説明

無電極放電灯及び照明器具

【課題】調光点灯時に周囲温度が低い場合においても安定した光出力を得ることができる無電極放電灯及び照明器具を提供する。
【解決手段】無電極放電灯10及び照明器具は、内部に希ガスおよび蒸気化し得る金属からなる放電ガスが封入されるとともに透光性のある有底筒形状のキャビティ12を有するバルブ11と、キャビティ12の底部から天部に向けて開放された排気細管13と、放電ガスを含み排気細管13内に収容されたアマルガム14と、バルブ11内に電磁界を発生する誘導コイル16、誘導コイル16を巻回したフェライトコア17および放熱部材18からなるカプラ15と、高周波電流を発生する点灯回路19と、を備え、点灯回路19によりキャビティ11内に投入された高周波電流によって、カプラ15がバルブ11内に放電を発生させる。カプラ15は、アマルガム14の近傍に、始動電圧および再点孤電圧に応じてオン・オフするスイッチ20を通じて稼働するヒーター21を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極を持たずに誘導コイルへの高周波電流の通電により形成される電磁界により放電ガスを励起発光させる無電極放電灯及び照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無電極放電灯及び照明器具の一例として、放電ガスが封入されたバルブ内にアマルガム(水銀)が設けられ、このバルブに形成されたキャビティ内に、円筒状のフェライトコアと誘導コイルとでなるカプラが設けられた無電極放電灯がある(例えば、特許文献1参照)。
このような無電極放電灯では、全点灯時に比べ、調光点灯時に、ランプの温度上昇が小さく、周囲温度特性がシフトし、周囲温度が低い場合には水銀蒸気圧が低くなり過ぎて所望の光出力が得られなくなることがありうる。
そこで、無電極放電灯の口金付近にヒーター等の発熱体を設けて、最冷部の温度を温度検知手段で検知しながら、水銀蒸気圧を制御するようにしている。
【特許文献1】特開2005−100845号公報(図1、段落番号0029,0030,0031)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記特許文献1に開示された無電極放電灯では、温度検知手段を別に設ける必要があり、構造が複雑になるという問題点があった。
【0004】
本発明は、前述した要望を満たすためになされたもので、その目的は、調光点灯時に周囲温度が低い場合においても安定した光出力を得ることができる無電極放電灯及び照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の無電極放電灯は、内部に希ガスおよび蒸気化し得る金属からなる放電ガスが封入されるとともに透光性のある有底筒形状のキャビティを有するバルブと、前記キャビティの底部から天部に向けて開放された排気細管と、前記放電ガスを含み前記排気細管内に収容されたアマルガムと、前記バルブ内に電磁界を発生する誘導コイル、前記誘導コイルを巻回したフェライトコアおよび放熱部材からなるカプラと、高周波電流を発生する点灯回路と、を備え、前記点灯回路により前記キャビティ内に投入された高周波電流によって、前記カプラが前記バルブ内に放電を発生させる無電極放電灯において、前記カプラは、前記アマルガムの近傍に、始動電圧および再点孤電圧に応じてオン・オフするスイッチを通じて稼働するヒーターを備えていることを特徴とする。
【0006】
本発明においては、調光点灯時の再点弧電圧、即ち、一度消失したアークが再点孤する時の電圧レベルに応じてアマルガムの近傍に配設したヒーターのスイッチがオンするので、全点灯時に比較して無電極放電灯の温度が低くなる調光点灯時にアマルガムがヒーターによって加熱される。
よって、従来のもののように温度検知手段を別に設けることなく、調光点灯時に、安定した光出力が得られることになる。
【0007】
本発明の無電極放電灯は、前記スイッチが放電灯であり、前記キャビティの放電空間側に長残光蛍光体を塗布していることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、ヒーターをオン・オフするスイッチが放電灯であるために、外部回路を必要とせずに簡潔な構造を得ることができる。
また、本発明においては、キャビティに長残光蛍光体が塗布されていることにより、始動時や調光点灯時の再点弧電圧で放電灯が点灯して長残光蛍光体を蓄光させて残光輝度を高く保ち、暗所始動補助機能を長時間発揮することができる。
【0009】
本発明の照明器具は、本発明の無電極放電灯を用いたことを特徴とする。
【0010】
本発明においては、本発明の無電極放電灯を用いることにより、調光点灯時に、安定した光出力が得られる照明器具を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の無電極放電灯及び照明器具によれば、カプラは、アマルガムの近傍に、始動電圧および再点孤電圧に応じてオン・オフするスイッチを通じて稼働するヒーターを備えた。
