説明

焼却炉への被処理物の供給装置

【課題】焼却炉の運転停止中に汚泥等の被処理物の供給管内や供給装置に残る被処理物を排出して除去する。
【解決手段】焼却炉内に臨んで先端供給口1Aが配設される筒状の供給ノズル1と、この供給ノズル1に接続されて被処理物を供給する供給管2とを備え、供給ノズル1には、供給ノズル1への供給管2の接続位置よりも後方側にドレン管3が接続されるとともに、供給ノズル1内には、供給管2の接続位置とドレン管3の接続位置との間に位置する後退限と、供給管2の接続位置よりも先端側に位置する前進限との間で進退可能なピストン8が挿入され、このピストン8が前進限にあるときに互いに連通する供給管2から供給ノズル1を経てドレン管3に至る経路に、洗浄水の供給部が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば下水汚泥やバイオマス、し尿や一般廃棄物などを処理する焼却炉へ被処理物を投入するための焼却炉への被処理物の供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような汚泥焼却炉への汚泥の投入機として、例えば特許文献1には、二重管式の焼却物供給ノズルの先端における焼却物吐出口付近の焼却物供給通路の内部に、該通路の軸線方向に所要の幅を有し、該通路の軸線回りに回転可能、かつ、該通路の軸線方向に移動可能な、該通路の内面に固着した固着物剥離用のスクレーパを、焼却物供給通路の周方向に間隔をおいて少なくとも2個設け、これらのスクレーパのそれぞれの先端部に鋭角刃を形成し、この鋭角刃の鋭角を形成する頂部は同一回転方向に対してそれぞれ遅れる側と進む側の位置に形成し、鋭角刃の頂部は該焼却物供給通路の内面に近接して位置させて設けたものが提案されている。
【0003】
このような供給装置においては、上記スクレーパが、焼却物ノズルが作動中はその先端が吐出口から所定距離後退して位置し、剥離作用を行なうときに後退位置から回転しながら通路の吐出口に向けて前進し、剥離作用が終了すると前進時とは逆回転しながら後退位置に向けて後退することにより、焼却物供給通路の焼却物吐出口部分の内面などに汚泥等の焼却物が焦げ付いたり、焼き付けを起こしたり、又は、固着しても、これを剥離して除去させることができる。
【0004】
また、本願出願人らも、特許文献2において、ノズル状の先端部に噴出口が設けられた装置本体の内部に、分散噴出させられる汚泥等のスラッジ・ケーキ状物質と加圧流体とが供給可能とされたものにあって、上記装置本体は有底の筒状に形成されているとともに、その先端の開口部には蓋体が装置本体内側に付勢されて該開口部に密着可能に設けられ、この蓋体と上記開口部との密着部に形成された切欠部によって上記噴出口が画成されるようにしたものを提案している。
【0005】
このような供給装置によれば、噴出口に汚泥が焼き付いて閉塞を生じたりすると、装置本体内の内圧が上昇してこの装置本体内側に付勢された蓋体が外側に押し出され、これにより、蓋体と装置本体の開口部との密着部に形成された切欠部によって画成される上記噴出口のうち蓋体側の縁部も外側にずれて噴出口が分断されるため、この噴出口に焼き付いた汚泥を装置本体側と蓋体側とで破断することができるとともに、装置本体の開口部が解放されるのに伴い装置本体内で昇圧させられた汚泥と加圧流体とが一気に噴出させられるので、その圧力によって上述のように破断した焼き付き汚泥を除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3119133号公報
【特許文献2】特開2002−204987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載の供給装置では、上記スクレーパが後退する上記所定距離が焼却物供給通路先端の吐出口から例えば100mmとされているので、焼却物供給ノズルの非作動中にスクレーパにより剥離作用を行って焼却物供給通路の汚泥等の焼き付きを除去しても、このスクレーパの後退位置から後方の焼却物供給通路内および該焼却物供給通路に汚泥等の焼却物を供給する焼却物供給管内には汚泥等が充満したままである。
【0008】
そして、このように焼却物供給通路の焼き付きを除去した後に汚泥等が焼却物供給管内に充満したまま焼却炉の運転を停止して汚泥等の供給も停止すると、この汚泥が発酵して発生する可燃性ガスの圧力により、汚泥自体が供給管から供給通路に押し出されるようにして運転停止中の焼却炉内に流入したり、場合によっては供給管の内圧が高くなって破損を招いたりするおそれがあるため、ガス抜き装置等を別途設ける必要が生じる。
