説明

焼酎粕処理設備

【課題】焼酎粕から得られる濃縮液を蒸留して得られる気体を冷却するための冷却水をなくすことができ、さらにアルコール蒸発のための蒸気の使用量を低減できる焼酎粕処理設備を提供すること。
【解決手段】本発明に係る焼酎粕処理設備は、焼酎粕を固液分離する固液分離手段と、該固液分離手段により分離された分離液を減圧下で濃縮する濃縮手段1と、該濃縮手段1で生成する気体中からエタノールを分離回収するエタノール回収手段8とを有する焼酎粕処理設備において、前記濃縮手段1で生成する気体を圧縮して液化する圧縮機6を備えることを特徴とする。本発明の好ましい態様は、前記圧縮機6で生成された液体の温度が、80℃〜90℃の範囲であることであり、他の好ましい態様は、前記圧縮機6が、高速回転容積式であることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼酎粕処理設備に関し、詳しくは、焼酎粕から得られる濃縮液を蒸留して得られる気体を冷却するための冷却水をなくすことができ、さらにアルコール蒸発のための蒸気の使用量を低減できる焼酎粕処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
1993年に日本を含む多数の国々でロンドン条約(廃棄物その他の投棄による海洋汚染の防止に関する条約)が採択された。焼酎粕は現在同条約の除外品目として認められているが、現実問題としてはこのまま従来の海洋投棄を継続することは困難な情勢であり、全量陸上処理することを目標に焼酎業界での努力がなされてきた。
【0003】
焼酎粕には、通常、水分と固形分が含まれ、水分は90重量%以上含まれ、固形分には、多量のたんぱく質、でん粉、繊維分等が含まれている。
【0004】
かかる焼酎粕の陸上処理として焼却処理も考えられるが、焼却設備や燃料コストが高くなるため、好ましい手法とは言えない。
【0005】
このため近年、焼酎粕の成分に着目して、飼料を製造する方法が特許文献1、2に提案されている。
【0006】
一方、焼酎粕中には、エタノールが含まれており、これらの有効回収が望まれているところであるが、特許文献3は、焼酎粕中にエタノールを含有する認識はあるが、含有量が少ないので排水処理して系外に捨てる技術が開示されている。
【特許文献1】特許第3495429号公報
【特許文献2】特許第2976072号公報
【特許文献3】特開平11−63455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、焼酎粕中に含まれるエタノールを排水処理して外部に排出することは経済的でない点に着目し、エタノール回収技術を検討し、図4に示すようなプロセスを考えた。
【0008】
図4において、50は図示しない固液分離手段から送られる分離液を減圧下で濃縮する濃縮手段である。濃縮手段50には蒸発缶が用いられ、図示しない真空ポンプで減圧された状態で、循環ポンプ51で循環しながら、濃縮操作が行われる。52は循環液を加熱する加熱器であり、加熱源として蒸気が使用される。
【0009】
濃縮手段50で濃縮された濃縮液は配管53から取り出され、飼料の添加剤として用いられる。
【0010】
一方、濃縮手段50から排出される気体は、上部から排出され、エタノール回収手段54に送られる過程で、冷却器55で冷却される。冷却には冷却水が使用される。気体は冷却されて液体になり、その液体の温度は約60℃程度である。
【0011】
エタノール回収手段54に送られた液体は、蒸気で加温され、液体中に含有するエタノール成分は蒸発し、エタノール含有蒸気(気体)となって上部から排出され、冷却器56で冷却後、液化させてエタノール含有水となってエタノール回収タンク57に集められる。
【0012】
一方、エタノール回収手段54で生成する液体は、排水として排水タンク58に溜められ、排水処理される。
【0013】
上記の手法で、エタノール70wt%程度のアルコールを回収でき、画期的システムを実現できた。
【0014】
しかし、かかるシステムにおいても、以下の改良すべき課題があった。
【0015】
即ち、本発明は、焼酎粕から得られる濃縮液を蒸留して得られる気体を冷却するための冷却水をなくすことができ、さらにアルコール蒸発のための蒸気の使用量を低減できる焼酎粕処理設備を提供することを課題とする。
【0016】
本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0018】
(請求項1)
