無限軌道式車両洗浄装置
【目的】 洗浄する無限軌道部の形状に合わせた洗浄パターンを任意に設定することができる洗浄装置を提供することにある。
【解決手段】 台車3の走行動作とノズル装置4の昇降動作を組み合わせた複数の洗浄パターンが記憶されたメモリ42と、このメモリ42に記憶された複数の洗浄パターンにおける台車3やノズル装置4の動作内容を任意に変更する設定変更手段44と、この設定変更手段44で設定変更した洗浄パターンに基づいて台車3及びノズル装置4を制御する制御手段40とを備えたものである。
【解決手段】 台車3の走行動作とノズル装置4の昇降動作を組み合わせた複数の洗浄パターンが記憶されたメモリ42と、このメモリ42に記憶された複数の洗浄パターンにおける台車3やノズル装置4の動作内容を任意に変更する設定変更手段44と、この設定変更手段44で設定変更した洗浄パターンに基づいて台車3及びノズル装置4を制御する制御手段40とを備えたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に無限軌道式車両の無限軌道部に対し、洗浄水を噴射し、付着した泥土等を洗浄除去するために使用される無限軌道式車両洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無限軌道部を有する車両(例えば、ショベルカーやブルドーザ等の建設機械)は、足場の悪い中での作業となるので、作業後は無限軌道部にたくさんの泥土が付着する。付着した泥土は、時間の経過とともに乾燥したり凍結したりして無限軌道部に固着するので、作業者はこの固着した泥土を剥離する作業に多大な労力と時間を要していた。そこで、特許文献1に見られるような無限軌道式車両洗浄装置が提案された。この装置は、無限軌道式車両の側面に沿って走行する本体と、この本体に昇降可能に支持される支持体と、この支持体に設けられる首振りノズルとからなり、本体を走行させながら首振りノズルを作動し、波形軌跡を描くように高圧の洗浄水を噴射していき、支持体の昇降位置を変えながら無限軌道部を洗浄するものである。また、この洗浄装置には、洗浄する車両の種類を選択する機種選択スイッチが備えられ、機種に応じた洗浄パターンが選択できるようになっている。
【0003】
ところで、近年における無限軌道式車両の多様化に伴い、洗浄する無限軌道部の種類が増えてきており、機種選択だけでは対応しきれなくなっている。また、全ての無限軌道部に適した洗浄パターンを予め設定しておくことは、記憶容量の増大や操作の煩雑化を招き好ましくない。
【特許文献1】特許第2583156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、洗浄する無限軌道部の形状に合わせた洗浄パターンを任意に設定することができる洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために本発明は、無限軌道式車両の側面に沿って配置したガイドレールと、このガイドレール上を走行する台車と、この台車上を上下昇降するノズル装置と、このノズル装置に洗浄水を供給するポンプとを備え、ノズル装置から噴射される洗浄水により無限軌道式車両の洗浄を図る洗浄装置において、台車の走行動作とノズル装置の昇降動作を組み合わせた複数の洗浄パターンが記憶された記憶手段と、この記憶手段に記憶された複数の洗浄パターンにおける台車やノズル装置の動作内容を任意に変更する設定変更手段と、この設定変更手段で設定変更した洗浄パターンに基づいて台車及びノズル装置を制御する制御手段とを備えたものである。
【0006】
設定変更の手段として、記憶手段に記憶された洗浄パターンの初期設定値を任意に増減する操作装置を備え、この操作装置で変更した洗浄パターンを記憶手段に記憶された洗浄パターンと書き換えるようにする。
【0007】
また、可搬式記憶媒体を介して外部編集装置で編集した洗浄パターンの内容を読み込むリーダ装置を備え、このリーダ装置で読み込んだ洗浄パターンを記憶手段に記憶された洗浄パターンと書き換えるようにする。
【0008】
更に、記憶手段に記憶された洗浄パターンを実行しながら台車やノズル装置の動作内容を調整する遠隔操作装置を備え、この遠隔操作装置で調整した洗浄パターンを記憶手段に記憶された洗浄パターンと書き換えるようにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗浄する無限軌道式車両の機種を選択し、その洗浄パターンの初期設定を任意に変更できるようにしたので、予め設定しておく機種別の洗浄コースを少なくしてもあらゆる機種に対応した洗浄が実行できる。初期設定を変更する場合、洗浄パターンにおける台車やノズル装置の動作内容を数値データや画像データで表示し、そのデータを増減させるようにすれば、感覚的にあと20cm台車の走行範囲を延長したいといった設定変更を容易に実行することができる。また、台車やノズル装置の動作内容を外部編集装置により編集して可搬式記憶媒体を介して本体側に送るようにすれば、メーカー側がユーザにあった洗浄パターンを作成し、現地に赴くことなく適切な対応が可能になる。更に、実際に洗浄を行いながら台車やノズル装置の位置を調整し、その洗浄動作を記憶しておけば、より現実的な洗浄パターンが得られる。
【0010】
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に示す実施例1の形態。
【実施例1】
【0012】
以下、図面を基に本発明の実施例1について説明する。図1は実施例1の無限軌道式車両洗浄装置が設置された洗車場全体のレイアウト図、図2〜4は洗浄装置の構成を示す説明図である。
1,1は洗浄装置で、洗車スペースAに停車した無限軌道式車両Cを挟んだ位置に設けられるガイドレール2,2と、このガイドレール上を往復走行する台車3,3と、この台車上を昇降するノズル装置4,4とから構成されている。
【0013】
