説明

無菌包装パック入り液状ポタージュスープ

【課題】コク味、うま味が良好で、保存、流通時において味を維持できる無菌包装パック入り液状ポタージュスープを提供する。
【解決手段】
油脂原料に過酸化物価が0〜0.3であり、酸化防止剤を添加してCDM値を13〜25時間の範囲に調整した豚脂を使用して加熱調理すること特徴とし、超高温殺菌処理後に充填された無菌包装パック入り液状ポタージュスープ。豚脂を0.5〜5質量%含み、スープの過酸化物価が0.3〜1.0である上記の無菌包装パック入り液状ポタージュスープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無菌包装パック入り液状ポタージュスープに関し、さらに詳しくはコク味、うま味のある無菌包装パック入り液状ポタージュスープに関する。
【背景技術】
【0002】
洋食としてのスープは家庭でも作ることが可能であるが、長時間の調理が必要とされるため、なかなか簡便に食することができない。そのため簡便に食することができる市販品が多く利用されている。市販品としては缶、レトルトパウチ、チルドパック、粉末タイプなどの形態があり、そのまま、加温、お湯で溶解などしてスープとして飲食することができる。スープの原料としては油脂、水、食塩、動植物エキスなどからなり、さらに脱脂粉乳、生クリーム、牛乳などの乳成分を加えたいわゆるポタージュスープがその主流となっている。
この中で、無菌包装パック入り液状ポタージュスープは、レトルト殺菌のような包装容器と内容物殺菌を同時殺菌するための高温、長時間の加熱処理を伴わないため、風味が優れており、そのままあるいは、加熱するだけで簡単に食することができるため、消費者に広く受け入れられている。
無菌包装パック入り液状ポタージュスープは、一般には油脂、動植物エキス、乳原料等各種原料の混合、加熱調理工程、内容物の超高温殺菌工程、無菌包装充填の工程にて工場等で調理・包装され保存、流通される。
一般的にポタージュスープのおいしさはコク味、うま味として感じる。そしてコク味については主にスープ原料の乳成分の寄与が大きい。また、うま味については動植物エキスに由来する成分の寄与が大きい。しかし、乳成分、動植物エキスを加えても、それだけではコク味、うま味が十分ではなく、これを一層引き立たせることが求められている。
また、市販されている液状ポタージュスープにおいては、殺菌工程が必須であるが、この工程は家庭での調理では行われない工程であり、調理目的以外の熱履歴がスープに科せられると風味劣化の原因となるおそれがある。
さらに、これらのスープは工場等で調理後、保存、流通後に家庭で飲食されることになるが、工場で調理された直後のスープのおいしさが維持されることが必要となる。
【0003】
このような市販スープのおいしさを高める技術としては、米を原料の一部として用いる方法が開示されている(特許文献1)。しかしこの方法は、一般的にスープに用いることのない米を原料として用いることにより、独特の風味をもたらすものとなる。
【0004】
コク味、うま味を深め、引き立てるため、スープに含まれる油脂分の粒径を調節する方法も開示されている(特許文献2)。
しかし、油脂成分の粒径を調節するだけでは充分にスープのコク味、うま味を引き立てることはできず、使用する油脂の種類、調整によっては調理時や保存・流通時に味が劣化することがある。
【0005】
スープに含有する油脂を乳化するために使用する乳化剤を選択することにより、味の劣化を抑制する技術も開示されている(特許文献3)。しかし、乳化剤を選択しても味の劣化を抑制するに過ぎず、スープのコク味、うま味を引き立たせることはできない。
【特許文献1】特開昭58−86048号公報
【特許文献2】特開平7−51030号公報
【特許文献3】特開2005−341933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、無菌包装パック入り液状ポタージュスープにおいてスープのコク味、うま味を充分に引き立たせる方法は確立されていない。
本発明は、豚脂に着目し、加熱調理後の豚脂にスープのコク味、うま味を引き立てる効果があることを見出した。これは、液状ポタージュスープに使用される植物油とは異なる豚脂特有の効果である。
