説明

焼き鳥・照り焼きチキン用タレ組成物

【課題】ローストの香りをより付加させ、また、天然のうま味をより濃厚に備えた焼き鳥・照り焼きタレ組成物、その製造方法、調理済み焼き鳥串と該タレ組成物とをパッケージングされている焼き鳥セット及び冷凍焼き鳥セットを提供すること。
【解決手段】炭火で焼成したネギと炭火で焼成した鶏ガラとを用いて得られる鶏ブイヨンと、しょう油とをベースとした調味液を焦げしょう油香が生じるまで加熱して煮詰め調味液を調製し、この煮詰め調味液をしょう油をベースとした調味液とを混合して、BRIX値50〜60%、塩分濃度3〜10質量%の焦げしょう油香を有するタレ組成物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼き鳥や照り焼きチキンなどに用いられるタレ組成物、その製造方法、該タレ組成物と焼き鳥串とがパッケージングされている焼き鳥セット等に関し、より詳しくは、鶏ブイヨンを含む調味液であって、鶏ブイヨンにおいては、鶏ガラ、野菜の一部を予め炭焼きし、該鶏ブイヨンとしょう油を含む調味液とを混合、加熱して煮詰め、これによりローストの香りを付加した煮詰め調味液を得、この煮詰め調味料をタレ組成物の一部に用いる、ローストの香り、天然のうま味、まろやかさを有する焼き鳥又は照り焼きチキン用のタレ組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
鶏肉の調理の一つとして、串刺し焼き鳥は、焼くことによる芳しさとタレとの融合による独特の風味、手に持って食べられる手軽さから広く大衆に親しまれており、最近では、屋台に限らず、スーパーや、コンビニエンスストアでも販売されている。焼き鳥は、タレの風味や、鶏の種類・部位、焼き方により、その味は微妙に異なり、特にタレは、最後の焼き鳥の仕上げとして、その風味に影響し重要である。
【0003】
従来のつゆ、タレ類の製造には、魚節やこんぶ等のだし液に、しょう油、みりん、砂糖、食塩、各種エキス、グルタミン酸ソーダ、酸味料、水飴、カラメル、各種スパイス等種々の呈味成分を添加し製造されているが、つゆ、タレの物性、味の改良のために様々な工夫がなされてきた。例えば、結晶セルロース50〜95重量%、崩壊剤と分散剤の合計50〜5重量%であり、かつ崩壊剤と分散剤の重量比率が9/1〜1/9である三者が水分の存在下で混合した後乾燥された水分散性の複合体と、しょう油及び香辛調味料を必須成分とする液状・ペースト状調味液組成物(例えば、特許文献1参照)や、食用油に小麦粉を加えて、小麦粉が色づく程度まで炒める第一工程、砂糖、しょう油、みりんを混合し、砂糖が溶けるまで加熱する第二工程、以上の各々の工程で得られた味ペーストを互いに混合して沸騰させた後、放置する第三工程よりなる焼き鳥用タレの製造法(例えば、特許文献2参照)や、構成糖の重合度が3〜10の非還元及び/又は還元オリゴ糖を5〜60%(W/W)含有し、Brix10%以上である食品用タレ組成物(例えば、特許文献3参照)や、砂糖、乳糖、粉末しょう油及びデキストリンを含有する照り焼きチキン用調味ミックス(例えば、特許文献4参照)や、10質量%の粘度が7〜500mPa・sのアセチル澱粉等の加工澱粉を1〜10質量%添加してなるつゆ、タレ類(例えば、特許文献5参照)が知られている。
【0004】
また、野菜と獣肉若しくはその内臓又は鶏肉もしくはその内臓を串に刺し、一旦焼き上げ、冷凍保存し、水分を供給しながら電子レンジで加熱する、焼き鳥の調理方法(例えば、特許文献6参照)や、動物エキスの製法として、豚ガラ又は鶏ガラを用いる中華スープの製造方法において、豚ガラ又は鶏ガラを250〜350℃のオーブンにて表面がキツネ色になるまでローストした後、ロースト後のこれらのガラのうま味成分を水で煮出す方法(例えば特許文献7参照)が知られている。さらに、トレーや、袋に1乃至複数の串に刺した焼き鳥を、タレと共に包装する焼き鳥パックが知られている(例えば、特許文献8〜10参照)。
【0005】
【特許文献1】特開昭56−42564号公報
【特許文献2】特開平3−65157号公報
【特許文献3】特開平6−217731号公報
【特許文献4】特開平10−75736号公報
【特許文献5】特開2002−186447号公報
【特許文献6】特開2006−304747号公報
【特許文献7】特開2003−265147号公報
【特許文献8】実開昭56−48795号公報
【特許文献9】実開昭60−160182号公報
