説明

焼却装置

【課題】焼却装置の現地への運び込みおよび組立てを容易にするとともに、配線を簡略化する。
【解決手段】焼却装置の各構成要素、付属装置および制御盤を搬送可能な複数のブロックに集積し、各ブロックを通信回線により連続的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、運搬設置工事および配線が容易な焼却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】自治体等で使用されている焼却装置は、公害問題等の関係から、比較的僻地に建設されることが多い。僻地での建設は、十分な人的資源を確保することが困難であるとともに建設コストも高くなるため、一般に組立式の焼却装置が用いられる。この焼却装置は、特開平6―147444あるいは特開平10―19223に記載されているように、焼却装置を構成する焼却室、燃焼室、排ガス処理施設等を別々に運搬し、これらを現地で組み立てるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これらの焼却装置では、各装置に取り付けられているセンサー類の配線は、各装置の設置が終了した後で初めて行うことができ、しかも、配線ケーブルを主制御装置と一本ずつ接続しなければならないため、配線作業が煩雑で時間がかかっていた。このため、工場出荷前の段階で焼却装置を組み立てて試運転することが困難であるため、現地での立ち上げに手間がかかるという問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の焼却装置が持つ問題点を解決するために、焼却装置の電気配線を簡素化することにより、焼却装置の設置の容易化を図ったものである。そのため、焼却室、燃焼室、排ガス処理施設等の焼却装置の各構成要素と、これらに付属している温度計、酸素濃度計等の付属装置と、各構成要素および付属装置とを制御する制御盤とが搬送可能な複数のブロックに集積されるとともに、各ブロックに集積された装置の電気配線は、制御盤に集約されている。そして、各ブロックの制御盤は、通信回線により連続的に接続されるとともに、各制御盤を制御する主制御装置が設けられている。
【0005】焼却装置を搬送可能な複数のブロックで構成したことにより、現地への運び込みおよび組立てが容易になる。さらに、各ブロックを通信回線で接続することにより、配線を簡素化できるので、配線工事に要する時間を短縮できる。また、各ブロックの制御盤を主制御装置と通信回線を通じて制御可能とすることにより、個々のブロックで制御を行う必要がなくなるので、ブロック内の配線も簡素化できる。そして、配線作業が容易になったことにより、焼却装置を短時間で仮組みすることが可能となるので、出荷前の工場内において焼却装置を試運転させることができ、現場での立ち上げの円滑化を図れる。
【0006】
【発明の実施の形態】図1は本発明の焼却装置に係る平面図、図2は図1のA-A矢視図、図3は同じくB-B矢視図、図4は同じくC-C矢視図、図5は同じく下部平面図である。
【0007】焼却装置は、廃棄物を焼却する一次焼却室1を備えた焼却室ブロック2と、不完全燃焼物質を含む排ガスを完全燃焼させる二次燃焼室3および蓄熱室4を備えた燃焼室ブロック5と、一次焼却室1および二次燃焼室3の配管類や制御装置を備えた機械室ブロック6と、二次燃焼室3から排出される排ガスを処理する排ガス処理施設7と、排ガス処理施設7の制御機器を集積した排ガス処理ブロック8とから構成されている。
【0008】各ブロックの大きさは、トレーラー等の荷台に載置可能であればよく、本実施形態では、焼却室ブロック2は、高さ、縦、横の大きさがそれぞれ3m×3m×8mとされ、燃焼室ブロック5、機械室ブロック6、排ガス処理ブロック8は、高さ、縦、横がそれぞれ3m×3m×6mとされている。
【0009】各ブロックの配置を図1の平面図を基に説明する。焼却室ブロック2は、設置場所のほぼ中央に配置され、焼却室ブロックの左側には、一次焼却室から排出された焼却物を一時貯めておく灰ホッパー9が配されている。一次焼却室1と灰ホッパー9の間には、焼却物運搬用のスクリューコンベア10およびフライトコンベア11が設けられている。
