煉瓦造建造物の補強方法
【課題】施工が容易で、外観や内観に構造材が露出せず、しかも高い補強効果を示す煉瓦造建造物の補強方法を提供する。
【解決手段】繊維強化プラスチックロッドからなる補強材を既存の煉瓦造建造物の目地部に埋設することにより煉瓦造建造物を補強する方法であって、水平目地部12に沿って水平溝部20を形成すると共に、水平溝部20と連通する鉛直溝部21を鉛直目地部13に沿って形成する工程と、水平溝部20及び鉛直溝部21の各底部に充填材18を充填する工程と、鉛直補強材15の端部に形成された折り曲げ部15bを水平溝部20の充填材18にセットすると共に、鉛直補強材15の非折り曲げ部15aを鉛直溝部21の充填材18にセットした後、水平補強材14を水平溝部20にセットする工程と、水平溝部20及び鉛直溝部21に充填材18を充填して水平溝部20及び鉛直溝部21を封止する工程とを備えている。
【解決手段】繊維強化プラスチックロッドからなる補強材を既存の煉瓦造建造物の目地部に埋設することにより煉瓦造建造物を補強する方法であって、水平目地部12に沿って水平溝部20を形成すると共に、水平溝部20と連通する鉛直溝部21を鉛直目地部13に沿って形成する工程と、水平溝部20及び鉛直溝部21の各底部に充填材18を充填する工程と、鉛直補強材15の端部に形成された折り曲げ部15bを水平溝部20の充填材18にセットすると共に、鉛直補強材15の非折り曲げ部15aを鉛直溝部21の充填材18にセットした後、水平補強材14を水平溝部20にセットする工程と、水平溝部20及び鉛直溝部21に充填材18を充填して水平溝部20及び鉛直溝部21を封止する工程とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の煉瓦造建造物の補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現存する多くの煉瓦造建造物は耐震性が低いため、地震多発国である日本では、煉瓦造建造物に対して構造補強を施す必要がある。煉瓦壁面に鋼板や炭素繊維シートなどを貼り付ける補強方法が一般的であるが、外観や内観に構造材が露出するため、意匠的にも、また建造物を活用するうえにおいても問題となっている。
【0003】
そこで、外観や内観に構造材が露出しない補強方法として、特許文献1では、立体格子状に構成した補強ユニットを組積体間の目地部内に挿入し、当該補強ユニットを目地材で固定する補強組積構造の発明が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、アラミド繊維や炭素繊維からなる補強材を目地部のみに配置するレンガ造壁面の剥落防止工法の発明が開示されている。この発明では、補強材について各種の形状パターンを予め工場で製造しておき、工事現場において、これら補強材ネットを切断して配置するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−71617号公報
【特許文献2】特開2003−293693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された発明の場合、補強ユニットが立体格子であるため、目地部に深い溝を形成しなければ補強ユニットを挿入できず、施工に手間が掛かるという問題がある。一方、特許文献2に記載された発明は、補強材ネットを目地部に貼り付けるだけなので強度的に難点があるうえ、補強範囲が広い場合、複数の補強材ネットを貼り付けなければならず、強度的に弱い接合部が複数発生するという問題がある。
【0007】
また、現場施工による煉瓦造建造物は不可避的に施工誤差を伴うため、特許文献1や特許文献2に記載された発明のように、予め製造した補強ユニットや補強材ネットを使用した場合、補強ユニットや補強材ネットの設置位置が所定位置からずれるおそれがあるだけでなく、イギリス積みやフランス積みによる煉瓦造建造物では煉瓦の長手面と小口面が現れるため、補強ユニットや補強材ネットの形状が複雑になってコストアップが避けられないという問題もある。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、施工が容易で、外観や内観に構造材が露出せず、しかも高い補強効果を示す煉瓦造建造物の補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明は、繊維強化プラスチックロッドからなる水平補強材及び鉛直補強材を既存の煉瓦造建造物の目地部に埋設することにより煉瓦造建造物を補強する方法であって、水平な前記目地部に沿って水平溝部を形成すると共に、前記水平溝部と連通する鉛直溝部を鉛直な前記目地部に沿って形成する工程と、前記水平溝部及び前記鉛直溝部の各底部に充填材を充填する工程と、前記鉛直補強材の少なくとも一方の端部に形成された折り曲げ部を前記水平溝部に充填された前記充填材にセットすると共に、該鉛直補強材の非折り曲げ部を前記鉛直溝部に充填された前記充填材にセットした後、前記水平補強材を前記水平溝部にセットする工程と、前記水平溝部及び前記鉛直溝部に前記充填材を充填して該水平溝部及び該鉛直溝部を封止する工程とを備えることを特徴としている。
【0010】
また、第2の発明は、繊維強化プラスチックロッドからなる水平補強材及び鉛直補強材を既存の煉瓦造建造物の目地部に埋設することにより煉瓦造建造物を補強する方法であって、水平な前記目地部に沿って水平溝部を形成すると共に、前記水平溝部と連通する鉛直溝部を鉛直な前記目地部に沿って形成する工程と、前記水平溝部及び前記鉛直溝部の各底部に充填材を充填する工程と、前記水平補強材を前記水平溝部に充填された前記充填材にセットした後、前記鉛直補強材の少なくとも一方の端部に形成された折り曲げ部を前記水平溝部にセットすると共に、該鉛直補強材の非折り曲げ部を前記鉛直溝部にセットする工程と、前記水平溝部及び前記鉛直溝部に前記充填材を充填して該水平溝部及び該鉛直溝部を封止する工程とを備えることを特徴としている。
【0011】
ここで、水平補強材又は鉛直補強材を「充填材にセット」するとは、水平補強材又は鉛直補強材を充填材に押し込む場合と、水平補強材又は鉛直補強材を充填材上に配置する場合とを含んでいる。
【0012】
第1及び第2の発明に係る煉瓦造建造物の補強方法では、水平補強材と鉛直補強材が予め一体化されていないので、施工誤差を有する煉瓦造建造物に対しても容易に対応することができる。その際、鉛直補強材の少なくとも一方の端部に形成された折り曲げ部を水平補強材に沿わせるので、施工後における水平補強材と鉛直補強材とが一体化され、煉瓦造建造物の耐震強度を増大させることができる。
【0013】
また、第1及び第2の発明に係る煉瓦造建造物の補強方法では、前記水平補強材は、前記鉛直補強材と同径もしくは前記鉛直補強材より大径であってもよい。
過去の地震被害では、壁頂部からの面外曲げ破壊によって倒壊している煉瓦造建造物が数多く確認されている。第1及び第2の発明では、煉瓦造建造物の面外曲げ破壊(特に、水平方向に延在する煉瓦壁において最も発生しやすい、水平両端部を支点として中央部が面外に変形する水平面内の曲げ破壊)を防止するため、水平面内の曲げに対して主として抵抗する水平補強材を鉛直補強材と同径もしくは大径としている。
【0014】
また、第1及び第2の発明に係る煉瓦造建造物の補強方法では、前記充填材が樹脂モルタルであることが好ましい。
樹脂モルタルは、短時間に高い強度が得られるだけでなく、体積変化が少なく無収縮性であるなど補強材料として優れた特性を有している。