【0009】
この点、特許文献2に記載の供給装置では、その装置本体に汚泥等のスラッジ・ケーキ状物質を供給する供給管には洗浄水の供給部が設けられ、また装置本体の下部には、この供給装置の非運転時に上記洗浄水にて希釈した装置本体内のスラッジ・ケーキ状物質を排出するドレン管が接続されている。さらに、装置本体の開口部には上述のように蓋体が付勢されて密着可能に設けられていることから、焼却炉の運転停止後、上記供給部から洗浄水を供給して、供給管や装置本体内に残る汚泥等を洗浄水によって希釈してドレン管から排出することができる。
【0010】
しかしながら、この特許文献2に記載の供給装置の構造では、洗浄水の供給部のほぼ直下にドレン管が配置されているため洗浄水がそのままドレン管へと流れ込み易く、また装置本体は、先端の開口部に向けて軸心と直角方向の断面形状が小さくなるようにされていることから、装置本体の先端部にまで洗浄水が行き渡らず、汚泥が残留して可燃性ガスが発生したり、運転停止直後の焼却炉からの放熱により蓋体の装置本体内部側で汚泥が固着したりするおそれがあった。
【0011】
本発明は、このような背景の下になされたもので、上述のような二重管式の供給ノズルを有する焼却炉への被処理物の供給装置であっても、焼却炉の運転を停止する際に供給管内や供給装置自体に残る汚泥等の被処理物を排出して除去することにより、焼却炉の運転停止中の内圧上昇による供給管の損傷等を防ぐとともに、供給管先端部への汚泥等の固着を防ぐことが可能な焼却炉への被処理物の供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、焼却炉内に臨んで先端供給口が配設される筒状の供給ノズルと、この供給ノズルに接続されて被処理物を供給する供給管とを備え、上記供給ノズルには、この供給ノズルへの上記供給管の接続位置よりも後方側にドレン管が接続されるとともに、該供給ノズル内には、上記供給管の接続位置と上記ドレン管の接続位置との間に位置する後退限と、該供給管の接続位置よりも先端側に位置する前進限との間で進退可能なピストンが挿入されており、このピストンが上記前進限にあるときに互いに連通する、上記供給管から上記供給ノズルを経て上記ドレン管に至る経路に、洗浄水の供給部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
このように構成された供給装置によって、運転中の焼却炉に被処理物を供給するには、供給ノズル内において上記ピストンを、上記供給管の接続位置と上記ドレン管の接続位置との間の上記後退限に位置させておく。これにより、供給ノズル内において供給管とドレン管との間はピストンにより隔絶されるので、供給管から供給ノズルに被処理物を供給することにより、被処理物は供給ノズルの先端供給口から焼却炉内に供給される。
【0014】
一方、焼却炉の運転を停止する際に、供給管から供給ノズルに残された被処理物を除去するには、まずピストンを上記後退限に位置させたまま上記供給部から洗浄水を供給する。これにより、洗浄水が次の作用のうち、少なくとも1つをなす。(1)供給ノズルに残留している被処理物と供給管および供給ノズルとの間で潤滑剤の役目を果たす。(2)水圧で被処理物を押し出す。(3)被処理物をスラリー状とすることで焼却炉内に排出する。なお、これらの作用は、洗浄水量や被処理物の性状により異なるものである。
【0015】
次いで、洗浄水の供給から所定時間が経過後、上記ピストンを上記後退限から供給ノズルへの上記供給管の接続位置よりも先端側の位置である前進限まで前進させる。従って、このピストンの前進により、供給管と供給ノズルの先端供給口との間が隔絶されるとともに、供給管から供給ノズル内を経てドレン管に至る経路が連通させられるので、該経路内の供給管から供給ノズル内に残された被処理物は洗浄水によって希釈されてドレン管から排出させられる。上記所定時間は、例えば10秒から30秒とすることが好ましく、特に10秒から15秒が好適である。
【0016】
このため、上記被処理物が汚泥等の有機性廃棄物であっても、焼却炉の運転停止中に供給管から供給ノズル内に残されたこのような被処理物が発酵して可燃性ガスを生じるようなことはなく、このような可燃性ガスの発生による供給管や供給ノズル内の内圧上昇により、被処理物が運転停止中の焼却炉内に流入したり、ノズルや供給管に破損が生じたりするのを防ぐことが可能となる。また、ピストンを前進させた際には、供給管に連通する空間が供給ノズル内に形成されるので、この空間に上記可燃性ガスを導入することにより、内圧上昇自体を抑えることもできる。