【0010】燃焼室ブロック4は、煙道12を介して焼却室ブロック2の上方に配置され、燃焼室ブロック5と機械室ブロック6は、機械室ブロック6の上に燃焼室ブロック5が積み重ねられた二階層構造となっている。そして、排ガス処理施設7は、燃焼室ブロック5の右側に配置され、煙道12で連結されている。排ガス処理施設7の左側には、排ガスを冷却する冷却塔40と、排ガスを大気中へ排出する排気塔41とが並んで配置されている。
【0011】焼却室ブロック2の内部には、廃棄物を燃焼させる一次焼却室1と、一次焼却室1の配管類と、温度計、風量計等の付属装置と、これらの装置の電気配線を集約した制御盤(図示せず)とが集積され、二次燃焼室3内の燃焼を適正に保つように制御している。
【0012】また、燃焼室ブロック5の内部には、排ガスを完全燃焼させる二次燃焼室3と、燃焼温度の変化を緩和させる蓄熱室4と、二次燃焼室3の配管類と、二次燃焼室3内に設けられた温度計、酸素濃度計等のセンサー部分のみがある。これらの装置の配線は機械室ブロック6に集積され、二次燃焼室3の燃焼を一定になるように制御している。
【0013】さらに、機械室ブロック6の内部には、センサー等の計測結果により作動し、二次燃焼室3内の温度を調整する一次焼却室用ファン20、二次燃焼室用ファン21および温度制御ファン22と、一次燃焼空気を昇温する低温熱交換器23と、燃焼用空気供給路39等に用いられる送風機24と、各装置の動力源となる計装用コンプレッサー25と、緊急弁操作制御に用いる動力用コンプレッサー26と、二次燃焼室内の酸素濃度を計測する酸素濃度計27等の制御装置とが集積されている。ここで、緊急弁は二次燃焼室3後段に取り付けられており、異常時に作動する。
【0014】排ガス処理施設7は、二次燃焼室3から排出される高温排ガスの熱量を回収する熱交換器30と、排ガス中の塩化水素濃度を低減させる消石灰吹き込み装置31と、排ガス中の飛灰および消石灰を除去する高温バグフィルター32と、飛灰を外部へ搬出するダスト排出コンベア33とから構成され、排ガス中の飛灰等を回収している。排ガス処理ブロック8は、熱交換器30等の構成装置の大きさが大きいため、これらの装置を制御する温度計等の制御盤のみが集積されている。
【0015】次に、廃棄物の流れについて説明する。廃棄物は、焼却室ブロック2の側部に設けられた廃棄物運搬容器34で一次焼却室1上部に取付けられたゴミホッパー35まで運ばれ、ゴミホッパー35のゲート36および移動蓋37が開口状態となったときに焼却物が一次焼却室1内に投入される。一次焼却室1で焼却された焼却物は、スクリューコンベア10およびフライトコンベア11を用いて灰ホッパー9まで運搬される。
【0016】一次焼却室1から排出された不完全燃焼物質を含む排ガスは、二次燃焼室3および蓄熱室4において800℃〜1200℃の高温で燃焼させることで完全燃焼させる。燃焼室ブロック4から排出された排ガスは、蓄熱室4の後段に設けられた排ガス処理施設7で処理される。排ガス処理施設7では、熱交換器30で高温排ガスの熱量が回収された後、熱交換器と後段の高温バグフィルター32との間に設置された消石灰吹き込み装置31により消石灰が排ガス中に投入され、排ガス中の塩化水素濃度を低減させる。
【0017】そして、次に高温バグフィルター32で排ガス中の飛灰および消石灰を除去する。これにより、ダイオキシンを生成するde-novo合成反応の進行を抑制することができる。
【0018】熱交換器30で回収された熱量は、燃焼用空気供給路39を介して二次燃焼室3に供給され、燃焼室ブロック4の高温燃焼を維持するために用いられる。また、高温バグフィルター32で回収された飛灰および消石灰は、高温バグフィルター32の外側に設けられたダスト排出コンベア33で飛灰貯蔵容器38に運搬される。高温バグフィルター32を通過した排ガスは、排ガス冷却塔40で冷却され、排気筒41から大気中へ放出される。
【0019】図6は、制御システムの構成の一例を示す説明図である。各ブロックに独立して設けられた制御盤は、ブロードキャスト・ポーリング方式を使用した通信回線(商標名CC-Link)50により連続的に接続され、各制御盤は主制御装置51からの通信により制御される。
【0020】ここで、ブロードキャスト・ポーリング方式とは、主制御装置51と特定のステーションとの通信を始める際に、主制御装置51が、ある特定のステーションに送るデータだけを送信するのではなく、全ステーションのデータを一括して送信する方式である。各ステーションは、それらのデータの中から自分のステーションのみのデータを選択して読み込み、各制御装置の制御を行う。この方式を採用すれば、複数のステーションへデータを送る際、データ内の共通部分が省略できるので、データの送信効率を向上させることができる。