【0015】
また、第1及び第2の発明に係る煉瓦造建造物の補強方法では、前記繊維強化プラスチックロッドを構成する繊維が、アラミド繊維又は炭素繊維であることを好適とする。
アラミド繊維や炭素繊維は高引張強度かつ高剛性を有するため、アラミド繊維又は炭素繊維を用いて繊維強化プラスチックロッドを形成することにより、高い引張強度を有する補強材とすることができる。
【0016】
また、第1及び第2の発明に係る煉瓦造建造物の補強方法では、前記水平溝部及び前記鉛直溝部を封止する充填材の表面に紫外線防止剤を塗布することを好適とする。
繊維強化プラスチックロッドを構成する繊維、なかでもアラミド繊維は、紫外線を浴びると変色して強度が低下するため、補強材を被覆する充填材の表面に紫外線防止剤を塗布することにより、補強材の劣化を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る煉瓦造建造物の補強方法では、繊維強化プラスチックロッドからなる水平補強材及び鉛直補強材を既存の煉瓦造建造物の目地部にそれぞれ埋設するので、外観や内観に構造材が露出しないだけでなく、施工誤差を有する煉瓦造建造物に対しても容易に施工することができる。また、鉛直補強材の少なくとも一方の端部に形成された折り曲げ部を水平補強材に沿わせるので、施工後における水平補強材と鉛直補強材とが一体化され、煉瓦造建造物の耐震強度を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る煉瓦造建造物の補強方法によって補強された煉瓦壁を正面から見た模式図である。
【図2】図1のA−A矢視断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る煉瓦造建造物の補強方法の一工程を示した煉瓦壁の部分縦断面図である。
【図4】同補強方法の一工程を示した同煉瓦壁の部分縦断面図である。
【図5】同補強方法の一工程を示した同煉瓦壁の部分縦断面図である。
【図6】同補強方法の一工程を示した同煉瓦壁の部分縦断面図である。
【図7】同補強方法の一工程を示した同煉瓦壁の部分縦断面図である。
【図8】同補強方法に対する煉瓦壁の施工誤差の影響を説明するための模式図である。
【図9】変形例に係る鉛直補強材を使用した際における煉瓦壁の施工誤差の影響について説明するための模式図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る煉瓦造建造物の補強方法によって補強された煉瓦壁を正面から見た模式図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る煉瓦造建造物の補強方法によって補強された煉瓦壁を正面から見た模式図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る煉瓦造建造物の補強方法によって補強された煉瓦壁を正面から見た模式図である。
【図13】図12のB−B矢視断面図である。
【図14】同補強方法の一工程を示した同煉瓦壁の部分縦断面図である。
【図15】同補強方法の一工程を示した同煉瓦壁の部分縦断面図である。
【図16】同補強方法の一工程を示した同煉瓦壁の部分縦断面図である。
【図17】煉瓦壁の耐力試験に使用した試験体を正面から見た模式図を示し、(A)は実施例1、(B)は比較例1である。
【図18】煉瓦壁の加力方法を説明するための模式図である。
【図19】目地材に石灰を含むモルタルを使用した試験体の荷重−変位曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態に付き説明し、本発明の理解に供する。
【0020】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態に係る煉瓦造建造物の補強方法によって補強された煉瓦壁10(煉瓦造建造物の一例)を正面から見た模式図を図1に、図1のA−A矢視断面図(最上部と最下部は図示省略)を図2に示す。水平補強材14は水平目地部12に、鉛直補強材15は鉛直目地部13にそれぞれ埋設されるため、図1では水平補強材14及び鉛直補強材15(非折り曲げ部15a)は隠れ線で示すべきであるが、水平補強材14及び鉛直補強材15の設置位置を明確にするため実線で示している。
【0021】
ここでは、イギリス積みの煉瓦壁を例に採り、本発明の第1の実施の形態に係る煉瓦造建造物の補強方法について説明する。なお、イギリス積みとは、煉瓦壁を正面から見た際に、煉瓦の長手面のみが現れる段と小口面のみが現れる段とが交互になるように煉瓦を積む方式であり、一つの段で長手面と小口面が交互に現れるフランス積みに比べて強度が高く、使う煉瓦も少なくて済むといわれており、土木構造物や鉄道関連の施設によく見られる。
【0022】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る煉瓦造建造物の補強方法では、補強すべき領域に含まれる全ての水平目地部12に、繊維強化プラスチックロッドからなる水平補強材14を埋設すると共に、補強すべき領域に含まれる鉛直目地部13に対しては、煉瓦11の長手面のみが現れる段の全ての鉛直目地部13と、小口面のみが現れる段についてほぼ1つおきに選ばれた鉛直目地部13に、繊維強化プラスチックロッドからなる鉛直補強材15を埋設する。
後述するように、鉛直補強材15の折り曲げ部15b及び水平補強材14は水平目地部12に沿って形成された水平溝部20内に、鉛直補強材15の非折り曲げ部15aは鉛直目地部13に沿って形成された鉛直溝部21内にそれぞれ配置され、水平溝部20及び鉛直溝部21は充填材18によって封止される(図2参照)。
【0023】
鉛直補強材15は、水平補強材14と同径もしくは水平補強材14より小径としても良い。鉛直補強材15は、両端部が同一方向に折り曲げられて各々折り曲げ部15bを形成し、平面視してコ字状とされている。鉛直補強材15を配置する際は、鉛直補強材15の折り曲げ部15bを、鉛直溝部21に連通する水平溝部20内に配置し、鉛直補強材15の中間部を構成する非折り曲げ部15aを鉛直溝部21内に配置する。
【0024】
水平補強材14及び鉛直補強材15を構成する繊維強化プラスチックロッドは、長さ方向に引き揃えられた多数の強化用繊維に樹脂を含浸させて固めた直径3mm〜15mm程度の丸棒である。強化用繊維としては、高引張強度かつ高剛性を有するアラミド繊維や炭素繊維などが用いられる。例えば、パラ系アラミド繊維であるポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(東レ・デュポン株式会社製、「ケブラー」(登録商標))を組紐状に編み、エポキシ樹脂で硬化させた「フィブラ・AFRPロッド」(ファイベックス株式会社製)は、軽量、高強度、高弾性、且つ耐久性にも優れ、水平補強材14及び鉛直補強材15として使用することができる。
【0025】
充填材18としては、例えばエポキシ樹脂などの合成樹脂やセメントスラリー、無収縮モルタルなどの無機系充填材、あるいはモルタルと合成樹脂とを混合した樹脂モルタルなどを使用することができる。なかでも、樹脂モルタルは、短時間に高い強度が得られ、体積変化が少なく無収縮性であることに加え、合成樹脂に比べて安価な材料である。また、可使時間(混練から硬化までの時間)の制御も可能である。樹脂モルタルの配合例を表1に、同樹脂モルタルの性能試験結果を表2に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る煉瓦造建造物の補強方法について詳細に説明する。
