焼結品の処理方法
【課題】生産性向上、省力化、品質向上、消耗品低減が達成された焼結品の処理方法を提供する。
【解決手段】焼結品に対して水蒸気処理を行い、次いでガス軟窒化処理を施す焼結品の処理方法であって、焼結品を収容する処理容器および/または焼結品を支持する治具として、表面にアルミニウム拡散被覆層が形成された処理容器および/または治具を用いるとともに、前記水蒸気処理の後に、処理容器および/または治具を交換することなく、前記ガス軟窒化処理を行うことを特徴とする、焼結品の処理方法。
【解決手段】焼結品に対して水蒸気処理を行い、次いでガス軟窒化処理を施す焼結品の処理方法であって、焼結品を収容する処理容器および/または焼結品を支持する治具として、表面にアルミニウム拡散被覆層が形成された処理容器および/または治具を用いるとともに、前記水蒸気処理の後に、処理容器および/または治具を交換することなく、前記ガス軟窒化処理を行うことを特徴とする、焼結品の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結品の処理方法に関し、具体的には、粉末冶金法により製造された焼結品に対して水蒸気処理を行い、次いでガス軟窒化処理を施す焼結品の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末冶金法で製造された焼結品(以後、本明細書において「焼結品」と呼称する)は、生産に際し材料の無駄が少なく、大量生産に向くことから、自動車を始めとする各種の機械部品等に適用が進んでいる。これら各機械部品においては、用途によっては硬さが必要とされる部品があり、この場合、焼結品に対して表面硬化処理を施して適用している。表面硬化処理としては、焼結品表面に硬化ガスを侵入ないし拡散させるものがあって、一般的にガス浸炭、ガス窒化、ガス軟窒化が多用されている。
【0003】
ところで、粉末冶金法により製造された焼結品は、内部に製造方法に由来する微細な気孔を有しており、上記の表面硬化処理を行うにあたり、硬化ガスが比較的容易に焼結品内部にまで侵入することから、硬化層の厚みの制御が困難である。このため、焼結品を水蒸気に接触させることよりなる水蒸気処理(ホモ処理と呼称される場合もある)を施して、焼結品表面に開口する気孔を封孔した後、上記硬化処理を行う方法(特許文献1等)が提案されている。
【0004】
すなわち、水蒸気処理(ホモ処理)は、例えば加圧水蒸気を350〜400℃に予熱した後、500℃前後に加熱した過熱水蒸気を被処理物に通じることにより、被処理物表面に約5〜20μmの厚さのFe3O4皮膜を形成させる技術であり、焼結品に適用された場合には、気孔表面に形成されるFe3O4皮膜が膨脹することにより気孔を封孔する。
【0005】
このように気孔が封孔された焼結品に対してガス軟窒化処理を行うと、表面に形成された多孔質のFe3O4層は一種のフィルターの役目を果たして窒素の侵入速度を均一化すること、および焼結品表層部の微細な気孔内部にもFe3O4が生成しているので、焼結品内部への過剰な窒化ガスの侵入を防止することによって、比較的薄く安定した窒化層を得ることができる。また、部品の部位による窒化層厚のバラつき、および処理炉内での設置場所の違いによる窒化層厚さのバラつきが少なくなる。さらに、ガス軟窒化処理の場合、還元性ガスであるCO、H2が共存して炭素の存在が窒素の拡散を促進するだけでなく、並行して表面に形成したFe3O4の還元が進み、最終的には表面にはほとんどFe3O4が含まれない厚さ5〜20μm程度の窒化層が得られる。
【0006】
上記のように処理を行うことで、内部に微細空間を有する焼結品であっても、水蒸気処理(ホモ処理)後にガス軟窒化することによって、薄く安定的な厚みの窒化層を得ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平04−070391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に、粉末冶金法で製造された焼結品に対して水蒸気処理やガス軟窒化処理を行う際には、焼結品の全表面が硬化ガスに接触しやすくなるように、焼結品をガス透過性容器(例えば、網カゴ、メッシュベルト等)に収容して、このガス透過性容器を支柱等で空中に保持ないし宙づりにしたり、焼結品を治具等に保持ないし積載して、水蒸気処理(ホモ処理)あるいはガス軟窒化処理に付すことが行われている。このようなガス透過性容器および治具等の利用は、焼結品の配置の適正化および処理の効率化等を図るために、特に重要である。
【0009】
しかしながら、焼結品を収容するバスケット、それを支える支柱、その他の容器、治具類等は、高温強度を確保する為に、いずれも普通鋼、特殊鋼、オーステナイト系ステンレス鋼等の金属材料で構成されているのが一般的である。これらの容器、治具類等は、焼結品と共に水蒸気処理あるいはガス軟窒化処理に付されることになるので、例えば、水蒸気処理では焼結品だけでなくこれら金属製部材の表面にもFe3O4もしくはFe2O3等の鉄酸化物皮膜の形成されることになる。
【0010】
従って、水蒸気処理に使用した容器、治具類等の金属製部材をそのまま使用してガス軟窒化処理を行うと、窒化ガスは、容器、治具類の還元までも行うことになる。その結果、焼結品が必要とする以上の窒化ガスが必要となり、更には容器、治具類の近傍に位置する焼結品への窒化ガスの安定供給が難しくなり、ガスのコストが高くつくだけでなく焼結品の窒化層厚のバラつきを拡大する要因となって、品質上重大な問題となる。
【0011】
そこで、従来は水蒸気処理に使用する容器、治具類等の金属製部材と、ガス軟窒化に使用する容器、治具類等の金属製部材とは混用せずに、それぞれ専用に使用してきた。即ち、水蒸気処理後、容器、治具類と焼結品とをそのまま一旦処理炉から取り出して冷却したのち、焼結品をガス軟窒化専用の容器、治具に載せ換え、その後、ガス軟窒化炉に挿入する作業が必要で、作業手間の増加と処理炉の稼働率低下を余儀なくされるだけでなく、生産性向上を意図した品積み替え時間の短縮に伴い、部品類の当て傷の発生による不良率の増加が避けられない。また、容器、治貝類等の金属製部材は窒化を繰り返すことによって表層が過度に固くなり、加熱冷却を繰り返すうちに割れが入り、変形して使用に耐えられなくなる。
【0012】
これらは全てコストアップの要因となっており、処理時間の短縮、省力、品質向上等を達成することが重要な課題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決する為になされたもので、焼結品に対して水蒸気処理を行い、次いでガス軟窒化処理を施す焼結品の処理方法であって、焼結品を収容する処理容器および/または焼結品を支持する治具として、表面にアルミニウム拡散被覆層が形成された処理容器および/または治具を用いるとともに、前記水蒸気処理の後に、処理容器および/または治具を交換することなく、前記ガス軟窒化処理を行うこと、を特徴とする。
【0014】
このような本発明による焼結品の処理方法は、好ましい態様として、前記のアルミニウム拡散被覆層が、その最表面のアルミニウム濃度が15〜40重量%であるもの、を包含する。
【0015】