【0017】
その一方で、上述のように供給管と供給ノズルの先端供給口との間はピストンにより隔絶され、すなわち供給管から供給ノズル内を経てドレン管に至る上記経路と供給ノズルの先端供給口との間も隔絶されるので、この供給ノズルが二重管式のものであっても、上記経路に残された被処理物を洗浄する際に、該被処理物が先端供給口から焼却炉内に流入するのを避けることができる。ただし、このピストンは、厳密に供給ノズル内を隔絶するように該供給ノズルに液密に挿入されるものではなくてもよく、すなわち、こうして被処理物そのものの流入を避けることができれば、洗浄水や被処理物を希釈した洗浄水のある程度の流通は許容するものであってもよい。
【0018】
さらに、上記供給ノズルを、上記先端供給口が下向き、または斜め下向きに上記焼却炉内に臨むように配設するとともに、この供給ノズルに対して上記供給管も、上記供給ノズルへの該供給管の接続位置に向けて下向き、または斜め下向きとなるように接続することにより、運転中の焼却炉に被処理物を供給する際に、供給管および供給ノズル内の被処理物の供給圧に加えて被処理物自体の自重によっても先端供給口に向けて被処理物を供給することが可能となるとともに、焼却炉の運転を停止する際にも上記作用と相俟って、確実な被処理物の除去を図ることができる。
【0019】
これに対して、上記ドレン管は、上記供給ノズルへの該ドレン管の接続位置に向けて下向き、または斜め下向きとならないように上記供給ノズルに接続することにより、洗浄時の被処理物や洗浄水が供給ノズルや供給管側に滞留したり逆流したりするのを防いで確実に排出することが可能となる。なお、例えばドレン管が水平に延びて供給ノズルに接続されていたとしても、洗浄時から運転を再開した焼却炉に再び被処理物を供給するときには、ピストンが上記後退限に後退するのに伴い、この後退限と上記前進限との間にあった被処理物もピストンによって押し出すようにしてドレン管内に排出することができる。
【0020】
一方、上記ピストンを上記供給ノズル内に進退可能に挿入するには、上記供給ノズルの後端側壁部に形成された貫通穴に挿通されるシリンダ装置のシリンダロッドのシャフトに該ピストンを取り付ければよいが、この場合には、上記供給ノズルの後端側壁部と上記シリンダ装置との間には、上記貫通穴を取り囲むように密封室を形成して、この密封室内にパージ流体を供給することにより、洗浄時や、洗浄時から焼却炉を運転再開するのにピストンを後退させたときに、洗浄水や洗浄水によって希釈された被処理物が上記貫通穴から供給ノズルの外に漏れ出たりするのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、焼却炉の運転を停止する際に供給管や供給ノズルに残った被処理物を供給ノズルおよびドレン管から排出して除去することができ、この被処理物が汚泥等の有機性廃棄物であっても、その発酵による可燃性ガスの発生に伴う内圧の上昇によって供給管や供給ノズルが損傷したりするのを防ぐことができる。また、こうして被処理物を排出する際には、ピストンがその進退の前進限にあって、供給ノズルの先端供給口と供給管の接続位置との間が隔絶されるので、こうして被処理物を排出・除去する際に該被処理物が運転停止中の焼却炉内に流入したり、供給ノズル先端で固着したりするのを防ぐことができ、焼却炉の運転を再開するときの作業を円滑に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す実施形態を矢線Y方向から見た平面図である。
【図3】図1、図2におけるZZ断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1ないし図3は、本発明の焼却炉への被処理物の供給装置の一実施形態を示すものである。なお、本発明はその要旨を超えない限り、本実施形態に限定されるものではない。本実施形態の供給装置は、いずれもステンレス鋼等の鋼材により円筒状に形成された供給ノズル1と供給管2とドレン管3とを備えたものであり、供給ノズル1に供給管2とドレン管3とがそれぞれ溶接によって接続されて概略構成されている。
【0024】