(1)既存の煉瓦壁10を構成する煉瓦11が汚損や損傷しないように、煉瓦11の表面に養生テープ22を貼り付ける(図3参照)。
(2)補強すべき領域に含まれる全ての水平目地部12について、水平目地部12に沿う水平溝部20をグラインダー等を用いて形成する(図3参照)。水平溝部20の幅は水平目地部12と同じ幅とする。また、補強すべき領域に含まれる、煉瓦11の長手面のみが現れる段の全ての鉛直目地部13と、小口面のみが現れる段のほぼ1つおきに選ばれた鉛直目地部13について、鉛直目地部13に沿う鉛直溝部21をグラインダー等を用いて形成する(図3参照)。鉛直溝部21の幅は鉛直目地部13と同じ幅とする。なお、水平溝部20と鉛直溝部21は連通させ、同じ深さ(煉瓦11の表面から40〜70mm程度の深さ)とする。
【0029】
(3)水平溝部20及び鉛直溝部21内を清掃し、水平溝部20及び鉛直溝部21の表面にプライマー19を塗布する(図4参照)。プライマー19は、充填材18と煉瓦11並びに水平目地部12及び鉛直目地部13との密着性を高めるために塗布するが、必ずしも塗る必要はない。
(4)水平溝部20及び鉛直溝部21の各底部に充填材18をコーキングガン等で充填する。その際、充填材18の厚さは10〜30mm程度とする。
(5)ある程度、充填材18が硬化した時点で、鉛直補強材15の一方の端部に形成された折り曲げ部15bを、鉛直溝部21に連通する一方の水平溝部20に、他方の端部に形成された折り曲げ部15bを、鉛直溝部21に連通する他方の水平溝部20に、鉛直補強材15の非折り曲げ部15aを鉛直溝部21にそれぞれ配置し、鉛直補強材15を充填材18に押し込んで仮止めする(図5参照)。
【0030】
(6)水平補強材14を鉛直補強材15の折り曲げ部15bに沿って水平溝部20内に配置する。そして、コーキングガン等を用いて、水平補強材14を、ほぼ硬化した充填材18に充填材18を介して300〜500mm間隔で仮止めする(図6参照)。
なお、必ずしも水平補強材14及び/又は鉛直補強材15を充填材18で水平溝部20又は鉛直溝部21内に仮止めする必要はないが、仮止めすることにより、施工中に水平補強材14や鉛直補強材15が落下せず作業性が向上する。
(7)水平溝部20及び鉛直溝部21に充填材18をコーキングガン等で充填して水平溝部20及び鉛直溝部21を封止する(図7参照)。その際、水平補強材14に対する充填材18の被り厚は10〜30mm程度とする。
【0031】
なお、充填材18としてエポキシ樹脂等を使用する場合は、水平溝部20及び鉛直溝部21を封止する充填材18の表面に紫外線防止剤(図示省略)を塗布することが好ましい。紫外線防止剤としては、例えばフッ素系樹脂塗料などを使用することができる。
【0032】
また、予想される損傷程度などに応じて煉瓦壁10を複数の領域に分け、領域によって補強の程度を変えても良い。即ち、水平補強材14、鉛直補強材15、及び充填材18で目地部を補強する領域と、水平補強材14及び充填材18で目地部を補強する領域と、充填材18のみで目地部を補強する領域と、既存のままの領域とを組み合わせて煉瓦壁10を補強しても良い。
【0033】
煉瓦壁10の縦断面図(図2、図7等)では、煉瓦11と充填材18の表面が面一となるように描いているが、既存の目地部表面と連続性を持たせるため、充填材18の表面が煉瓦11表面から5〜10mmセットバックした位置となるようにして補強前と同じ意匠に復元することが好ましい。
【0034】
なお、水平溝部20及び鉛直溝部21の深さは、煉瓦11の表面から40〜70mm程度としたが、具体的には、水平溝部20及び鉛直溝部21の底部に充填する充填材18の厚さ、充填材18への鉛直補強材15の押し込み量、水平補強材14及び鉛直補強材15の径、水平補強材14に対する充填材18の被り厚、さらには煉瓦11表面に対する充填材18表面のセットバック量から決定される。
【0035】
ところで、現場施工による煉瓦壁は不可避的に施工誤差を伴うものであるが、施工誤差が大きい場合について説明しておく。
図8は、煉瓦11の上縁に沿って形成された水平目地部12uと煉瓦11の下縁に沿って形成された水平目地部12dの幅が異なる場合を示したものである。同図で示されるように、コ字状の鉛直補強材15を使用することにより、一部の目地幅が異なっても、規定の鉛直補強材15で対応することができる。
【0036】
また、図9は、一部の煉瓦11’のサイズが異なる場合を示したものである。この場合は、コ字状の鉛直補強材15に代えて、一方の端部のみに折り曲げ部16bが形成された平面視してL字状の鉛直補強材16を使用すればよい。具体的には、煉瓦11’の上縁に沿って形成された水平目地部12u’に、一方の鉛直補強材16の折り曲げ部16bをセットし、折り曲げ部16bに沿って水平補強材14uを配置すると共に、一方の鉛直補強材16の非折り曲げ部16aを鉛直目地部13内にセットする。また、煉瓦11’の下縁に沿って形成された水平目地部12d’に、他方の鉛直補強材16の折り曲げ部16bをセットし、折り曲げ部16bに沿って水平補強材14dを配置すると共に、他方の鉛直補強材16の非折り曲げ部16aを鉛直目地部13内にセットする。従って、鉛直目地部13内では、2本の鉛直補強材16の非折り曲げ部16aが重なり合う状態となる。
【0037】
[第2及び第3の実施の形態]
図10及び図11は、それぞれ本発明の第2及び第3の実施の形態に係る煉瓦壁の補強方法によって補強された煉瓦壁10を示したものである。
図10に示す第2の実施の形態では、補強すべき領域に含まれる全ての水平目地部12に水平補強材14が埋設されると共に、補強すべき領域に含まれる全ての鉛直目地部13にコ字状の鉛直補強材15が埋設される。その際、煉瓦11の長手面のみが現れる段の鉛直目地部13については、鉛直目地部13に関して鉛直補強材15が左右対称となるように2本の鉛直補強材15を埋設する。
また、図11に示す第3の実施の形態では、一方の端部に形成される折り曲げ部17bと他方の端部に形成される折り曲げ部17cが正反対の方向に折り曲げられた、平面視して階段状とされた鉛直補強材17を、コ字状の鉛直補強材15に代えて使用している。なお、17aは非折り曲げ部である。
【0038】
[第4の実施の形態]
本発明の第4の実施の形態に係る煉瓦造建造物の補強方法によって補強された煉瓦壁10(煉瓦造建造物の一例)を正面から見た模式図を図12に、図12のB−B矢視断面図(最上部と最下部は図示省略)を図13に示す。なお、図1と同様、図12では水平補強材14及び鉛直補強材15を隠れ線で示すべきであるが、水平補強材14及び鉛直補強材15の設置位置を明確にするため実線で示している。
【0039】
本実施の形態では、水平溝部20に水平補強材14を配置した後、水平溝部20及び鉛直溝部21に鉛直補強材15を配置する点が第1〜第3の実施の形態と異なっている(図13参照)。以下、その施工方法について説明する。
(1)既存の煉瓦壁10を構成する煉瓦11が汚損や損傷しないように、煉瓦11の表面に養生テープ22を貼り付ける(図14参照)。そして、補強すべき領域に含まれる全ての水平目地部12について、水平目地部12に沿う水平溝部20をグラインダー等を用いて形成すると共に、補強すべき領域に含まれる、煉瓦11の長手面のみが現れる段の全ての鉛直目地部13と、小口面のみが現れる段のほぼ1つおきに選ばれた鉛直目地部13について、水平溝部20と連通する鉛直溝部21をグラインダー等を用いて鉛直目地部13に沿って形成する(図14参照)。水平溝部20と鉛直溝部21の深さは煉瓦11の表面から40〜70mm程度とする。
