説明

無脱離粉体塗料架橋剤

本発明は、新規ブロックト無脱離ポリウレタン(PUR)架橋剤、その製造法、ならびにポリウレタンプラスチックの製造における出発成分、特に熱架橋性粉体塗料用の架橋剤としての、その使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ブロックト無脱離(elimination-free)ポリウレタン(PUR)架橋剤、その製造法、およびポリウレタンプラスチックの製造用の出発成分、特に熱架橋性粉体塗料用の架橋剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
1970年代にかなり発達したPUR粉体塗料は、大部分が有機ポリヒドロキシル化合物およびブロックトポリイソシアネートから成る(例えば、DE-A 2105777、EP-A 23023)。室温で固体である結合剤は、液体PUR表面塗料の流動特性をほぼ達成し、他の特性に関して同等である有益な被覆剤系である。これらの系の欠点は、熱架橋の間に、ブロッキング剤の少なくとも一部が放出され、環境汚染(VOC)および焼付炉における面倒な付着物の両方を生じることである。
【0003】
この欠点は、ブロッキング剤を含有しないウレトジオンに基づく粉体塗料架橋剤の開発によって克服された。ウレトジオン含有粉体塗料架橋剤の製造および使用は、例えば、DE-A 2420475またはEP-A 45998に開示されている。これらの架橋剤を使用した場合、遊離イソシアネート基へのウレトジオンの熱再開裂、次に、それらとヒドロキシ官能性結合剤との反応によって硬化が生じ、この方法は180℃より高い焼付温度を必要とする。従って、長年にわたり、ウレトジオン架橋剤は、耐熱性基剤にだけ使用することができた。さらに、それらの使用は、経済的にも好ましくなかった(必要とされる高焼付温度による高エネルギーコスト)。
【0004】
より低い温度での架橋を可能にする触媒ウレトジオン系も最近公表された。EP-A 803524は、150℃でのウレトジオン架橋用の触媒として、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)を開示している。しかし、実際に慣例的に使用されている粉体塗料において、この触媒は濃い黄変を生じる。
【0005】
WO 00/34355の開示によれば、触媒としての亜鉛アセチルアセトネートの存在下のウレトジオン粉体塗料は130℃で30分後に適切な架橋を既に達成しているが、それは、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)のような他の粉体塗料架橋剤を添加した場合だけである。
【0006】
無脱離粉体塗料架橋剤は、例えばDE-A 2144643およびDE-A 2328013に開示されている。これらは2,2'−(1,4−フェニレン)ビス(2−オキサゾリン)に基づく系であり、これは芳香族ジカルボン酸をエタノールアミンに反応させてオキサゾリンを生成することによって得られる。ポリエステルポリアミドは、ポリオールでの求核攻撃によって、この構造から得られる。そのような表面塗料系は、過焼付の際に極めて強く黄変し、従って、高品質用途に使用できないことは、重大な欠点であると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、より低い架橋温度を有し、ブロッキング剤を脱離することなく、硬化して光学的に完全な塗膜を形成することができるブロックトポリイソシアネートに基づく粉体塗料架橋剤はまだ知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来の粉体塗料結合剤と組み合わせて、160℃以下の低焼付温度で除去せずに硬化し、過焼付の際に黄変する傾向を有さない粉体塗料の配合を初めて可能にする固体ブロックトポリイソシアネートを、ポリイソシアネートとCH−酸性環式ケトン、および任意に、イソシアネー基に反応性の他の化合物とを反応させることによって、製造できることが見出された。
【0009】
本発明は、下記のような有機ポリイソシアネートを提供する:
a) 40℃〜125℃の融点温度を有し;
b) 一般式(I):
【化1】

[式中、
Xは、電子求引性基であり;
R1、R2は、互いに独立に、水素原子、飽和または不飽和の脂肪族または脂環式基、または任意に置換されていてよい芳香族または芳香脂肪族基であり、該基は、それぞれの場合に、12個までの炭素原子を有し、任意に酸素、硫黄および窒素から選択される3個までのヘテロ原子を有し、任意にハロゲン原子によって置換されていてよく;
nは、0〜5の整数である]
で示される1つまたはそれ以上のCH−酸性環式ケトンでブロックされたNCO基を有する。
【0010】
本発明は、本発明の有機ポリイソシアネートの製造方法も提供し、該方法は下記を含んで成る:
A) 平均イソシアネート官能価≧1.8を有する有機ポリイソシアネート成分;
B) 一般式(I)で示される1つまたはそれ以上のCH−酸性環式ケトン:
【化2】

[式中、
Xは、電子求引性基であり;
R1、R2は、互いに独立に、水素原子、飽和または不飽和の脂肪族または脂環式基、または任意に置換されていてよい芳香族または芳香脂肪族基であり、該基は、それぞれの場合に、12個までの炭素原子を有し、任意に酸素、硫黄および窒素から選択される3個までのヘテロ原子を有し、任意にハロゲン原子によって置換されていてよく;
nは、0〜5の整数である];および
C) 任意に、イソシアネート基に対し反応性の1つまたはそれ以上の他の化合物を、
D) 任意に、1つまたはそれ以上の触媒の存在下に、
成分A)中のイソシアネート基の、成分B)および任意成分C)中のイソシアネート基に対し反応性の基の合計に対する当量比が0.7〜1.3であるような割合で反応させる。
【0011】
平均NCO官能価≧1.8を有するあらゆるイソシアネート官能性化合物を、個々に、または任意に相互に混合して、本発明の方法の成分A)における有機ポリイソシアネートとして使用することができる。
【0012】
