説明

無菌接続装置

【解決手段】 無菌接続装置4は、第1蓋体11を備えたアイソレータ2と第2蓋体21を備えたインキュベータ3との間に除染空間S1を形成する密封手段9と、供給管路41を介して除染媒体を上記除染空間S1へと供給する除染媒体供給手段10と、上記除染空間S1の除染媒体を排出する排出管路43とを備えている。
さらに、上記第1蓋体11と第2蓋体21とを連結してこれらの周囲に環状の除染空間S1に形成する蓋体接続手段8と、該環状の除染空間S1の内部に除染媒体の流通を妨げる遮蔽部材36を設けて、上記環状の除染空間S1を細長い管路状の除染空間S1に区画し、さらに上記細長い除染空間S1の両端部分に供給管路41を、それらの間に上記排出管路43を接続している。
【効果】 除染空間を蓋体を囲繞する小容量で環状の除染空間にすることで、効率的に除染することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無菌接続装置に関し、詳しくは第1密閉ボックスと第2密閉ボックスとの間に第1蓋体および第2蓋体を外部雰囲気から隔離する除染空間を形成する密封手段と、供給管路を介して蒸気化された除染媒体を上記除染空間へと供給する除染媒体供給手段と、上記除染空間の除染媒体を排出する排出管路とを備えた無菌接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アイソレータにインキュベータを接続するとともに、アイソレータと搬送容器とを無菌状態を維持したまま連通させて、培養物等の移送を行うことが行われている。
ここで、上記アイソレータと搬送容器とを連通させる際に、それまで外部雰囲気に露出していたこれらの蓋体を除染するため、これらアイソレータと搬送容器との接続部分に外部雰囲気から隔離する比較的小容量の除染空間を形成し、送気管路を介して蒸気化された除染媒体を上記除染空間へと供給する除染媒体供給手段を備えた無菌接続装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−195432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記特許文献1の構成の場合、上記除染空間は上記アイソレータと搬送容器とが分離された状態で形成されるため、その状態で除染空間に除染媒体を供給して除染を行った後、アイソレータおよび搬送容器とを接続するようになっている。
このため、小容量の空間とはいえ、離隔したアイソレータと搬送容器との間に形成された除染空間を除染しなければならず、蒸気化された除染媒体を十分に行き渡らせ、また、エアレーションにより除染成分を除去するために時間がかかっていた。
また、該除染空間を除染した後にアイソレータおよび搬送容器の蓋体を連結してこれを一体的に開放する手順が必要であることから、使用手順が煩雑であるという問題があった。
このような問題に鑑み、本発明は除染空間を蓋体を囲繞する小容量の空間にするとともに、該環状の除染空間を効率的に除染することが可能な無菌接続装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1の発明は、開口部を第1蓋体により閉塞された第1密閉ボックスと、開口部を第2蓋体により閉塞された第2密閉ボックスとの間に、上記第1蓋体および第2蓋体を外部雰囲気から隔離する除染空間を形成する密封手段と、供給管路を介して蒸気化された除染媒体を上記除染空間へと供給する除染媒体供給手段と、上記除染空間の除染媒体を排出する排出管路とを備えた無菌接続装置において、
上記第1蓋体と第2蓋体とを連結して上記除染空間をこれら蓋体の周囲を囲繞する環状の除染空間に形成する蓋体接続手段を設け、
また、上記環状の除染空間の内部に除染媒体の流通を妨げる遮蔽部材を設けて、該環状の除染空間を、上記遮蔽部材を端部とする細長い管路状の除染空間に区画し、
さらに、上記細長い除染空間の両端部分にそれぞれ供給管路を接続するとともに、これら供給管路の接続位置の間に上記排出管路を接続したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、上記蓋体接続手段によって上記除染空間を蓋体の周囲を囲繞する環状の空間にすることができるため、上記特許文献1の構成に比べてより小容量の空間を形成することができる。また除染終了後には直ちに上記第1、第2蓋体を開放することができるため、効率的な除染作業を行うことができる。