このような本発明による焼結品の処理方法は、好ましい態様として、前記の焼結品を収容する処理容器および/または焼結品を支持する治具が、普通鋼、特殊鋼、オーステナイト系ステンレス鋼から選ばれた金属材料からなり、その表面のアルミニウム拡散被覆層がアルミニウム拡散浸透処理によって形成されたものであるもの、を包含する。
【発明の効果】
【0016】
本発明による焼結品の処理方法においては、焼結品を収容および/または支持する容器、治具等の金属製部材の表面にアルミニウム拡散被覆層を形成させることによって、容器、治具等の表面に鉄酸化物が生成するのを防止することができる(第1番目の効果)。
【0017】
更に、容器、治具等のアルミニウム拡散被覆層の最表面に、水蒸気処理によって緻密かつ極薄いアルミナ被膜が形成されることで、窒素の侵入が抑制されるので、次工程のガス軟窒化処理でこれらの容器、治具等の金属材料が窒化されることが防止される。これにより、容器、治具等の寿命延長を図ることが出来る(第2番目の効果)。
【0018】
このことから、水蒸気処理後の焼結品を容器、治具類から積み替えることなくそのままの状態でガス軟窒化処理を実施することが可能になる(第3番目の効果)。
【0019】
そして、ガス軟窒化処理に用いられる窒化ガスは、容器、治具等の窒化に消費されることがないので、焼結品のガス軟窒化に有効に活用される。かつ、焼結品のガス軟窒化処理を安定性を向上させて、窒化層の性状および層厚さの安定化、高品質化が高度に達成される(第4番目の効果)。
【0020】
その結果、生産性向上、省力化、品質向上、消耗品低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1における本発明のSUS304材のテストピースの断面検鏡図。
【図2】実施例1における本発明のSCH13材のテストピースの断面検鏡図。
【図3】実施例1における本発明のSUS304材のテストピースの、アルミニウム拡散被覆層のテスト前のアルミニウムのX線マイクロアナライザー(EPMA)の分析値を示すグラフ。
【図4】実施例1における本発明のSCH13材のテストピースの、アルミニウム拡散被覆層のテスト前のアルミニウムのEPMA分析値を示すグラフ。
【図5】実施例1において、水蒸気処理1回処理後のSUS304材の断面検鏡図。
【図6】実施1において、水蒸気処理50回処理後のSUS304材の断面検図。
【図7】実施例1において、水蒸気処理1回処理後のSCH13材の断面検鏡図。
【図8】実施例1において、水蒸気処理50回処理後のSCH13材の断面検鏡図。
【図9】実施例1において、水蒸気処理50回処理後のSUS304材の断面EPMA分析値。
【図10】実施例1において、水蒸気処理50回処理後ガス軟窒化処理を50回繰り返した本発明SUS304材のテストピースの、アルミニウム拡散被覆層のアルミニウムと窒素のEPMA分析値を示すグラフ。
【図11】実施例1において、水蒸気処理を50回実施後ガス軟窒化を50回繰り返した本発明のSCH13材のテストピースの、アルミニウム拡散被覆層のアルミニウムと窒素のEPMA分析値を示すグラフ。
【図12】実施例2に用いた焼結品充填用バスケット(網かご)および支柱の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<焼結品の処理方法>
本発明者らは、水蒸気処理工程における上記金属製部材表面の鉄酸化物の生成を防止でき、且つ次工程のガス軟窒化処理で窒化されることが無ければ、これら部材がガス軟窒化処理を阻害する要因とならないことに着目して種々検討した結果、これら部材の表面にアルミニウム拡散被覆層を形成させることで水蒸気処理工程における鉄酸化物生成を防止し、次工程での窒化も防止できることを知見を得た。
【0023】
本発明による焼結品の処理方法は、焼結品に対して水蒸気処理を行い、次いでガス軟窒化処理を施す焼結品の処理方法であって、焼結品を収容する処理容器および/または焼結品を支持する治具として、表面にアルミニウム拡散被覆層が形成された処理容器および/または治具を用いるとともに、前記水蒸気処理の後に、前記の処理容器および/または治具を交換することなく、前記ガス軟窒化処理を行うこと、を特徴とする。
【0024】
ここで、本発明において、「焼結品を収容する処理容器」とは、水蒸気処理およびガス軟窒化処理の際に、処理すべき焼結品の全部あるいはその一部分を収容する容器であって、その容器の少なくとも一部分が、水蒸気処理あるいはガス軟窒化処理の際に使用されるガスが透過可能に構成されて、処理すべき焼結品の表面の少なくとも一部に、水蒸気あるい前記ガスを接触できるように構成された容器を言う。
【0025】
そして、本発明において、「焼結品を支持する治具」とは、水蒸気処理およびガス軟窒化処理の際に、処理に付される焼結品を支持して、その位置や姿勢を保持ないし安定化させることができる用具を言う。この治具は、処理に付される焼結品に直接接触するもののみに限定されない。例えば、処理に付される焼結品に直接接触した治具(一次治具)を含め、前記の「焼結品を収容する処理容器」あるいは前記の焼結品に直接接触した治具(一次治具)の位置や姿勢を保持ないし安定化させることによって、結果として、焼結品の位置や姿勢を保持、安定化に寄与する、焼結品に直接接触しない治具(二次治具)等をも含めて言うものである。例えば、前記の「焼結品を収容する処理容器」を1個あるいは複数個を支える支柱等は、この「焼結品を支持する治具」の一具体例である。
【0026】
本発明における「焼結品を収容する処理容器」の特に好ましい具体例としては、線径1.0〜4.0mm、好ましくは1.5〜2.5mmの金属線によって形成された、外径300〜900mm、好ましくは500〜700mmの、深さ100〜400mm、好ましくは200〜300mmの網カゴを挙げることができる。
【0027】
また、本発明における「焼結品を支持する治具」の特に好ましい具体例としては、そり防止を目的とした3点保持用の治具等を挙げることができる。
【0028】
本発明における「焼結品を収容する処理容器」および「焼結品を支持する治具」は、従来から焼結品に対する「水蒸気処理」あるいは「ガス軟窒化処理」の際に採用されてきた「処理容器」あるいは「治具」と同様に、普通鋼、特殊鋼、オーステナイト系ステンレス鋼等の金属材料で構成することができるが、これらの金属材料の表面にアルミニウム拡散被覆層が形成されている点で、従来の一般的な「焼結品を収容する処理容器」あるいは「焼結品を支持する治具」と明確に相違している。
【0029】
なお、本発明における「焼結品を収容する処理容器」および「焼結品を支持する治具」では、常に、その「容器」および「治具」の全ての表面にアルミニウム拡散被覆層が形成されている必要はないが、少なくとも窒化性ガスが接触することがある表面には、アルミニウム拡散被覆層が形成されていることが好ましい。
【0030】
本発明における「焼結品を収容する処理容器」および「焼結品を支持する治具」は、水蒸気処理を行った後にガス軟窒化処理を行う一連の焼結品の処理方法において、繰り返し利用することができる。また、水蒸気処理のみを繰り返して行う場合にも、水蒸気処理に少なくとも一回用いられた後はガス軟窒化処理に繰り返し利用することができるものである。
【0031】
<アルミニウム拡散被覆層>
