説明

無黄変低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物、及びそれを用いた無黄変低硬度ポリウレタンエラストマーの製造方法

【課題】 無黄変であり、可塑剤を用いることなく低硬度や非ブリード性が達成され、タックが少なく、硬度の温度変化が小さい熱硬化性ポリウレタンエラストマーの提供する。
【解決手段】 可塑剤を含まず、かつ下記に示す(A)イソシアネート基末端プレポリマー及び(B)ポリエステルポリオールからなることを特徴とする、無黄変低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物により解決する。
(A)イソシアネート基末端プレポリマー:
ヘキサメチレンジイソシアネートと分子量500以下の側鎖アルキル基含有グリコールとを反応させる工程を経て得られるイソシアネート基末端プレポリマー。
(B)ポリエステルポリオール:
トリメチロールプロパン、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、アジピン酸から得られる、平均官能基数=2.5〜3.5、数平均分子量800〜5,000ポリエステルポリオール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無黄変低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物、及びそれを用いた無黄変低硬度ポリウレタンエラストマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性のポリウレタンエラストマーは、優れた機械的特性やゴム状弾性を有し、また任意の物性に調整することが可能である。このため、例えば、複写機、ファクス機等に使用される帯電ローラー、現像ローラー、転写ローラー、紙送りローラー等のOA機器部品用の各種ローラー、OA機器用衝撃吸収部材、光学材料用緩衝部材、ラベルやディスプレイの表面保護部材、自動車部品、各種雑貨、スポーツ用品、防振・免震部材、医療用マット、靴の中敷き、サポーター類等に用いられている。
【0003】
パッキン、防振・免震部材、衝撃吸収部材、緩衝部材、表面保護部材等の分野において、熱硬化性ポリウレタンエラストマーには、更に低硬度(アスカーC硬度で30以下)で、圧縮永久歪率が小さく、寸法安定性・透明性・無黄変性に優れ、またブリード性やタック感の少ないものが求められている。
【0004】
低硬度の熱硬化性ポリウレタンエラストマーを得るには、多量の可塑剤を添加する方法があるが、機械的特性の低下や圧縮永久歪率の増加、あるいは可塑剤のブリードによる表面汚染性の問題や経時による物性変化等が生じやすい。また、官能基数の低い原料を用いて架橋密度を下げる方法もあるが、圧縮永久歪の増加等、機械的特性の低下があり問題があった。
【0005】
低硬度で圧縮永久歪が小さく、成形性の良い、更に、ブリードのない熱硬化性ポリウレタンエラストマーについて、いくつかの提案がなされている。
【0006】
特許文献1には、ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又はカルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートと高分子量で平均官能基数3〜6のポリプロピレングリコールとを反応して得られる末端イソシアネート基プレポリマーと、高分子量多官能ポリプロピレングリコールを主成分とする活性水素基含有化合物によって、熱硬化性軟質ポリウレタンエラストマーの成形品が記載されている。また特許文献2には、トリレンジイソシアネートと高分子量で平均水酸基数2〜3、総不飽和度が0.07meq/g以下であるポリオキシアルキレンポリオールとを反応して得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、高分子量で平均水酸基数2〜3のポリオキシアルキレンポリオールを反応させ、可塑剤を用いない熱硬化性ポリウレタンエラストマー成形品を製造する方法が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開平8−151423号公報
【特許文献2】特開2003−252947号公報
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、高分子量多官能ポリプロピレングリコールを主成分とする末端イソシアネート基プレポリマーの粘度が高いため、以下に示す問題が起きやすい。
・ジフェニルメタンジイソシアネートを用いているため黄変する。
・注型作業における作業性が低い。
・成形不良が起こりやすい。
また、低活性のポリオキシプロピレングリコールを用いているため、以下の示す問題も起きやすい。
・反応が遅く比較的高い型温度で成形する必要がある。
・未反応のポリオキシプロピレングリコールが残存しブリードが生じやすい。
一方、特許文献2に記載の技術では、以下に示す問題が起きやすい。
・トリレンジイソシアネートを用いているため黄変する。
・イソシアネート基末端プレポリマーと活性水素基含有化合物との反応が遅く、未反応のポリオールが残存しやすいためブリードが生じやすい。
・硬化速度を上げるために比較的高い型温度で成形する必要がある
