説明

無電極放電灯装置および照明器具

【課題】周囲温度が極端に低い場合や高い場合でも、温度検知手段を別に設ける必要がなく、しかも点灯方向にかかわりなく水銀蒸気圧を制御することで、安定した光出力が得られることを可能とした無電極放電灯装置および照明器具を提供する。
【解決手段】放電ガスが封入されたガラス球状のバルブ2内に金属容器(アマルガム)11が設けられ、このバルブ2に形成されたキャビティ4内に、フェライトコア9と誘導コイル10とでなるカプラ15が設けられている。誘導コイル10に高周波電流を通電する点灯回路16を備えている。誘導コイル10の電圧を検出する検出回路31と、この出力から水銀蒸気圧を判別する判別回路32と、この出力から誘導コイル10の入力電力若しくはヒータ(アマルガム加熱手段)34の入力電力を制御する制御回路33を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ガスが封入されたバルブに、誘導コイルで発生する誘導電界を作用させることでプラズマを発生させ、水銀原子から発生する紫外線がバルブ内面の蛍光体で可視光に変換されるようになった無電極放電灯装置および照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放電ガスが封入されたガラス球状のバルブ内にアマルガム(水銀)が設けられ、このバルブに形成されたキャビティ内に、円筒状のフェライトコアと誘導コイルとでなるカプラが設けられた無電極放電灯がある(特許文献1参照)。
【0003】
このようなアマルガムを封入した放電灯では、周囲温度が低くなった場合には、水銀蒸気圧が低くなり過ぎて、所望の光出力が得られなくなる。
【0004】
そのために、水銀蒸気圧を制御する最冷部(バルブの表面の中で最も温度が低くなる点)の温度を、例えば35〜45℃程度の範囲に管理する必要がある。
【0005】
そこで、放電灯の口金付近に発熱体(ヒータ等)を設け、最冷部の温度を温度検知手段で検知しながら、水銀蒸気圧を制御するものがある。
【特許文献1】特開2006−147572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、温度検知手段を別に設ける必要がある。また、最冷部は口金上方点灯ではバルブトップ、口金下方点灯では口金真上部となるので、これらの点灯方向に対応するには、複数の箇所に温度検知手段を設ける必要があるため、構造が複雑になるという問題があった。
【0007】
本発明は、前記問題を解消するためになされたもので、周囲温度が極端に低い場合や高い場合でも、温度検知手段を別に設ける必要がなく、しかも点灯方向にかかわりなく水銀蒸気圧を制御することで、安定した光出力が得られることを可能とした無電極放電灯装置および照明器具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、放電ガスが封入されたガラス球状のバルブ内にアマルガムが設けられ、このバルブに形成されたキャビティ内に、フェライトコアと誘導コイルとでなるカプラが設けられ、前記誘導コイルに高周波電流を通電する点灯回路を備えた無電極放電灯装置において、前記誘導コイルの電圧を検出する検出回路と、この検出回路の出力から水銀蒸気圧を判別する判別回路と、この判別回路の出力から誘導コイルの入力電力若しくはアマルガム加熱手段の入力電力を制御する制御回路を備えたことを特徴とする無電極放電灯装置を提供するものである。
【0009】
請求項2のように、請求項1において、前記判別回路による水銀蒸気圧の判別は、点灯安定時の誘導コイルの電圧であることが好ましい。
【0010】
請求項3のように、請求項1において、前記判別回路による水銀蒸気圧の判別は、間欠点灯時の誘導コイルの電圧であることが好ましい。
【0011】
請求項4のように、請求項1〜3のいずれか一項に記載の無電極放電灯装置を備えた照明器具とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検出回路で検出された誘導コイルの電圧から、判別回路において現在の最冷部の温度(水銀蒸気圧)を判別する。そして、最冷部の温度が低温側であれば、アマルガム加熱手段で最冷部を加熱することで、最冷部の温度が最適となるように上昇されるようになる。逆に、最冷部の温度が高温側であれば、誘導コイルの入力電力を制限することで、最冷部の温度が最適となるように下降されるようになる。このように、周囲温度が極端に低い場合や高い場合でも、温度検知手段を別に設ける必要がなく、しかも点灯方向にかかわりなく水銀蒸気圧を制御できて、安定した光出力が得られるようになる。
【0013】
請求項2によれば、点火安定時の誘導コイルの電圧を検出することにより、誘導コイルの電圧が最大値付近で最冷部の温度(水銀蒸気圧)が最適となることから、水銀蒸気圧の判別を正確に行うことができる。
【0014】
