説明

焼付硬化性及び耐パウダリング性の優れた深絞り用合金化溶融亜鉛メッキ冷延鋼板の製造方法

【目的】 本発明は、従来における冷延後の溶融亜鉛メッキ工程の再結晶焼鈍工程を大幅に短縮化するとともに、焼付硬化性及び耐パウダリング性の優れた深絞り用合金化溶融亜鉛メッキ冷延鋼板の製造を可能にするものである。
【構成】 極低炭素鋼に必要に応じてTi、Nb及びVのうち1種以上を添加し、Ar3 変態点以上の温度で仕上熱延を行なった後、600℃以下の温度で巻取り、さらに、酸洗、冷間圧延後、加熱開始から冷却終了までを30秒以内として再結晶焼鈍を行ない、続いて溶融亜鉛メッキ及び合金化処理を施すことで、従来の溶融亜鉛メッキ工程を大幅に短縮化し、しかも焼付硬化性及び耐パウダリング性の優れた深絞り用合金化溶融亜鉛メッキ冷延鋼板を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】自動車パネル用鋼板、とくに外板用としては耐デント性の優れた鋼板が要求されている。それには、鋼板自身の高強度化が最も効果的であるが、それは耐面歪の観点から加工性の劣化を伴うため、必ずしも最適な手段とは言えない。また、市場の高級化嗜好による車体デザインの多様化とプラスチック材料の自動車部品への台頭により、プレス成形性としてますます厳しい形状への加工特性、とくに優れた深絞り性が要求される現状を考慮すると、この加工特性を満足させることが第一条件であり、こうした特性を満足させるには極低炭素鋼、いわゆるIF鋼での対応が余儀なくされる。
【0002】一方、パネル用鋼板には自動車メーカーにおけるスポット溶接時のチップ耐久性向上及び車体防錆向上のため、溶融亜鉛メッキ後メッキ層を合金化した鋼板の要求が高まっている。また、設備的には、溶融亜鉛メッキ工程の大幅な短縮化が推進される趨勢にある。これを実現するためには、急速加熱及び急速冷却技術が有力な手段となる。本発明は、この急速加熱及び急速冷却技術を利用し、短時間での再結晶焼鈍によってIF鋼に焼付硬化性及び耐パウダリング性を付与しかつ、優れた深絞り性をも有する合金化溶融亜鉛メッキ冷延鋼板の製造方法に関するものである。
【0003】
【従来の技術】自動車パネル用冷延鋼板は、車体軽量化の観点から高強度化が進んでいる。こうした動きの中で、鋼板そのものの強度を上げるばかりでなく、優れた成形性を兼ね備えたまま、成形時は軟質でありながらプレス成形後の塗装焼付により鋼板を高強度化する、焼付硬化型の冷延鋼板の開発が進められている。成形性とともに優れた焼付硬化性を兼ね備えた冷延鋼板の製造方法としては、これまでに極低炭素鋼を用い、(1)特開昭61−276928号公報及び(2)特開昭61−276931号公報がある。いずれもTi,Nb及びS量を適当に選びかつ、熱延での巻取温度あるいは焼鈍温度を適切にとることにより、焼鈍時に炭化物を再溶解させて焼付硬化性の付与に必要な固溶炭素を確保するものである。
【0004】しかしながら、炭素及び窒素量が依然として高いため、炭化物が多数分散しやすく、加工性の劣化を招きやすい。また、焼鈍後に適量の固溶炭素を確保するためには、炭化物を再溶解させるのに十分な焼鈍時間が必要となり、本発明のような短時間での焼鈍では焼付硬化性に必要な固溶炭素量を確保することができない。一方、こうした極低炭素鋼では粒界が清浄なため、溶融亜鉛メッキ後合金化処理すると粒界での合金化が速く進み、耐パウダリング性が悪いことが問題であった。
【0005】この問題点を解決すべく検討され、極低炭素鋼での合金化溶融亜鉛メッキ冷延鋼板の製造方法を開示したものには、(3)特開昭61−27691号公報及び(4)特開昭61−27692号公報がある。いずれも表面の合金化亜鉛メッキ層中の鉄濃度を15〜35%と高めて耐パウダリング性を確保しようとするものである。そのために合金化処理温度を700〜850℃とし、通常行われる合金化処理温度に比べて非常に高い温度での処理を行っている。しかし、この処理を工業的に実施する場合には、高温処理に伴う通板速度の低下による生産性の低下、ロールをはじめとする設備への負担の増加、ロールへの付着及び合金化処理後の急冷により板の形状が不良となること等が懸念される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来における冷延後の焼鈍を大幅に短縮化することを可能にしかつ、通常の溶融亜鉛メッキにおける合金化処理を施すことで、3kgf/mm2 以上の焼付硬化性と耐パウダリング性に優れた深絞り用合金化溶融亜鉛メッキ冷延鋼板の製造方法を提供することを目的としてなされた。