これにより、調光点灯時に周囲温度が低い場合においても安定した光出力を得ることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る無電極放電灯及び照明器具について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1、図2に示すように、本発明の第1実施形態の無電極放電灯10は、内部に希ガスおよび蒸気化し得る金属からなる放電ガスが封入されるとともに透光性のある有底筒形状のキャビティ12を有するバルブ11と、キャビティ12の底部から天部に向けて開放された排気細管13と、放電ガスを含み排気細管13内に収容されたアマルガム14と、バルブ11内に電磁界を発生する誘導コイル16、誘導コイル16を巻回したフェライトコア17および放熱部材18からなるカプラ15と、高周波電流を発生する点灯回路19と、カプラ15におけるアマルガム14の近傍に始動電圧および再点孤電圧に応じてオン・オフする放電灯20を通じて稼働するヒーター21と、を備え、バルブ11とキャビティ12とでランプ部22を構成し、これらにカプラ15が分離可能に組み付けられている。なお、照明器具は無電極放電灯10を収容して構成されるために図示は省略する。
【0014】
バルブ11は、透光性を有するガラス材料等を用いて略球形状に形成されている。
【0015】
キャビティ12は、透光性を有するガラス材料等を用いて成形された有天の上端が塞がれた筒状体である。そのため、排気細管13の側部に筒状の空間である中空部23を有する。
【0016】
キャビティ12は、その放電空間側の蛍光体膜上に長残光蛍光体24が塗布されている。長残光蛍光体24としては,例えば,ユーロピウム,ディスプロシウム共付活アルミン酸ストロンチウム蛍光体(SrAl204:Eu,Dy,Sr4Al14025:Eu,Dy),ユーロピウム,ネオジウム共付活アルミン酸カルシウム蛍光体(CaAl204:Eu,Nd)等が挙げられる。
【0017】
排気細管13内には、アルゴン等の希ガスの放電ガスと水銀とともにアマルガム14が収容されている。
【0018】
アマルガム14は、金属容器25内に水銀を封入している。
【0019】
ここで、排気細管13の上部開放部には、保持体26に接続された支持片27が挿入されている。
【0020】
カプラ15は、誘導コイル16がフェライトコア17の外周部に巻回されており、これらに放熱性を有する樹脂製の放熱部材18を組み付けている。誘導コイル16の外径および放熱部材18に有する筒形状部28の外径はキャビティ12の中空部23の内径よりもわずかに小さい。そのため、誘導コイル16、フェライトコア17および放熱部材18の筒形状部28はキャビティ12の中空部23に内嵌されている。
【0021】
バルブ11とキャビティ12とから構成されるランプ部22の内面には、不図示の保護膜および蛍光膜が塗布されている。ランプ部22の基部には、口金29が組み付けられており、口金29によってランプ部22とカプラ15とが結合されている。
【0022】
ヒーター21は、キャビティ12の中空部23におけるアマルガム14の側部近傍に配置されている。
【0023】
図3にも示すように、誘導コイル16は点灯回路19に接続されており、放電灯20は、1ターンで構成された二次コイル30とヒーター21とに直列に接続されている。二次コイル30は、フェライトコア17における誘導コイル16の下側に外嵌されて誘導コイル16からの電磁エネルギーを受ける。
【0024】
図4にも示すように、無電極放電灯10のコイル両端電圧の包絡線は、始動するときにコイル両端に高い電圧(始動電圧)が必要であり、放電が一旦始まるとコイル両端電圧は低く(維持電圧)なる。そして、予め定められたデューティー比による短い周期でオン・オフを繰り返す調光点灯時には、この高い電圧(再点弧電圧)が毎回必要になる。
【0025】
放電灯20は、この再点弧電圧を受けて二次コイル30に発生した電圧で放電開始(スイッチオン)するように、また、無電極放電灯10が点灯したときに放電維持電圧を受けて二次コイル30に発生する電圧では放電しないように設定されている。
【0026】
このような無電極放電灯10は、誘導コイル15に高周波電流を通電することにより誘導コイル15に高周波電磁界が生じ、放電ガスが高周波電磁界により励起発光されて紫外線を放射し、放射された紫外線がバルブ11内で可視光に変換されて点灯する。
【0027】
このとき、始動時にはコイル両端に高い電圧が印加される。放電が始まるとコイル両端電圧は低くなる。
【0028】
そして、短い周期でオン・オフを繰り返す調光点灯時に、再点弧電圧を受けて放電灯20がオンしてヒーター21を駆動し、ヒーター21の駆動によりアマルガム14を加熱する。