・低硬度化を試みた場合は、タック感が強くなりやすい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、無黄変であり、可塑剤を用いることなく低硬度や非ブリード性が達成され、タックが少なく、硬度の温度変化が小さい熱硬化性ポリウレタンエラストマーの提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するために検討を重ねた結果、下記のポリウレタンエラストマー形成性組成物が前記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(4)に示されるものである。
【0012】
(1)可塑剤を含まず、かつ下記に示す(A)イソシアネート基末端プレポリマー及び(B)ポリエステルポリオールを必須成分とすることを特徴とする、無黄変低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
(A)イソシアネート基末端プレポリマー:
ヘキサメチレンジイソシアネートと分子量500以下の側鎖アルキル基含有グリコールとを反応させる工程を経て得られる、平均官能基数=2.5〜6のイソシアネート基末端プレポリマー。
(B)ポリエステルポリオール:
トリメチロールプロパン、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、アジピン酸から得られる、平均官能基数=2.5〜3.5、数平均分子量800〜5,000のポリエステルポリオール。
【0013】
(2)(A)イソシアネート基末端プレポリマーが、ヘキサメチレンジイソシアネートと分子量500以下の側鎖アルキル基含有グリコールとを、ウレタン化反応及びイソシアヌレート化反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタン−イソシアヌレートプレポリマーであることを特徴とする、前記(1)の無黄変低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
【0014】
(3)(A)イソシアネート基末端プレポリマーが、ヘキサメチレンジイソシアネートと分子量500以下の側鎖アルキル基含有グリコールとを、ウレタン化反応及びアロファネート化反応させて得られるイソシアネート基末端アロファネートであることを特徴とする、前記(1)の無黄変低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
【0015】
(4)前記(1)〜(3)のいずれかの(A)イソシアネート基末端プレポリマー及び(B)ポリエステルポリオールを、可塑剤不存在下で水酸基/イソシアネート基のモル比(α値)を2〜5にて混合・硬化させることを特徴とする、無黄変低硬度ポリウレタンエラストマーの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、透明性が高く、無黄変であるので意匠性に優れ、可塑剤を用いることなく低硬度が達成された熱硬化性ポリウレタンエラストマーの提供が可能となった。本発明によって得られた熱硬化性ポリウレタンエラストマーは、可塑剤を用いていないのでブリードの問題が起きず、また、低硬度でありながら表面のタック感が少ないものである。更に硬度の温度変化が小さく、低温でも十分柔軟性を保っているものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、可塑剤を含まず、かつ(A)イソシアネート基末端プレポリマー、及び(B)ポリエステルポリオールからなるポリウレタンエラストマー形成性組成物であって、(A)イソシアネート基末端プレポリマーが、ヘキサメチレンジイソシアネートと分子量500以下の側鎖アルキル基含有グリコールとを反応させる工程を経て得られる、平均官能基数=2.5〜6のイソシアネート基末端プレポリマーであり、(B)ポリエステルポリオールが、トリメチロールプロパン、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、アジピン酸から得られる、平均官能基数=2.5〜3.5、数平均分子量800〜5,000のポリエステルポリオールであることを特徴とする。
【0018】
本発明に用いられるイソシアネート基末端プレポリマー(A)の平均官能基数が下限未満の場合は、得られるポリウレタンエラストマーから移行物が発生しやすくなる。これは、ポリウレタンエラストマー形成性組成物を硬化させる際、架橋が不十分となり、低分子量のオリゴマー物質や環状物が生成するためと考えられる。また、平均官能基数が高すぎる場合は、低硬度のエラストマーが得られにくい。
【0019】
本発明に用いられるイソシアネート基末端プレポリマー(A)のイソシアネート含量は、10〜30質量%が好ましく、特に15〜25質量%が好ましい。また、60℃の粘度は、1,000mPa・s以下が好ましく、特に50〜500mPa・sが好ましい。
【0020】
ヘキサメチレンジイソシアネートと反応させるグリコールが側鎖アルキル基を含有しないものである場合は、ポリエステルポリオールとの相溶性が低下し、また、得られるイソシアネート基末端プレポリマーの粘度が高くなる傾向にあり、その後の成形加工が困難になりやすい。
【0021】
ヘキサメチレンジイソシアネートと反応させる側鎖アルキル基含有グリコールの具体的なものとしては、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジメチロールヘプタン等が挙げられる。
