説明

無電解めっき液の再生装置及び再生方法

【課題】無電解めっき液の再生処理を、効率的かつ自動的に行う。
【解決手段】本発明の無電解めっき液の再生装置は、めっき処理に伴ってめっき槽20内で生成される亜リン酸の生成速度を測定するセンサ20bと、めっき槽内のめっき液100を分取し第一処理槽11に移送する分取装置21と、分取されためっき液に含まれる亜リン酸の濃度を測定するセンサ31と、このめっき液に含まれる亜リン酸から、亜リン酸カルシウム105を生成させるために必要な炭酸カルシウム又は水酸化カルシウム104を第一処理槽に供給する添加装置13と、第一処理槽内で生成した亜リン酸カルシウムをめっき液から分離除去する分離装置14と、亜リン酸カルシウムが分離除去されためっき液をめっき槽に移送する戻しポンプ22と、分取装置21及び戻しポンプ22の移送速度を制御するコントローラ10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、めっき液に被めっき対象物を浸漬しニッケルめっきを施す無電解めっきの技術に関連し、特に、めっき処理に供された無電解めっき液を、再びめっき処理に用いるために再生する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば次亜リン酸塩を還元剤としてニッケルめっきを施す無電解めっき方法では、硫酸ニッケル(ニッケル源)と次亜リン酸ナトリウム(還元剤)とを組み合わせた組成のものが一般に使用されている。このような組成のめっき液を使用して無電解ニッケルめっきを行うと、次亜リン酸塩が酸化して生成した亜リン酸塩と、ニッケル源に使用された硫酸ニッケルの反応残存物の硫酸塩と、さらに、pH調整に使用した水酸化ナトリウム又は水酸化アンモニウムの反応残存物であるナトリウム塩又はアンモニウム塩が経時的に当該めっき液中に蓄積し、めっき速度の低下や異状析出の発生、あるいは被膜特性の劣化などを引き起こす。
【0003】
従って、上記めっき液は、一定期間使用すると更新し、使用済みのめっき液は産業廃棄物として処理されていたが、1995年からロンドンダンピング条約により海洋投棄が禁止され、更に、内陸への投棄処分も厳しくなってきており、使用済みのめっき液の廃棄量を削減することや、使用済みのめっき液を再利用する方法の開発が極めて重要になってきている。
【0004】
無電解ニッケルめっき作業の過程で蓄積される亜リン酸ナトリウムや硫酸ナトリウムの除去については、既に各種の試みが為されているが、何れも工業的な実用化にまでは至っていないのが実情である。例えば、亜リン酸ナトリウムや硫酸ナトリウムの除去法として、隔膜を用いて電解透析により不要成分を分離する方法が知られている。しかしながらこの方法では、不要成分と共に有効成分もめっき液から除去されてしまう上に、装置も大掛かりで高価になるという欠点がある。
【0005】
また、非特許文献1では、イオン交換樹脂を用いて、めっき液からニッケルイオン及びナトリウムイオンを予め分離し、残りの液にカルシウム又はマグネシウム塩を加えて、硫酸塩及び亜リン酸塩を不溶化して分離し、イオン交換樹脂に吸着させたニッケルとナトリウムイオンを分別・脱離した後、ニッケルイオンのみをめっき液に戻して再利用する方法が提案されている。しかしながらこの方法は、技術的にも経済的にも不完全な点が多く実用されていない。
【0006】
また、めっき液を冷却し、硫酸ナトリウムを結晶化させて分離した後、当該めっき液をpH5.5〜7.0となるように硫酸カルシウム及び水酸化カルシウムを添加して、亜リン酸塩のみをカルシウム塩として選択的に分離除去する方法(特許文献1)、めっき液に水酸化アンモニウムを予め添加し、次いでカルシウム、バリウム、ストロンチウム等の水酸化物を加えて当該めっき液から亜リン酸塩のみを選択的に沈殿分離したり、又はアルカリ土類金属の水酸化物を加えた後に当該めっき液をpH4〜6となるように硫酸を加えて亜リン酸塩を沈殿分離し、めっき液を再生する(特許文献2)等、多くの方法が提唱されているが何れも実用上問題が多い。
【特許文献1】特公昭36−3557号公報
【特許文献2】特許第2769774号公報
【特許文献3】特開2001−192849号公報
【特許文献4】特開2002−241952号公報
【非特許文献1】R.W. Anderson et al., Plating and Surface Finishing, March 1992
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の無電解めっき液を再生する技術では、以下のような問題がある。
【0008】
すなわち、無電解めっき液中に存在する大量の硫酸塩は、めっき液からの分離が極めて困難なだけでなく、亜リン酸カルシウムの溶解度を増加させ、亜リン酸塩を分離する上でも大きな障害となるので、本発明に使用するめっき液は硫酸塩は含まないことを前提とする。
【0009】
つまり、次亜リン酸ニッケルをニッケル源として用いると共に、次亜リン酸ニッケルと、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウムのうち少なくとも1種を還元剤として用いためっき液に被めっき物を浸漬してニッケルめっきを施す無電解めっき法において、めっき液の一部を汲出し、汲出した当該めっき液に、水酸化カルシウムを添加し、亜リン酸カルシウムとして固定する。
【0010】
本発明者らは、添加するカルシウム塩の量を、めっき液のpHが5.8を超えないよう調整することにより、めっき不要成分の亜リン酸塩のみを系外に分離除去し、めっき有効成分をロスすることなく再利用する方法を発明した(特許文献3)。
【0011】
