説明

無線通信装置

【課題】 無線タグにパスワードが設定されたか否かを容易に判別でき、確認作業に要する手間を大幅に削減することが可能な無線通信装置を提供すること。
【解決手段】 タグデータを記憶したメモリを有する無線タグとアンテナを介して無線通信を行う無線通信手段を備えた無線通信装置において、無線通信手段により無線タグにタグデータの応答を要求し、この要求に対して無線タグが応答したデータに基づいて、当該データを応答した無線タグにタグデータの応答を制限するパスワードが設定されているか否かを判断する。そして、無線タグが応答したデータが、パスワードの指定がされていないことに応じて無線タグが応答する所定のエラーデータである場合には、無線タグにパスワードが設定されていると判断し、その旨を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を介して非接触で無線タグと交信を行うRFIDリーダなどの無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICチップを備えた無線タグ(ICタグ,RFIDタグ,電子タグ,トランスポンダなどとも称される)と、RFID(Radio Frequency Identification)リーダなどの無線通信装置とを備え、双方がそれぞれアンテナを介してデータの交信を行うことにより、無線通信装置が無線タグの情報を非接触で読み取ることができるRFIDシステムが普及している。
【0003】
このRFIDシステムにおいて、無線通信装置は、本体に接続されたアンテナから無線タグ問合せ用の高周波信号を電波として放射しており、無線タグは、内蔵アンテナで無線通信装置からの電波を受信すると、ICチップで記憶している情報で高周波信号の反射量を変化させてバックスキャッタ変調を行うものとなっている。そして、無線通信装置は、上記アンテナで無線タグからのバックスキャッタ変調波を受信すると、それを復調することで無線タグが有する情報を取得することができる。
【0004】
このようなRFIDシステムは、無線タグを無線通信装置から数cm乃至数十cm離しても通信可能であるため、物流管理システムや施設の入退室管理システム等の様々な分野に利用されており、無線タグに記憶された情報についてのセキュリティ性を向上させる必要性が生じていた。かかる問題に対処するため、無線通信装置が無線タグを読み取る際にパスワードなどの読み取り条件を指定し、無線タグが読み取り条件の合致を判断して選択的にタグデータ返信を実行するような手段を講じた無線通信システムなども提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1に記載された無線ICタグは、そのメモリにデータ読み出しの可否を設定するためのセキュリティバンクを備え、当該セキュリティバンクにデータ読み出し可能である旨が設定されている場合には無線通信装置からのデータ読み出しに対して正常に応答するが、データ読み出しが不可である旨が設定されている場合にはエラーデータなどを応答するように構成されている。
【特許文献1】特開2008−59012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような無線タグへのパスワードの設定は、無線タグが無線タグ発行装置から発行される際に、当該装置が備える無線通信手段による無線通信を通じて行われる。このとき、正常にパスワードが設定されている場合には、パスワードを指定しない限りタグデータを読み取ることはできないが、パスワードが設定されていない状態のままである場合などには、パスワードを指定しなくてもタグデータを読み取ることができてしまう。このことから、無線タグ発行装置から発行された無線タグに正常にパスワードが設定されたかどうかの確認方法として、パスワードの指定を伴わずに無線タグの読み取りを実行し、正常なタグデータを読み取ることができない場合にパスワードが有効に設定されていると判定し、正常なタグデータを読み取ることができた場合にパスワードが有効に設定されていないと判定する方法を採用していた。
【0007】
しかしながら、無線タグから正常にタグデータを読み取ることができない場合には、他の電子機器との電波干渉が生じている場合などパスワード指定の有無以外の要因に起因する可能性も考えられる。そのため、上記確認方法のみでは、無線タグにパスワードが正常に設定されたかどうかを正確に判別することはできない。
【0008】
