説明

無電解析出で使用するための触媒溶液の塗布方法

表面上に無電解めっきを受容するために前記表面を活性化させる改良方法であって、特にプリント基板における貫通孔を活性化させるために用いられ、酸性水性マトリクス中にパラジウムスズコロイドを含む活性化溶液に窒素ガスを分散させて、その中に収容されている第1スズの酸化を緩徐にする方法。前記活性化を実施するためのダイナミックフラッドコンベアシステムを記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒溶液に対する大気酸素の酸化作用が、コンベアシステムにおいて本質的により有害となるため、該酸化作用を遅延させることにより、無電解めっき前に基材上に触媒を使用して、非導電性基材上にコンベアを用いて無電解めっきを施す改良方法に関する。より具体的には本発明は、コンベアモジュールにおける大気酸素を置換し、スズイオンの酸化を緩徐にし、且つ活性剤溶液中の溶解酸素含量を減少させるための窒素ガスの使用に関する。
【0002】
本発明の方法は、非導電性表面上に析出した金属が、基材を熱伝動性基材、導電性基材、より強度の高い基材、より堅固な基材、又はこれらの性質の組み合わせを有する基材にする機能的用途において適用可能である。また、本発明の方法は、装飾的用途にも使用できるが、プリント基板の製造において特に有用である。
【背景技術】
【0003】
液体活性剤溶液としても知られているスズ−パラジウムコロイド触媒を用いて非導電性基材上に金属を無電解析出させる方法は、広く知られており、利用されている。そのプロセスは、プラスチック又は硬化樹脂などの非導電性表面を、先ずスズ−パラジウムコロイド触媒に接触させ、好ましくは続いて別の溶液中でスズを除去して、金属パラジウム層が表面上に実質的に吸着している状態を確実にすることを含む。これら広く用いられているスズ−パラジウム触媒溶液及びスズを除去する促進剤は、特許文献1及び2に記載されており、これらの開示は、参照することにより全体を本願に援用する。次いで、ホルムアルデヒド又は次亜リン酸塩などの還元剤を利用する無電解めっき浴中にて基材上に種々の金属を析出させることができる。多くの従来の銅又はニッケル(又は他の無電解金属めっき溶液)をこの工程で用いることができる。ニッケル析出の場合、好適なめっき溶液は、特許文献3の実施例III、表IIに記載されている。同様に好適な銅めっき溶液は、特許文献4の実施例2に開示されている。無電解金属析出は、通常厚みが薄いため、このプロセスの後、一般的には、銅、ニッケル、又は任意の他の所望の金属を用いた従来の電気めっきが行われる。
【0004】
従来このプロセス、特に触媒工程は、「縦型」浸漬タンク内で行われていた。かかるプロセスでは、所定の期間、各溶液又はコロイドを収容しているタンクに基材を単に浸漬させる。しかし、このプロセスでは若干不均一なコーティングが生じることが分かっており、これは特に、適切に再現可能な導電性を得るために一様なコーティングが必要とされるプリント基板の製造において極めて重大な弊害となる。プリント基板は、「貫通孔」を穿設する必要があり、該貫通孔を通して電流を流すことができなければならない。これら貫通孔は、回路基板の各種層を穿通している単なる孔であるが、各層が硬化樹脂プラスチックで主に構成されているため、これら孔は導電性ではない。従って、上記プロセスは、これら孔内に銅の層を析出させ、該孔を導電性にするために用いられる。しかし、これら孔は、一般にかなり小さく、従って、溶液と基材との接触がより困難になる。これはプロセス全体を通して問題であり、触媒コロイドを含む全ての溶液が基材と接触しなければならない。
【0005】
縦型浸漬プロセスを維持しながらコーティングが不均一であるという難点を軽減するための様々な方法が使用され、特許されている。これら方法は、基材を周期的に運動させる機構の追加から、溶液とコロイドとを混合及び撹拌する機構、界面活性剤の使用、更には特許文献5に開示されているように基材を素早く振動させる複雑な機構にまで及ぶ。しかし、これら解決法は、いずれも、均一なコーティングをもたらさない、又は従来の方法より生産性及び効率が向上しないため、縦型浸漬プロセスを完全に断念し、コンベアプロセスを利用することとなった。かかるプロセスは、ますます主流となり、産業界に期待されているため、触媒の前調整から無電解めっきまでの全プロセスが完全にダイナミックコンベア(conveyorized dynamic)で実行可能であることが要求されている。