【特許文献10】特開2001−95534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来のように、焼き鳥等に用いるタレ組成物として、だし液に、単にしょう油、香辛料等の原料を混合、加熱するのではなく、また、タレの物性改良のため、結晶セルロース等を用いることなく、ローストの香りをより付加させ、また、天然のうま味をより濃厚に備え、焼き鳥・照り焼きタレ組成物、その製造方法、調理済み焼き鳥串と該タレ組成物とをパッケージングされている焼き鳥セット及び冷凍焼き鳥セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、先ず、だし液として、手間と時間はかかるものの非常に良いダシが得られる、鶏ガラを用いて鷄ブイヨンを作り、この際鶏ガラと、天然素材である野菜類等を用い、また、これらの一部を炭焼きして香り付けすることによる自然なうま味、ローストの香りを付加した鶏ブイヨンを作製し、該鶏ブイヨンとしょう油をベースとする調味液とを混合し、特定の加熱方法によりローストの香りをさらに付加した煮詰め調味液と、しょう油をベースとする調味液とを混合、加熱することにより、焼き鳥又は照り焼きチキン等に適した、ローストの香り、天然のうま味、まろやかさ等を有する美味なタレ組成物となることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、(1)野菜類と焼成した鶏ガラとを用いて得られる鶏ブイヨンと、しょう油とをベースとした調味液[A]を焦げしょう油香が生じるまで加熱して煮詰め調味液を調製し、この煮詰め調味液としょう油をベースとした調味液[B]とを混合することを特徴とするタレ組成物の製造方法や、(2)調味液[A]が、40〜60質量%の鶏ブイヨンと15〜25質量%のしょう油を含有することを特徴とする上記(1)記載のタレ組成物の製造方法や、(3)鶏ブイヨンが、7〜15質量%の未焼成鶏ガラと、7〜15質量%の焼成鶏ガラと、0.3〜3質量%の焼成ネギとを用いて調製されていることを特徴とする上記(1)又は(2)記載のタレ組成物の製造方法や、(4)調味液[A]を二重釜に投入し、攪拌下スチーム加熱し、加熱歩留40〜60%となるまで煮詰めることにより、焦げしょう油香を有する煮詰め調味液を調製することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載のタレ組成物の製造方法に関する。
【0009】
また本発明は、(5)調味液[B]が、33〜43質量%のしょう油と15〜25質量%の砂糖を含有することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載のタレ組成物の製造方法や、(6)煮詰め調味液の調味液[B]における混合割合が質量比で5:95〜15:85であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか記載のタレ組成物の製造方法や、(7)上記(1)〜(6)のいずれか記載の製造方法により得ることができ、BRIX値50〜60%、塩分濃度3〜10質量%の焦げしょう油香を有するタレ組成物に関する。
【0010】
さらに本発明は、(8)上記(7)記載のタレ組成物を、焼き鳥用又は照り焼きチキン用タレとして使用する方法や、(9)容器に収容された上記(7)記載のタレ組成物と、下味をつけた加熱調理済みの焼き鳥串とがパッケージングされている焼き鳥セットや、(10)容器に収容された上記(7)記載のタレ組成物と、紙製経木に包まれた下味をつけた加熱調理済みの焼き鳥串と、アルミ箔がパッケージングされている冷凍焼き鳥セットに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法により得られるタレ組成物は、肉臭の少ない天然のうま味、ローストの香り、まろやかさを有する焼き鳥や照り焼きチキンに適し、従来のタレ組成物と比べて格段に美味なタレ組成物とすることができ、さらに、該タレ組成物と下味をつけた加熱調理済みの焼き鳥串とがパッケージングされている焼き鳥セット、冷凍して得られる冷凍焼き鳥セットとした場合、その焼き鳥をオーブントースターにより調理してもタレ組成物と共に食すると焼きたてと変らない香り、うま味、まろやかさを有する串刺し焼き鳥が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明でいうタレ組成物とは、焼き鳥や照り焼きチキンのような食品の焼き物に用いるタレであり、調味液を意味する。本発明のタレ組成物の製造方法としては、野菜類と焼成した鶏ガラとを用いて得られる鶏ブイヨンと、しょう油とをベースとした調味液[A]を焦げしょう油香が生じるまで加熱して煮詰め調味液を調製し、この煮詰め調味液としょう油をベースとした調味液[B]とを混合する製造方法であれば特に制限されるものではなく、このように本発明のタレ組成物の製造方法においては、鶏ブイヨンの調製に用いる鶏ガラの一部は少なくとも焼成したものを用いることが重要であり、生の鶏ガラのみを用いて鶏ブイヨンを調製した場合と比べて、白濁や、生臭さを解消し、さらにうま味成分を増したブイヨンが得られる。かかる鶏ブイヨンの調製には、7〜15質量%の未焼成鶏ガラと、7〜15質量%の焼成鶏ガラとを用いることが好ましく、8.5〜13.5質量%の未焼成鶏ガラと、8.5〜13.5質量%の焼成鶏ガラとを用いることがより好ましい。また、焼成の方法としては特に制限されないが、炭火により焼成する方法が好ましく、かかる炭焼きを採用することで、より自然のローストの香りを付与することができる。