金属材料の表面に形成させたアルミニウム拡散被覆層の高温耐酸化性は、800℃を超える高温赤熱領域で特に耐酸化効果は顕著である。アルミニウム拡散被覆層が、高い耐酸化性を発現するメカニズムは、大気中で赤熱領域まで加熱すると、アルミニウム拡散被覆層に含まれるアルミニウムが空気中の酸素と優先的に結合して、融点が2050℃と非常に高く、耐食性に富んだ緻密な酸化アルミニウム(アルミナ=Al2O3)皮膜が生成し、酸素を遮断する為、以後の酸化を抑制するものと現在解析されている。
【0032】
前記の通りに、本発明における「焼結品を収容する処理容器」および「焼結品を支持する治具」は、従来より焼結品に対する「水蒸気処理」あるいは「ガス軟窒化処理」の際に採用されてきた「処理容器」あるいは「治具」と同様に、普通鋼、特殊鋼、オーステナイト系ステンレス鋼等の金属材料で構成することができる。本発明では、その表面にアルミニウム拡散被覆層が形成可能なものであれば、従来公知の普通鋼、特殊鋼、オーステナイト系ステンレス鋼等の金属材料を用いることができる。特に本発明において好ましい金属材料としては、オーステナイト系ステンレス、例えば、JIS規格に規定された、SUS304材、SCH13材、SUS316(L)材、SUS309材、SUS310S材、SCH21材等を挙げることができる。この中では特に、SUS304材およびSCH13材が好ましい。
【0033】
金属材料の表面にアルミニウム拡散被覆層を形成させる方法としては、鉄−アルミニウム合金粉、アルミナ粉および塩化アンモニウム粉を含む混合粉を用いるアルミニウム拡散浸透処理を挙げることができる。
【0034】
本発明において特に好ましいアルミニウム拡散浸透処理としては、例えばアルミニウム濃度20〜60重量%(好ましくは、30〜55重量%)の鉄−アルミニウム合金粉10〜90重量%(好ましくは、30〜80重量%)と、アルミナ粉10〜90重量%(好ましくは、30〜60重量%)と塩化アンモニウム粉0.1〜3.0重量%(好ましくは、0.2〜1.5重量%)を含む混合粉末を滲透剤とし、この滲透剤の中に金属材料を埋め込み、不活性ガス(好ましくは、Ar)あるいは水素などの還元性雰囲気中で800〜1100℃(好ましくは、850〜1050℃)に昇温し、5〜20時間(好ましくは、10〜20時間)加熱する方法を挙げることができる。
【0035】
このアルミニウム拡散浸透処理によれば、金属材料の表面にアルミニウム濃度15〜40%、厚さ20〜800μmのアルミニウム拡散被覆層を容易に形成させることが出来る。金属材料の表面のアルミニウム濃度は、好ましくは20〜40%、特に好ましくは25〜40%、である。アルミニウム濃度が15%未満の場合は、耐久性に問題があり、一方、40%超過の場合は、硬くなり過ぎて脆くなり、割れや剥離が起き易く実用に耐えないことから好ましくない。また、アルミニウム拡散被覆層の厚さが20μm未満の場合は、薄すぎて耐久性に問題があり、一方、800μm超過の場合は、被覆層が厚すぎ、脆くなる事から熱衝撃で割れや剥離が起き易く実用に耐えないことから好ましくない。ここで、アルミニウム拡散被覆層の「アルミニウム濃度」は、EPMA装置の定量分析によって求められたものであり、アルミニウム拡散被覆層の厚さは、光学顕微鏡によって求められたものである。
【0036】
尚、アルミニウム拡散浸透処理における具体的条件は、金属材料の成分組成や、被覆層の厚さ、アルミニウム濃度等を考慮して、適宜定めることができる。
【0037】
その他の処理方法として、アルミニウム拡散浸透処理で使用する鉄−アルミニウム合金粉の代わりにアルミニウム粉を使用し、これにアルミナ粉と塩化アンモニウム粉を混合して滲透剤とし、比較的低温の600〜900℃(好ましくは、700〜850℃)で加熱する方法、金属材料を670〜720℃(好ましくは、680〜710℃)の溶融アルミニウムに浸漬して表面に純アルミニウム皮膜を形成させた後、別途加熱炉で900〜1000℃(好ましくは、920〜980℃)に加熱して表面のアルミニウムを材料内部に拡散させ、アルミニウム拡散被覆層を形成させる方法等がある。なお、そのいずれにおいても表面にアルミニウム拡散被覆層、即ちアルミニウム合金層を形成させることができる。
【0038】
<水蒸気処理(ホモ処理)>
本発明において「水蒸気処理」とは、水蒸気を用いた表面酸化処理のことをいう。例えば、水蒸気処理に付す焼結品を、前記のアルミニウム拡散被覆層が形成された処理容器に収容した状態で、あるいは前記のアルミニウム拡散被覆層が形成された治具に支持された状態で、温度400〜600℃(特に好ましくは450〜550℃)の水蒸気によって、圧力0〜1kg/cm2(特に好ましくは0.4〜0.7kg/cm2)の条件下に、30〜300分間(特に好ましくは60〜240分間)保持する処理は、本発明の「水蒸気処理」に該当する。
【0039】
水蒸気処理(ホモ処理)の場合、大気中における800℃を超える高温酸化に比べると温度が約500℃と云う比較的低温のしかも水蒸気雰囲気であるが、各種実験の結果、容器、治具類、ガス整流部材等金属製部材について、普通鋼、特殊鋼、ステンレス鋼の何れの材質においても表面にアルミニウム拡散被覆層を形成させると、酸化鉄の生成を防止できるという知見を得た。即ち、アルミニウム拡散被覆層中のアルミニウムが高温水蒸気により優先的に酸化してアルミナ被膜が形成されることによって、高温水蒸気と被覆層中の鉄分との反応を抑制することが出来、酸化鉄の生成を防止出来ることが確認できた。ここで、普通鋼とは、一般構造圧延鋼材(SS)をはじめとする炭素鋼を、特殊鋼とは、Ni、Cr等の合金元素を含む鋼材のことをいう。
【0040】
水蒸気処理(ホモ処理)で生成した表面のアルミナは、焼結品表面に付着、焼き付くことは無く、焼結品の表面性状に悪影響を与えることが無い。
【0041】
<ガス軟窒化処理>
本発明において「ガス軟窒化処理」とは、疲労強度の向上や耐摩耗性の向上を目的として、主として浸炭性ガスと窒化性ガスの混合雰囲気中で処理することにより窒素と炭素を供給し、混合ガスと接触する部品表面に窒素と炭素を同時に侵入拡散させて炭窒化物を形成させる処理をいう。ガス軟窒化処理に用いられる浸炭性ガスとしては、例えば、急熱型変性ガス(Endo gas)あるいは有機溶剤の熱分解ガスなどの浸炭性ガス(COガス)等が用いられる。また、窒化性ガスとしては、例えばNH3ガス等が用いられる。例えば、水蒸気処理に付された焼結品を、水蒸気処理に用いられた処理容器に収容した状態で、あるいは水蒸気処理に用いられた治具に支持された状態で、上記混合ガス雰囲気中で、温度500〜650℃(特に好ましくは550〜580℃)、大気圧の条件下に、30〜240分間(特に好ましくは60〜180分間)保持する処理は、本発明における「ガス軟窒化処理」に該当する。
【0042】
本発明においては、容器や治具の表面に生成したアルミナ皮膜が窒素の侵入を抑制するので、容器や治具が窒化されることが無い。このことから、容器や治具から焼結品を載せ換えることなくそのままの状態でガス軟窒化を実施することができる。
【0043】
従って、窒化ガスは全て焼結品のガス軟窒化に有効に活用されるだけでなく、窒化されない容器、治具類の表面性状は未使用状態とほとんど変わらず、従来の様に窒化を繰り返すことによる表面硬化、表面ひび割れ、はく離が発生することが無く、その結果、容器、治具類の寿命が飛躍的に伸び消耗品のコスト低減にも極めて有効である。