(2)水平溝部20及び鉛直溝部21内を清掃し、水平溝部20及び鉛直溝部21の表面にプライマー19を塗布する(図14参照)。
(3)水平溝部20及び鉛直溝部21の各底部に充填材18をコーキングガン等で充填する。その際、充填材18の厚さは10〜30mm程度とする。
【0040】
(4)ある程度、充填材18が硬化した時点で、水平補強材14を水平溝部20内に配置し、充填材18に押し込んで仮止めする(図14参照)。
(5)鉛直補強材15の一方の端部に形成された折り曲げ部15bを、鉛直溝部21に連通する一方の水平溝部20にセットされた水平補強材14に沿わせると共に、鉛直補強材15の他方の端部に形成された折り曲げ部15bを、鉛直溝部21に連通する他方の水平溝部20にセットされた水平補強材14に沿わせた状態で、鉛直補強材15の非折り曲げ部15aを鉛直溝部21内に配置する(図15参照)。そして、コーキングガン等を用いて、鉛直補強材15を、ほぼ硬化した充填材18に充填材18を介して仮止めする。
(6)水平溝部20及び鉛直溝部21に充填材18をコーキングガン等で充填して水平溝部20及び鉛直溝部21を封止する(図16参照)。その際、鉛直補強材15に対する充填材18の被り厚は10〜30mm程度とする。
【0041】
なお、充填材18としてエポキシ樹脂等を使用する場合は、水平溝部20及び鉛直溝部21を封止する充填材18の表面に紫外線防止剤(図示省略)を塗布することが好ましい。
【実施例】
【0042】
次に、本発明に係る煉瓦造建造物の補強方法によって補強された煉瓦壁の補強効果を確認するために実施した耐力試験について説明する。
図17に試験体の形状を示す。本補強方法によって補強された実施例1である煉瓦壁23を図17(A)に、比較例1として無補強の煉瓦壁24を図17(B)にそれぞれ示す。使用した煉瓦25のサイズは、長手方向210mm×短手方向100mm×高さ60mmである。目地材は石灰を含むモルタルとし、目地幅は10mmとした。
【0043】
試験体は、煉瓦壁の目地部を補強した実施例1、無補強の煉瓦壁である比較例1の計2体である。水平補強材26には、公称直径5.7mmのフィブラ・AFRPロッド(ファイベックス株式会社製)RA5を、鉛直補強材27には、公称直径2.7mmのフィブラ・AFRPロッド(ファイベックス株式会社製)RA3を使用し、煉瓦壁23の一方の面のみ補強した。また、水平溝部及び鉛直溝部に充填する充填材には、表1及び表2に示した樹脂モルタルを使用した。
【0044】
図18に加力方法を示す。試験体である各煉瓦壁23、24は、滑り摩擦の小さなPTFE板(図示省略)上に載置され、煉瓦壁23、24の水平方向両端部を支持点29として、煉瓦壁23、24の中央部に2箇所設けられた加力点28を介して油圧アクチュエータ(図示省略)により、煉瓦壁23、24を面外方向に漸増加力した。また、油圧アクチュエータの先端部にロードセル(図示省略)を設置して負荷荷重を逐次計測すると共に、煉瓦壁23、24の両端部及び中央部に差動トランス式の変位計30を設置して煉瓦壁23、24の変形量を逐次計測した。
【0045】
試験体の荷重−変位曲線を図19に示す。実施例1は、荷重59.5kNで、曲げひび割れが発生した後も耐力が上昇した。そして、荷重88.4kNで、せん断ひび割れが発生し、荷重96.5kNで、一方の支持点29がわ端部においてせん断破壊した。なお、曲げひび割れの進展はなかった。
一方、比較例1は、荷重28.4kNで、煉瓦壁の中央部に縦方向の曲げひび割れが発生し、直ちに面外曲げ破壊した。
これらの実験より、本補強方法により補強された煉瓦壁は面外曲げ破壊せず、高い耐力を示すことが明らかとなった。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、煉瓦造建造物として煉瓦壁を例に採り説明したが、煉瓦造の柱や橋脚などにも本補強方法が適用できることは言うまでもない。同様に、上記実施の形態では、イギリス積みの煉瓦壁を例に採り説明したが、フランス積みや長手積み、小口積みなど他の形式の煉瓦積みにも本発明が適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
10、23、24:煉瓦壁(煉瓦造建造物の一例)、11、11’、25:煉瓦、12、12u、12d、12u’、12d’:水平目地部、13:鉛直目地部、14、14u、14d、26:水平補強材、15、16、17、27:鉛直補強材、15a、16a、17a:非折り曲げ部、15b、16b、17b、17c:折り曲げ部、18:充填材、19:プライマー、20:水平溝部、21:鉛直溝部、22:養生テープ、28:加力点、29:支持点、30:変位計
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の煉瓦造建造物の補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現存する多くの煉瓦造建造物は耐震性が低いため、地震多発国である日本では、煉瓦造建造物に対して構造補強を施す必要がある。煉瓦壁面に鋼板や炭素繊維シートなどを貼り付ける補強方法が一般的であるが、外観や内観に構造材が露出するため、意匠的にも、また建造物を活用するうえにおいても問題となっている。
【0003】
そこで、外観や内観に構造材が露出しない補強方法として、特許文献1では、立体格子状に構成した補強ユニットを組積体間の目地部内に挿入し、当該補強ユニットを目地材で固定する補強組積構造の発明が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、アラミド繊維や炭素繊維からなる補強材を目地部のみに配置するレンガ造壁面の剥落防止工法の発明が開示されている。この発明では、補強材について各種の形状パターンを予め工場で製造しておき、工事現場において、これら補強材ネットを切断して配置するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−71617号公報
【特許文献2】特開2003−293693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された発明の場合、補強ユニットが立体格子であるため、目地部に深い溝を形成しなければ補強ユニットを挿入できず、施工に手間が掛かるという問題がある。一方、特許文献2に記載された発明は、補強材ネットを目地部に貼り付けるだけなので強度的に難点があるうえ、補強範囲が広い場合、複数の補強材ネットを貼り付けなければならず、強度的に弱い接合部が複数発生するという問題がある。
【0007】