次いで、めっき液より汲出した、めっき液の汲出し速度及び、亜リン酸塩を沈殿分離するため添加する水酸化カルシウムの量を調節し、めっき反応により生成する量に見合う亜リン酸塩を沈殿分離することにより、めっき液中の亜リン酸塩の濃度を予め設定した範囲内(50〜100g/l)に保持し、更にめっき反応に不要な成分を全く使用せずに液管理する方法及び、装置を発明した(特許文献4)。
【0012】
しかしながら、亜リン酸塩を分離するためのめっき液の汲出し速度は、自動化の工夫がなされていないため、処理するめっき処理量から、めっき液の汲出し量及び水酸化カルシウム添加量を、その都度算出しなければならず、汎用性に乏しいという問題がある。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、無電解めっき液の再生処理を、効率的かつ自動的に実施することが可能な無電解めっき液の再生装置及び再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0015】
すなわち、請求項1の発明は、めっき処理に供された無電解めっき液を、再びめっき処理に用いるために再生する無電解めっき液の再生装置であって、めっき槽と、生成速度測定手段と、第1及び第2の移送手段と、濃度測定手段と、演算手段と、第1の供給手段と、分離除去手段と、制御手段とが設けられている。
【0016】
めっき槽は、次亜リン酸ニッケルをニッケル源として用いると共に、次亜リン酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸のうちの少なくとも二種を還元剤として用いためっき液を貯溜し、このめっき液を用いて、対象物にニッケルめっき処理を施すためのものである。また、生成速度測定手段は、めっき槽内で行われるニッケルめっき処理に伴って生成される亜リン酸の生成速度を測定する。第1の移送手段は、制御手段からの制御信号を受けると、この制御信号に従った移送速度で、めっき槽に貯溜されているめっき液のうちの所定量を分取し、分取槽に移送する。濃度測定手段は、分取された所定量のめっき液に含まれる亜リン酸の濃度を測定する。演算手段は、所定量と、濃度測定手段によって測定された亜リン酸の濃度とに基づいて、所定量のめっき液に含まれる亜リン酸から、亜リン酸カルシウムを生成させるために必要な炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムの量を演算する。第1の供給手段は、演算手段によって演算された量の炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムを、分取槽に供給する。分離除去手段は、分取槽に供給された炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムが、分取槽内において、所定量のめっき液と混合することによって生成した亜リン酸カルシウムを、めっき液から分離除去する。第2の移送手段は、制御手段から制御信号を受けると、第1の移送手段と連動して、この制御信号に従った移送速度で、分離除去手段によって亜リン酸カルシウムが分離除去されためっき液を、めっき槽に移送する。制御手段は、生成速度測定手段によって測定された生成速度に基づいて、第1及び第2の移送手段の移送速度を制御する制御信号を生成し、生成した制御信号を第1及び第2の移送手段に出力する。
【0017】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の無電解めっき液の再生装置において、生成速度測定手段は、めっき槽内のめっき液のpHを測定し、測定したpH値に基づいて亜リン酸の生成速度を求めるpH測定手段と、めっき槽内のめっき液の比重を測定し、測定した比重に基づいて亜リン酸の生成速度を求める比重測定手段と、めっき槽内のめっき液に含まれるニッケル濃度を測定し、測定したニッケル濃度に基づいて亜リン酸の生成速度を求めるニッケル濃度測定手段と、めっき槽内のめっき液の屈折率を測定し、測定した屈折率に基づいて亜リン酸の生成速度を求める屈折率測定手段と、めっき槽内のめっき液の赤外分光特性を測定し、測定した赤外分光特性に基づいて亜リン酸の生成速度を求める赤外分光測定手段と、めっき槽内のめっき液に対して電気泳動キャピラリクロマトグラフィー測定を行い、この測定結果に基づいて亜リン酸の生成速度を求める電気泳動測定手段と、めっき槽内のめっき液に対して高速液体クロマトグラフィー測定を行い、この測定結果に基づいて亜リン酸の生成速度を求める液体クロマトグラフィー測定手段と、めっき槽内のめっき液の紫外線分光特性を測定し、測定した紫外線分光特性に基づいて亜リン酸の生成速度を求める紫外線分光測定手段と、めっき槽内のめっき液に対してイオンクロマトグラフィー測定を行い、この測定結果に基づいて亜リン酸の生成速度を求めるイオンクロマトグラフィー測定手段と、めっき槽内のめっき液に対して可視光比色分析測定を行い、この測定結果に基づいてニッケル濃度を求める可視光比色分析測定手段とのうちの少なくとも何れかを含む。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の無電解めっき液の再生装置において、第1の移送手段は、めっき槽に貯溜されているめっき液を所定量以上分取する分取手段と、分取手段によって分取されためっき液の量を所定量に調整するとともに、余剰分のめっき液をめっき槽に戻す計量手段と、計量手段によって調整された所定量のめっき液を分取槽に移送する移送部とを備えている。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の無電解めっき液の再生装置において、供給手段によって分取槽に供給された炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムと、分取槽内の所定量のめっき液とを、混合を促進するために攪拌する第1の攪拌手段と、分取槽内の液温を予め定めた範囲内に保つ温度制御手段とを分取槽に備えている。