説明

照射不良の検査方法、及び、照射不良の検査装置

【課題】照射不良の検査時間を短縮すること。
【解決手段】スキャナーの読み取り面と照射ユニットの照射面が対向し、照射ユニットが光を照射している状態で、スキャナーが照射面を読み取った読み取りデータを取得し、読み取りデータをプリンターの紙搬送方向に積分することによって、照射ユニットからの光の照射エネルギーに応じた値を取得し、光の照射エネルギーに応じた値が閾値以下である場合、照射ユニットが照射不良であると判定する照射不良の検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射不良の検査方法、及び、照射不良の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線(光)を照射すると硬化するインク(以下、紫外線硬化型インク)を使用する画像形成装置が知られている。このような画像形成装置には、紫外線硬化型インクを吐出するヘッドや、用紙上の紫外線硬化型インクに紫外線を照射する照射ユニット等が、設けられている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−82452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、紫外線の照射強度を測定する為の一般的な照度計は、測定エリアが狭い。一方、照射ユニットには、紫外線の照射光源となる照射部(例えば、LEDパッケージ)が複数取り付けられている。そのため、照度計を用いて照射ユニットの照射不良を検査するとなると、複数回に分けて測定する必要があり、照射不良の検査に多大な時間を要してしまう。
そこで、本発明は、照射不良の検査時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する為の主たる発明は、光硬化型インクを硬化させる光をそれぞれ照射する複数の照射部が所定方向及び前記所定方向に交差する方向に2次元に配置され、前記所定方向に媒体と相対移動しながら前記媒体上の前記光硬化型インクに光を照射する照射ユニットにおける照射不良の検査方法であって、スキャナーの読み取り面と前記照射ユニットの照射面が対向し、前記照射ユニットが光を照射している状態で、前記スキャナーが前記照射面を読み取った読み取りデータを取得することと、前記読み取りデータを、前記読み取りデータ上において前記所定方向に対応する方向に積分することによって、前記照射ユニットからの光の照射エネルギーに応じた値を取得することと、前記光の照射エネルギーに応じた値が閾値以下である場合、前記照射ユニットが照射不良であると判定することと、を有することを特徴とする照射不良の検査方法。である。
【0006】
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1Aはプリンターの概略断面図であり、図1Bは照射ユニットの下面を示す図である。
【図2】スキャナーユニットを説明する図である。
【図3】照射ユニットにおける照射不良の検査方法を示すフローである。
【図4】スキャナーユニットによる照射面の読み取りデータを説明する図である。
【図5】図5Aから図5Cは照射ユニットが照射不良である場合のメンテナンス処理を説明する図である。
【図6】変形例における画像形成処理のフローを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0009】
即ち、光硬化型インクを硬化させる光をそれぞれ照射する複数の照射部が所定方向及び前記所定方向に交差する方向に2次元に配置され、前記所定方向に媒体と相対移動しながら前記媒体上の前記光硬化型インクに光を照射する照射ユニットにおける照射不良の検査方法であって、スキャナーの読み取り面と前記照射ユニットの照射面が対向し、前記照射ユニットが光を照射している状態で、前記スキャナーが前記照射面を読み取った読み取りデータを取得することと、前記読み取りデータを、前記読み取りデータ上において前記所定方向に対応する方向に積分することによって、前記照射ユニットからの光の照射エネルギーに応じた値を取得することと、前記光の照射エネルギーに応じた値が閾値以下である場合、前記照射ユニットが照射不良であると判定することと、を有することを特徴とする照射不良の検査方法である。
このような照射不良の検査方法によれば、照射不良の検査時間を短縮することができる。また、照射ユニットが照射不良であると不必要に判定してしまうことを防止できる。
【0010】
かかる照射不良の検査方法であって、前記光の照射エネルギーに応じた値が前記閾値以下である場合、前記読み取りデータに基づいて、照射不良である前記照射部の前記所定方向の位置と前記所定方向に交差する方向の位置とのうちの少なくとも一方の位置を特定すること。
このような照射不良の検査方法によれば、例えば、照射不良である照射部を交換する等して、照射ユニットの照射不良を解消することができる。
【0011】
かかる照射不良の検査方法であって、前記照射ユニットは、前記光硬化型インクを連続媒体に吐出するヘッドを有する画像形成装置に設けられ、前記連続媒体を交換するごとに、前記照射ユニットにおける照射不良の検査を実施すること。
このような照射不良の検査方法によれば、照射ユニットが照射不良である状態で画像が形成されてしまうことを防止でき、画像の画質劣化を防止することができる。
【0012】
かかる照射不良の検査方法であって、前記照射ユニットは、前記光硬化型インクを媒体に吐出するヘッドを有する画像形成装置に設けられ、画像形成ジョブごとに、前記照射ユニットにおける照射不良の検査を実施すること。
このような照射不良の検査方法によれば、照射ユニットが照射不良である状態で画像が形成されてしまうことを防止でき、画像の画質劣化を防止することができる。
【0013】