このうち供給ノズル1は、やはりいずれも円筒状をなす先端側(図1および図2において右側)のノズル本体4と、その後端側(図1および図2において左側)の洗浄室ケーシング5と、さらにその後端側の密封室ケーシング6とが、互いの中心軸線Oを同軸にして、それぞれの端部に外周側に張り出すように設けられた円環板状のフランジ同士がガスケットを介してボルト止めされることにより、直列に連結されて構成されている。
【0025】
ここで、本実施形態の供給ノズル1は、上記ノズル本体4が二重管式のノズルとされており、上記洗浄室ケーシング5と連結される内管4Aの外周に、この内管4Aの外径よりも僅かに大きな内径を有する外管4Bが同軸に配設されて、互いの中心軸線O方向両端部の径方向の間隙部が封止されることにより、これら内外管4A、4B間に薄肉円筒状の空洞部が形成されたものであって、このうち外管4Bの後端部外周には上記空洞部に連通するエアブロー座4Cが設けられている。なお、内管4Aは、被処理物をスムーズに焼却炉に供給するために上記洗浄室ケーシング5や密封室ケーシング6と等しい内外径とすることが好ましい。
【0026】
一方、内管4Aの先端部には、その内周面に開口して外周側に向かうに従い後端側に傾斜しつつ延びて上記空洞部に達するエアブロー穴が、周方向に間隔をあけて多数形成されており、上記エアブロー座4Cに接続されたエア供給源から供給される圧縮空気が、これらのエアブロー穴から図1に矢線で示すように内管4Aの内周側に向かうに従い先端側に向かうように傾斜して、この内管4Aの先端に開口する供給ノズル1の先端供給口1Aに向けて噴出させられるようになされている。
【0027】
さらに、外管4Bの先端部下端には、排出樋4Dが焼却炉内部に突出するように溶接されて取り付けられている。この排出樋4Dは、焼却炉の運転停止中に洗浄水を含む被処理物が炉内に排出される際に、水分が焼却炉の内壁に付着して耐火煉瓦や耐火材を損傷させることを防止するものである。排出樋4Dは、金属製の配管を中心軸方向に切断して湾曲状としたものや、金属製の板を外管4Bの曲率に合わせて曲げたものを用いることができる。
【0028】
また、上記洗浄室ケーシング5は、その内周部をノズル本体4の内管4Aの内周部と連通させるように連結されていて、この洗浄室ケーシング5に上記供給管2とドレン管3とが接続されている。このうち供給管2は、洗浄室ケーシング5と等しい内外径の円筒状とされていて、その中心軸線Pが先端側に向かうに従い上記中心軸線Oに接近して洗浄室ケーシング5の先端側で斜めに交差するように接続されている。従って、この供給管2の内周部は、洗浄室ケーシング5の内周部に、図1に示すように中心軸線O方向に長軸を有するとともに洗浄室ケーシング5の周方向に短軸を有する楕円形の開口部をなして連通させられることになる。ただし、供給管2は洗浄室ケーシング5と等しい内外径の円筒状に限定されるものではなく、被処理物の性状や供給量に応じて設定することができる。なお、供給管2の洗浄室ケーシング5とは反対側の端部にはフランジ部が形成されていて、図示されないポンプやフィーダにより圧送される被処理物の供給源に接続されている。
【0029】
これに対して、ドレン管3は、これら供給管2および洗浄室ケーシング5よりも一回り小さな内外径を有する円筒状とされ、その中心軸線Qが、上記中心軸線O、Pの双方を含む平面Rに垂直な方向から見た平面視において図2に示すように中心軸線Oと垂直となるように、また中心軸線Oに垂直で中心軸線Qを含む断面においては図3に示すように上記平面Rよりも下方において該平面Rと平行となるように配置されて、供給管2の接続位置よりも後端側の位置すなわち上記楕円形の開口部よりも後端側に間隔をあけた位置に、該供給管2が接続された側とは反対側から洗浄室ケーシング5に接続されている。ただし、ドレン管3は洗浄室ケーシング5よりも一回り小さな内外径を有する円筒状に限定されるものではなく、被処理物の性状や洗浄水量に応じて設定することができる。
【0030】
なお、このドレン管3は、中心軸線Oに垂直で中心軸線Qを含む上記断面においては図3に示すように、円筒状の洗浄室ケーシング5の内周面の断面がなす円に、ドレン管3の内周面下側の断面がなす直線が接するように接続されている。また、ドレン管3の洗浄室ケーシング5とは反対側の端部にはフランジ部が形成されていて、この端部に図示されない開閉バルブを介して、排出洗浄物と臭気や可燃性ガスなどのガス状物質を分離する分離装置が接続されている。
【0031】