台車3は、断面I型をなすガイドレール2の上面フラット面を挟持するベース3aと、ノズル装置4を昇降支持するフレーム3bとから構成する。
ベース3aには、ガイドレール2を挟む車輪5・5と、台車3の前進及び後進の走行限界を検出する非接触式(例えばマグネット式や光電式)のリミットスイッチ6a・6bを備えるとともに、走行方向の前端と後端にワイヤー7が接続されている。ワイヤー7は、ガイドレール2の前端付近に設けたモータ室8内に装備されるウインチドラム9と、ガイドレール2の後端付近に設けたプーリ室10内のプーリ11との間に巻回され、ベース3aを無端状に連係している。ウインチドラム9は、正逆可能な走行モータ12により駆動され、ワイヤー7を巻き取り/巻き戻ししながら台車3をガイドレール2に沿って往復走行する。駆動モータ12の出力軸には、走行エンコーダ13を接続し、台車の走行位置を検出している。また、モータ室8とプーリ室10は、それぞれ前記リミットスイッチが反応するスイッチ板14a・14bをガイドレール側に突出し、台車の走行範囲を与えている。
フレーム3bは、内部に昇降モータ15と、このモータによってノズル装置4を昇降する駆動部16と、昇降リミットスイッチ17a,17bとを備え、ノズル装置4が昇降リミットスイッチ17a,17bをスイッチングする昇降範囲内で台車上を昇降する。
【0014】
ノズル装置4は、車両に対面する内面側に、低圧で大流量の洗浄水を噴射する低圧ノズル20と高圧で小流量の洗浄水を噴射する高圧ノズル21を前後に並べて配置したノズル体22を備えるとともに、ノズル体22を上下方向に揺動する首振りモータ23と、振幅リミットスイッチ24a,24bを備え、振幅リミットスイッチ24a,24bがスイッチングすることで与えられる揺動範囲内でノズル体22を揺動する。首振りモータ23の出力軸には、振動エンコーダ25を接続し、ノズル体22の揺動位置を検出している。
【0015】
図5は無限軌道式車両洗浄装置が設置された洗車場全体の平面図であり、この図を用いて給水系及び給電系について説明する。
洗車スペースAは、出入口側が高くなるように傾斜しており、洗車時に発生した泥水や剥離した泥土が洗車スペースA前方の集水溝27に流れるようになっている。28は濾過槽で、集水溝27に流れ込んだ洗車排水をフィルター等で濾過して貯留するものであり、内部に低圧ポンプ29,29を設け、この貯留水を配管30,30を通じて低圧ノズル20,20に給水する。31は水タンクで、水道等の給水源と接続して常時満水の状態を保持されており、高圧ポンプ32,32が接続され、この貯留水を配管33,33を通じて高圧ノズル21,21に給水する。34は料金受付や洗車コース選択などを行う受付ユニットで、使用者が操作しやすい高さに操作パネルや電装品を備え、入出力ケーブル35,35で各ポンプ、モータ、スイッチ等と接続している。
【0016】
続いて、図6を用いて上記実施例1の制御系について説明する。
40は制御部で、前記受付ユニット34の内部に設けられ、マイクロコンピューター41とメモリ42を備え、I/Oポート43において台車3の走行モータ12、走行エンコーダ13、走行リミットスイッチ6a,6b、ノズル装置4の昇降モータ15、昇降リミットスイッチ17a,17b、首振りモータ23、首振りエンコーダ25、振幅リミットスイッチ24a,24b、低圧ポンプ29、高圧ポンプ32及び受付ユニット前面に設けた操作パネル44と接続している。
【0017】
操作パネル44には、洗浄する車両の種類を選択するための機種選択キー45、洗浄車両の汚れ度合いによって洗浄回数を設定するための汚れ度合いキー46、機種及び汚れ度合いを切り替える送り/戻りキー47、左右に設けられる洗浄装置の使用する側を切り替える切替キー48、洗車スペース内に停止させた洗浄車両の位置により適宜噴射開始位置を調整するための位置決めキー49、設定した内容を決定登録するための決定キー50、決定された内容のプログラムをスタートさせたり、一時停止するためのスタート/一時停止キー51、噴射を停止させるための停止キー52の各操作キーと、運転モードと管理モードを切り替えるためのキースイッチ53と、7セグ表示パネル54とを備えている。
【0018】
次に、本実施例1の無限軌道式車両洗浄装置の動作を説明する。
作業者は、洗車スペースA内の所定位置に洗浄車両Cを停止させ、操作パネル44を操作して洗車プログラムを実行させる。その手順としては、まず機種選択キー45を入力し、送り/戻りキー47を操作して表示パネル54の表示を切替ながら希望する機種を表示させた後、決定キー50を入力する。次に、車両の汚れ度合いキー46を入力し、送り/戻りキー47を操作して表示パネル54の表示を切替ながら希望する洗浄回数を表示させた後、決定キー50を入力する。ここまでの操作を行うと、ポンプ29,32が作動してノズル20,21から洗浄水が噴射される。作業者は、この洗浄水が当たっている場所を見ながら位置決めキー49を用いて台車3の走行位置とノズル装置4の首振り位置を操作し、洗浄する車両に応じて決められた洗浄開始位置に洗浄水が当たるように移動させる。
【0019】
ノズルの位置決めは、車両の停車位置や機種によって洗浄水が当たる部位に差が生じないようにするためのものである。台車3は、初期状態では走行リミット6aが検出する走行後端位置・昇降リミット17aが検出する昇降下端位置・振幅リミット24aが検出する首振り下向き位置に待機しているので、位置決めキー49を用いて走行位置と首振り位置を調整し、停車した車両に応じた洗浄開始位置に設定する。所望の位置に合わせた後、決定キー50を入力すると、設定が有効となり、スタートキー51を入力することで、決定されたプログラムに従い、設定した洗浄開始位置から洗車作業が実行される。
【0020】
図7は洗浄する機種を「油圧ショベルカー」・汚れ度合いを「レベル1(少ない)」として設定した場合に実行される洗浄プログラムを示したフローチャート図、図8〜11はこの洗浄プログラムを実行した場合のノズルの洗浄軌跡を示した概念図であり、これらの図を用いて洗浄動作について説明する。