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、極低炭素鋼で炭素及び窒素量を従来よりさらに低くし、さらに熱間圧延における巻取温度と溶融亜鉛メッキ工程の再結晶焼鈍における加熱速度及び冷却速度を急速化することで、従来の溶融亜鉛メッキ工程を大幅に短縮化するとともに、こうした製造工程において焼付硬化性及び耐パウダリング性の優れた深絞り用合金化溶融亜鉛メッキ冷延鋼板の製造方法を見いだしたのである。
【0008】図1及び図2に、本発明の確立に至った実験結果を示す。本実験では、C:0.0012%,Si:0.1%,Mn:0.15%,P:0.012%,S:0.008%,Al:0.035%,Ti:0.045%.N:0.0010%,残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼を用いた。前記成分のスラブを910℃で仕上圧延を行い、巻取温度を室温から750℃の範囲で変化させて4mmの熱延板とし、酸洗後、80%の冷間圧延を施した。焼鈍温度は800℃とし、焼鈍処理時間を変えるために図3に示すようなヒートサイクルで再結晶焼鈍処理時間を変えるために加熱速度、保定時間及び冷却速度を種々変化させて再結晶焼鈍を行い、続いて溶融亜鉛メッキ(460℃)及び合金化処理(550℃)を実施し、10℃/sの冷却速度で室温まで冷却した。さらに1%の調質圧延を施した後に焼付硬化性及び耐パウダリング性を評価した。なお、焼付硬化性は2%の予歪を与えて170℃で20分の保定を行った時の熱処理前後での降伏点応力の上昇量を調査した。また、パウダリング性は180度曲げ加工を実施し、曲げ加工部にセロテープを接着した後、これをはがしてテープに付着したメッキ層の剥離幅で評価し、5mm以下の場合を合格とした。
【0009】すなわち、巻取温度を600℃以下とし、かつ、再結晶焼鈍において加熱開始から冷却終了までの時間を30秒以内とした場合には、30MPa以上の焼付硬化性が得られるとともに、耐パウダリング性が優れることを見いだしたのである。こうした現象は、低温で巻取ることにより、熱延板段階で、冷延・焼鈍後の再結晶集合組織を劣化させない程度の固溶CあるいはNが確保され、それが短時間の焼鈍処理によっても粒界での合金化を促進しない程度に残存し、さらに、溶融亜鉛メッキ及び合金化処理後においても焼付硬化性を付与できるだけの量として保持されるためと考えられる。
【0010】また、図4には、巻取温度500℃とした場合の添加C及びNの合計量と焼付硬化性の変化を示す。なお、他の成分及び焼鈍条件は前述のものと同一とした。すなわち、30MPa以上の焼付硬化性を確保するには、適当量の固溶C及びNが必要である。本発明では巻取温度でその量を制御するが、添加量がC及びN量の合計で0.0005%未満では、本発明で求める焼付硬化性が得られない。
【0011】つまり、本発明は次のように構成したものである。
(1)重量%で、C:0.0050%以下,Si:1.0%以下,Mn:0.01〜2.0%,P:0.15%以下,S:0.015%以下,Al:0.01〜0.10%,N:0.0050%以下,かつ、C,Nの少なくとも1種又は2種の合計が0.0005%以上、Ti,Nb,Vのうち1種以上を合計で0.8×(C/12+N/14)%以上0.1%以下の範囲で含み、残部Fe及び不可避的不純物元素からなる鋼を連続鋳造にてスラブとした後、再加熱あるいは鋳造後直ちにAr3 変態点以上の温度で仕上圧延を終了して、600℃以下の温度域で巻取り、酸洗後通常の方法で冷間圧延を施した後、再結晶焼鈍で加熱開始から溶融亜鉛メッキ開始までを30秒以内とし、750〜950℃の温度域まで加熱後冷却し、直ちに溶融亜鉛メッキ、続いて合金化処理を行ってから10℃/s以上の冷却速度で冷却し、さらに調質圧延を行うことを特徴とする焼付硬化性及び耐パウダリング性の優れた深絞り用合金化溶融亜鉛メッキ冷延鋼板の製造方法。