かかる照射不良の検査方法であって、前記スキャナーは、縮小光学系のスキャナーであること。
このような照射不良の検査方法によれば、スキャナーの読み取り面から照射ユニットの照射面までの距離が多少離れた場合でも、照射面の状態をはっきり読み取ることができる。
【0014】
かかる照射不良の検査方法であって、前記スキャナーは、前記読み取り面からの光を受光するセンサーを有し、前記照射面が照射する光量よりも前記センサーに入射する光量を減少させること。
このような照射不良の検査方法によれば、センサーが飽和状態になってしまうことを防止でき、照射面から照射される光量に応じた読み取りデータを取得することができる。
【0015】
また、光硬化型インクを硬化させる光をそれぞれ照射する複数の照射部が所定方向及び前記所定方向に交差する方向に2次元に配置され、前記所定方向に媒体と相対移動しながら前記媒体上の前記光硬化型インクに光を照射する照射ユニットにおける照射不良の検査装置であって、前記照射ユニットの照射面と対向し、前記照射ユニットが光を照射している状態で、前記照射面を読み取るスキャナーと、前記スキャナーが前記照射面を読み取った読み取りデータを、前記読み取りデータ上において前記所定方向に対応する方向に積分することによって、前記照射ユニットからの光の照射エネルギーに応じた値を取得し、前記光の照射エネルギーに応じた値が閾値以下である場合、前記照射ユニットが照射不良であると判定する制御部と、を有することを特徴とする照射不良の検査装置である。
このような照射不良の検査装置によれば、照射不良の検査時間を短縮することができる。また、照射ユニットが照射不良であると不必要に判定してしまうことを防止できる。
【0016】
===プリンター===
図1Aは、プリンター1の概略断面図であり、図1Bは、照射ユニット10の下面を示す図である。本実施形態では、「画像形成装置」としてインクジェットプリンター(プリンター1)を例に挙げて説明する。また、プリンター1は、紫外線(光)の照射によって硬化するインク(「光硬化型インク」に相当、以下「UVインク」と呼ぶ)による画像を媒体に形成する。なお、UVインクは、紫外線硬化樹脂を含むインクであり、紫外線の照射を受けると紫外線硬化樹脂において光重合反応が起こることにより硬化する。また、プリンター1は、媒体として、ロール状に巻かれたロール紙Sを使用する。ただし、媒体は、紙に限らずフィルムや布地であってもよいし、また、カット紙であってもよい。
【0017】
以下、プリンター1による画像の形成方法について説明する。まず、ロール状に巻かれたロール紙Sは、搬送ローラー2A,2B等によって、印刷領域に供給され、紙搬送方向の上流側から下流側へ停まることなく一定の速度で搬送される。印刷領域に位置するロール紙Sは、裏面側からプラテン3によって支持されつつ、ヘッド4と対向する。
【0018】
ヘッド4は、ロール紙SにUVインクを吐出するものである。図1Aのプリンター1では、紙搬送方向の上流側から順に、イエローのUVインクを吐出するヘッド4と、マゼンタのUVインクを吐出するヘッド4と、シアンのUVインクを吐出するヘッド4と、ブラックのUVインクを吐出するヘッド4が、配置されている。
【0019】
各ヘッド4の下面(ロール紙Sとの対向面)では、UVインクを吐出する多数のノズルが紙搬送方向と交差する紙幅方向に所定の間隔で並んでいる(不図示)。よって、ヘッド4の下をロール紙Sが通過する際にヘッド4からUVインクが吐出されることにより、紙搬送方向に沿う複数のドット列が紙幅方向に並んで印刷され、ロール紙Sに2次元の画像が印刷される。
【0020】
その後、ロール紙Sは、裏面側からスキャナーユニット20によって支持されつつ、照射ユニット10と対向する。照射ユニット10は、紙搬送方向に移動するロール紙S上のUVインクに紫外線を照射し、UVインクを硬化させるものである。スキャナーユニット20(スキャナーに相当)は、照射ユニット10の照射面10aと対向した状態で、照射ユニット10の照射面10aを読み取るものである(詳細は後述)。
【0021】
照射ユニット10は紫外線照射の光源として発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を使用する。図1Bに示すように、照射ユニット10の照射面10a(ロール紙Sとの対向面)では、紫外線をそれぞれ照射する複数のLEDパッケージ11(照射部に相当)が、紙搬送方向(所定方向に相当)、及び、紙幅方向(所定方向に交差する方向に相当)に2次元に配置されている。
【0022】
本実施形態では、紙搬送方向に4個のLEDパッケージ11が並び、紙幅方向に8個のLEDパッケージ11が並び、合計32個のLEDパッケージ11が照射ユニット10に配置されている。説明のため、紙搬送方向の最も上流側のLEDパッケージ11から順に、1行目、2行目、…と番号を付し、紙幅方向の最も手前側のLEDパッケージ11から順に、1列目、2列目、…と番号を付す。
【0023】
なお、各LEDパッケージ11は、紫外線を照射するLED素子12と、LED素子12を封止する封止部13を有する。各LEDパッケージ11が有するLED素子12は1個であっても複数個であってもよい。また、照射ユニット10の紙幅方向の長さはヘッド4の紙幅方向の長さと同程度であり、ヘッド4から吐出されたUVインクに対して紙幅方向の全域に亘って紫外線が照射される。
【0024】
こうして、ヘッド4によりロール紙SにUVインクが吐出され、照射ユニット10によりロール紙S上のUVインクに紫外線が照射され、UVインクが硬化することで、ロール紙Sへの画像形成処理が完了する。最後に、画像が形成されたロール紙Sは、再びロール状に巻き取られる。
【0025】
===照射不良の検査方法===
<照射ユニット10の照射不良>