【0013】
また、上記野菜類として、ネギ、タマネギ、セロリ、ニンジン等の1又は2種以上を使用することができ、特に長ネギ、タマネギ、セロリ及びニンジンを使用することが好ましい。また、長ネギは焼成したものが好ましく、炭焼きにより焼成を行った焼成ネギがより好ましく、焼成によりネギの香りとうま味をよく抽出することができ、かつ甘味も出てくる。前記鶏ブイヨンの調製には、焼成ネギ0.3〜3質量%を用いることが好ましく、0.5〜2質量%を用いることがより好ましい。
【0014】
本発明のタレ組成物の製造に用いる上記調味液[A]としては、40〜60質量%の前記鶏ブイヨンと15〜25質量%のしょう油とを含有するものが好ましい。鶏ブイヨンを40質量%以上含有させると、うま味や香りに特に優れ、また、60質量%以下含有させることにより、味のしつこさがなく、45〜55質量%含有させることが風味の点でより好ましい。また、しょう油を15質量%以上含有させると、うま味や塩辛さの点で特に優れたものとなり、また、25質量%以下含有させることにより、後の工程で混合する調味液[B]に含まれるしょう油の含量との関係で味のバランスに優れ、17〜22質量%含有させることが風味の点でより好ましい。
【0015】
鶏ブイヨンとしょう油とをベースとする調味液[A]には、味醂、水あめ、グルタミン酸ソーダ、砂糖、醸造酢、チキンパウダー等を適宜使用することができ、味醂3.5〜5.5質量%、水あめ5.5〜7.5質量%、グルタミン酸ソーダ1.0〜2.0質量%、砂糖10〜15質量%、醸造酢1.0〜2.0質量%、チキンパウダー0.2〜0.5質量%配合させることが好ましい。
【0016】
調味液[A]を焦げしょう油香が生じるまで加熱して煮詰め調味液を調製する方法としては、例えば、二重釜に調味液[A]の原材料を順次投入し、攪拌下スチーム加熱する方法を好適に例示することができる。この場合、二重釜の内壁にタレを付着させながら加熱撹拌し、加熱歩留40〜60%となるまで煮詰めることにより、二重釜の内壁の熱でタレに含まれるしょう油が焦げ、ローストの香りが付加され、焦げしょう油香を有する煮詰め調味液を得ることができる。
【0017】
本発明のタレ組成物の製造に用いる、上記調味液[B]としては、33〜43質量%のしょう油と15〜25質量%の砂糖を含有するものが好ましく、その他、味醂、水あめ、グルタミン酸ソーダ、カラメル色素、醸造酢、チキンパウダー、ワキシーコーンスターチ、水等を適宜量配合することができ、味醂5〜15質量%、水あめ7〜17質量%、グルタミン酸ソーダ2〜5質量%、カラメル色素0.1〜0.5質量%、醸造酢1.0〜5.0質量%、チキンパウダー0.5〜1.5質量%、ワキシーコーンスターチ0.1〜1.0質量%、水1.5〜4.0質量%配合することが好ましい。そして、煮詰め調味液の調味液[B]における混合割合が、質量比で5:95〜15:85、好ましくは7:93〜12:88、より好ましくは8:92〜10:90であることが望ましい。煮詰め調味液の混合割合を5%質量以上とすると、ローストの香り、うま味やまろやかさに特に優れたものとなり、また、15質量%を超えても前記範囲とは変わらないので経済的に15質量%以下とすることが好ましい。
【0018】
本発明のタレ組成物としては、上記本発明のタレ組成物の製造方法により得ることができ、BRIX値50〜60%、塩分濃度3〜10質量%の焦げしょう油香を有するタレ組成物であれば特に制限されるものではなく、BRIX値50〜60%のタレ組成物を焼き鳥に適用すると、程よい甘味とまろやかさを付与することができる。上記BRIX値は、屈折式ブリックス計を用いた測定値であり、水溶液中に含まれる可溶性固形分(糖をはじめとして、塩類、タンパク質、酸など)のパーセント濃度で示された値である。この屈折式ブリックス計は、測定BRIX値が実際のグルコース濃度よりも高い値として検出されるものの、使用・保守が簡便なことから有利に用いることができる。
【0019】