よって、無電極放電灯10の温度が低くなる調光点灯時にアマルガム14をヒーター21によって加熱する。
【0029】
前述した無電極放電灯10によれば、調光点灯時の再点弧電圧に応じてアマルガム14の近傍に配設した放電灯20がオンしてヒーター21を駆動させる。
これにより、始動時に、コイル両端に高い電圧が発生すると同時に放電灯20が点灯されるので、周りが暗い環境でも確実に無電極放電灯を始動することができ、全点灯時に比較して無電極放電灯10の温度が低くなる調光点灯時にアマルガム14がヒーター21によって加熱される。
よって、従来のもののように温度検知手段を別に設けることなく、調光点灯時に、安定した光出力を得ることができる。
【0030】
また、本発明の無電極放電灯10によれば、ヒーター21をオン・オフするスイッチが放電灯20であるために、外部回路を必要とせずに簡潔な構造を得ることができる。
【0031】
そして、本発明の無電極放電灯10によれば、キャビティ12に長残光蛍光体24が塗布されていることにより、始動時や調光点灯時の再点弧電圧で放電灯20が点灯して長残光蛍光体24を蓄光させて残光輝度を高く保ち、暗所始動補助機能を長時間発揮することができる。
【0032】
本発明の照明器具によれば、本発明の無電極放電灯10を用いることにより、調光点灯時に、安定した光出力が得られる照明器具を提供することができる。
【0033】
(実施例)
次に、本発明の無電極放電灯10及び照明器具の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
(光量の周囲温度特性測定)
実施例では、周囲温度と相対光量とを測定することにより、無電極放電灯を点灯したときの光量の周囲温度特性について比較例と比較した。測定結果を表1に示す。なお、表1中の全点灯時と記載した実線は比較例および実施例の測定値を表し、調光点灯時と記載したうちの破線が比較例の測定値であり、実線が実施例の測定値である。
【0034】
【表1】

【0035】
表1により明らかなように、全点灯時には、アマルガム14の特性により広い温度範囲にわたって良好な光特性が得られることがわかる。この無電極放電灯をオン・オフによるデューティー制御で調光点灯すると、無電極放電灯の温度が下がりアマルガム14の温度が低くなる。この冷間状態のままであると、周囲温度特性が高温側にずれるために、比較例は光量が著しく低下する。これに対して、実施例は,調光点灯時の再点弧電圧によってヒーター21が稼働してアマルガム14を加熱することにより、周囲温度特性のずれが解消され低温での光量低下を防ぐことができるのがわかる。
【0036】
なお、前記各実施形態で使用したバルブ11、口金29等は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る一実施形態の無電極放電灯の内部構造を説明する縦断面図
【図2】図1の無電極放電灯の要部拡大断面図
【図3】図1の無電極放電灯の回路構成図
【図4】図1の無電極放電灯のコイル両端電圧の包絡線図
【符号の説明】
【0038】
10 無電極放電灯
11 バルブ
12 キャビティ
13 排気細管
14 アマルガム
15 カプラ
16 誘導コイル
17 フェライトコア
18 放熱部材
20 放電灯(スイッチ)
21 ヒーター
24 長残光蛍光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に希ガスおよび蒸気化し得る金属からなる放電ガスが封入されるとともに透光性のある有底筒形状のキャビティを有するバルブと、
前記キャビティの底部から天部に向けて開放された排気細管と、
前記放電ガスを含み前記排気細管内に収容されたアマルガムと、
前記バルブ内に電磁界を発生する誘導コイル、前記誘導コイルを巻回したフェライトコアおよび放熱部材からなるカプラと、
高周波電流を発生する点灯回路と、
を備え、
前記点灯回路により前記キャビティ内に投入された高周波電流によって、前記カプラが前記バルブ内に放電を発生させる無電極放電灯において、
前記カプラは、前記アマルガムの近傍に、始動電圧および再点孤電圧に応じてオン・オフするスイッチを通じて稼働するヒーターを備えていることを特徴とする無電極放電灯。
【請求項2】
前記スイッチが放電灯であり、前記キャビティの放電空間側に長残光蛍光体を塗布していることを特徴とする請求項1記載の無電極放電灯。
【請求項3】
請求項1および2記載の無電極放電灯を用いたことを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−50058(P2010−50058A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215878(P2008−215878)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】