【0021】
洗浄がスタートすると、台車3の走行位置を変えながらノズル体22を鉛直方向に動かして、車両の無限軌道部に固着した泥土を裁断しながら剥ぎ取る第1洗浄パターンが実行される(1)。第1洗浄パターンは、図8に示すような洗浄軌跡を描いて無限軌道部に洗浄水を作用するもので、スタート前に位置決めした洗浄開始位置P1(走行位置:任意、昇降位置:下端、首振り位置:任意)を基点として動作を開始し、まず昇降モータ15を駆動してノズル装置4を所定高さ位置h1と洗浄開始位置P1の高さの間で昇降させる(矢印a)。その後、走行モータ12を駆動して台車3を距離s1前進させ(矢印b)、その位置で再びノズル装置4を昇降させる。こうして、ノズル装置4を高さh1昇降−台車3を距離s1前進 という動作を交互に実行し、n1回(ここでは20回)繰り返したところで台車3の前進を停止する。続いて、同様な手順で、ノズル装置4を高さh1昇降−台車3を距離s1後進を順次行っていき、n1回繰り返したところで台車後進を停止する。このような第1洗浄パターンにより得られる櫛形の洗浄軌跡は、無限軌道部の上部に固着した泥土を裁断するのに有効であり、ノズル昇降に伴う鉛直方向への高圧洗浄水の噴射が、同一の軌跡上を往復で作用することで、固くなった泥土が確実に破壊される。そして、破壊した泥土は、大流量の低圧噴射により柔和して洗い流され、無限軌道部から剥離されるのである。
【0022】
次に、ノズル体22の昇降位置を変えながら台車を前後方向に動かすことで、第1洗浄パターンで剥ぎ取った泥土を洗い流す第2洗浄パターンが実行される(2)。第2洗浄パターンは、図9に示すような洗浄軌跡を描いて無限軌道部に洗浄水を作用するもので、位置P2(走行位置:前端、昇降位置:下端、首振り位置:上向き)を基点として動作を開始し、走行モータ12を駆動して台車3を距離s2まで往復させる(矢印c)。その後、昇降モータ15を駆動して台車3を所定高さh2だけ上昇させ(矢印d)、その高さ位置で再び台車3を往復走行させる。こうして、ノズル装置4の高さ位置を変えて台車3をn2回(ここでは3回)往復させる。このような第2洗浄パターンにより、第1洗浄パターンで取り除くことができなかった泥土も水平方向への高圧洗浄水の噴射で、完全に剥ぎ取られる。そして、大流量の低圧噴射により更に柔和して無限軌道部から剥離するのである。
【0023】
次に、ノズル体22の首振り角度を調整して台車3を前後方向に動かすことで、無限軌道部の上面を洗浄する第3洗浄パターンが実行される(3)。第3洗浄パターンは、図10に示すような洗浄軌跡を描いて無限軌道部の上面に洗浄水を作用するもので、位置P3(走行位置:前端、昇降位置:上端、首振り位置:下向き位置から所定角度r1上向きに揺動させた位置)を基点として動作を開始し、走行モータ12を駆動して台車3を距離s3まで往復させ(矢印e)、その後昇降モータ15を駆動して台車3を所定高さh3だけ下降させ(矢印f)、その高さ位置で再び台車を往復走行させる。こうして、ノズル装置4の高さ位置を変えて台車3をn3回(ここでは4回)往復させる。このような第3洗浄パターンにより、無限軌道部の上面にこびりついた泥土が洗浄される。
【0024】
次に、ノズルの首振り角度を変えながら台車3を前後方向に動かすことで、無限軌道部の内底面を洗浄する第4洗浄パターンが実行される(4)。第4洗浄パターンは、図11に示すような洗浄軌跡を描いて無限軌道部の内底面に洗浄水を作用するもので、位置P4(走行位置:前端、昇降位置:下端、首振り位置:上向き位置)を基点として動作を開始し、首振りモータ23を駆動してノズル体22を所定角度r2下方向に揺動させて(矢印g)、走行モータ12を駆動して台車3を距離s4まで往復させる(矢印h)。その後、首振りモータ23を駆動してノズル体22を所定角度r2下方向に揺動させる毎に台車3を往復走行させ、ノズルの揺動角度を変えて台車3をn4回(ここでは3回)往復させる。このような第4洗浄パターンにより、無限軌道部の内底面にこびりついた泥土が洗浄される。
【0025】
こうして、第1〜4洗浄パターンを実行すると、油圧ショベルカー用の洗浄プログラムが終了となる。本装置において噴射される洗浄水は、例えば、低圧大流量ノズルからは約300リットル/分、0.3MPaであり、高圧低流量ノズルからは10リットル/分、20MPaであって、このような2種類の洗浄水噴射により、凍土のように非常に堅く固着しているものに対しても、高圧によりブロック状にカットすると同時に大流量によりカットしたブロックを落としていくという洗浄形態により、確実に落とすことができる。
【0026】
尚、台車走行動作における走行距離s1〜s4、ノズル首振り動作における揺動角度r1・r2は、それぞれ走行エンコーダ13及び首振りエンコーダ25によって検出され、ノズル昇降動作におけるノズル装置の所定高さh1〜h3は、昇降モータ15の通電時間により決定される。これは、洗浄する車両の種類、主に無限軌道部の長さや高さに対応するためである。
【0027】
さて、このような洗浄プログラムにおける各洗浄パターンの設定値は、機種選択キー45で選択可能な機種毎に予め記憶されているものであるが、本発明では、これら初期設定値を変更することが可能である。以下、その設定変更の手順について図12を用いて説明する。実施例1における設定変更は、操作パネル44での操作により行うものである。
【0028】
キースイッチ51により管理モードに切り替えると、表示パネル54が全点灯になる。ここで機種選択キー45を入力すると、最初の洗浄プログラムである「PC−−60」が表示されるので、送り/戻りキー47を使って変更したい洗浄プログラムに合わせた後、決定キー50を入力すると表示パネル54が設定変更表示に切り替わる。ここでは、まず第1洗浄パターンの走行距離s1が初期設定値とともに表示パネル54に表示されるので、数値を送り/戻りキー47で任意(0〜99)に設定し、決定キー50を入力する。続いて、第1洗浄パターンの昇降高さh1が初期設定値とともに表示パネルに表示されるので、数値を送り/戻りキー47で任意(0〜99)に設定し、決定キー50を入力する。次に、第1洗浄パターンの昇降回数n1が初期設定値とともに表示パネル54に表示されるので、数値を送り/戻りキー47で任意(0〜99)に設定し、決定キー50を入力する。
