説明

無線通信装置

【課題】 無線通信装置の高周波結合器の結合用電極を対向させなくても無線通信を行なえるようにし、無線通信を行なう際の送受信装置の配置に柔軟性を持たせる。
【解決手段】 無線通信装置の高周波結合器の結合用電極と筐体との間に、誘電体あるいは磁性体あるいは導体の材料を配置する。該配置の仕方は、材料の複数面が無線通信装置の筐体の複数面に対向するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置に係り、特に、無線通信装置に高周波結合器を搭載する際の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の規格として、IEEE802.11のような無線LANや、Bluetooth(登録商標)等がある。これらは、アンテナから発生する放射電界を用いて、空間に電波を放射し、機器間で通信を行なう。
【0003】
一方、RFIDに代表されるように、放射電界を用いずに、静電界や誘導電界を用いる通信方式もある。これは、電界結合方式や電磁誘導方式を用いて低周波数の信号で通信を行なう通信方式である。この通信方式は、低周波数の信号で通信を行なうため、通信速度が遅く、大容量のデータ通信を行ない難い。
【0004】
従来のRFIDとは異なり、電界結合方式や電磁誘導方式、静電結合方式による誘導電界方式を用いて、高周波数かつ広帯域の信号を伝送し、大容量のデータ通信を可能にする近接無線通信システムや、該システムで用いる高周波結合器の構成も考えられている。(例えば、特許文献1、特許文献2)
また、電界結合する送受信機の結合用電極間の距離を拡張するために送受信機間の配置や通信装置のデザインが提案されている。(例えば、特許文献3、4、5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−154198
【特許文献2】特開2008−271606
【特許文献3】特開2008−271605
【特許文献4】特開2008−099235
【特許文献5】特開2008−099236
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の近接無線通信システムにおいては、平板で構成された結合用電極をもつ高周波結合器を介して、送受信機間でデータ通信を行なう。この場合、送信機と受信機が近距離に配置されていても、送信側・受信側各々の結合用電極を対向させ、結合用電極がある程度重ならないと、伝送特性が大きく劣化してしまう。また、例えば送信機に対向する受信機の結合用電極が複数の位置に想定される場合、送信機にはそれに対向するように複数の結合用電極を実装しなければならない。
【0007】
本発明は、送受信装置それぞれの結合用電極を対向させなくても無線通信を行なえるようにし、無線通信を行なう際の送受信装置の配置に柔軟性を持たせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の無線通信装置は、無線通信を行なうための高周波結合器の結合用電極と前記無線通信装置の筐体との間に、誘電体あるいは磁性体あるいは導体の材料を、該材料の複数面が前記無線通信装置の筐体の複数面に対向するように配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高周波結合器の結合用電極を対向させなくても静電界もしくは誘導電界を利用して通信でき、通信する際の装置配置の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1における近接無線通信システムの構成図
【図2】近接無線通信部の構成図
【図3】直方体の誘電体を装荷した結合用電極
【図4】実施例1における近接無線通信が可能なデジタルカメラの配置
【図5】実施例2における近接無線通信システムの構成図
【図6】直方体の誘電体を装荷した結合用電極
【図7】実施例1における近接無線通信が可能なデジタルカメラの配置
【図8】実施例3における近接無線通信システムの構成図
【図9】半球の誘電体を装荷した結合用電極
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例1)
