説明

無線通信装置

【課題】媒体通信用チャネルとして使用した周波数と近い周波数を他の無線通信装置が使用していた場合に起こり得るノイズに起因した通信エラーを回避し、通信効率を高める。
【解決手段】無線通信媒体とのデータ通信を正常に終えたか否かを判断する。正常に終えなかった場合には、媒体通信用チャネルを複数の無線チャネルの中の別のチャネルに切り換えて当該無線通信媒体との無線通信を再度試みる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばUHF(Ultra-High Frequency)帯の電波を用いてRFID(Radio Frequency Identification)のデータを非接触で読み取ったり、RFIDにデータを書込んだりできるRFIDリーダ・ライタ等の無線通信装置及びその無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFIDシステムと称される無線通信システムが注目されている。このシステムは、ICチップとアンテナとを備えた小型の無線通信媒体と、電波または電磁波を利用して上記無線通信媒体との間で無線通信を行うことによりデータの書込み及び読取りを非接触で行うRFIDリーダ・ライタとから構成されている。
【0003】
RFIDリーダ・ライタのICチップには、製造時に設定されるシリアルナンバー等の固有のIDが記憶されている。また、無線通信媒体は薄型化が可能であり、物品に容易に付与することができる。このため、無線通信媒体は、RFID,RFタグ,無線タグ等と称され、通常は管理対象の物品1つ1つに付与されて使用される。
【0004】
一方、RFIDリーダ・ライタは、無線通信媒体との間で電波または電磁波の受け渡しを行うアンテナ部と、このアンテナ部を介して無線通信媒体と非接触でデータ通信を行う無線通信装置としてのリーダ・ライタ本体とからなる。そして、アンテナ部の形状等によってゲート型、据置型,携帯型等に分類される。ゲート型のRFIDリーダ・ライタは、例えば盗難防止システムや通門管理システム等に利用される。据置型のRFIDリーダ・ライタは、例えば図書館の貸出管理システムや店舗の買上商品精算システム等に利用される。ハンディ型のRFIDリーダ・ライタは、倉庫の物品検索システムや店舗の棚卸システム等に利用される。
【0005】
ところで現在、RFIDシステムにおいても860〜960MHzのUHF帯が使用可能なっている。ただし、UHF帯は主に携帯電話の周波数帯として用いられているため、携帯電話とRFIDシステムとの周波数帯が重複して電波状況を乱すことがないように、860〜960MHzの中でも952〜954MHzのUHF帯域(1〜9チャネル)若しくは952〜955MHzのUHF帯域(1〜14チャネル)がRFIDシステムに割り当てられている。
【0006】
一方、RFIDシステムを構築する場合、使用されるリーダ・ライタは1台のみでなく、複数台を併用する場合が殆どである。このため、複数のRFIDリーダ・ライタから発せられる電波が干渉しないように、LBT(Listen Before Talk)方式によるキャリアセンスを行っている。すなわち、リーダ・ライタが電波を出す前に空きチャネルを検索し、空きチャネルを検出できたならばそのチャネルを使用して電波を出力するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
ところで、この種の無線通信システムにおいては、一般に、データ通信の際にビット欠落エラーやビット化けエラー等の通信エラーが発生することがある。このような通信エラーが発生した場合、従来の多くの無線通信装置においては、同一の周波数を使用して再度無線通信を試み、予め設定された回数を繰り返してもデータ通信を完了し得なかった場合に通信エラーを報知するものとなっていた。
【特許文献1】特開2000−242742公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記ビット欠落エラーやビット化けエラー等の通信エラーは、媒体通信用チャネルとして使用した周波数と近い周波数を他の無線通信装置が使用していた場合に、そのノイズの影響によって発生することが多い。この場合は、同一の周波数を使用して再度無線通信を試みたところでノイズの影響を除去できないので、再びエラーとなる確率が高かった。
【0009】
