説明

煙道ガス処理及び熱回収システム

熱効率の良い再生式空気予熱器(250)は、アルカリ注入システム(276)を用いることで固形燃料燃焼炉(26)から放出される煙道ガスからより多くの熱エネルギーを抽出する。これは、様々な大きさのアルカリ性粒子(275)を空気予熱器(250)に選択的に注入することで、酸によるファウリングの発生を抑える。小さな粒子は、酸蒸気を凝縮して中和するための核形成部位として働く。大きな粒子は、注入されると熱交換素子(542)と接触して当該熱交換素子に選択的に付着して、そこで凝縮する液体酸を中和する。付着物の蓄積が閾値を超えると、本発明の装置は、大きな粒子の相対的割合を高くしてそれを活用する。それ以外の場合は、小さな粒子の相対的割合を同じように高くしてそれを活用する。ファウリング状態を緩和することで、煙道からより多くの熱を移動させるように空気予熱器(250)を改造することができ、その結果、過度のファウリングを伴わずに燃料煙道ガス出口温度を下げることができる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、ジェームス・W・バーミンガム(James W. Birmingham)及びケビン・J・オーボイル(Kevin J. O'Boyle)による9月25日出願の米国出願番号61/245,822「煙道ガス処理・熱回収システム」の優先権を主張するものであり、本願と矛盾しない程度に該先願の内容が本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
1.技術分野
本発明は、概して、化石燃料燃焼炉を含む煙道ガス処理・熱回収(EPHR)システム及びその使用方法に関する。具体的には、本発明は、アルカリ性粒子を煙道ガス流に導入することで、熱を更に抽出することができるとともに空気予熱器機のファウリングを軽減する、EPHRシステムに関する。
【0003】
2.関連する先行技術の説明
多くの発電システムは、例えば石炭や石油等の化石燃料で点火した炉から発生する蒸気を原動力としている。典型的な発電システムは、大まかには、図1Aに示す図で表される。
【0004】
図1Aは、蒸気発生システム25と、煙道ガス処理・熱回収システム(EPHRS)15と、排気筒90とを備えた、発電システム10を表している。蒸気発生システム25は、炉26を備える。EPHRS15は、再生式空気予熱器50と、微粒子除去システム70と、スクラバ洗浄システム80とを備える。押込(FD)ファン60が、空気を入口51から空気予熱器50の低温側へ導入するために設けられている。微粒子除去システム70としては、例えば、電気集塵装置(ESP)及び/又は布ろ過装置(バグハウス)等が挙げられる。スクラバ洗浄システム80としては、例えば、湿式又は乾式煙道ガス脱硫(WFGD/DFGD)システムが挙げられる。
【0005】
再生式空気予熱器50は、炉26の熱効率を高めるのに役立ち、それにより、炉の運転コストを削減し、かつ温暖化ガスの排出を軽減する。空気予熱器50は、例えば炉26の燃焼室等の別のプロセスへ空気を導入する前に、その空気を加熱するように設計された装置である。様々なタイプの再生式空気予熱器が存在し、例えばユングストローム(Ljungstrom)(登録商標)空気予熱器のように移動式又は回転式熱交換素子を備えているものがある。他の再生式予熱器は、固定式熱交換素子、並びに/若しくは、硬質エアダクト及び/又は煙道に固定された配管又は内旋型フードを利用する。
【0006】
図1B及び図1Cは、従来の回転再生式予熱器50を概略的に示す図である。典型的な空気予熱器50には、ハウジング524内にローター512が回転自在に取り付けられている。ローター512は、ローター支柱518からローター512の外周へ向かって放射状に延びるダイヤフラム又は隔壁516で構成されている。
【0007】
隔壁516によって、それらの間に区画520が画定されている。これら隔壁516には、熱交換素子バスケットアセンブリ522が収容されている。各バスケットアセンブリ522は、熱交換素子542とも称される熱交換面によって特別に形成されたシートを1枚以上収容している。熱交換素子542の表面積は重要であって、通常は約数千平方フィートである。
【0008】
典型的な回転再生式空気予熱器50において、煙道ガス流FG1と燃焼気流A1は、それぞれ空気予熱器50の対向する端部/面からローター512に入り、バスケットアセンブリ522内部に収容されている熱交換素子542を通り抜けて、それぞれ反対方向へ放出される。そのため、低温空気入口51及び冷却された煙道ガス出口54は空気予熱器50の一方の端部(一般には低温端544という)に位置し、そして高温煙道ガス入口53及び高温空気出口52は、空気予熱器50の反対側の端部(一般には高温端546という)に位置する。セクタープレート536は、ローター512の上面及び下面と隣接するハウジング524全体に亘って延在している。空気予熱器50は、セクタープレート536によって空気セクター538と煙道ガスセクター540とに分かれている。
【0009】
図1B及び図1Cに示した矢印は、煙道ガス流FG1/FG2及び気流A1/A2がローター512の中を通過する方向を表している。煙道ガス入口53から入った煙道ガス流FG1は、煙道ガスセクター540内に配置された区画520に備え付けられたバスケットアセンブリ522内部の熱交換素子542に熱を伝える。次いで、加熱されたバスケットアセンブリ522は、空気予熱器50の空気セクター538の方へ回転する。バスケットアセンブリ522に蓄熱された熱は、次に、前記空気入口51から注入される気流A1に伝わる。低温の煙道ガスFG2流は煙道ガス出口54により空気予熱器50から放出され、また、加熱気流A2は前記空気出口52より空気予熱器50から放出される。
【0010】
再び図1Aを参照すると、空気予熱器50は、FDファン60から導入された空気を加熱するものである。炉26の燃焼室から放出される煙道ガス(FG1)は、入口53から空気予熱器に注入される。熱は、煙道ガス(FG1)から回収されて入力空気(A1)に伝わる。高温空気(A2)は、炉26の燃焼室へ供給されて、炉26の熱効率を高める。
【0011】
炉26内での燃焼処理中に、炉26の点火に用いられる燃料中の硫黄は、酸化されて二酸化硫黄(SO)となる。燃焼処理後、一部の量のSOは更に酸化されて三酸化硫黄(SO)となるが、SOとなるのは、通常、約1%〜2%である。SOとSOは、煙道ガスFG1の一部として、炉26の燃焼室から排気煙道を通って蒸気発生システム25から放出されて、入口53から空気予熱器50に注入される。適性な温度範囲の酸化鉄、バナジウム及び他の金属があれば、この酸化が生じる。選択接触還元(SCR)もまた、煙道ガスFG1中のSOの一部をSOへ酸化することが広く知られている。