以下、図面を示しながら本発明における実施形態の説明を行なう。本実施例においては、高周波結合器を介して、高周波かつ広帯域の通信信号を伝送する近接無線通信システムを想定している。なお、本発明の適用範囲は、高周波かつ広帯域の通信信号を伝送する近接無線通信システムの範囲内のみでなく、別の通信信号を伝送する近接無線通信システムにも適用可能である。
【0012】
図2は静電界若しくは誘導電界を利用した近接無線通信システムの構成例を示している。同図に示すように送受信機それぞれの高周波結合器の結合用電極を向かい合わせて配置すると、2つの電極が1つのコンデンサとして動作し、全体としてバンドパス・フィルタのように動作し、2つの高周波結合器の間で効率よく高周波信号を伝達することができる。向かい合わせた結合用電極がある程度重ならないと、伝送特性は劣化し、通信が行なえなくなってしまう。また、結合用電極間の距離が離れるほど伝送特性が劣化し、通信が行なえなくなってしまう。この結合用電極間に線状、板状、帯状の誘電体を装荷すると、表面波を誘電体の内部及び表面を通じて効率的に伝搬することが知られている。
【0013】
平面波が誘電率の大きな媒質から小さな媒質に入射する場合、入射角がある角度以上になると全反射する。また、境界面から外に振幅が指数関数的に減衰するエバネセント波は、エネルギーを放射しない。このような伝送路を表面波伝送路と呼ぶ。結合用電極間に線状、板状、帯状の誘電体が装荷されると、それらの誘電体は表面波伝送路として動作する。本発明では、上述の原理を利用して、伝送特性を良好に保ち、かつ、結合用電極同士を向き合わせなくても通信でき、高周波結合器を有する装置同士で通信する際の自由度を向上させる。
【0014】
図3は、高周波結合器103の結合用電極に直方体の誘電体105を装荷している。誘電体105は、結合用電極に接していても、その近傍に配置されていてもよいが、結合用電極からの距離が離れるほど伝送特性が劣化するため、結合用電極に接したほうがよい。ここで、近傍とは、後述する近接無線通信が実現できる範囲ないであるとする。このように直方体の誘電体を装荷することにより、相手方の結合用電極を、誘電体105の1〜5の何れの面に向かい合わせても結合用電極同士を向かい合わせたのと同等に伝送特性を良好に保ち通信できる。つまり、従来、結合用電極同士を向き合わせなければならなかったが、必ずしも結合用電極同士を向き合わせなくても通信でき、通信する際の自由度を向上させることができる。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信システムを示す図である。本実施例では、送信側のデジタルカメラ101と、受信側のデジタルカメラ102との間で近接無線通信を行なう場合を考える。デジタルカメラ101は高周波結合器103を具備し、デジタルカメラ102は高周波結合器104を具備している。デジタルカメラ101は、高周波結合器103と筐体との間に直方体の誘電体105を装荷し、誘電体105はデジタルカメラ101の筐体の複数面に接するように配置する。図1では、誘電体105は、筐体の背面、右側面、底面に接している例を示しているが、他の面に接する(近接)ようにしてもよい。なお、誘電体105は筐体に必ずしも接しなくてもよいが、筐体からの距離が離れるほど伝送特性が劣化するため、筐体に接するか近接したほうがよい。ここで、近接とは、近接無線通信を実現できる範囲ないであるとする。デジタルカメラ102が具備する高周波結合器104の結合用電極には誘電体は装荷しない。
【0016】
上述の構造をもったデジタルカメラ101とデジタルカメラ102の間で近接無線通信を行なう場合を考える。図1の例では、デジタルカメラ101の誘電体105は、筐体の背面、右側面、底面に接している。従って、デジタルカメラ102の結合用電極をデジタルカメラ101の背面、右側面、底面の誘電体105に対向する位置に配置すれば、電磁波の伝搬ロスを低減することができ、伝送特定の良好な通信を行なうことができる。図4の(a)〜(c)は、デジタルカメラ101とデジタルカメラ102とが通信できる形態例である。図4(a)では、デジタルカメラ102を後ろ向きにし、デジタルカメラ101の右側面(誘電体105の配置位置)とデジタルカメラ102の右側面(結合用電極の配置位置)とを対向させている。図4(b)では、デジタルカメラ101の背面(誘電体105の配置位置)とデジタルカメラ102の右側面(結合用電極の配置位置)とを対向させている。図4(c)では、デジタルカメラ102を立て、デジタルカメラ101の底面(誘電体105の配置位置)とデジタルカメラ102の右側面(結合用電極の配置位置)とを対向させている。