さらに、上記環状の除染空間の内部に上記遮蔽部材を設けて細長い管路状の除染空間を形成し、この細長い除染空間の両端部分に供給管路を接続するとともに、それらの間に上記排出管路を接続することで、該管路状の除染空間全体に速やかにかつ均一に除染媒体を行き渡らせることができ、効率的に除染を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施例にかかる無菌培養システムの構成図
【図2】アイソレータとインキュベータとの接続状態を示した平面図
【図3】アイソレータとインキュベータとの接続状態を示した側面図
【図4】(a)はアイソレータとインキュベータとの分離状態を、(b)はこれらの接続状態をそれぞれ示した断面図
【図5】除染空間の形状を説明する図
【図6】上記実施例とは異なる形状の除染空間を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、図1は細胞や組織を培養する無菌培養システム1を示し、第1密閉ボックスとしてのアイソレータ2と、第2密閉ボックスとしてのインキュベータ3と、上記アイソレータ2とインキュベータ3とを接続して無菌状態を維持したまま内部空間を連通させる無菌接続装置4とを備えている。
上記アイソレータ2には、無菌エアを供給する図示しない無菌エア供給手段と、過酸化水素水蒸気等の蒸気化された除染媒体を供給する図示しない除染手段とが設けられており、アイソレータ2の使用前および使用後には上記除染手段が供給する除染媒体によって内部空間が除染され、使用中は上記無菌エアによって加圧されその内部空間の無菌状態が維持されるようになっている。
またアイソレータ2には、作業者が装着して無菌操作を行うためのグローブ5と、アイソレータ2の内部空間で使用する器具やその他の試料等を除染して搬入するためのパスボックス6とが設けられている。
上記インキュベータ3の内部空間3Aには培養容器が収容されるようになっており、さらに上記インキュベータ3は台車3Bに載置された状態で移動可能となっている。
また上記インキュベータ3には、外部から炭酸ガス等の培養に適した気体が供給可能となっており、図示しないファンによって該気体が内部空間3Aに吹き出されるようになっている。また内部空間3Aは図示しないヒータによって所定温度に保温されるようになっている。
これらアイソレータ2とインキュベータ3には、互いに内部空間を連通させるための第1、第2開口部2b,3bがそれぞれに設けられており、図4に示すように、アイソレータ2の第1開口部2bを第1蓋体11で、インキュベータ3の第2開口部3bを第2蓋体21で閉塞している。
上記無菌接続装置4は、上記アイソレータ2とインキュベータ3とを接続する接続手段7と、上記第1蓋体11と第2蓋体21とを連結する蓋体接続手段8と、アイソレータ2とインキュベータ3との間に外部雰囲気から離隔された除染空間S1を形成する密封手段9と、上記除染空間S1に除染媒体を供給する除染媒体供給手段10とを備えている。
この無菌接続装置4によれば、それまで外部に露出していた上記アイソレータ2およびインキュベータ3の第1、第2開口部2b、3bや第1、第2蓋体11、21を含む接続部分に、小容量で環状の除染空間S1を形成するとともに、この除染空間S1を除染することでアイソレータ2とインキュベータ3との内部空間の連通を速やかに行うことが可能となっている。
【0009】
以下、図2〜図4を用いて、上記第1、第2蓋体11,21、接続手段7、蓋体接続手段8、密封手段9について説明する。なお図4(a)はアイソレータ2とインキュベータ3とが分離した状態を、図4(b)はアイソレータ2とインキュベータ3とが上記接続手段7によって連結された状態をそれぞれ示している。
アイソレータ2の側壁2aには第1開口部2bが形成され、該第1開口部2bに開閉可能に設けた第1蓋体11によってアイソレータ2の内部空間2Aは外部雰囲気から隔離されるようになっている。
上記第1開口部2bは四隅が円弧状とされた略長方形を有しており、該第1開口部2bの周縁部から外部に突出するように筒状の環状部材13が気密を保った状態で固定されている。
上記環状部材13におけるアイソレータ2の内部空間2A側の端部には、樹脂製の内側シール部材13aが、外部雰囲気側の端部には樹脂製の外側シール部材13bがそれぞれ設けられている。
【0010】
上記第1蓋体11は、図4に示すようにアイソレータ2の外部側を向いた長方形の開口部11aが形成された扁平な箱状に形成されており、上記開口部11aの外周部分には上記環状部材13の内側シール部材13aに密着する平坦部11bが設けられている。