【0006】
ダイナミックコンベアは、2つの異なる方法で操作される。1つは、モジュールを通して基材を搬送し、主搬送チャンバの真下にある容器から汲み上げた活性化溶液又はコロイドを噴霧する噴霧型機構を利用する。溶液と接触した後、液体は排出されて下方の容器チャンバに戻され、再び汲み上げられる。第2のコンベアの種類であって、本発明が好適に用いられる種類は、ダイナミックフラッドコンベア(dynamic flood conveyor)である。かかる機構は、特許文献6に記載されている。基本的には、選択的に閉鎖される機構、通常は共に緊密に保持されている2つのローラを通してモジュールに基材が搬送される。モジュール内部は、容器から汲み上げられ、排出されて下方に戻される活性化溶液の流れる「川」が維持されている。溶液と基材とを接触させるこれら手段を利用すると、より均一で一様なコーティングが得られる。液体及び基材自体の運動により、狭い貫通孔でさえも新鮮な溶液に継続的に接触することが可能になる。更に、コンベアシステムの使用は、生産性及び効率性を更に向上させる。
【0007】
しかし、特にスズ−パラジウム触媒と共にコンベアシステムを用いると、ある厄介な問題が生じるが、本発明はこの問題を軽減することを目的とする。スズ−パラジウム触媒中のスズは2つの重要な機能を担っている。第1に、コロイドを作製するとき、第1スズ(stannous tin)イオンは、コロイドを構成する金属パラジウム粒子に塩化パラジウムのPd2+イオンを還元し、それにより第2スズイオンに酸化され、該第2スズイオンは、次いで錯体塩化第2スズとして機能を失う。第2に、本発明で最も重要なことであるが、全てのパラジウムイオンが還元された後、残りの第1スズイオンは金属パラジウムをコロイド形態に安定化させることができる。これにより非常に安定なコロイドが得られるが、これら第1スズイオンが存在しない場合、又は第2スズイオンに酸化されている場合、コロイドは役に立たなくなる。残念なことに第1スズイオンは、酸化に対する感度がかなり高く、標準的な温度及び圧力下でさえも大気酸素により自発酸化される。縦型浸漬システムでは、溶液が上方の空気に対して本質的に静止しているため、大気酸素による第1スズイオンの喪失は、ほとんどの場合ごく僅かである。しかし、コンベアシステムでは、溶液が汲み上げられ、撹拌され、時に噴霧されるため、溶液は絶えず運動している。
【0008】
かかる撹乱及び摂動の結果、新鮮な酸素が継続的にコロイドに混合され、結果として金属パラジウムを安定化させる第1スズイオンが継続的に酸化され、副生成物である酸化スズが沈殿する。従って、ルシャトリエの原理により平衡が第1スズイオンとは逆の方向に移動し、これは商業的プロセスにとって好ましくない。産業界では、本発明以前、この結果は一般に無視されており、この問題の解決法は、単により多くの塩化第1スズをコロイドに添加し続けて、コンベアの酸化作用による減少分を補う、又は溶液を廃棄することであった。しかし、この方法は、かなり高価であり且つ無駄が多いことが分かっているため、本発明は、大気の有害な作用から第1スズイオンを保護するためのよりコスト効率のよい方法を検討する。
【0009】
精製窒素又は酸素ガスを得るために、その場で窒素ガスを発生させるためのデバイスが長い間利用されており、かかる装置は特許文献7に開示されている。簡潔に述べると「圧力スイング吸着」(PSA)システムは、空気を高純度窒素流と高純度酸素流とに分別する。2つのガスの吸着親和性の差を利用することにより、このシステムは機能する。例えば、特定のケイ酸塩及びゼオライトは、空気混合物から窒素を優先的に吸着するのに有効であるため、空気をゼオライト充填吸着剤に通すことにより、最初に発生するガスは非常に酸素に富むガスであり、窒素は吸着により遅れて発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3,011,920号明細書