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の無電解めっき液の再生装置において、分離除去手段は、生成した亜リン酸カルシウムを、加圧ろ過、減圧ろ過、及び遠心分離のうちの少なくとも何れかによって前記めっき液から分離する分離部と、分離部によって分離された亜リン酸カルシウムを装置外部に払い出す払出部とを備えている。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の無電解めっき液の再生装置において、分離除去手段と、第2の移送手段との間に介挿して設けられ、除去分離手段によって亜リン酸カルシウムが除去されためっき液を、第2の移送手段によって移送されるまで貯液する中間槽と、中間槽に次亜リン酸及びめっき液を供給する第2の供給手段と、中間槽内の液を攪拌する第2の攪拌手段と、中間槽内の液のpHを測定するpHセンサとを備えている。
【0022】
請求項7の発明は、めっき処理に供された無電解めっき液を、再びめっき処理に用いるために再生する方法であって、次亜リン酸ニッケルをニッケル源として用いると共に、次亜リン酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸のうちの少なくとも二種を還元剤として用いためっき液を貯溜し、このめっき液を用いて、対象物にニッケルめっき処理を施すためのめっき槽において、ニッケルめっき処理に伴って生成される亜リン酸の生成速度を測定する。そして、測定された生成速度に基づいて、第1及び第2の移送手段の移送速度を制御する制御信号を生成し、生成した制御信号を第1及び第2の移送手段に出力する。第1の移送手段は、制御信号を受けると、この制御信号に従った移送速度で、めっき槽に貯溜されているめっき液のうちの所定量を分取して分取槽に移送する。次に、分取された所定量のめっき液に含まれる亜リン酸の濃度を測定し、所定量と、測定された亜リン酸の濃度とに基づいて、所定量のめっき液に含まれる亜リン酸から、亜リン酸カルシウムを生成させるために必要な炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムの量を演算する。そして、演算された量の炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムを、分取槽に供給し、分取槽に供給された炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムが、分取槽内において、所定量のめっき液と混合することによって生成した亜リン酸カルシウムを、めっき液から分離除去する。第2の移送手段は、制御信号を受けると、第1の移送手段と連動して、この制御信号に従った移送速度で、亜リン酸カルシウムが分離除去されためっき液を、めっき槽に移送する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の無電解めっき液の再生装置及び再生方法によれば、無電解めっき液の再生処理を、効率的かつ自動的に実施することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係る無電解めっき液の再生方法を適用した再生装置の構成例を示す系統図である。
【0026】
すなわち、この再生装置は、次亜リン酸ニッケルをニッケル源101として用いるとともに、次亜リン酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸のうちの少なくとも二種を還元剤として用いためっき液100を貯溜するとともに、内部に対象体1を入れられて当該対象体1にニッケルめっきを施す加熱装置内蔵のめっき槽20を備えている。
【0027】
また、めっき槽20に関連する設備として、対象体1へのニッケルめっきの進行に伴って消費されたニッケル源をめっき槽20内に補充するニッケル源補充装置17と、水酸化ナトリウムの溶液からなるpH調整剤103をめっき槽20内に添加するpH調整剤添加装置24と、対象体1を吊支する上下動可能な吊具2と、温度センサ20aと、pHセンサ20bと、ニッケルイオン濃度センサ20cと、液レベル計20dと、還元剤である次亜リン酸ナトリウム又は次亜リン酸をめっき槽20内に補充する還元剤補充装置20eとを備えている。
【0028】
また、この再生装置は、全体制御を司るコントローラ10を備えている。
【0029】
温度センサ20a、pHセンサ20b、ニッケルイオン濃度センサ20c、及び液レベル計20dは、めっき槽20に貯溜しためっき液100の温度、pH、ニッケルイオン濃度、及び液レベルをそれぞれ測定し、測定信号をコントローラ10に出力する。ニッケルイオン濃度センサ20cとしては、めっき槽20内のめっき液100に対して可視光比色分析測定を行い、測定結果からニッケル濃度を求める可視光比色分析測定装置が好適である。
【0030】
コントローラ10は、このようにして各センサから出力された測定信号に基づいて、ニッケルめっき処理に伴って、めっき液100内に生成される亜リン酸の生成速度を求める。亜リン酸が生成されてゆくと、それに伴ってpH値が線形的に下がってゆく、すなわち亜リン酸濃度とpH値とが逆比例するので、特に、pHセンサ20bからの測定信号のみからであっても、亜リン酸の生成速度を求めることが可能である。
【0031】
また、めっき液100のpHの変化のみならず、めっき液100内のニッケル濃度変化もまた、亜リン酸の濃度変化に逆比例する。また、めっき液100の比重変化は、亜リン酸の濃度変化に正比例する。したがって、精度を高めるために、pHセンサ20bからの測定信号以外の測定信号を適宜考慮して亜リン酸の生成速度を求めるようにしても良い。