上記平坦部11bにおける上記内側シール部材13aとの当接面のさらに内周には、上記開口部11aを囲繞するように設けられた樹脂製の第1シール部材14が設けられ、上記インキュベータ3の第2蓋体21と密着するようになっている。
そして第1蓋体11は、アイソレータ2の内部空間2A側に設けられたヒンジ15によってアイソレータ2の内部空間2A側に開くように軸支され、同じく内部空間2A側には開閉レバー16が設けられている。
上記開閉レバー16は、作業者がアイソレータ2のグローブ5を装着することにより、アイソレータ2の内部空間2A側から操作可能となっており、上記開閉レバー16を側壁2aの内面に設けた留め具17に係合させることで、第1蓋体11が内側シール部材13aに押し付けられて、アイソレータ2の内部空間2Aが第1蓋体11によって密閉されるようになっている。
【0011】
上記インキュベータ3の側壁3aには第2開口部3bが形成され、該第2開口部3bには第2蓋体21が着脱手段22によって着脱可能に設けられており、該インキュベータ3の内部空間3Aは外部雰囲気より隔離されるようになっている。
上記インキュベータ3の第2開口部3bは四隅が円弧状とされた略長方形に形成されており、該第2開口部3bの周縁に沿って第2シール部材23が外部に突出させて設けられている。
上記第2蓋体21は、図4に示すようにトレー状に形成され、インキュベータ3の第2開口部3bに設けた上記第2シール部材23に密着する底部21aと、底部21aの周緑部から立設された周壁21bと、周壁21bから外側に折り返して形成した周縁面21cとから構成されている。
上記着脱手段22は、図3に示すように上記第2蓋体21の周壁21bの上下より出没可能に設けられた上下2対計4本のロックピン24と、上記2対のロックピン24をそれぞれ連結する2つの連結部材25と、上記インキュベータ3の側壁3aに設けられて、上記4本のロックピン24とそれぞれ嵌合する4つのピン係合部材26とを備えている。
上記ロックピン24は、上記第2蓋体21の周壁21bに固定された支持部材27に気密を保った状態で摺動可能に設けられており、ロックピン24はスプリング28によって周壁21bの内側から外側に突出するように付勢されている。
このような構成により、上記2本の連結部材25が上記スプリング28の付勢力によって離隔した状態では、上記ロックピン24が上記ピン係合部材26に係合し、上記第2蓋体21の底部21aが上記インキュベータ3の第2開口部3bの周縁部の第2シール部材23に密着した状態が維持されるようになっている。
逆に、2本の連結部材25を上記スプリング28の付勢力に抗して接近させると、上記ロックピン24が上記ピン係合部材26より離脱するため、上記第2蓋体21を上記インキュベータ3より離脱させることが可能となっている。
【0012】
上記接続手段7は、図2に示すように上記アイソレータ2の開口部11aの周囲に設けた環状部材13に設けられたフック31と、インキュベータ3の側面に設けられて上記フック31に係合するリング32とから構成され、これらは環状部材13やインキュベータ3を挟んだ対向位置にそれぞれ設けられている。
そして上記フック31に上記リング32を係合させることでアイソレータ2とインキュベータ3とを離隔しないように連結固定することが可能となっている。
【0013】
上記蓋体接続手段8について説明すると、まず上記接続手段7によってアイソレータ2とインキュベータ3とを連結すると、図4(b)のように上記第2蓋体21における上記周縁面21cが上記アイソレータ2の第1蓋体11に設けた第1シール部材14に密着し、第1蓋体11と第2蓋体21との内部に外部雰囲気より隔離された蓋体内部空間S2が形成されるようになっている。
そして蓋体接続手段8は、第1蓋体11における上記開口部11aの内側に2つのエアシリンダ33を備えており、該エアシリンダ33のピストンロッドの先端には円錐凹状の挿入孔が上下方向に対向した2対計4個の当接部33aが、上下に移動するように設けられている。
上記エアシリンダ33には、アイソレータ2の内部空間2Aの気密を保った状態でエア配管33bが接続され、該エア配管33bを介して図示しないエア供給源よりエアが供給されるようになっている。
一方上記第2蓋体21における2つの上記連結部材25には、図3に示すように2本のロックピン24の間にそれぞれ2本の係合ピン34が立設されており、上記エアシリンダ33によって上記当接部33aが上下に進退動すると、この当接部33aがそれぞれ各係合ピン34と嵌合するようになっている。
【0014】
上記構成を有する蓋体接続手段8によれば、上記接続手段7によってアイソレータ2とインキュベータ3とが連結固定され、上記第1蓋体11と第2蓋体21とが密着すると、上記エアシリンダ33が上記当接部33aを相互に接近させる。