この分離装置は、具体的には、開閉バルブから水平方向に延伸する配管と、この配管の開閉バルブと反対側に取り付けられて先端が下方へ開口するように向けられたL字管と、このL字管を囲むように設けられた垂直配管とからなる。開閉バルブを介して排出される排出洗浄物は、垂直配管中に開放され、洗浄された被処理物は洗浄水とともに落下して排水処理設備に送られるとともに、ガス状物質は垂直配管の上方に送られ、脱臭設備や焼却炉の燃焼空気として処理される。また、供給管2とドレン管3の双方の上部には、やはり図示されない洗浄水の供給源に接続される、本実施形態における洗浄水の供給部としての洗浄水供給座2A、3Aが設けられている。
【0032】
さらに、洗浄室ケーシング5後端部のフランジと連結させられる密封室ケーシング6の先端部のフランジは円板の中央部に貫通穴6Aが形成されたものとされるとともに、この貫通穴6Aの先端側には円筒状のシャフトサポート6Bが中心軸線Oに沿って延びるように取り付けられて、該中心軸線Oを含む平面に沿って延びる平板状の複数のブラケット6Cにより支持され、洗浄室ケーシング5内に突出させられている。従って、本実施形態では、この密封室ケーシング6の先端部のフランジが、供給ノズル1の後端側壁部とされる。なお、シャフトサポート6Bは、中心部に貫通穴を設けた円錐状の構造としてもよい。
【0033】
一方、密封室ケーシング6の後端部のフランジには、エアシリンダ等のシリンダ装置7が、そのシリンダロッド7Aを中心軸線Oに沿って密封室ケーシング6内に突出させて該中心軸線O方向に出没可能に取り付けられている。さらに、このシリンダ装置7のシリンダロッド7A先端には、中心軸線Oに垂直な軸回りに回転自在なジョイント7Bを介して円柱軸状のシャフト7Cが該中心軸線O方向先端側に延びるように取り付けられており、このシャフト7Cは、密封室ケーシング6先端部のフランジの上記貫通穴6Aおよび上記シャフトサポート6B内に挿通されて洗浄室ケーシング5内に突出させられている。
【0034】
そして、こうして洗浄室ケーシング5内に突出させられたシャフト7Cの先端部には、該洗浄室ケーシング5の内周面に洗浄水が僅かながら通過できる程度の間隔をあけて摺接可能な外径を有するピストン8が取り付けられていて、シリンダ装置7のシリンダロッド7Aの出没に伴い洗浄室ケーシング5内で一定のストロークで中心軸線O方向に進退可能とされている。なお、このピストン8は、本実施形態では中心軸線Oに沿った断面が該中心軸線O方向に短軸を有するとともに中心軸線Oに対する直径方向に長軸を有する長円状をなす円板状とされていて、やはりステンレス鋼等の鋼材により形成されており、その中心軸線O方向の厚さは、供給管2の上記楕円形の開口部の長軸方向の長さより小さくされている。ただし、ピストン8の形状は、ピストン8を進退させた際に洗浄室ケーシング5の内周面に被処理物を噛み込むことが回避できればよく、中心軸線Oに沿った断面は長円状に限らず、例えば長方形の各角を面取りしたようなものであってもよい。
【0035】
また、シリンダ装置7によるこのピストン8のストロークは、その後退限が図1に実線で示すように中心軸線O方向において洗浄室ケーシング5に接続された上記供給管2の接続位置とドレン管3の接続位置との間、すなわち洗浄室ケーシング5の内周面において供給管2がなす上記楕円形の開口部よりも後端側で、この供給管2の開口部の後端側に間隔をあけたドレン管3の開口部よりも先端側の位置とされている。一方、前進限は同図1に鎖線で示すように上記供給管2の開口部よりも先端側の位置であればよく、本実施形態ではノズル本体4に達しない、洗浄室ケーシング5の先端よりも僅かに後退した位置とされている。
【0036】
なお、密封室ケーシング6先端側のフランジの上記貫通穴6Aの内周面には、挿通されたシャフト7Cとの間にOリングなどのシール材が介装されているとともに、後端側のフランジの上記シリンダ装置7の取付座にはグランドパッキンなどのシール材が備えられている。さらに、この密封室ケーシング6の円筒部にはパージ座6Dが設けられていて、図示されない圧縮空気等のパージ流体の供給源からこのパージ座6Dを介して供給されるパージ流体により、密封室ケーシング6内には液密かつ気密に維持された密封室6Eが形成される。
【0037】
このように構成された本実施形態の供給装置は、図1および図2に示すように、流動床燃焼炉等の各種焼却炉の炉壁Wを貫通する取付孔Hに装着された円筒状のスリーブSに供給ノズル1のノズル本体4が挿入されて、この供給ノズル1の上記先端供給口1Aが焼却炉内の炉壁W内側(図1および図2において炉壁Wの右側)に臨んで開口するように、炉壁Wよりも外側でフランジ同士が固定されることにより取り付けられる。なお、スリーブSはノズル本体4の外管4Aよりも一回り大きな内径を有していて、ノズル本体4はスリーブSと径方向に間隔をあけて同軸に配設される。