しかし、豚脂は植物油に比べて酸化劣化しやすく、劣化が進むとむしろスープの食味を悪くする。本発明は、液状ポタージュスープの油脂原料として豚脂を使用し、加熱調理後のスープのコク味、うま味を引き立たせる一方で、超高温殺菌後に無菌充填して製品化することで、保存、流通時においても良好な風味を維持できる無菌包装パック入り液状ポタージュスープを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記の発明である。
本発明における第1の発明は、油脂原料に過酸化物価が0〜0.3であり、酸化防止剤を添加してCDM値を13〜25時間の範囲に調整した豚脂を使用して加熱調理すること特徴とし、超高温殺菌処理後に充填された無菌包装パック入り液状ポタージュスープである。
【0008】
本発明における第2の発明は、豚脂を0.5〜5質量%含み、スープ中の油脂の過酸化物価が0.3〜1.0である第1の発明の無菌包装パック入り液状ポタージュスープである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コク味、うま味が良好で、保存、流通時において味を維持できる無菌包装パック入り液状ポタージュスープが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(豚脂の調整)
本発明では、油脂原料として、酸化防止剤を添加した、過酸化物価が0〜0.3、CDM値が13〜25時間の範囲の豚脂を使用する。
液状ポタージュスープには油脂分が含有されており、スープの風味を豊かにする働きがある。発明者らは各種油脂を用いて液状スープを調整してその風味を検討し、加熱調理後の豚脂がスープのコク味、うま味を引き立たせ、液状スープの風味をより良好とすることを見出した。
ここでコク味とは味の濃淡を意味し、コク味があるとスープの味が深まる。液状スープにおいては乳由来の成分がコク味に大きく関与する。
うま味とはアミノ酸由来のおいしさを感じる成分であり、液状スープにおいては動植物エキスがうま味に大きく関与する。
加熱調理後の豚脂はコク味、うま味を引き立たせることができる。
【0011】
豚脂は一般的に市販されているものでかまわず、その一般的な脂肪酸組成例(質量%)としてミリスチン酸1.8%、パルミチン酸24.2%、パルミトレイン酸2.8%、ステアリン酸13.4%、オレイン酸44.2%、リノール酸8.1%のものが挙げられる。
豚脂はパーム油、ナタネ油等の植物油脂に比べて、含有する天然由来の酸化防止成分が少ないため、比較的飽和脂肪酸が多いにもかかわらず加熱により酸化されやすく、酸化時にけもの臭を発生するという特徴がある。豚脂由来のけもの臭はその程度により、食品の風味を引き立てたり、損ねたりする。
【0012】
加熱調理後の豚脂は、加熱由来の酸化の程度を過酸化物価にて評価することができる。本発明においては、加熱調理後にパック中のスープに含有される豚脂の過酸化物価が0.3〜1の範囲であることがよく、この範囲であれば充分にうま味、コク味を引き立てることができる。過酸化物価が0.3以下の場合はコク味、うま味の引き立てる効果が弱くなり、過酸化物価が1を超えると豚脂由来のけもの臭が強く感じられるようになりスープの風味が悪くなることがある。
【0013】
本発明は、予め豚脂に酸化防止剤を添加した豚脂を油脂原料として使用する。酸化防止剤を添加しない豚脂を使用すると、加熱調理後の豚脂は酸化されやすく、液状ポタージュスープにおいてけもの臭を感じやすくなる。また、保存あるいは流通時に劣化が進み、品質が低下する。一方で、酸化防止剤を多量に加えると加熱調理によっても豚脂は殆ど変化せずコク味、うま味の引き立てることができなくなる。
そこで、本発明では酸化の進んでいない豚脂に酸化防止剤を添加し、過酸化物価が0〜0.3の範囲とし、CDM値が13〜25時間になるように調整する。このように調整された豚脂を使用すると、加熱調理後の豚脂が液状ポタージュスープにおいてコク味、うま味の引き立てることができ、保存あるいは流通させても味が維持され、長時間に渡り品質が維持されることを見出した。
【0014】
ここで、酸化防止剤を添加した豚脂の過酸化物価が0.3を超えると、加熱調理後の豚脂の酸化により発生するけもの臭が強くなり、液状ポタージュスープにおいてコク味、うま味を引き立てることができなくなる。