【0012】
空気予熱器によって煙道ガスFG1から熱が回収/抽出されると、煙道ガスFG1の温度は低下する。煙道ガスから最大量の熱を取り出し、その熱を炉又は燃料微粉砕機ミルに注入される高温空気に伝えて、発電プラントの熱効率を最適化することが好ましい。付加的な熱抽出は、低温域及び低い体積流量に格付けされた集塵装置、ガス浄化装置、並びに煙道ガス出口下流のダクト系統及び煙道の設計/使用を可能にする。低温域及び低い流量という評価は、高温及び高い流量に耐え得る装置を用意しなくても、多大なコスト削減の実現が可能であることを意味している。しかし、煙道ガス温度範囲の低下は、煙道ガス中に含まれ得る三酸化硫黄(SO)又は硫酸蒸気(HSO)を過剰に凝縮させる可能性がある。結果的に、空気予熱器50の熱交換素子522の表面に硫酸が蓄積する可能性がある。煙道ガス流中のフライアッシュは、熱交換面に存在する凝縮された酸によって捕集されることがある。この酸によって、フライアッシュは表面に一層強く付着する。この「ファウリング」というプロセスは、空気予熱器の中を気流及び煙道ガス流が通過するのを妨げて、空気予熱器全体の圧力降下を増大させるだけでなく、熱交換効率も低下させる。
【0013】
しばらくすると、空気予熱器50の表面上に酸及びフライアッシュの蓄積物が非常に大量になるので、空気予熱器の熱的性能を維持しかつ圧力降下を許容範囲に保つために蓄積物を除去する必要がある。蓄積物の除去は、通常、熱交換面を圧縮空気又は圧縮蒸気で定期的に(例えば、毎日3回)スートブローを行い、空気予熱器の運転中に熱交換面に蓄積した付着物を除去することにより行われる。その上、必要があれば、炉26を停止してメンテナンス作業を行うときに、蒸気発生システム25を停止している間に空気予熱器を水洗いすることも可能である。
【0014】
煙道ガス出口温度を下げることの潜在的な利点は、微粒子除去システム70及びスクラバ洗浄装置80の運転温度を下げるように設計できる点である。煙道ガスの温度が低いほど、体積流量も減少する。煙道ガスの温度及び容積を低減しかつ酸性度を緩和することで、体積流量の増大、運転温度の上昇又は煙道ガス中のSO/HSO濃度の増加を目的とした装置に関連する運転コストと資本コストが削減される。熱交換面の過度のファウリングを予防するために酸を凝縮及び/又は中和しなければ、前記状態が現れるであろう。煙道ガスは、微粒子除去作業及びスクラバ洗浄作業を終えると、広範な地理的領域の上空へ舞い上がってまき散らされるための排気筒90へ導入可能な状態となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
煙道ガスからの熱の抽出は、効果的であり、また、通常のプラントでは様々な作業を行うのに利用されている。しかし、既存の石炭及び/又は石油点火式蒸気発生システムでは、煙道ガス流から熱を更に除去するにはコストがかさむ。煙道ガス中のHSO蒸気の追加凝縮をよく考えずに煙道ガス温度を下げ過ぎると、空気予熱器内の熱交換面に過度のファウリングが生じる。よって、当該産業では、前記不具合及び欠点に対処する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、酸性物質及び煙道ガス微粒子を有する煙道ガス流FG1から、煙道ガス入口253と煙道ガス出口254と複数の熱交換面542とを有する空気予熱器250を用いて熱を抽出する方法であって、
煙道ガス流FG1を前記空気予熱器250の前記煙道ガス入口253に流入させる工程と、
煙道ガスFG1に存在する酸性物質の質量流量を計算する工程と、
酸性物質を中和するために煙道ガス流FG1に注入すべきアルカリ性粒子275の質量流量を計算する工程と、
ある粒度分布のアルカリ性粒子275を、計算された質量流量で、空気予熱器250の上流の煙道ガス流に注入する工程と、
微粒子の蓄積度を計算する工程と、
微粒子の蓄積度に基づいて、煙道ガスに注入されるアルカリ性粒子275の粒度分布及び煙道ガスに注入されるときのアルカリ性粒子の質量流量のうち少なくとも一方を調節する工程とを含み、
したがって、熱交換素子542への煙道ガス微粒子の蓄積を軽減しかつ空気予熱器内部のファウリングをも抑制することで、空気予熱器250の熱効率を高める、方法を具体的に表すものである。
【0017】
ファウリングの程度は、煙道ガス入口253から煙道ガス出口254に及ぶ空気予熱器250全体の圧力低下を求め、その圧力低下測定値を少なくとも1つの所定の閾値と比較することによって算出することができる。
【0018】
可変電圧Vを有する電流Iにより駆動されるモーターによって回転するローターを備えた回転式空気予熱器を用いる場合、ファウリングの程度は、電圧V及び電流Iを測定し、測定電圧における測定電流をそれと同一の電圧値における所定の電流値と比較することで、電流差を求めることによって、算出することができる。電流I差を予め記憶された変換情報と比較することで、ファウリングの程度が求められる。
【0019】
本発明は、酸性物質及び煙道ガス微粒子を有する煙道ガスを生成する炉26から熱を回収するのに用いられる空気予熱器250のファウリングを軽減する方法であって、
前記煙道ガスFG1を煙道ガス入口253から注入して、当該煙道ガスを複数の熱交換プレート542に通過させ、当該煙道ガスを煙道ガス出口543から排出するように前記炉26に接続された空気予熱器250を提供する工程と、
煙道ガス中の酸性物質の質量流量を検出する又は計算する工程と、
煙道ガス中の酸性物質を適切に中和するのに必要なアルカリ性粒子の質量流量を計算する工程と、
アルカリ性粒子275を、計算された質量流量で、空気予熱器250に注入される煙道ガスに注入する工程と、
空気予熱器250の煙道ガス入口253から煙道ガス出口254までの圧力低下を検出する工程と、
検出された圧力低下が所定の閾値よりも高い場合は、煙道ガスに注入されるアルカリ性粒子275の質量流量を増加させ、また、検出された圧力低下が所定の閾値よりも小さい場合は、煙道ガスに注入されるアルカリ性粒子275の質量流量を減少させる工程と、
炉26の運転中に前記工程を繰り返して空気予熱器250のファウリングを抑制することで熱を一層効率良く抽出させる工程と
を含む、方法をも具体的に表すものである。SO/HSOが空気予熱器の上流の煙道ガス流に注入されたアルカリ性物質によって凝縮も中和もされない場合に現れることになる空気予熱器内での過度なファウリング又は腐食活性を生じさせずに、前記空気予熱器のガス出口温度を下げることで、現行の空気予熱器の設計技術で達成されるレベルを上回る付加的な熱を煙道ガスから抽出することができる。
【0020】
また、本発明は、酸性蒸気及び同伴煙道ガス微粒子を有する加熱煙道ガスFG1を生成する炉26から熱を一層効率良く回収するための、煙道ガス処理・熱回収(EPHR)システム215であって、