【0044】
そして、ガス軟窒化終了後、焼結品を容器、治具類から取り外す際にも、焼きつくこともなく焼結品の表面は正常な状態を維持している。また、使用中にアルミナ皮膜が部分的にこすれて剥離することが生じたとしても、当該部分には次回の水蒸気処理(ホモ処理)で再度アルミナ皮膜が形成されるので、繰り返し使用しても窒化防止効果は持続する。
【実施例】
【0045】
<実施例1>
本発明品が水蒸気処理で酸化鉄を生成しないこと、およびその後のガス軟窒化処理で窒化されないことを確認する為に、治具、容器に使用する代表的な金属材料であるJIS規格のSUS304材、SCH13材にアルミニウム拡散浸透処理を施した本発明のテストピースと、同寸の未処理材(生材)とを、焼結品と一緒に、水蒸気処理およびガス軟窒化処理に繰り返し付して、表面状態の変化を調査した。
【0046】
1)テストピース
材質:SUS304材、SCH13材
寸法形状:50mm×50mm×肉厚5mm
枚数;各4個
【0047】
2)アルミニウム拡散浸透処理
a.滲透剤の組成
鉄−アルミニウム(50重量%)合金粉末:65重量%
アルミナ粉末:34重量%
塩化アンモニウム粉末:1.0重量%
b.処理温度:1000℃
c.処理時間:15時間
【0048】
3)本発明のテストピースの表面特性
アルミニウム拡散浸透処理を施したテストピース各1個を切断してアルミニウム拡散被覆層を調査した結果を表1に示す。断面検鏡して拡散被覆層の厚さを計測し、断面検鏡図を図1、2に示した。EPMA(X線マイクロアナライザー)による断面のアルミニウム濃度の分析値を図3、4に示す。
【表1】
【0049】
4)水蒸気処理
アルミニウム拡散浸透処理を施した本発明のテストピースのうち、SUS304材を3個とSCH13材を3個、未処理材各2個を、焼結品を水蒸気処理する際に充填容器に一緒に入れ、表2に示す様に1回処理と50回繰り返し処理を実施した。1回の水蒸気処理は、500℃の水蒸気中で2時間加熱して行った。
その後、各テストピースを切断して表面の断面状態を検鏡し酸化鉄生成層の厚さを測定した結果を、表2に示す。
【0050】
次に、未処理品の断面検鏡図を図5、6、7、8に示す。図中斜線で示した部分が酸化鉄生成層で、この内代表例として図6の断面検鏡部をEPMA分析した結果を、図9に示す。図9から明らかなように、当該表層部には鉄分と酸素が多く含まれており、酸化鉄が生成していることが確認できた。
【0051】
次に、本発明品のテストピースを断面検鏡した結果、水蒸気処理前の図1、2と有意差は無く、未処理品に発生している酸化鉄含有層は確認できなかった。
【表2】
【0052】
以上の通り、本発明のテストピース表面にはSUS304材、SCH13材のいずれの場合も酸化鉄の生成は認められず、本発明の第1番目の効果が確認できた。
【0053】
5)ガス軟窒化処理
水蒸気処理実験を50回行った本発明のテストピースの残り各1個を、焼結品をガス軟窒化する際に充填容器に一緒に入れ、ガス軟窒化を50回繰り返した。1回のガス軟窒化は、尿素を熱分解した雰囲気中で570℃に90分間加熱して行った。
その後、各テストピースを切断してアルミニウム拡散被覆層の断面を検鏡した結果、被覆層の厚さは、図1、2と有意差は無かった。
【0054】
次いで、被覆層中のアルミニウムと窒素のEPMA分析を行った結果を図10、11に示す。図から明らかなように、SUS304材、SCH13材のいずれにおいてもアルミニウム拡散被覆層中および近傍の母材中(素材中)に窒素はほとんど検出されず、表面のアルミニウム濃度とアルミニウムの濃度勾配は、水蒸気処理、ガス軟化処理前の図3、4と有意差は無かった。かくして本発明の第2番目の効果を確認することができた。
【0055】
<実施例2>
本発明の効果を実機で確認する為に、図12に示すバスケット(網かご)、支柱で構成される焼結品充填部材にアルミニウム拡散浸透処理を施しテストを行った。
【0056】
材料はいずれもSUS304材である。網かごの外径は600mm、深さ約200mm、線径は1.6mmで、支柱にそれぞれ間隔を取って三段に取り付けられる。細かごの中には約15〜30kgの焼結品が充填され、水蒸気、軟窒化ガスが十分いきわたるように間隔を取って配置せられる。
【0057】
アルミニウム拡散浸透処理を、実施例1と同条件で行って、表面にアルミニウム濃度31%、厚さ220μmのアルミニウム拡散被覆層を得た。
【0058】
焼結体を500℃の水蒸気中で2時間加熱することからなる1回の水蒸気処理の後、尿素を熱分解した雰囲気中で570℃に90分間加熱することからなる1回のガス軟窒化処理する工程を、1サイクルとし、これを50サイクル実施した。
【0059】
50サイクル終了後、網かごを切断して線の断面を検鏡しEPMA分析を行った。その結果、表面に鉄酸化物は認められず、アルミニウム拡散被覆層の表面のアルミニウム濃度は30.5%、被覆層の厚さは222μmでテスト前とほとんど変化が無く、窒素を検出することは出来なかった。また、バスケット表面には割れ、傷等材料の劣化を想到させる変化は無かった。
【0060】
未処理材料(生材)を使用した従来バスケットは、窒化処理を約200回繰り返した頃に割れ、変形で使用できなくなっているのに対し、実施例2で得られた本発明品の場合200回使用後いくらか熱変形は有るものの、明確な割れは全く観察されない。その後、1000回継続使用しても、実用上全く問題なかった。
【0061】
このように、本発明によれば、焼結品をバスケットから取り出して新たなバスケットに載せ替える必要が無く、水蒸気処理とガス軟窒化処理を連続して実施できるので、処理炉の稼働率が高まり、生産性が向上し、焼結品取扱い時に生じる品の打ち傷、欠け等が減少し、コストダウンだけでなく品質向上にも有効である。
【0062】
<発明の効果>
以上の様に本発明の焼結品充填容器、治具等金属製部材は、水蒸気処理、およびガス軟窒化処理に用いると鉄酸化物の生成を防止するだけでなく窒化も防止し、焼結品のガス軟窒化作業の改善、生産性向上、品質改善、容器、治具類の寿命延長をはかることが出来るので経済的効果は甚だ顕著である。
【符号の説明】
【0063】
1、2 アルミニウム拡散被覆層
3、9、10 母材(SUS304材)
4、11、12 母材(SCH13材)
5、6、7、8 酸化鉄生成層
13 支柱
14、15、16 網かご
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結品の処理方法に関し、具体的には、粉末冶金法により製造された焼結品に対して水蒸気処理を行い、次いでガス軟窒化処理を施す焼結品の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末冶金法で製造された焼結品(以後、本明細書において「焼結品」と呼称する)は、生産に際し材料の無駄が少なく、大量生産に向くことから、自動車を始めとする各種の機械部品等に適用が進んでいる。これら各機械部品においては、用途によっては硬さが必要とされる部品があり、この場合、焼結品に対して表面硬化処理を施して適用している。表面硬化処理としては、焼結品表面に硬化ガスを侵入ないし拡散させるものがあって、一般的にガス浸炭、ガス窒化、ガス軟窒化が多用されている。
【0003】