また、現場施工による煉瓦造建造物は不可避的に施工誤差を伴うため、特許文献1や特許文献2に記載された発明のように、予め製造した補強ユニットや補強材ネットを使用した場合、補強ユニットや補強材ネットの設置位置が所定位置からずれるおそれがあるだけでなく、イギリス積みやフランス積みによる煉瓦造建造物では煉瓦の長手面と小口面が現れるため、補強ユニットや補強材ネットの形状が複雑になってコストアップが避けられないという問題もある。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、施工が容易で、外観や内観に構造材が露出せず、しかも高い補強効果を示す煉瓦造建造物の補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明は、繊維強化プラスチックロッドからなる水平補強材及び鉛直補強材を既存の煉瓦造建造物の目地部に埋設することにより煉瓦造建造物を補強する方法であって、水平な前記目地部に沿って水平溝部を形成すると共に、前記水平溝部と連通する鉛直溝部を鉛直な前記目地部に沿って形成する工程と、前記水平溝部及び前記鉛直溝部の各底部に充填材を充填する工程と、前記鉛直補強材の少なくとも一方の端部に形成された折り曲げ部を前記水平溝部に充填された前記充填材にセットすると共に、該鉛直補強材の非折り曲げ部を前記鉛直溝部に充填された前記充填材にセットした後、前記水平補強材を前記水平溝部にセットする工程と、前記水平溝部及び前記鉛直溝部に前記充填材を充填して該水平溝部及び該鉛直溝部を封止する工程とを備えることを特徴としている。
【0010】
また、第2の発明は、繊維強化プラスチックロッドからなる水平補強材及び鉛直補強材を既存の煉瓦造建造物の目地部に埋設することにより煉瓦造建造物を補強する方法であって、水平な前記目地部に沿って水平溝部を形成すると共に、前記水平溝部と連通する鉛直溝部を鉛直な前記目地部に沿って形成する工程と、前記水平溝部及び前記鉛直溝部の各底部に充填材を充填する工程と、前記水平補強材を前記水平溝部に充填された前記充填材にセットした後、前記鉛直補強材の少なくとも一方の端部に形成された折り曲げ部を前記水平溝部にセットすると共に、該鉛直補強材の非折り曲げ部を前記鉛直溝部にセットする工程と、前記水平溝部及び前記鉛直溝部に前記充填材を充填して該水平溝部及び該鉛直溝部を封止する工程とを備えることを特徴としている。
【0011】
ここで、水平補強材又は鉛直補強材を「充填材にセット」するとは、水平補強材又は鉛直補強材を充填材に押し込む場合と、水平補強材又は鉛直補強材を充填材上に配置する場合とを含んでいる。
【0012】
第1及び第2の発明に係る煉瓦造建造物の補強方法では、水平補強材と鉛直補強材が予め一体化されていないので、施工誤差を有する煉瓦造建造物に対しても容易に対応することができる。その際、鉛直補強材の少なくとも一方の端部に形成された折り曲げ部を水平補強材に沿わせるので、施工後における水平補強材と鉛直補強材とが一体化され、煉瓦造建造物の耐震強度を増大させることができる。
【0013】
また、第1及び第2の発明に係る煉瓦造建造物の補強方法では、前記水平補強材は、前記鉛直補強材と同径もしくは前記鉛直補強材より大径であってもよい。
過去の地震被害では、壁頂部からの面外曲げ破壊によって倒壊している煉瓦造建造物が数多く確認されている。第1及び第2の発明では、煉瓦造建造物の面外曲げ破壊(特に、水平方向に延在する煉瓦壁において最も発生しやすい、水平両端部を支点として中央部が面外に変形する水平面内の曲げ破壊)を防止するため、水平面内の曲げに対して主として抵抗する水平補強材を鉛直補強材と同径もしくは大径としている。
【0014】
また、第1及び第2の発明に係る煉瓦造建造物の補強方法では、前記充填材が樹脂モルタルであることが好ましい。
樹脂モルタルは、短時間に高い強度が得られるだけでなく、体積変化が少なく無収縮性であるなど補強材料として優れた特性を有している。
【0015】
また、第1及び第2の発明に係る煉瓦造建造物の補強方法では、前記繊維強化プラスチックロッドを構成する繊維が、アラミド繊維又は炭素繊維であることを好適とする。
アラミド繊維や炭素繊維は高引張強度かつ高剛性を有するため、アラミド繊維又は炭素繊維を用いて繊維強化プラスチックロッドを形成することにより、高い引張強度を有する補強材とすることができる。
【0016】
また、第1及び第2の発明に係る煉瓦造建造物の補強方法では、前記水平溝部及び前記鉛直溝部を封止する充填材の表面に紫外線防止剤を塗布することを好適とする。
繊維強化プラスチックロッドを構成する繊維、なかでもアラミド繊維は、紫外線を浴びると変色して強度が低下するため、補強材を被覆する充填材の表面に紫外線防止剤を塗布することにより、補強材の劣化を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る煉瓦造建造物の補強方法では、繊維強化プラスチックロッドからなる水平補強材及び鉛直補強材を既存の煉瓦造建造物の目地部にそれぞれ埋設するので、外観や内観に構造材が露出しないだけでなく、施工誤差を有する煉瓦造建造物に対しても容易に施工することができる。また、鉛直補強材の少なくとも一方の端部に形成された折り曲げ部を水平補強材に沿わせるので、施工後における水平補強材と鉛直補強材とが一体化され、煉瓦造建造物の耐震強度を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る煉瓦造建造物の補強方法によって補強された煉瓦壁を正面から見た模式図である。
【図2】図1のA−A矢視断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る煉瓦造建造物の補強方法の一工程を示した煉瓦壁の部分縦断面図である。
【図4】同補強方法の一工程を示した同煉瓦壁の部分縦断面図である。
【図5】同補強方法の一工程を示した同煉瓦壁の部分縦断面図である。
【図6】同補強方法の一工程を示した同煉瓦壁の部分縦断面図である。
【図7】同補強方法の一工程を示した同煉瓦壁の部分縦断面図である。
【図8】同補強方法に対する煉瓦壁の施工誤差の影響を説明するための模式図である。
【図9】変形例に係る鉛直補強材を使用した際における煉瓦壁の施工誤差の影響について説明するための模式図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る煉瓦造建造物の補強方法によって補強された煉瓦壁を正面から見た模式図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る煉瓦造建造物の補強方法によって補強された煉瓦壁を正面から見た模式図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る煉瓦造建造物の補強方法によって補強された煉瓦壁を正面から見た模式図である。
【図13】図12のB−B矢視断面図である。
【図14】同補強方法の一工程を示した同煉瓦壁の部分縦断面図である。
【図15】同補強方法の一工程を示した同煉瓦壁の部分縦断面図である。
【図16】同補強方法の一工程を示した同煉瓦壁の部分縦断面図である。
【図17】煉瓦壁の耐力試験に使用した試験体を正面から見た模式図を示し、(A)は実施例1、(B)は比較例1である。
【図18】煉瓦壁の加力方法を説明するための模式図である。
【図19】目地材に石灰を含むモルタルを使用した試験体の荷重−変位曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態に付き説明し、本発明の理解に供する。
【0020】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態に係る煉瓦造建造物の補強方法によって補強された煉瓦壁10(煉瓦造建造物の一例)を正面から見た模式図を図1に、図1のA−A矢視断面図(最上部と最下部は図示省略)を図2に示す。水平補強材14は水平目地部12に、鉛直補強材15は鉛直目地部13にそれぞれ埋設されるため、図1では水平補強材14及び鉛直補強材15(非折り曲げ部15a)は隠れ線で示すべきであるが、水平補強材14及び鉛直補強材15の設置位置を明確にするため実線で示している。