好適な化合物の例は、脂肪族的、脂環式的および/または芳香族的に結合したイソシアネート基を有する低分子ジイソシアネートおよびトリイソシアネートであり、それらは、任意の方法、例えばホスゲン化または無ホスゲン法、例えばウレタン開裂によって製造でき、特に分子量範囲140〜400の化合物、例えば下記の化合物である:1,4−ブタンジイソシアネート、1,6−ジイソシアナトヘキサン(ヘキサメチレンジイソシアネート、HDI)、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−または2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシアナトデカン、1,3−および1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1−イソシアナト−1−メチル4(3)−イソシアナトメチルシクロヘキサン、4,4'−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、1,3−ジイソシアナト−2(4)−メチルシクロヘキサン、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(トリイソシアナトノナン、TIN)、1,3−または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−または2,6−トルイレンジイソシアネート(TDI)、2,4'−または4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび1,5−ナフチレンジイソシアネート、またはそれらの混合物。
【0013】
本発明の方法に好適な他の有機ポリイソシアネートは、該ジイソシアネートおよび/またはトリイソシアネートの変性によって製造され、ウレトジオン、イソシアヌレート、イミノオキサジアジントリオン、ウレタン、アロファネート、ビウレットおよび/またはオキサジアジントリオン構造を有するポリイソシアネート、例えば、J. Prakt. Chem. 336(1994) 185-200またはDE-A 1670666およびEP-A 798299に例示されているポリイソシアネートである。
【0014】
成分A)に使用される他の好適なポリイソシアネートは、平均NCO官能価2.0〜4.0、ならびに官能価およびNCO含量から算出できる平均分子量(Mn)350〜5000、好ましくは400〜2000、特に好ましくは450〜1200を有するNCO官能性プレポリマー、例えば、前記ジイソシアネート、トリイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートと理論量以下のポリオール、特に分子量範囲62〜2000のポリオールとを反応させることによって既知の方法で得られるプレポリマーである。
【0015】
基本的に、EP-A 1063251に開示されている任意のポリオール、特にポリエステルポリオールが、プレポリマーの製造に好適である。
【0016】
当然、該ポリイソシアネートおよび/またはNCOプレポリマーを、個々に、または相互の混合物として、本発明の方法に使用することができる。
【0017】
特定の特性、例えば官能性または溶融粘度を調節するために、モノイソシアネートを成分A)に所望により使用することもできる。好適なモノイソシアネートの例は、下記のものである:ブチルイソシアネート、n−アミルイソシアネート、n−ヘキシルイソシアネート、n−ヘプチルイソシアネート、n−オクチルイソシアネート、ウンデシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、テトラデシルイソシアネート、セチルイソシアネート、ステアリルイソシアネート、シクロペンチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、3−または4−メチルシクロヘキシルイソシアネート、またはそのようなモノイソシアネートの混合物。
【0018】
しかし、モノイソシアネートを使用する場合、それらの最大量は、成分A)の平均イソシアネート官能価が、少なくとも1.8、好ましくは2.0〜6.0、特に好ましくは2.0〜4.5になる量である。
【0019】
本発明の方法に好ましい有機ポリイソシアネートは、専ら脂肪族的および/または脂環式的に結合したNCO基を有し、場合により、それらのNCOプレポリマーの形態かまたはウレトジオン、イソシアヌレート、イミノオキサジアジントリオン、ウレタン、アロファネート、ビウレットおよび/またはオキサジアジントリオン基を含有するポリイソシアネートとしての、前記の種類の有機ポリイソシアネートである。
【0020】
下記のものを使用するのが特に好ましい:ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4'−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン;任意にウレトジオン、イソシアヌレート、イミノオキサジアジントリオン、ウレタン、アロファネート、ビウレットおよび/またはオキサジアジントリオン基を含有するそれらポリイソシアネート;および/またはこれらのジイソシアネートに基づくNCOプレポリマー。
【0021】
一般式(I)の化合物は、本発明によって成分B)に使用されるCH−酸性環式ケトンとして好適である:
【化3】

[式中、
Xは、電子求引性基であり;
R1、R2は、互いに独立に、水素原子、飽和または不飽和の脂肪族または脂環式基、または任意に置換されていてよい芳香族または芳香脂肪族基であり、該基は、それぞれの場合に、12個までの炭素原子を有し、任意に酸素、硫黄および窒素から選択される3個までのヘテロ原子を有し、任意にハロゲン原子によって置換されていてよく;
nは、0〜5の整数である]。
【0022】
