることができる。
【0044】
次に、第4の実施の形態について説明する。
第4の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタの構成は、上述した第3の実施の形態と同様であるので説明は省略する。
【0045】
以下、第4の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタ1の動作を図11に示すフローチャートを参照して説明する。
第3の実施の形態と同様、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、定期的にポーリングコマンドを送信し、非接触ICカード3の接近を待機する(ステップS31)。ここで、非接触ICカード3が通信可能領域E1に進入すると、ポーリングコマンドを受信した当該非接触ICカード3から送信されるカード製造IDと製造パラメータからなるレスポンスを、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は受信する(ステップS32)。
【0046】
次に、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、第3の実施の形態と同様、先に取得したカード製造IDから当該非接触ICカード3の種類を判別し、この判別結果に基づき送受信回路13への供給電源電圧を決定することで、アンテナ11の出力レベルを最適値に調整する(ステップS33)。
次に、非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、当該非接触ICカード3との間で相互認証やデータの読出しあるいは書込みを行なう(ステップS34)。
【0047】
以上説明したように第4の実施の形態によれば、カード固有情報であるカード製造IDを取得した時点でアンテナ11の出力レベルをカードごとに最適化することによって、非接触ICカード3に対して非接触ICカードリーダライタ1の通信特性が最適化されていない場合でも、非接触ICカード3がヌル領域E2に進入する前に通信特性を最適化することができる。
【0048】
なお、前記第1、第2の実施の形態では、共振回路12の共振周波数およびQ値をそれぞれ制御することで通信特性を最適化する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、共振周波数およびQ値うち少なくともいずれか一方を制御することで通信特性を最適化すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1、第2の実施の形態に係る無線通信装置としての非接触ICカードリーダライタの構成を概略的に示すブロック図。
【図2】第1、第2の実施の形態に係るCPUに内蔵されたメモリに格納されているデータ例を示す図。
【図3】第1、第2の実施の形態に係る共振回路の構成を概略的に示す模式図。
【図4】第1の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタの動作を説明するフローチャート。
【図5】第1の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタの動作を説明する動作の概念図。
【図6】第2の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタの動作を説明するフローチャート。
【図7】第2の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタの動作を説明する動作の概念図。
【図8】本発明の第3、第4の実施の形態に係る無線通信装置としての非接触ICカードリーダライタの構成を概略的に示すブロック図。
【図9】第3、第4の実施の形態に係るCPUに内蔵されたメモリに格納されているデータ例を示す図。
【図10】第3の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタの動作を説明するフローチャート。
【図11】第4の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタの動作を説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0050】
1…非接触ICカードリーダライタ(無線通信装置)、2…上位装置、3…非接触ICカード(無線通信媒体)、11…アンテナ、12…共振回路、13…送受信回路、14…CPU(制御手段)、15…電源回路、16…メモリ(記憶手段)、E1…通信可能領域、E2…通信不可能領域(ヌル領域)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なうためのアンテナを有し、このアンテナを介して無線通信媒体との間で無線通信を行なうことによりデータの送受信を行なう無線通信装置において、
無線通信媒体が通信可能領域に進入すると、前記アンテナを介して当該無線通信媒体との間で無線通信を行なうことにより当該無線通信媒体から固有の情報を取得する固有情報取得手段と、
この固有情報取得手段により固有情報を取得した後、当該無線通信媒体との通信状態を監視する通信状態監視手段と、
この通信状態監視手段により当該無線通信媒体との通信が不可能になったことが検知された際、前記固有情報取得手段により取得された固有情報に基づき当該無線通信媒体の種類を判別し、この判別結果に基づき当該無線通信媒体との通信特性を最適値に調整する通信特性調整手段と、
を具備したことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なうためのアンテナを有し、このアンテナを介して無線通信媒体との間で無線通信を行なうことによりデータの送受信を行なう無線通信装置において、
無線通信媒体が通信可能領域に進入すると、前記アンテナを介して当該無線通信媒体との間で無線通信を行なうことにより当該無線通信媒体から固有の情報を取得する固有情報取得手段と、
この固有情報取得手段により取得された固有情報に基づき当該無線通信媒体の種類を判別し、この判別結果に基づき当該無線通信媒体との通信特性を最適値に調整する通信特性調整手段と、
を具備したことを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
前記アンテナを含む共振回路を具備し、
前記通信特性調整手段は、前記共振回路の共振周波数およびクオリティファクタ(Q値)のうち少なくともいずれか一方を制御することにより通信特性を最適値に調整することを特徴とする請求項1または請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なうためのアンテナを有し、このアンテナを介して無線通信媒体との間で無線通信を行なうことによりデータの送受信を行なう無線通信装置において、