本発明は、上記のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、無線タグにパスワードが設定されたかどうかを容易に判別でき、確認作業に要する手間を大幅に削減することが可能な無線通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、タグデータを記憶したメモリを有する無線タグとアンテナを介して無線通信を行う無線通信手段を備えた無線通信装置において、前記無線通信手段により無線タグにタグデータの応答を要求するタグデータ要求手段と、このタグデータ要求手段による要求に対して無線タグが応答したデータに基づいて、当該データを応答した無線タグにタグデータの応答を制限するパスワードが設定されているか否かを判断するパスワード設定判断手段と、このパスワード設定判断手段により前記無線タグに前記パスワードが設定されていると判断されたとき、その旨を報知するパスワード設定報知手段とを備えてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
かかる手段を講じた本発明によれば、無線タグにパスワードが設定されたか否かを容易に判別でき、確認作業に要する手間を大幅に削減することが可能な無線通信装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための第1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る無線通信装置であるRFIDリーダ1を備えたRFIDシステムの構成図である。RFIDリーダ1は、ホスト機器2とLAN(Local Area Network)ケーブルやRS232Cなどのインターフェイスケーブル5を介して接続され、アンテナ3がアンテナケーブル6を介して接続されている。ホスト機器2は、パーソナルコンピュータやPOS(Point Of Sales)端末などの情報処理装置であり、RFIDリーダ1に対して無線タグ8の読み取り開始、読み取り停止および読み取ったデータの送信などを要求する。アンテナ3は、RFIDリーダ1からアンテナケーブル6を介して送信される高周波信号に応じた電波を発信し、当該電波に対して無線タグ8から応答される電波を受信して高周波信号に変換し、当該高周波信号をRFIDリーダ1に送信する。
【0012】
無線タグ8は、EPC(Electric Product Code)タイプの無線タグであり、ホスト機器2とLANケーブルやRS232Cなどのインターフェイスケーブル7を介して接続された無線タグ発行装置4によって発行される。EPCとは、グローバルで完全にユニークになる物品管理用のコードであり、近年の無線タグの国際標準化を背景として盛んに採用されている。
【0013】
上記無線タグ発行装置4は、ホスト機器2から受信した所定のタグデータを内部に収納したデータの書き込みがされていない無線タグ8に書き込む無線通信手段や、発行される無線タグ8の表面に形成された印字ラベルに所定の情報を印字する印字手段を備えている。
【0014】
次に、上記RFIDリーダ1の構成について説明する。図2は、RFIDリーダ1の制御回路を示す模式図である。RFIDリーダ1は、CPU(Central Processing Unit)を主体とした制御部10、動作プログラムなどの固定的データを記憶したROM(Read Only Memory)11、処理場面に応じて各種作業用のメモリエリアを形成するためのRAM(Random Access Memory)12、通信部13、および無線通信部20を備えている。上記通信部13は、インターフェイスケーブル5を接続するためのケーブル端子14を接続し、ホスト機器2との通信を制御する。
【0015】
上記無線通信部20は、アンテナケーブル6を接続するためのケーブル端子15を接続し、PLL(Phase Locked Loop)回路21、送信部22、サーキュレータ23、受信部24及びRSSI回路(Receive Signal Strength Indicator)25で構成されている。PLL回路21は、高周波の正弦波信号を発生する。送信部22は、制御部10から送られてきたデジタルデータを変調し、この変調信号とPLL回路21で作られた高周波信号とを足し合わせた信号を増幅してサーキュレータ23に出力する。送信部22側から信号が入力されたとき、サーキュレータ23は、この信号をケーブル端子15とアンテナケーブル6とを介してアンテナ3に出力し、アンテナ3は、入力された信号に応じて電波を発信する。
【0016】
このようにしてアンテナ3から発信された電波に対して無線タグ8が応答電波を応答したときには、上述のように当該応答電波がアンテナ3で受信される。アンテナ3で受信された応答電波は、高周波信号に変換されてアンテナケーブル6とケーブル端子15とを介してサーキュレータ23に入力され、受信部24に出力される。受信部24は、入力された高周波信号を増幅した後、この増幅された高周波信号とPLL回路21の高周波信号とを組み合わせてベースバンド信号に変換し、このベースバンド信号を復調してデジタルデータに変換し、制御部10に出力する。
【0017】