本発明はこのような事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、媒体通信用チャネルとして使用した周波数と近い周波数を他の無線通信装置が使用していた場合に起こり得るノイズに起因した通信エラーを回避することができ、通信効率を高め得る無線通信装置及び無線通信方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数の無線チャネルの中のいずれかのチャネルを媒体通信用チャネルとして選択し、この媒体通信用チャネルを使用して無線通信媒体との間でデータ通信を行う場合において、無線通信媒体とのデータ通信を正常に終えたか否かを判断し、正常に終えなかった場合に、媒体通信用チャネルを複数の無線チャネルの中の別のチャネルに切り換えて当該無線通信媒体との無線通信を再度試みるようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
かかる手段を講じた本発明によれば、媒体通信用チャネルとして使用した周波数と近い周波数を他の無線通信装置が使用していた場合に起こり得るノイズに起因した通信エラーを回避することができ、通信効率を高め得る効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この実施の形態は、952〜954MHzのUHF帯域(1〜9チャネル)の電波を用いて、無線通信媒体としてのRFIDと無線通信を行うことにより前記RFIDのメモリに記憶されたデータを読み取ったり、同メモリにデータを書込んだりすることができるRFIDリーダ・ライタに本発明を適用した場合である。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態のRFIDリーダ・ライタを用いたRFIDシステムの概略図である。このシステムは、複数台のRFIDリーダ・ライタ1(図では3台のリーダ・ライタ1-1,1-2及び1-3のみ示す)と、各RFIDリーダ・ライタ1を制御する上位機としてのホストコンピュータ2と、各RFIDリーダ・ライタ1によってデータの読取り及び書込みが行われる複数個のRFID3(図では6個のRFID3-1,3-2,3-3,3-4,3-5及び3-6のみ示す)とから構成されている。
【0014】
各RFID3は、アンテナとICチップとから構成されている。ICチップには、電源作成部,復調部,変調部,メモリ部及びこれらを制御する制御部等が設けられている。各RFID3は、アンテナでUHF帯の電波を受信すると、電源作成部の作用により電源が生成されて活性化する。活性化したRFID3からは、メモリ部に記憶されている固有のIDを含む応答波がそのアンテナから放射される。そして、この応答波を受信したRFIDリーダ・ライタ1と無線による回線が接続されたならば、それ以後、RFIDリーダ・ライタ1からのコマンドに応じて、受信したデータを復調してメモリ部に書込んだり、メモリ部のデータを読出し変調して、RFIDリーダ・ライタに送出したりする。このようなRFIDは、通常、管理対象の物品1つ1つに付与されて使用される。
【0015】
図2はRFIDリーダ・ライタ1の要部構成を示すブロック図である。RFIDリーダ・ライタ1は、本体部10と、この本体部10に接続されたアンテナ20とから構成されている。
【0016】
本体部10は、CPU(Central Processing Unit)を主体とした制御部11、ROM(Read Only Memory)領域及びRAM(Random Access Memory)領域を有する記憶部12、ホストコンピュータ2等の外部機器とデータ通信を行うための通信部13、後述する監視時間及び動作制御時間等をそれぞれカウントするタイマが形成されたタイマ部14、無線によるデータの送受信を制御する無線回路部15及びキャリアセンス部16を備えている。
【0017】
無線回路部15は、PLL(Phase Locked Loop)回路151、送信部152、サーキュレータ153及び受信部154等で構成されている。PLL回路151は、高周波の正弦波信号を発生する。送信部152は、制御部11から送られてきた送信データを変調し、この変調信号とPLL回路151で作られた高周波信号とを足し合わせた信号を増幅してサーキュレータ153に出力する。サーキュレータ153は、送信部152から入力された信号はアンテナ20に出力し、アンテナ20から入力された信号は受信部154に出力する特性を有する。受信部154は、サーキュレータ153を介して入力された高周波信号を増幅した後、この増幅された高周波信号とPLL回路151の高周波信号とを組み合わせてベースバンド信号に変換し、このベースバンド信号を復調して制御部11に出力する。