【0029】
以後、送り/戻りキー47を入力する毎に、第2洗浄パターンの走行距離s2・昇降高さh2、第3洗浄工程の走行距離s3・首振り角度r1・昇降高さh3、第4洗浄工程の走行距離s4・首振り角度r2の順に表示パネル54に表示され、同様な手順で初期設定の変更ができる。どの項目を変更している時でもスタートキー51を入力すれば、それまで変更した設定値が初期設定値と書き換えられ、表示パネル54が変更した洗浄プログラムの表示に戻る。
【0030】
このように機種選択だけでは対応しきれない洗浄動作もユーザが任意に設定値を変更できるようにすることで、使用目的に適した洗浄プログラムに書き換えることができる。
尚、表示パネルを複数の情報が表示できる多機能モニタにし、洗浄工程名や変更項目名を文字出力して初期設定値を変更できるようにしたり、或いは台車やノズル装置の動作を画像表示して初期設定値に沿った洗浄動作を再現しながら、台車やノズル装置の位置を補正できるようにしてもよい。
【実施例2】
【0031】
次に、別の設定変更の手順について図13を用いて説明する。実施例2における設定変更は、PC(パソコン)等の外部編集装置を用いて行うものである。
実施例2の洗浄装置は、上記実施例1の装置に、操作パネル60にカードやスティック式の可搬型記憶媒体63を受け入れるリーダ装置61を追加している。外部編集装置62でユーザのニーズに合わせた洗浄パターンを細かく設定し、その洗浄パターンを記憶媒体63に記憶させて本体側のリーダ装置61で読み込む。本体側の制御部では、メモリに記憶された洗浄プログラムをリーダ装置61で読み込んだ洗浄プログラムに書き換える。
【実施例3】
【0032】
次に、別の設定変更の手順について図14を用いて説明する。実施例3における設定変更は、リモコン等の遠隔操作装置を用いて行うものである。
実施例3の洗浄装置は、上記実施例1の装置に、洗浄受付等の操作を操作パネル70から離れた位置で行うことができる遠隔操作装置71を追加している。この遠隔操作装置71では、通常の洗浄受付が行える他、台車やノズル装置の移動範囲を任意に設定できる機能を備える。任意に設定する場合は、機種等に関係なく、第1洗浄パターンから第4洗浄パターンまで順に実行し、ユーザが洗浄したい範囲や程度を指定していく。このとき、各洗浄パターンにおける台車やノズル装置の動作はリミット間で走行・昇降するように再現し、それぞれ止めたい位置で決定キーを入力するようにする。
【産業上の利用可能性】
【0033】
設置場所や設置店における洗浄頻度の高い無限軌道式車両に応じたオリジナルな洗浄プログラムを登録しておくことが可能な洗浄装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1の無限軌道式車両洗浄装置が設置された洗車場全体のレイアウト図である。
【図2】実施例1の無限軌道式車両洗浄装置の構成を示す正面図である。
【図3】同装置の平面図である。
【図4】同装置の側面断面図である。
【図5】同装置が設置された洗車場全体の平面図である。
【図6】実施例1の制御系を示すブロック図である。
【図7】洗浄プログラムを示したフローチャート図である。
【図8】第1洗浄パターンでのノズル動作を示す説明図である。
【図9】第2洗浄パターンでのノズル動作を示す説明図である。
【図10】第3洗浄パターンでのノズル動作を示す説明図である。
【図11】第4洗浄パターンでのノズル動作を示す説明図である。
【図12】設定変更の手順を示す説明図である。
【図13】実施例2の操作パネル60を示す説明図である。
【図14】実施例3の操作パネル70を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 洗浄装置
2 ガイドレール
3 台車
4 ノズル装置
20 低圧ノズル
21 高圧ノズル
40 制御部
42 メモリ
44 操作パネル
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に無限軌道式車両の無限軌道部に対し、洗浄水を噴射し、付着した泥土等を洗浄除去するために使用される無限軌道式車両洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無限軌道部を有する車両(例えば、ショベルカーやブルドーザ等の建設機械)は、足場の悪い中での作業となるので、作業後は無限軌道部にたくさんの泥土が付着する。付着した泥土は、時間の経過とともに乾燥したり凍結したりして無限軌道部に固着するので、作業者はこの固着した泥土を剥離する作業に多大な労力と時間を要していた。そこで、特許文献1に見られるような無限軌道式車両洗浄装置が提案された。この装置は、無限軌道式車両の側面に沿って走行する本体と、この本体に昇降可能に支持される支持体と、この支持体に設けられる首振りノズルとからなり、本体を走行させながら首振りノズルを作動し、波形軌跡を描くように高圧の洗浄水を噴射していき、支持体の昇降位置を変えながら無限軌道部を洗浄するものである。また、この洗浄装置には、洗浄する車両の種類を選択する機種選択スイッチが備えられ、機種に応じた洗浄パターンが選択できるようになっている。
【0003】
ところで、近年における無限軌道式車両の多様化に伴い、洗浄する無限軌道部の種類が増えてきており、機種選択だけでは対応しきれなくなっている。また、全ての無限軌道部に適した洗浄パターンを予め設定しておくことは、記憶容量の増大や操作の煩雑化を招き好ましくない。