【0017】
以上のように、直方体の誘電体の複数面をデジタルカメラ101の筐体の複数面に接する又は近接するように結合用電極との間に装荷することにより、送信側と受信側の結合用電極が対向しなくても、近接無線通信を行なうことが可能となる。言い換えれば、直方体の誘電体の複数面をデジタルカメラ101の筐体の複数面に対向するように結合用電極との間に装荷することにより、送信側と受信側の結合用電極が対向しなくても、近接無線通信を行なうことが可能となる。従って、近接無線通信を行なう装置間の配置に柔軟性を持たせることができる。また、誘電体の形状は、直方体でなくてもよいが、誘電体を装荷する無線通信装置の筐体の形状に合わせた形状であれば、誘電体の複数面を筐体の複数面に接する又は近接するように装荷できる。つまり、筐体の形状が図1のように直方体であれば、誘電体を直方体にすれば誘電体の配置を容易にできる。
【0018】
(実施例2)
実施例1では、送信側のデジタルカメラ101の結合用電極103に誘電体を装荷したが、本実施例では、図5に示すように、送信側のデジタルカメラ101、受信側のデジタルカメラ102ともに、結合用電極に誘電体を装荷する。受信側のデジタルカメラ102には、高周波結合器104と筐体との間に直方体の誘電体106を装荷し、誘電体106はデジタルカメラ102の筐体の複数面に接するように配置する。図5では、誘電体106は、筐体の背面、右側面、底面に接している例を示しているが、他の面に接する(近接)ようにしてもよい。なお、誘電体106は筐体に必ずしも接しなくてもよいが、筐体からの距離が離れるほど伝送特性が劣化するため、筐体に接するか近接したほうがよい。
【0019】
この場合、図6(a)のように結合用電極が対向する場合は、誘電体を介して電磁波が結合用電極間を伝搬することになり、良好な通信特性を得られる。また、図6(b)のように、結合用電極が対向していないような状況でも、電磁波は誘電体を介して伝搬するため、同様に良好な通信特性を得られることになる。
【0020】
よって、送信側および受信側の結合用電極に直方体の誘電体を装荷することで、近接無線通信を行なうデジタルカメラ101とデジタルカメラ102は、例えば図7の(a)〜(f)のような配置が可能となる。図7(a)では、デジタルカメラ102を横向きにし、デジタルカメラ101の右側面(誘電体105の配置位置)とデジタルカメラ102の背面(誘電体106の配置位置)とを対向させている。図7(b)では、デジタルカメラ102を後ろ向きにし、デジタルカメラ101の背面(誘電体105の配置位置)とデジタルカメラ102の背面(誘電体106の配置位置)とを対向させている。図7(c)では、デジタルカメラ102を倒し、デジタルカメラ101の底面(誘電体105の配置位置)とデジタルカメラ102の背面(誘電体106の配置位置)とを対向させている。図7(d)では、デジタルカメラ102を倒し、デジタルカメラ101の右側面(誘電体105の配置位置)とデジタルカメラ102の底面(誘電体106の配置位置)とを対向させている。図7(e)では、デジタルカメラ102を倒し、デジタルカメラ101の背面(誘電体105の配置位置)とデジタルカメラ102の底面(誘電体106の配置位置)とを対向させている。図7(f)では、デジタルカメラ102を逆さにし、デジタルカメラ101の底面(誘電体105の配置位置)とデジタルカメラ102の底面(誘電体106の配置位置)とを対向させている。
【0021】
以上述べたように、送信側および受信側の結合用電極に直方体の誘電体を装荷することによって、送受信機の結合用電極を対向させなくても良好な通信特性を得ることができるようになる。また、送信側および受信側の結合用電極に方形の誘電体を装荷することによって、実施例1の場合よりもさらに機器の配置に柔軟性を持たせることができる。
【0022】
(実施例3)
実施例1、2では、近距離無線通信機能を搭載したデジタルカメラ間で近接無線通信を行なう場合を考えた。
【0023】
本実施例では、図8のように、送信側のデジタルカメラ101は、受信側のデジタルカメラ102と受信側のクレードル801のどちらとでも近接無線通信を行なう場合を考える。
【0024】