電子求引性基Xは、誘起効果(即ち、I効果)および/またはメソメリー効果(即ち、M効果)によって、α水素のCH酸性を生じるどのような置換基であってもよい。これらは、例えば、エステル基、スルホキシド基、スルホン基、ニトロ基、ホスホネート基、ニトリル基、イソニトリル基またはカルボニル基であってよい。ニトリルおよびエステル基は、好ましい置換基Xであり、カルボン酸メチルエステル基およびカルボン酸エチルエステル基が特に好ましい。
【0023】
基R1およびR2は、水素、飽和または不飽和の脂肪族または脂環式基、または任意に置換されていてよい芳香族または芳香脂肪族基であり、該基は、12個までの炭素原子を有し、任意に酸素、硫黄および窒素から選択される3個までのヘテロ原子を有し、任意にハロゲン原子で置換されていてよい。基R1およびR2は、互いに、環式ケトンの炭素原子と、さらに任意の窒素原子または酸素原子と、一緒になって、3〜6個の炭素原子を有する縮合環を形成することもできる。
【0024】
一般式(I)のCH−酸性ケトンにおける基R1およびR2は、好ましくは、水素、または6個までの炭素原子を有し、任意に酸素、硫黄および窒素から選択される3個までのヘテロ原子を有する飽和脂肪族または脂環式基である。特に好ましくは、基R1およびR2は水素原子である。
【0025】
それほど好ましくないけれども、他の適当な一般式(I)の化合物は、その環が、任意に酸素、硫黄または窒素原子のようなヘテロ原子を含有する化合物であり、ラクトンまたはチオラクトン構造が好ましい。
【0026】
上記一般式におけるnは、好ましくは0〜5、特に1または2の整数であり、その場合、環式ケトンは環に5または6個の炭素原子を有する。
【0027】
そのような好ましい環式ケトンの例は、下記のものである:シクロペンタノン−2−カルボキシメチルエステルおよびカルボキシエチルエステル、シクロペンタノン−2−カルボニトリル、シクロヘキサノン−2−カルボキシメチルエステルおよびカルボキシエチルエステルまたはシクロペンタノン−2−カルボニルメタン。シクロペンタノン−2−カルボキシメチルエステルおよびカルボキシエチルエステルおよびシクロヘキサノン−2−カルボキシメチルエステルおよびカルボキシエチルエステルが特に好ましい環式ケトンである。
【0028】
これらのシクロペンタノン系は、アジピン酸ジメチルまたはジエチルのディークマン縮合によって工業的に容易に得られる。シクロヘキサノン−2−カルボキシメチルエステルは、サリチル酸メチルの水素添加によって特に得られやすい。
【0029】
イソシアネート基に対し反応性の他の化合物C)は、本発明の方法に所望により使用される。これらは、特に、数平均分子量(Mn)62〜2000g/mol、および好ましくは少なくとも2.0の平均官能価を有するポリオールである。
【0030】
該ポリオールは、例えば分子量範囲62〜400の単純多価アルコールであり、例えば下記のものである:1,2−エタンジオール、1,2−および1,3−プロパンジオール、異性体ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオールおよびオクタンジオール、1,2−および1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたは4,4'−(1−メチルエチリデン)ビスシクロヘキサノール、1,2,3−プロパントリオール、1,1,1−トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,1,1−トリメチロールプロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオールまたは1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ならびに単純エステル−またはエーテル−アルコール、例えば、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールエステル、ジエチレングリコールまたはジプロピレングリコール。
【0031】
モノアルコール、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノールおよびそれらの異性体、またはジアミン、例えばLaromin(登録商標)C 260(BASF AG, Ludwigshafen, DE)、PACM(登録商標)20(Air Products, USA)およびDytek(登録商標)A(DuPont, USA)も、使用しうる他のイソシアネート反応性化合物として好適である。アミノアルコール、例えば、アミノエタノール、アルキルアミノエタノール、テトラキスヒドロキシエチレンジアミン、または全ての既知のモノ−、ジ−またはトリアミンに基づく他のアミノアルコールも好適である。
【0032】
ヒドロキシカルボン酸、例えば、2−ヒドロキシプロピオン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、9,10−ジヒドロキシステアリン酸、4−ヒドロキシ安息香酸およびそれらの異性体、または無水トリメリット酸1モルと2〜15個のC原子を有するジオール1〜2当量との低分子量反応生成物も、C)で使用しうる他のイソシアネート反応性化合物として好適である。このように変性したポリイソシアネートは、DE-A 3232463に開示されているタイプの無脱離艶消塗料用の粉体塗料架橋剤として特に好適である。
【0033】
自体既知の、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステル−カーボネートまたはポリエーテル型のポリヒドロキシル化合物も、C)で使用しうる他のイソシアネート反応性化合物として好適である。
【0034】
使用しうるポリエステルポリオールの例は、官能価およびヒドロキシル価から算出できる平均分子量(Mn)200〜2000、好ましくは250〜1500を有し、ヒドロキシル基含量1〜21wt%、好ましくは2〜18wt%を有するポリエステルポリオールであり、例えば、多価アルコール、例えば分子量範囲(Mn)62〜400の前記多価アルコールと、理論量以下の多塩基性カルボン酸、対応する無水カルボン酸、または低級アルコールの対応するポリカルボン酸エステルまたはラクトンとの反応によって、自体既知の方法で製造することができるポリエステルポリオールである。