煙道ガスFG1を流入させるようになっている煙道ガス入口253と、
煙道ガスから熱を抽出するための複数の熱交換プレート522と、
煙道ガス流FG2を、熱交換プレート522を通過させた後で排出するための煙道ガス出口254とを有する空気予熱器であって、
炉26に接続された空気予熱器250と、
煙道ガス内の物理的及び化学的条件をモニターするための煙道ガスセンサ310と、
空気予熱器入口253から空気予熱器出口254までの圧力低下を測定するようになっている圧力低下センサ301,303と、
作動時に、他の装置からの制御信号に応答して、空気予熱器250上流の煙道ガス流FG1へアルカリ性粒子275を導入するためのアルカリ注入システム276、と、
検出された煙道ガス条件に基づいてアルカリ性粒子275の質量流量を計算するようになっており、かつアルカリ注入システム276を制御して、計算された質量流量のアルカリ性粒子275を注入することで、煙道ガス中の酸性物質を中和するようになっている、PLCコントローラ305とを備える、システムを具体的に表すものである。
【0021】
さらに、本発明は、高効率で低コストの炉システムであって、
a.加熱煙道ガスを生成する化石燃料燃焼炉と、
b.加熱煙道ガスを収容し、
加熱煙道ガス中の酸を中和し、
炉のために加熱燃焼用空気を抽出し、
当該システム内の別の場所で使用するための追加の高温空気を抽出し、
煙道ガス温度を煙道ガスの酸露点温度未満まで低下させ、
前記空気予熱器から放出される煙道ガスの量を減少させるようになっている空気予熱器であって、炉に接続された空気予熱器と、
c.前記煙道ガス中の前記酸を中和する空気予熱器を備えていないシステムで使用されるものよりもコンパクトでかつ安価である、前記空気予熱器に接続されかつ当該空気予熱器の下流にある煙道ガス処理装置とを備えた、システムも具体的に表すものである。
【0022】
本発明の他のシステム、方法、特徴及び利点は、以下の図面及び詳細な説明を検証することで当業者には自明である又は自明となるであろう。そのような更なるシステム、方法、特徴及び利点は、すべて、本明細書に記載されており、本発明の範疇にあり、しかも添付の特許請求の範囲で保護されているものとする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明は、添付の図面を参照することで、更に深く理解することができ、しかも多数の目的及び利点が当業者に自明となるであろう。
【図1A】典型的な蒸気発生システム及び関連する煙道ガス処理装置を表す図である。
【図1B】従来の回転再生式空気予熱器の一部破断した透視図を表す図である。
【図1C】図1Bの従来の回転再生式空気予熱器の更なる透視図を表す概略図である。
【図2A】本発明による煙道ガス処理・熱回収システムの一実施形態を概略的に示す図である。
【図2B】本発明による煙道ガス処理・熱回収システムの更なる実施形態を概略的に示す図である。
【図3】補助入口を有する空気予熱器の実施形態を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の目的は、煙道ガスが再生式空気予熱器のガス側を通り抜けるときに、再生式空気予熱器の下流に位置する装置の熱交換面に過度なファウリング又は腐食を生じさせることなく、煙道ガスから更に多くの熱を抽出する手段を提供することである。
【0025】
本発明は、空気予熱器の熱交換素子上で凝縮されて蓄積される酸の量を制御すること、そしてその結果、(例えば、炉の)燃焼室から発生する煙道ガス流FG1から熱を抽出する際の空気予熱器の効率を高めることを対象としている。本発明の更なる態様は、熱交換面上の付着物が空気予熱器の運転中に容易に除去される状態に保たれるように、当該付着物の「湿り度」を制御することを対象としている。提案された発明の更なる態様は、燃焼ガス流から熱を抽出する際の空気予熱器の効率を高めることで、煙道ガス流FG1から抽出された付加的な熱を分散し易くするように構成された、空気予熱器を対象としている。
【0026】
空気予熱器に注入されるSOの濃度を削減することに加えて、煙道ガスが空気予熱器の中を通過するときに当該煙道ガスから熱を抽出するための手段を追加することには、幾つかの利点がある。(1)空気予熱器から放出される煙道ガス流量が減少し、(2)空気側方流(通常、一次空気及び二次空気と呼ばれる)の予熱温度を上げることができ、そして(3)予熱された空気という形でエネルギーを追加することで、プラントの他の場所でもそのエネルギーを利用できるようになる。この追加エネルギーの利用可能例は、ボイラー給水の予熱、微粉炭の乾燥、微粉炭のバーナーへの搬送、燃焼後CO捕捉システムへのエネルギー供給、目立った水蒸気プルームを軽減するため又は発電プラント内の熱を必要とする他の用途のための煙道ガスの再燃である。
【0027】
図2A及び図2Bは、提案された発明による煙道ガス処理・熱回収システム215の実施形態を概略的に示す図である。図2Aは、煙道ガス流FG1が入口253から空気予熱器250に注入される前に吸着材のアルカリ性粒子275をFG1へ双方向的に導入するためのアルカリ注入システム276を備えた、EPRS215の一実施形態を表す図である。アルカリ注入システム276は、様々な粒度分布のアルカリ性粒子275を吸着材として選択的に導入する能力を有している。
【0028】
本実施形態において、EPRS215は、再生式空気予熱器250、微粒子除去システム70及びスクラバ洗浄システム80を備えている。FDファン60は、気流A1を入口251から空気予熱器250の低温側に導入するために設けられている。微粒子除去システム70としては、例えば、電気集塵装置(ESP)及び/又は布ろ過装置(バグハウス)等を挙げることができる。スクラバ洗浄システム80としては、例えば、湿式又は乾式煙道ガス脱硫(WFGD/DFGD)システムを挙げることができる。
【0029】
EPRS215の運転中、煙道ガスFG1中の三酸化硫黄(SO)と水蒸気(HO)は、結合すると、空気予熱器250の上流に、煙道ガスの動作温度範囲の酸性蒸気を生成する可能性がある。この酸性蒸気を含む煙道ガスは、空気予熱器250に到達した後、酸露点温度未満まで冷却されると、熱交換素子(図1B中、542)を含む空気予熱器250内の様々な表面と接触して、当該表面上で凝縮して蓄積し始める。こうした凝縮された酸の蓄積は、熱交換面の表面にフライアッシュ粒子を集めてそこに留めることで空気予熱器の運転を「妨害し(foul)」、その結果、空気予熱器250の中を通る煙道ガスFG1の流れを妨げる。そのため、空気予熱器全体に過度の圧力低下が生じて、煙道ガス流FG1から入力気流A1へ熱が上手く伝達しなくなる。
【0030】