ところで、粉末冶金法により製造された焼結品は、内部に製造方法に由来する微細な気孔を有しており、上記の表面硬化処理を行うにあたり、硬化ガスが比較的容易に焼結品内部にまで侵入することから、硬化層の厚みの制御が困難である。このため、焼結品を水蒸気に接触させることよりなる水蒸気処理(ホモ処理と呼称される場合もある)を施して、焼結品表面に開口する気孔を封孔した後、上記硬化処理を行う方法(特許文献1等)が提案されている。
【0004】
すなわち、水蒸気処理(ホモ処理)は、例えば加圧水蒸気を350〜400℃に予熱した後、500℃前後に加熱した過熱水蒸気を被処理物に通じることにより、被処理物表面に約5〜20μmの厚さのFe3O4皮膜を形成させる技術であり、焼結品に適用された場合には、気孔表面に形成されるFe3O4皮膜が膨脹することにより気孔を封孔する。
【0005】
このように気孔が封孔された焼結品に対してガス軟窒化処理を行うと、表面に形成された多孔質のFe3O4層は一種のフィルターの役目を果たして窒素の侵入速度を均一化すること、および焼結品表層部の微細な気孔内部にもFe3O4が生成しているので、焼結品内部への過剰な窒化ガスの侵入を防止することによって、比較的薄く安定した窒化層を得ることができる。また、部品の部位による窒化層厚のバラつき、および処理炉内での設置場所の違いによる窒化層厚さのバラつきが少なくなる。さらに、ガス軟窒化処理の場合、還元性ガスであるCO、H2が共存して炭素の存在が窒素の拡散を促進するだけでなく、並行して表面に形成したFe3O4の還元が進み、最終的には表面にはほとんどFe3O4が含まれない厚さ5〜20μm程度の窒化層が得られる。
【0006】
上記のように処理を行うことで、内部に微細空間を有する焼結品であっても、水蒸気処理(ホモ処理)後にガス軟窒化することによって、薄く安定的な厚みの窒化層を得ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平04−070391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に、粉末冶金法で製造された焼結品に対して水蒸気処理やガス軟窒化処理を行う際には、焼結品の全表面が硬化ガスに接触しやすくなるように、焼結品をガス透過性容器(例えば、網カゴ、メッシュベルト等)に収容して、このガス透過性容器を支柱等で空中に保持ないし宙づりにしたり、焼結品を治具等に保持ないし積載して、水蒸気処理(ホモ処理)あるいはガス軟窒化処理に付すことが行われている。このようなガス透過性容器および治具等の利用は、焼結品の配置の適正化および処理の効率化等を図るために、特に重要である。
【0009】
しかしながら、焼結品を収容するバスケット、それを支える支柱、その他の容器、治具類等は、高温強度を確保する為に、いずれも普通鋼、特殊鋼、オーステナイト系ステンレス鋼等の金属材料で構成されているのが一般的である。これらの容器、治具類等は、焼結品と共に水蒸気処理あるいはガス軟窒化処理に付されることになるので、例えば、水蒸気処理では焼結品だけでなくこれら金属製部材の表面にもFe3O4もしくはFe2O3等の鉄酸化物皮膜の形成されることになる。
【0010】
従って、水蒸気処理に使用した容器、治具類等の金属製部材をそのまま使用してガス軟窒化処理を行うと、窒化ガスは、容器、治具類の還元までも行うことになる。その結果、焼結品が必要とする以上の窒化ガスが必要となり、更には容器、治具類の近傍に位置する焼結品への窒化ガスの安定供給が難しくなり、ガスのコストが高くつくだけでなく焼結品の窒化層厚のバラつきを拡大する要因となって、品質上重大な問題となる。
【0011】
そこで、従来は水蒸気処理に使用する容器、治具類等の金属製部材と、ガス軟窒化に使用する容器、治具類等の金属製部材とは混用せずに、それぞれ専用に使用してきた。即ち、水蒸気処理後、容器、治具類と焼結品とをそのまま一旦処理炉から取り出して冷却したのち、焼結品をガス軟窒化専用の容器、治具に載せ換え、その後、ガス軟窒化炉に挿入する作業が必要で、作業手間の増加と処理炉の稼働率低下を余儀なくされるだけでなく、生産性向上を意図した品積み替え時間の短縮に伴い、部品類の当て傷の発生による不良率の増加が避けられない。また、容器、治貝類等の金属製部材は窒化を繰り返すことによって表層が過度に固くなり、加熱冷却を繰り返すうちに割れが入り、変形して使用に耐えられなくなる。
【0012】
これらは全てコストアップの要因となっており、処理時間の短縮、省力、品質向上等を達成することが重要な課題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決する為になされたもので、焼結品に対して水蒸気処理を行い、次いでガス軟窒化処理を施す焼結品の処理方法であって、焼結品を収容する処理容器および/または焼結品を支持する治具として、表面にアルミニウム拡散被覆層が形成された処理容器および/または治具を用いるとともに、前記水蒸気処理の後に、処理容器および/または治具を交換することなく、前記ガス軟窒化処理を行うこと、を特徴とする。
【0014】
このような本発明による焼結品の処理方法は、好ましい態様として、前記のアルミニウム拡散被覆層が、その最表面のアルミニウム濃度が15〜40重量%であるもの、を包含する。
【0015】
このような本発明による焼結品の処理方法は、好ましい態様として、前記の焼結品を収容する処理容器および/または焼結品を支持する治具が、普通鋼、特殊鋼、オーステナイト系ステンレス鋼から選ばれた金属材料からなり、その表面のアルミニウム拡散被覆層がアルミニウム拡散浸透処理によって形成されたものであるもの、を包含する。
【発明の効果】
【0016】
本発明による焼結品の処理方法においては、焼結品を収容および/または支持する容器、治具等の金属製部材の表面にアルミニウム拡散被覆層を形成させることによって、容器、治具等の表面に鉄酸化物が生成するのを防止することができる(第1番目の効果)。
【0017】
更に、容器、治具等のアルミニウム拡散被覆層の最表面に、水蒸気処理によって緻密かつ極薄いアルミナ被膜が形成されることで、窒素の侵入が抑制されるので、次工程のガス軟窒化処理でこれらの容器、治具等の金属材料が窒化されることが防止される。これにより、容器、治具等の寿命延長を図ることが出来る(第2番目の効果)。
【0018】
このことから、水蒸気処理後の焼結品を容器、治具類から積み替えることなくそのままの状態でガス軟窒化処理を実施することが可能になる(第3番目の効果)。
【0019】
そして、ガス軟窒化処理に用いられる窒化ガスは、容器、治具等の窒化に消費されることがないので、焼結品のガス軟窒化に有効に活用される。かつ、焼結品のガス軟窒化処理を安定性を向上させて、窒化層の性状および層厚さの安定化、高品質化が高度に達成される(第4番目の効果)。
【0020】
その結果、生産性向上、省力化、品質向上、消耗品低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1における本発明のSUS304材のテストピースの断面検鏡図。
【図2】実施例1における本発明のSCH13材のテストピースの断面検鏡図。
【図3】実施例1における本発明のSUS304材のテストピースの、アルミニウム拡散被覆層のテスト前のアルミニウムのX線マイクロアナライザー(EPMA)の分析値を示すグラフ。