寿命や故障により、照射ユニット10が有するLEDパッケージ11に、照射不良が生じる場合がある。照射不良とは、LEDパッケージ11が全く紫外線を照射しなくなったり(非点灯になったり)、紫外線の照射強度(mW/cm)が規定値よりも弱まったりすることである。よって、LEDパッケージ11に照射不良が生じると、その下を通過するロール紙S上のUVインクの硬化が不完全になってしまう。
【0026】
ロール紙S上の各UVインク滴は、紙搬送方向の下流側に搬送されつつ、4個のLEDパッケージ11と対向する。対向する4個のLEDパッケージ11が全て正常であれば、UVインク滴に照射される照射エネルギー(mJ/cm、単位面積あたりの紫外線の積算照射量)は十分であり、UVインク滴は完全に硬化する。なお、照射エネルギー(mJ/cm)は、紫外線の照射強度(mW/cm)と照射時間(s)の積で定められる。
【0027】
しかし、対向する4個のLEDパッケージ11の何れかに照射不良が生じていると、UVインク滴に照射される照射エネルギーは不十分となり、UVインク滴の硬化が不完全になってしまう。そうすると、UVインクの硬化が不完全である部位が画像上で縞として視認されたり、硬化が不完全であるUVインク滴がロール紙Sから剥がれたりする等して、画像の画質が劣化してしまう。
そこで、プリンター1では、定期的に、照射ユニット10における照射不良の検査を実施する。
【0028】
<スキャナーユニット20>
図2は、スキャナーユニット20を説明する図である。前述のように、スキャナーユニット20は、照射ユニット10の照射面10aを読み取るものであり、読み取り面21(ガラス板)と、移動方向に移動するキャリッジ22と、ラインセンサー23(センサーに相当)と、スキャナー側制御部24を有する。
【0029】
ラインセンサー23(例:CCDラインセンサー)では、キャリッジ22の移動方向と交差する方向に受光素子が並ぶ。各受光素子は、入射した光(読み取り面21からの光)を、その光量(光の強さ)に応じた電荷に変換し、その電荷を蓄積する。そして、所定のタイミングで、ラインセンサー23は、各受光素子の蓄積電荷を光量に応じた電気信号として、スキャナー側制御部24に転送する。
【0030】
また、スキャナーユニット20は縮小光学系のスキャナーであり、キャリッジ22内にはラインセンサー23の他に、複数の反射ミラー25と集光レンズ26が設けられている。そのため、読み取り面21に入射した光は、反射ミラー25に反射されて集光レンズ26へ導かれ、集光レンズ26で収束された状態でラインセンサー23に入射する。
【0031】
また、スキャナーユニット20の読み取り面21には、減光フィルター27が取り付けられている。よって、照射ユニット10がスキャナーユニット20の読み取り面21に向けて照射する光量(紫外線量)よりも、減光フィルター27を介して読み取り面21からラインセンサー23へ入射する光量(紫外線量)の方が、少なくなる。
【0032】
また、スキャナーユニット20は、カラースキャナーであり、読み取りデータをRGBデータとして出力する。そのため、例えば、ラインセンサー23にR(赤)G(緑)B(青)の各フィルターが設けられている等して、スキャナーユニット20は色分解可能な構成になっている。
【0033】
なお、プリンター1では、紙搬送方向とスキャナーユニット20におけるキャリッジ22の移動方向とが一致し、紙幅方向とキャリッジ22の移動方向に交差する方向とが一致している。また、スキャナーユニット20は照射ユニット10よりも下方に位置し(図1A)、スキャナーユニット20と照射ユニット10の紙幅方向の位置はほぼ同位置であるとする。よって、スキャナーユニット20の読み取り面21はロール紙Sを介して照射ユニット10の照射面10aと対向している。また、スキャナーユニット20の読み取り面21のサイズは、照射ユニット10の照射面10aのサイズ以上であるとする。
【0034】
<照射不良の検査方法>
図3は、照射ユニット10における照射不良の検査方法を示すフローである。ここでは、ユーザーのもとでプリンター1が使用されている際に、プリンター1内の制御部(以下、プリンター側制御部30)が照射不良の検査を実施する場合を例に挙げる。ただし、これに限らず、例えば、プリンター1の製造工程で照射不良の検査を実施してもよいし、ユーザーが照射不良の検査を実施してもよい。
【0035】
また、本実施形態では、ロール紙Sが交換されるごとに、照射不良の検査が実施されるとする。そのため、プリンター側制御部30は、ロール紙S交換の情報を取得すると(S001)、照射不良の検査を開始する。なお、本実施形態のプリンター1では、ロール紙Sがプリンター1から取り外されると、図2に示すように、スキャナーユニット20の読み取り面21と照射ユニット10の照射面10aが、間に何も介在させずに、対向した状態となる。即ち、スキャナーユニット20が照射ユニット10の照射面10aを読み取り可能な状態となる。
【0036】
次に、プリンター側制御部30は、照射ユニット10が紫外線を照射している状態で(即ち、全LEDパッケージ11が点灯している状態で)、照射ユニット10の照射面10aをスキャナーユニット20に所定の読み取り解像度で読み取らせる。そうすると、ラインセンサー23は、キャリッジ22と共に移動方向(紙搬送方向)に移動しながら、照射面10aの全域を読み取る(照射面10aからの光(紫外線)を受光する)。そうして、プリンター側制御部30は、スキャナーユニット20が照射ユニット10の照射面10aを読み取った読み取りデータを取得する(S002)。
【0037】
なお、ラインセンサー23が受光した光量に応じた電気信号(即ち、照射面10aから照射された光量(紫外線の照射エネルギー)に応じた電気信号)が、ラインセンサー23からスキャナー側制御部24に転送されると、スキャナー側制御部24は受信した電気信号に対して所定の処理(例えば、AD変換処理など)を施す。その結果、ラインセンサー23からの電気信号は、読み取り解像度に応じて定まる画素が2次元に並んだ読み取りデータに変換される。プリンター側制御部30は、画素が2次元に並んだ読み取りデータをスキャナー側制御部24から取得する。