本発明のタレ組成物の塩分濃度3〜10質量%は、ナトリウムイオン感応電極を用いるイオン濃度計により測定された値で示されており、3質量%未満である場合は、塩味が薄く、10質量%を超えると、塩味が効きすぎうま味を減じることになり、5〜9質量%の範囲がより好ましい。そして、本発明のタレ組成物は、焼き鳥用又は照り焼きチキン用タレとして好適に使用することができる。
【0020】
本発明の焼き鳥セットは、容器に収容された前述のタレ組成物と、下味をつけた加熱調理済みの焼き鳥串とがパッケージングされている焼き鳥セットであれば特に制限されるものではなく、下味をつける方法としては、例えば、加熱調理前の生の鶏モモ肉等に、しょう油をベースとし、砂糖、水あめ、味醂、グルタミン酸ソーダ、にんにく(おろし)、ビタミンC、カラメル色素、ビタミンEを含む液を、タンブラーを用いて高速回転約30分程度処理すること方法等を挙げることができる。調味液の使用量は、皮つきモモ肉100gに対し、調味液10〜20g用いることが好ましく、15g用いる場合、塩漬率115%と称する。下味用の調味液の配合割合は、しょう油45〜55質量%、砂糖20〜30質量%、水あめ7〜15質量%、味醂5〜11質量%、にんにく(おろし)0.5〜1.5質量%、その他少量のビタミンC、カラメル色素、ビタミンEを示すことができる。下味を付与した鶏モモ肉は、皮を剥離し、適宜の大きさにカットする。カットした鶏モモ肉とカットした皮を適宜の順に串に刺し、加熱調理がなされる。加熱調理方法は、まず軽く焦げが付くまで炭焼きをすることが好ましく、その後、設定温度90℃、中心温度75℃以上で2分間スチーム加熱する方法を好適に例示することができる。加熱調理した後、異物チェックをしたり、急速冷凍してもよい。
【0021】
本発明の冷凍焼き鳥セットとしては、容器に収容(パック)された本発明のタレ組成物と、紙製経木に包まれた下味をつけた加熱調理済みの焼き鳥串と、喫食時に串の手持ち部分に巻くアルミ箔が合成樹脂製の包装袋等にパッケージングされ、急速冷凍されているセットであれば特に制限されるものではなく、焼き鳥の串数としては3〜7本を適宜選択することができる。
【0022】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
(鶏ブイヨンに用いる材料の前処理)
鶏ガラは生でも凍結したものでもよく、凍結したものは10℃以下で水解凍し、縦に半割し、皮、脂肪は残して内臓除去し、流水で内臓のかすを洗浄除去した。洗浄した鶏ガラをバットに受け、水切りした。水切りした鶏ガラを、専用炭焼き台に載せて、炭火により遠火の高温で色と香りを見ながら、色は黄金色で、香りはローストの香りが出るまで焼成した。この焼成工程が本発明では重要である。長ネギは、白い茎と青い葉が半々程度のものをその根元でカットし、皮を剥ぎ、流水で洗浄し、茎と葉に2分割した。茎はステンレス串に刺し、炭焼き台に載せて、茎、葉とも炭火で焼成した。葉は、焦げやすいので、茎より早めに炭焼き台から取った。タマネギは、皮を剥ぎ、根をカットし、洗浄後4〜5cm幅にカットした。セロリは、葉を除去後根元をカットし、洗浄後斜め切りした。ニンジンは、ピーラーで皮を剥き、葉の根元部分をカットし、洗浄後3〜4cmに角切りした。
【0024】
(鶏ブイヨンの調製)
二重釜に軟水384kgを投入し、水の状態で、炭焼きした鶏ガラ48kgと生の鶏ガラ48kgを投入し、食塩30gを添加した。水面に浮いた焦げかすを濾過網で除去してから、加熱を開始し、蒸気は圧力0.45MPa以下とした。沸騰してきたらあくを取り、黒いあくは濾過網で除去し、白いあくはおたまで除去した。蒸気を弱めて、釜縁から5〜6cm沸騰している状態にした。セロリ4kg、タマネギ12kg、ニンジン8kg、焼成長ネギ4kgを、ブイヨンの温度が下がらないようにゆっくり投入した。野菜のあくをおたまで除去し(あくを取るとき、鶏脂を除去しないよう注意する)、釜縁から5〜6cm沸騰している状態を維持した。加熱中は撹拌せず、加熱総時間は4時間(沸騰後3時間)程であった。加熱終了時の水位が基準水位となるよう、加熱中に圧力調整した。濾過用の網を釜内にセットし、水煮釜を反転させてスープのみ払い出し、スープは濾布で濾過した。50L鍋に小分けし(40kg/鍋)、該鍋を冷却槽に入れ、流水で30℃になるまで冷却した。
【0025】
(調味液Aから煮詰め調味液の調製)
表1に示す、鶏ブイヨン、しょう油等の原材料を含む調味液[A]229kgを二重釜へ順次投入し、投入後加熱撹拌を開始した(スチームを全開する)。二重釜の内壁にタレを付着させながら加熱撹拌した。この内壁へのタレ付け操作を繰り返し、二重釜投入量の半量となるまで煮詰めた(加熱歩留まり50%)。煮詰め液を別の容器に移し冷却し、冷却後の液を計量した。加水して歩留まり調整を行った(加熱歩留まり50%)。
【0026】
【表1】