【0022】
本発明における(A)イソシアネート基末端プレポリマーは、以下に示す(イ)又は(ロ)であることが好ましい。
(イ)ヘキサメチレンジイソシアネートと分子量500以下の側鎖アルキル基含有グリコールとを、ウレタン化反応及びイソシアヌレート化反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタン−イソシアヌレートプレポリマー
(ロ)ヘキサメチレンジイソシアネートと分子量500以下の側鎖アルキル基含有グリコールとを、ウレタン化反応及びアロファネート化反応させて得られるイソシアネート基末端アロファネートプレポリマー
【0023】
本発明では、必要に応じて上記以外のポリイソシアネートを併用することができる。例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−トルイジンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,3−又は1,4−キシリレンジイソシアネート、もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート、及びこれらジイソシアネートのカルボジイミド変成体、ビウレット変成体、アロファネート変成体、ウレトジオン変成体、イソシアヌレート変成体が挙げられる。
【0024】
本発明に用いられる(B)ポリエステルポリオールは、トリメチロールプロパン、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、アジピン酸から得られる、平均官能基数=2.5〜3.5、数平均分子量800〜5,000のポリエステルポリオールである。平均官能基数が下限未満の場合は、得られるポリウレタンエラストマーから移行物が発生しやすくなる。これは、ポリウレタンエラストマー形成性組成物を硬化させる際、架橋が不十分となり、低分子量のオリゴマー物質や環状物が生成するためと考えられる。また、平均官能基数が高すぎる場合は、低硬度のエラストマーが得られにくい。
【0025】
必要に応じて、前記ポリエステル以外の活性水素基含有化合物をポリエステルポリオールに混合して用いることができる。前記ポリエステル以外の活性水素基含有化合物としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等の低分子多価アルコール類、前記ポリエステルポリオール以外のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。これらは単独又は2種以上の混合で用いることができる。
【0026】
本発明の無黄変低硬度ポリウレタンエラストマーの製造方法は、(A)イソシアネート基末端プレポリマー及び(B)ポリエステルポリオールを、可塑剤を用いることなく水酸基/イソシアネート基のモル比(α値)を2〜5にて混合・硬化させるというものである。この際の(A)イソシアネート基末端プレポリマーと(B)ポリエステルポリオールの好ましい配合比(α値)は、水酸基/イソシアネート基=2.5〜4.5(当量比)が好ましく、2.8〜4.3が特に好ましい。α値が低すぎる場合は、得られるポリウレタンエラストマーの低硬度化が困難になる。高すぎる場合は、得られるポリウレタンエラストマーの表面にタックを生じたり、強度が不十分となりやすい。ポリウレタンエラストマーの製造は、(A)イソシアネート基末端プレポリマーと(B)ポリエステルポリオールを40〜85℃にて混合し、混合液をあらかじめ加熱した型に注入し、室温〜160℃の温度にて硬化させる。更に必要に応じて、60〜160℃で熟成させることができる。このようにして得られたポリウレタンエラストマーは、無黄変・透明・低硬度(アスカーC硬度(25℃):5〜15、アスカーC硬度(0℃):8〜20)という性能を有するものである。更に硬度の温度依存性が小さく、低温でも柔軟性の損失が小さい。また、可塑剤を用いていないので、得られるポリウレタンエラストマーは、ブリードが起きないという利点を有する。
【0027】
本発明においては、可塑剤を配合しないことを特徴とする。なお、可塑剤とは、減粘の作用を持つ、反応性基を有さない化合物をいい、フタル酸ビス−2−エチルヘキシル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル等をいう。
【0028】
本発明では、硬化の際に必要に応じて、反応触媒、可塑剤以外の添加剤、例えば消泡剤、発泡剤、脱泡剤、離型剤、難燃剤、充填剤、補強材、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を用いることができる。
【0029】
ここで反応触媒としては、例えば、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、2−エチルヘキサン酸錫等の有機錫化合物;鉄アセチルアセトナート、塩化第二鉄等の鉄化合物;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の三級アミン系等が挙げられる。中でも有機錫化合物が好ましい。
【0030】