【0032】
例えば、図示していないが、めっき槽20内のめっき液100の比重を測定し、測定信号をコントローラ10に出力する比重センサ、めっき槽20内のめっき液100の屈折率を測定し、測定信号をコントローラ10に出力する屈折率センサ、めっき槽20内のめっき液100の赤外分光特性を測定し、測定信号をコントローラ10に出力する赤外分光測定装置、めっき槽20内のめっき液100に対して電気泳動キャピラリクロマトグラフィー測定を行い、測定信号をコントローラ10に出力する電気泳動キャピラリクロマトグラフィー測定センサ、めっき槽20内のめっき液100に対して高速液体クロマトグラフィー測定を行い、測定信号をコントローラ10に出力する液体クロマトグラフィー測定センサ、めっき槽20内のめっき液100の紫外線分光特性を測定し、測定信号をコントローラ10に出力する紫外線分光測定装置、めっき槽20内のめっき液100に対してイオンクロマトグラフィー測定を行い、測定信号をコントローラ10に出力するイオンクロマトグラフィー測定装置をめっき槽20に適宜備え、これら測定信号を亜リン酸の生成速度の算出のために適宜考慮するようにしても良い。
【0033】
コントローラ10は、亜リン酸の生成速度を求めると、後述するバルブ21e及び戻しポンプ22を制御する制御信号を生成し、生成した制御信号をバルブ21e及び戻しポンプ22に出力する。
【0034】
分取装置21は、めっき槽20に貯溜されているめっき液100のうちの所定量を分取し、コントローラ10から制御信号を受けると、分取した所定量のめっき液100を分取装置21の下流側に設けられたストック槽30に移送する装置であり、図2の構成図に示すように、分取ポンプ21aと、分取配管21bと、計量ポット21cと、戻り配管21dと、計量ポット21cの底部に設置され、通常は閉とされているバルブ21eとを備えている。
【0035】
分取ポンプ21aは、常時一定速度でめっき槽20から計量ポット21cにめっき液100を供給する。
【0036】
計量ポット21cは、バルブ21eを閉じた状態における容量が所定量に校正されており、分取ポンプ21aによって供給された所定量以上のめっき液100のうち、所定量のめっき液100のみを保持するとともに、余剰分のめっき液100’が、オーバフロー取込口21fからオーバフローするようにしている。また、分取配管21bから計量ポット21cの中にめっき液100が移送されたときに、めっき液100に含まれているガス成分108が、上部開口部21gから抜けてゆく。
【0037】
オーバフローしためっき液100’は、オーバフロー取込口21fから戻り配管21dに導かれ、めっき槽20に戻されるようにしている。計量ポット21cにめっき液100が満水になった状態で、バルブ21eをコントローラ10からの制御信号に基づき開くことにより、計量ポット21c内のめっき液100が重力落下し、ストック槽30に移動する。
【0038】
分取装置21は、このようにして、亜リン酸の生成速度に合わせて所定量のめっき液100をストック槽30に移送する。
【0039】
ストック槽30は、亜リン酸濃度測定センサ31を備えている。亜リン酸濃度測定センサ31は、ストック槽30内のめっき液に含まれる亜リン酸の濃度を測定すると、測定信号をコントローラ10に出力する。
【0040】
すると、コントローラ10は、所定量と、濃度測定センサ31からの測定信号とに基づいて、所定量のめっき液100に含まれる亜リン酸から、亜リン酸カルシウムを生成させるために必要な炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムの量を演算し、演算結果を、後述するアルカリカルシウム添加装置13に出力するとともに、ストック槽30の下流側に設けられたポンプ32に対して起動信号を送る。
【0041】
このようにしてコントローラ10からポンプ32に対して起動信号が送られると、ポンプ32が起動し、ストック槽30内のめっき液100を、バルブ14aを閉じた状態で温度保持装置内蔵の第一処理槽11に移送する。
【0042】
第一処理槽11は、温度センサ11a、pHセンサ11b、超音波発振器11c、第一攪拌装置12、及びアルカリカルシウム添加装置13を備えている。温度センサ11a及びpHセンサ11bは、第一処理槽11内の液の温度及びpHをそれぞれ測定し、測定信号をコントローラ10に出力する。アルカリカルシウム添加装置13は、コントローラ10からの演算結果に基づく量の炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムのうちの少なくとも一方の粉末又はスラリ液からなるアルカリカルシウム104を、第一処理槽11内に貯溜しているめっき液100に添加する。
【0043】
また、第一攪拌装置12は、このように第一処理槽11内において、アルカリカルシウム104が添加されためっき液100を攪拌する。また超音波発振器11cは、第一攪拌装置12の攪拌作用を補助する。これによって、めっき液100とアルカリカルシウム104との混合を促進する。そして、めっき液100とアルカリカルシウム104との混合が十分になされ、めっき液100に含まれる亜リン酸が、アルカリカルシウム104と反応し、亜リン酸カルシウム105が生成した段階で、バルブ14aを開き、第一処理槽11内の液を重力落下により固液分離装置14に導く。
【0044】
固液分離装置14は、生成した亜リン酸カルシウム105を、めっき液100から分離除去する設備であり、例えば加圧フィルタや減圧フィルタを用いてろ過することによって亜リン酸カルシウム105を除去したり、遠心分離機を用いて、亜リン酸カルシウム105を遠心分離することによって除去する。固液分離装置14は、これらのうちの何れか1つによって構成されるのに限らず、加圧フィルタ、減圧フィルタ、及び遠心分離機を適宜組み合わせることによって固液分離装置14を構成するようにしても良い。