【0018】
キャリアセンス部16は、当該リーダ・ライタ1が使用するUHF帯域の無線チャネル(952〜954MHzの1〜9チャネル)の使用状況を、LBT方式によるキャリアセンスによって判定する。因みに、LBT方式では、リーダ・ライタの1回の動作可能時間が最大4秒に制限されている。そして、1回の動作を終了すると50msの時間休止し、その後、空きチャネルを5msの時間監視して初めて再動作可能となる。
【0019】
記憶部12のRAM領域には、図3に示すように、周波数設定テーブル41、初期周波数メモリ42、チャネルカウンタメモリ43、リトライ回数設定値メモリ44、リトライカウンタメモリ45等を形成している。
【0020】
周波数設定テーブル41には、当該RFIDシステムで使用される無線チャネル1〜9のチャネル番号nにそれぞれ対応して、952〜954MHzのUHF帯域の中のいずれかの周波数f1〜f9が予め設定されている。
【0021】
初期周波数メモリ42には、上記周波数設定テーブル41に設定されている周波数f1〜f9の中から選択された1つの周波数に対応したチャネル番号nが初期周波数kとして記憶される。この初期周波数kは、図1に示すように複数台のRFIDリーダ・ライタ1を備えたRFIDシステムにおいては、少なくとも隣接するリーダ・ライタとの間で異なるように予め設定されている。こうすることにより、隣接するリーダ・ライタ1が同時に同一の周波数で動作を開始するのを防ぐことができる。
【0022】
チャネルカウンタメモリ43には、上記チャネル番号nの範囲内で“1”ずつカウントアップされる数値nが記憶される。リトライ回数設定値メモリ44には、ホストコンピュータ2からの設定コマンドにより設定されるリトライ回数xが記憶される。リトライ回数xとしては、一般には“1”〜“5”の範囲内の自然数が適当である。リトライカウンタメモリ45は、データ通信のリトライ回数yが記憶される。
【0023】
かかる構成のRFIDリーダ・ライタ1を用いたRFIDシステムにおいては、RFID3に対するデータ読取業務が発生すると、ホストコンピュータ2からいずれかのRFIDリーダ・ライタ1にリードコマンドが送信される。すると、このリードコマンドを受信したRFIDリーダ・ライタ1の制御部11が図4の流れ図に示す手順の処理を実行するものとなっている。
【0024】
先ず、制御部11は、ST(ステップ)1としてリトライカウンタメモリ45のカウント値yを“0”にリセットする。また、ST2としてチャネルカウンタメモリ43のカウント値nを初期周波数メモリ42内の初期周波数kとする。
【0025】
次に、制御部11は、ST3として周波数設定テーブル41からチャネルカウンタメモリ43のカウント値nに対応して記憶されている周波数fn(f1≦fn≦f9)でキャリアセンスを実行する。すなわち、タイマ部14の監視タイマを起動し、この監視タイマがタイムアウトするまでの時間(LTB方式においては5ms)、上記周波数fnの信号を受信部154が受信しているか否かを、キャリアセンス部16から読み込んだCS信号により判定する。CS信号は、周波数fnの信号を受信部154が受信していない状態では“0”レベルであり、受信すると“1”レベルとなるので、制御部11は、ST4として上記CS信号が“0”レベルであるか否かを判断する。
【0026】
CS信号が“1”レベルの場合には、周波数fnは使用中のチャネルであるので、制御部11は、ST5としてチャネルカウンタメモリ43のカウント値nを“1”だけカウントアップする。このとき、ST6としてカウント値nがチャネル番号の最大値“9”を超えたか否かを判断し、越えた場合には、ST7としてカウント値nを“1”に戻す。しかる後、制御部11は、ST3に戻り、周波数設定テーブル41から周波数fnを取得してキャリアセンスを行う。
【0027】