触媒の添加量は、(A)イソシアネート基末端プレポリマー及び(B)ポリエステルポリオールとの合計100質量部に対して、0.0001〜0.1質量部が好ましく、0.001〜0.01質量部が特に好ましい。0.0001質量部未満では成形品が脱型可能になるまでの時間が長くなり、0.1質量部超過では反応成分混合後のポットライフが短くなりすぎて、いずれも好ましくない。
【0031】
充填剤や補強剤の例としては、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、ガラス繊維、骨粉、木粉、繊維フレーク等、難燃剤の例としては、クロロアルキルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート、アンモニウムポリホスフェート、有機臭素化合物等、離型剤の例としては、ワックス、石鹸類、シリコンオイル等が挙げられる。
【0032】
本発明によって得られたポリウレタンエラストマーは、ロール、OA機器用衝撃吸収部材、光学材料用緩衝部材、ラベルやディスプレイの表面保護部材、自動車部品、各種雑貨、スポーツ用品、防振・免震部材、医療用マット、靴の中敷き、サポーター類等、低硬度で意匠性の要求される種々の分野において特に有用である。
【実施例】
【0033】
以下本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、「部」及び「%」はそれぞれ、「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0034】
[イソシアネート基末端プレポリマーの合成]
合成実施例1
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管の付いた反応容器に、ヘキサメチレンジイソシアネートを900部、1,3−ブタンジオールを7.2部仕込み、反応器内を窒素置換して、攪拌しながら反応温度80℃に加温し、2時間反応させた。このときの反応液のイソシアネート含量を測定したところ、48.9%であった。次に、この中にイソシアヌレート化触媒としてカプリン酸カリウムを0.2部、助触媒としてフェノールを1部仕込み、60℃で5時間イソシアヌレート化反応を行った。この反応液に停止剤としてリン酸を0.13kg加え、80℃で1時間攪拌した後、未反応のHDIを120℃、0.04kPaの条件で薄膜蒸留して除去して、平均官能基数3.5、イソシアネート含量21.3%、25℃の粘度2,100mPa・sのイソシアネート基末端ウレタン−イソシアヌレートプレポリマー(HDI−TR)を得た。
【0035】
合成実施例2
合成例1と同様な反応容器に、ヘキサメチレンジイソシアネートを950部、3−メチル−1,5−プロパンジオールを50部仕込み、反応器内を窒素置換して、攪拌しながら反応温度80℃に加温し、2時間反応させた。この反応生成物をFT−IRにて分析したところ、水酸基は消失していた。次にジルコニウム系触媒(商品名:オクチル酸ジルコニール、第一稀元素化学工業製)を0.2部仕込み、110℃にて4時間反応させた。反応生成物をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基は消失していた。次いで、リン酸を0.01kg仕込み50℃で1時間停止反応を行った。停止反応後の反応生成物のイソシアネート含量は40.4%であった。この反応生成物を130℃×0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、未反応のHDIを除去して、平均官能基数4.8、イソシアネート含量19.2%、25℃の粘度1,700mPa・sのイソシアネート基末端アロファネートプレポリマー(HDI−ALP1)を得た。
【0036】
合成比較例
合成例1と同様な反応容器に、ヘキサメチレンジイソシアネートを975部、イソプロパノールを25部仕込み、反応器内を窒素置換して、攪拌しながら反応温度80℃に加温し、2時間反応させた。この反応生成物をFT−IRにて分析したところ、水酸基は消失していた。次にジルコニウム系触媒(商品名:オクチル酸ジルコニール、第一稀元素化学工業製)を0.2部仕込み、110℃にて4時間反応させた。反応生成物をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基は消失していた。次いで、リン酸を0.01kg仕込み50℃で1時間停止反応を行った。停止反応後の反応生成物のイソシアネート含量は40.4%であった。この反応生成物を130℃×0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、未反応のHDIを除去して、平均官能基数2、イソシアネート含量19.4%、25℃の粘度120mPa・sのイソシアネート基末端アロファネートプレポリマー(HDI−ALP2)を得た。
【0037】
実施例1〜3、比較例1〜5
表1に示す組み合わせで、イソシアネート基末端プレポリマーとポリエステルポリオール(又はポリエーテルポリオール)、触媒(DOTDL、樹脂分に対して100ppmの量)を80℃で混合し、5mmHgの減圧下で十分に脱泡を行った後に、あらかじめ80℃に加温された金型に注型した。その後80℃・1時間で硬化させ、常温で72時間静置して、厚さ2mm、4mmのウレタンエラストマーシートを作製した。
※DOTDL:ジオクチルチンジラウレート、ウレタン化触媒
【0038】
比較例6
ポリウレタンエラストマーの代わりに市販の軟質塩ビ樹脂シートを用いて評価した。
【表1】

【0039】
実施例1〜3、表1において