【0035】
ポリエステルポリオールの製造に使用される酸および酸誘導体は、脂肪族、脂環式および/または芳香族性であってよく、例えばハロゲン原子によって場合により置換されていてもよく、かつ/または不飽和であってよい。好適な酸の例は、分子量範囲(Mn)118〜300の多塩基性カルボン酸またはその誘導体、例えば、琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、二量体および三量体脂肪酸、テレフタル酸ジメチルおよびテレフタル酸ビスグリコールエステルである。
【0036】
ポリエステルポリオールは、例として挙げたこれらの出発化合物の混合物を使用して製造することもできる。
【0037】
成分C)として使用するのに好ましいポリエステルポリオールは、自体既知の方法で、ラクトンおよび単純多価アルコール、例えば例として先に挙げたアルコールを、出発分子として使用して、開環によって製造することができるポリエステルポリオールである。これらのポリエステルポリオールの製造に好適なラクトンの例は、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−およびδ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、3,5,5−および3,3,5−トリメチルカプロラクトン、またはそのようなラクトンの混合物である。
【0038】
他の好適な化合物は、ポリカーボネート型のポリヒドロキシル化合物、特に自体既知のポリカーボネートジオール、例えば、二価アルコール(例えば、前記の分子量範囲62〜400の多価アルコールの列記において例として挙げた二価アルコール)を、ジアリールカーボネート、例えばジフェニルカーボネート、またはホスゲンと反応させることによって製造できるポリカーボネートジオールである。特に好適な化合物は、例えばDE-A 1770245から自体既知のエステル基およびカーボネート基を有するジオールであり、それは、二価アルコールと、例えば前記の種類のラクトン、特にε−カプロラクトンとを反応させ、次に、得られたポリエステルジオールをジフェニルカーボネートと反応させることによって得られる。
【0039】
ポリエーテルポリオール、特に、官能価およびヒドロキシル価から算出できる平均分子量(Mn)200〜2000、好ましくは250〜1500を有し、ヒドロキシル基含量1.7〜25wt%、好ましくは2.2〜20wt%を有するポリエーテルポリオール、例えば、好適な出発分子のアルコキシル化によって自体既知の方法で得られるポリエーテルポリオールも、C)において使用しうる他のイソシアネート反応性化合物として好適である。これらのポリエーテルポリオールは、任意の多価アルコール、例えば、分子量範囲(Mn)62〜400の前記多価アルコールを、出発分子として使用して製造することができる。アルコキシル化反応に好適なアルキレンオキシドは、特にエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドであり、それらはいずれかの順序で、または混合物として、アルコキシル化反応に使用することができる。
【0040】
他の好適なポリエーテルポリオールは、自体既知のポリオキシテトラメチレングリコール、例えば、Angew. Chem. 72, 927(1960)によってテトラヒドロフランの重合によって得られるポリオキシテトラメチレングリコールである。
【0041】
他の好適な化合物は、いわゆる二量体ジオール、例えば、DE-A 1768313による二量体脂肪酸および/またはそれらのエステルの水素添加、またはEP-A 720994に記載の他の方法のような自体既知の方法によって製造することができる二量体ジオールである。
【0042】
最後に、所望により使用することができる他の適当なイソシアネート反応性化合物C)は、ポリウレタン化学から既知のイソシアネート基に対し反応性の基を有するブロッキング剤、例えば、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセトンオキシム、ブタノンオキシム、ε−カプロラクタム、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾール、ジメチル−1,2,4−トリアゾール、イミダゾールまたはこれらのブロッキング剤の混合物である。これらの既知のブロッキング剤が使用される場合、それらの量は、ブロッキング剤混合物でブロックされ得られたポリイソシアネートにおいて、少なくとも30mol%、好ましくは少なくとも50mol%、特に好ましくは少なくとも70mol%のブロックトイソシアネート基が、前記の工程C)からの環式ケトンでブロックされている量である。
【0043】
本発明の方法においてC)として使用するのに好ましい化合物は、分子量範囲(Mn)62〜400の前記の単純多価アルコール、前記のポリエステルポリオールまたはポリカーボネートポリオール、およびこれらのポリオール成分の混合物である。
【0044】
C)として任意に使用されるイソシアネート反応性化合物は、成分A、BおよびCの合計重量に基づいて0〜70wt%、好ましくは0〜50wt%の量で使用される。
【0045】
本発明の方法において、反応成分A)、B)および任意成分C)を、イソシアネート基(Aから)の、イソシアネート基に対し反応性の基(Bおよび任意のCから)の合計に対する当量比が、0.7〜1.3、好ましくは0.8〜1.2、特に0.9〜1.1であるような割合で反応させる。
【0046】
原理的に、成分B)および任意成分C)を、同時に、またはいずれかの順序で逐次的に、有機ポリイソシアネートA)と反応させることができる。
【0047】
本発明の方法において、成分A)、成分B)および任意成分C)の反応を、1つまたはそれ以上の触媒D)の存在下に行なうのが好ましく、イソシアネート基と、イソシアネートに反応性の基との反応を触媒する当業者に既知の任意の化合物を、個々に、または相互の混合物として、使用することができる。