すると、上記当接部33aが上記第2蓋体21に設けられた係合ピン34に係合し、その後、エアシリンダ33が係合ピン34を押圧して連結部材25を上記スプリング28の付勢力に抗して相互に接近させると、上記ロックピン24が上記インキュベータ3の開口部11aの周囲に設けたピン係合部材26から離脱する。
その結果、第1蓋体11と第2蓋体21とが連結され、上記蓋体内部空間S2が形成されるとともに、第2蓋体21がインキュベータ3より離脱可能となるため、上記第1蓋体11と第2蓋体21とを一体的に連結した状態でアイソレータ2の内部空間2Aに向けて開閉することが可能となる。
【0015】
上記密封手段9は、上記アイソレータ2の第1開口部2bを無端状に囲繞する上記環状部材13と、上記インキュベータ3の第2開口部3bを無端状に囲繞する突出部材35とから構成されている。
上記環状部材13におけるインキュベータ3との対向面には上記外側シール部材13bが設けられており、また上記突出部材35は上記第2開口部3bの周囲に設けられた上記ピン係合部材26のさらに外側を囲繞するように設けられている。
このような構成により、上記アイソレータ2とインキュベータ3とを上記接続手段7によって接続すると、図4(b)に示すように上記外側シール部材13bと突出部材35とが密着し、その内部に外部雰囲気より離隔された容積量20〜40l程度の除染空間S1が形成されるようになっている。
しかも上記密封手段9によって隔離された除染空間S1は、上記蓋体接続手段8によって連結された第1、第2蓋体11、21の周囲を取り囲む環状の空間を形成するようになっており、この除染空間S1と蓋体内部空間S2とは相互に連通しないようになっている。
なお、密封手段9は、アイソレータ2とインキュベータ3のいずれか一方に設けられていてもよい。例えば、上記突出部材35をシール部材としてこれをアイソレータ2の第1開口部2bの周囲の壁面に直接密着させる構成とすることで、上記外側シール部材13bを省略することが可能となる。
【0016】
そして本実施例における上記環状の除染空間S1の内部には、除染媒体の流通を妨げる遮蔽部材36が設けられており、該環状の除染空間S1を細長い管路状の除染空間S1に区画するようになっている。
図3に示すように、上記遮蔽部材36は上記環状の除染空間S1の上部中央に設けられており、図4(a)に示すように、上記遮蔽部材36はアイソレータ2の環状部材13に固定された部材36aと、インキュベータ3の突出部材35に設けられた部材36bと、第2蓋体21の周壁21bの外周側に設けられた部材36cとからなる3枚の板状の部材によって構成されている。
そして図4(b)に示すように上記アイソレータ2とインキュベータ3とが連結され、第1、第2蓋体11、21が接続されると、これらの部材36a〜36cが組み合わさり、上記除染空間S1を区画するようになっている。
なお上記遮蔽部材36は、上記部材36a〜36cを組み合わせた際に除染空間S1を完全に遮断する必要はなく、除染空間S1の内部における除染媒体の流通を妨げることができれば、部材36a〜36cの間に若干の隙間が形成されていてもよい。
【0017】
上記除染媒体供給手段10は過酸化水素水溶液を蒸発させて蒸気化した過酸化水素を除染媒体として供給するようになっており、この除染媒体は該除染媒体供給手段10と密封手段9との間に配設された供給管路41を流通して上記除染空間S1に供給されるようになっている。
上記供給管路41の途中にはHEPAフィルタ42が設けられ、供給管路41は当該HEPAフィルタ42に隣接した位置で供給管路41a、41bに分岐して、上記密封手段9を構成する環状部材13の上部に接続され、かつ上記遮蔽部材36を挟んだ位置に接続されている。
換言すると、上記除染空間S1は上記遮蔽部材36によって細長い管路状の空間に区画されているが、上記供給管路41a、41bはこの除染空間S1の端部となる上記遮蔽部材36の一方の面と他方の面に近い位置に接続されることで、除染媒体をこの細長い管路状の除染空間S1の両端部より供給するようになっている。
上記密封手段9を構成する環状部材13の下部には除染空間S1の内部の気体を排出するための排出管路43が接続され、この排出管路43は上記細長い管路状の除染空間S1において、その端部となる供給管路41aの接続位置と供給管路41bの接続位置の間に接続されている。また上記排出管路43にはHEPAフィルタ44と、除染媒体を分解する触媒45とが設けられている。
【0018】