【特許文献2】米国特許第3,532,518号明細書
【特許文献3】米国特許第2,532,283号明細書
【特許文献4】米国特許第3,095,309号明細書
【特許文献5】米国特許第5,077,099号明細書
【特許文献6】米国特許第4,724,856号明細書
【特許文献7】米国特許第4,011,065号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の実施形態によれば、基材を処理した後にスズ−パラジウムコロイドを含有している触媒組成物を用いて無電解析出させることを含む、非導電性基材上に金属を無電解析出させるコンベアプロセスにおいて、窒素ガス、好ましくはPSA精製窒素ガス発生システムにより作製された窒素ガスを、好ましくは多孔パイプを介してコロイド溶液に分散させる(sparging)ことにより、触媒浴の効率が改善されることが見出されている。この効果は、コロイドを安定化させる第1スズイオンの酸化を著しく遅延させることであり、これによって、塩化第1スズの補充を減らしてより長期間コロイドを機能させることが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
単に窒素ガスをチャンバ内に充満させてコロイド液(flood)の上方を「窒素で覆う」代わりに、コロイド溶液に窒素を「吹き込む(bubble)」(分散させる)ことが特に好ましい。溶液を窒素で継続的に飽和させることにより、液体活性剤に溶解している有害な酸素を効率的に窒素粒子に置換することができ、これはルシャトリエの原理に従って平衡を人工的に移動させることによると考えられている。更に、吹き込まれた窒素は、次に、充填されている(flooded)液体の上方を覆って保護し、多くの大気酸素がコロイドを攻撃するのを効率的に阻止する。
【0013】
この方法は、モジュールを囲む選択的に閉鎖される機構(ほとんどの場合2つのローラである)を十分に活用し、窒素で覆うことによる保護効果を十分に生じさせる。更にこの方法はまた、噴霧コンベア装置と共に用いてもよく、該装置は、噴霧された液体粒子が大量の酸素と接触しないようにチャンバ全体が精製窒素で満たされていることが好ましい。従って、本発明は、コストのかかる第1スズイオンの喪失を最小限に抑えながら、非常に優れたコンベアプロセスの利用を可能にする。活性剤浴の耐用期間が長くなり、その寿命全体に亘ってより良好にめっき触媒作用を及ぼす。
【0014】
次いで、触媒化基材を任意的に促進剤で処理してもよく、該促進剤により活性化表面上の第1スズが除去される。触媒活性をもたらすのはパラジウムのみであり、基材上の余分なスズは無電解めっきを阻害する恐れがあるため、該処理は有益である。最後に、完全に触媒された基材を無電解めっき浴中で処理してもよく、この場合、プロセス全体を通して利用されるコンベア加工によって、基材に均一且つ一様な金属コーティングが施される。
【0015】
最後に、このプロセスは、コロイド活性剤中で必要とされるパラジウム濃度が非常に低いという、塩化パラジウム溶液の使用に勝る利点を有し、この利点は以前から知られている。パラジウムなどの貴金属は非常に高価であるため、これは重要な利点である。従って、本発明は、プリント基板の貫通孔、特に高アスペクト比を有する貫通孔の無電解めっきにおいて非常に重要である。本発明は、塩化パラジウム溶液を使用することによる、又はコロイドを安定化させる第1スズイオンを継続的に補充しなければならないことによるコストの増大なしに、コンベアプロセスを使用することを可能にする。
【0016】