【特許文献1】特許第2583156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、洗浄する無限軌道部の形状に合わせた洗浄パターンを任意に設定することができる洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために本発明は、無限軌道式車両の側面に沿って配置したガイドレールと、このガイドレール上を走行する台車と、この台車上を上下昇降するノズル装置と、このノズル装置に洗浄水を供給するポンプとを備え、ノズル装置から噴射される洗浄水により無限軌道式車両の洗浄を図る洗浄装置において、台車の走行動作とノズル装置の昇降動作を組み合わせた複数の洗浄パターンが記憶された記憶手段と、この記憶手段に記憶された複数の洗浄パターンにおける台車やノズル装置の動作内容を任意に変更する設定変更手段と、この設定変更手段で設定変更した洗浄パターンに基づいて台車及びノズル装置を制御する制御手段とを備えたものである。
【0006】
設定変更の手段として、記憶手段に記憶された洗浄パターンの初期設定値を任意に増減する操作装置を備え、この操作装置で変更した洗浄パターンを記憶手段に記憶された洗浄パターンと書き換えるようにする。
【0007】
また、可搬式記憶媒体を介して外部編集装置で編集した洗浄パターンの内容を読み込むリーダ装置を備え、このリーダ装置で読み込んだ洗浄パターンを記憶手段に記憶された洗浄パターンと書き換えるようにする。
【0008】
更に、記憶手段に記憶された洗浄パターンを実行しながら台車やノズル装置の動作内容を調整する遠隔操作装置を備え、この遠隔操作装置で調整した洗浄パターンを記憶手段に記憶された洗浄パターンと書き換えるようにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗浄する無限軌道式車両の機種を選択し、その洗浄パターンの初期設定を任意に変更できるようにしたので、予め設定しておく機種別の洗浄コースを少なくしてもあらゆる機種に対応した洗浄が実行できる。初期設定を変更する場合、洗浄パターンにおける台車やノズル装置の動作内容を数値データや画像データで表示し、そのデータを増減させるようにすれば、感覚的にあと20cm台車の走行範囲を延長したいといった設定変更を容易に実行することができる。また、台車やノズル装置の動作内容を外部編集装置により編集して可搬式記憶媒体を介して本体側に送るようにすれば、メーカー側がユーザにあった洗浄パターンを作成し、現地に赴くことなく適切な対応が可能になる。更に、実際に洗浄を行いながら台車やノズル装置の位置を調整し、その洗浄動作を記憶しておけば、より現実的な洗浄パターンが得られる。
【0010】
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に示す実施例1の形態。
【実施例1】
【0012】
以下、図面を基に本発明の実施例1について説明する。図1は実施例1の無限軌道式車両洗浄装置が設置された洗車場全体のレイアウト図、図2〜4は洗浄装置の構成を示す説明図である。
1,1は洗浄装置で、洗車スペースAに停車した無限軌道式車両Cを挟んだ位置に設けられるガイドレール2,2と、このガイドレール上を往復走行する台車3,3と、この台車上を昇降するノズル装置4,4とから構成されている。
【0013】
台車3は、断面I型をなすガイドレール2の上面フラット面を挟持するベース3aと、ノズル装置4を昇降支持するフレーム3bとから構成する。
ベース3aには、ガイドレール2を挟む車輪5・5と、台車3の前進及び後進の走行限界を検出する非接触式(例えばマグネット式や光電式)のリミットスイッチ6a・6bを備えるとともに、走行方向の前端と後端にワイヤー7が接続されている。ワイヤー7は、ガイドレール2の前端付近に設けたモータ室8内に装備されるウインチドラム9と、ガイドレール2の後端付近に設けたプーリ室10内のプーリ11との間に巻回され、ベース3aを無端状に連係している。ウインチドラム9は、正逆可能な走行モータ12により駆動され、ワイヤー7を巻き取り/巻き戻ししながら台車3をガイドレール2に沿って往復走行する。駆動モータ12の出力軸には、走行エンコーダ13を接続し、台車の走行位置を検出している。また、モータ室8とプーリ室10は、それぞれ前記リミットスイッチが反応するスイッチ板14a・14bをガイドレール側に突出し、台車の走行範囲を与えている。
フレーム3bは、内部に昇降モータ15と、このモータによってノズル装置4を昇降する駆動部16と、昇降リミットスイッチ17a,17bとを備え、ノズル装置4が昇降リミットスイッチ17a,17bをスイッチングする昇降範囲内で台車上を昇降する。
【0014】
ノズル装置4は、車両に対面する内面側に、低圧で大流量の洗浄水を噴射する低圧ノズル20と高圧で小流量の洗浄水を噴射する高圧ノズル21を前後に並べて配置したノズル体22を備えるとともに、ノズル体22を上下方向に揺動する首振りモータ23と、振幅リミットスイッチ24a,24bを備え、振幅リミットスイッチ24a,24bがスイッチングすることで与えられる揺動範囲内でノズル体22を揺動する。首振りモータ23の出力軸には、振動エンコーダ25を接続し、ノズル体22の揺動位置を検出している。
【0015】
図5は無限軌道式車両洗浄装置が設置された洗車場全体の平面図であり、この図を用いて給水系及び給電系について説明する。
洗車スペースAは、出入口側が高くなるように傾斜しており、洗車時に発生した泥水や剥離した泥土が洗車スペースA前方の集水溝27に流れるようになっている。28は濾過槽で、集水溝27に流れ込んだ洗車排水をフィルター等で濾過して貯留するものであり、内部に低圧ポンプ29,29を設け、この貯留水を配管30,30を通じて低圧ノズル20,20に給水する。31は水タンクで、水道等の給水源と接続して常時満水の状態を保持されており、高圧ポンプ32,32が接続され、この貯留水を配管33,33を通じて高圧ノズル21,21に給水する。34は料金受付や洗車コース選択などを行う受付ユニットで、使用者が操作しやすい高さに操作パネルや電装品を備え、入出力ケーブル35,35で各ポンプ、モータ、スイッチ等と接続している。