PES−1:TMP、MPD、アジピン酸から得られるポリエステルポリオール
数平均分子量=1,000
平均官能基数=3
PES−2:TMP、MPD、アジピン酸から得られるポリエステルポリオール
数平均分子量=3,000
平均官能基数=3
PES−3:TMP、14BD、アジピン酸から得られるポリエステルポリオール
数平均分子量=1,000
平均官能基数=3
PES−4:TMP、MPD、アジピン酸から得られるポリエステルポリオール
数平均分子量=500
平均官能基数=3
PES−5:MPD、アジピン酸から得られるポリエステルポリオール
数平均分子量=1,000
平均官能基数=2
PET−1:グリセリンにPOを開環付加させて得られるポリエーテルポリオール
数平均分子量=1,000
平均官能基数=3
※TMP :トリメチロールプロパン
MPD :3−メチル−1,5−ペンタンジオール
14BD:1,4−ブタンジオール
PO :プロピレンオキサイド
【0040】
〔物性評価方法〕
物性評価は、タック評価と移行性評価を一次スクリーニング試験とし、これに合格したものについて、硬度測定や引張試験等の試験を行った。各試験方法は以下の通りである。
移行性:
ガラスにテストサンプル(4mm厚のシート、50mm×40mm×4mm)を挟み込み、1N/cm2 の荷重をかけて、80℃×60%RHの雰囲気下で24時間静置させた後、テストサンプルを取り除き、ガラス面に移行した物質の有無を目視にて評価した。
○:ガラス面に移行した物質なし
×:ガラス面に移行した物質あり
タック:
室温にて4mm厚のエラストマーシートを手で触り、べたつきの有無で評価した。
◎:べたつき感なし
○:べたつき感ごくわずかにあり
△:べたつき感少しあり
×:べたつき感非常にあり
アスカーC硬度:
4mm厚のエラストマーシートにて測定し、測定温度以外はJIS K7312に準じて評価した。
低温安定性:
25℃と−5℃のアスカーC硬度の差で評価
○:10以内
△:11〜20
×:20以上
全光線透過率:
2mm厚のシートを用いてJIS K7361により評価した。
破断時強度、破断時伸び:
JIS K7312により評価した。
引裂強度:
JIS K7312により評価した。
【0041】
表1より、本発明によって得られたポリウレタンエラストマーは、移行現象が見られず、硬度の温度変化も小さく、低温においても柔軟性を保つものである。一方、ポリエーテルポリオールを用いたもの(比較例2)、ポリエステルポリオールやポリイソシアネートの官能基数の小さいもの(比較例4、5)、軟質塩ビ樹脂(比較例6)は、移行性が悪いものであり、以後の評価は省略した。側鎖アルキル基含有グリコールを用いていないポリエステルを使用したもの(比較例1)は、硬度の温度変化が大きく、低温においては柔軟性が損なわれている。ポリエステルの数平均分子量の小さいもの(比較例3)は、硬度の温度変化が大きいものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑剤を含まず、かつ下記に示す(A)イソシアネート基末端プレポリマー及び(B)ポリエステルポリオールを必須成分とすることを特徴とする、無黄変低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
(A)イソシアネート基末端プレポリマー:
ヘキサメチレンジイソシアネートと分子量500以下の側鎖アルキル基含有グリコールとを反応させる工程を経て得られる、平均官能基数=2.5〜6のイソシアネート基末端プレポリマー。
(B)ポリエステルポリオール:
トリメチロールプロパン、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、アジピン酸から得られる、平均官能基数=2.5〜3.5、数平均分子量800〜5,000のポリエステルポリオール。
【請求項2】
(A)イソシアネート基末端プレポリマーが、ヘキサメチレンジイソシアネートと分子量500以下の側鎖アルキル基含有グリコールとを、ウレタン化反応及びイソシアヌレート化反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタン−イソシアヌレートプレポリマーであることを特徴とする、請求項1記載の無黄変低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
【請求項3】
(A)イソシアネート基末端プレポリマーが、ヘキサメチレンジイソシアネートと分子量500以下の側鎖アルキル基含有グリコールとを、ウレタン化反応及びアロファネート化反応させて得られるイソシアネート基末端アロファネートであることを特徴とする、請求項1記載の無黄変低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の(A)イソシアネート基末端プレポリマー及び(B)ポリエステルポリオールを、可塑剤不存在下で水酸基/イソシアネート基のモル比(α値)を2〜5にて混合・硬化させることを特徴とする、無黄変低硬度ポリウレタンエラストマーの製造方法。


【公開番号】特開2008−222984(P2008−222984A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67698(P2007−67698)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】