CDM(Conductometoric Determination Method)とは油脂の酸化安定性の程度を測定する方法(基準油脂分析試験法2.5.1.2)であり、CDM値(時間)として測定結果が算出される。CDM値が長いほどより酸化に対して安定な油脂だといえる。CDM値は豚脂における酸化防止剤の具体的な添加効果を示す指標となるものである。本試験ではメトローム・シバタ社製ランシマット743型を用いて、サンプル量3g、試験温度120℃、空気吹き込み量20ml/分にて測定した。
CDM値が13時間未満では、酸化防止剤を添加した効果が弱く、加熱調理時にけもの臭が発生したり、保存あるいは流通時に味が悪くなることがある。25時間を超えると加熱調理時においても豚脂は殆ど変化せずコク味、うま味を引き立てることができなくなる。
【0015】
酸化防止剤としては特に限定されないが、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンC脂肪酸エステル、茶抽出物、ヤマモモ抽出物、ローズマリー抽出物などを用いることができ、特にビタミンEとビタミンCの併用が好ましく用いられる。その使用量は、豚脂の状態にもよるがビタミンEは100〜3000ppm、さらに好ましくは500〜2000ppm、ビタミンCは5〜50ppm、さらに好ましくは10〜30ppmが適している。
【0016】
豚脂への酸化防止剤の添加は、スープ調整前にあらかじめ添加する。スープ調整時、あるいはスープ調整後に酸化防止剤を添加した場合、酸化防止剤が油脂の酸化劣化防止のために有効に作用せず、豚脂を目的の酸化程度で維持することが困難になりやすい。具体的にはあらかじめ溶解した液状の豚脂に酸化防止剤としてビタミンE、ビタミンCを添加した酸化防止剤添加豚脂をスープ用原料として使用するのが好ましい。
【0017】
(殺菌処理および包装容器)
市販のポタージュスープにおいては、スープおよび包装容器の殺菌処理は必須な工程である。殺菌方法としては、スープを包装容器に充填し、包装容器ごと殺菌処理する方法(レトルト殺菌法、ボイル殺菌法)、スープと容器を別々に殺菌し、無菌充填する方法がある。包装容器ごと殺菌する例としてレトルト殺菌法では、例えば120℃、20分加熱という条件を要する。これはスープに対して長時間の熱履歴が科せられることになり、スープ風味変化、および含有する油脂の酸化促進の原因となり、好ましくない。一方、スープを単独で殺菌処理を行う場合、超高温殺菌が可能になる。ここで、超高温殺菌処理とは120℃以上、2分以内の殺菌を意味する。超高温殺菌の例として、UHT殺菌が挙げられる。UHT殺菌では130〜150℃、2秒加熱でスープを殺菌可能であり、さらに包装容器に無菌充填することによりそれ以上の熱履歴が科せられることがない。超高温殺菌と無菌充填の組み合わせにより、調理加熱以外の過剰な熱履歴による風味劣化がなく、保存時の油脂の酸化安定性も良好となる。本発明では、上記のごとく酸化安定性が調整された豚脂を使用し、かつ超高温殺菌処理と無菌充填を併用することにすることにより、コク味、うま味が良好で、保存、流通時において味を維持できる液状ポタージュスープが提供される。
【0018】
本発明における、液状ポタージュスープの包装容器は、無菌処理した包装容器に無菌充填が可能であれば特に限定されることはなく、紙、プラスチック、アルミパウチ、缶など任意に使用することができる。一般的に、このような用途として、紙、プラスチック容器が好ましく用いられる。
【0019】
以下に、液状ポタージュスープスープについて説明する。
本発明は、水、油脂、食塩、動植物エキス、乳成分等から選ばれた少なくとも1種の調味成分からなる液状スープである。また、液状成分以外に肉、野菜などの固形成分を含んでもかまわない。また、風味づけのために各種調味料、香辛料も使われる。
【0020】
本発明の無菌包装容器入り液状ポタージュスープの製造は大きく以下の工程に分けられる。すなわち、(1)油脂、乳成分、動植物エキス、調味料などを混合、加熱する調理工程、(2)ホモミキサー、ホモジナイザーを用いた粉砕、均一化処理工程、(3)超高温短時間殺菌工程、(4)包装容器に無菌充填する工程である。
【0021】