【0045】
また、固液分離装置14は、このようにして除去された亜リン酸カルシウム105を、装置外部に払い出す払出機能を備えている。
【0046】
ポンプ25は、このようにして亜リン酸カルシウム105が除去されためっき液100を、固液分離装置14から第二処理槽15へと移送する。
【0047】
第二処理槽15は、このように亜リン酸カルシウム105が除去されためっき液100を貯液する槽である。また、第二処理槽15に関連する設備として、第二攪拌装置16と、補充装置18と、温度センサ15aと、pHセンサ15bとを備えている。
【0048】
第二攪拌装置16は、第二処理槽15内のめっき液100を攪拌する。補充装置18は、めっき槽20でなされた対象体1へのニッケルめっきの進行に伴って消費された還元剤102や、対象体1をめっき槽20から引き上げる際対象体1に同伴して失われるめっき液、ミストとしてダクトに吸引されることにより失われるめっき液、亜リン酸カルシウムを分離する際ケーキに同伴することにより失われるめっき液を補充するための新たなめっき液を第二処理槽15内に添加する。温度センサ15aは、第二処理槽15内のめっき液100の温度を測定し、測定信号をコントローラ10に出力する。pHセンサ15bは、第二処理槽15内のめっき液100のpHを測定し、測定信号をコントローラ10に出力する。
【0049】
また、第二処理槽15の下流側には、第二処理槽15内からめっき槽20内に戻されるめっき液100内の微細な不溶物107を除去する精密ろ過器23を備えている。この精密ろ過器23もまた、固液分離装置14と同様に、例えば加圧フィルタ、減圧フィルタ、及び遠心分離機を適宜組み合わせることによって構成するようにして良い。
【0050】
更に精密ろ過器23の下流側には、戻しポンプ22を備えている。戻しポンプ22は、コントローラ10から制御信号を受けると、分取ポンプ21aと連動して、この制御信号に従った移送速度で、第二処理槽15内に貯液されているめっき液100を、めっき槽20側に移送する。これによって、分取ポンプ21aがめっき槽20からめっき液100を分取する一方、戻しポンプ22が、分取ポンプ21aと連動して、分取ポンプ21aの移送速度と同じ移送速度でめっき液100をめっき槽20に移送することによって、めっき槽20内のめっき液100の組成及び液面が一定に保たれ、対象体1へのニッケルめっき処理の品質が変わらないようにしている。
【0051】
このような戻しポンプ22は、図2に示すような、分取装置21と同様の構成であっても良い。この場合、めっき液100からはオフガスが発生しないので、上部開口部21gは閉じていて良い。
【0052】
なお、以上で述べためっき液100は、硫酸ニッケル−次亜リン酸ナトリウム系ではなく、最終的に硫酸イオン成分を生じることのない次亜リン酸ニッケル−次亜リン酸系である。このめっき液100内には、上述したニッケル源101及び還元剤102だけでなく、錯化剤、安定剤、光沢剤、界面活性剤等のような従来から用いられている各種補助剤106も添加されている。
【0053】
以上のように、本発明の実施の形態に係る無電解めっき液の再生方法を適用した再生装置は、ニッケルめっき処理に伴ってめっき液100内に生成した亜リン酸の生成速度を把握し、その生成速度に合わせてめっき液100を再生処理してめっき槽20に戻している。ニッケルめっき処理される対象物1の表面積が大きかったり、めっき速度が速ければ、亜リン酸の生成速度も速くなるので、再生されためっき液100のめっき槽20への戻り速度も早くなり、それに比例して分取速度も速まり、亜リン酸の除去処理の間隔も短くなる。また、対象物1の量が少なく、表面積が小さかったり、めっき速度が遅くなったりすると、亜リン酸の生成速度も遅くなるので、亜リン酸を処理するためのめっき液の分取速度も遅くなり、亜リン酸の除去処理の間隔も長くなる。さらに、めっき槽20内に対象物1が入っていなければ亜リン酸は生成しないので、再生されためっき液100のめっき槽20への戻りもなく、従ってめっき液100を分取する速度もゼロとなり、めっき液100の再生処理は休止する。
【0054】
次に、以上のように構成した本発明の実施の形態に係る無電解めっき液の再生方法を適用した再生装置の動作について図3及び図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0055】
対象体1にニッケルめっき処理を施す場合には、対象体1を吊具2に吊支し、この吊具2を下げることによって対象体1をめっき槽20内のめっき液100に浸漬した状態でなされる(S1)。
【0056】
このめっき槽20には、対象体1へのニッケルめっきの進行に伴って消費されたニッケル源をめっき槽20内に補充するニッケル源補充装置17と、水酸化ナトリウムの溶液からなるpH調整剤103をめっき槽20内に添加するpH調整剤添加装置24とが備えられており、ニッケルめっきに必要な条件が整えられている。
【0057】
また、めっき槽20には、温度センサ20a、pHセンサ20b、ニッケルイオン濃度センサ20c、液レベル計20d、更には、図示していないが、必要に応じて比重センサ、屈折率センサ、赤外分光測定装置、電気泳動キャピラリクロマトグラフィー測定センサ、液体クロマトグラフィー測定センサ、紫外線分光測定装置、イオンクロマトグラフィー測定装置が設けられている。
【0058】
めっき槽20内でめっき処理がなされると、めっき処理の進行に伴ってめっき液100内に亜リン酸が生成されるが、これに伴うめっき液100の物性値は、上記各センサや測定装置によって常時測定され、測定結果がコントローラ10に出力される(S2)。
