説明

焼成用バインダー組成物

【課題】バインダーとしてアクリル系重合体とエチルセルロースとを含有しながら、塗布性が良好であり、しかも保存安定性に優れる焼成用バインダー組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る焼成用バインダー組成物は、エチルセルロースとアクリル系重合体とを含有する。前記アクリル系重合体が、前記エチルセルロースの存在下でアクリル系モノマーが重合することにより合成されたものである。前記アクリル系モノマーが、単官能アクリル系モノマーと多官能アクリル系モノマーとを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粉末の焼結体を形成するために使用される焼成用バインダーに関する。
【背景技術】
【0002】
無機粉末の焼結体を形成するために使用される焼成用バインダーは、従来、種々の分野に使用されており、例えば各種電子機器における電極、導体配線、積層コンデンサなどを作製するために使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
このような焼成用バインダーと適宜の無機粉末との混合物(焼成用ペースト)が塗布され、続いて必要に応じて予め加熱されることによりバインダーが除去され、更に焼成されることにより無機粉末が焼結することで、前記のような適宜の要素が作製される。
【0004】
このような焼成用バインダーとして、エチルセルロースが広く使用されている。エチルセルロースは塗布性が良好であり、また熱分解により除去されやすいなどといった、焼成用ペーストのためのバインダーとして好適な特性を有している。
【0005】
しかし、エチルセルロースは入手コストが高く、また植物由来の成分であるため供給に不安があるという問題がある。このため、エチルセルロースに代替するバインダーが求められつつある。
【0006】
このようなエチルセルロースに代替するバインダーの候補の一つとして、アクリル系重合体が挙げられる。
【0007】
しかしながら、アクリル系重合体とエチルセルロースとは相溶性に問題があり、そのためこれらを含有するバインダー組成物や、このバインダーを含有する焼成用ペーストの保存安定性が悪いという問題がある。一方、アクリル系重合体のみをバインダーとして用いると、焼成用ペーストの塗布性が悪化してしまうという問題が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−160791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、バインダーとしてアクリル系重合体とエチルセルロースとを含有しながら、塗布性が良好であり、しかも保存安定性に優れる焼成用バインダー組成物を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る焼成用バインダー組成物は、エチルセルロースとアクリル系重合体とを含有し、
前記アクリル系重合体が、前記エチルセルロースの存在下でアクリル系モノマーが重合することにより合成されたものであり、
前記アクリル系モノマーが、単官能アクリル系モノマーと多官能アクリル系モノマーとを含有する。
【0011】
本発明に係る焼成用バインダー組成物において、前記アクリル系モノマー全体に対する前記多官能アクリル系モノマーの割合が、0.1〜5質量%の範囲であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る焼成用バインダー組成物において、前記アクリル系重合体と前記エチルセルロースとの、前者対後者の質量比が、9:1〜1:9の範囲であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る焼成用バインダー組成物において、前記単官能アクリル系モノマーが、メチルメタクリレートと2−エチルへキシルメタクリレートとを含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バインダーとしてアクリル系重合体とエチルセルロースとを含有しながら、塗布性が良好であり、しかも保存安定性に優れる焼成用バインダー組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態による焼成用バインダー組成物は、焼成用ペーストにおけるバインダーとして機能する組成物であり、エチルセルロースとアクリル系重合体とを含有する。
【0016】
エチルセルロースとしては、特に限定されないが、例えばダウ・ケミカル社製の品名エトセルSTD−7、STD−20、STD−45、STD−100などが、単独で、或いは2種類以上組み合わされて、使用される。
【0017】
アクリル系重合体は、エチルセルロースの存在下でアクリル系モノマーが重合することにより合成されたものである。更に、アクリル系モノマーは、1分子中にエチレン性不飽和結合を一つのみ有する単官能アクリル系モノマーと、1分子中にエチレン性不飽和結合を複数有する多官能アクリル系モノマーとを含有する。
【0018】
単官能アクリル系モノマーとしては、特に制限されないが、例えばメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロへキシルメタクリレート、2−エチルへキシルメタクリレート、エチルメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(n≒4〜13)等が、単独で、或いは二種以上組み合わされて、使用される。
【0019】