請求項3によれば、間欠点灯時の誘導コイルの電圧を検出することにより、誘導コイルの再点孤電圧が最大値付近で最冷部の温度(水銀蒸気圧)が最適となることから、水銀蒸気圧の判別を正確に行うことができる。
【0015】
請求項4によれば、周囲温度が極端に低い場合や高い場合でも、温度検知手段を別に設ける必要がなく、しかも点灯方向にかかわりなく水銀蒸気圧を制御できて、安定した光出力が得られる照明器具となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は無電極放電灯1の断面図である。ガラス球状のバルブ2の基部2aは口金3に固定されている。バルブ2の内部中心にはキャビティ4と、このキャビティ4の底部分4aから開口部分4bに向かって延在する排気細管5とが一体的に形成されている。
【0018】
キャビティ4内には、排気細管5に挿入された状態の円筒状シリンダ6が設けられ、このシリンダ6は、キャビティ4の開口部分4bから外部に突出して、口金3に形成された穴3aに嵌め合わされている。
【0019】
また、排気細管5の先端(チップオフ部)5aは、キャビティ4の開口部分4bから外部に突出して、口金3の穴3aに嵌め合わされているシリンダ6の内部に臨まされている。
【0020】
バルブ2の内面には、その一部だけを図示するように、保護膜7と蛍光体膜8とが形成されている。また、キャビティ4のバルブ2内の周面にも、その一部だけを図示するように、保護膜7と蛍光体膜8とが形成されている。
【0021】
キャビティ4内の上部には、シリンダ6の外周に嵌め込まれた状態でフェライトコア9と誘導コイル10とが設けられている。フェライトコア9は、誘導コイル10に通電する高周波電流が数百KHzという低い周波数であるために必要とするものである。このフェライトコア9と誘導コイル10とはカプラ15を構成する。16は、誘導コイル10に高周波電流を通電するための点灯回路である。
【0022】
バルブ2内には、放電ガスとして、アルゴンが40Paで封入されている。また、排気細管5内には、バルブ2内にアマルガム(水銀)を放出させるために、総量が略20mg、重量比で50:50の亜鉛・水銀化合物が収納された鉄・ニッケル合金製の金属容器11が設けられている。この金属容器11は、排気細管5内で窪み5bと先端5aとの間に入れられた上下一対のガラスロッド12によって、上下位置が位置決めされている。
【0023】
ところで、周囲温度が低くなった場合には水銀蒸気圧も低くなり、周囲温度が高くなった場合には水銀蒸気圧も高くなって、所望の光出力が得られなくなる。そのために、水銀蒸気圧を制御する最冷部(バルブの表面の中で最も温度が低くなる点)の温度を、例えば35〜45℃程度の範囲、つまり40℃前後に管理する必要がある。
【0024】
しかしながら、周囲温度が極端に低い場合や高い場合には、最冷部の温度も影響を受けて、40℃前後から大幅にずれるので、安定した光出力が得られなくなる。
【0025】
図2は、最冷部の温度に対する誘導コイル10の電圧特性のグラフである。図2からは、誘導コイル10の電圧の最大値付近は、最冷部の温度が40℃前後にあることが分かる。このことから、誘導コイル10の電圧が最大値付近を維持するように制御すれば、最冷部の温度を40℃前後に保つことが可能となる。
【0026】
図3は、誘導コイル10の電圧が最大値付近を維持するように制御する回路構成図である。誘導コイル10に高周波電流を通電するための点灯回路16には、高周波発生回路30が設けられている。また、誘導コイル10に対しては、誘導コイル10の電圧(若しくは電流でも可)を検出する検出回路31と、この検出回路31の出力から水銀蒸気圧を判別する判別回路32が設けられている。さらに、この判別回路32の出力から誘導コイル10の入力電力またはアマルガム加熱手段の入力電力を制御する制御回路33が設けられている。さらにまた、無電極放電灯1の口金3の上部付近には、最冷部を加熱するためにヒータ(アマルガム加熱手段)34が設けられている。
【0027】
そして、検出回路31において、誘導コイル10の電圧が検出され、その出力が判別回路32に入力される。この判別回路32は、例えばアイコンICを含む回路であり、図2のデータがプログラムされている。このデータに基づいて、誘導コイル10の電圧から現在の最冷部の温度を判別して、最冷部の温度が低温側(例えば35℃よりも低い)であれば、最冷部の温度が40℃前後まで上昇するように、ヒータ電力を決定する。この判別回路32で決定されたヒータ電力が制御回路33からヒータ34に出力され、ヒータ34で最冷部が加熱されて、最冷部の温度が上昇することにより、水銀蒸気圧が最適となるように制御されるようになる。
【0028】
逆に、最冷部の温度が高温側(例えば45℃よりも高い)であれば、最冷部の温度が40℃前後まで下降するように、誘導コイル10の入力電力を決定する。この判別回路32で決定された入力電力が制御回路33から高周波発生回路30を介して誘導コイル10に出力され、最冷部の温度が低下することにより、水銀蒸気圧が最適となるように制御されるようになる。