また、受信部24は、復調した信号をRSSI回路25に出力し、RSSI回路25は、入力された信号のレベルを示すアナログ信号を生成する。このアナログ信号からはアンテナ3が受信した応答電波の電波強度が測定可能である。
【0018】
続いて、上記無線タグ8について説明する。図3は、無線タグ8の要部構成を示す模式図である。無線タグ8は、CPUを主体とした制御部30、タグデータを記憶したメモリ31、無線通信部32およびアンテナ33を備えている。無線通信部32およびアンテナ33は、RFIDリーダ1が備える無線通信部20およびアンテナ3と同様の機能を有する。すなわち、無線通信部32は、制御部30から入力されたデジタルデータを高周波信号に変調してアンテナ33に出力し、アンテナ33が入力された高周波信号に基づく電波を発信する。また、アンテナ33が受信した電波を高周波信号に変換して無線通信部32に出力し、無線通信部32が入力された高周波信号をデジタルデータに復調して制御部30に出力する。
【0019】
上記メモリ31は、図4に示したメモリ構造を有する。すなわち、ID領域31a、ユーザ領域31bおよびパスワード領域31cに区分された記憶領域を備えている。ただし、無線タグ8はEPCタイプの無線タグであるため、ID領域31aとユーザ領域31bには、無線タグ8のタグデータである完全にユニークな同一のEPCが記憶される。パスワード領域31cには、メモリ31へのアクセスを制限するためのパスワードが設定される。
【0020】
パスワード領域31cへのパスワードの設定について説明する。ホスト機器2は、無線タグを発行する際に、無線タグの発行コマンドや書き込むべきEPCとともに任意のパスワードを無線タグ発行装置4に送信する。このパスワードを受信した無線タグ発行装置4は、上記無線通信手段によって内部に収納した無線タグ8と無線通信を行い、受信したパスワードをパスワード領域31cに書き込む。かくして、パスワード領域31cに任意のパスワードが設定された無線タグ8が発行される。なお、パスワードを設定することなく無線タグ8を発行することも可能である。パスワード領域31cにパスワードが設定されていない場合には、メモリへのアクセス制限は課されない。
【0021】
続いて、RFIDリーダ1がアンテナ3から発信したタグデータの応答を要求する電波を無線タグ8が受信した際に制御部30が実行する処理について、図5を用いて説明する。
先ず、制御部30は、ST101としてパスワード領域31cにパスワードが設定されているか否かを判断する。パスワード領域31cにパスワードが設定されていると判断したときには(ST101のYes)、ST102としてパスワードを受信したか否かを判断する。RFIDリーダ1がパスワードを指定した電波をアンテナ3から発信しており、これを受信している場合には、パスワードを受信したと判断し(ST102のYes)、ST103として受信したパスワードがパスワード領域31cに設定されたパスワードと一致するか否かを判断する。
【0022】
受信したパスワードがパスワード領域31cに設定されたパスワードと一致すると判断したとき(ST103のYes)、或いはST101の処理にてパスワード領域31cにパスワードが設定されていないと判断したとき(ST101のNo)には、ST104としてID領域31aに記憶されたEPCについてのデジタルデータを無線通信部32に出力して当該処理を終了する。
【0023】
一方、受信したパスワードがパスワード領域31cに設定されたパスワードと一致しないと判断したとき(ST103のNo)、或いはST102の処理にてパスワードを受信していないと判断したとき(ST102のNo)には、ST105として当該EPCの有効なコード長を全て“0x0”(“0x”は、データが16進数であることを意味する)としたエラーデータ“0x0・・・”についてのデジタルデータを無線通信部32に出力して当該処理を終了する。
【0024】
ST104またはST105の処理にて出力されたデジタルデータは、上述の手順にて無線通信部32で変調された後、アンテナ33から電波として発信される。なお、エラーデータ“0x0・・・”を受信したRFIDリーダ1では、当該データの受信についてCRCエラーであるとの判定がなされることとなる。
【0025】
次に、上記のような構成のRFIDリーダ1が実行する無線タグ読み取り処理について説明する。図6は、無線タグ読み取り処理にて制御部10が実行する処理の流れ図である。この処理は、ホスト機器2から無線タグの読み取り開始コマンドを受信したことをトリガとして、ROM11に記憶された動作プログラムに基づいて実行される。
【0026】
当該無線タグ読み取り処理において、先ず制御部10は、ST201として無線タグ8にEPCの応答を要求する(タグデータ要求手段)。具体的には、無線タグ8に対してEPCの応答を要求するための所定のデジタルデータを無線通信部20に出力する。このとき、無線通信部20は、図2の説明にて上述した手順により入力されたデジタルデータを変調した信号をアンテナ3に出力する。そして、アンテナ3が、入力された信号に応じて電波を発信する。