【0059】
コントローラ10では、このようにして各センサや測定装置から出力された測定信号に基づいて、めっき液100内に生成される亜リン酸の生成速度が求められる(S3)。亜リン酸が生成されてゆくと、それに伴ってpH値が線形的に下がってゆくので、特に、pHセンサ20bからの測定信号のみからであっても、亜リン酸の生成速度を求めることが可能である。しかしながら、精度を高めるために、pHセンサ20bからの測定信号以外の測定信号を適宜利用して亜リン酸の生成速度を求めるようにしても良い。
【0060】
その後コントローラ10では、バルブ21e及び戻しポンプ22を制御する制御信号が生成され、生成された制御信号がバルブ21e及び戻しポンプ22に出力される(S4)。
【0061】
めっき槽20から計量ポット21cへは、分取ポンプ21aによって常時一定速度でめっき液100が供給される(S5)。
【0062】
計量ポット21cは、バルブ21eを閉じた状態における容量が所定量になるように校正されている。これによって、ステップS5において、分取ポンプ21aによって供給されためっき液100のうち、所定量のめっき液100のみが計量ポット21cに保持される一方、余剰分のめっき液100’は、オーバフローしてオーバフロー取込口21fに取り込まれたのちに、戻り配管21dを介してめっき槽20に戻される(S6)。
【0063】
このようにして計量ポット21cにめっき液100が満水になった状態で、コントローラ10からの制御信号に基づきバルブ21eを開くことにより、計量ポット21c内のめっき液100が重力落下し、所定量のめっき液100がストック槽30に移送される(S7)。
【0064】
ストック槽30には、濃度測定センサ31が設けられており、ストック槽30に移送されためっき液に含まれる亜リン酸が、この濃度測定センサ31によって測定され、その測定信号がコントローラ10に出力される(S8)。
【0065】
すると、コントローラ10では、所定量と、濃度測定センサ31からの測定信号とに基づいて、所定量のめっき液100に含まれる亜リン酸から、亜リン酸カルシウムを生成させるために必要な炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムの量が演算され、演算結果が、アルカリカルシウム添加装置13に出力されるとともに、ストック槽30の下流側に設けられたポンプ32に対して起動信号が送られる(S9)。
【0066】
このようにしてコントローラ10からポンプ32に対して起動信号が送られると、ポンプ32が起動し、ストック槽30内のめっき液100が、バルブ14aを閉じた状態で第一処理槽11に移送される(S10)。
【0067】
第一処理槽11には、温度センサ11a、pHセンサ11b、超音波発振器11c、第一攪拌装置12、及びアルカリカルシウム添加装置13が設けられており、温度センサ11a及びpHセンサ11bによって、第一処理槽11内の液の温度及びpHがそれぞれ測定され、その測定信号がコントローラ10に出力される。一方、アルカリカルシウム添加装置13からは、コントローラ10からの演算結果に基づく量の炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムのうちの少なくとも一方の粉末又はスラリ液からなるアルカリカルシウム104が、第一処理槽11内に添加される(S11)。
【0068】
このように第一処理槽11内で混合されたアルカリカルシウム104とめっき液100とは、第一攪拌装置12によって攪拌されることによって、混合される。第一攪拌装置12に加えて、更に超音波発振器11cを用いてめっき液100を攪拌することにより、攪拌効果をより高めることができる。これによって、めっき液100とアルカリカルシウム104との混合が促進され、めっき液100に含まれる亜リン酸が、アルカリカルシウム104と反応し、亜リン酸カルシウム105が生成してくる(S12)。そして、亜リン酸カルシウム105が十分に生成した段階で、バルブ14aを開くと、第一処理槽11内の液が重力落下により固液分離装置14に導かれる。
【0069】
固液分離装置14では、ろ過や遠心分離によって亜リン酸カルシウム105が除去され、しかる後に装置外部に払い出される(S13)。
【0070】
一方、このようにして亜リン酸カルシウム105が除去されためっき液100は、ポンプ25によって第二処理槽15に移送される(S14)。
【0071】
第二処理槽15に移送されためっき液100には、めっき槽20でなされた対象体1へのニッケルめっきの進行に伴って消費された還元剤102及び新たなめっき液が、必要に応じて補充装置18から供給される。また、第二処理槽15には、第二攪拌装置16が設けられており、第二処理槽15に還元剤102及び新たなめっき液が供給された場合であっても、攪拌されることによって、一様に混合される。また、第二処理槽15内のめっき液100は、温度センサ15a及びpHセンサ15bによって温度及びpHがそれぞれ測定され、測定結果がコントローラ10に出力される。
【0072】
第二処理槽15の下流側には、戻しポンプ22が設けられているが、コントローラ10からの制御信号をトリガとして、この戻しポンプ22が、バルブ21eと連動して、かつ、この制御信号に従った移送速度で動作することにより、第二処理槽15内に貯液されているめっき液100が、精密ろ過器23を介してめっき槽20に移送される。これによって、第二処理槽15内に貯液されていためっき液100は、精密ろ過器23で微細な不溶物107が除去された(S15)後に、めっき槽20に戻される(S16)。
【0073】