【0048】
使用される触媒は、好ましくは、NCOブロッキング反応を加速する当業者に既知の任意の触媒、例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属塩基、例えば、粉末炭酸ナトリウム(ソーダ)または燐酸三ナトリウム、第二亜族金属の炭酸塩またはカルボン酸塩、例えば亜鉛2−エチルヘキサノエート、またはアミン、例えば1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたは亜鉛2−エチルヘキサノエートである。
【0049】
1つまたはそれ以上の他のイソシアネート反応性化合物C)を場合により使用する場合、ポリウレタン化学から自体既知の、前記の触媒とは場合によっては異なる、イソシアネート反応性を増加させる他の触媒D)を添加することもでき、その例は、下記のものである:第三級アミン、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N−エンドエチレンピペラジン、N−メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノシクロヘキサンおよびN,N'−ジメチルピペラジン、または金属塩、例えば塩化鉄(III)、塩化亜鉛、2−エチルカプロン酸亜鉛、オクタン酸錫(II)、エチルカプロン酸錫(II)、パルミチン酸錫(II)、ジブチル錫(IV)ジラウレートおよびグリコール酸モリブデン、またはそのような触媒の混合物。
唯1つの触媒D)、特に亜鉛2−エチルヘキサノエートを使用するのが特に好ましい。
【0050】
両方のタイプの前記触媒は、出発成分A)、B)および任意成分C)の合計量に基づいて、0.05〜10wt%、好ましくは0.1〜3wt%の量で添加される。
【0051】
本発明のポリイソシアネートは、0℃〜180℃、好ましくは20℃〜180℃、特に40℃〜140℃の温度で製造することができる。本発明の1つの特に好ましい態様において、反応物A)、B)および任意成分C)が均質メルトの形態になるように、40℃〜140℃の温度を選択する。
【0052】
それほど好ましくないが、下記のようなイソシアネートに不活性の一般的な溶媒の存在下に、反応を行なうことができる:塩化メチレン、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルまたはブチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドンおよびN−メチルカプロラクタム、トルエン、またはExxonMobil Chemical, USAからのSolvesso(登録商標)100、およびそれらの相互の混合物。
【0053】
溶液中で製造する場合、工程における溶解反応物の固形分は、一般に10〜90wt%に調節される。
【0054】
反応物A)、B)、任意成分C)および任意成分D)が反応した後、使用した溶媒を、適当な方法、例えば真空乾燥、吹付乾燥または蒸気ストリッピング押出(Ausdamph Extrusion)によって分離する。
【0055】
本発明のポリイソシアネートは、スタティックミキサー、均質ミキサーまたは押出器で連続的に、または、好ましくは回分反応器で回分的に、製造することができる。
【0056】
製造のタイプに関係なく、本発明によって得られる生成物は、融点範囲が40℃〜125℃、好ましくは40℃〜110℃、特に50℃〜100℃の温度範囲(限界値を含む)内にあるブロックトポリイソシアネートである。本発明の生成物は、示差熱分析(DTA)によって測定されるガラス転移温度Tg30℃〜80℃、好ましくは40℃〜70℃も有するのが好ましい。
【0057】
本発明のブロックトポリイソシアネートは、ポリウレタンプラスチックの製造用の有用な出発物質である。それらは、熱硬化性無脱離PUR粉体塗料における架橋成分として特に使用される。
【0058】
本発明の重付加化合物に好適な共反応物は、イソシアネートに反応性の基、例えば、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、チオール、ウレタンまたは尿素基を有する粉体塗料技術から既知の基本的にあらゆる結合剤である。しかし、40℃未満で固体であり、130℃より高い温度で液体である粉体塗料結合剤を使用するのが好ましい。そのような粉体塗料結合剤の例は、例えば前記の最新技術についての発行物、例えばEP-A 45998またはEP-A 254152に開示されているようなヒドロキシ官能性ポリエステル、ポリアクリレートまたはポリウレタン、ならびにそのような樹脂の混合物である。
【0059】
即用粉体塗料の製造のために、本発明の非脱離ブロックトポリイソシアネートを、好適な粉体塗料結合剤と混合し、他の補助物質および添加剤、例えば、触媒、顔料、充填剤または流れ調整剤で場合により処理し、そして個々の成分の融点範囲より高い温度、例えば70℃〜130℃、好ましくは70℃〜110℃で、例えば押出機またはニーダーで合わして、均質物質を形成する。
【0060】
本発明のブロックトポリイソシアネートおよびヒドロキシ官能性結合剤は、ヒドロキシル基1個につき、ブロックトイソシアネート基0.6〜1.4、好ましくは0.8〜1.2が存在する比率で使用される。
【0061】