【0027】
(煮詰め調味液と調味液[B]との混合)
表2に示す、煮詰め調味液、しょう油等の原材料を含む調味液[B]413kgをタレ釜へ順次投入し、投入後加熱撹拌を開始した(設定温度96℃)。タレの品温が96℃に到達後、加熱撹拌しながら5分間その温度を維持した。冷却して、タレ組成物を得た。得られたタレ組成物のBRIX値は56.8%、塩分濃度は、7.1g/100gを示した。該タレ組成物を8kg単位で容器に収容し、その後30g/パックずつ小袋包装した。
【0028】
【表2】

【実施例2】
【0029】
(焼き鳥セット−モモ串)
皮つきの鶏モモ肉への下味付け用調味液(材料と配合割合)を表3に示す。この下味付け用調味液を、タンブラーを用いて高速回転(回転数10.8rpm)下で、塩漬率115%となるよう、皮つきの鶏モモ肉に下味を付与した。モモ肉の皮を剥離後、モモ肉を広げ、1辺(幅)30〜35mm、他辺はそれより小さいサイズにカットし、皮も同様にカットした。カットしたモモ肉粒とカットした皮粒を、カットした30〜35mmが幅となるように、肉粒6〜8粒、皮2〜3粒を鉄砲串に刺した(串刺し重量65g)。串に刺した鶏モモ肉(皮を含む)を焦げが付くまで炭焼きし、大きい焦げは鋏でカットし、焼き色、異物付着のチェックをした後、スチーム加熱を設定温度90℃とし、中心温度75℃以上、2分間維持した。焼き色、異物付着をチェック後急速凍結(製品中心温度−18℃以下)し、40g/本(串重量を除く)となるように計量した。紙製経木に焼き鳥5本を包んだものとタレ組成物30g入り容器(袋)2個とアルミ箔5枚とをプラスチック製の容器(袋)に収容し、焼き鳥セットを作製した。
【0030】
【表3】