実施例1と同様に、送信側のデジタルカメラ101には、図1に示すような、直方体の誘電体が装荷された結合用電極を具備した高周波結合器103を、デジタルカメラ101の筐体の隅に配置する。デジタルカメラ102が具備する高周波結合器104の結合用電極には誘電体は装荷しない。クレードル801が具備する高周波結合器802の結合用電極には誘電体は装荷しない。
【0025】
デジタルカメラ101がデジタルカメラ102と近接無線通信を行なう場合は、実施例1と同様であり、近接無線通信時のデジタルカメラ101とデジタルカメラ102の配置に柔軟性を持たせることができる。
【0026】
次に、デジタルカメラ101をクレードル801の上に置き、デジタルカメラ101とクレードル801間で近接無線通信を行なう場合を考える。この場合、デジタルカメラ101とクレードル801の結合用電極は対向していないが、図3の1〜5の矢印で示すような様々な方向にクレードル801の結合用電極を配置しても良好な通信特性を得ることができる。
【0027】
上述のように、結合用電極に誘電体を装荷することによって、図3のように各方向からの接続が可能となるため、送信側と受信側の結合用電極が対向しなくても、近接無線通信が可能となる。従って、近接無線通信を行なう装置間の配置に柔軟性を持たせることができる。
【0028】
(実施例4)
本実施例では、結合用電極に装荷する誘電体の形状に関して述べる。実施例1および実施例2は、結合用電極に直方体の誘電体を装荷する場合について述べたが、電磁波は誘電体の表面に沿うか、もしくは誘電体中を伝搬するので、誘電体の形状は他の形状であってもよい。例えば、図9のように半球の誘電体を結合電極に装荷する場合を考える。この場合も、もう一方の結合用電極は対向する位置でなく、図9の矢印で示すような各方向に配置しても良好な通信特性が得られることになる。このように、結合用電極に装荷する誘電体の形状はどのようなものであっても、電磁波は誘電体の表面に沿うか、もしくは誘電体中を伝搬し、良好な通信特性が得られることになる。結合用電極に装荷する誘電体の形状は、高周波結合器を内蔵する装置の筐体の複数面に接する(近接)か又は曲面に沿って配置すれば、送信側と受信側の結合用電極が対向しなくても、複数方向から相手装置と近接無線通信を行なうことが可能となる。従って、近接無線通信を行なう装置間の配置に柔軟性、自由度を持たせることができる。
【0029】
なお、誘電体形状は複雑であっても上述のような特性は得られるため、例えば上述の誘電体を、無線機器筐体に置き換えても良い。また、上記各実施例においては、結合用電極に装荷する材料を誘電体としたが、これは磁性体、導体であってもよい。また、近接無線通信システムを想定して述べたが、本構造は無線電力伝送において、結合用電極を対向させなくても効率よく電力を伝送する手法としても適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
101 送信側のデジタルカメラ
102 受信側のデジタルカメラ
103 送信側のデジタルカメラが具備する高周波結合器
104 受信側のデジタルカメラが具備する高周波結合器
105 送信側のデジタルカメラが具備する誘電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信装置であって、
無線通信を行なうための高周波結合器の結合用電極と前記無線通信装置の筐体との間に、誘電体あるいは磁性体あるいは導体の材料を、該材料の複数面が前記無線通信装置の筐体の複数面に対向するように配置したことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記材料の複数面が前記無線通信装置の筐体の複数面に対向する配置とは、該材料の複数面が前記無線通信装置の筐体の複数面に接するか近接する配置であることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記材料は、直方体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−119872(P2011−119872A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273886(P2009−273886)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】