容易に理解できるように、スズ−パラジウムコロイド触媒などの液体活性剤溶液を保護するために比較的安価なPSA窒素発生器を用いることは、産業界がこれまで受け入れざるを得なかった塩化第1スズの実質的且つ無駄な損失を受け入れなくてもよくなる、非常に新しいアプローチである。活性剤溶液内及びコンベアモジュール自体全体に窒素ガスを効率よく分散させることを可能にする装置を作製する手段も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、選択的に閉鎖される機構用ローラを有する、基材を搬送するための活性化モジュールと、モジュールに液体活性剤を継続的に満たすための装置であって、窒素ガスを充填溶液に送達するために多孔パイプが取り付けられている装置との概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、熱可塑性材料、熱硬化性材料、ガラス、セラミックなどで構成される任意の好適な非導電性基材上に、銅金属、銅合金、又は銅金属間化合物を含む銅の無電解めっきに特に適用可能である。本発明は、既に記述したように、一般に接触する基材がエポキシ又はポリイミド、特にガラス強化エポキシ又はガラス強化ポリイミド系である場合、プリント基板の製作で使用される無電解めっきに特に適用可能である。本発明は、両面プリント基板又は多層プリント基板における貫通孔表面の活性化及び無電解めっきに主に適用可能である。本発明は、前述の技術を新規方法で組み合わせ、触媒浴の効率を向上させる。別の酸素除去ガスを用いて平衡を好ましい方向に移動させることにより酸素除去環境を得ることが、かかる実質的且つ好ましい効果を有し得ることは、これまで知られていなかった。
【0019】
好ましい実施形態では、無電解めっきを施される基材は、当該技術分野において既知である好適な洗浄剤で先ず洗浄され、続いて適切にすすがれる。次いで、本発明の好ましい実施形態では、米国特許第4,724,856号明細書に記載のように、基材をダイナミックフローコンベア内に配置し、液体活性剤溶液としても知られているスズ−パラジウムコロイド触媒により活性化する。
【0020】
選択的に閉鎖される機構(2)を通して基材がモジュール(選択的に閉鎖される筐体)(1)に入り、モジュール内で基材は、筐体の長さに沿って好ましくは一連のローラ(3)により搬送され、少なくとも1つの出口(6)を通して容器(5)からモジュールに汲み上げられたスズ−パラジウム触媒(4)と接触する。好適なスズ−パラジウム触媒は、所望の浴のサイズに応じて量を増加又は減少させた以下の成分を順番に添加することにより作製することができる。
<配合1>
塩化パラジウム:1g
水:600mL
濃塩酸(38%):300mL
塩化第1スズ:50g
【0021】
得られたコロイドは、室温で使用することができ、曝露時間は、基材が搬送される速度の変動により1分間〜5分間であってもよい。更に、特に基材の導入中にスズ−パラジウム触媒が漏出するのを選択的に閉鎖される機構が防ぐため、充填されているスズ−パラジウム触媒をモジュール内に収容することができる。
【0022】
筐体内ではスズ−パラジウム触媒が容器(5)から汲み上げられ、複数の出口(6)を用いて筐体全体に投入される。更に、モジュール内ではモジュール自体が多孔パイプ(7)を備えることが最も好ましく、該多孔パイプは、下方の容器内でスズ−パラジウム触媒中に延在するのに十分な長さであり、最も好ましくはパイプがスズ−パラジウム触媒に接触する箇所にのみ孔を備える。噴霧ノズル、非多孔パイプ、又はかかるモジュール内にガスを分散させることができる任意の他のデバイスを含む、他の手段を同様に用いてもよい。次いで、このデバイスは、酸素除去ガス発生器に接続される。この発生器は、実質的に酸素が除去されているガスを発生させることができなければならず、また、次のガス:窒素、ヘリウム、アルゴン、水素、又は二酸化炭素の任意の混合物を発生させる場合に好適に用いることができる。酸素除去ガスは、大気中に存在する濃度よりも低い濃度、好ましくは約15重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは1重量%未満の酸素を含有するガスであり、好ましい実施形態では、用いられるガスは窒素ガスである。
【0023】