焼酎粕を固液分離する固液分離手段と、該固液分離手段により分離された分離液を減圧下で濃縮する濃縮手段と、該濃縮手段で生成する気体中からエタノールを分離回収するエタノール回収手段とを有する焼酎粕処理設備において、
前記濃縮手段で生成する気体を圧縮して液化する圧縮機を備えることを特徴とする焼酎粕処理設備。
【0019】
(請求項2)
前記圧縮機で生成された液体の温度が、80℃〜90℃の範囲であることを特徴とする請求項1記載の焼酎粕処理設備。
【0020】
(請求項3)
前記圧縮機が、高速回転容積式であることを特徴とする請求項1又は2記載の焼酎粕処理設備。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、焼酎粕から得られる濃縮液を蒸留して得られる気体を冷却するための冷却水をなくすことができ、さらにアルコール蒸発のための蒸気の使用量を低減できる焼酎粕処理設備を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本発明の好ましい実施の形態を示すフロー図であり、同図において、1は図示しない固液分離手段から送られる分離液を減圧下で濃縮する濃縮手段である。
【0024】
濃縮手段1は、格別限定されるわけではないが、例えば3重効用缶が用いられ、図示しない真空ポンプで減圧された状態で、循環ポンプ2で循環液を循環しながら、濃縮操作が行われる。3は循環液を加熱する加熱器であり、加熱源として蒸気が使用される。
【0025】
濃縮手段1で濃縮された濃縮液は、配管4から取り出され、濃縮液タンク5に貯留され、飼料の添加剤として用いられる。
【0026】
濃縮手段1から排出される気体は、上部から配管7を介して圧縮機6に送られ圧縮される。
【0027】
圧縮機6の構成は特に限定されないが、高速回転容積式、超高速回転容積式、低速往復動容積式、超高速回転遠心式のいずれでもよいが、なかでも高速回転容積式は低圧縮比から高圧縮比に圧縮できるので好ましい。高速回転容積式の容量制御は、スライド弁による無段階制御が通常採用される。圧縮機6による圧縮によって液化が可能であるが、同時に液体の温度を上昇させる。
【0028】
本発明において、圧縮機6による圧縮によって、液体の温度を約80℃〜90℃の範囲まで上昇させることが好ましい。
【0029】
圧縮機6で生成された液体は、エタノール回収手段8に送られる。エタノール回収手段8では液体は更に蒸気でエタノール蒸気が生成される温度まで加温される。
【0030】
液体中に含有するエタノール成分は蒸発し、エタノール含有蒸気(気体)となって上部から排出される。
【0031】
このように、本発明では圧縮機6の使用によって、従来濃縮手段から排出される気体を冷却する冷却器は不要となり、そこで使用されていた冷却水をなくすことができ、また、圧縮によって液体が昇温され、その昇温分に相当するエンタルピーが削減できるので、エタノール回収手段8に供給される蒸気の使用量を削減できる効果がある。
【0032】
エタノール回収手段8で生成したエタノール含有蒸気は、配管9を介して冷却器10に送られる。冷却器10では冷却水によって冷却される。冷却後液化されたエタノール含有水はエタノール回収タンク11に集められる。エタノール濃度は焼酎粕中にエタノール濃度にも影響されるが、例えば130t/Dの焼酎粕中の固形分が6.0〜10.0wt%、エタノール濃度0.3〜0.8wt%の場合、最終的な回収アルコールは約70wt%程度の濃度のものが0.4t/D〜1.36t/D得られる。
【0033】
一方、エタノール回収手段8で生成する液体は、排水として排水タンク12に溜められ、排水処理される。
【0034】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、上述の態様で、圧縮機は1基でもよいし、複数基を用いてもよい。
【0035】
また濃縮手段1としては、図2、図3に示す設備を使用することも、高濃度(40%以上)に濃縮する上で、好ましい。
【0036】
図2は、スプレー式蒸発缶を用いた濃縮手段1の一例を示す全体構成図、図3は、スプレー式蒸発缶のサイクロン部を示す要部断面図である。
【0037】
この濃縮手段1は、内部にスプレーノズル31を備えた蒸発缶32を備え、この蒸発缶32の底部32aに供給された分離液をスプレーノズル31から吐出するべく加圧するポンプ33と、このポンプ33とスプレーノズル31との間に配設され、管路内の分離液を加熱する加熱器34と、ポンプ33と加熱器34との間に設置された濃度調節計35の測定信号により濃縮液を排出する排出機構36を備えている。