【0021】
ここでは、イギリス積みの煉瓦壁を例に採り、本発明の第1の実施の形態に係る煉瓦造建造物の補強方法について説明する。なお、イギリス積みとは、煉瓦壁を正面から見た際に、煉瓦の長手面のみが現れる段と小口面のみが現れる段とが交互になるように煉瓦を積む方式であり、一つの段で長手面と小口面が交互に現れるフランス積みに比べて強度が高く、使う煉瓦も少なくて済むといわれており、土木構造物や鉄道関連の施設によく見られる。
【0022】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る煉瓦造建造物の補強方法では、補強すべき領域に含まれる全ての水平目地部12に、繊維強化プラスチックロッドからなる水平補強材14を埋設すると共に、補強すべき領域に含まれる鉛直目地部13に対しては、煉瓦11の長手面のみが現れる段の全ての鉛直目地部13と、小口面のみが現れる段についてほぼ1つおきに選ばれた鉛直目地部13に、繊維強化プラスチックロッドからなる鉛直補強材15を埋設する。
後述するように、鉛直補強材15の折り曲げ部15b及び水平補強材14は水平目地部12に沿って形成された水平溝部20内に、鉛直補強材15の非折り曲げ部15aは鉛直目地部13に沿って形成された鉛直溝部21内にそれぞれ配置され、水平溝部20及び鉛直溝部21は充填材18によって封止される(図2参照)。
【0023】
鉛直補強材15は、水平補強材14と同径もしくは水平補強材14より小径としても良い。鉛直補強材15は、両端部が同一方向に折り曲げられて各々折り曲げ部15bを形成し、平面視してコ字状とされている。鉛直補強材15を配置する際は、鉛直補強材15の折り曲げ部15bを、鉛直溝部21に連通する水平溝部20内に配置し、鉛直補強材15の中間部を構成する非折り曲げ部15aを鉛直溝部21内に配置する。
【0024】
水平補強材14及び鉛直補強材15を構成する繊維強化プラスチックロッドは、長さ方向に引き揃えられた多数の強化用繊維に樹脂を含浸させて固めた直径3mm〜15mm程度の丸棒である。強化用繊維としては、高引張強度かつ高剛性を有するアラミド繊維や炭素繊維などが用いられる。例えば、パラ系アラミド繊維であるポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(東レ・デュポン株式会社製、「ケブラー」(登録商標))を組紐状に編み、エポキシ樹脂で硬化させた「フィブラ・AFRPロッド」(ファイベックス株式会社製)は、軽量、高強度、高弾性、且つ耐久性にも優れ、水平補強材14及び鉛直補強材15として使用することができる。
【0025】
充填材18としては、例えばエポキシ樹脂などの合成樹脂やセメントスラリー、無収縮モルタルなどの無機系充填材、あるいはモルタルと合成樹脂とを混合した樹脂モルタルなどを使用することができる。なかでも、樹脂モルタルは、短時間に高い強度が得られ、体積変化が少なく無収縮性であることに加え、合成樹脂に比べて安価な材料である。また、可使時間(混練から硬化までの時間)の制御も可能である。樹脂モルタルの配合例を表1に、同樹脂モルタルの性能試験結果を表2に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る煉瓦造建造物の補強方法について詳細に説明する。
(1)既存の煉瓦壁10を構成する煉瓦11が汚損や損傷しないように、煉瓦11の表面に養生テープ22を貼り付ける(図3参照)。
(2)補強すべき領域に含まれる全ての水平目地部12について、水平目地部12に沿う水平溝部20をグラインダー等を用いて形成する(図3参照)。水平溝部20の幅は水平目地部12と同じ幅とする。また、補強すべき領域に含まれる、煉瓦11の長手面のみが現れる段の全ての鉛直目地部13と、小口面のみが現れる段のほぼ1つおきに選ばれた鉛直目地部13について、鉛直目地部13に沿う鉛直溝部21をグラインダー等を用いて形成する(図3参照)。鉛直溝部21の幅は鉛直目地部13と同じ幅とする。なお、水平溝部20と鉛直溝部21は連通させ、同じ深さ(煉瓦11の表面から40〜70mm程度の深さ)とする。
【0029】
(3)水平溝部20及び鉛直溝部21内を清掃し、水平溝部20及び鉛直溝部21の表面にプライマー19を塗布する(図4参照)。プライマー19は、充填材18と煉瓦11並びに水平目地部12及び鉛直目地部13との密着性を高めるために塗布するが、必ずしも塗る必要はない。
(4)水平溝部20及び鉛直溝部21の各底部に充填材18をコーキングガン等で充填する。その際、充填材18の厚さは10〜30mm程度とする。
(5)ある程度、充填材18が硬化した時点で、鉛直補強材15の一方の端部に形成された折り曲げ部15bを、鉛直溝部21に連通する一方の水平溝部20に、他方の端部に形成された折り曲げ部15bを、鉛直溝部21に連通する他方の水平溝部20に、鉛直補強材15の非折り曲げ部15aを鉛直溝部21にそれぞれ配置し、鉛直補強材15を充填材18に押し込んで仮止めする(図5参照)。
【0030】
(6)水平補強材14を鉛直補強材15の折り曲げ部15bに沿って水平溝部20内に配置する。そして、コーキングガン等を用いて、水平補強材14を、ほぼ硬化した充填材18に充填材18を介して300〜500mm間隔で仮止めする(図6参照)。
なお、必ずしも水平補強材14及び/又は鉛直補強材15を充填材18で水平溝部20又は鉛直溝部21内に仮止めする必要はないが、仮止めすることにより、施工中に水平補強材14や鉛直補強材15が落下せず作業性が向上する。
(7)水平溝部20及び鉛直溝部21に充填材18をコーキングガン等で充填して水平溝部20及び鉛直溝部21を封止する(図7参照)。その際、水平補強材14に対する充填材18の被り厚は10〜30mm程度とする。
【0031】
なお、充填材18としてエポキシ樹脂等を使用する場合は、水平溝部20及び鉛直溝部21を封止する充填材18の表面に紫外線防止剤(図示省略)を塗布することが好ましい。紫外線防止剤としては、例えばフッ素系樹脂塗料などを使用することができる。
【0032】
また、予想される損傷程度などに応じて煉瓦壁10を複数の領域に分け、領域によって補強の程度を変えても良い。即ち、水平補強材14、鉛直補強材15、及び充填材18で目地部を補強する領域と、水平補強材14及び充填材18で目地部を補強する領域と、充填材18のみで目地部を補強する領域と、既存のままの領域とを組み合わせて煉瓦壁10を補強しても良い。
【0033】
煉瓦壁10の縦断面図(図2、図7等)では、煉瓦11と充填材18の表面が面一となるように描いているが、既存の目地部表面と連続性を持たせるため、充填材18の表面が煉瓦11表面から5〜10mmセットバックした位置となるようにして補強前と同じ意匠に復元することが好ましい。
【0034】
なお、水平溝部20及び鉛直溝部21の深さは、煉瓦11の表面から40〜70mm程度としたが、具体的には、水平溝部20及び鉛直溝部21の底部に充填する充填材18の厚さ、充填材18への鉛直補強材15の押し込み量、水平補強材14及び鉛直補強材15の径、水平補強材14に対する充填材18の被り厚、さらには煉瓦11表面に対する充填材18表面のセットバック量から決定される。
【0035】
ところで、現場施工による煉瓦壁は不可避的に施工誤差を伴うものであるが、施工誤差が大きい場合について説明しておく。
図8は、煉瓦11の上縁に沿って形成された水平目地部12uと煉瓦11の下縁に沿って形成された水平目地部12dの幅が異なる場合を示したものである。同図で示されるように、コ字状の鉛直補強材15を使用することにより、一部の目地幅が異なっても、規定の鉛直補強材15で対応することができる。