【0016】
続いて、図6を用いて上記実施例1の制御系について説明する。
40は制御部で、前記受付ユニット34の内部に設けられ、マイクロコンピューター41とメモリ42を備え、I/Oポート43において台車3の走行モータ12、走行エンコーダ13、走行リミットスイッチ6a,6b、ノズル装置4の昇降モータ15、昇降リミットスイッチ17a,17b、首振りモータ23、首振りエンコーダ25、振幅リミットスイッチ24a,24b、低圧ポンプ29、高圧ポンプ32及び受付ユニット前面に設けた操作パネル44と接続している。
【0017】
操作パネル44には、洗浄する車両の種類を選択するための機種選択キー45、洗浄車両の汚れ度合いによって洗浄回数を設定するための汚れ度合いキー46、機種及び汚れ度合いを切り替える送り/戻りキー47、左右に設けられる洗浄装置の使用する側を切り替える切替キー48、洗車スペース内に停止させた洗浄車両の位置により適宜噴射開始位置を調整するための位置決めキー49、設定した内容を決定登録するための決定キー50、決定された内容のプログラムをスタートさせたり、一時停止するためのスタート/一時停止キー51、噴射を停止させるための停止キー52の各操作キーと、運転モードと管理モードを切り替えるためのキースイッチ53と、7セグ表示パネル54とを備えている。
【0018】
次に、本実施例1の無限軌道式車両洗浄装置の動作を説明する。
作業者は、洗車スペースA内の所定位置に洗浄車両Cを停止させ、操作パネル44を操作して洗車プログラムを実行させる。その手順としては、まず機種選択キー45を入力し、送り/戻りキー47を操作して表示パネル54の表示を切替ながら希望する機種を表示させた後、決定キー50を入力する。次に、車両の汚れ度合いキー46を入力し、送り/戻りキー47を操作して表示パネル54の表示を切替ながら希望する洗浄回数を表示させた後、決定キー50を入力する。ここまでの操作を行うと、ポンプ29,32が作動してノズル20,21から洗浄水が噴射される。作業者は、この洗浄水が当たっている場所を見ながら位置決めキー49を用いて台車3の走行位置とノズル装置4の首振り位置を操作し、洗浄する車両に応じて決められた洗浄開始位置に洗浄水が当たるように移動させる。
【0019】
ノズルの位置決めは、車両の停車位置や機種によって洗浄水が当たる部位に差が生じないようにするためのものである。台車3は、初期状態では走行リミット6aが検出する走行後端位置・昇降リミット17aが検出する昇降下端位置・振幅リミット24aが検出する首振り下向き位置に待機しているので、位置決めキー49を用いて走行位置と首振り位置を調整し、停車した車両に応じた洗浄開始位置に設定する。所望の位置に合わせた後、決定キー50を入力すると、設定が有効となり、スタートキー51を入力することで、決定されたプログラムに従い、設定した洗浄開始位置から洗車作業が実行される。
【0020】
図7は洗浄する機種を「油圧ショベルカー」・汚れ度合いを「レベル1(少ない)」として設定した場合に実行される洗浄プログラムを示したフローチャート図、図8〜11はこの洗浄プログラムを実行した場合のノズルの洗浄軌跡を示した概念図であり、これらの図を用いて洗浄動作について説明する。
【0021】
洗浄がスタートすると、台車3の走行位置を変えながらノズル体22を鉛直方向に動かして、車両の無限軌道部に固着した泥土を裁断しながら剥ぎ取る第1洗浄パターンが実行される(1)。第1洗浄パターンは、図8に示すような洗浄軌跡を描いて無限軌道部に洗浄水を作用するもので、スタート前に位置決めした洗浄開始位置P1(走行位置:任意、昇降位置:下端、首振り位置:任意)を基点として動作を開始し、まず昇降モータ15を駆動してノズル装置4を所定高さ位置h1と洗浄開始位置P1の高さの間で昇降させる(矢印a)。その後、走行モータ12を駆動して台車3を距離s1前進させ(矢印b)、その位置で再びノズル装置4を昇降させる。こうして、ノズル装置4を高さh1昇降−台車3を距離s1前進 という動作を交互に実行し、n1回(ここでは20回)繰り返したところで台車3の前進を停止する。続いて、同様な手順で、ノズル装置4を高さh1昇降−台車3を距離s1後進を順次行っていき、n1回繰り返したところで台車後進を停止する。このような第1洗浄パターンにより得られる櫛形の洗浄軌跡は、無限軌道部の上部に固着した泥土を裁断するのに有効であり、ノズル昇降に伴う鉛直方向への高圧洗浄水の噴射が、同一の軌跡上を往復で作用することで、固くなった泥土が確実に破壊される。そして、破壊した泥土は、大流量の低圧噴射により柔和して洗い流され、無限軌道部から剥離されるのである。
【0022】
次に、ノズル体22の昇降位置を変えながら台車を前後方向に動かすことで、第1洗浄パターンで剥ぎ取った泥土を洗い流す第2洗浄パターンが実行される(2)。第2洗浄パターンは、図9に示すような洗浄軌跡を描いて無限軌道部に洗浄水を作用するもので、位置P2(走行位置:前端、昇降位置:下端、首振り位置:上向き)を基点として動作を開始し、走行モータ12を駆動して台車3を距離s2まで往復させる(矢印c)。その後、昇降モータ15を駆動して台車3を所定高さh2だけ上昇させ(矢印d)、その高さ位置で再び台車3を往復走行させる。こうして、ノズル装置4の高さ位置を変えて台車3をn2回(ここでは3回)往復させる。このような第2洗浄パターンにより、第1洗浄パターンで取り除くことができなかった泥土も水平方向への高圧洗浄水の噴射で、完全に剥ぎ取られる。そして、大流量の低圧噴射により更に柔和して無限軌道部から剥離するのである。
【0023】