ST4にてCS信号が“0”レベルの場合には、周波数fnは空きチャネルであるので、制御部11は、ST8としてその空チャネルの周波数fnを使用してRFID3のリード動作を開始する。すなわち、タイマ部14の動作制限タイマをスタートさせるとともに、アンテナ20の交信領域内に存在するRFID3と周波数fnで無線通信を行い、データの読取りを行う。なお、動作制限タイマは、LBT方式において、最大の動作可能時間4sに達するとタイムアウトする。
【0028】
制御部11は、ST9としてリード動作を終了するか動作制限タイマがタイムアウトするのを待機する。リード動作を終了するか動作制限タイマがタイムアウトしたならば、制御部11は、ST10としてリード動作を正常に終了したか否か、すなわち所望するRFID3からデータを正常に読み取れたか否かを判断する(結果判断手段)。
【0029】
ここで、所望するRFID3からデータを読取り、そのデータを、通信部13を介してホストコンピュータ2に送信し終えたならば、正常終了と判定する。そしてその場合には、制御部11は、ST11としてチャネルカウンタメモリ43の現時点のカウント値nを次回の初期周波数kとして初期周波数メモリ42に上書きして、今回のコマンド受信処理を正常終了する。
【0030】
これに対し、所望するRFID3からデータを正常に読み取れなかった場合には、制御部11は、ST12としてリトライカウンタメモリ45のカウント値yを“1”だけカウントアップする。そして、ST13としてカウント値yがリトライ回数設定値メモリ44に記憶されている設定値xを超えたか否かを判断する。
【0031】
ここで、カウント値yが設定値xを越えていない場合には、制御部11は、ST5に進み、チャネルカウンタメモリ43のカウント値nを“1”だけカウントアップする。このとき、ST6としてカウント値nがチャネル番号の最大値“9”を超えたか否かを判断し、越えた場合には、ST7としてカウント値nを“1”に戻す。しかる後、ST3に戻り、周波数設定テーブル41から周波数fnを取得してキャリアセンスを行う(チャネル切換手段)。
【0032】
こうして、キャリアセンスを行った結果、空チャネルの周波数fnを検出したならば(ST4のYES)、制御部11は、ST8としてその空チャネルの周波数fnを使用してリード動作を再開する(リトライ手段)。
【0033】
ST13にてカウント値yが設定値xに達したことを検知した場合には、制御部11は、今回のコマンド受信処理をエラー終了する。
【0034】
なお、ST10において、データを正常に読み取れなかった場合とは、RFID3がアンテナ20の交信領域外にあったり故障していたりしたために、RFID3からの応答信号を受信できない場合がある。また、RFID3からの応答信号を受信し、RFID3がアンテナ20の交信領域内に存在することを検知できたが、このRFID3に記憶されているデータを読み取るためのデータ通信手順の中でビット欠落エラーやビット化けエラーが発生したり、通信に時間を要して動作制限タイマのタイムアウトエラーとなってしまって、データを正常に読み取れなかった場合がある。
【0035】
次に、RFID3に対するデータ書込み業務が発生した場合を説明する。本実施の形態のRFIDシステムにおいて、データ書込み業務が発生すると、ホストコンピュータ2からいずれかのRFIDリーダ・ライタ1にライトコマンドが送信される。すると、このライトコマンドを受信したRFIDリーダ・ライタ1の制御部11は、図5の流れ図に示す手順の処理を実行する。
【0036】
先ず、制御部11は、ST21としてリトライカウンタメモリ45のカウント値yを“0”にリセットする。また、ST22としてチャネルカウンタメモリ43のカウント値nを初期周波数メモリ42内の初期周波数kとする。
【0037】
次に、制御部11は、ST23として周波数設定テーブル41からチャネルカウンタメモリ43のカウント値nに対応して記憶されている周波数fn(f1≦fn≦f9)でキャリアセンスを実行する。すなわち、タイマ部14の監視タイマを起動し、この監視タイマがタイムアウトするまでの時間(LTB方式においては5ms)、上記周波数fnの信号を受信部154が受信しているか否かを、キャリアセンス部16から読み込んだCS信号により判定する。CS信号は、周波数fnの信号を受信部154が受信していない状態では“0”レベルであり、受信すると“1”レベルとなるので、制御部11は、ST24として上記CS信号が“0”レベルであるか否かを判断する。
【0038】