酸性蒸気と凝縮された酸をまとめて、「酸性物質」と呼んでよい。
【0031】
本発明の一実施形態では、煙道ガスセンサ310を用いて、煙道ガスの物理的パラメータ及び化学的パラメータをモニターする。煙道ガスセンサは、その用途に応じて、入口又は出口に配置してよく、或いは空気予熱器250の内部の他の場所に配置してもよい。
【0032】
プログラマブルロジックコントローラ(「PLCコントローラ」)305は、センサ情報を読み込んで、煙道ガス中の酸性物質を中和するのに適した質量流量を決定する。この質量流量は、化石燃料燃焼炉で使用される様々なデータ通信方法によって炉から送信された空気−燃料間の燃焼状態から計算により求めることもできる。また、PLCコントローラは、アルカリ注入システム276を制御し、計算された質量流量の正確な粒度のアルカリ性物質を煙道ガス入口253の上流の煙道ガスに注入させることも可能である。
【0033】
石灰石粉末又は他のアルカリ性物質等のアルカリ性粒子275は、吸着材として、空気予熱器51の上流の煙道ガス流FG1(すなわち、煙道ガス流FG1が空気予熱器50に達する前)に導入される。これら粒子は、煙道ガス流FG1内では酸性蒸気のための凝縮部位として機能し、その後、凝縮された酸を中和するよう働く。酸の凝縮と中和はどちらも、煙道ガスを酸性蒸気の凝縮開始温度まで冷却するときに、空気予熱器の内部で生じる。適切な質量、例えば質量比1%:25%のアルカリ性粒子とフライアッシュ凝縮物を、煙道ガス流FG1が空気予熱器250の中を通過するときに当該煙道ガス流FG1に導入すると、ほとんどの酸が中和される。しかし、アルカリ性物質を煙道ガス流へ化学量論に正確に基づいて導入しても、空気予熱器250内での酸の増加が原因で生じるファウリングはそれほど効率良く抑制されない。空気予熱器内での酸の生成と増加を一層効率良く抑制するためには、煙道ガス流FG1に導入されるアルカリ性粒子の大きさ(直径)を変化に富んだものにすることが提案される。
【0034】
煙道ガスが空気予熱器内部の熱交換面を通り抜けるときに煙道ガスの温度勾配を測定して、煙道ガス流FG1に導入されるアルカリ性粒子の質量と粒度分布を制御することにより、煙道ガスが空気予熱器250の中を通過するときに酸が熱交換面上や煙道ガス中で凝縮して残留する程度を調整することができる。
【0035】
石炭の標準的な燃焼によって生成されるフライアッシュ粒子の大きさは、0.01ミクロンよりも小さいものから100ミクロンより大きいものまで幅がある。煙道ガス流FG1中のフライアッシュ又は他の微粒子物質の中でも小さな粒度(一般的には直径5ミクロン未満)のものは、煙道ガス流FG1中に含まれ得るHSO蒸気を凝縮して潜在的に中和するための優れた核として働く傾向がある。
【0036】
凝縮によって熱交換面上に生成する付着物は、空気予熱器の運転中に用いられる洗浄方法で除去できない場合、空気予熱器を通常運転し続けられない程度まで蓄積することがある。しかし、凝縮プロセスと、適切な粒度分布のアルカリ性物質を十分な質量で煙道ガス流に注入されるときに生じ得る中和プロセスとを併用すれば、空気予熱器を良好に運転し続けることができる。中和プロセスは、空気予熱器内において熱交換面上に留まって微粒子付着物に組み込まれる酸の量を削減する。
【0037】
空気予熱器内でのファウリングを制御するのに効果のある重要な因子は、煙道ガス中の煙道ガス微粒子とアルカリ性粒子とが、空気予熱器の交換素子(図1B中、542)である様々な熱交換面と接触している場所、及びこれら粒子の大きさである。粒子が小さいほど、煙道ガス流に追従し易く、かつ熱交換素子の表面に衝突しにくい。大きな粒子(一般には15ミクロン超)は、運動量が大きくなり、熱交換素子の表面に衝突し易くなる。また、大きな粒子は、粒子の表面又は熱交換素子の表面に酸がほとんど又は全く無ければ、熱交換素子の表面から(そこに蓄積せずに)落下し易い。さらに、小さな粒子が熱交換素子等の空気予熱器表面と強く結合していない場合、大きな粒子は当該表面から小さな粒子を「スクラブ洗浄する」又は除去する働きをする可能性もある。
【0038】
空気予熱器の下流へのアルカリ性粒子を注入することで、一般的に、SOプルーム放出が制御され、かつバグハウス又は集塵装置による水銀除去が増強される。しかし、これは、空気予熱器のファウリングには効果がない。
【0039】
本発明では、アルカリ性粒子を、空気予熱器の煙道ガス入口の上流に位置する配管に注入する。アルカリ性粒子は、適切な供給量のアルカリ性物質を配管の断面全体に確実に均一に分散して、煙道ガス流が空気予熱器に入ってその露点温度まで冷却されたとき又は空気予熱器内部の酸露点温度未満の熱交換面と接触したときに、凝縮プロセスと中和プロセスが確実に生じ得るように、注入システムによって分散されるべきである。
【0040】
三酸化硫黄と水蒸気とを含む煙道ガスの温度が酸露点温度未満であると、硫酸が凝縮されて液体になる。凝縮は、空気予熱器内部にある、温度が局部露点温度未満の表面上で生じ、更に冷却すると、煙道ガス流自体の中でも生じ得る。
【0041】
煙道ガス流が過飽和状態になると、硫酸は、同伴微粒子を含まないときには自己核形成することによって凝縮する可能性がある。これは、一般に、煙道ガス温度が局部酸露点温度未満の場合に生じる。煙道ガス流が同伴粒子を含む場合、これら粒子は核形成部位として働き、また、ほぼ局部露点温度で凝縮が生じる。
【0042】
一般的に、小さな粒子を含む場合、当該小さな粒子は、煙道ガス流内部に現れると最初に凝縮物を生成する。これは、小さな粒子の表面積/体積比が大きいことに起因しており、しかもこのことにより、冷却中、小さな粒子を煙道ガスの温度にもっと近付けることができる。大きな粒子は前記比が低いので、熱を保ち続けて、冷却後も周囲の煙道ガスよりも高い温度を維持する。そのため、注入されたアルカリ性粒子上で酸を優先的に凝縮して化学的に中和するためには、その組成が原因で中和能力をほとんど持たない生フライアッシュに関する凝縮とは対照的に、粒子の大きさを、生フライアッシュ粒子の大半よりも小さくしなければならない。
【0043】
前述の通り、酸の凝縮は、酸露点温度以下の温度の熱交換面上で開始する。スートブロー又は水洗いによって除去できる付着物を熱交換面上に生じさせる程度に前記酸を十分消費するためには、アルカリ性粒子を、酸で湿った熱交換面上に、フライアッシュ中の酸を十分に中和するのに適した速度で付着させる必要がある。よって、この位置でのアルカリ性粒子の役割は、最適な核形成部位の役割とほとんど共通点がなく、その大きさに関する要件も相違する。
【0044】