【0012】(2)重量%で、C:0.0050%以下,Si:1.0%以下,Mn:0.01〜2.0%,P:0.15%以下,S:0.015%以下,Al:0.01〜0.10%,N:0.0050%以下、かつ、C,Nの少なくとも1種又は2種の合計が0.0005%以上、Ti,Nb,Vのうち1種以上を合計で0.8×(C/12+N/14)%以上0.1%以下の範囲で含み、B:0.0001〜0.0050%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物元素からなる鋼を連続鋳造にてスラブとした後、再加熱あるいは鋳造後直ちにAr3 変態点以上の温度で仕上圧延を終了して、600℃以下の温度域で巻取り、酸洗後通常の方法で冷間圧延を施した後、再結晶焼鈍で加熱開始から溶融亜鉛メッキ開始までを30秒以内とし、750〜950℃の温度域まで加熱後冷却し、直ちに溶融亜鉛メッキ、続いて合金化処理を行ってから10℃/s以上の冷却速度で冷却し、さらに調質圧延を行うことを特徴とする焼付硬化性及び耐パウダリング性の優れた深絞り用合金化溶融亜鉛メッキ冷延鋼板の製造方法。
【0013】まず、本発明における化学成分の限定理由について述べる。C及びNは、常温での成形性、すなわち低YP、高El及びr値を確保し、かつ、非時効とするにはその添加量は低い方が良い。そのため、それぞれ上限を0.0050%とする。しかしながら、30MPa以上の焼付硬化性を確保するためには、C及びN量の合計で0.0005%以上必要である。Siは、鋼を高強度化する場合に添加されるが、過度の添加は溶接性を劣化させる。また、メッキの密着性を良好とするためにもその添加量は少ない方が良く、上限を1.0%とした。Mnも鋼の高強度化に有効であるが、過剰の添加は鋼の硬質化によりEl及びr値の劣化が懸念される。そのため2.0%を上限とした。しかし、無添加では熱延時に熱間脆性割れを招くため、0.01%以上とした方が良い。
【0014】Pは、Si,Mnに比べて固溶強化能の大きな元素であるとともに、添加による延性及び深絞り性の劣化が少ない元素であるために、成形性を確保しつつ強度を上昇させるのに重要な元素である。本発明においても高強度化を目的とする場合には添加されるが、過度の添加はPの粒界偏析による二次加工性の劣化を招くため、上限を0.15%とした。Sは、過剰に添加されると熱間割れを招くため、0.015%以下とするが、脱硫コストの問題から0.003%以上が好ましい。Alは、鋼の脱酸のために必要であり、0.01%以上必要である。一方、過剰の添加はコストアップになるとともに鋼中に介在物を残すことになるため、上限は0.1%とする。
【0015】Ti,Nb,Vは、時効性を確保するためにC及びNをある程度固定する場合に、それらの添加が必要となる。添加量はC,Nの添加量との関係で時効性が確保される量で良いため、合計で0.8×(C/12+N/14)%以上とするが、過度の添加は多数の炭窒化物を形成させ、延性及び深絞り性を劣化させることになるので、0.1%を上限とする。Bは、二次加工性向上のために添加する。本発明の場合、粒界強度が弱い極低炭素鋼であるため、二次加工性をさらに向上させるために添加するが、0.0001%未満ではその効果がなく、また、過剰の添加は鋼を硬質化し、加工性が劣化するとともに二次加工性向上効果が飽和するため、上限を0.0050%とする。なお、本発明ではとくに規定しないが、Ca,Zr,Ce等の希土類元素を添加してもさしつかえない。
【0016】次に、本発明に従う製造方法について説明する。上述した化学成分を有する鋼は通常の連続鋳造にてスラブとして得られるが、薄スラブ連鋳法にて製造されたものでもかまわない。続いて再加熱後あるいは再加熱なしに熱延を行なうが、Ar3 変態点より低い温度で仕上熱延されると、熱延板段階で集合組織が発達し、冷延・焼鈍後の深絞り性に好ましいND//<111>方位の発達を劣化させるため、仕上温度はAr3 変態点以上とする。その後通常の方法で巻取るが、その際の巻取温度は本発明において最も重要な役割を果たす因子の1つであり、その温度は600℃以下とする。これよりも高い温度で巻取ると図1に見られるように、メッキ層の剥離が生じると同時に30MPa以上の焼付硬化性が得られなくなる。