【0038】
ここで、上記取付孔HおよびスリーブSは、炉壁Wの外側から内側に向かうに従い下方に向かうように斜め下向き傾斜させられており、このような取付孔HおよびスリーブSに取り付けられる本実施形態の供給装置においても、供給ノズル1の中心軸線Oは先端側に向かうに従い下方に向かうように傾斜して配置させられて、供給ノズル1の上記先端供給口1Aが斜め下向きに焼却炉内に臨んで開口させられる。
【0039】
また、これに伴い、供給装置においてこの供給ノズル1の中心軸線Oと供給管2の中心軸線Pとの双方を含む上記平面Rも、中心軸線O方向先端側に向かうに従い下方に向かうように傾斜させられることになるが、この平面Rと水平面との交線は中心軸線Oに直交するようにされており、従って該平面Rに直角な方向から見た平面視において中心軸線Qが中心軸線Oと直交するドレン管3は、水平に延びて供給ノズル1の洗浄室ケーシング5に接続されるように配設される。これに対して、被処理物の供給管2は、供給ノズル1の洗浄室ケーシング5への接続位置に向けて斜め下向きとなるように接続される。
【0040】
このように配設された供給装置によって、汚泥等の被処理物を焼却炉内に供給する際には、シリンダ装置7によりピストン8をその後退限にまで後退させておいて、ドレン管3の開閉バルブを閉とし、被処理物の供給源の運転を開始するとともにエアブロー座4Cへの圧縮空気の供給を行う。このとき、洗浄水供給座2A、3Aへの洗浄水の供給は行わない。すると、供給源から供給された被処理物は供給管2から供給ノズル1の洗浄室ケーシング5に流れ込み、次いで先端側のノズル本体4の内管4A内に流れ、その先端部において上記エアブロー穴から噴射させられる圧縮空気により分散されつつ先端供給口1Aから焼却炉内に噴出させられて供給され、焼却される。
【0041】
このとき、供給ノズル1の洗浄室ケーシング5における供給管2の接続位置とドレン管3の接続位置との間は、上記後退限に位置するピストン8によって隔絶されているので、被処理物がこのピストン8より後端のドレン管3側に流れ込むことはない。また、上記パージ座6Dには常にパージ流体が供給されて密封室6Eがパージされており、従って供給ノズル1の後端側壁部とされる密封室ケーシング6先端部のフランジに形成された貫通穴6Aから被処理物等が密封室6Eに入り込むこともない。
【0042】
一方、焼却炉の運転停止に伴い、供給装置からの被処理物の供給を停止する際には、エアブロー座4Cへの圧縮空気の供給を停止するとともに被処理物の供給源の運転を停止する。次に、ドレン管3の開閉バルブを開とするとともに洗浄水供給座2A、3Aに洗浄水を供給すると、供給管2から供給ノズル1の上記後退限と先端供給口1Aの間に残っていた被処理物が、洗浄水による潤滑作用、洗浄水圧による押し出し作用、および洗浄水による被処理物のスラリー化作用のうち、洗浄水量や被処理物の性状に応じた少なくとも1つの作用により、焼却炉内に排出される。
【0043】
そして、所定時間経過後、シリンダ装置7によってピストン8を上記前進限まで前進させると、そのストローク分だけノズル本体4の内管4A内に残った被処理物がさらに焼却炉内に投入されるとともに洗浄室ケーシング5内に空間が形成され、この空間を介して供給管2とドレン管3とが連通させられる。その結果、供給管2内に残っていた被処理物が洗い流されて洗浄室ケーシング5内に流れ込み、前進限に位置するピストン8の後端側に滞留して希釈され、さらに洗浄水の供給を続けるとその水位がドレン管3の接続位置に達し、被処理物を希釈した洗浄水はドレン管3から上記分離装置を経て排水処理設備に排出され、適宜処理される。
【0044】
さらに、所定時間経過後、洗浄水供給座2A、3Aへの洗浄水の供給を停止すると、前進限に位置するピストン8の後端側に滞留している洗浄水は、ピストン8と洗浄室ケーシング5の隙間から徐々に焼却炉内側に流出し、ピストン8よりも焼却炉内側の供給ノズル1内に被処理物が残留している場合はこれを押し流しながら、排出樋4Dを伝って炉内に排出される。このような方法を採用することで、一度に多量の洗浄水が炉内に排出されることがなくなり、洗浄水による焼却炉への悪影響が生じるのを避けることができる。
【0045】