次に、ノズル体22の首振り角度を調整して台車3を前後方向に動かすことで、無限軌道部の上面を洗浄する第3洗浄パターンが実行される(3)。第3洗浄パターンは、図10に示すような洗浄軌跡を描いて無限軌道部の上面に洗浄水を作用するもので、位置P3(走行位置:前端、昇降位置:上端、首振り位置:下向き位置から所定角度r1上向きに揺動させた位置)を基点として動作を開始し、走行モータ12を駆動して台車3を距離s3まで往復させ(矢印e)、その後昇降モータ15を駆動して台車3を所定高さh3だけ下降させ(矢印f)、その高さ位置で再び台車を往復走行させる。こうして、ノズル装置4の高さ位置を変えて台車3をn3回(ここでは4回)往復させる。このような第3洗浄パターンにより、無限軌道部の上面にこびりついた泥土が洗浄される。
【0024】
次に、ノズルの首振り角度を変えながら台車3を前後方向に動かすことで、無限軌道部の内底面を洗浄する第4洗浄パターンが実行される(4)。第4洗浄パターンは、図11に示すような洗浄軌跡を描いて無限軌道部の内底面に洗浄水を作用するもので、位置P4(走行位置:前端、昇降位置:下端、首振り位置:上向き位置)を基点として動作を開始し、首振りモータ23を駆動してノズル体22を所定角度r2下方向に揺動させて(矢印g)、走行モータ12を駆動して台車3を距離s4まで往復させる(矢印h)。その後、首振りモータ23を駆動してノズル体22を所定角度r2下方向に揺動させる毎に台車3を往復走行させ、ノズルの揺動角度を変えて台車3をn4回(ここでは3回)往復させる。このような第4洗浄パターンにより、無限軌道部の内底面にこびりついた泥土が洗浄される。
【0025】
こうして、第1〜4洗浄パターンを実行すると、油圧ショベルカー用の洗浄プログラムが終了となる。本装置において噴射される洗浄水は、例えば、低圧大流量ノズルからは約300リットル/分、0.3MPaであり、高圧低流量ノズルからは10リットル/分、20MPaであって、このような2種類の洗浄水噴射により、凍土のように非常に堅く固着しているものに対しても、高圧によりブロック状にカットすると同時に大流量によりカットしたブロックを落としていくという洗浄形態により、確実に落とすことができる。
【0026】
尚、台車走行動作における走行距離s1〜s4、ノズル首振り動作における揺動角度r1・r2は、それぞれ走行エンコーダ13及び首振りエンコーダ25によって検出され、ノズル昇降動作におけるノズル装置の所定高さh1〜h3は、昇降モータ15の通電時間により決定される。これは、洗浄する車両の種類、主に無限軌道部の長さや高さに対応するためである。
【0027】
さて、このような洗浄プログラムにおける各洗浄パターンの設定値は、機種選択キー45で選択可能な機種毎に予め記憶されているものであるが、本発明では、これら初期設定値を変更することが可能である。以下、その設定変更の手順について図12を用いて説明する。実施例1における設定変更は、操作パネル44での操作により行うものである。
【0028】
キースイッチ51により管理モードに切り替えると、表示パネル54が全点灯になる。ここで機種選択キー45を入力すると、最初の洗浄プログラムである「PC−−60」が表示されるので、送り/戻りキー47を使って変更したい洗浄プログラムに合わせた後、決定キー50を入力すると表示パネル54が設定変更表示に切り替わる。ここでは、まず第1洗浄パターンの走行距離s1が初期設定値とともに表示パネル54に表示されるので、数値を送り/戻りキー47で任意(0〜99)に設定し、決定キー50を入力する。続いて、第1洗浄パターンの昇降高さh1が初期設定値とともに表示パネルに表示されるので、数値を送り/戻りキー47で任意(0〜99)に設定し、決定キー50を入力する。次に、第1洗浄パターンの昇降回数n1が初期設定値とともに表示パネル54に表示されるので、数値を送り/戻りキー47で任意(0〜99)に設定し、決定キー50を入力する。
【0029】
以後、送り/戻りキー47を入力する毎に、第2洗浄パターンの走行距離s2・昇降高さh2、第3洗浄工程の走行距離s3・首振り角度r1・昇降高さh3、第4洗浄工程の走行距離s4・首振り角度r2の順に表示パネル54に表示され、同様な手順で初期設定の変更ができる。どの項目を変更している時でもスタートキー51を入力すれば、それまで変更した設定値が初期設定値と書き換えられ、表示パネル54が変更した洗浄プログラムの表示に戻る。
【0030】
このように機種選択だけでは対応しきれない洗浄動作もユーザが任意に設定値を変更できるようにすることで、使用目的に適した洗浄プログラムに書き換えることができる。
尚、表示パネルを複数の情報が表示できる多機能モニタにし、洗浄工程名や変更項目名を文字出力して初期設定値を変更できるようにしたり、或いは台車やノズル装置の動作を画像表示して初期設定値に沿った洗浄動作を再現しながら、台車やノズル装置の位置を補正できるようにしてもよい。
【実施例2】
【0031】
次に、別の設定変更の手順について図13を用いて説明する。実施例2における設定変更は、PC(パソコン)等の外部編集装置を用いて行うものである。
実施例2の洗浄装置は、上記実施例1の装置に、操作パネル60にカードやスティック式の可搬型記憶媒体63を受け入れるリーダ装置61を追加している。外部編集装置62でユーザのニーズに合わせた洗浄パターンを細かく設定し、その洗浄パターンを記憶媒体63に記憶させて本体側のリーダ装置61で読み込む。本体側の制御部では、メモリに記憶された洗浄プログラムをリーダ装置61で読み込んだ洗浄プログラムに書き換える。
【実施例3】
【0032】
次に、別の設定変更の手順について図14を用いて説明する。実施例3における設定変更は、リモコン等の遠隔操作装置を用いて行うものである。
実施例3の洗浄装置は、上記実施例1の装置に、洗浄受付等の操作を操作パネル70から離れた位置で行うことができる遠隔操作装置71を追加している。この遠隔操作装置71では、通常の洗浄受付が行える他、台車やノズル装置の移動範囲を任意に設定できる機能を備える。任意に設定する場合は、機種等に関係なく、第1洗浄パターンから第4洗浄パターンまで順に実行し、ユーザが洗浄したい範囲や程度を指定していく。このとき、各洗浄パターンにおける台車やノズル装置の動作はリミット間で走行・昇降するように再現し、それぞれ止めたい位置で決定キーを入力するようにする。