【0038】
また、読み取りデータを構成する各画素は、各画素の位置においてラインセンサー23が受光した光量(即ち、照射面10aから照射された光量(紫外線の照射エネルギー))を多段階で表した階調値を示す。画素の示す階調値が大きいほど、その画素の位置にてラインセンサー23が受光した光量が多く、画素の示す階調値が小さいほど、その画素の位置にてラインセンサー23が受光した光量が少ない。ここでは、各画素の示す階調値が256階調の値(0〜255)であるとする。
【0039】
また、照射ユニット10の下を通過するロール紙S上のUVインクは、真上のLEDパッケージ11だけでなく、その周囲のLEDパッケージ11から照射される紫外線の影響も受ける。よって、照射ユニット10の全LEDパッケージ11が点灯している状態でスキャナーユニット20に照射面10aを読み取らせる。そうすることで、ロール紙S上のUVインクに実際に照射される紫外線の照射エネルギーにより近い読み取りデータを取得することができる。
【0040】
また、通常、用紙に印刷された画像等をスキャナーユニットが読み取る場合、スキャナーユニット内のランプが画像に光を照射し、画像からの反射光をラインセンサーが受光する。よって、ランプを有する汎用のスキャナーユニット利用する場合、ランプをオフにして、照射ユニット10の照射面10aをスキャナーユニットに読み取らせる。
【0041】
また、本実施形態では、図2に示すように、照射ユニット10の照射面10aとスキャナーユニット20の読み取り面21との間に、ロール紙Sが通過するための隙間が空いている状態で、スキャナーユニット20が照射面10aを読み取るが、これに限らない。例えば、読み取り面21と照射面10aを密着させた状態で、スキャナーユニット20が照射面10aを読み取るようにしてもよい。ただし、その場合、スキャナーユニット20と照射ユニット10のうちの少なくとも一方を上下方向に可変にする。
【0042】
図4は、スキャナーユニット20による照射面10aの読み取りデータを説明する図である。ところで、スキャナーユニット20はカラースキャナーであり、プリンター側制御部30は、スキャナーユニット20からの読み取りデータとしてRGBデータを取得する。本実施形態の照射ユニット10が照射する光の色は、RGBの中で最も青色(B)に近い。即ち、Bデータ(青い光を読み取ったデータ)が照射ユニット10からの光をより多く読み取ったデータとなる。そこで、プリンター側制御部30は、RGBの読み取りデータのうちのBデータを以下の処理に使用する。
【0043】
また、前述のように、プリンター側制御部30がスキャナーユニット20から取得した読み取りデータでは(図4の上図)、ラインセンサー23が受光した光量を表す階調値を示す画素が2次元に並ぶ。ここで、以下の説明のため、読み取りデータ上において、プリンター1の紙幅方向に対応する方向をX方向と呼び、紙搬送方向に対応する方向をY方向と呼ぶ。
【0044】
プリンター側制御部30は、この読み取りデータ(Bデータ)をY方向(紙搬送方向)に積分し、積分値を取得する(S003)。本実施形態では、読み取りデータにおいてY方向に並ぶ画素列ごとに、各画素列に属する画素の示す階調値を積算し、その階調値の積算値を積分値とする。その結果、図4の中央図に示す積分結果(グラフ)が得られる。グラフの横軸がX方向(紙幅方向)の位置を示し、縦軸が取得した積分値を示す。
【0045】
ここで、図4の下図に示すように、照射ユニット10が有するLEDパッケージ11のうち、2行・3列目のLEDパッケージ11に照射不良が生じていたとする。即ち、3列目に位置する4個のLEDパッケージ11の下を通過するUVインクに照射される紫外線の照射エネルギー(光量)が小さく、UVインクの硬化が不完全になる。
【0046】
この場合、図4の上図に示すように、照射不良である2行・3列目のLEDパッケージ11を読み取った画素(太枠内の画素)の示す階調値が、他の画素の示す階調値よりも小さい値となる。よって、図4の中央図に示すように、紙幅方向3列目に対応する読み取りデータ上のX方向の位置nにおける積分値I(n)は小さな値となる。
【0047】
一方、紙幅方向1列目に位置する4個のLEDパッケージ11は全て正常であり、その下を通過するUVインクに照射される紫外線の照射エネルギー(光量)は大きく、UVインクは完全に硬化する。そして、正常なLEDパッケージ11を読み取った画素の示す階調値は大きな値となるため、紙幅方向1列目に対応する読み取りデータ上のX方向の位置mにおける積分値I(m)は大きな値となる。
【0048】
つまり、読み取りデータを構成する各画素の示す階調値は、各画素の位置においてラインセンサー23が受光した光量を表す階調値、即ち、照射面10aから照射された紫外線の照射エネルギーを表す階調値であるため、読み取りデータをY方向(紙搬送方向)に積分した積分値は、紙搬送方向に並ぶ4個のLEDパッケージ11から照射された紫外線の照射エネルギー(の合計値)に応じた値となる。
【0049】
言い換えると、読み取りデータにおけるX方向の或る位置の積分値は、X方向のその位置に対応する照射ユニット10の紙幅方向の位置の下を通過するUVインクに照射される紫外線の照射エネルギーに応じた値となる。
【0050】
そこで、プリンター側制御部30は、読み取りデータをY方向(紙搬送方向)に積分した積分値と閾値とを比較する(S004)。
そして、積分値が閾値以下である場合、換言すると、閾値以下である積分値が有る場合(S004→Y)、即ち、紙搬送方向に並ぶ4個のLEDパッケージ11から照射される紫外線の照射エネルギーが小さくなってしまう箇所が有る場合、プリンター側制御部30は、照射ユニット10が照射不良であると判定する(S006)。