ブロックトポリイソシアネートを製造する本発明の方法において、前記の触媒、例えば、DBTL(ジブチル錫ジラウレート)、亜鉛2−エチルヘキサノエートおよびビスマス2−エチルヘキサノエートを使用することによって、硬化を加速させることができる。亜鉛2−エチルヘキサノエートおよびビスマス2−エチルヘキサノエートが好ましい触媒である。これらの触媒は、即用粉体塗料の合計量に基づいて0.001〜2.0wt%、好ましくは0.01〜0.5wt%の量で所望により使用される。ポリウレタン化学から既知の他の化合物、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)および1,2−ジメチルテトラヒドロピリミジン、または第三級アミン、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N−エンドエチレンピペラジン、N−メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノシクロヘキサンおよびN,N'−ジメチルピペラジン、または金属塩、例えば、塩化鉄(III)、塩化亜鉛、亜鉛2−エチルカプロエート、オクタン酸錫(II)、エチルカプロン酸錫(II)、パルミチン酸錫(II)およびグリコール酸モリブデンを、即用粉体塗料の合計量に基づいて0.001〜2.0wt%、好ましくは0.01〜1.0wt%の量で添加することもできる。
【0062】
次に、メルトの冷却後に得た固形物を粉砕し、所望の粒度より大きい、例えば0.1mmより大きい粒子部分を、篩にかけて除去する。
【0063】
このように製造したすぐに吹付できる粉体塗料を、従来の粉末適用法、例えば、静電粉末吹付または回転焼結(whirl sintering)によって、被覆される基材に適用することができる。本発明によれば、あらゆる基材、例えば、金属、木材またがガラス製の基材を被覆することができる。
【0064】
塗料は、110℃〜220℃、好ましくは130℃〜180℃、特に好ましくは140℃〜160℃の温度で、1〜60分間、好ましくは10〜30分間にわたって加熱することによって硬化される。
【0065】
これは、優れた流動性および高光沢を特徴とする優れた耐溶剤性および耐薬品性を有する硬質弾性塗膜を与える。
【0066】
実施例
NCO含量は、DIN 53 185による滴定によって測定した。
ガラス転移温度Tgは、示差走査熱量計(タイプ:DSC 12E, Mettler-Toledo GmbH, D-35353 Giessen)によって、−15℃〜+100℃の温度範囲(加熱速度:10K/分)で測定した。
0℃で示した融点範囲は、細管融点装置(タイプ:Buechi 530, Buechi Labortechnik AG, CH-9230 Flawil)を使用して測定した。
【0067】
使用した触媒は、Zn(2−エチルヘキサノエート)2(Borchers GmbH, D-40765 MonheimからのOctasoligen(登録商標)亜鉛)であった。
残留モノマー含量は、ガスクロマトグラフ(タイプ:HP 5890シリーズII、Hewlett Packard, USA)で測定した。
室温は、23±3℃を意味するものと理解される。
特に記載しなければ、全てのパーセントは重量による(wt%)。
【0068】
IPDIウレトジオンは、US-A 4912210に準拠して、IPDIのジメチルアミノピリジン触媒二量化によって製造した;NCO含量=16.2%;モノマーIPDI<0.5%。
TMP:トリメチロールプロパン
【実施例1】
【0069】
IPDIウレトジオンに基づく粉体塗料架橋剤の溶液中での製造
IPDIウレトジオン139.5g(NCO含量:16.2%;モノマーIPDI<0.5%)を、室温において窒素下に、塩化メチレン52mgに溶解した。シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル63.5gおよびトリメチロールプロパン(TMP)6gを、均質溶液に添加した。混合物を30分間攪拌した。最後に、触媒0.4gを添加し、温度が少し上がった。温度が上がらなくなった際に、反応混合物を40℃に加熱し、NCO含量が0.8%未満に減少するまで、この温度で攪拌した。反応が終了した際に、溶媒を、真空(1mbar)下に50℃で除去した。
【0070】
これによって、遊離NCO含量0.5%、Tg52℃、および融点範囲74℃〜80℃の無色粉末を得た。
【実施例2】
【0071】
IPDIウレトジオンに基づく粉体塗料架橋剤のメルト中での製造
IPDIウレトジオン171.0gおよび触媒0.5gを、窒素下にフラットボート反応器中で80℃に加熱した。シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル78.0g、およびTMP7.1gの溶液を、勢いよく攪拌しながらメルトに滴下し、それによって、反応混合物の温度が100℃〜120℃になった。添加を終了した際に、NCO含量が1.5%未満になるまで混合物を120℃で攪拌した。次に、メルトを金属板上に注いで、固化させた。冷却後に得た淡黄色固体樹脂は、遊離NCO基含量1.2%およびTg41℃を有していた。
【実施例3】
【0072】
IPDI三量体に基づく粉体塗料架橋剤の製造
Desmodur(登録商標)Z 4470 BA(IPDI三量体;酢酸ブチル中70%;NCO含量:11.7%;モノマーIPDI<0.5%、Bayer AG, DE)174.1g、およびシクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル75.7gを、窒素下に室温で合わせ、短時間攪拌して、均質溶液を形成した。次に、触媒0.5gを添加した。発熱が鎮静化した際に、反応混合物を40℃に加熱し、NCO含量が0.5%未満になるまで、この温度で攪拌した。次に、溶媒を真空(1mbar)下に50℃で除去した。
【0073】
これによって、遊離NCO基含量0.5%、Tg60℃、および融点範囲70℃〜100℃の無色粉末を得た。
【実施例4】
【0074】
モノマーIPDIに基づく粉体塗料架橋剤の製造
Desmodur(登録商標)I(モノマーIPDI;NCO含量:37.5%、Bayer AG, DE)86.2g、TMP 10.4gおよび塩化メチレン78gを合わせ、窒素下に40℃で混合した。次に、触媒0.36gを添加した。次に、シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル84.7gを反応混合物に滴下した。添加を終了した際に、NCO含量が0.5%未満になるまで、反応混合物を40℃で攪拌した。反応が終了した際に、溶媒を真空(1mbar)下に50℃で除去した。
【0075】