CS信号が“1”レベルの場合には、周波数fnは使用中のチャネルであるので、制御部11は、ST25としてチャネルカウンタメモリ43のカウント値nを“1”だけカウントアップする。このとき、ST26としてカウント値nがチャネル番号の最大値“9”を超えたか否かを判断し、越えた場合には、ST27としてカウント値nを“1”に戻す。しかる後、ST23に戻り、周波数設定テーブル41から周波数fnを取得してキャリアセンスを行う。
【0039】
ST24にてCS信号が“0”レベルの場合には、周波数fnは空きチャネルであるので、制御部11は、ST28としてその空チャネルの周波数fnを使用してRFID3のライト動作を開始する。すなわち、タイマ部14の動作制限タイマをスタートさせるとともに、アンテナ20の交信領域内に存在するRFID3と周波数fnで無線通信を行い、データの書込みを行う。なお、動作制限タイマは、LBT方式において、最大の動作可能時間4sに達するとタイムアウトする。
【0040】
制御部11は、ST29としてライト動作を終了するか動作制限タイマがタイムアウトするのを待機する。ライト動作を終了するか動作制限タイマがタイムアウトしたならば、制御部11は、ST30としてライト動作を正常に終了したか否か、すなわち所望するRFID3にデータを正常に書き込めたか否かを判断する(結果判断手段)。
【0041】
ここで、所望するRFID3を検出し、そのRFID3のメモリに、ホストコンピュータ2から受信したデータを非接触で書き込み終えたならば、正常終了と判定する。そしてその場合には、制御部11は、ST31としてチャネルカウンタメモリ43の現時点のカウント値nを次回の初期周波数kとして初期周波数メモリ42に上書きして、今回のコマンド受信処理を正常終了する。
【0042】
これに対し、所望するRFID3にデータを正常に書き込めなかった場合には、制御部11は、ST32としてリトライカウンタメモリ45のカウント値yを“1”だけカウントアップする。そして、ST33としてカウント値yがリトライ回数設定値メモリ44に記憶されている設定値xを超えたか否かを判断する。
【0043】
ここで、カウント値yが設定値xを越えていない場合には、制御部11は、ST25に進み、チャネルカウンタメモリ43のカウント値nを“1”だけカウントアップする。このとき、ST26としてカウント値nがチャネル番号の最大値“9”を超えたか否かを判断し、越えた場合には、ST27としてカウント値nを“1”に戻す。しかる後、ST23に戻り、周波数設定テーブル41から周波数fnを取得してキャリアセンスを行う(チャネル切換手段)。
【0044】
こうして、キャリアセンスを行った結果、空チャネルの周波数fnを検出したならば(ST4のYES)、制御部11は、ST28としてその空チャネルの周波数fnを使用してライト動作を再開する(リトライ手段)。
【0045】
ST33にてカウント値yが設定値xに達したことを検知した場合には、制御部11は、今回のコマンド受信処理をエラー終了する。
【0046】
なお、ST30において、データを正常に書き込めなかった場合とは、RFID3がアンテナ20の交信領域外にあったり故障していたりしたために、RFID3からの応答信号を受信を検出できない場合がある。また、RFID3からの応答信号を受信し、RFID3がアンテナ20の交信領域内に存在することを検知できたが、このRFID3にデータを書き込むためのデータ通信手順の中でビット欠落エラーやビット化けエラーが発生したり、通信に時間を要して動作制限タイマのタイムアウトエラーとなってしまって、データを正常に書き込めなかった場合がある。
【0047】
このように、本実施の形態のRFIDシステムにおけるRFIDリーダ・ライタ1は、RFID3に対するリードコマンドまたはライトコマンドを受信した際にキャリアセンスを実行して、予め設定された周波数f1〜f9ののなかから空チャネルの周波数を検索する。そして、この空チャネルの周波数を使用して、所望するRFIDとの間でデータのリード動作またはライト動作を実行する。
【0048】
ここで、リード動作またはライト動作を正常に終了できなかった場合には、RFIDリーダ・ライタ1は、予め設定されているリトライ回数xの範囲内でリード動作またはライト動作を再度試みる。このとき、RFIDリーダ・ライタ1は、キャリアセンスを実行して空チャネルの周波数を検索し、この空チャネルの周波数を使用して、リトライを試みるようにしている。
【0049】