【0027】
かくしてアンテナ3に無線タグ8にEPCの応答を要求するための電波を発信せしめた後、制御部10は、ST202として無線タグ8からEPCを受信したか否かを判断する。この判断は、無線通信部20から出力されるデジタルデータに基づいて行われる。そして、無線通信部20からデジタルデータが出力されない場合や、出力されたデジタルデータが無線タグ8の応答したEPCではない場合には、EPCを受信していないと判断し(ST202のNo)、ST201の処理に戻って再び無線タグ8の読み取りを実行する。
【0028】
一方、ST202の処理において、無線タグ8から当該タグに記憶されたEPCを受信したと判断したときには(ST202のYes)、ST203として受信したEPCを受信データXとしてRAM12に記憶する。しかる後、ST204として無線タグ8から受信したデータが正常なデータであるか否かを判断する(読取判断手段)。CRCエラーを含む無線通信に関するエラーが何ら生じておらず、無線タグ8から正常なデータを受信したと判断したときには(ST204のYes)、ST205としてパスワードの指定を伴わずに無線タグ8からEPCを受信したことを示す識別データ“d:”を受信データXに付したデータ“d:X”をホスト機器2に送信する(第1の報知手段)。
【0029】
一方、ST204の処理において、無線タグ8から正常なデータを受信していないと判断したときには(ST204のNo)、ST206としてその原因がCRCエラーであるか否かを判断する。このとき、原因がCRCエラーでないと判断したときには(ST206のNo)、受信データXを破棄して必要に応じたエラー対処処理を実行し、ST201の処理に戻って再度無線タグ8にEPCの応答を要求する。
【0030】
一方、ST204の処理において無線タグ8から正常なデータを受信していないと判断した原因がCRCエラーであると判断したときには(ST206のYes)、ST207として受信データXの値が、上記ST105の処理にて無線タグ8が応答するエラーデータ“0x0・・・”であるか否かを判断する。このとき、受信データXの値がエラーデータ“0x0・・・”であると判断したときには(ST207のYes)、ST208として現在読み取り対象となっている無線タグ8は、パスワード領域31cにパスワードが設定されている無線タグである旨をホスト機器2に通知する(パスワード設定報知手段)。このように本実施形態において、制御部10が実行するST206の処理およびST207の処理は、受信データXがCRCエラーを伴いかつエラーデータ“0x0・・・”である場合など所定の異常データであるか否かに基づいて、無線タグ8にタグデータの応答を制限するパスワードが設定されているか否かを判断するパスワード設定判断手段を構成する。
【0031】
ST208の処理の後、或いはST207の処理にて受信データXの値がエラーデータ“0x0・・・”でないと判断したときには、ST201の処理に戻って再度無線タグ8にEPCの応答を要求する。
【0032】
このように、本実施形態におけるRFIDリーダ1は、パスワードを指定せずに無線タグ8にEPCの応答を要求した結果、無線タグ8から正常なEPCを受信しなかったときには、受信したデータがパスワードの指定がされていないときに無線タグ8が応答するエラーデータであるか否かを判断し、該当する場合にはその旨をホスト機器2に通知する。この通知を見たホスト機器2のオペレータは、無線タグ8にパスワードが設定されているかどうかを一見して判別することができるので、パスワード設定の確認作業に要する手間を大幅に削減することができる。
【0033】
次に、本発明を実施するための第2の実施形態について、図7を用いて説明する。
本実施形態においては、図7に図示するように、図6の流れ図を用いて説明した無線タグの読み取り処理におけるST208の処理に代えて、ST208a〜ST208eの処理を制御部10が実行する。なお、その他の部分は前実施形態と同一であるので、同一の符号を付して説明を省略する。
【0034】
上記ST207の処理において、受信データXの値がエラーデータ“0x0・・・”であると判断したときには(ST207のYes)、制御部10は、ST208aとして所定のパスワードを指定して無線タグ8にEPCの応答を要求する(パスワード指定要求手段)。このとき指定されるパスワードは、ホスト機器2が予めRFIDリーダ1に送信し、これを受信したRFIDリーダ1がRAM12に記憶したものである。なお、ホスト機器2がRFIDリーダ1に送信するパスワードは、無線タグ発行装置4に無線タグ8を発行させた際にパスワード領域31cに設定させたものと同一のパスワードである。
【0035】