【0029】
このように、周囲温度が極端に低い場合や高い場合でも、温度検知手段を別に設ける必要がなく、しかも点灯方向にかかわりなく水銀蒸気圧を制御できて、安定した光出力が得られるようになる。
【0030】
前記実施形態では、判別回路32による水銀蒸気圧の判別を点灯安定時の誘導コイル10の電圧としたが、間欠点灯時の誘導コイル10の電圧とすることもできる。
【0031】
すなわち、高周波発生回路30には、無電極放電灯1を間欠駆動する機能が設けられていて、この間欠駆動の機能は、無電極放電灯1を調光点灯する等の際に用いられる。
【0032】
図4は、間欠駆動をした場合の誘導コイル10の電圧波形グラフであり、再点孤の際に、通常より高い再点孤電圧が発生することが分かる。
【0033】
図5(a)(b)は、最冷部の温度に対する無電極放電灯1の相対光出力と再点孤電圧の相関を示すグラフである。図5(a)では、最冷部の温度が35〜40℃付近で相対光出力が最大値付近となっていることが分かり、図5(b)では、最冷部の温度が35〜40℃付近で再点孤電圧も最大値付近となっていることが分かる。
【0034】
このことから、図3と同様の回路構成で、間欠点灯時の誘導コイルの電圧から再点孤電圧を検出し、この再点孤電圧を前述と同様に点灯回路16で処理することができる。これにより、周囲温度が極端に低い場合や高い場合でも、温度検知手段を別に設ける必要がなく、しかも点灯方向にかかわりなく水銀蒸気圧を制御できて、安定した光出力が得られるようになる。
【0035】
なお、再点孤電圧と実効値電圧はほぼ比例関係にあるため、実効値電圧など他の値を用いることも可能である。また、誘導コイル10の間欠駆動で必ずしも調光する必要は無く、電圧検出のために瞬間的に間欠させることも可能であり、定格点灯下でも実現可能である。
【0036】
前記実施形態の無電極放電灯1は、図6に示すように、前面パネル20で反射板21が密閉された照明器具22とすることができる。この場合でも、周囲温度が極端に低い場合や高い場合でも、温度検知手段を別に設ける必要がなく、しかも点灯方向にかかわりなく水銀蒸気圧を制御できて、安定した光出力が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態の無電極放電灯の断面図である。
【図2】最冷部温度に対する誘導コイルの電圧特性のグラフである。
【図3】誘導コイルの電圧が最大値付近を維持するように制御する回路構成図である。
【図4】間欠駆動をした場合の誘導コイルの電圧波形グラフである。
【図5】(a)(b)は、最冷部の温度に対する無電極放電灯の相対光出力と再点孤電圧の相関を示すグラフである。
【図6】無電極放電灯を取付けた密閉型照明器具の斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 無電極放電灯
2 バルブ
4 キャビティ
6 シリンダ
9 フェライトコア
10 誘導コイル
11 金属容器(アマルガム)
15 カプラ
16 点灯回路
22 照明器具
30 高周波発生回路
31 検出回路
32 判別回路
33 制御回路
34 ヒータ(アマルガム加熱手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ガスが封入されたガラス球状のバルブ内にアマルガムが設けられ、このバルブに形成されたキャビティ内に、フェライトコアと誘導コイルとでなるカプラが設けられ、前記誘導コイルに高周波電流を通電する点灯回路を備えた無電極放電灯装置において、
前記誘導コイルの電圧を検出する検出回路と、この検出回路の出力から水銀蒸気圧を判別する判別回路と、この判別回路の出力から誘導コイルの入力電力若しくはアマルガム加熱手段の入力電力を制御する制御回路を備えたことを特徴とする無電極放電灯装置。
【請求項2】
前記判別回路による水銀蒸気圧の判別は、点灯安定時の誘導コイルの電圧であることを特徴とする請求項1に記載の無電極放電灯装置。
【請求項3】
前記判別回路による水銀蒸気圧の判別は、間欠点灯時の誘導コイルの電圧であることを特徴とする請求項1に記載の無電極放電灯装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の無電極放電灯装置を備えたことを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−266565(P2009−266565A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114012(P2008−114012)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】