一方、積分値が閾値よりも大きい場合、換言すると、閾値以下である積分値が無い場合(S004→N)、即ち、紙搬送方向に並ぶ4個のLEDパッケージ11から照射される紫外線の照射エネルギーが規定量以上である場合、プリンター側制御部30は、照射ユニット10が正常であると判定する(S005)。
【0051】
なお、積分値と比較する閾値は、プリンター1の設計工程等で決定され、プリンター1に記憶されているとする。閾値は、例えば、以下のように決定することができる。まず、照度計を使用して、ある4個のLEDパッケージ11の照射エネルギーを取得する。一方で、その4個のLEDパッケージ11をスキャナーユニット20に読み取らせ、読み取りデータを積分して積分値を取得する。そうして取得した照射エネルギーと積分値とに基づいて、積分値が閾値よりも大きい場合にUVインクが完全に硬化されるように、閾値を決定する。
【0052】
また更に、照度計から取得した4個のLEDパッケージ11の照射エネルギーとスキャナーユニット20による4個のLEDパッケージ11の読み取りデータに基づいて、読み取りデータ(画素の示す階調値)を照射エネルギーに換算する式を算出し、読み取りデータをY方向(紙搬送方向)に積分する際にその換算式を使用するようにしてもよい。
【0053】
以上のように、本実施形態における照射ユニット10の照射不良の検査方法では、スキャナーユニット20の読み取り面21と照射ユニット10の照射面10aが対向し、照射ユニット10が光(紫外線)を照射している状態で、スキャナーユニット20が照射面10aを読み取り、その読み取りデータをY方向(紙搬送方向)に積分することによって積分値(照射ユニットからの光の照射エネルギーに応じた値)を取得し、積分値が閾値以下である場合、照射ユニット10が照射不良であると判定する。
【0054】
例えば、照度計で各LEDパッケージ11の照射強度を測定することにより照射ユニット10の照射不良を検査する方法では、検査に多大な時間を要し、処理も煩雑となる。これに対して、本実施形態の検査方法では、スキャナーユニット20に照射ユニット10の照射面10aを1回読み取らせるだけであるため、照射不良の検査時間を短縮することができ、また、処理を容易にすることができる。
【0055】
また、例えば、LEDパッケージ11に流れる電流値に基づいて照射ユニット10の照射不良を検査する方法では、封止部13の劣化等が影響し、検査の精度が落ちる虞がある。これに対して、本実施形態の検査方法では、照射ユニット10の照射面10aをスキャナーユニット20が直接的に読み取るため、照射面10aの照射状況をより正確に検査することができる。
【0056】
また、紙搬送方向に並ぶ4個のLEDパッケージ11から照射される紫外線の照射エネルギー(光量)が規定量以上であれば、その下を通過するUVインクは完全に硬化する。そのため、本実施形態の検査方法のように、照射面10aの読み取りデータをY方向(紙搬送方向)に積分することで、積分値を「紙搬送方向に並ぶ4個のLEDパッケージ11から照射される紫外線の照射エネルギーに応じた値」、言い換えると、「照射ユニット10の下を紙搬送方向に移動するロール紙S上のUVインクに照射される紫外線の照射エネルギーに応じた値」として取得することができる。そして、この積分値を閾値と比較して照射不良を判定することで、照射ユニット10が照射不良であると不必要に判定してしまうことを防止できる。
【0057】
つまり、本実施形態の検査方法によれば、紙搬送方向に並ぶ4個のLEDパッケージ11のうちの何れかに照射不良が生じていても、他のLEDパッケージ11で全体の照射エネルギーを補えていれば、積分値が閾値以上となり、照射ユニット10が照射不良であると判定しないため、不必要に照射不良であると判定してしまうことを防止できる。そうすると、照射ユニット10のメンテナンス回数を減らすことができ、ユーザーの負担を減らすことができる。また、LEDパッケージ11を有効に利用することができる。
【0058】
また、本実施形態の検査方法では、ロール紙S(連続媒体)を交換するごとに、照射ユニット10における照射不良の検査が実施される。そうすることで、照射ユニット10が照射不良であるか否かを検査した状態で新たなロール紙Sに画像を形成することができる。よって、照射ユニット10に照射不良が生じている状態でロール紙Sに画像が形成されてしまうことを防止することができ、画像の画質劣化を防止することができる。
【0059】
また、LEDパッケージ11の寿命は比較的に長いため、画像形成ジョブ間で照射不良が発生する確率が低い。そのため、ロール紙Sを交換するごとに照射不良の検査を行うことで、検査回数を比較的に少なくすることができる。
【0060】
また、本実施形態のプリンター1のように、スキャナーユニット20の読み取り面21と照射ユニット10の照射面10aがロール紙Sを介して対向している場合、ロール紙S交換のためにロール紙Sが取り外されると、スキャナーユニット20が照射面10aを読み取り可能な状態となる。つまり、照射不良の検査のためだけにロール紙Sを取り外す必要が無くなる。
【0061】
また、本実施形態の検査方法では、スキャナーユニット20を縮小光学系のスキャナーとする。縮小光学系のスキャナーは被写界深度が深い。そのため、スキャナーユニット20の読み取り面21から照射ユニット10の照射面10a(LEDパッケージ11)までの距離が多少離れた場合でも、照射面10a(LEDパッケージ11)の状態をはっきりと読み取ることができる。
【0062】
そうすることで、照射ユニット10が照射不良であると判定された場合に、照射面10aを読み取った画像データに基づいて、照射不良であるLEDパッケージ11の位置を特定し易くなる(後述の図5C)。また、スキャナーユニット20の読み取り面21に照射面10a(LEDパッケージ11)を密着させる必要がないため、例えば、照射ユニット10におけるLEDパッケージ11の位置やスキャナーユニット20の搭載位置に関して設計の自由度が増す。