これによって、遊離NCO基含量0%、Tg41℃、および融点範囲60℃〜70℃の無色粉末を得た。
【実施例5】
【0076】
部分ブロックトイソシアネートの連鎖延長による粉体塗料架橋剤の製造
Desmodur(登録商標)I(モノマーIPDI;NCO含量:37.5%、Bayer AG, DE)111g、シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル78.1g、および触媒0.4gを、NCO含量が理論値11%に達するまで窒素下に室温で攪拌した。次に、得られた部分ブロックトイソシアネート37.8gを酢酸ブチル46.8gに溶解し、80℃に加熱した。TMP8.9gを少しずつ添加し、NCO含量が0.5%未満になるまで、混合物を80℃で3時間攪拌した。連鎖延長が終了した際に、溶媒を真空(1mbar)下に60℃で除去した。
【0077】
これによって、遊離NCO基含量0%およびTg36℃の無色粉末を得た。
【実施例6】
【0078】
IPDIウレトジオンに基づく粉体塗料架橋剤のメルト中での製造
IPDIウレトジオン173.0gおよび触媒0.5gを、窒素下にフラットボート反応器中で80℃に加熱した。シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル71.0gおよび1,6−ヘキサンジオール11.5gの溶液を、勢いよく攪拌しながらメルトに滴下し、それによって、反応混合物の温度が100℃〜120℃になった。添加を終了した際に、混合物を110℃でさらに4時間攪拌した。次に、メルトを金属板上に注いで、固化させた。冷却後に得た淡黄色固体樹脂は、遊離NCO基含量2.5%およびTg33℃を有していた。
【実施例7】
【0079】
ポリカプロラクトンジオールの合成
1,4−ブタンジオール901gおよびε−カプロラクトン1712gを、乾燥窒素下に室温で混合し、触媒0.3gを添加し、次に、混合物を160℃で5時間加熱した。室温に冷却した後に得た無色液体生成物は、粘度180mPas(23℃)およびOH価416mg KOH/gを有していた。
【0080】
IPDIウレトジオンおよびポリカプロラクトンジオールに基づく粉体塗料架橋剤の製造
IPDIウレトジオン170.0g、ポリカプロラクトンジオール40.0g、シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル50.0gおよび塩化メチレン112.0gを、窒素下に40℃で予備混合した。触媒0.5gを均質混合物に添加した。次に、反応混合物を40℃で12時間攪拌した。最後に、溶媒を真空(1mbar)下に50℃で除去した。得られた無色粉末は遊離NCO基含量0%、Tg59℃、および融点範囲68℃〜94℃を有していた。
【実施例8】
【0081】
Desmodur(登録商標)Wに基づく粉体塗料架橋剤のメルト中での製造
Desmodur(登録商標)W(4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート);NCO含量:31.8%、Bayer AG, DE)144.0gおよび触媒0.25gを、窒素下にフラットボート反応器中で80℃に加熱した。シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル86.0gおよびTMP24.0gの溶液を、勢いよく攪拌しながらメルトに添加し、それによって、反応混合物の温度が100℃〜120℃になった。添加を終了した際に、混合物を120℃でさらに6時間攪拌した。次に、メルトを金属板上に注いで、固化させた。冷却後に得た淡黄色固体樹脂は、遊離NCO基含量1.8%、Tg33℃、および融点範囲53℃〜73℃を有していた。
【実施例9】
【0082】
二量化触媒トリヘキシルテトラデシルホスホニウム1,2,4−トリアゾレートを、ナトリウムメチレートおよびトリヘキシルテトラデシルホスホニウムクロリド(Cyphos(登録商標)3653, Cytec Industries, DE)から、文献(例えばDE-A 10123416)において既知の方法によって製造した。
【0083】
Desmodur(登録商標)Wの二量化
二量化触媒トリヘキシルテトラデシルホスホニウム1,2,4−トリアゾレート12gを、窒素下に30℃で、反応時間3時間にわたって、Desmodur(登録商標)W1000gに連続的に滴下した。次に30分間攪拌した後、反応混合物のNCO含量は26.2%であり、オリゴマー化度17.1%に相当した。次に、燐酸ジブチル4.6gを添加することによって触媒を失活させ、温度155℃および圧力0.2mbarでフィルム蒸発器を使用して、過剰のジイソシアネートを得られた透明無色混合物から分離した。これによって、遊離NCO基含量16%およびモノマーイソシアネート分0.5%を有する高粘性の、ほぼ無色のウレトジオンポリイソシアネートを得た。
【0084】
Desmodur(登録商標)Wウレトジオンに基づく粉体塗料架橋剤の製造
Desmodur(登録商標)Wウレトジオン107.0g、TMP4.5gおよび塩化メチレン41.5gを、窒素下に40℃で合わし、NCO含量が約8.5%に減少するまで攪拌した。次に、触媒0.3gおよびシクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル48.0gを添加した。添加を終了した際に、反応混合物を40℃で24時間攪拌した。真空(1mbar)下に50℃で溶媒を除去した後に、得られた無色粉末は、遊離NCO基含量0.6%、Tg28℃および融点範囲55℃〜100℃を有していた。
【実施例10】
【0085】
着色粉体塗料における粉体塗料架橋剤の使用