【実施例3】
【0031】
(焼き鳥セット−ねぎま串)
皮つきの鶏モモ肉への下味付け用調味液(材料と配合割合)を表4に示す。この下味付け用調味液をタンブラーを用いて高速回転(回転数10.8rpm)下で、塩漬率115%となるよう、皮つきの鶏モモ肉に下味を付与した。モモ肉の皮を剥離後、モモ肉を広げ、1辺(幅)30〜35mm、他辺はそれより小さいサイズにカットし、皮も同様にカットした。ねぎは直径1cmのものを長さ方向30〜35mmにカットした。肉粒4〜6粒、ねぎ3粒、皮3〜4粒を18cm鉄砲串に刺した(串刺し重量65g)。このねぎま串を焦げが付くまで炭焼きし、大きい焦げは鋏でカットし、焼き色、異物付着のチェックをした後、スチーム加熱を設定温度90℃とし、中心温度75℃以上、2分間維持した。焼き色、異物付着をチェック後急速凍結(製品中心温度−18℃以下)し、40g/本(串重量を除く)となるように計量した。紙製経木に焼き鳥5本を包んだものとタレ組成物30g入り容器(袋)2個とアルミ箔5枚とをプラスチック製の容器(袋)に収容し、焼き鳥セットを作製した。
【0032】
【表4】

【実施例4】
【0033】
(冷凍焼き鳥セット)
実施例2、3により作製した焼き鳥セットを12個単位で箱に収容し、庫内温度−18℃で凍結保管して、冷凍焼き鳥セットを製造した。
【実施例5】
【0034】
[タレ組成物の分析テスト]
分析対象として、下記表5に示すとおり、実施例1で得られた本発明のタレ組成物(A−1)、ブイヨンに代えて水を使用する以外は実施例1と同様に製造したタレ組成物(A−2)、焼成鶏ガラ・焼成ネギに代えて未焼成鶏ガラ・未焼成ネギを使用する以外は実施例1と同様に製造したタレ組成物(A−3)、ブイヨンに代えて水を使用し、煮詰め未実施以外は実施例1と同様に製造したタレ組成物(A−4)、焼成鶏ガラ・焼成ネギに代えて未焼成鶏ガラ・未焼成ネギを使用し、煮詰め未実施以外は実施例1と同様に製造したタレ組成物(A−5)と、他社のタレにつき、それぞれの香気成分(香ばしさ、炭焼きフレーバー、糖加熱香気)と、うま味等を測定・分析し、比較を行った。
【0035】
【表5】