したがって、リード動作またはライト動作を正常に終了できなかった原因が、直前に使用した周波数と近い周波数を他のRFIDリーダ・ライタが使用していた場合に起こり得るノイズに起因していた場合には、リトライ時の周波数が変わるので、通信エラーを回避できる確率が極めて高くなる。その結果、良好な通信効率を得られるようになる。
【0050】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
なお、この実施の形態も、第1の実施の形態と同様のRFIDシステムのRFIDリーダ・ライタ1に本発明を適用した場合であり、ハードウェア構成は第1の実施の形態と同一なので、図1〜図3を用いて詳しい説明は省略する。
【0051】
この第2の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、RFIDリーダ・ライタ1における制御部11のリードコマンド及びライトコマンド受信時の処理手順の一部である。
【0052】
図6は、第2の実施の形態における制御部11のリードコマンド受信時の処理手順を示す流れ図であり、図3に示す第1の実施の形態の処理手順と共通する部分には同一の符号を付している。
【0053】
すなわち、この第2の実施の形態においては、ST10にて所望するRFID3からデータを正常に読み取れなかった場合に(ST10のNO)、ST41として読み取れなかった原因が通信上のエラーによるものか否かを判別する(エラー判別手段)。因みに、通信上のエラーとは、RFID3からの応答信号を受信し、RFID3がアンテナ20の交信領域内に存在することを検知できたが、このRFID3に記憶されているデータを読み取るためのデータ通信手順の中でビット欠落エラーやビット化けエラーが発生したり、通信に時間を要して動作制限タイマのタイムアウトエラーとなってしまって、データを正常に書き込めなかった場合である。
【0054】
通信上のエラーに起因する場合には、制御部11は、第1の実施の形態と同様に、リトライ処理を実行する。すなわち、リトライカウンタメモリ45のカウント値yを“1”だけカウントアップする。そして、カウント値yがリトライ回数設定値メモリ44の設定値xを超えていない場合には、チャネルカウンタメモリ43のカウント値nを“1”ずつカウントアップして、周波数fnによりキャリアセンスを実行する。そして、空チャネルを検出したならば、その空きチャネルの周波数fnを使用してリード動作を再開する。
【0055】
これに対し、例えばRFID3を検出できない等というように通信上のエラーに起因しない場合には、制御部11は、上記リトライ処理を実行することなく、今回のコマンド受信処理をエラー終了する。
【0056】
また、図7は、第2の実施の形態における制御部11のライトコマンド受信時の処理手順を示す流れ図であり、図4に示す第1の実施の形態の処理手順と共通する部分には同一の符号を付している。
【0057】
すなわち、この第2の実施の形態においては、ST30にて所望するRFID3にデータを正常に書き込めなかった場合に(ST30のNO)、ST51として書き込めなかった原因が通信上のエラーによるものか否かを判別する(エラー判別手段)。因みに、通信上のエラーとは、RFID3からの応答信号を受信し、RFID3がアンテナ20の交信領域内に存在することを検知できたが、このRFID3にデータを書き込むためのデータ通信手順の中でビット欠落エラーやビット化けエラーが発生したり、通信に時間を要して動作制限タイマのタイムアウトエラーとなってしまって、データを正常に書き込めなかった場合である。
【0058】
通信上のエラーに起因する場合には、制御部11は、第1の実施の形態と同様に、リトライ処理を実行する。すなわち、リトライカウンタメモリ45のカウント値yを“1”だけカウントアップする。そして、カウント値yがリトライ回数設定値メモリ44の設定値xを超えていない場合には、チャネルカウンタメモリ43のカウント値nを“1”ずつカウントアップして、周波数fnによりキャリアセンスを実行する。そして、空チャネルを検出したならば、その空きチャネルの周波数fnを使用してリード動作を再開する。
【0059】
これに対し、例えばRFID3を検出できない等というように通信上のエラーに起因しない場合には、制御部11は、上記リトライ処理を実行することなく、今回のコマンド受信処理をエラー終了する。
【0060】