焼成用バインダー組成物中の単官能アクリル系モノマーは、特にメチルメタクリレート、2−エチルへキシルメタクリレート、水酸基含有モノマーのうち少なくとも一種を含有することが好ましい。水酸基含有モノマーとしては、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、グリセリンモノメタクリレートなどが挙げられる。これらの場合、アクリル系重合体とエチルセルロースとの相溶性が特に向上する。更に単官能アクリル系モノマーはメチルメタクリレートと2−エチルへキシルメタクリレートとから成ることが好ましい。この場合は、メチルメタクリレートと2−エチルへキシルメタクリレートとの割合は、6:4〜4:6の範囲であることが好ましく、この場合、アクリル系重合体とエチルセルロースとの相溶性が更に向上し、また焼成用バインダー組成物を含むペーストが塗布された場合に形成される塗膜の平滑性が高くなる。
【0020】
多官能アクリル系モノマーとしては、特に限定されないが、例えばポリエチレングリコールジメタクリレート(n≒2〜13)、ポリエチレングリコールジアクリレート(n≒2〜13)、ポリプロピレングリコールジメタクリレート(n≒2〜13)、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジメタクリレート(m+n≒4〜18)、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジメタクリレート(m+n≒4〜18)、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート(m+n≒4〜18)、エチレンオキシド変性ビスフェノールFジアクリレート(m+n≒4〜18)、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート(m+n≒4〜18)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、グリセリンジメタクリレート等が、単独で、或いは2種類以上組み合わされて、使用される。
【0021】
焼成用バインダー組成物中のアクリル系モノマー全体に対する多官能アクリル系モノマーの割合は、0.01質量%以上であることが好ましく、特に0.1〜5質量%の範囲であることが好ましい。この割合は、更に0.2〜3質量%の範囲であることが好ましい。このように多官能アクリル系モノマーの割合が0.1質量%以上であると、アクリル系重合体とエチルセルロースとの相溶性が特に向上し、この割合が0.2質量%以上であると相溶性が更に向上する。また、多官能アクリル系モノマーの割合が5質量%以下であると、焼成用バインダー組成物を含有する焼成用ペーストの塗布性が特に向上する。
【0022】
焼成用バインダー組成物に配合されるアクリル系重合体は、焼成用バインダー組成物に配合されるエチルセルロースの存在下で、アクリル系モノマーが重合することで、合成される。すなわち、アクリル系重合体が合成された後、このアクリル系重合体の合成のために使用されたエチルセルロースは、アクリル系重合体と共に焼成用バインダー組成物を構成する成分となる。
【0023】
エチルセルロースの使用量は、特に制限されないが、焼成用バインダー組成物の保存安定性及び塗布性を向上する観点からは、アクリル系重合体とエチルセルロースの前者対後者の質量比が、9:1〜1:9の範囲であることが好ましく、この質量比が7:3〜5:5の範囲であれば更に好ましい。
【0024】
アクリル系モノマーの重合は、適宜の重合方法、例えば溶液重合等によりおこなわれる。溶液重合の方法としては、アクリル系モノマーを適当な溶剤中で、重合開始剤の存在下、窒素雰囲気下で加熱攪拌する方法が挙げられる。
【0025】
溶剤としては、アクリル系モノマーとエチルセルロースとを共に溶解或いは分散させ得るのであれば、幅広い溶剤が採用され得る。溶剤としては、特に限定されないが、例えばフェニルプロピレングリコール、フェニルグリコール、テキサノール、ベンジルアルコール、フェニルジグリコール、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、オクタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルカルビトールアセテートなどが、単独で、或いは2種類以上組み合わされて、使用され得る。
【0026】
重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)等のアゾ化合物;4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物などが、単独で、或いは二種以上組み合わされて、使用され得る。
【0027】
アクリル系重合体の分子量を制御する観点からは、アクリル系モノマーの重合は、適宜の連鎖移動剤の存在下でおこなわれることが好ましい。また、連鎖移動剤が用いられることは、バインダー組成物の良好な塗布性及び熱分解性の維持にも寄与する。これは、連鎖移動剤による連鎖移動効果によって、多官能アクリル系モノマーの架橋密度が適切に調整され、これによってアクリル系重合体における架橋点が過剰になることが抑制されるためであると、推察される。連鎖移動剤としては、特に制限されないが、例えばn−ドデシルメルカプタン、2,4−ジフェニル―4―メチル―1―ペンテン、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどが、一種単独で、或いは二種以上組み合わされて、使用され得る。
【0028】