【0036】
[ヘッドスペース香気成分解析方法]
香気成分測定に関しては、30℃におけるダイナミックヘッドスペース法による香気捕集方法を採用した。その概要は、次のとおりである。
1)試料の調整と香気捕集方法
試料50gをテフロン(登録商標名)製ペトリ皿に分取し、香気捕集用フラスコにセットする。恒温槽にて、試料温度30℃に安定させた後、高純度窒素ガスで香気を捕集管に導入する。高純度窒素ガス流量(30℃)は、20ml/minで60分間、計1200mlとし、香気捕集管は、TENAX TNを使用した。
2)GC/MS(ガスクロマトグラフ質量分析)分析条件
上記香気を捕集した捕集管に内部標準物質としてBenzyl Alcohol 1μLを添加する。熱脱着装置(GERSTEL社製TDS)を用いてAgilent社製のGC/MSに導入する。熱脱着装置(GERSTEL社製TDS)の条件は、キャリアガスとして高純度ヘリウムガス21psiを用いた。熱脱着温度が210℃、CIS4は−150℃→210℃、CTS2は、−150℃→210℃とする。
Agilent GC/MS測定条件として、カラムはJ&W DB−WAX60m×0.32mmI.d.×0.25μmを、キャリア−ガスは高純度ヘリウムガス 21psi 40℃定流量を、昇温条件は40℃(hold 2.5min)→5℃/min→210℃(hold)を、分析時間は75minを、EI測定はマスレンジ20〜350を採用した。
【0037】
[ヘッドスペース香気成分解析結果(peak area)]
上記解析方法により、本発明の(A−1)と、比較例の(A−2)〜(A−5)、他社タレの各サンプルについての結果を、香ばしさ(ピラジン・ピペリジン類)、炭焼きフレーバー(フェノール類)、糖加熱香気(フラン類)毎にまとめた解析結果(peak area)を[表6−1]〜[表6−3]に示す。また、フレーバーごとの各サンプルのフレーバー成分を総計した結果を図1〜3に示す。
【0038】
【表6−1】

【0039】
【表6−2】

【0040】
【表6−3】

【0041】
[表6−1]〜[表6−3]及び図1〜3に示すように、本発明の(A−1)は、香ばしさ(ピラジン・ピリジン類)、炭焼きフレーバー(フェノール類)及び糖加熱香気(フラン類)において、比較例の(A−2)〜(A−5)や、他社タレ製品に比べて優れており、特に香ばしさの点では、顕著であることが分る。糖加熱香気(フラン類)では、本発明ほどではないが、(A−3)のブイヨン使用、煮込み有りでは、本発明に次いで優れており、ブイヨンを用いない(A−2)、(A−4)に比べて優れており、ブイヨンの使用が糖加熱香気によい影響をもたらしていることが分る。
【0042】
同様に、上記解析方法により、本発明の(A−1)と、比較例の(A−2)〜(A−5)、他社タレの各サンプルについての結果を、香ばしさ(ピラジン・ピペリジン類)、炭焼きフレーバー(フェノール類)、糖加熱香気(フラン類)毎にまとめた解析結果(濃度 ppb)を[表7−1]〜[表7−3]に示す。また、フレーバーごとの各サンプルのフレーバー成分を総計した結果を図4〜6に示す。
【0043】
【表7−1】

【0044】
【表7−2】

【0045】
【表7−3】

【0046】
[表7−1]〜[表7−3]及び図4〜6に示すように、本発明の(A−1)は、香ばしさ(ピラジン・ピリジン類)、炭焼きフレーバー(フェノール類)及び糖加熱香気(フラン類)においては、比較例の(A−2)〜(A−5)や、他社タレ製品に比べて優れており、特に香ばしさの点では、顕著であり、上記解析結果(peak area)と同様の傾向を示している。
【0047】
[アミノ酸分析]
実施例1により製造された本発明のタレ組成物(A−1)と、比較例のタレ組成物(A−2)〜(A−5)及び他社のタレ製品のアミノ酸分析を行った。アミノ酸分析には、日立高速アミノ酸分析計L−8500Aを使用した。
【0048】
その分析結果から、蛋白質源(protein origin)である20種のアミノ酸組成、そのアミノ酸量を、表8に、また、そのアミノ酸量を図に表わしたものを図7に示す。
【0049】
【表8】