このように構成された第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様な作用効果を奏し得る。しかも、この第2の実施の形態においては、読取エラーまたは書込みエラーとなった原因が通信上のエラーによるものか否かを判断し、通信上のエラーによる場合のみリトライ処理を実行し、その他のエラーによる場合にリトライ処理を実行することなくエラー終了としている。
【0061】
一般に、通信手順の中でビット欠落エラーやビット化けエラーが発生したり、通信に時間を要して動作制限タイマのタイムアウトエラーとなってしまって、データを読み込めなかったり書き込めなかったりした場合には、その原因として、近い周波数を他のRFIDリーダ・ライタが使用していた場合のノイズが考えられる。そこで、リトライ時に通信周波数を他の周波数に切り換えることによって、通信エラーを回避できる確率が高くなる。これに対し、RFID3を検出できなかったことに起因するエラーのような場合は、リトライを行ってもエラーを回避することはできない。
【0062】
本実施の形態によれば、リトライを行ってもエラーを回避できない場合にはリトライを行わないので、無駄なリトライに要する時間と処理負荷の削減を図ることができる。
【0063】
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0064】
例えば前記各実施の形態では、952〜954MHzのUHF帯域(1〜9チャネル)の電波を用いてRFID3とデータ通信を行うRFIDリーダ・ライタ1に本発明を適用した場合を示したが、本発明を適用できる無線通信装置はこれらに限定されるものではなく、例えば952〜955MHzのUHF帯域(1〜14チャネル)を使用するRFIDリーダ・ライタにも本発明を同様に適用できるものである。
【0065】
また、前記各実施の形態では、リードコマンド受信時とライトコマンド受信時に本発明に係る周波数切換を伴なうリトライ機能を実施したが、例えばリードコマンド受信時のみあるいはライトコマンド受信時のみに周波数切換を伴なうリトライ機能を実施し、他方のコマンド受信時には周波数切換を伴わないリトライ処理を実施するようにしてもよい。
【0066】
また、前記各実施の形態では、RFID3を自らデータを送信する機能のないパッシブ型として説明したが、自らデータを送信する機能を備えたアクティブ型の無線通信媒体に対する無線通信装置に本発明を適用してもよいものである。
【0067】
この他、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施の形態であるRFIDシステムの概略図。
【図2】同実施の形態におけるRFIDリーダ・ライタの要部構成を示すブロック図。
【図3】同実施の形態におけるRFIDリーダ・ライタの記憶部に形成される主要なメモリエリアを示す模式図。
【図4】同実施の形態におけるRFIDリーダ・ライタの制御部が実行するリードコマンド受信処理の要部手順を示す流れ図。
【図5】同実施の形態におけるRFIDリーダ・ライタの制御部が実行するライトコマンド受信処理の要部手順を示す流れ図。
【図6】本発明の第2の実施の形態におけるRFIDリーダ・ライタの制御部が実行するリードコマンド受信処理の要部手順を示す流れ図。
【図7】同第2の実施の形態におけるRFIDリーダ・ライタの制御部が実行するライトコマンド受信処理の要部手順を示す流れ図。
【符号の説明】
【0069】
1(1-1,1-2,1-3)…RFIDリーダ・ライタ、2…ホストコンピュータ、3(3-1〜3-6)…RFID、11…制御部、12…記憶部、13…通信部、14…タイマ部、15…無線回路部、16…キャリアセンス部、20…アンテナ、41…周波数設定テーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線チャネルの中のいずれかのチャネルを媒体通信用チャネルとして選択し、この媒体通信用チャネルを使用して無線通信媒体との間でデータ通信を行う無線通信装置において、
前記無線通信媒体とのデータ通信を正常に終えたか否かを判断する結果判断手段と、この結果判断手段によりデータ通信を正常に終えなかったと判断すると、前記媒体通信用チャネルを前記複数の無線チャネルの中の別のチャネルに切り換えるチャネル切換手段と、を具備したことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記チャネル切換手段により切り換えられたチャネルを使用して、データ通信を正常に終えなかった前記無線通信媒体との無線通信を再度試みるリトライ手段、