無線通信媒体が通信可能領域に進入すると、前記アンテナを介して当該無線通信媒体との間で無線通信を行なうことにより当該無線通信媒体から固有の情報を取得する固有情報取得手段と、
この固有情報取得手段により固有情報を取得した後、当該無線通信媒体との通信状態を監視する通信状態監視手段と、
この通信状態監視手段により当該無線通信媒体との通信が不可能になったことが検知された際、前記固有情報取得手段により取得された固有情報に基づき当該無線通信媒体の種類を判別し、この判別結果に基づき前記アンテナの出力レベルを最適値に調整するアンテナ出力調整手段と、
を具備したことを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なうためのアンテナを有し、このアンテナを介して無線通信媒体との間で無線通信を行なうことによりデータの送受信を行なう無線通信装置において、
無線通信媒体が通信可能領域に進入すると、前記アンテナを介して当該無線通信媒体との間で無線通信を行なうことにより当該無線通信媒体から固有の情報を取得する固有情報取得手段と、
この固有情報取得手段により取得された固有情報に基づき当該無線通信媒体の種類を判別し、この判別結果に基づき前記アンテナの出力レベルを最適値に調整するアンテナ出力調整手段と、
を具備したことを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
前記アンテナを介して無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なう送受信手段を具備し、
前記アンテナ出力調整手段は、前記送受信手段の電源電圧を制御することにより前記アンテナの出力レベルを最適値に調整することを特徴とする請求項4または請求項5記載の無線通信装置。
【請求項1】
無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なうためのアンテナを有し、このアンテナを介して無線通信媒体との間で無線通信を行なうことによりデータの送受信を行なう無線通信装置において、
無線通信媒体が通信可能領域に進入すると、前記アンテナを介して当該無線通信媒体との間で無線通信を行なうことにより当該無線通信媒体から固有の情報を取得する固有情報取得手段と、
この固有情報取得手段により固有情報を取得した後、当該無線通信媒体との通信状態を監視する通信状態監視手段と、
この通信状態監視手段により当該無線通信媒体との通信が不可能になったことが検知された際、前記固有情報取得手段により取得された固有情報に基づき当該無線通信媒体の種類を判別し、この判別結果に基づき当該無線通信媒体との通信特性を最適値に調整する通信特性調整手段と、
を具備したことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なうためのアンテナを有し、このアンテナを介して無線通信媒体との間で無線通信を行なうことによりデータの送受信を行なう無線通信装置において、
無線通信媒体が通信可能領域に進入すると、前記アンテナを介して当該無線通信媒体との間で無線通信を行なうことにより当該無線通信媒体から固有の情報を取得する固有情報取得手段と、
この固有情報取得手段により取得された固有情報に基づき当該無線通信媒体の種類を判別し、この判別結果に基づき当該無線通信媒体との通信特性を最適値に調整する通信特性調整手段と、
を具備したことを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
前記アンテナを含む共振回路を具備し、
前記通信特性調整手段は、前記共振回路の共振周波数およびクオリティファクタ(Q値)のうち少なくともいずれか一方を制御することにより通信特性を最適値に調整することを特徴とする請求項1または請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なうためのアンテナを有し、このアンテナを介して無線通信媒体との間で無線通信を行なうことによりデータの送受信を行なう無線通信装置において、
無線通信媒体が通信可能領域に進入すると、前記アンテナを介して当該無線通信媒体との間で無線通信を行なうことにより当該無線通信媒体から固有の情報を取得する固有情報取得手段と、
この固有情報取得手段により固有情報を取得した後、当該無線通信媒体との通信状態を監視する通信状態監視手段と、
この通信状態監視手段により当該無線通信媒体との通信が不可能になったことが検知された際、前記固有情報取得手段により取得された固有情報に基づき当該無線通信媒体の種類を判別し、この判別結果に基づき前記アンテナの出力レベルを最適値に調整するアンテナ出力調整手段と、
を具備したことを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なうためのアンテナを有し、このアンテナを介して無線通信媒体との間で無線通信を行なうことによりデータの送受信を行なう無線通信装置において、
無線通信媒体が通信可能領域に進入すると、前記アンテナを介して当該無線通信媒体との間で無線通信を行なうことにより当該無線通信媒体から固有の情報を取得する固有情報取得手段と、
この固有情報取得手段により取得された固有情報に基づき当該無線通信媒体の種類を判別し、この判別結果に基づき前記アンテナの出力レベルを最適値に調整するアンテナ出力調整手段と、
を具備したことを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
前記アンテナを介して無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なう送受信手段を具備し、
前記アンテナ出力調整手段は、前記送受信手段の電源電圧を制御することにより前記アンテナの出力レベルを最適値に調整することを特徴とする請求項4または請求項5記載の無線通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−11198(P2008−11198A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179807(P2006−179807)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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