【0063】
また、ラインセンサー23へ入射する光量がラインセンサー23の飽和値を越えてしまうと、ラインセンサー23の出力値(光量に応じた電気信号)が変化しない飽和状態になってしまう。そこで、本実施形態の検査方法では、照射ユニット10の照射面10aが照射する光量よりもラインセンサー23に入射する光量を減少させるために、スキャナーユニット20の読み取り面21に減光フィルター27を取り付ける。
【0064】
そうすることで、照射ユニット10の照射面10aから照射される光量(紫外線の照射エネルギー)が多くとも、ラインセンサー23へ入射する光量を減少させることができ、ラインセンサー23が飽和状態になってしまうことを防止できる。よって、照射面10aから照射される光量(紫外線の照射エネルギー)に応じた読み取りデータを取得することができ、照射不良の検査の精度を上げることができる。なお、減光フィルター27を読み取り面21に設けるに限らず、例えば、読み取り面21からラインセンサー23までの間の何れかの位置に減光フィルター27を設けるようにしてもよい。
【0065】
また、本実施形態の検査方法では、スキャナーユニット20が出力するRGBの読み取りデータのうち、照射ユニット10が照射する光の色に最も近い色のデータ(波長が最も近いデータ)を使用して、照射不良の検査を実施する。ここでは、照射ユニット10が照射する光が青色に近いため、Bデータに基づいて照射不良を判定する。
【0066】
そうすることで、例えば、照射ユニット10が照射する光(ここでは紫外線)だけを透過するフィルターを設ける必要がなくなる。よって、照射不良の検査に、汎用のスキャナーユニットを使用することができ、コストダウンを図ることができる。
【0067】
<メンテナンス処理>
図5Aから図5Cは、照射ユニット10が照射不良である場合のメンテナンス処理を説明する図である。前述の検査において照射ユニット10が正常であると判定した場合、プリンター側制御部30は、その事をユーザーに報知し、ユーザーによってロール紙Sが交換された後、画像形成可能な状態となる。一方、前述の検査において照射ユニット10が照射不良であると判定した場合、プリンター側制御部30は、図5Aのフローに示す処理を実施する。
【0068】
まず、プリンター側制御部30は、照射不良であるLEDパッケージ11の紙幅方向の位置を特定する(S101)。そのために、プリンター側制御部30は、照射ユニット10の読み取りデータ(Bデータ)をY方向(紙搬送方向)に積分したデータ(図4の中央図)に基づいて、積分値が閾値以下である画素列のX方向の位置を取得する。例えば、図4の中央図に基づいて、プリンター側制御部30は、積分値が閾値以下である画素列のX方向の位置「n」を取得する。
【0069】
そして、プリンター側制御部30は、読み取りデータ上におけるX方向の位置「n」に対応する照射ユニット10の紙幅方向の位置「3列」を取得する。こうして、プリンター側制御部30は、照射不良であるLEDパッケージ11の紙幅方向の位置が「3列目」であると特定する。
【0070】
次に、プリンター側制御部30は、照射不良であるLEDパッケージ11の紙搬送方向の位置を特定する(S102)。そのために、プリンター側制御部30は、照射ユニット10の読み取りデータ(積分前のデータ・図4の上図)のうち、積分値が閾値以下である画素列のデータを取得する。
【0071】
図5Bは、積分値が閾値以下である画素列(X方向の位置がnである画素列)のデータを説明するグラフである。グラフの横軸がY方向(紙搬送方向)の位置を示し、縦軸が各画素の階調値(ラインセンサー23が受光した光量を表す階調値)を示す。プリンター側制御部30は、積分値が閾値以下である画素列のデータのうち、階調値が最も小さい画素のY方向の位置「j」を取得する。
【0072】
そして、プリンター側制御部30は、読み取りデータ上におけるY方向の位置「j」に対応する照射ユニット10の紙搬送方向の位置「2行」を取得する。こうして、プリンター側制御部30は、照射不良であるLEDパッケージ11の紙搬送方向の位置が「2行目」であると特定する。
【0073】
最後に、プリンター側制御部30は、照射不良であるLEDパッケージ11の紙幅方向及び紙搬送方向の位置(ここでは、3列目×2行目)をユーザーに報知し、照射不良であるLEDパッケージ11の交換を指示する(S103)。
【0074】
照射不良であるLEDパッケージ11がユーザーによって交換されると、照射ユニット10の照射不良が解消し、照射ユニット10の下を通過するロール紙S上のUVインクを完全に硬化させることができる。なお、照射不良であるLEDパッケージ11の交換後に、照射不良の検査(図3)を再度実施し、照射ユニット10の照射不良が解消された事を確認するようにしてもよい。
【0075】
なお、照射不良であるLEDパッケージ11の位置を特定する方法はこれに限らず、他の方法であってもよい。例えば、図5Cに示すように、スキャナーユニット20が照射面10aを読み取った画像データに基づいて、照射不良であるLEDパッケージ11の位置を特定してもよい。
【0076】
正常なLEDパッケージ11を読み取った画像データの部位(図中の正常部位)と照射不良であるLEDパッケージ11を読み取った画像データの部位(図中の不良部位)では、明るさが異なる。そこで、画像データにおける不良部位のX方向及びY方向の位置を、照射ユニット10における紙幅方向及び紙搬送方向の位置に対応付けることで、照射不良であるLEDパッケージ11の位置を特定することができる。
【0077】
また、照射不良であるLEDパッケージ11を交換するに限らない。例えば、各LEDパッケージ11の照射強度を可変にし、照射不良であるLEDパッケージ11と同じ列のLEDパッケージ11(即ち、紙幅方向の位置が同じであるLEDパッケージ11)の照射強度を上げるようにしてもよい。