【0038】
蒸発缶32の内部は、図示しない真空ポンプと連通しており、この真空ポンプによって減圧されている。
【0039】
蒸発缶32には、細径の底部32aに図示しない固液分離設備から供給された分離液が溜められると共に太径胴部の缶径接線方向に、スプレーボックス321が取り付けられている。
【0040】
スプレーボックス321は、図3示すようにスプレーノズル31を内蔵した直管部321aと、蒸発缶32の接線方向に開口した曲管部321bとから構成されている。
【0041】
従って、直管部321aでスプレーノズル31によって噴霧された分離液は、蒸発した後、曲管部321bから蒸発缶32の胴内に接線方向から導入される。
【0042】
加熱器34(図1では加熱器3に相当)は、加熱源としての蒸気が供給されると共に、ポンプ33によって蒸発缶32の底部32a内の分離液が供給され、内部で熱交換が行われることにより、分離液を加熱する。
【0043】
例えば、加熱器34に供給する蒸気温度を80℃とすることにより、55℃の分離液を70℃まで加熱する。蒸気が分離液を加熱して凝縮した後の凝縮水は、加熱器34より外部に排出される。
【0044】
排出機構36は、ポンプ33と加熱器34との間に配設されており、濃度調節計35による検知結果が所定の濃度に達すると、コントロール弁361を開き、排出ポンプ362によって濃縮液を排出する。
【0045】
かかる濃縮手段1では、真空ポンプによって所定の真空度まで減圧された蒸発缶32の底部32aに貯留された分離液を、ポンプ33、加熱器34、スプレーノズル31、スプレーボックス321の順に強制循環すると共に、加熱器34に蒸気を供給する。
【0046】
ポンプ33によって循環される分離液は、加熱器34において加熱された後、スプレーノズル31から減圧状態にある蒸発缶32の胴内に接線方向から導入されて噴霧される。
【0047】
噴霧された分離液は、サイクロン効果によって気液分離が促進され、蒸気が蒸発缶32の頂部から排出されると共に、濃縮された液体が蒸発缶32の底部32aに貯留され、所定の濃度になるまで、以上の動作が繰り返される。
【0048】
蒸発缶32内の液濃度が所定の濃度に達すると、濃度調節計35が信号を発し、コントロール弁361が開となり、濃縮液が外部に排出される。
【0049】
濃縮手段1内の蒸発缶32内にスケーリングなどが発生すると濃縮効率が低下するので、毎日温水で洗浄を行うことが好ましい。この洗浄運転は濃縮工程の一部として予めプログラミングされており、完全自動運転で行われることが好ましい。洗浄排液は原液貯留タンク1に返送され、また運転状況に応じて一定期間運転後、苛性ソーダを使用した洗浄を行う。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る焼酎粕処理例を示すフロー図
【図2】スプレー式蒸発缶を用いた濃縮手段の一例を示す全体構成図
【図3】スプレー式蒸発缶のサイクロン部を示す要部断面図
【図4】従来例を示す図
【符号の説明】
【0051】
1:濃縮手段
2:循環ポンプ
3:加熱器
4:配管
5:濃縮液タンク
6:圧縮機
7:配管
8:エタノール回収手段
9:配管
10:冷却器
11:エタノール回収タンク
12:排水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼酎粕を固液分離する固液分離手段と、該固液分離手段により分離された分離液を減圧下で濃縮する濃縮手段と、該濃縮手段で生成する気体中からエタノールを分離回収するエタノール回収手段とを有する焼酎粕処理設備において、
前記濃縮手段で生成する気体を圧縮して液化する圧縮機を備えることを特徴とする焼酎粕処理設備。
【請求項2】
前記圧縮機で生成された液体の温度が、80℃〜90℃の範囲であることを特徴とする請求項1記載の焼酎粕処理設備。
【請求項3】
前記圧縮機が、高速回転容積式であることを特徴とする請求項1又は2記載の焼酎粕処理設備。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−159426(P2007−159426A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356452(P2005−356452)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】