【図4】実施例1における本発明のSCH13材のテストピースの、アルミニウム拡散被覆層のテスト前のアルミニウムのEPMA分析値を示すグラフ。
【図5】実施例1において、水蒸気処理1回処理後のSUS304材の断面検鏡図。
【図6】実施1において、水蒸気処理50回処理後のSUS304材の断面検図。
【図7】実施例1において、水蒸気処理1回処理後のSCH13材の断面検鏡図。
【図8】実施例1において、水蒸気処理50回処理後のSCH13材の断面検鏡図。
【図9】実施例1において、水蒸気処理50回処理後のSUS304材の断面EPMA分析値。
【図10】実施例1において、水蒸気処理50回処理後ガス軟窒化処理を50回繰り返した本発明SUS304材のテストピースの、アルミニウム拡散被覆層のアルミニウムと窒素のEPMA分析値を示すグラフ。
【図11】実施例1において、水蒸気処理を50回実施後ガス軟窒化を50回繰り返した本発明のSCH13材のテストピースの、アルミニウム拡散被覆層のアルミニウムと窒素のEPMA分析値を示すグラフ。
【図12】実施例2に用いた焼結品充填用バスケット(網かご)および支柱の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<焼結品の処理方法>
本発明者らは、水蒸気処理工程における上記金属製部材表面の鉄酸化物の生成を防止でき、且つ次工程のガス軟窒化処理で窒化されることが無ければ、これら部材がガス軟窒化処理を阻害する要因とならないことに着目して種々検討した結果、これら部材の表面にアルミニウム拡散被覆層を形成させることで水蒸気処理工程における鉄酸化物生成を防止し、次工程での窒化も防止できることを知見を得た。
【0023】
本発明による焼結品の処理方法は、焼結品に対して水蒸気処理を行い、次いでガス軟窒化処理を施す焼結品の処理方法であって、焼結品を収容する処理容器および/または焼結品を支持する治具として、表面にアルミニウム拡散被覆層が形成された処理容器および/または治具を用いるとともに、前記水蒸気処理の後に、前記の処理容器および/または治具を交換することなく、前記ガス軟窒化処理を行うこと、を特徴とする。
【0024】
ここで、本発明において、「焼結品を収容する処理容器」とは、水蒸気処理およびガス軟窒化処理の際に、処理すべき焼結品の全部あるいはその一部分を収容する容器であって、その容器の少なくとも一部分が、水蒸気処理あるいはガス軟窒化処理の際に使用されるガスが透過可能に構成されて、処理すべき焼結品の表面の少なくとも一部に、水蒸気あるい前記ガスを接触できるように構成された容器を言う。
【0025】
そして、本発明において、「焼結品を支持する治具」とは、水蒸気処理およびガス軟窒化処理の際に、処理に付される焼結品を支持して、その位置や姿勢を保持ないし安定化させることができる用具を言う。この治具は、処理に付される焼結品に直接接触するもののみに限定されない。例えば、処理に付される焼結品に直接接触した治具(一次治具)を含め、前記の「焼結品を収容する処理容器」あるいは前記の焼結品に直接接触した治具(一次治具)の位置や姿勢を保持ないし安定化させることによって、結果として、焼結品の位置や姿勢を保持、安定化に寄与する、焼結品に直接接触しない治具(二次治具)等をも含めて言うものである。例えば、前記の「焼結品を収容する処理容器」を1個あるいは複数個を支える支柱等は、この「焼結品を支持する治具」の一具体例である。
【0026】
本発明における「焼結品を収容する処理容器」の特に好ましい具体例としては、線径1.0〜4.0mm、好ましくは1.5〜2.5mmの金属線によって形成された、外径300〜900mm、好ましくは500〜700mmの、深さ100〜400mm、好ましくは200〜300mmの網カゴを挙げることができる。
【0027】
また、本発明における「焼結品を支持する治具」の特に好ましい具体例としては、そり防止を目的とした3点保持用の治具等を挙げることができる。
【0028】
本発明における「焼結品を収容する処理容器」および「焼結品を支持する治具」は、従来から焼結品に対する「水蒸気処理」あるいは「ガス軟窒化処理」の際に採用されてきた「処理容器」あるいは「治具」と同様に、普通鋼、特殊鋼、オーステナイト系ステンレス鋼等の金属材料で構成することができるが、これらの金属材料の表面にアルミニウム拡散被覆層が形成されている点で、従来の一般的な「焼結品を収容する処理容器」あるいは「焼結品を支持する治具」と明確に相違している。
【0029】
なお、本発明における「焼結品を収容する処理容器」および「焼結品を支持する治具」では、常に、その「容器」および「治具」の全ての表面にアルミニウム拡散被覆層が形成されている必要はないが、少なくとも窒化性ガスが接触することがある表面には、アルミニウム拡散被覆層が形成されていることが好ましい。
【0030】
本発明における「焼結品を収容する処理容器」および「焼結品を支持する治具」は、水蒸気処理を行った後にガス軟窒化処理を行う一連の焼結品の処理方法において、繰り返し利用することができる。また、水蒸気処理のみを繰り返して行う場合にも、水蒸気処理に少なくとも一回用いられた後はガス軟窒化処理に繰り返し利用することができるものである。
【0031】
<アルミニウム拡散被覆層>
金属材料の表面に形成させたアルミニウム拡散被覆層の高温耐酸化性は、800℃を超える高温赤熱領域で特に耐酸化効果は顕著である。アルミニウム拡散被覆層が、高い耐酸化性を発現するメカニズムは、大気中で赤熱領域まで加熱すると、アルミニウム拡散被覆層に含まれるアルミニウムが空気中の酸素と優先的に結合して、融点が2050℃と非常に高く、耐食性に富んだ緻密な酸化アルミニウム(アルミナ=Al2O3)皮膜が生成し、酸素を遮断する為、以後の酸化を抑制するものと現在解析されている。
【0032】
前記の通りに、本発明における「焼結品を収容する処理容器」および「焼結品を支持する治具」は、従来より焼結品に対する「水蒸気処理」あるいは「ガス軟窒化処理」の際に採用されてきた「処理容器」あるいは「治具」と同様に、普通鋼、特殊鋼、オーステナイト系ステンレス鋼等の金属材料で構成することができる。本発明では、その表面にアルミニウム拡散被覆層が形成可能なものであれば、従来公知の普通鋼、特殊鋼、オーステナイト系ステンレス鋼等の金属材料を用いることができる。特に本発明において好ましい金属材料としては、オーステナイト系ステンレス、例えば、JIS規格に規定された、SUS304材、SCH13材、SUS316(L)材、SUS309材、SUS310S材、SCH21材等を挙げることができる。この中では特に、SUS304材およびSCH13材が好ましい。
【0033】
金属材料の表面にアルミニウム拡散被覆層を形成させる方法としては、鉄−アルミニウム合金粉、アルミナ粉および塩化アンモニウム粉を含む混合粉を用いるアルミニウム拡散浸透処理を挙げることができる。
【0034】
本発明において特に好ましいアルミニウム拡散浸透処理としては、例えばアルミニウム濃度20〜60重量%(好ましくは、30〜55重量%)の鉄−アルミニウム合金粉10〜90重量%(好ましくは、30〜80重量%)と、アルミナ粉10〜90重量%(好ましくは、30〜60重量%)と塩化アンモニウム粉0.1〜3.0重量%(好ましくは、0.2〜1.5重量%)を含む混合粉末を滲透剤とし、この滲透剤の中に金属材料を埋め込み、不活性ガス(好ましくは、Ar)あるいは水素などの還元性雰囲気中で800〜1100℃(好ましくは、850〜1050℃)に昇温し、5〜20時間(好ましくは、10〜20時間)加熱する方法を挙げることができる。