【0078】
そうすることで、紙搬送方向に並ぶ4個のLEDパッケージ11のうちの何れかに照射不良が生じていても、他のLEDパッケージ11からの紫外線の照射エネルギーが高くなるため、その下を通過するUVインクに照射される紫外線の照射エネルギーを規定量以上にすることができる。なお、この場合、照射不良であるLEDパッケージ11の紙幅方向の位置(列の位置)だけを特定すればよい。
【0079】
このように、スキャナーユニット20による照射面10aの読み取りデータをY方向(紙搬送方向)に積分した積分値の中に閾値以下である積分値が有る場合、照射面10aの読み取りデータに基づいて、照射不良であるLEDパッケージ11の紙搬送方向の位置と紙幅方向の位置とのうちの少なくとも一方の位置を特定するとよい。
【0080】
そうすることで、照射不良であるLEDパッケージ11を交換する等のメンテナンス処理を実施し、照射ユニット10の照射不良を解消することができる。そして、ロール紙S上のUVインクを完全に硬化させることができ、画像の画質劣化を防止することができる。
【0081】
===変形例===
図6は、変形例における画像形成処理のフローを説明する図である。前述の実施形態では、ロール紙Sを交換するごとに、照射ユニット10における照射不良の検査を実施しているが、これに限らない。図6の変形例のように、画像形成ジョブごとに、照射不良の検査を実施してもよい。
【0082】
具体的に説明すると、プリンター側制御部30が、ある画像形成ジョブを受信すると、前述の照射不良の検査(図3)を実施し(S201)、照射ユニット10が照射不良であると判定した場合(S202→Y)、ユーザーにメンテナンス処理を実施するように報知する。一方、照射ユニット10が照射不良でないと判定した場合(S202→N)、プリンター側制御部30は受信した画像形成ジョブに基づいて画像形成処理を実施する(S203)。その後、次の画像形成ジョブが有る場合(S204→Y)、プリンター側制御部30は、照射不良の検査を再び実施した後に、画像形成処理を実施する。
【0083】
このように、画像形成ジョブごとに照射不良の検査を実施することで、照射ユニット10に照射不良が生じている状態で画像が形成されてしまうことを防止でき、画像の画質劣化を防止することができる。なお、前述の実施形態のプリンター1(図1A)では、照射ユニット10とスキャナーユニット20がロール紙Sを介して対向している。そのため、画像形成ジョブごとに照射不良の検査を実施する場合には、画像形成領域(ロール紙Sが通過する領域)よりも紙幅方向の外側にスキャナーユニット20を配置するとよい。そして、照射不良の検査を実施する前に、照射ユニット10を紙幅方向に移動し、照射ユニット10とスキャナーユニット20を対向させるとよい。
【0084】
また、前述の実施形態では、スキャナーユニット20を縮小光学系のスキャナーとしているが、これに限らず、密着光学系のスキャナーにしてもよい。密着光学系のスキャナーでは、読み取り範囲の幅と同じ長さのラインセンサーを使用するため、複雑な光学経路を必要としない。よって、装置の小型化、省電力化を図ることができる。また、密着光学系のスキャナーでは、読み取り面に照射ユニット10の照射面10aを密着させた状態で照射面10aを読み取らせるため、ラインセンサーは照射面10aにて照射される光(紫外線)をより確実に受光することができる。よって、照射面10aが照射する光量(紫外線の照射エネルギー)に近い読み取りデータに基づいて、照射ユニット10の照射不良を判定することができる。
【0085】
また、前述の実施形態では、照射ユニット10の紙搬送方向とスキャナーユニット20におけるキャリッジ22の移動方向が一致した状態で、スキャナーユニット20が照射面10aを読み取っているが、これに限らない。照射ユニット10の紙幅方向とキャリッジ22の移動方向が一致した状態で、スキャナーユニット20が照射面10aを読み取るようにしてもよい。
【0086】
ただし、スキャナーユニット20におけるラインセンサー23の蓄積電荷量が多く、ラインセンサー23が照射面10aの全面を読み取った電荷量を蓄積可能な場合、照射ユニット10の紙搬送方向とキャリッジ22(ラインセンサー23)の移動方向を一致させるとよい。そうすることで、ラインセンサー23の各受光素子が蓄積した電荷量が、読み取りデータをY方向(紙搬送方向)に積分した積分値に相当する。従って、各受光素子が蓄積した電荷量と閾値を比較することにより、照射ユニット10の照射不良を判定することができる。そうすると、読み取りデータの処理を容易にすることができ、照射不良の検査時間を短縮することができる。
【0087】
また、前述の実施形態では、照射ユニット10から照射される光量が多く、ラインセンサー23に入射する光量が飽和値を越えてしまうことを防止するために、スキャナーユニット20に減光フィルター27を設けているが、これに限らない。例えば、ラインセンサー23(受光素子)の電荷蓄積時間を短くするようにしてもよい。
【0088】
また、前述の実施形態では、プリンター1に搭載されたスキャナーユニット20を使用して、照射ユニット10の照射不良の検査を実施しているが、これに限らない。例えば、プリンター1とは別体のスキャナーを使用して照射不良の検査を実施してもよい。また、プリンター1に搭載されたスキャナーユニット20を、照射不良の検査に使用する他に、例えば、画像の画質を検査するために使用したり、不良ノズルのチェックパターンを検査するために使用したりしてもよい。そうすることで、プリンター1の部品数を減らすことができ、コストダウンを図ることができる。
【0089】