本発明において、液状ポタージュスープ中の豚脂は0.5〜5質量%含まれることが好ましい。豚脂が0.5質量%未満の場合、豚脂以外の油脂を用いても、液状スープのコク味、うま味の増強効果が得られにくくなる。例えば、植物油脂を単独で用いた場合ではあっさりした風味になり、コク味、うま味が弱くなる。動物油脂であっても牛脂を単独で用いた場合は、口どけが悪くなりスープの味が重く感じるようになり好ましくない。
【0022】
液状ポタージュスープには、調味料として食塩が必ず含まれており、その使用量は通常5重量%以下含まれる。
【0023】
液状ポタージュスープには、動植物エキスが含まれる。
動植物エキスにはうま味成分が含まれ、スープには必須な成分である。肉エキスとしては牛肉、豚肉、鶏肉など、あるいは魚介類などの肉や骨を、野菜エキスとしては野菜、海草類などをそれぞれ煮出して作ったに煮出し汁、あるいはこれをペースト状、固形、顆粒状にしたものが挙げられ、これらのエキスは、原料から直接抽出しても良いし、あるいは市販品を利用しても良い。
【0024】
液状ポタージュスープには乳成分が含まれる。
ポタージュスープの主要成分として用いられる。乳成分としては、脱脂粉乳、全脂粉乳、生クリーム、牛乳、バターなどが挙げられ、脱脂粉乳以外を用いた場合は、各成分に含まれる乳脂がスープ中の油脂分として含まれることになる。本発明における乳脂の割合は0〜4.5質量%とする。乳成分はコク味に関与する。
【0025】
本発明の液状ポタージュスープには、豚脂や乳脂以外の動植物油脂を加えることができる。その量は豚脂100質量部に対して20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。20質量%以下であれば豚脂の風味増強効果が損なわれることがないため、本発明の課題を解決することが可能になる。
【0026】
液状ポタージュスープは、好みに応じて種々の成分を添加することができる。例えば、食塩以外の調味料、香辛料、澱粉、糖類、蛋白質分解物、ブイヨンなどを挙げることができる。
【0027】
本発明の液状ポタージュスープは、上記成分を用いて例えば、以下のように調整することができる。
(1)油脂、コーン、脱脂粉乳、澱粉、肉エキス、食塩、調味料、香辛料を90℃の熱湯に投入し、80〜90℃に維持しながら30分間攪拌する。(2)全体をホモミキサーにかけて固形物を粉砕し液状にする。さらにホモジナイザーを用いて0.2MPaにて2回均一化処理を行い、水と油の分離のない安定した乳化状態とする。(3)超高温殺菌のためUHT殺菌機を用い、140℃、3秒間殺菌する。(4)10〜40℃のスープを包装容器に無菌充填する。
この場合の無菌状態の充填としては、例えば無菌充填機での充填が好ましい。
本発明は、加熱調理した液状ポタージュスープを高温で短時間殺菌し、包装容器に無菌充填することで風味の劣化を防止する。
缶、レトルトパック、固形スープにおいては、製造時にレトルト処理等の過激な熱処理を伴い、製品保管時でも加温ベンダーや常温等で1〜2年の賞味期限で保管されるため、酸化安定性が弱い豚脂をスープに用いた場合、賞味期限内に良好な風味を維持することが難しくなる。
【0028】
(無菌包装パック入り液状ポタージュスープの保存、流通条件)
本発明の無菌包装パック入り液状ポタージュスープは、常温もしくはチルド状態で保存、流通させることができる。チルド状態とは一般的な冷蔵温度であり、好ましくは5〜10℃の状態である。保存時の温度は、液状ポタージュスープに含まれる油脂の酸化速度に関係し、安定な風味を維持するために、本発明の無菌包装液状ポタージュスープはチルド状態で保存、流通されることが好ましい。なお、本発明において、液状ポタージュスープ中の油脂は過酸化物価が0.3〜1.0であることが好ましい。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
(油脂の調整)
本発明の液状ポタージュスープに用いる各種油脂を表1のように製造した。すなわち、製造例1は酸化防止剤が無添加でありCDM値が小さい例、製造例2、3は酸化防止剤が適正に添加され過酸化物価とCDM値が本発明の範囲内である例、製造例4は酸化防止剤が過剰に添加されCDM値が大きすぎる例、製造例5は豚脂の過酸化物価が大きくCDMが小さい例、製造例6は植物油脂を用いた例である。