【0035】
このアルミニウム拡散浸透処理によれば、金属材料の表面にアルミニウム濃度15〜40%、厚さ20〜800μmのアルミニウム拡散被覆層を容易に形成させることが出来る。金属材料の表面のアルミニウム濃度は、好ましくは20〜40%、特に好ましくは25〜40%、である。アルミニウム濃度が15%未満の場合は、耐久性に問題があり、一方、40%超過の場合は、硬くなり過ぎて脆くなり、割れや剥離が起き易く実用に耐えないことから好ましくない。また、アルミニウム拡散被覆層の厚さが20μm未満の場合は、薄すぎて耐久性に問題があり、一方、800μm超過の場合は、被覆層が厚すぎ、脆くなる事から熱衝撃で割れや剥離が起き易く実用に耐えないことから好ましくない。ここで、アルミニウム拡散被覆層の「アルミニウム濃度」は、EPMA装置の定量分析によって求められたものであり、アルミニウム拡散被覆層の厚さは、光学顕微鏡によって求められたものである。
【0036】
尚、アルミニウム拡散浸透処理における具体的条件は、金属材料の成分組成や、被覆層の厚さ、アルミニウム濃度等を考慮して、適宜定めることができる。
【0037】
その他の処理方法として、アルミニウム拡散浸透処理で使用する鉄−アルミニウム合金粉の代わりにアルミニウム粉を使用し、これにアルミナ粉と塩化アンモニウム粉を混合して滲透剤とし、比較的低温の600〜900℃(好ましくは、700〜850℃)で加熱する方法、金属材料を670〜720℃(好ましくは、680〜710℃)の溶融アルミニウムに浸漬して表面に純アルミニウム皮膜を形成させた後、別途加熱炉で900〜1000℃(好ましくは、920〜980℃)に加熱して表面のアルミニウムを材料内部に拡散させ、アルミニウム拡散被覆層を形成させる方法等がある。なお、そのいずれにおいても表面にアルミニウム拡散被覆層、即ちアルミニウム合金層を形成させることができる。
【0038】
<水蒸気処理(ホモ処理)>
本発明において「水蒸気処理」とは、水蒸気を用いた表面酸化処理のことをいう。例えば、水蒸気処理に付す焼結品を、前記のアルミニウム拡散被覆層が形成された処理容器に収容した状態で、あるいは前記のアルミニウム拡散被覆層が形成された治具に支持された状態で、温度400〜600℃(特に好ましくは450〜550℃)の水蒸気によって、圧力0〜1kg/cm2(特に好ましくは0.4〜0.7kg/cm2)の条件下に、30〜300分間(特に好ましくは60〜240分間)保持する処理は、本発明の「水蒸気処理」に該当する。
【0039】
水蒸気処理(ホモ処理)の場合、大気中における800℃を超える高温酸化に比べると温度が約500℃と云う比較的低温のしかも水蒸気雰囲気であるが、各種実験の結果、容器、治具類、ガス整流部材等金属製部材について、普通鋼、特殊鋼、ステンレス鋼の何れの材質においても表面にアルミニウム拡散被覆層を形成させると、酸化鉄の生成を防止できるという知見を得た。即ち、アルミニウム拡散被覆層中のアルミニウムが高温水蒸気により優先的に酸化してアルミナ被膜が形成されることによって、高温水蒸気と被覆層中の鉄分との反応を抑制することが出来、酸化鉄の生成を防止出来ることが確認できた。ここで、普通鋼とは、一般構造圧延鋼材(SS)をはじめとする炭素鋼を、特殊鋼とは、Ni、Cr等の合金元素を含む鋼材のことをいう。
【0040】
水蒸気処理(ホモ処理)で生成した表面のアルミナは、焼結品表面に付着、焼き付くことは無く、焼結品の表面性状に悪影響を与えることが無い。
【0041】
<ガス軟窒化処理>
本発明において「ガス軟窒化処理」とは、疲労強度の向上や耐摩耗性の向上を目的として、主として浸炭性ガスと窒化性ガスの混合雰囲気中で処理することにより窒素と炭素を供給し、混合ガスと接触する部品表面に窒素と炭素を同時に侵入拡散させて炭窒化物を形成させる処理をいう。ガス軟窒化処理に用いられる浸炭性ガスとしては、例えば、急熱型変性ガス(Endo gas)あるいは有機溶剤の熱分解ガスなどの浸炭性ガス(COガス)等が用いられる。また、窒化性ガスとしては、例えばNH3ガス等が用いられる。例えば、水蒸気処理に付された焼結品を、水蒸気処理に用いられた処理容器に収容した状態で、あるいは水蒸気処理に用いられた治具に支持された状態で、上記混合ガス雰囲気中で、温度500〜650℃(特に好ましくは550〜580℃)、大気圧の条件下に、30〜240分間(特に好ましくは60〜180分間)保持する処理は、本発明における「ガス軟窒化処理」に該当する。
【0042】
本発明においては、容器や治具の表面に生成したアルミナ皮膜が窒素の侵入を抑制するので、容器や治具が窒化されることが無い。このことから、容器や治具から焼結品を載せ換えることなくそのままの状態でガス軟窒化を実施することができる。
【0043】
従って、窒化ガスは全て焼結品のガス軟窒化に有効に活用されるだけでなく、窒化されない容器、治具類の表面性状は未使用状態とほとんど変わらず、従来の様に窒化を繰り返すことによる表面硬化、表面ひび割れ、はく離が発生することが無く、その結果、容器、治具類の寿命が飛躍的に伸び消耗品のコスト低減にも極めて有効である。
【0044】
そして、ガス軟窒化終了後、焼結品を容器、治具類から取り外す際にも、焼きつくこともなく焼結品の表面は正常な状態を維持している。また、使用中にアルミナ皮膜が部分的にこすれて剥離することが生じたとしても、当該部分には次回の水蒸気処理(ホモ処理)で再度アルミナ皮膜が形成されるので、繰り返し使用しても窒化防止効果は持続する。
【実施例】
【0045】
<実施例1>
本発明品が水蒸気処理で酸化鉄を生成しないこと、およびその後のガス軟窒化処理で窒化されないことを確認する為に、治具、容器に使用する代表的な金属材料であるJIS規格のSUS304材、SCH13材にアルミニウム拡散浸透処理を施した本発明のテストピースと、同寸の未処理材(生材)とを、焼結品と一緒に、水蒸気処理およびガス軟窒化処理に繰り返し付して、表面状態の変化を調査した。
【0046】
1)テストピース
材質:SUS304材、SCH13材
寸法形状:50mm×50mm×肉厚5mm
枚数;各4個
【0047】
2)アルミニウム拡散浸透処理
a.滲透剤の組成
鉄−アルミニウム(50重量%)合金粉末:65重量%
アルミナ粉末:34重量%
塩化アンモニウム粉末:1.0重量%
b.処理温度:1000℃
c.処理時間:15時間
【0048】
3)本発明のテストピースの表面特性
アルミニウム拡散浸透処理を施したテストピース各1個を切断してアルミニウム拡散被覆層を調査した結果を表1に示す。断面検鏡して拡散被覆層の厚さを計測し、断面検鏡図を図1、2に示した。EPMA(X線マイクロアナライザー)による断面のアルミニウム濃度の分析値を図3、4に示す。
【表1】
【0049】
4)水蒸気処理
アルミニウム拡散浸透処理を施した本発明のテストピースのうち、SUS304材を3個とSCH13材を3個、未処理材各2個を、焼結品を水蒸気処理する際に充填容器に一緒に入れ、表2に示す様に1回処理と50回繰り返し処理を実施した。1回の水蒸気処理は、500℃の水蒸気中で2時間加熱して行った。