また、照射不良の検査に、汎用のスキャナーを使用してもよいし、専用の「照射不良の検査装置」を使用してもよい。なお、専用の照射不良の検査装置は、照射ユニット10の照射面10aを読み取るスキャナーと、読み取りデータ上にて紙搬送方向に対応する方向に読み取りデータを積分し、その積分値が閾値以下である場合に照射ユニットが照射不良であると判定する制御部と、を有する。
【0090】
また、前述の実施形態では、紫外線照射の光源(照射部)として、LEDパッケージ11を使用しているが、これに限らず、例えば、メタルハライドランプ、水銀ランプなどを使用してもよい。また、前述の実施形態のプリンター1では照射ユニット10が1個だけ設けられているが、これに限らない。例えば、UVインクを完全に硬化しない程度の紫外線を照射する仮照射ユニットをヘッド4の間に設け、UVインクを完全に硬化する本照射ユニットを紙搬送方向の最下流側に設けるようにしてもよい。そうすることで、各ヘッド4から吐出される異色のインクの滲みや混色を抑制することができる。この場合、仮照射ユニットに対しても本照射ユニットに対しても、前述の照射不良の検査を実施するとよい。
【0091】
===その他の実施の形態===
本実施形態は、主として照射不良の検査方法について記載されているが、照射不良の検査装置等の開示も含まれる。また、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0092】
<照射ユニットについて>
前述の実施形態では、照射ユニットが硬化させる光硬化型インクとして、紫外線硬化型インクを例に挙げているが、これに限らない。例えば、可視光が照射されると硬化するインクに対して、可視光を照射する照射ユニットでもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 プリンター、2A 搬送ローラー、2B 搬送ローラー、
3 プラテン、4 ヘッド、10 照射ユニット、10a 照射面、
11 LEDパッケージ、12 LED素子、13 封止部、
20 スキャナーユニット、21 読み取り面、22 キャリッジ、
23 ラインセンサー、24 スキャナー側制御部、
25 反射ミラー、26 集光レンズ、27 減光フィルター、
30 プリンター側制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化型インクを硬化させる光をそれぞれ照射する複数の照射部が所定方向及び前記所定方向に交差する方向に2次元に配置され、前記所定方向に媒体と相対移動しながら前記媒体上の前記光硬化型インクに光を照射する照射ユニットにおける照射不良の検査方法であって、
スキャナーの読み取り面と前記照射ユニットの照射面が対向し、前記照射ユニットが光を照射している状態で、前記スキャナーが前記照射面を読み取った読み取りデータを取得することと、
前記読み取りデータを、前記読み取りデータ上において前記所定方向に対応する方向に積分することによって、前記照射ユニットからの光の照射エネルギーに応じた値を取得することと、
前記光の照射エネルギーに応じた値が閾値以下である場合、前記照射ユニットが照射不良であると判定することと、
を有することを特徴とする照射不良の検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の照射不良の検査方法であって、
前記光の照射エネルギーに応じた値が前記閾値以下である場合、前記読み取りデータに基づいて、照射不良である前記照射部の前記所定方向の位置と前記所定方向に交差する方向の位置とのうちの少なくとも一方の位置を特定する、
照射不良の検査方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の照射不良の検査方法であって、
前記照射ユニットは、前記光硬化型インクを連続媒体に吐出するヘッドを有する画像形成装置に設けられ、
前記連続媒体を交換するごとに、前記照射ユニットにおける照射不良の検査を実施する、
照射不良の検査方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の照射不良の検査方法であって、
前記照射ユニットは、前記光硬化型インクを媒体に吐出するヘッドを有する画像形成装置に設けられ、
画像形成ジョブごとに、前記照射ユニットにおける照射不良の検査を実施する、
照射不良の検査方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の照射不良の検査方法であって、
前記スキャナーは、縮小光学系のスキャナーである、
照射不良の検査方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の照射不良の検査方法であって、
前記スキャナーは、前記読み取り面からの光を受光するセンサーを有し、
前記照射面が照射する光量よりも前記センサーに入射する光量を減少させる、
照射不良の検査方法。
【請求項7】
光硬化型インクを硬化させる光をそれぞれ照射する複数の照射部が所定方向及び前記所定方向に交差する方向に2次元に配置され、前記所定方向に媒体と相対移動しながら前記媒体上の前記光硬化型インクに光を照射する照射ユニットにおける照射不良の検査装置であって、
前記照射ユニットの照射面と対向し、前記照射ユニットが光を照射している状態で、前記照射面を読み取るスキャナーと、
前記スキャナーが前記照射面を読み取った読み取りデータを、前記読み取りデータ上において前記所定方向に対応する方向に積分することによって、前記照射ユニットからの光の照射エネルギーに応じた値を取得し、前記光の照射エネルギーに応じた値が閾値以下である場合、前記照射ユニットが照射不良であると判定する制御部と、
を有することを特徴とする照射不良の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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