【0050】
表8及び図7に示すように、(A−1)〜(A−5)は、他社タレ製品と比べるとグルタミン酸量が高い含量であることが分る。これは、用いる原料により異なると思われる。
【0051】
アミノ酸分析結果をさらに、アミノ酸を味の構成、即ち、甘味系、苦味系、うま味・酸味系毎に分けて、それぞれのアミノ酸量を表9に、甘味系、苦味系、うま味・酸味系毎にそのアミノ酸量の総計を図8に示す。
【0052】
【表9】

【0053】
表9及び図8に示すように、味の構成は、(A−1)〜(A−5)は同様の傾向を示し、他社のタレ製品とは、うま味・酸味系において差が認められた。
【0054】
以上のとおり、本発明のタレ組成物(A−1)は、香ばしさ(ピラジン・ピリジン類)、炭焼きフレーバー(フェノール類)、糖加熱香気(フラン類)成分を、比較サンプル(A−2)〜(A−5)や、他社タレ製品と比べて多く含み、また、アミノ酸総量では、他社タレ製品と比べて顕著な差があった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の有する香ばしさ(ピラジン・ピリジン類)(AREA)を、比較サンプル、他社タレ製品と比べて示す図である。
【図2】本発明の有する炭焼きフレーバー(フェノール類)(AREA)を、比較サンプル、他社製品と比べて示す図である。
【図3】本発明の有する糖加熱香気(フラン類)(AREA)を、比較サンプル、他社製品と比べて示す図である。
【図4】本発明の本発明の有する香ばしさ(ピラジン・ピリジン類)(ppb)を、比較サンプル、他社タレ製品と比べて示す図である。
【図5】本発明の有する炭焼きフレーバー(フェノール類)(ppb)を、比較サンプル、他社製品と比べて示す図である。
【図6】本発明の有する糖加熱香気(フラン類)(ppb)を、比較サンプル、他社製品と比べて示す図である。
【図7】本発明のprotein originであるアミノ酸(20種)量を、比較サンプル、他社製品と比べて示す図である。
【図8】本発明の味の構成として、甘味系、苦味系及びうま味・酸味系毎にアミノ酸を総計したものを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜類と焼成した鶏ガラとを用いて得られる鶏ブイヨンと、しょう油とをベースとした調味液[A]を焦げしょう油香が生じるまで加熱して煮詰め調味液を調製し、この煮詰め調味液としょう油をベースとした調味液[B]とを混合することを特徴とするタレ組成物の製造方法。
【請求項2】
調味液[A]が、40〜60質量%の鶏ブイヨンと15〜25質量%のしょう油を含有することを特徴とする請求項1記載のタレ組成物の製造方法。
【請求項3】
鶏ブイヨンが、7〜15質量%の未焼成鶏ガラと、7〜15質量%の焼成鶏ガラと、0.3〜3質量%の焼成ネギとを用いて調製されていることを特徴とする請求項1又は2記載のタレ組成物の製造方法。
【請求項4】
調味液[A]を二重釜に投入し、攪拌下スチーム加熱し、加熱歩留40〜60%となるまで煮詰めることにより、焦げしょう油香を有する煮詰め調味液を調製することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のタレ組成物の製造方法。
【請求項5】
調味液[B]が、33〜43質量%のしょう油と15〜25質量%の砂糖を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のタレ組成物の製造方法。
【請求項6】
煮詰め調味液の調味液[B]における混合割合が質量比で5:95〜15:85であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のタレ組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の製造方法により得ることができ、BRIX値50〜60%、塩分濃度3〜10質量%の焦げしょう油香を有するタレ組成物。
【請求項8】
請求項7記載のタレ組成物を、焼き鳥用又は照り焼きチキン用タレとして使用する方法。
【請求項9】
容器に収容された請求項7記載のタレ組成物と、下味をつけた加熱調理済みの焼き鳥串とがパッケージングされている焼き鳥セット。
【請求項10】
容器に収容された請求項7記載のタレ組成物と、紙製経木に包まれた下味をつけた加熱調理済みの焼き鳥串と、アルミ箔がパッケージングされている冷凍焼き鳥セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−278829(P2008−278829A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127442(P2007−127442)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000113067)プリマハム株式会社 (72)
【Fターム(参考)】