上述したように、本発明の実施の形態に係る無電解めっき液の再生方法を適用した再生装置においては、上記のような作用により、ニッケルめっき処理に伴ってめっき液100内に生成した亜リン酸の生成速度を把握し、その生成速度に合わせてめっき液100を再生処理してめっき槽20に戻すことが可能となる。この場合、ニッケルめっき処理される対象物1の表面積が大きかったり、めっき速度が速い場合には、亜リン酸の生成速度も速くなるが、それに対応して、再生されためっき液100のめっき槽20への戻り速度を速くすることができるので、分取速度を速め、亜リン酸の除去処理の間隔を短くすることが可能となる。
【0074】
一方、対象物1の量が少なく、表面積が小さかったり、めっき速度が遅い場合には、亜リン酸の生成速度も遅くなるが、それに対応して、亜リン酸を処理するためのめっき液の分取速度を遅くすることができるので、亜リン酸の生成速度の鈍化に合わせて、亜リン酸の除去間隔を長くすることが可能となる。
【0075】
さらに、めっき槽20内に対象物1が入っていなければ亜リン酸は生成しない。この場合、亜リン酸の生成速度はゼロであるので、再生されためっき液100のめっき槽20への戻りもなくなり、亜リン酸の分取速度もゼロとすることができるので、めっき液100の再生処理を休止させることが可能となる。
【0076】
このように、本発明の実施の形態に係る無電解めっき液の再生方法を適用した再生装置は、亜リン酸の生成速度に合わせて、めっき液100の再生速度を調整することができるので、めっき処理の状態に合わせて、めっき液100の再生を効率的かつ自動的に実施することが可能となる。
【0077】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0078】
例えば、図1に示す系統構成は、本発明の概念を説明するための代表例であり、配管の途中にポンプ、バルブ、補助槽等を適宜追加してもよく、このような変形例もまた、本発明に含まれるものと解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施の形態に係る無電解めっき液の再生方法を適用した再生装置の構成例を示す系統図。
【図2】分取装置の構成例を示す系統図。
【図3】本発明の実施の形態に係る無電解めっき液の再生方法を適用した再生装置の動作を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施の形態に係る無電解めっき液の再生方法を適用した再生装置の動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0080】
1…対象体、2…吊具、10…コントローラ、11…第一処理槽、11a…温度センサ、11b…pHセンサ、11c…超音波発振器、12…第一攪拌装置、13…アルカリカルシウム添加装置、14…固液分離装置、14a…バルブ、15…第二処理槽、15a…温度センサ、15b…pHセンサ、16…第二攪拌装置、17…ニッケル源補充装置、18…補充装置、20…めっき槽、20a…温度センサ、20b…pHセンサ、20c…ニッケルイオン濃度センサ、20d…液レベル計、20e…還元剤補充装置、21…分取装置、21a…分取ポンプ、21b…分取配管、21c…計量ポット、21d…戻り配管、21e…バルブ、21f…オーバフロー取込口、21g…上部開口部、ドリップトレイ、22…戻しポンプ、23…精密ろ過器、24…pH調整剤添加装置、25…ポンプ、30…ストック槽、31…亜リン酸濃度測定センサ、32…ポンプ、100…めっき液、101…ニッケル源、102…還元剤、103…pH調整剤、104…アルカリカルシウム、105…亜リン酸カルシウム、106…補助剤、107…不溶物、108…ガス成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜リン酸ニッケルをニッケル源として用いると共に、次亜リン酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸のうちの少なくとも二種を還元剤として用いためっき液を貯溜し、このめっき液を用いて、対象物にニッケルめっき処理を施すためのめっき槽と、
前記ニッケルめっき処理に伴って生成される亜リン酸の生成速度を測定する生成速度測定手段と、
制御信号を受けると、この制御信号に従った移送速度で、前記めっき槽に貯溜されているめっき液のうちの所定量を分取し、分取槽に移送する第1の移送手段と、
前記分取された所定量のめっき液に含まれる亜リン酸の濃度を測定する濃度測定手段と、
前記所定量と、前記濃度測定手段によって測定された亜リン酸の濃度とに基づいて、前記所定量のめっき液に含まれる亜リン酸から、亜リン酸カルシウムを生成させるために必要な炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムの量を演算する演算手段と、
前記演算手段によって演算された量の炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムを、前記分取槽に供給する第1の供給手段と、
前記分取槽に供給された炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムが、前記分取槽内において、前記所定量のめっき液と混合することによって生成した亜リン酸カルシウムを、前記めっき液から分離除去する分離除去手段と、
前記制御信号を受けると、前記第1の移送手段と連動して、この制御信号に従った移送速度で、前記分離除去手段によって亜リン酸カルシウムが分離除去されためっき液を、前記めっき槽に移送する第2の移送手段と、
前記生成速度測定手段によって測定された生成速度に基づいて、前記第1及び第2の移送手段の移送速度を制御する前記制御信号を生成し、前記生成した制御信号を第1及び第2の移送手段に出力する制御手段と
を備えた無電解めっき液の再生装置。
【請求項2】