【0036】
また、図9は、一部の煉瓦11’のサイズが異なる場合を示したものである。この場合は、コ字状の鉛直補強材15に代えて、一方の端部のみに折り曲げ部16bが形成された平面視してL字状の鉛直補強材16を使用すればよい。具体的には、煉瓦11’の上縁に沿って形成された水平目地部12u’に、一方の鉛直補強材16の折り曲げ部16bをセットし、折り曲げ部16bに沿って水平補強材14uを配置すると共に、一方の鉛直補強材16の非折り曲げ部16aを鉛直目地部13内にセットする。また、煉瓦11’の下縁に沿って形成された水平目地部12d’に、他方の鉛直補強材16の折り曲げ部16bをセットし、折り曲げ部16bに沿って水平補強材14dを配置すると共に、他方の鉛直補強材16の非折り曲げ部16aを鉛直目地部13内にセットする。従って、鉛直目地部13内では、2本の鉛直補強材16の非折り曲げ部16aが重なり合う状態となる。
【0037】
[第2及び第3の実施の形態]
図10及び図11は、それぞれ本発明の第2及び第3の実施の形態に係る煉瓦壁の補強方法によって補強された煉瓦壁10を示したものである。
図10に示す第2の実施の形態では、補強すべき領域に含まれる全ての水平目地部12に水平補強材14が埋設されると共に、補強すべき領域に含まれる全ての鉛直目地部13にコ字状の鉛直補強材15が埋設される。その際、煉瓦11の長手面のみが現れる段の鉛直目地部13については、鉛直目地部13に関して鉛直補強材15が左右対称となるように2本の鉛直補強材15を埋設する。
また、図11に示す第3の実施の形態では、一方の端部に形成される折り曲げ部17bと他方の端部に形成される折り曲げ部17cが正反対の方向に折り曲げられた、平面視して階段状とされた鉛直補強材17を、コ字状の鉛直補強材15に代えて使用している。なお、17aは非折り曲げ部である。
【0038】
[第4の実施の形態]
本発明の第4の実施の形態に係る煉瓦造建造物の補強方法によって補強された煉瓦壁10(煉瓦造建造物の一例)を正面から見た模式図を図12に、図12のB−B矢視断面図(最上部と最下部は図示省略)を図13に示す。なお、図1と同様、図12では水平補強材14及び鉛直補強材15を隠れ線で示すべきであるが、水平補強材14及び鉛直補強材15の設置位置を明確にするため実線で示している。
【0039】
本実施の形態では、水平溝部20に水平補強材14を配置した後、水平溝部20及び鉛直溝部21に鉛直補強材15を配置する点が第1〜第3の実施の形態と異なっている(図13参照)。以下、その施工方法について説明する。
(1)既存の煉瓦壁10を構成する煉瓦11が汚損や損傷しないように、煉瓦11の表面に養生テープ22を貼り付ける(図14参照)。そして、補強すべき領域に含まれる全ての水平目地部12について、水平目地部12に沿う水平溝部20をグラインダー等を用いて形成すると共に、補強すべき領域に含まれる、煉瓦11の長手面のみが現れる段の全ての鉛直目地部13と、小口面のみが現れる段のほぼ1つおきに選ばれた鉛直目地部13について、水平溝部20と連通する鉛直溝部21をグラインダー等を用いて鉛直目地部13に沿って形成する(図14参照)。水平溝部20と鉛直溝部21の深さは煉瓦11の表面から40〜70mm程度とする。
(2)水平溝部20及び鉛直溝部21内を清掃し、水平溝部20及び鉛直溝部21の表面にプライマー19を塗布する(図14参照)。
(3)水平溝部20及び鉛直溝部21の各底部に充填材18をコーキングガン等で充填する。その際、充填材18の厚さは10〜30mm程度とする。
【0040】
(4)ある程度、充填材18が硬化した時点で、水平補強材14を水平溝部20内に配置し、充填材18に押し込んで仮止めする(図14参照)。
(5)鉛直補強材15の一方の端部に形成された折り曲げ部15bを、鉛直溝部21に連通する一方の水平溝部20にセットされた水平補強材14に沿わせると共に、鉛直補強材15の他方の端部に形成された折り曲げ部15bを、鉛直溝部21に連通する他方の水平溝部20にセットされた水平補強材14に沿わせた状態で、鉛直補強材15の非折り曲げ部15aを鉛直溝部21内に配置する(図15参照)。そして、コーキングガン等を用いて、鉛直補強材15を、ほぼ硬化した充填材18に充填材18を介して仮止めする。
(6)水平溝部20及び鉛直溝部21に充填材18をコーキングガン等で充填して水平溝部20及び鉛直溝部21を封止する(図16参照)。その際、鉛直補強材15に対する充填材18の被り厚は10〜30mm程度とする。
【0041】
なお、充填材18としてエポキシ樹脂等を使用する場合は、水平溝部20及び鉛直溝部21を封止する充填材18の表面に紫外線防止剤(図示省略)を塗布することが好ましい。
【実施例】
【0042】
次に、本発明に係る煉瓦造建造物の補強方法によって補強された煉瓦壁の補強効果を確認するために実施した耐力試験について説明する。
図17に試験体の形状を示す。本補強方法によって補強された実施例1である煉瓦壁23を図17(A)に、比較例1として無補強の煉瓦壁24を図17(B)にそれぞれ示す。使用した煉瓦25のサイズは、長手方向210mm×短手方向100mm×高さ60mmである。目地材は石灰を含むモルタルとし、目地幅は10mmとした。
【0043】
試験体は、煉瓦壁の目地部を補強した実施例1、無補強の煉瓦壁である比較例1の計2体である。水平補強材26には、公称直径5.7mmのフィブラ・AFRPロッド(ファイベックス株式会社製)RA5を、鉛直補強材27には、公称直径2.7mmのフィブラ・AFRPロッド(ファイベックス株式会社製)RA3を使用し、煉瓦壁23の一方の面のみ補強した。また、水平溝部及び鉛直溝部に充填する充填材には、表1及び表2に示した樹脂モルタルを使用した。
【0044】
図18に加力方法を示す。試験体である各煉瓦壁23、24は、滑り摩擦の小さなPTFE板(図示省略)上に載置され、煉瓦壁23、24の水平方向両端部を支持点29として、煉瓦壁23、24の中央部に2箇所設けられた加力点28を介して油圧アクチュエータ(図示省略)により、煉瓦壁23、24を面外方向に漸増加力した。また、油圧アクチュエータの先端部にロードセル(図示省略)を設置して負荷荷重を逐次計測すると共に、煉瓦壁23、24の両端部及び中央部に差動トランス式の変位計30を設置して煉瓦壁23、24の変形量を逐次計測した。
【0045】
試験体の荷重−変位曲線を図19に示す。実施例1は、荷重59.5kNで、曲げひび割れが発生した後も耐力が上昇した。そして、荷重88.4kNで、せん断ひび割れが発生し、荷重96.5kNで、一方の支持点29がわ端部においてせん断破壊した。なお、曲げひび割れの進展はなかった。
一方、比較例1は、荷重28.4kNで、煉瓦壁の中央部に縦方向の曲げひび割れが発生し、直ちに面外曲げ破壊した。
これらの実験より、本補強方法により補強された煉瓦壁は面外曲げ破壊せず、高い耐力を示すことが明らかとなった。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、煉瓦造建造物として煉瓦壁を例に採り説明したが、煉瓦造の柱や橋脚などにも本補強方法が適用できることは言うまでもない。同様に、上記実施の形態では、イギリス積みの煉瓦壁を例に採り説明したが、フランス積みや長手積み、小口積みなど他の形式の煉瓦積みにも本発明が適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