ガス同伴粒子の物理的な運動によって、粒子の大半が空気予熱器内の熱交換素子の表面に届けられる。どの粒子も密度が同じで、しかも周囲の煙道ガスと同等の速度で空気予熱器内を移動すると仮定すると、小さな粒子は、質量が小さいので運動量も少ない。したがって、煙道ガス中の混入量と同等の量を考えると、小さな粒子の方が熱交換面への付着速度が小さい。熱交換面で凝縮される酸を消費するためにより一層大きな付着速度が必要な場合は、燃焼ガス流中の小さなアルカリ性粒子の量を増加させるよりも、粒度の大きなアルカリ性粒子の方が望ましい場合がある。
【0045】
アルカリ性粒子の最適な注入速度は、粒子の粒度分布が上述の2つの異なる目的を担っているときに実現され得る。この粒度分布は、小さな粒度範囲と大きな粒度範囲の両方を含む、二峰性である可能性が高い。
【0046】
空気予熱器内に、酸が凝縮する場所を更に設けることができる。
【0047】
アルカリ性粒子を付着させる「目標」位置への、空気予熱器によるアルカリ性粒子の分配を計算しかつ修正することもできる。
【0048】
煙道ガスは、空気予熱器の中を通過すると冷却する。これによって、温度勾配が生じる。入口温度と出口温度を確認することで、空気予熱器全体の温度勾配を推定することができる。
【0049】
煙道ガスは、空気予熱器の中を通過すると流速が落ちる。この速度勾配もまた、入口速度と出口速度を確認することで、推定することができる。
【0050】
アルカリ性粒子は、流動している煙道ガスの力の影響を受ける。粒子に作用する煙道ガスの力は、煙道ガスの速度、粒子の風圧抵抗、及び粒子の重量によって決まる。
【0051】
さらに、粒子は、その動きに起因した運動量も有している。粒子の運動量は、粒子の速度と質量に基づいている。
【0052】
煙道ガスの力が、粒子の運動の方向を表面から離れる方向へ変えるほど大きくない場合、粒子は表面に衝突する。表面に凝縮した酸があれば、粒子は、表面に付着する可能性が非常に高い。粒子がアルカリ性粒子であれば、凝縮した酸をある程度中和する。
【0053】
小さな粒子は表面積/質量比が大きいので、単位質量当たりの風圧抵抗が大きい。大きな粒子は表面積/質量比が小さいので、単位質量当たりの風圧抵抗も小さく、煙道ガスの力の影響をあまり受けない。
【0054】
速度が同じであれば、質量の大きな粒子ほど運動量が大きい。
【0055】
粒子の密度が全て同じであると仮定すると、大きな粒子ほど質量が大きい。
【0056】
粒子は、空気予熱器の中を移動すると速度が落ちる。(その速度低下のせいで、)表面から離れる方向へ粒子の運動量を変えられないほど煙道ガスの力が弱くなると、粒子は空気予熱器内部の表面に衝突する。
【0057】
粒子が表面に衝突するまでに空気予熱器の中を移動する距離は、粒度によって決まる。非常に小さな粒子は、表面に全く衝突することなく空気予熱器から煙道ガスと共に運び出される可能性がある。そのため、粒度は、粒子が付着する位置を表し、そして粒度分布は、空気予熱器内の様々な位置に付着する粒子の数を表す。粒度分布が適切な大きさの範囲内で連続していれば、粒子は、空気予熱器内部の連続した領域を覆うことができる。したがって、酸が凝縮する位置が決まれば、酸が凝縮すると予想される位置に粒子の大半が付着するように粒度分布を選択することも可能である。
【0058】
アルカリ性物質の質量、並びにアルカリ性物質の粒度分布は、空気予熱器内部でのファウリングの程度を制御する因子である。煙道ガス流FG1に導入されるアルカリ性物質の総量は、アルカリ性粒子が実際に空気予熱器内の、酸が凝縮/蓄積し易い位置にある熱交換面に接触できるほど十分でなければならないが、粒度分布もまた、そうなるように規定しなければならない。煙道ガス流FG1中の酸が中和されて消費されると、蓄積物の粘着性が弱くなって、スートブロー及び/又は水洗い技術によって容易に除去される可能性がある。煙道ガス流FG1中に、又は熱交換面上に凝縮した酸がなければ、フライアッシュ等の粒子は、熱交換素子の表面上に強い接着性を持った付着物を形成しないので、空気予熱器の中を通る煙道ガスFG1の流れを妨げる厚さまで熱交換素子上に蓄積しないであろう。空気予熱器の中を通る煙道ガスFG1の流れが妨げられなければ妨げられないほど、空気予熱器が煙道ガス流FG1から抽出できる熱が増える。
【0059】
提案された本発明の一実施形態において、煙道ガス流FG1に導入されるアルカリ性粒子は、二峰性の粒度分布を有している。これらアルカリ性粒子には、「小さな」粒子と「大きな」粒子がある。小さな粒子は好ましくは直径1ミクロン〜15ミクロンの範囲であり、一方、大きな粒子は、直径15ミクロン〜150ミクロンの範囲である。一般に、煙道ガス流FG1に導入される粒子の直径はいずれも、1ミクロン〜250ミクロンの範囲である。FG1への注入に必要なアルカリ性粒子の質量は、FG1中のSO/HSO濃度、煙道ガス流量、FG1中のフライアッシュの質量、及びFG1中のフライアッシュの化学組成によって決まる。一般に、FG1中のSO/HSO濃度が高いほど、注入しなければならないアルカリ性物質の質量は増加する。フライアッシュ中のアルカリ含有量が高ければ、一般に、FG1に注入するアルカリ性物質は少なくて済む。なぜなら、フライアッシュの固有アルカリ度が、煙道ガス流中のHSOを中和して消費するのを助けるためである。アルカリ性粒子は、好ましくは、煙道ガス流FG1が空気予熱器に到達する前に煙道ガス流FG1に導入される。煙道ガスセンサ310としては、煙道ガス流量センサ、微粒子濃度センサ及び/又は煙道ガス微粒子のアルカリ度を測定するためのサンプリングセンサを挙げることができる。
【0060】
これら粒子は、例えば噴射ノズル若しくは注入装置(インジェクター)のように、煙道ガス流FG1に粒子を導入するための分配システムを介して注入される乾性材料として又は液体スラリーとして、当該分配システムを介して煙道ガス流FG1へ導入されてよい。分配システムは、空気予熱器に通じる煙道ガス入口配管に取り付けられてもよい。分配システムは、好ましくは、煙道ガス流FG1が空気予熱器に入ったときにアルカリ性物質が煙道ガス流FG1全体に一様にかつ十分に分配されるように構成されている。アルカリ分配システム276では、乾式注入用の輸送媒体として用いられる圧縮空気を利用してもよく、又はポンプによる給水を、湿式注入用の輸送媒体として用いてもよい。乾式注入は、アルカリ性粒子をFG1に導入するのに好ましい方法であるが、水を蒸発させてアルカリ性粒子を乾燥させるのに十分な滞留時間を設けるように設計された湿式システムもまた、好適な方法である。
【0061】