前記生成速度測定手段は、前記めっき槽内のめっき液のpHを測定し、測定したpH値に基づいて前記亜リン酸の生成速度を求めるpH測定手段と、前記めっき槽内のめっき液の比重を測定し、測定した比重に基づいて前記亜リン酸の生成速度を求める比重測定手段と、前記めっき槽内のめっき液に含まれるニッケル濃度を測定し、測定したニッケル濃度に基づいて前記亜リン酸の生成速度を求めるニッケル濃度測定手段と、前記めっき槽内のめっき液の屈折率を測定し、測定した屈折率に基づいて前記亜リン酸の生成速度を求める屈折率測定手段と、前記めっき槽内のめっき液の赤外分光特性を測定し、測定した赤外分光特性に基づいて前記亜リン酸の生成速度を求める赤外分光測定手段と、前記めっき槽内のめっき液に対して電気泳動キャピラリクロマトグラフィー測定を行い、この測定結果に基づいて前記亜リン酸の生成速度を求める電気泳動測定手段と、前記めっき槽内のめっき液に対して高速液体クロマトグラフィー測定を行い、この測定結果に基づいて前記亜リン酸の生成速度を求める液体クロマトグラフィー測定手段と、前記めっき槽内のめっき液の紫外線分光特性を測定し、測定した紫外線分光特性に基づいて前記亜リン酸の生成速度を求める紫外線分光測定手段と、前記めっき槽内のめっき液に対してイオンクロマトグラフィー測定を行い、この測定結果に基づいて前記亜リン酸の生成速度を求めるイオンクロマトグラフィー測定手段と、前記めっき槽内のめっき液に対して可視光比色分析測定を行い、この測定結果に基づいて前記ニッケル濃度を求める可視光比色分析測定手段とのうちの少なくとも何れかを含む請求項1に記載の無電解めっき液の再生装置。
【請求項3】
前記第1の移送手段は、
前記めっき槽に貯溜されているめっき液を前記所定量以上分取する分取手段と、
前記分取手段によって分取されためっき液の量を前記所定量に調整するとともに、余剰分のめっき液を前記めっき槽に戻す計量手段と、
前記計量手段によって調整された前記所定量のめっき液を前記分取槽に移送する移送部とを備えた請求項1又は請求項2に記載の無電解めっき液の再生装置。
【請求項4】
前記供給手段によって前記分取槽に供給された炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムと、前記分取槽内の所定量のめっき液とを攪拌する第1の攪拌手段と、
前記分取槽内の液温を予め定めた範囲内に保つ温度制御手段と
を前記分取槽に備えた請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の無電解めっき液の再生装置。
【請求項5】
前記分離除去手段は、
前記生成した亜リン酸カルシウムを、加圧ろ過、減圧ろ過、及び遠心分離のうちの少なくとも何れかによって前記めっき液から分離する分離部と、
前記分離部によって分離された亜リン酸カルシウムを装置外部に払い出す払出部と
を備えた請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の無電解めっき液の再生装置。
【請求項6】
前記分離除去手段と、前記第2の移送手段との間に介挿して設けられ、前記除去分離手段によって前記亜リン酸カルシウムが除去されためっき液を、前記第2の移送手段によって移送されるまで貯液する中間槽と、
前記中間槽に次亜リン酸及びめっき液を供給する第2の供給手段と、
前記中間槽内の液を攪拌する第2の攪拌手段と、
前記中間槽内の液のpHを測定するpHセンサと
を備えた請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の無電解めっき液の再生装置。
【請求項7】
めっき処理に供された無電解めっき液を、再びめっき処理に用いるために再生する方法であって、
次亜リン酸ニッケルをニッケル源として用いると共に、次亜リン酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸のうちの少なくとも二種を還元剤として用いためっき液を貯溜し、このめっき液を用いて、対象物にニッケルめっき処理を施すためのめっき槽において、前記ニッケルめっき処理に伴って生成される亜リン酸の生成速度を測定し、
前記測定された生成速度に基づいて、第1及び第2の移送手段の移送速度を制御する制御信号を生成し、前記生成した制御信号を前記第1及び第2の移送手段に出力し、
前記第1の移送手段は、前記制御信号を受けると、この制御信号に従った移送速度で、前記めっき槽に貯溜されているめっき液のうちの所定量を分取して分取槽に移送し、
前記分取された所定量のめっき液に含まれる亜リン酸の濃度を測定し、
前記所定量と、前記測定された亜リン酸の濃度とに基づいて、前記所定量のめっき液に含まれる亜リン酸から、亜リン酸カルシウムを生成させるために必要な炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムの量を演算し、
前記演算された量の炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムを、前記分取槽に供給し、
前記分取槽に供給された炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムが、前記分取槽内において、前記所定量のめっき液と混合することによって生成した亜リン酸カルシウムを、前記めっき液から分離除去し、
前記第2の移送手段は、前記制御信号を受けると、前記第1の移送手段と連動して、この制御信号に従った移送速度で、前記亜リン酸カルシウムが分離除去されためっき液を、前記めっき槽に移送する
ようにした無電解めっき液の再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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