をさらに具備したことを特徴とすることを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記チャネル切換手段は、前記無線通信媒体からの応答信号を受信したが、当該無線通信媒体とのデータ通信手順の中でエラーが発生した場合に、前記媒体通信用チャネルを前記複数の無線チャネルの中の別のチャネルに切り換えることを特徴とする請求項1または2記載の無線通信装置。
【請求項4】
複数の無線チャネルの中のいずれかのチャネルを媒体通信用チャネルとして選択し、この媒体通信用チャネルを使用して無線通信媒体との間で無線通信を行うことにより、当該無線通信媒体からデータを非接触で読取る無線通信装置において、
前記無線通信媒体からデータを読み取れたか否かを判断する結果判断手段と、この結果判断手段によりデータを読み取れなかったと判断すると、前記媒体通信用チャネルを前記複数の無線チャネルの中の別のチャネルに切り換えるチャネル切換手段と、を具備したことを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
前記チャネル切換手段により切り換えられたチャネルを使用して、データを読み取れなかった前記無線通信媒体との無線通信を再度試みるリトライ手段、
をさらに具備したことを特徴とすることを特徴とする請求項4記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記チャネル切換手段は、前記無線通信媒体からの応答信号を受信したが、当該無線通信媒体に記憶されているデータを読み取るための通信手順の中でエラーが発生した場合に、前記媒体通信用チャネルを前記複数の無線チャネルの中の別のチャネルに切り換えることを特徴とする請求項4または5記載の無線通信装置。
【請求項7】
複数の無線チャネルの中のいずれかのチャネルを媒体通信用チャネルとして選択し、この媒体通信用チャネルを使用して無線通信媒体との間で無線通信を行うことにより、当該無線通信媒体にデータを非接触で書込む無線通信装置において、
前記無線通信媒体に対してデータを書込めたか否かを判断する結果判断手段と、この結果判断手段によりデータを書込めなかったと判断すると、前記媒体通信用チャネルを前記複数の無線チャネルの中の別のチャネルに切り換えるチャネル切換手段と、を具備したことを特徴とする無線通信装置。
【請求項8】
前記チャネル切換手段により切り換えられたチャネルを使用して、データを書込めなかった前記無線通信媒体との無線通信を再度試みるリトライ手段、
をさらに具備したことを特徴とすることを特徴とする請求項7記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記チャネル切換手段は、前記無線通信媒体からの応答信号を受信したが、当該無線通信媒体にデータを書き込むための通信手順の中でエラーが発生した場合に、前記媒体通信用チャネルを前記複数の無線チャネルの中の別のチャネルに切り換えることを特徴とする請求項7または8記載の無線通信装置。
【請求項10】
複数の無線チャネルの中のいずれかのチャネルを媒体通信用チャネルとして選択し、この媒体通信用チャネルを使用して無線通信媒体との間でデータ通信を行う無線通信方法であって、
前記無線通信媒体とのデータ通信を正常に終えたか否かを判断し、正常に終えなかった場合に、前記媒体通信用チャネルを前記複数の無線チャネルの中の別のチャネルに切り換えて当該無線通信媒体との無線通信を再度試みることを特徴とする無線通信方法。
【請求項11】
前記無線通信媒体からの応答信号を受信したが、当該無線通信媒体とのデータ通信手順の中でエラーが発生した場合に、前記媒体通信用チャネルを前記複数の無線チャネルの中の別のチャネルに切り換えることを特徴とする請求項10記載の無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−270978(P2008−270978A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108454(P2007−108454)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】