表1に製造例1〜6の組成を示す。なお、表中、V.EはビタミンE、V.CはビタミンCの略である。
【0031】
(液状ポタージュスープの調整)
本発明の液状ポタージュスープは、上記成分を表2の組成で油脂原料、A成分を90℃の熱湯に投入し、80〜90℃で30分間攪拌する。全体をホモミキサーにかけて固形物を粉砕し液状にし、さらにホモジナイザーを用いて0.2MPaにて2回均一化処理を行った。次に、UHT殺菌機を用い、140℃、3秒間殺菌したのち、30℃のスープを包装容器に無菌充填した。この無菌包装パック入り液状ポタージュスープを、7℃および、25℃で保存した。同じものを3個製造し、製造直後、2ヶ月後に各々開封し、下記の風味の評価、及びの過酸化物価の測定を行った。試験の結果を表2に示す。
【0032】
〔風味評価〕
無菌包装パック入り液状ポタージュスープを開封し、100ml加熱容器に移し、ゆるく攪拌しながらガスコンロ上、弱火で60℃まで加熱した。これを試飲容器に移し、訓練された10人のパネラーが試飲して風味評価を行った。風味評価は、コク味、うま味で評価し、各項目につき3点法(良好3点、やや良好2点、不良1点)で採点した。10人の平均点が2.8以上を◎、2.5点以上を○、2.5未満から1.5以上を△、1.5未満を×とした。
〔スープ中の油脂の過酸化物価の測定〕
液状ポタージュスープを凍結乾燥し、凍結乾燥物100質量部に対して500質量部のエーテルを加え油脂成分を抽出した。エーテルをロータリーエバポレーターで留去し、油脂成分を得た。得られた油成分について基準油脂分析試験法2.5.1.2.1で測定した過酸化物価をスープ中の油脂の過酸化物価とした。
【0033】
実施例1〜4
製造例2、製造例3の本発明の油脂を用いると、製造直後、2ヶ月後ともに風味が良好な液状ポタージュスープが得られた。
【0034】
比較例1
製造例1の酸化防止剤無添加の油脂を用いた場合、製造直後の風味は良好であったが、保存安定性が悪く、2ヶ月保存後の風味は不良であった。
【0035】
比較例2
製造例4の油脂を用いた場合、酸化安定性が良すぎるため、良好な風味が得られなかった。
【0036】
比較例3
製造例5の油脂を用いた場合、製造前より油脂が酸化しているため、調理後にはさらに油脂が劣化してしまい、最適な風味を維持することができなかった。
【0037】
比較例4、5
製造例6の植物油脂を用いた場合、豚脂特有の風味効果は得られなかった。
【0038】
比較例6
液状ポタージュスープの製造において、油脂以外の材料を上記のごとく加熱調理し、加熱調理終了後製造例2の油脂を添加して、あとは同じ作業にて無菌包装パック入り液状ポタージュスープを製造した。加熱調理時の油脂劣化がないため、風味良好な味にすることができなかった。
【0039】
比較例7
製造例2の油脂で、上記のごとくスープを製造後、スープをアルミパウチ容器に充填し、容器ごと124℃、20分間レトルト殺菌を行った。長時間の殺菌時間のため、油脂の劣化が促進し、2ヶ月保管時で良好な風味が得られなかった。
【0040】
比較例8
実施例3の液状ポタージュスープの製造において、製造例2で製造した豚脂を使用せずに、豚脂、酸化防止剤を別々に添加して、均一になるようによく攪拌した。得られた液状ポタージュスープの試験結果を表3に示す。得られた液状スープ油脂の劣化が促進し、2ヶ月保管時で良好な風味が得られなかった。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂原料に過酸化物価が0〜0.3であり、酸化防止剤を添加してCDM値を13〜25時間の範囲に調整した豚脂を使用して加熱調理すること特徴とし、超高温殺菌処理後に充填された無菌包装パック入り液状ポタージュスープ。
【請求項2】
豚脂を0.5〜5質量%含み、スープ中の油脂の過酸化物価が0.3〜1.0である請求項1に記載の無菌包装パック入り液状ポタージュスープ。

【公開番号】特開2009−39071(P2009−39071A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209649(P2007−209649)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】