前記窒素ガスは、周囲雰囲気下においてガスの物理的性質の差を利用することにより大気から発生させることが好ましい。そのプロセスは、既に記載したように圧力スイング吸着を使用して空気を分別し、且つ窒素を精製する。正確な稼働条件によって、95重量%〜99.5重量%の純度範囲の窒素を容易に得ることができる。好ましい実施形態では、PNEUMATECH PMNG(登録商標)シリーズの窒素発生器を使用するが、該窒素発生器は標準的な温度及び圧力下で1時間当たり675立方フィートの窒素を発生させることができる。この発生器は、気密ホースを介してフラッドコンベアモジュール内の多孔パイプに接続されることが好ましい。
【0024】
フラッドコンベアを稼働させ、それによってスズ−パラジウム触媒を混合し、汲み上げるときにはいつでも、窒素発生器は窒素ガスをモジュールに送る。多孔パイプにより、ガスが容器内のスズ−パラジウム触媒(4)中に吹き込まれ、次いでモジュールに全体に分配して投入される。窒素ガスは、約0.0017リットル/分〜150リットル/分(0.1リットル/時間〜9,000リットル/時間)の速度でスズ−パラジウム触媒(4)に分散される。筐体内の窒素圧が制御されている気密モジュールを利用することができる。しかし、好ましい実施形態では、これは必須ではなく、窒素ガスは置換された酸素とともに筐体外に出ることができる。
【0025】
従って、基材は、30秒間〜5分間スズ−パラジウム触媒(液体活性剤)に接触している選択的に閉鎖される筐体の長さに沿って移動することが最も好ましく、この場合、窒素ガスは約70リットル/分の速度で触媒に分散する。次いで、基材は、別の選択的に閉鎖される機構(11)を通してこのモジュールを出て、プロセスの次の工程に入るが、該工程は基材表面上のスズ−パラジウム触媒から第1スズを除去する促進剤溶液であることが好ましい。好ましい促進剤溶液は、米国特許第4,608,275号明細書の実施例1に記載されており、基本的に塩化ナトリウム及び重炭酸ナトリウムを含有しているpHの調整された溶液である。
【0026】
次に、基材は無電解めっき浴に入ることができ、これにより活性化及び促進化された基材上に銅めっきを施すことが好ましい。無電解めっき浴は、銅の無電解析出用の任意の既知の浴からなっていてもよく、例えば、ホルムアルデヒド還元浴及び次亜リン酸塩還元浴などが挙げられる。当該技術分野において既知であるように、多くの次亜リン酸塩還元浴は、一般に自己触媒性ではないため、単独では大部分のプリント基板用途に必要なめっき厚(例えば1.0mm超)を生じさせることができない。従って、好ましい実施形態では、ホルムアルデヒド還元無電解銅めっき浴を使用する。更に改質されている次亜リン酸塩還元浴、又は次亜リン酸塩還元浴を自己触媒性にして必要な厚みのめっきを得ることができる方法で用いられる次亜リン酸塩還元浴を用いてもよい。例えば、米国特許第4,265,943号明細書(Goldstein等)、米国特許第4,459,184号明細書(Kukanskis等)、及び米国特許第4,671,968号明細書(Slominski)参照。この実施形態には好ましくないが、非自己触媒性次亜リン酸塩浴が望ましい場合、典型的な浴は米国特許第4,209,331号明細書及び同第4,279,948号明細書に開示されている。
【実施例】
【0027】
(比較例1)
ダイナミックフラッドモジュールを本発明の好ましい実施形態に記載されている前述の方式で配置し、スズ−パラジウム触媒を配合1の指示通り調製する。窒素ガス流は、停止させるが、機械は、触媒をフラッドチャンバに汲み上げ、分配し、200L/分又は12,000L/時間の速度で排出し下方の容器に戻す状態で、通常24時間稼働させる。この実験の目的は、大気酸素による酸化に純粋に起因する、第1スズ濃度の減少を測定することである。従って、正確な測定を行うことができるよう、この期間中は基材の処理を行わない。開始時、及び24時間の合計稼働時間中4時間に1回、スズ−パラジウム触媒のサンプルを回収する。次いでこれらサンプルを第1スズ濃度について分析する。当該技術分野において広く知られている方法である、標準化ヨウ素及びデンプンを用いてサンプルの定量的滴定を行うことより分析する。結果から以下のデータが得られる。
【表1】

【0028】