その後、各テストピースを切断して表面の断面状態を検鏡し酸化鉄生成層の厚さを測定した結果を、表2に示す。
【0050】
次に、未処理品の断面検鏡図を図5、6、7、8に示す。図中斜線で示した部分が酸化鉄生成層で、この内代表例として図6の断面検鏡部をEPMA分析した結果を、図9に示す。図9から明らかなように、当該表層部には鉄分と酸素が多く含まれており、酸化鉄が生成していることが確認できた。
【0051】
次に、本発明品のテストピースを断面検鏡した結果、水蒸気処理前の図1、2と有意差は無く、未処理品に発生している酸化鉄含有層は確認できなかった。
【表2】
【0052】
以上の通り、本発明のテストピース表面にはSUS304材、SCH13材のいずれの場合も酸化鉄の生成は認められず、本発明の第1番目の効果が確認できた。
【0053】
5)ガス軟窒化処理
水蒸気処理実験を50回行った本発明のテストピースの残り各1個を、焼結品をガス軟窒化する際に充填容器に一緒に入れ、ガス軟窒化を50回繰り返した。1回のガス軟窒化は、尿素を熱分解した雰囲気中で570℃に90分間加熱して行った。
その後、各テストピースを切断してアルミニウム拡散被覆層の断面を検鏡した結果、被覆層の厚さは、図1、2と有意差は無かった。
【0054】
次いで、被覆層中のアルミニウムと窒素のEPMA分析を行った結果を図10、11に示す。図から明らかなように、SUS304材、SCH13材のいずれにおいてもアルミニウム拡散被覆層中および近傍の母材中(素材中)に窒素はほとんど検出されず、表面のアルミニウム濃度とアルミニウムの濃度勾配は、水蒸気処理、ガス軟化処理前の図3、4と有意差は無かった。かくして本発明の第2番目の効果を確認することができた。
【0055】
<実施例2>
本発明の効果を実機で確認する為に、図12に示すバスケット(網かご)、支柱で構成される焼結品充填部材にアルミニウム拡散浸透処理を施しテストを行った。
【0056】
材料はいずれもSUS304材である。網かごの外径は600mm、深さ約200mm、線径は1.6mmで、支柱にそれぞれ間隔を取って三段に取り付けられる。細かごの中には約15〜30kgの焼結品が充填され、水蒸気、軟窒化ガスが十分いきわたるように間隔を取って配置せられる。
【0057】
アルミニウム拡散浸透処理を、実施例1と同条件で行って、表面にアルミニウム濃度31%、厚さ220μmのアルミニウム拡散被覆層を得た。
【0058】
焼結体を500℃の水蒸気中で2時間加熱することからなる1回の水蒸気処理の後、尿素を熱分解した雰囲気中で570℃に90分間加熱することからなる1回のガス軟窒化処理する工程を、1サイクルとし、これを50サイクル実施した。
【0059】
50サイクル終了後、網かごを切断して線の断面を検鏡しEPMA分析を行った。その結果、表面に鉄酸化物は認められず、アルミニウム拡散被覆層の表面のアルミニウム濃度は30.5%、被覆層の厚さは222μmでテスト前とほとんど変化が無く、窒素を検出することは出来なかった。また、バスケット表面には割れ、傷等材料の劣化を想到させる変化は無かった。
【0060】
未処理材料(生材)を使用した従来バスケットは、窒化処理を約200回繰り返した頃に割れ、変形で使用できなくなっているのに対し、実施例2で得られた本発明品の場合200回使用後いくらか熱変形は有るものの、明確な割れは全く観察されない。その後、1000回継続使用しても、実用上全く問題なかった。
【0061】
このように、本発明によれば、焼結品をバスケットから取り出して新たなバスケットに載せ替える必要が無く、水蒸気処理とガス軟窒化処理を連続して実施できるので、処理炉の稼働率が高まり、生産性が向上し、焼結品取扱い時に生じる品の打ち傷、欠け等が減少し、コストダウンだけでなく品質向上にも有効である。
【0062】
<発明の効果>
以上の様に本発明の焼結品充填容器、治具等金属製部材は、水蒸気処理、およびガス軟窒化処理に用いると鉄酸化物の生成を防止するだけでなく窒化も防止し、焼結品のガス軟窒化作業の改善、生産性向上、品質改善、容器、治具類の寿命延長をはかることが出来るので経済的効果は甚だ顕著である。
【符号の説明】
【0063】
1、2 アルミニウム拡散被覆層
3、9、10 母材(SUS304材)
4、11、12 母材(SCH13材)
5、6、7、8 酸化鉄生成層
13 支柱
14、15、16 網かご
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結品に対して水蒸気処理を行い、次いでガス軟窒化処理を施す焼結品の処理方法であって、
焼結品を収容する処理容器および/または焼結品を支持する治具として、表面にアルミニウム拡散被覆層が形成された処理容器および/または治具を用いるとともに、前記水蒸気処理の後に、処理容器および/または治具を交換することなく、前記ガス軟窒化処理を行うことを特徴とする、焼結品の処理方法。
【請求項2】
前記のアルミニウム拡散被覆層は、その最表面のアルミニウム濃度が15〜40重量%である、請求項1に記載の焼結品の処理方法。
【請求項3】
前記の焼結品を収容する処理容器および/または焼結品を支持する治具が、普通鋼、特殊鋼、オーステナイト系ステンレス鋼から選ばれた金属材料からなり、その表面のアルミニウム拡散被覆層がアルミニウム拡散浸透処理によって形成されたものである、請求項1または2に記載の焼結品の処理方法。
【請求項1】
焼結品に対して水蒸気処理を行い、次いでガス軟窒化処理を施す焼結品の処理方法であって、
焼結品を収容する処理容器および/または焼結品を支持する治具として、表面にアルミニウム拡散被覆層が形成された処理容器および/または治具を用いるとともに、前記水蒸気処理の後に、処理容器および/または治具を交換することなく、前記ガス軟窒化処理を行うことを特徴とする、焼結品の処理方法。
【請求項2】
前記のアルミニウム拡散被覆層は、その最表面のアルミニウム濃度が15〜40重量%である、請求項1に記載の焼結品の処理方法。
【請求項3】
前記の焼結品を収容する処理容器および/または焼結品を支持する治具が、普通鋼、特殊鋼、オーステナイト系ステンレス鋼から選ばれた金属材料からなり、その表面のアルミニウム拡散被覆層がアルミニウム拡散浸透処理によって形成されたものである、請求項1または2に記載の焼結品の処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−82955(P2013−82955A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221886(P2011−221886)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(591023767)滲透工業株式会社 (3)
【出願人】(000233572)日立粉末冶金株式会社 (272)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(591023767)滲透工業株式会社 (3)
【出願人】(000233572)日立粉末冶金株式会社 (272)
【Fターム(参考)】
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