【産業上の利用可能性】
【0033】
設置場所や設置店における洗浄頻度の高い無限軌道式車両に応じたオリジナルな洗浄プログラムを登録しておくことが可能な洗浄装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1の無限軌道式車両洗浄装置が設置された洗車場全体のレイアウト図である。
【図2】実施例1の無限軌道式車両洗浄装置の構成を示す正面図である。
【図3】同装置の平面図である。
【図4】同装置の側面断面図である。
【図5】同装置が設置された洗車場全体の平面図である。
【図6】実施例1の制御系を示すブロック図である。
【図7】洗浄プログラムを示したフローチャート図である。
【図8】第1洗浄パターンでのノズル動作を示す説明図である。
【図9】第2洗浄パターンでのノズル動作を示す説明図である。
【図10】第3洗浄パターンでのノズル動作を示す説明図である。
【図11】第4洗浄パターンでのノズル動作を示す説明図である。
【図12】設定変更の手順を示す説明図である。
【図13】実施例2の操作パネル60を示す説明図である。
【図14】実施例3の操作パネル70を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 洗浄装置
2 ガイドレール
3 台車
4 ノズル装置
20 低圧ノズル
21 高圧ノズル
40 制御部
42 メモリ
44 操作パネル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無限軌道式車両の側面に沿って配置したガイドレールと、該ガイドレール上を走行する台車と、該台車上を上下昇降するノズル装置と、該ノズル装置に洗浄水を供給するポンプとを備え、前記ノズル装置から噴射される洗浄水により無限軌道式車両の洗浄を図る洗浄装置において、
前記台車の走行動作とノズル装置の昇降動作を組み合わせた複数の洗浄パターンが記憶された記憶手段と、該記憶手段に記憶された複数の洗浄パターンにおける台車やノズル装置の動作内容を任意に変更する設定変更手段と、該設定変更手段で設定変更した洗浄パターンに基づいて前記台車及びノズル装置を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする無限軌道式車両洗浄装置。
【請求項2】
前記記憶手段に記憶された洗浄パターンの初期設定値を任意に増減する操作装置を備え、該操作装置で変更した洗浄パターンを前記記憶手段に記憶された洗浄パターンと書き換えることを特徴する上記請求項1記載の無限軌道式車両洗浄装置。
【請求項3】
可搬式記憶媒体を介して外部編集装置で編集した洗浄パターンの内容を読み込むリーダ装置を備え、該リーダ装置で読み込んだ洗浄パターンを前記記憶手段に記憶された洗浄パターンと書き換えることを特徴とする上記請求項1記載の無限軌道式車両洗浄装置。
【請求項4】
前記記憶手段に記憶された洗浄パターンを実行しながら前記台車やノズル装置の動作内容を調整する遠隔操作装置を備え、該遠隔操作装置で調整した洗浄パターンを前記記憶手段に記憶された洗浄パターンと書き換えることを特徴とする上記請求項1記載の無限軌道式車両洗浄装置。
【請求項1】
無限軌道式車両の側面に沿って配置したガイドレールと、該ガイドレール上を走行する台車と、該台車上を上下昇降するノズル装置と、該ノズル装置に洗浄水を供給するポンプとを備え、前記ノズル装置から噴射される洗浄水により無限軌道式車両の洗浄を図る洗浄装置において、
前記台車の走行動作とノズル装置の昇降動作を組み合わせた複数の洗浄パターンが記憶された記憶手段と、該記憶手段に記憶された複数の洗浄パターンにおける台車やノズル装置の動作内容を任意に変更する設定変更手段と、該設定変更手段で設定変更した洗浄パターンに基づいて前記台車及びノズル装置を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする無限軌道式車両洗浄装置。
【請求項2】
前記記憶手段に記憶された洗浄パターンの初期設定値を任意に増減する操作装置を備え、該操作装置で変更した洗浄パターンを前記記憶手段に記憶された洗浄パターンと書き換えることを特徴する上記請求項1記載の無限軌道式車両洗浄装置。
【請求項3】
可搬式記憶媒体を介して外部編集装置で編集した洗浄パターンの内容を読み込むリーダ装置を備え、該リーダ装置で読み込んだ洗浄パターンを前記記憶手段に記憶された洗浄パターンと書き換えることを特徴とする上記請求項1記載の無限軌道式車両洗浄装置。
【請求項4】
前記記憶手段に記憶された洗浄パターンを実行しながら前記台車やノズル装置の動作内容を調整する遠隔操作装置を備え、該遠隔操作装置で調整した洗浄パターンを前記記憶手段に記憶された洗浄パターンと書き換えることを特徴とする上記請求項1記載の無限軌道式車両洗浄装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−269239(P2007−269239A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99015(P2006−99015)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000103138)エムケー精工株式会社 (174)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000103138)エムケー精工株式会社 (174)
【Fターム(参考)】
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