単位時間当たりの、注入されるアルカリ性吸着材の質量は、空気予熱器やプラントの運転に関する幾つかの運転パラメータをモニターすることによって制御することができる。この情報は、プラント制御システム全体から集めてもよく、又は特定のデータ収集装置を設置して集めてもよい。この入力データは、アルカリ注入システム276を制御しているPLCコントローラ305に送られる。注入すべき吸着材の量は、空気予熱器に注入される煙道ガスの質量流量及び温度、並びに空気予熱器に注入される煙道ガス中のSO及び水蒸気の濃度から決めることができる。空気予熱器に注入される煙道ガス中のSO含有量は、燃料の硫黄含有量、炉内部の空気/燃料比、並びに空気予熱器の上流に設置された炉及び触媒システムから放出される煙道ガスの温度から計算できる。煙道ガス中のSO含有量は、燃料燃焼システムの燃焼効率特性から算出できる。これらパラメータのうち大部分は、炉26の運転に用いられる産業システムコントローラ(図示せず)から読み込んでもよく、煙道ガスセンサ310によって煙道ガス流内で直接測定してもよく、又は湿式化学を用いるか若しくは市販されている他の好適な器具を用いて測定してもよい。原則としては、空気予熱器から放出される煙道ガスの温度が低いほど、空気予熱器内部の熱交換面の温度は低くなる。そのため、熱交換面で凝縮されて蓄積される酸の量は、煙道ガス出口温度を下げると増大する。したがって、ガス出口温度を下げたり、又は熱交換面の温度を下げたりするには、吸着材の質量流量注入速度を高めることで、除去できないほど非常に「湿った」付着物で空気予熱器が過度にファウリングしないようにする必要がある。
【0062】
大きなアルカリ性粒子の別の利点は、熱交換面上に存在する付着物を「スクラブ洗浄する」のに役立つ、その本来の性質である。繰り返すようだが、スクラブ洗浄効果を引き起こす粒度は、最適な核形成部位の大きさとはほとんど共通点が無く、また、熱交換面で凝縮された酸を消費することになる粒子の粒度と同じでなくてもよい。
【0063】
前記パラメータを求めて、PLCコントローラ305に入力データとして送る。PLCコントローラ305は、空気予熱器の注入されるアルカリ吸着材の粒度分布及び/又は量を作業領域全体にわたって制御するために用いられる。例えば、空気予熱器250に注入される煙道ガスの質量流量が低下すると、PLCコントローラ305は、この変化によって必要となる吸着材の量を再計算すると同時に、測定された他のパラメータの実態を考慮して吸着材質量流量の必要量及びそれに関連する粒度分布の計算を完了させて、アルカリ注入システムに信号を送り、注入される吸着材の量又は粒度分布を調節する。燃料の硫黄含有量が低下(又は増加)すると、この入力データがPLCコントローラ305に送られ、前述の他のパラメータの実態の確認と組み合わせることで、注入すべき吸着材の量と大きさが調節される。
【0064】
煙道ガスセンサ310としては、煙道ガスが予熱器250の中を通過する速度を求めるための流量センサ、煙道ガス微粒子を測定するための微粒子濃度センサ、温度センサ、及び、場合により、煙道ガス微粒子の化学的性質を測定するためのサンプリングセンサを挙げることができる。PLCコントローラ305は、これらセンサから情報を読み込んで、アルカリ注入システム276で注入すべきアルカリ性粒子275の適切な流量を双方向的に計算する。
【0065】
熱交換面上での吸着材の付着位置を最適化するために、注入される吸着材の粒度分布を変えることが好ましい。この目的は、熱交換面上の凝縮された酸の質量分配位置を予測して吸着材粒子を分粒することで、吸着材粒子の運動量によって、凝縮された酸の分配位置と密接な関係がある熱交換面上での吸着材物質の分配を促すことである。この方法では、その割合で適切に分粒された吸着材物質を、熱交換面上の、前記量の凝縮された酸と所定の位置で反応させるのに最適な位置に付着させることができる。
【0066】
前記制御論理に加えて、空気予熱器250全体での圧力低下をセンサ301,303で連続的に測定して、煙道ガス及び空気側の流量と温度の関数として算出される閾値(PLCコントローラ305にインストールされているアルゴリズムで定義されるもの)と比較する。
【0067】
熱交換面のスートブローサイクル中に存続することが望ましい圧力低下予測値と時間との関係は、PLCコントローラ305への入力データでもある。実際の圧力低下が更に高速で増大すると、それは、注入される吸着材の質量不足、吸着材物質の誤った粒度分布又はアルカリ注入システム276の誤動作のために、熱交換面上にフライアッシュ付着物や硫酸が生成したことを表す。
【0068】
PLCコントローラ305は、空気予熱器全体での圧力低下と時間との関係を適切なレベルまで戻すために、吸着材の注入速度を増大させることができる。また、吸着材の分粒は、システムを制御するために用いられる様々な運転パラメータを評価し、適切な信号を微粉砕システムに送って、PLCコントローラ305のアルゴリズムで求められる通りに吸着材物質の分粒を変更することによって変更することもできる。ここで留意すべきは、吸着材がスラリー又は溶液の状態で注入される場合は吸着材粒子の分粒プロセスが適用できないことである。
【0069】
一方で、圧力低下の増加率が、PLCコントローラ305で計算されるような実際の運転状況に基づく予測レベルよりも低ければ、吸着材の注入速度を下げて、操業コストを削減する。
【0070】
スートブローサイクル中は、その前のスートブローサイクル以降に熱交換面に蓄積したフライアッシュを除去すべきであり、また、空気予熱器全体に生じた圧力低下を緩和するものである。ただし、未中和の硫酸を含むことで付着物が過度に「湿っている」と、当該付着物がスートブローサイクル中に除去できない。つまり、所定の煙道ガス流量及び温度において、空気予熱器の圧力低下と時間との関係がPLCコントローラ305に入力された標準プロファイルよりも大きい場合、それは、吸着材が煙道ガス中で十分に活用されず、及び/又は吸着材物質の粒度分布が、運転中の条件にそぐわないことを表すものである。信号は、PLCコントローラ305からアルカリ注入システム276に送られて、吸着材の注入速度及び/又は吸着材の粒度分布を増大させる。
【0071】
PLCコントローラ305によってアルカリ性粒子275の適切な質量流量が付与され、そして圧力低下が、算出された閾値を上回る場合は、小さな粒子に対する大きな粒子の相対的割合が高いものを吸着材275として供給する。より多くの大きな粒子を熱交換面と接触させて、この面に微粒子を固定する酸を中和して消費する。検出された圧力低下が前記閾値よりも小さい場合は、小さなアルカリ性粒子に対する大きなアルカリ性粒子の相対的割合が低いものを供給して、より多くの小さな粒子を煙道ガス中で核形成部位として機能させる。
【0072】
場合により、PLCコントローラ305は、微粉砕機277を制御して、所望の粒度又は粒度分布のアルカリ性粒子275を粉砕するように当該微粉砕機に指示を送ることも可能である。
【0073】