【0017】再結晶焼鈍における加熱開始から冷却終了までの時間も、本発明において最も重要な因子の1つである。ヒートサイクルとしては図3に示すパターンがとられる。ここで再結晶焼鈍後の保定は必ずしも行わなくてもかまわない。すなわち、加熱速度及び冷却速度が遅くなる、あるいは冷却開始までの時間が長くなり、加熱開始から冷却終了までの時間(再結晶焼鈍処理時間)が30秒を超えると、図2に見られるようにメッキ層の剥離が生じると同時に焼付硬化性が低下し、安定して耐パウダリング性に優れかつ、30MPa以上の焼付硬化性が得られなくなる。また、焼鈍温度としては短時間で再結晶が完了する温度以上が必要となる。つまり、750℃未満では深絞り性を確保するのに十分な再結晶及び粒成長が達成されない。また、950℃を超えて焼鈍を行うと製品板の結晶粒径が粗大化し、肌荒れの原因となるため好ましくない。
【0018】また、加熱及び冷却方法についてはとくに規定しないが、加熱方法としては通電加熱で、冷却方法としてはH2 等のガス冷却あるいはロール冷却等で行なうのが有効となる。なお、加熱速度及び再結晶焼鈍後の冷却速度は規定しないが、前述したように加熱開始から冷却終了までの時間は短い方が好ましいため、いずれも速い方がよい。溶融亜鉛メッキ及びそれに続く合金化処理はとくに規定されるものではないが、合金化処理後の室温までの冷却速度は焼付硬化量を確保するためには、10℃/s以上の冷却速度が必要である。10℃/s未満の冷却速度では合金化処理までに確保された固溶Cが再析出し、焼付硬化量が小さくなり好ましくない。
【0019】
【実施例】
実施例1C:0.0023%,Si:0.05%,Mn:0.15%,P:0.005%,S:0.007%,Al:0.028%,Ti:0.035%,N:0.0030%,残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼を転炉出鋼し、連続鋳造でスラブとした。熱延は1100℃で加熱後、仕上温度を920℃として熱間圧延を終了し、500℃で巻取った。熱延板は、酸洗後、80%の冷間圧延を施した後、表1に示すような条件で図4に示すヒートサイクルで通電加熱及びH2 ガス冷却により再結晶焼鈍を行い、続いて溶融亜鉛メッキ(460℃)及び合金化処理(550℃)を実施した後、さらに1%の調質圧延を施した。その後材質調査としてJIS Z 2201,5号試験片に加工し、同2241記載の試験方法にしたがって、引張試験を行った。また、焼付硬化性については前述したように2%の予歪を与えて170℃で20分の保定を行った時の熱処理前後での降伏点応力の上昇量で評価した。
【0020】一方、パウダリング性は180度曲げ加工を実施し、曲げ加工部にセロテープを接着した後、これをはがしてテープに付着したメッキ層の剥離幅で評価し、5mm以下の場合を合格とした。表2に結果をまとめて示す。本発明の範囲に従ったNo.2,3,5,6,7,8では、2.0以上の高いr値を有し、深絞り性に優れるとともに、30MPa以上の高い焼付硬化性と耐パウダリング性を示す。No.1は、焼鈍温度が本発明の範囲から低くはずれたため、粒成長が不十分でr値が低い。No.4及び9は、焼鈍処理時間が本発明の範囲から長時間側にはずれたため、焼鈍中に熱延板で確保した固溶Cが析出し、メッキ層の剥離が生じると同時に30MPa以上の焼付硬化性が得られない。また、No.10は、焼鈍温度が本発明の範囲から高くはずれたため、焼鈍後の結晶粒径が大きくなりすぎて、引張試験を行うと肌荒れを生じている。
【0021】
【表1】


【0022】
【表2】


【0023】実施例2表3に示す種々の組成の鋼を、それぞれ転炉にて溶製し、連続鋳造によってスラブとした。これらのスラブをAr3 点(=916−509C(%)+27Si(%)−64Mn(%)(℃))より高い温度域で仕上熱延を行い、表4に示す温度で巻取った。続いて酸洗後、85%の冷間圧延を施し、溶融亜鉛メッキにおける再結晶焼鈍は通電加熱及びH2 ガス冷却及びロール冷却により図4R>4に示すヒートサイクルで本発明の範囲とし、同表に示す温度で再結晶焼鈍処理時間は10秒とした。さらに、1%の調質圧延を施した。その後材質調査として、実施例1と同じ方法で材質評価を行った。また、二次加工性については図5に示すように、試料を100φに打ち抜き、絞り比2.0で円筒に絞ったカップを、−50℃のエタノール中に浸し、テーパーポンチにのせて荷重を与え、押し拡げ脆性破壊の有無で判定し、割れのない場合を合格とした。
【0024】
【表3】


【0025】
【表4】