【0021】図中のグループ1〜4は、それぞれ焼却室ブロック2、燃焼室ブロック5、排ガス処理ブロック8および高温バグフィルター32を制御するバグフィルター部を指し、長方形で示したステーションは、各ブロックにおける制御項目を例示している。
【0022】焼却室ブロック2では、一次焼却室1の内部に設けられた温度計、二次燃焼室の酸素濃度計27等からの情報を主制御装置51が受け取り、一次焼却室1の風量調整および煙道12に設けられたバルブ(図示せず)の開度調整等の制御信号を各ブロックの制御盤に送信する。
【0023】具体的には、酸素濃度が低下した場合は、酸素濃度計27の計測結果に基づいて最適な燃焼空気量を供給する制御信号が制御盤に送信され、これに基づいて焼却室ブロック2及び機械室ブロック5のハ゛ルフ゛等が作動する。
【0024】機械室ブロック5では、内部に集積されている温度制御ファン22、送風機24、計装および動力コンプレッサー25、26等の制御を主制御装置51からの制御信号に基づいて行う。さらに、燃焼室ブロック6は、焼却室ブロック2と同様に、酸素濃度計27等からの情報を主制御装置51が受け取り、風量調整および緊急弁操作等の制御信号を制御盤に送信する。また、バグフィルター部では、消石灰吹き込み装置31やダスト排出コンベア33等の制御を行う。すなわち、排ガスの通過量やダスト回収量等をバグフィルター部で読み取り、そのデータを主制御装置51に送信する。そして、バグフィルター部は主制御装置51からの制御信号に基づいて、消石灰吹き込み量やダストの運搬のタイミングを制御する。
【0025】
【発明の効果】以上の説明から明らかな通り、本発明によると、焼却装置の各構成要素、各構成要素の付属装置およびこれらの制御盤を搬送可能な複数のブロックに集積したことにより、現地への運び込みおよび組立てが容易になる。さらに、各ブロックを通信回線で連続的に接続するとともに、各ブロックの制御盤を主制御装置からの通信により制御させたことにより、配線の簡素化が図れる。これにより、焼却装置をいずれの場所でも組み立てることができるので、工場内で試運転させることができ、現地での立ち上げをより円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である焼却装置の正面図
【図2】同じくA-A矢視図
【図3】同じくB-B矢視図
【図4】同じくC-C矢視図
【図5】同じくD-D矢視図
【図6】焼却装置の制御システムを示す図
【符号の説明】
1 一次焼却室
2 焼却室ブロック
3 二次燃焼室
4 蓄熱室
5 燃焼室ブロック
6 機械室ブロック
7 排ガス処理施設
12 煙道
30 熱交換器
31 消石灰吹き込み装置
32 高温バグフィルター
39 燃焼用空気供給路
50 通信回線
51 主制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】焼却室、燃焼室および排ガス処理施設等の各構成要素と、温度計、酸素濃度計等の付属装置と、前記各構成要素および付属装置とを制御する制御盤とから構成される焼却装置であって、各構成要素、付属装置および制御盤は、搬送可能な複数のブロックに集積されるとともに、各ブロックにおける電気配線が制御盤に集約されたことを特徴とする焼却装置。
【請求項2】前記ブロックの制御盤は、通信回線によって連続的に接続されるとともに、各制御盤を制御する主制御装置が設けられたことを特徴とする請求項1記載の焼却装置。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2002−286213(P2002−286213A)
【公開日】平成14年10月3日(2002.10.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−92520(P2001−92520)
【出願日】平成13年3月28日(2001.3.28)
【産業再生法】(出願人による申告)国等の委託研究成果に係る特許出願(平成11年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「環境対応次世代小型焼却炉技術開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(594166328)不二機械株式会社 (1)
【出願人】(500524567)
【Fターム(参考)】