このようにアクリル系モノマーがエチルセルロースの存在下で重合することで、アクリル系重合体とエチルセルロースとを含有する混合物が得られる。このような混合物中におけるアクリル系重合体とエチルセルロースとを併せた樹脂の重量平均分子量は5000〜200000の範囲であることが好ましい。このように樹脂の重量平均分子量が5000以上であることで、焼成用バインダー組成物及び焼成用ペーストの塗布性が特に良好となると共に、焼成用バインダー組成物の相分離が更に生じにくくなって焼成用バインダー組成物の保存安定性が更に良好になる。またこの重量平均分子量が200000以下であることで、アクリル系重合体とエチルセルロースとの良好な相溶性が維持されると共に、良好な塗布性が確保される。尚、この樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定結果に基づいて導出される値であり、例えば測定機として昭和電工株式会社製のShodex GPC SYSTEM−21Hを用い、溶離剤としてテトラヒドロフランを用いて測定される。
【0029】
この混合物がそのまま焼成用バインダー組成物となり得る。或いは、この混合物中の溶剤量が調製されたり、必要に応じて種々の添加剤が加えられたりすることで、焼成用バインダー組成物が調製され得る。
【0030】
この焼成用バインダー組成物は良好な塗布性を備えると共に、相分離が生じにくく、このため保存安定性が良好である。本実施形態による焼成用バインダー組成物がこのような作用効果を奏する理由は明らかではない。但し、エチルセルロースの存在下でアクリル系モノマーが重合すると共にこのアクリル系モノマー中に多官能アクリル系モノマーが含まれていると、アクリル系重合体がエチルセルロースと適度に絡み合った構造を有するようになり、更にアクリル系重合体が溶液中で立体的に大きく広がって存在するようになることでアクリル系重合体の分子が折り畳まれるような構造になりにくくなるものと、推察される。これが、本実施形態による焼成用バインダー組成物が良好な塗布性を維持しながら相分離が生じにくくなることの一因となっていると、推察される。
【0031】
この焼成用バインダー組成物の粘度は、1000〜30000mPa・sの範囲に調整されることが好ましい。この場合、焼成用バインダー組成物を含有する焼成用ペーストの塗布性が特に良好となる。
【0032】
このようにして得られる焼成用バインダー組成物では、上述の通り塗布性が良好であり、特に、塗布時に塗膜とアプリケータとの間で組成物が糸を引くいわゆる糸引き現象の発生が抑制される。また上述の通り、エチルセルロースとアクリル系重合体との相溶性が高くなり、両者が相分離しにくく、このため焼成用バインダー組成物の保存安定性が高くなる。このため、本実施形態による焼成用バインダー組成物は、バインダーとしてエチルセルロースのみが使用される場合と比べて遜色ない特性を有する。
【0033】
本実施形態による焼成用バインダー組成物は、焼成用ペーストを調製するために好適に用いられる。焼成用ペーストは、焼成用バインダー組成物と、無機粉体とを含有する。
【0034】
無機粉体としては、用途に応じた適宜の粉体が用いられる。例えば無機粉体として、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、ITO、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、各種ガラス粉、無機蛍光体、黒鉛粉、はんだ粉等が、一種単独で、或いは二種以上組み合わされて、使用される。
【0035】
焼成用ペースト中の焼成用バインダー組成物と無機粉体との割合は、焼成用ペーストの良好な塗布性や、焼成用ペーストを焼結させて得られる各種の要素の良好な特性が維持されるように、適宜調整されるが、例えば焼成用バインダー組成物100質量部に対する無機粉体の割合が20質量部〜4000質量部の範囲であることが好ましい。
【0036】
焼成用ペーストが使用される際には、まず焼成用ペーストが適宜の対象物の上に塗布される。塗布方法は特に制限されないが、例えばスクリーン印刷法、ディスペンス法、ドクターブレード法等が挙げられる。本実施形態によれば、焼成用ペーストの塗布性が良好になり、一定の厚みの塗膜が容易に形成されると共に、塗布時にいわゆる糸引き現象が生じにくくなる。
【0037】
続いて、必要に応じ、この焼成用ペーストが加熱されることで、焼成用ペースト中の溶剤が揮発すると共に、バインダーであるアクリル系重合体及びエチルセルロースの一部又は全部が熱分解して除去される。更にこの焼成用ペーストが焼成されることで、焼成用ペースト中に残留するバインダーが除去されると共に、無機粉体が焼結する。これにより、電極、導体配線等の適宜の要素が形成される。
【実施例】
【0038】
[実施例1−14、比較例2−10]
撹拌機、冷却器、温度計、湯浴、及び窒素ガス導入口を備えた容量1Lのフラスコを準備した。このフラスコに、下記表中のA成分に示すアクリル系モノマー、及び有機溶剤を加え、連鎖移動剤を使用する場合には更に下記表中のA成分に示す連鎖移動剤を加えることで、溶液を得た。
【0039】
続いて、エチルセルロースを使用する場合には、得られた溶液中に、下記表中のA成分に示すエチルセルロースを投入し、これを溶液中に80℃で溶解させた。
【0040】
続いて、溶液を窒素ガスで30分バブリングすることで溶液中の溶存酸素を除去した。
【0041】
続いて、溶液中に重合開始剤(2,2−アゾビスイソブチロニトリル)のフェニルプロプレングリコール溶液を加えることで、アクリル系モノマーの重合反応を開始させた。重合反応中も、溶液に、重合開始剤のフェニルプロプレングリコール溶液を追加的に添加した。重合開始時から7時間後に重合を終了させた。
【0042】