【0026】表5に結果をまとめて示す。本発明方法に従ったA〜E鋼のNo.1,2,3,4,6,8,9では深絞り性に優れかつ、耐パウダリング性と30MPa以上の焼付硬化性が得られている。一方、本発明鋼であるB及びE鋼でも、本発明の範囲外である600℃より高い温度で巻取ったNo.5,7,10ではメッキ層の剥離が生じると同時に焼付硬化性が低い。C及びN量が高くはずれたF鋼のNo.11では、炭窒化物が多く形成されるため冷延・焼鈍後の粒成長性が悪く、ND//<111>方位が発達せずr値が低いと同時に、Elも低い。また、Mn及びP量が高くはずれたG鋼のNo.12では、硬質化しYPが高いばかりでなく、r値及びElとも低い。また、P量が高すぎるためBが添加されているにもかかわらず、二次加工性が劣化する。Tiの添加量が高くはずれたNo.13では、固溶Tiが多く残存するため粒成長性が悪く、r値が低い。
【0027】
【表5】


【0028】
【発明の効果】本発明は、従来の溶融亜鉛メッキ工程の大幅な短縮化を可能とし、かつ、焼付硬化性及び耐パウダリング性の優れた深絞り用合金化溶融亜鉛めっき冷延鋼板の製造方法を明らかにしたものである。この発明により従来工程に比べて製造コストを大幅に削減して焼付硬化性及び耐パウダリング性の優れた深絞り用合金化溶融亜鉛メッキ冷延鋼板を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】巻取温度の本発明の範囲を示す図、
【図2】巻取温度の焼鈍処理時間の本発明の範囲を示す図、
【図3】連続焼鈍におけるヒートサイクルを示す図、
【図4】(C+N)量の本発明における下限を示す図、
【図5】本発明で用いた二次加工性を調査するための試験方法を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 重量%で、C:0.0050%以下,Si:1.0%以下,Mn:0.01〜2.0%,P:0.15%以下,S:0.015%以下,Al:0.01〜0.10%,N:0.0050%以下,かつ、C,Nの少なくとも1種又は2種の合計が0.0005%以上、Ti,Nb,Vのうち1種以上を合計で0.8×(C/12+N/14)%以上0.1%以下の範囲で含み、残部Fe及び不可避的不純物元素からなる鋼を連続鋳造にてスラブとした後、再加熱あるいは鋳造後直ちにAr3 変態点以上の温度で仕上圧延を終了して、600℃以下の温度域で巻取り、酸洗後通常の方法で冷間圧延を施した後、再結晶焼鈍で加熱開始から溶融亜鉛メッキ開始までを30秒以内とし、750〜950℃の温度域まで加熱後冷却し、直ちに溶融亜鉛メッキ、続いて合金化処理を行ってから10℃/s以上の冷却速度で冷却し、さらに調質圧延を行うことを特徴とする焼付硬化性及び耐パウダリング性の優れた深絞り用合金化溶融亜鉛メッキ冷延鋼板の製造方法。
【請求項2】 重量%で、C:0.0050%以下,Si:1.0%以下,Mn:0.01〜2.0%,P:0.15%以下,S:0.015%以下,Al:0.01〜0.10%,N:0.0050%以下、かつ、C,Nの少なくとも1種又は2種の合計が0.0005%以上、Ti,Nb,Vのうち1種以上を合計で0.8×(C/12+N/14)%以上0.1%以下の範囲で含み、B:0.0001〜0.0050%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物元素からなる鋼を連続鋳造にてスラブとした後、再加熱あるいは鋳造後直ちにAr3 変態点以上の温度で仕上圧延を終了して、600℃以下の温度域で巻取り、酸洗後通常の方法で冷間圧延を施した後、再結晶焼鈍で加熱開始から溶融亜鉛メッキ開始までを30秒以内とし、750〜950℃の温度域まで加熱後冷却し、直ちに溶融亜鉛メッキ、続いて合金化処理を行ってから10℃/s以上の冷却速度で冷却し、さらに調質圧延を行うことを特徴とする焼付硬化性及び耐パウダリング性の優れた深絞り用合金化溶融亜鉛メッキ冷延鋼板の製造方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平6−25755
【公開日】平成6年(1994)2月1日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−182250
【出願日】平成4年(1992)7月9日
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)