以下、本発明に係る無菌接続装置4の使用方法について説明し、特にアイソレータ2とインキュベータ3とを上記接続手段7により接続した状態から、上記除染空間S1を除染する手順について説明する。
最初に、上記接続手段7によってアイソレータ2とインキュベータ3とを接続し、上記蓋体接続手段8によって第1、第2蓋体11、21を接続すると、上記密封手段9によって除染空間S1が形成されるとともに、該除染空間S1は第1、第2蓋体11、21を囲繞する環状の空間に形成される。
その結果、上記除染空間S1は外部雰囲気および上記蓋体内部空間S2から区画されることとなるが、この除染空間S1の内部にはそれまで外部雰囲気に露出していた部分が存在するため、このまま第1、第2蓋体11、21を開いてしまうと、露出箇所に付着していた菌などによってアイソレータ2やインキュベータ3の内部空間2A,3Aが汚染される恐れがある。
そこで、本実施例では上記除染空間S1を除染することにより、無菌状態で第1、第2蓋体11、21を開放可能とし、無菌状態下で互いの内部空間2A,3Aを連通させてインキュベータ3とアイソレータ2との間で培養物の移送を行うことが可能となっている。
【0019】
上述したように上記アイソレータ2およびインキュベータ3を接続するとともに第1、第2蓋体11、21を接続することで、図5に示すように第1、第2蓋体11、21の周囲には環状の除染空間S1が形成され、さらに上記遮蔽部材36により、この除染空間S1は細長い管路状の空間に形成されている。
そして、この細長い管路状の除染空間S1の両端部、すなわち上記遮蔽部材36の付近にこれを挟んだ一方側と他方側の位置に上記供給管路41a、41bが接続され、さらにこの供給管路41a、41bの間に上記排出管路43が接続されている。なお、本実施例では、管路状の除染空間S1の中間部分に接続している。
このような構成とすることで、上記除染媒体供給手段10が蒸気化した除染媒体を上記供給管路41に供給すると、この除染媒体は上記細長い管路状の除染空間S1の両端部より流入することとなる。
その後除染媒体は上記排出管路43に向けて1方向に流れ、排出管路43の接続された位置で合流して該排出管路43から排出され、これにより除染空間S1内の空気を蒸気化した除染媒体に置き換える。なお、各供給管路41a、41bは遮蔽部材36に接近させているので、遮蔽部材36側にも除染媒体は流れ、遮蔽部材36で折り返されて排出管路43側へ流れる。
このように、上記環状の除染空間S1を上記遮蔽部材36によって細長い管路状の空間に区画することで、除染空間S1に流入した除染媒体を迅速かつ均一に充満させることができる。
【0020】
このようにして除染空間S1の内部に除染媒体が充満すると、電磁弁を閉鎖して気体の流入と排出を停止して蒸気化された除染媒体をこの除染空間S1に保持する。例えばこの状態を3分保持することにより、蒸気化した除染媒体は液滴化して除染空間S1の内部に露出する部材に付着することとなる。
除染媒体を所定時間保持したら、上記除染媒体供給手段10は除染媒体を含まない空気を供給し、上記除染空間S1から除染媒体を排出するエアレーションを所定時間行う。
そして、これらの作業が終了することにより、作業者は上記アイソレータ2に設けたグローブ5を装着して該アイソレータ2の内部から開閉レバー16を操作し、一体的に結合された第1蓋体11および第2蓋体21をアイソレータ2の内部に向けて開き、アイソレータ2の内部空間2Aとインキュベータ3の内部空間3Aとを相互に連通させる。
このとき、上記除染空間S1に露出していた部分は除染されており、また第1、第2蓋体21の蓋体内部空間S2は蓋体接続手段8によって密封されていることから、外部雰囲気に露出されていた部分が除染されないままアイソレータ2およびインキュベータ3の内部空間2A、3Aに露出することはない。
また上記インキュベータ3とアイソレータ2とにおける作業が終了し、これらの接続を解除させる際には、まず作業者は開閉レバー16を操作して上記第1蓋体11および第2蓋体21を一体的に閉鎖し、上記蓋体接続手段8による第1、第2蓋体11、12の接続状態を解除し、接続手段7によるインキュベータ3とアイソレータ2との接続状態を解除すればよい。
なお、アイソレータ2の内部空間2Aで扱った細胞や組織が、微生物や細菌、ウイルス等の有害物に汚染されている可能性が懸念される場合、上記密封手段9によって除染空間S1が形成されていることから、上記除染媒体供給手段10を用いて除染空間S1を再度除染することも可能である。
そして、作業者はインキュベータ3を任意の場所まで移動させ、別のインキュベータ3を上記アイソレータ2に接続することが可能となる。