10、23、24:煉瓦壁(煉瓦造建造物の一例)、11、11’、25:煉瓦、12、12u、12d、12u’、12d’:水平目地部、13:鉛直目地部、14、14u、14d、26:水平補強材、15、16、17、27:鉛直補強材、15a、16a、17a:非折り曲げ部、15b、16b、17b、17c:折り曲げ部、18:充填材、19:プライマー、20:水平溝部、21:鉛直溝部、22:養生テープ、28:加力点、29:支持点、30:変位計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化プラスチックロッドからなる水平補強材及び鉛直補強材を既存の煉瓦造建造物の目地部に埋設することにより煉瓦造建造物を補強する方法であって、
水平な前記目地部に沿って水平溝部を形成すると共に、前記水平溝部と連通する鉛直溝部を鉛直な前記目地部に沿って形成する工程と、前記水平溝部及び前記鉛直溝部の各底部に充填材を充填する工程と、前記鉛直補強材の少なくとも一方の端部に形成された折り曲げ部を前記水平溝部に充填された前記充填材にセットすると共に、該鉛直補強材の非折り曲げ部を前記鉛直溝部に充填された前記充填材にセットした後、前記水平補強材を前記水平溝部にセットする工程と、前記水平溝部及び前記鉛直溝部に前記充填材を充填して該水平溝部及び該鉛直溝部を封止する工程とを備えることを特徴とする煉瓦造建造物の補強方法。
【請求項2】
繊維強化プラスチックロッドからなる水平補強材及び鉛直補強材を既存の煉瓦造建造物の目地部に埋設することにより煉瓦造建造物を補強する方法であって、
水平な前記目地部に沿って水平溝部を形成すると共に、前記水平溝部と連通する鉛直溝部を鉛直な前記目地部に沿って形成する工程と、前記水平溝部及び前記鉛直溝部の各底部に充填材を充填する工程と、前記水平補強材を前記水平溝部に充填された前記充填材にセットした後、前記鉛直補強材の少なくとも一方の端部に形成された折り曲げ部を前記水平溝部にセットすると共に、該鉛直補強材の非折り曲げ部を前記鉛直溝部にセットする工程と、前記水平溝部及び前記鉛直溝部に前記充填材を充填して該水平溝部及び該鉛直溝部を封止する工程とを備えることを特徴とする煉瓦造建造物の補強方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の煉瓦造建造物の補強方法において、前記水平補強材が前記鉛直補強材と同径もしくは前記鉛直補強材より大径であることを特徴とする煉瓦造建造物の補強方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の煉瓦造建造物の補強方法において、前記充填材が樹脂モルタルであることを特徴とする煉瓦造建造物の補強方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の煉瓦造建造物の補強方法において、前記繊維強化プラスチックロッドを構成する繊維が、アラミド繊維又は炭素繊維であることを特徴とする煉瓦造建造物の補強方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の煉瓦造建造物の補強方法において、前記水平溝部及び前記鉛直溝部を封止する充填材の表面に紫外線防止剤を塗布することを特徴とする煉瓦造建造物の補強方法。
【請求項1】
繊維強化プラスチックロッドからなる水平補強材及び鉛直補強材を既存の煉瓦造建造物の目地部に埋設することにより煉瓦造建造物を補強する方法であって、
水平な前記目地部に沿って水平溝部を形成すると共に、前記水平溝部と連通する鉛直溝部を鉛直な前記目地部に沿って形成する工程と、前記水平溝部及び前記鉛直溝部の各底部に充填材を充填する工程と、前記鉛直補強材の少なくとも一方の端部に形成された折り曲げ部を前記水平溝部に充填された前記充填材にセットすると共に、該鉛直補強材の非折り曲げ部を前記鉛直溝部に充填された前記充填材にセットした後、前記水平補強材を前記水平溝部にセットする工程と、前記水平溝部及び前記鉛直溝部に前記充填材を充填して該水平溝部及び該鉛直溝部を封止する工程とを備えることを特徴とする煉瓦造建造物の補強方法。
【請求項2】
繊維強化プラスチックロッドからなる水平補強材及び鉛直補強材を既存の煉瓦造建造物の目地部に埋設することにより煉瓦造建造物を補強する方法であって、
水平な前記目地部に沿って水平溝部を形成すると共に、前記水平溝部と連通する鉛直溝部を鉛直な前記目地部に沿って形成する工程と、前記水平溝部及び前記鉛直溝部の各底部に充填材を充填する工程と、前記水平補強材を前記水平溝部に充填された前記充填材にセットした後、前記鉛直補強材の少なくとも一方の端部に形成された折り曲げ部を前記水平溝部にセットすると共に、該鉛直補強材の非折り曲げ部を前記鉛直溝部にセットする工程と、前記水平溝部及び前記鉛直溝部に前記充填材を充填して該水平溝部及び該鉛直溝部を封止する工程とを備えることを特徴とする煉瓦造建造物の補強方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の煉瓦造建造物の補強方法において、前記水平補強材が前記鉛直補強材と同径もしくは前記鉛直補強材より大径であることを特徴とする煉瓦造建造物の補強方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の煉瓦造建造物の補強方法において、前記充填材が樹脂モルタルであることを特徴とする煉瓦造建造物の補強方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の煉瓦造建造物の補強方法において、前記繊維強化プラスチックロッドを構成する繊維が、アラミド繊維又は炭素繊維であることを特徴とする煉瓦造建造物の補強方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の煉瓦造建造物の補強方法において、前記水平溝部及び前記鉛直溝部を封止する充填材の表面に紫外線防止剤を塗布することを特徴とする煉瓦造建造物の補強方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−97471(P2012−97471A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246481(P2010−246481)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【特許番号】特許第4874416号(P4874416)
【特許公報発行日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年10月14日 インターネットアドレス(http://www.assm.jp)に掲載
【出願人】(510266114)株式会社免制震ソリューションズ (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【特許番号】特許第4874416号(P4874416)
【特許公報発行日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年10月14日 インターネットアドレス(http://www.assm.jp)に掲載
【出願人】(510266114)株式会社免制震ソリューションズ (1)
【Fターム(参考)】
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