このようにパスワードを指定して無線タグ8にEPCの応答を要求した後、制御部10は、ST208bとして無線タグ8から応答されるEPCを受信したか否かを判断する。パスワードが指定された電波を無線タグ8が受信した場合、無線タグ8では、上記ST103の処理にて当該パスワードがパスワード領域31cに設定されたパスワードと一致するか否かが判断され、一致している場合には、ID領域31aに記憶されたEPCが応答される。このようにして無線タグ8から応答されるEPCを受信したと判断したときには(ST208bのYes)、制御部10は、ST208cとして受信したEPCを受信データYとしてRAM12に記憶する。
【0036】
しかる後、ST208dとして無線タグ8から受信したデータが正常なデータであるか否かを判断する。CRCエラーを含む無線通信に関するエラーが何ら生じておらず、無線タグ8から受信したデータが正常なデータであると判断したときには(ST208dのYes)、ST208eとしてパスワードの指定を伴って無線タグ8からEPCを受信したことを示す識別データ“o:”を受信データYに付したデータ“o:Y”をホスト機器2に送信する(報知手段または第2の報知手段)。
【0037】
一方、ST208dの処理において、無線タグ8から受信したデータが正常なデータでないと判断したときには(ST208dのNo)、ホスト機器2への受信データ送信を行わずにST201の処理に戻る。
【0038】
このように、本実施形態におけるRFIDリーダ1は、パスワードを指定せずに無線タグ8にEPCの応答を要求した結果、無線タグ8から正常なデータを受信しなかったときには、受信したデータがパスワードの指定がされていないときに無線タグ8が応答するデータであるか否かを判断し、該当する場合にはパスワードを指定して無線タグ8にEPCの応答を要求する。そして、パスワードを指定した要求に対して無線タグ8が応答したデータとパスワードの指定を伴わない要求に対して無線タグ8が応答したデータとを区別できるようにしてホスト機器2にデータを送信する。そのため、ホスト機器2のオペレータは、無線タグ8にパスワードが設定されているかどうかを一見して判別することができるだけでなく、無線タグ発行装置4により正常に無線タグ8にEPCが書き込まれたかどうかについても判別することができる。
【0039】
なお、この発明は前記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階においては、その要旨を逸脱しない範囲内にて各構成要素を適宜変形して具体化することができる。
【0040】
例えば、上記各実施形態においては、パスワードが正常に指定されない場合には、無線タグ8がエラーデータ“0x0・・・”を応答する(ST105)としたがこれに限定されず、無線タグ8のメモリに記憶されたEPCの有効なコード長を全て“0xF”としたデータ“0xF・・・”や、特定のパターンとしたデータ“0xF0F0・・・”などの他のデータであってもよい。無線タグ8が応答するエラーデータが“0x0・・・”でない場合には、図7に示した流れ図中のST207の判断処理を当該エラーデータに合わせて変更すればよい。
【0041】
また、上記各実施形態においては、RFIDリーダ1によりEPCタイプの無線タグ8からデータを読み出す場合について説明したがこれに限定されず、ID領域に各無線タグ固有のIDが記憶され、ユーザ領域にユーザが所望するデータが記憶された無線タグなど他の形式の無線タグを読み取るRFIDリーダについても同様に本発明を適用することができることはいうまでもない。このようにEPCタイプ以外の無線タグを読み取る場合においても、無線タグが応答するエラーデータに応じて図7に示した流れ図中のST207の判断処理を変更すればよい。
【0042】
また、第2の実施形態においては、パスワードを指定しないEPCの応答要求に対して無線タグ8がEPCを応答したときには“d:”を付して当該EPCをホスト機器2に送信するのに対し、パスワードを指定したEPCの応答要求に対して無線タグ8がEPCを応答したときには“o:”を付して当該EPCをホスト機器2に送信することで無線タグ8からデータを読み取った際のパスワード指定の有無を識別できるようにしたが、パスワード指定の有無についてデータを識別できるようにする方法はこれに限定されない。例えば、パスワード指定の有無にかかわらず無線タグ8が応答したデータをそのままホスト機器2に送信し、パスワード指定を伴う場合にはその旨を通知するようにしてもよいし、逆にパスワード指定を伴わない場合にのみその旨を通知するようにしてもよい。
【0043】
この他、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全体構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるRFIDリーダを備えたRFIDシステムの構成図。