【0021】
以上のように、上記構成を有する無菌接続装置4によれば、上記接続手段7によってアイソレータ2とインキュベータ3とを接続し、上記第1蓋体11と第2蓋体21を囲繞するように環状の除染空間S1を形成することから、この小容量の除染空間S1を速やかに除染することができ、効率的にアイソレータ2とインキュベータ3とを連通させることができる。
また、この環状の除染空間S1の内部に上記遮蔽部材36を設けることで、上記除染空間S1を細長い管路状の空間とするとともに、上記遮蔽部材36に接近した位置に上記供給管路41a、41bを接続して、細長い管路状の除染空間S1の一端部分と他端部分とから除染媒体を供給するようになっている。
その結果、上記除染媒体はこの除染空間S1の内部に沿って乱流拡散せずに1方向に上記排出管路43へ向けて流れ、除染空間S1の内部全体に対して迅速かつ均一に除染媒体を行き渡らせることができる。
一方、除染媒体が排出管路43より排出される際、除染媒体は排出管路43の近傍で合流して乱流が発生するため、該排出管路43の接続された位置と対向する第1、第2蓋体11、21の外周面にも除染媒体を行き渡らせることができる。
これに対し、上記遮蔽部材36を設けず、環状の除染空間S1に対して1つの供給管路41から除染媒体を流入させる構成とした場合、流入した除染媒体は上記環状の除染空間S1に流入した後に左右均等に分岐するとは限らず、除染媒体が均一に行き渡らない可能性があることから、除染効果にばらつきが生じる危険性がある。
また、上記遮蔽部材36を設けて細長い管路状の除染空間S1を形成するものの、この管路状の除染空間S1の一端部分に供給管路41を、他端部分に排出管路43を接続する構成とした場合、除染媒体は1方向に流れるが、排出管路43の接続された部分において除染媒体が直ちに排出管路43より排出されるため、該排出管路43の接続された部分の遮蔽部材36の隅に除染媒体が十分に行き渡らないという問題が発生する。
【0022】
なお、上記図5に示す除染区間に対してひとつの遮蔽部材36を設ける構成に対し、図6に示すように2つ以上の遮蔽部材36を設けて2つ以上の細長い管路状の除染空間S1を形成してもよい。
図6に示すように第1、第2蓋体11、21を挟んで対向する位置に2つの遮蔽部材36を設けた場合、この遮蔽部材36によって除染空間S1は略コ字形の細長い管路状の空間が上下に2つ形成されることとなる。
この場合、管路状の除染空間S1の端部にはそれぞれ異なる遮蔽部材36が位置することとなり、供給管路41が各々遮蔽部材36の近傍に接続され、一方端と他方端とに接続した各供給管路41の接続位置の間に、排出管路43を接続する。
【符号の説明】
【0023】
1 無菌培養システム 2 アイソレータ
3 インキュベータ 4 無菌接続装置
7 接続手段 8 蓋体接続手段
9 密封手段 10 除染媒体供給手段
11 第1蓋体 21 第2蓋体
36 遮蔽部材 41 供給管路
42 排出管路 S1 除染空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を第1蓋体により閉塞された第1密閉ボックスと、開口部を第2蓋体により閉塞された第2密閉ボックスとの間に、上記第1蓋体および第2蓋体を外部雰囲気から隔離する除染空間を形成する密封手段と、供給管路を介して蒸気化された除染媒体を上記除染空間へと供給する除染媒体供給手段と、上記除染空間の除染媒体を排出する排出管路とを備えた無菌接続装置において、
上記第1蓋体と第2蓋体とを連結して上記除染空間をこれら蓋体の周囲を囲繞する環状の除染空間に形成する蓋体接続手段を設け、
また、上記環状の除染空間の内部に除染媒体の流通を妨げる遮蔽部材を設けて、該環状の除染空間を、上記遮蔽部材を端部とする細長い管路状の除染空間に区画し、
さらに、上記細長い除染空間の両端部分にそれぞれ供給管路を接続するとともに、これら供給管路の接続位置の間に上記排出管路を接続したことを特徴とする無菌接続装置。
【請求項2】
上記遮蔽部材を2つ以上設け、該遮蔽部材によって上記除染空間を2つ以上に区画することを特徴とする請求項1に記載の無菌接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−147723(P2012−147723A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8756(P2011−8756)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】