得られた溶液中の樹脂の重合平均分子量を測定した結果を、下記表に示す。
【0043】
続いて、比較例5〜7の場合には、溶液に下記表中のB成分に示すエチルセルロースのフェニルプロピレングリコール溶液を加えた。
【0044】
これにより、焼成用バインダー組成物を得た。この焼成用バインダーの樹脂固形分割合を下記表に示す。
【0045】
[比較例1]
下記表に示すエチルセルロースと有機溶媒とを用意し、これらを混合することで得られた混合溶液を、焼成用バインダー組成物とした。
【0046】
[評価試験]
各実施例及び比較例における焼成用バインダー組成物について、次の評価試験を実施した。その結果を下記表に示す。
【0047】
1.溶液安定性評価
焼成用バインダー組成物を調製してから、これを常温で4週間貯蔵した。続いて、焼成用バインダー組成物を目視で観察することで、焼成用バインダー組成物における相分離の有無を確認した。その結果、相分離が認められた場合を「○」、認められない場合を「×」と評価した。
【0048】
2.塗布性
4面アプリケータ(太佑機材株式会社製、型番No112)を用いて、焼成用バインダー組成物5gをガラス基板(寸法100mm×100mm×2mm)上に塗布した。これにより形成された塗膜を観察し、塗膜にムラやクレーター跡などが認められなかった場合を「○」、塗膜にムラやクレーター跡などが認められないことに加えて、レベリング性が非常に良く、均一で平滑な塗膜が形成された場合を「◎」、焼成用バインダー組成物がアプリケータに張りつき、又は塗膜にムラ、クレーター跡等の不良が認められた場合を「×」と、評価した。
【0049】
3.熱分解性
差動型示差熱天秤(株式会社リガク製、型番TG8120)を用い、焼成用バインダー組成物を空気雰囲気下で、昇温速度10℃/minで室温から500℃まで加熱しながら、焼成用バインダー組成物中の重量変化を測定した。
【0050】
その結果、400℃の時点での焼成用バインダー組成物の重量減少量が95%以上である場合を「○」、95%未満である場合を「×」と評価した。
【0051】
4.糸引き性
4面アプリケータ(太佑機材株式会社製、型番No112)を用いて、焼成用バインダー組成物5gをガラス基板(寸法100mm×100mm×2mm)上に塗布した。この場合の、塗膜からアプリケータを引き上げる際の、引き上げ開始時から、塗膜とアプリケータとの間の糸引きが切れるまでに要した時間を測定した。その結果、1秒未満であった場合を「○」、1秒以上であった場合を「×」と評価した。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
尚、表中のA成分とはアクリル系モノマーの重合時に使用した成分であり、B成分とはアクリル系モノマーの重合後に添加した成分である。また、表に示す成分の詳細は次の通りである。
・MMA:メタクリル酸メチル
・IBMA:メタクリル酸イソブチル
・CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
・BMA:メタクリル酸ブチル
・HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
・EHMA:メタクリル酸エチルヘキシル
・GLM:グリセリンモノメタクリレート
・PDE−400:ポリエチレングリコールジメタクリレート(日本油脂株式会社製、品番ブレンマ―PDE−400)
・M−260:ポリエチレングリコールジアクリレート(東亞合成株式会社製、品番M−260)
・BP-4EA:エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート(共栄社化学会社製、品番BP−4EA)
・STD−100:重量平均分子量約18万のエチルセルロース(ダウケミカル社製、商品名エトセルSTD−100)
・STD−45:重量平均分子量約14万のエチルセルロース(ダウケミカル社製、商品名エトセルSTD−45)
・STD−7:重量平均分子量約6万のエチルセルロース(ダウケミカル社製、商品名エトセルSTD−7)
・チオカルコール20:n−ドデシルメルカプタン、花王株式会社製、品番チオカルコール20

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチルセルロースとアクリル系重合体とを含有し、
前記アクリル系重合体が、前記エチルセルロースの存在下でアクリル系モノマーが重合することにより合成されたものであり、
前記アクリル系モノマーが、単官能アクリル系モノマーと多官能アクリル系モノマーとを含有する焼成用バインダー組成物。
【請求項2】
前記アクリル系モノマー全体に対する前記多官能アクリル系モノマーの割合が、0.1〜5質量%の範囲である請求項1に記載の焼成用バインダー組成物。
【請求項3】
前記アクリル系重合体と前記エチルセルロースとの、前者対後者の質量比が、9:1〜1:9の範囲である請求項1又は2に記載の焼成用バインダー組成物。
【請求項4】
前記単官能アクリル系モノマーが、メチルメタクリレートと2−エチルへキシルメタクリレートとを含有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の焼成用バインダー組成物。

【公開番号】特開2013−71986(P2013−71986A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211401(P2011−211401)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000166683)互応化学工業株式会社 (57)
【Fターム(参考)】