吸着材の注入速度を決定するためにPLCコントローラ305に組み込むことができる他の運転パラメータは、空気予熱器250のローター(図1B中、512)を動かすのに用いられる電気モーターの電圧と電流である。微粒子付着物の質量が空気予熱器の熱交換面上で増大すると、ローターの総重量も増加する。ここで、モーターに所定の電圧をかけると、ローター支持軸受けアセンブリにおけるローターの重量増加によってローター支持軸受システム内で摩擦が増大するため、モーターが消費するアンペア数が増加する。このため、ローター駆動モーターの電圧と電流を連続的に測定してPLCコントローラ305に送り、総合計算に反映させて、吸着材の質量注入速度及び粒径分布を求める。PLCの制御論理には、維持すべき目標アンペア数と、スートブローサイクル中に熱交換面で生じる熱交換面上でのフライアッシュの標準的な蓄積に由来し得る許容アンペア変動幅とが組み込まれている。PLCコントローラ305には、生じ得る電圧変動を調整するための計算方法が組み込まれているので、必要であれば、維持すべき目標アンペア値を実際の電圧値に応じて調整することもできる。
【0074】
上述の通り、アルカリ性粒子を煙道ガス流FG1に導入することにより、煙道ガス流FG1からより多くの熱を回収する際の空気予熱器の効率が大幅に向上し、かつ熱交換面上でのファウリングが軽減される。これにより、空気予熱器から放出される煙道ガスの煙道ガス出口温度を下げることができる。実用的な設計制限とコスト制限が、予熱された空気が空気予熱器から放出されるときの温度を決定してしまう傾向がある。ただし、ガス出口温度の最大低下は、空気予熱器を通過する空気の質量流量を増加させることによって当該空気予熱器から放出されるときの所望の空気温度を維持している間に達成され得る。そのため、過剰の熱を付加的な高温空気側質量流の形で、炉の運転以外の作業へ分配することに関する規定を設けてもよい。
【0075】
提案された本発明の更なる実施形態(図2B参照)において、空気予熱器250は、煙道ガスFG1から抽出された熱を、気流A2を介して炉26へ分配するように、かつ補助気流A3及び/又はB2を介して他の目的へ分配するように構成されたものが備えられている。これら補助気流の有効な用途としては、例えば次のものを挙げることができる。微粉炭の乾燥及び粉砕作業並びに/又はボイラー給水の予熱、現場加熱若しくは冷却プロセス、空気予熱器から放出される高温空気の一部が空気予熱器に注入される気流の温度が上がる前に外気と混合できるように、前記高温空気の一部を空気予熱器の入り口側へ直接再循環させることによって、空気予熱器に注入される空気を予熱すること、また、熱交換器を利用して外気を間接的に加熱することであって、空気予熱器から放出される高温空気の一部が、流入する外気を再生式空気予熱器に注入する前に予熱するのに利用されること。高温空気発生源を必要とする産業プロセスにおける現場から離れた場所で利用される地域暖房や、CO捕捉システムに供給される熱エネルギー(冷蔵アンモニア又はアミン注入プロセスが挙げられるが、これらに限定されない)等の付加的な用途も存在する。
【0076】
図2Bを参照すると、EPRS215には、再生式空気予熱器250、微粒子除去システム70及びスクラバ洗浄システム80が備えられている。FDファン60は、気流A1を入口251から空気予熱器250の低温側へ導入するように設けられている。上述の通り、微粒子除去システム70としては、ESP及び/又は布ろ過装置等を挙げることができる。スクラバ洗浄システム80としては、WFGD/DFGDシステムを挙げることができる。
【0077】
本実施形態において、追加のFDファン260は、補助気流B1を入口256から空気予熱器250の低温側へ導入するために設けられている。
【0078】
図3は、高温空気の予備気流を炉の燃焼室以外のある種の所定の作業に供給するように構成された空気予熱器250の更なる詳細を概略的に示す図である。
【0079】
図3を参照すると、空気予熱器250は、気流A1を注入するための入口251と補助気流B1を注入するための補助空気入口256とを備えるように構成されている。出口252は、加熱気流A2を炉(図2B中、26)へ出力するためのものである。さらに、補助出口255は、第2の加熱気流B2を、1つ以上の所定の作業へ又はミル(図2B中、270)のような設備部品へ出力するために設けられている。2つの別々の出口252及び255を設けることで、加熱気流A2及びB2を区別して制御することができ、しかも炉(図2B中、26)の正常運転に必要とされるよりも多くの熱を煙道ガス流FG1から抽出することができる。加熱気流A3,B2は、蒸気プラント作業に関する他の用途又は他のプラント関連作業で使用する場合も経路を容易に選定することができる。さらに、2つの空気入口251及び256を設けることで、空気予熱器への空気入力を選択的に又は可変的に制御することもできる。本明細書に開示しかつ本願特許請求の範囲に定義する原理及び概念は、あらゆる空気予熱機器/システムに適用できるものであり、二等分空気予熱機器及びシステム、三等分空気予熱機器及びシステム及び四等分空気予熱機器及びシステムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
本発明の上記実施形態、特に任意の「好ましい」実施形態は、単に可能な実施例であって、本発明の原理を明白に理解するために単に記載したものであることを強調しておかなければならない。本発明の上記実施形態は、本発明の趣旨及び原理から実質的に逸脱することなく、様々な変更及び修正が可能である。このような変更及び修正はいずれも、本明細書において本開示内容及び本発明の範疇に含まれるものであり、かつ以下の特許請求の範囲によって保護されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性物質と煙道ガス微粒子を有する煙道ガス流FG1から、煙道ガス入口と煙道ガス出口と複数の熱交換面とを有する空気予熱器を用いて更なる熱を抽出する方法であって、
a.煙道ガス流FG1を、前記空気予熱器の前記煙道ガス入口に流入させる工程と、
b.前記煙道ガスFG1中に存在する酸性物質の質量流量を計算する工程と、
c.前記酸性物質を中和するために前記煙道ガス流FG1に注入すべきアルカリ性粒子の質量流量を計算する工程と、
d.計算された粒度の分布を有する前記アルカリ性粒子と前記煙道ガスとが前記空気予熱器に注入される前に適切に混合され得る位置で、前記アルカリ性粒子を、前記計算された質量流量で、前記空気予熱器の上流の前記煙道ガス流に注入する工程と、
e.前記煙道ガス微粒子の蓄積度を計算する工程と、
f.前記煙道ガス微粒子の計算された蓄積度に基づいて、
前記煙道ガスに注入される前記アルカリ性粒子の粒度分布、及び
前記煙道ガスに注入されるときの前記アルカリ性粒子の質量流量のうち少なくとも一方を調節する工程と、