また、こうして供給管2内の被処理物を洗浄した後、焼却炉の運転再開に伴って被処理物の供給も再開するときには、洗浄水の供給を停止してからピストン8を後退させることにより、洗浄室ケーシング5内に残留した被処理物および洗浄水は、一部は供給管2内を経由して供給ノズル1先端側のノズル本体4に流れ出るが、残りはピストン8により後端側に押し込まれてドレン管3から排出されるので、しかる後にドレン管3の開閉バルブを閉とするとともに被処理物の供給源の運転を開始して被処理物を供給し、再び上述のように供給ノズル1の先端供給口1Aから分散して噴出すればよい。
【0046】
このように、上記構成の供給装置によれば、焼却炉の運転停止時に供給管2内に残った汚泥等の被処理物を洗浄して排出することができるので、このような被処理物が運転停止中に発酵して可燃性ガスを生じ、供給管2内で内圧が上昇して供給管2の破損を招いたりするような事態を防止し、また供給ノズル1先端における被処理物の固着を防止することができる。また、上述のようにピストン8を前進させることで、供給ノズル1の洗浄室ケーシング5内に空間を形成することができるので、供給管2内に残された被処理物から可燃性ガス等が生じても、これをこの空間に導入して圧力の上昇を抑えることもできる。
【0047】
しかも、ピストン8が前進限にあるときには、供給管2から供給ノズル1の洗浄室ケーシング5内を経てドレン管3に至る上記洗浄排出物の排出経路が、ピストン8よりも先端側のノズル本体4の内管4Aから先端供給口1Aに至る経路と隔絶されるため、洗浄水や洗浄水によって希釈された被処理物がピストン8よりも先端側に大量に流れ込むことはない。従って、この供給ノズル1のノズル本体4が本実施形態のように内管4Aと外管4Bとから構成された二重管式のものであって、特許文献2に記載の供給装置における蓋体などを先端供給口1Aに設けることができないものであっても、洗浄水が運転停止中の焼却炉内に一度に流入することを防止することができる。このため、上記構成の供給装置によれば、運転停止中に流入した被処理物等によって焼却炉の運転を再開するときの作業に支障が生じたりするのを防ぐことができる。
【0048】
なお、本実施形態では、洗浄水をピストン8の前進前から供給し、ピストン8の前進限よりも焼却炉側の被処理物の洗浄・排出を行っているが、例えばピストン8のストロークを大きく設定して、その前進限を、この供給ノズル1のノズル本体4の先端供給口1Aや、あるいはこれよりもさらに先端側としておき、供給管2内の被処理物の洗浄、排出を行うときには、まずこの前進限までピストン8を前進させて供給ノズル1内の被処理物をすべて焼却炉内に投入し、次いでピストン8をノズル本体4に達しない当初の前進限まで後退させてから、洗浄水を供給して供給管2内の被処理物を洗浄、排出するようにしてもよい。
【0049】
一方、本実施形態では、中心軸線Oに沿って延びる供給ノズル1が、その先端供給口1Aを斜め下向きにして焼却炉内に臨ませるように配設されるとともに、この供給ノズル1に被処理物を供給する供給管2も、供給ノズル1への接続位置に向けて同じく斜め下向きに延びるようにして接続されており、上述のように供給源からポンプやフィーダにより圧送された被処理物を、その供給圧に加えて自重によっても先端供給口1Aに送給して焼却炉内に分散噴出させることができる。さらに、焼却炉の運転を停止する際にも、上記作用と相俟って一層確実な被処理物の除去を図ることができる。
【0050】
また、これに対して、ドレン管3は、上述のように水平に延びて供給ノズル1の洗浄室ケーシング5に接続されており、従って洗浄水および洗浄水によって希釈された被処理物がこの洗浄室ケーシング5内に逆流するのを抑えて、確実に排出することが可能となる。しかも、本実施形態では、このドレン管3は、供給ノズル1の中心軸線Oに垂直でドレン管3の中心軸線Qを含む断面において図3に示したように、供給ノズル1の円筒状の洗浄室ケーシング5の内周面の断面がなす円に、ドレン管3の内周面下側の断面がなす直線が接するように接続されており、従ってこの断面の位置では洗浄室ケーシング5内の下側に被処理物や洗浄水を滞留させることなく、一層確実にドレン管3から排出することが可能となる。
【0051】
なお、本実施形態では、上述のように供給ノズル1および供給管2が、それぞれ先端供給口1Aおよび供給ノズル1への接続位置に向けて斜め下向きとなるように配設されているが、例えば供給ノズル1がその中心軸線Oを鉛直方向に延びるように配設されて、先端供給口1Aが真っ直ぐ下向きに焼却炉内に臨むように開口させられていてもよく、また斜め下向きに配設された供給ノズル1に対して供給管2がその接続位置に向けて真っ直ぐ下向きに接続されていてもよい。