第1スズの一部は、パラジウムイオンの金属パラジウムコロイド粒子への還元で消費されるため、補給時の第1スズ濃度は与えられた配合から予想されるような33g/Lではない。しかし、この実験は、本発明を用いないコンベアシステムにおいてスズ−パラジウム触媒を作用させると、大気酸素による酸化に起因して非常に多くの第1スズが失われることを示す。
【0029】
(実施例1)
本発明の好ましい実施形態に記載されている通り、窒素ガスをチャンバ内に流し込み、スズ−パラジウム触媒に分散させることを除いて、比較例1で用いたプロセスと同様のプロセスを実施する。窒素ガスを液体活性剤に分散させる速度は、標準的な温度及び圧力下で450L/時間に設定する。比較例1と同様の分析を実施し、得られたデータを以下に示す。
【表2】

【0030】
(実施例2)
本発明の好ましい実施形態に記載されている通り、窒素ガスをチャンバ内に流し込み、スズ−パラジウム触媒に分散させることを除いて、比較例1で用いたプロセスと同様のプロセスを実施する。窒素ガスを液体活性剤に分散させる速度は、標準的な温度及び圧力下で900L/時間に設定する。比較例1と同様の分析を実施し、得られたデータを以下に示す。
【表3】

【0031】
(実施例3)
本発明の好ましい実施形態に記載されている通り、窒素ガスをチャンバ内に流し込み、スズ−パラジウム触媒に分散させることを除いて、比較例1で用いたプロセスと同様のプロセスを実施する。窒素ガスを液体活性剤に分散させる速度は、標準的な温度及び圧力下で1,350L/時間に設定する。比較例1と同様の分析を実施し、得られたデータを以下に示す。
【表4】

【0032】
前述の分析は、本発明が実際に、スズ−パラジウムコロイド活性剤における第1スズの酸化に対して高い保護効果を提供することを示す。窒素ガスをコロイドに分散させる(吹き込む)ことにより第1スズの酸化が更に一層緩徐になることも示された。この結果、非常にコスト効率が高い浴であって、今日の産業界におけるコンベア規格も満たす浴が得られる。
【0033】
前述の記載から明らかであるように、本発明のプロセスは、貫通孔を備えるプリント基板の製作において主に対象とされている、無電解銅めっき用表面の活性化に関して特に記載されているが、ニッケル、金などの他の金属、合金、又は金属間化合物のめっき用表面の活性化にも適用可能である。同様に、酸素除去ガスを分散させることによる酸素除去環境の形成は、チャンバ内に充填されている液体が大気酸素と反応する傾向を有し、且つ望ましくない効果を生じさせる場合、選択的に閉鎖される筐体と共にコンベアシステムを使用する他の活性化プロセスでも利用され得る。
【0034】
次いで前述の記載は、発明及びその好ましい実施形態を説明及び解説するために示されるものであり、特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0035】
1 モジュール(選択的に閉鎖される筐体)
2 選択的に閉鎖される機構
3 ローラ
4 スズ−パラジウム触媒
5 容器
6 出口
7 多孔パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電解めっきされる表面を活性化させる方法であって、
(a)選択的に閉鎖される筐体を通して前記表面を搬送する工程と、
(b)前記選択的に閉鎖される筐体内に液体活性剤を収容する手段を提供し、前記表面が前記選択的に閉鎖される筐体を通して搬送されるとき、前記液体活性剤が前記表面に接触するように前記液体活性剤を汲み上げる工程と、
(c)前記選択的に閉鎖される筐体に実質的に酸素が除去されている酸素除去ガスを導入する工程と、
を含み、
前記液体活性剤溶液が、コロイドパラジウム粒子及び第1スズイオンを含み、前記酸素除去ガスが、前記液体活性剤中における第1スズイオンの酸化を阻害することを特徴とする方法。
【請求項2】
実質的に酸素が除去されているガスが、水素、ヘリウム、アルゴン、窒素、二酸化炭素、及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
実質的に酸素が除去されているガスが、窒素ガスを含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