を含み、それにより、熱交換素子への前記煙道ガス微粒子の蓄積を軽減し、前記空気予熱器の前記熱交換面及び内部部品のファウリング及び腐食を抑制し、かつ前記空気予熱器の熱効率を高める、方法。
【請求項2】
前記調節工程が、
a.圧力低下が所定の閾値を超える場合は、大きなアルカリ性粒子の相対的割合が高くなるように前記アルカリ性粒子の粒度分布を調節して、より多くの前記アルカリ性粒子を前記熱交換素子に接触・付着させて、前記素子上で凝縮している前記酸性物質を中和する工程と、
b.圧力低下が所定の閾値よりも小さい場合は、前記大きなアルカリ性粒子の相対的割合が低くなるように前記アルカリ性粒子の粒度分布を調節する工程とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
小さなアルカリ性粒子の直径が1〜150ミクロンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
大きなアルカリ性粒子の直径が150〜250ミクロンである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記アルカリ性粒子の粒度分布を調節する工程が、
所望の質量の前記アルカリ性物質を生産する微粉砕機の運転を制御することによって前記アルカリ性粒子の粒度分布を調節して、所望の分布となるように前記アルカリ性物質の大きさを変更する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記煙道ガス微粒子の蓄積度を計算する工程が、
a.前記煙道ガス入口から前記煙道ガス出口への前記空気予熱器を横切る圧力低下を測定する工程と、
b.前記測定された圧力低下を少なくとも1つの所定の閾値と比較して、前記煙道ガス微粒子の蓄積度を得る工程とを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記空気予熱器が、可変電圧Vを有する電流Iにより駆動されるモーターによって回転されるローターを備えた回転式空気予熱器であり、
前記煙道ガス微粒子の蓄積度を計算する工程が、
a.前記電圧V及び前記電流Iを測定する工程と、
b.前記測定電圧における前記測定電流を、同一の電圧値における所定の電流値と比較して、電流差を求める工程と、
c.前記電流差を予め記憶された変換情報と比較して、前記煙道ガス微粒子の蓄積度を求める工程とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
酸性蒸気及び同伴煙道ガス微粒子を有する加熱煙道ガスFG1を生成する炉からの熱を一層効率良く回収するための煙道ガス処理・熱回収(EPHR)システムであって、
a.前記煙道ガスFG1を流入させるようになっている煙道ガス入口、
前記煙道ガスから前記熱を抽出するための複数の熱交換プレート、及び、
前記煙道ガス流FG2を、前記熱交換プレートを通過させた後で排出するための煙道ガス出口を有する、前記炉に接続された空気予熱器と、
b.前記煙道ガス内の物理的及び化学的条件をモニターするための煙道ガスセンサと、
c.前記空気予熱器の前記入口から前記空気予熱器の前記出口までの圧力低下を測定するようになっている圧力低下センサと、
d.作動時に、他の装置からの制御信号に応答して、前記空気予熱器の上流の前記煙道ガス流FG1へ前記アルカリ性粒子を導入するためのアルカリ注入システムと、
e.前記検出された煙道ガス条件に基づいて前記アルカリ性粒子の質量流量を計算し、かつ前記アルカリ注入システムを制御して前記計算された質量流量の前記アルカリ性粒子を注入し前記煙道ガス中の前記酸性物質を中和するようになっている、PLCコントローラと、
を備える、EPHRシステム。
【請求項9】
前記煙道ガスセンサが、
a.前記煙道ガスの質量流量を測定するようになっている流量センサと、
b.前記煙道ガス中の前記煙道ガス微粒子の濃度を測定するようになっている微粒子センサと、
c.前記煙道ガス中の前記煙道ガス微粒子の少なくとも1つの化学パラメータを測定するようになっているサンプリングセンサとのうち少なくとも1つを備えている、請求項8に記載のEPHRシステム。
【請求項10】
前記PLCコントローラがさらに、前記煙道ガスの質量流量、前記煙道ガスの水分含量、前記酸性物質の濃度、前記煙道ガス微粒子の濃度及び前記煙道ガス微粒子の前記検出された化学組成に基づいて、前記アルカリ性粒子の質量流量を計算するようになっている、請求項8に記載のEPHRシステム。
【請求項11】
前記アルカリ性粒子が、小さな粒子と大きな粒子とから構成されており、前記PLCコントローラがさらに、前記アルカリ注入システムを制御して、前記煙道ガス入口から前記煙道ガス出口にわたって測定された圧力低下に基づいて注入される前記アルカリ性粒子の小さな粒子と大きな粒子との相対的割合を調節するようになっている、請求項8に記載のEPHRシステム。
【請求項12】
前記アルカリ注入システムが、ある範囲の大きさを有する前記アルカリ性粒子を導入するように構成されている、請求項8に記載のEPHRシステム。
【請求項13】
前記空気予熱器が、第2の加熱気流を放出するための補助出口を備えている、請求項8に記載のEPHRシステム。
【請求項14】
前記空気予熱器がさらに、補助空気入力を注入するための第2の入口を備えている、請求項8に記載のEPHRシステム。
【請求項15】
高効率で低コストの炉システムであって、
a.加熱煙道ガスを生成する化石燃料燃焼炉と、
b.前記加熱煙道ガスを収容し、
前記加熱煙道ガス中の酸を中和し、
炉のために加熱燃焼用空気を抽出し、
当該システム内の別の場所で使用するための追加の高温空気を抽出し、
煙道ガス温度を煙道ガスの酸露点温度未満まで低下させ、
空気予熱器から放出される煙道ガスの量を減少させるようになっている、前記炉に接続された空気予熱器と、
c.前記煙道ガス中の前記酸を中和する空気予熱器を備えていないシステムで使用されるものよりもコンパクトでかつ安価である、前記空気予熱器に接続されかつ当該空気予熱器の下流にある煙道ガス処理装置と、
を備える、炉システム。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−506112(P2013−506112A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530931(P2012−530931)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/048844
【国際公開番号】WO2011/037789
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5400 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】