【0052】
これに対して、上記ドレン管3は、本実施形態のように水平に延びて供給ノズル1に接続されるほかに、供給ノズル1から真っ直ぐ下向き、または斜め下向きに延びていても、洗浄水や被処理物の逆流は防ぐことができる。すなわち、このドレン管3は、供給ノズル1への接続位置に向けて、下向きとならないように、または斜め下向きとならないように延びて、上記供給ノズルに接続されていればよい。
【0053】
さらに、本実施形態では、上記ピストン8を供給ノズル1の洗浄室ケーシング5内で進退させるのに、供給ノズル1の最後端にシリンダ装置7を備えて、このシリンダ装置7のシリンダロッド7Aに取り付けられたシャフト7Cを、供給ノズル1の後端側壁部である密封室ケーシング6の先端側のフランジに形成された貫通穴6Aに挿通し、その先端にピストン8を装着しているが、この洗浄室ケーシング5内は、被処理物の洗浄、排出の際に洗浄水や被処理物で満たされることになるため、上述のように貫通穴6AにOリングを設けただけでは、洗浄水や被処理物が貫通穴6Aから漏れ出るおそれがある。
【0054】
しかるに、これに対して本実施形態では、この供給ノズル1の洗浄室ケーシング5と上記シリンダ装置7との間に密封室ケーシング6を配設してパージ流体によりパージされた密封室6Eが形成されるようにし、シリンダロッド7Aおよびシャフト7Cをこの密封室6Eに配設するとともに、貫通穴6Aはこの密封室6Eに開口するようにしている。このため、本実施形態によれば、洗浄水や被処理物が洗浄室ケーシング5内から貫通穴6Aを介して漏れ出るのを防ぎ、これら洗浄水や被処理物を確実にドレン管3から排出させて処理することが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1 供給ノズル
1A 供給ノズル1の先端供給口
2 供給管
2A、3A 洗浄水供給座(洗浄水の供給部)
3 ドレン管
4 ノズル本体
5 洗浄室ケーシング
6 密封室ケーシング
6A 貫通穴
6E 密封室
7 シリンダ装置
7A シリンダロッド
7C シャフト
8 ピストン
O 供給ノズル1の中心軸線
P 供給管2の中心軸線
Q ドレン管3の中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉内に臨んで先端供給口が配設される筒状の供給ノズルと、この供給ノズルに接続されて被処理物を供給する供給管とを備え、上記供給ノズルには、この供給ノズルへの上記供給管の接続位置よりも後端側にドレン管が接続されるとともに、該供給ノズル内には、上記供給管の接続位置と上記ドレン管の接続位置との間に位置する後退限と、該供給管の接続位置よりも先端側に位置する前進限との間で進退可能なピストンが挿入されており、このピストンが上記前進限にあるときに互いに連通する、上記供給管から上記供給ノズルを経て上記ドレン管に至る経路に、洗浄水の供給部が設けられていることを特徴とする焼却炉への被処理物の供給装置。
【請求項2】
上記供給ノズルは、上記先端供給口が下向き、または斜め下向きに上記焼却炉内に臨むように配設されるとともに、この供給ノズルに対して上記供給管も、上記供給ノズルへの該供給管の接続位置に向けて下向き、または斜め下向きとなるように接続される一方、上記ドレン管は、上記供給ノズルへの該ドレン管の接続位置に向けて下向き、または斜め下向きとならないように上記供給ノズルに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の焼却炉への被処理物の供給装置。
【請求項3】
上記ピストンは、上記供給ノズルの後端側壁部に形成された貫通穴に挿通されるシリンダ装置のシリンダロッドのシャフトに取り付けられて、上記供給ノズル内に進退可能に挿入されるとともに、上記供給ノズルの後端側壁部と上記シリンダ装置との間には、上記貫通穴を取り囲むように密封室が形成されていて、この密封室内にはパージ流体が供給されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の焼却炉への被処理物の供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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