窒素ガスが、0.1L/時間〜9,000L/時間の速度で導入される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
窒素ガスが、液体活性剤に前記ガスを吹き込む(bubbling)又は分散させる(sparging)手段により導入される請求項3に記載の方法。
【請求項6】
多孔パイプを用いて選択的に閉鎖される筐体内に窒素ガスを注入する工程を含む請求項3に記載の方法。
【請求項7】
噴霧ノズルを用いて選択的に閉鎖される筐体に窒素ガスを噴霧する工程を含む請求項3に記載の方法。
【請求項8】
窒素ガスが、圧力スイング吸着を介して大気を精製することにより得られる請求項3に記載の方法。
【請求項9】
窒素ガスの純度が、少なくとも85重量%である請求項3に記載の方法。
【請求項10】
表面が選択的に閉鎖される筐体を通して搬送されるとき、液体活性剤を汲み出して筐体に充填し、前記液体活性剤を前記表面に接触させる工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
表面が選択的に閉鎖される筐体を通して搬送されるとき、噴霧ノズルを通して液体活性剤を汲み出し、前記液体活性剤を前記表面に接触させる工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
選択的に閉鎖される筐体が、筐体の入口及び出口で互いに接触する2つのローラを備える請求項1に記載の方法。
【請求項13】
表面が筐体を離れた後、無電解めっき浴で前記表面を処理する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
無電解めっき浴が、銅無電解めっき浴、ニッケル無電解めっき浴、及びスズ無電解めっき浴からなる群から選択される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
無電解めっきされる表面を活性化させるためのコンベア機構であって、
(a)前記表面を搬送するコンベアと、
(b)選択的に閉鎖される筐体であって、
(i)コンベアの少なくとも一部、
(ii)液体活性剤を収容する容器、
(iii)前記容器から前記コンベア領域に前記液体活性剤を搬送することができるポンプ及びパイプ、
(iv)前記筐体内に前記液体活性剤を実質的に維持しながら、前記表面が前記筐体に出入りするのを可能にするための選択的に閉鎖される機構、
(v)酸素除去ガスを前記液体活性剤中に吹き込む手段、並びに
(vi)前記筐体の範囲を画定し、構成要素(i)〜(v)を実質的に収容する壁、
を備える選択的に閉鎖される筐体と、
(c)酸素除去ガスの供給源と、
を備えることを特徴とするコンベア機構。
【請求項16】
酸素除去ガスが、窒素を含む請求項15に記載の機構。
【請求項17】
選択的に閉鎖される機構が、複数のピンチローラ対を含む請求項15に記載の機構。
【請求項18】
酸素除去ガスの供給源が、圧力スイング吸着を用いて大気から窒素ガスを発生させる請求項15に記載の機構。
【請求項19】
酸素除去ガスを吹き込む手段が、多孔パイプを含む請求項15に記載の機構。
【請求項20】
液体活性剤が、水、コロイドパラジウム粒子、及び第1スズイオンを含む請求項16に記載の機構。

【図1】
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【公表番号】特表2011−515581(P2011−515581A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500840(P2011−500840)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/035217
【国際公開番号】WO2009/117226
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(591069732)マクダーミッド インコーポレーテッド (38)
【氏名又は名称原語表記】MACDERMID,INCORPORATED
【Fターム(参考)】