【図2】同実施形態におけるRFIDリーダの制御回路を示す模式図。
【図3】同実施形態における無線タグの要部構成を示す模式図。
【図4】同実施形態における無線タグが備えるメモリの構造を示す図。
【図5】同実施形態における無線タグの制御部が実行する処理の流れ図。
【図6】同実施形態におけるRFIDリーダの制御部が実行する処理の流れ図。
【図7】本発明の第2の実施形態におけるRFIDリーダの制御部が実行する処理の流れ図。
【符号の説明】
【0045】
1…RFIDリーダ、2…ホスト機器、3…アンテナ、4…無線タグ発行装置、8…無線タグ、10…制御部、20…無線通信部、31…メモリ、31a…ID領域、31b…ユーザ領域、31c…パスワード領域、32…無線通信部、33…アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タグデータを記憶したメモリを有する無線タグとアンテナを介して無線通信を行う無線通信手段を備えた無線通信装置において、
前記無線通信手段により無線タグにタグデータの応答を要求するタグデータ要求手段と、
このタグデータ要求手段による要求に対して無線タグが応答したデータに基づいて、当該データを応答した無線タグにタグデータの応答を制限するパスワードが設定されているか否かを判断するパスワード設定判断手段と、
このパスワード設定判断手段により前記無線タグに前記パスワードが設定されていると判断されたとき、その旨を報知するパスワード設定報知手段とを備えてなることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
タグデータを記憶したメモリを有する無線タグとアンテナを介して無線通信を行う無線通信手段を備えた無線通信装置において、
前記無線通信手段により無線タグにタグデータの応答を要求するタグデータ要求手段と、
このタグデータ要求手段による要求に対して無線タグが応答したデータに基づいて、当該データを応答した無線タグにタグデータの応答を制限するパスワードが設定されているか否かを判断するパスワード設定判断手段と、
このパスワード設定判断手段により前記無線タグに前記パスワードが設定されていると判断されたとき、前記無線通信手段により所定のパスワードを指定して前記無線タグにタグデータの応答を要求するパスワード指定要求手段と、
このパスワード指定要求手段による要求に対して前記無線タグが応答したデータを報知する報知手段とを備えてなることを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
タグデータを記憶したメモリを有する無線タグとアンテナを介して無線通信を行う無線通信手段を備えた無線通信装置において、
前記無線通信手段により無線タグにタグデータの応答を要求するタグデータ要求手段と、
このタグデータ要求手段による要求に対して無線タグが応答したデータが正常なタグデータであるか否かを判断する読取判断手段と、
この読取判断手段により無線タグが応答したデータが正常なタグデータであると判断されたとき、当該無線タグが応答したデータを報知する第1の報知手段と、
前記読取判断手段により無線タグが応答したデータが正常なタグデータでないと判断されたとき、当該無線タグが応答したデータに基づいて、当該無線タグにタグデータの応答を制限するパスワードが設定されているか否かを判断するパスワード設定判断手段と、
このパスワード設定判断手段により前記無線タグに前記パスワードが設定されていると判断されたとき、前記無線通信手段により所定のパスワードを指定して前記無線タグにタグデータの応答を要求するパスワード指定要求手段と、
このパスワード指定要求手段による要求に対して前記無線タグが応答したデータを前記第1の報知手段により報知されるデータと識別できるような形式で報知する第2の報知手段とを備えてなることを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
前記パスワード設定判断手段は、前記タグデータ要求手段による要求に対して無線タグが応答したデータが、前記パスワードの指定がされていないことに応じて無線タグが応答する所定のエラーデータである場合に当該データを応答した無線タグに前記パスワードが設定されていると判断することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1に記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−67123(P2010−67123A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234403(P2008−234403)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】