表1に示す各成分を合わし、ミキサー(Prism Pilot 3, ThermoPRISM, GB)を使用して2000rpmで30分間攪拌し、次に、押出器(Buss PLK 46, Cooperion Buss AG, CH)によって、ハウジング温度100℃/120℃/150℃において150rpmで均質化した。冷却後に得た凝固均質メルトを、分級ミル(ACM II、90μm篩、Hokosawa, JP)で粉砕し、カップガン(Corona EPS、Wagner, DE)を使用して高電圧70kVで脱脂薄鋼板に適用した。次に、被覆された薄鋼板を、勾配炉において140℃〜170℃の温度で30分間焼付した。硬化した皮膜について、以下の特性を決定した:DIN 67530によるガードナー光沢(20°/60°)、DIN EN ISO 1520によるエリクセン深絞り(deep drawing)、および耐アセトン性(アセトン含浸脱脂綿での50往復行程;0:変化なし、1:僅かに引掻き可能な皮膜、2:軟質皮膜、sm:僅かに艶消しの皮膜、m:艶消し皮膜)。
【表1】

[1]ポリエステルポリオール、Bayer AG, DE, OH=42〜47mgKOH/g
[2]流れ調整剤、Worlee-Chemie GmbH, DE
[3]白色顔料、Kronos Titan GmbH, DE
【表2】

記載されている数の往復行程後に、皮膜が分離した。
【実施例11】
【0086】
粉末ワニスにおける粉体塗料架橋剤の使用
ワニス配合物を準備し、処理し、焼付し、実施例10の配合物と同様に試験した。
【表3】

[4]ポリエステルポリオール、Bayer AG, DE、OH=42〜47mgKOH/g
[5]流れ調整剤、BASF AG, DE
【表4】

記載されている数の往復行程後に、皮膜が分離した。
【実施例12】
【0087】
厚い被膜適用における粉体塗料架橋剤の使用
実施例9−Eの粉体塗料配合物を、くさび型金属板に適用し、170℃で20分間焼付した。被膜厚み120μmまで、気泡が観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 40℃〜125℃の温度範囲に融点範囲を有し;
b) 一般式(I):
【化1】

[式中、
Xは、電子求引性基であり;
R1、R2は、互いに独立に、水素原子、飽和または不飽和の脂肪族または脂環式基、または任意に置換されていてよい芳香族または芳香脂肪族基であり、該基は、それぞれの場合に、12個までの炭素原子を有し、任意に酸素、硫黄および窒素から選択される3個までのヘテロ原子を有し、任意にハロゲン原子によって置換されていてよく;
nは、0〜5の整数である]
で示される1つまたはそれ以上のCH−酸性環式ケトンでブロックされたNCO基を有する有機ポリイソシアネート。
【請求項2】
専ら脂肪族的および/または脂環式的に結合したイソシアネート基を有し、任意にウレトジオン、イソシアヌレート、イミノオキサジアジントリオン、ウレタン、アロファネート、ビウレットおよび/またはオキサジアジントリオン基を含有するポリイソシアネートに基づくことを特徴とする請求項1に記載のポリイソシアネート。
【請求項3】
CH−酸性環式ケトンの電子求引性基Xが、エステル、スルホキシド、スルホン、ニトロ、ホスホネート、ニトリル、イソニトリルまたはカルボニル基であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイソシアネート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の有機ポリイソシアネートの製造法であって、
A) 平均イソシアネート官能価≧1.8を有する1つまたはそれ以上の有機ポリイソシアネート;
B) 一般式(I):
【化2】

[式中、
Xは、電子求引性基であり;
R1、R2は、互いに独立に、水素原子、飽和または不飽和の脂肪族または脂環式基、または任意に置換されていてよい芳香族または芳香脂肪族基であり、該基は、それぞれの場合に、12個までの炭素原子を有し、任意に酸素、硫黄および窒素から選択される3個までのヘテロ原子を有し、任意にハロゲン原子によって置換されていてよく;
nは、0〜5の整数である]
で示される1つまたはそれ以上のCH−酸性環式ケトン;および
C) 任意に、イソシアネート基に対し反応性の1つまたはそれ以上の他の化合物を、
D) 任意に、1つまたはそれ以上の触媒の存在下に、
成分A)中のイソシアネート基の、成分B)および任意成分C)中のイソシアネート基に対し反応性の基の合計に対する当量比が0.7〜1.3であるような割合で反応させる
ことを含んで成る方法。
【請求項5】
専ら脂肪族的および/または脂環式的に結合したイソシアネート基を有し、任意にウレトジオン、イソシアヌレート、イミノオキサジアジントリオン、ウレタン、アロファネート、ビウレットおよび/またはオキサジアジントリオン基を含有する有機ポリイソシアネートを、ポリイソシアネートA)として使用する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
CH−酸性環式ケトンの電子求引性基Xが、エステル、スルホキシド、スルホン、ニトロ、ホスホネート、ニトリル、イソニトリルまたはカルボニル基であることを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
分子量(Mn)62〜2000g/molおよび少なくとも2.0の平均OH官能価を有するポリオールを、イソシアネート反応性化合物C)として使用する請求項4〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
ポリウレタンプラスチックの製造における、請求項1〜3のいずれか1つに記載のポリイソシアネートの使用。
【請求項9】
請求項8に記載のポリウレタンプラスチックで被覆した基材。

【公表番号】特表2006−510785(P2006−510785A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562698(P2004−562698)
【出願日】平成15年12月6日(2003.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013822
【国際公開番号】WO2004/058845
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】