照射野判定装置、照射野判定方法およびそのプログラム
【課題】 照射野認識処理の認識精度を向上させる。
【解決手段】 照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像Pより照射野辺の候補となる直線llを検出し、前記放射線撮影画像Pに基準点Qを設定する。検出された直線llにより放射線撮影画像Pを2つの領域に分割し、2つの領域のうち基準点Qを含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価して、外部領域に前記放射線が入射していると判定された場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定する。
【解決手段】 照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像Pより照射野辺の候補となる直線llを検出し、前記放射線撮影画像Pに基準点Qを設定する。検出された直線llにより放射線撮影画像Pを2つの領域に分割し、2つの領域のうち基準点Qを含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価して、外部領域に前記放射線が入射していると判定された場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影画像の照射野を認識する照射野判定装置、照射野判定方法およびそのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、記録された放射線撮影画像を読み取って画像データを得、この画像データに適切な画像処理を施した後、処理済みの画像データに基づいて読影に適した可視像を再生することが種々の分野で行なわれている。
【0003】
ところでX線撮影において放射線撮影画像を撮影記録するに際しては、放射線の照射による生体への影響を極力小さくするためや、観察に不要な部分からの散乱光による画質性能の低下等を防止するために、放射線が被写体の必要な部分にのみ照射されるように照射域を制限する鉛などで作られた照射野絞りを使用することが多い。
【0004】
照射野絞りを用いて撮影を行なった場合、蓄積性蛍光体シート等の記録媒体には、照射野絞りの開口輪郭の内部領域(照射野領域)に被写体等の画像が記録され、開口輪郭の外側領域(照射野外領域)には放射線が到達せず未露光状態となる。つまり、この開口輪郭に対応する画像の照射野輪郭はエッジ線となる。
【0005】
そして、このように照射野領域内にのみ画像が記録された記録媒体から画像データを読み取って画像処理を行なう場合、照射野領域内の画像データについてのみ階調処理等を施すようにすれば、処理負荷の低減、処理スピードの向上を図ることができる。
【0006】
一方、照射野外領域は未露光状態であるため、医用X線フイルムのようなネガ画像においては最低濃度領域(画素値の低い領域)となるが、例えば医用X線フイルムをシャーカステンに掛けて蛍光灯の光による透過画像を観察するとき等には、このような最低濃度領域は非常に明るい領域となるため、照射野領域のうち特に照射野外領域に近い部分については照射野外領域の明るさに影響されて読影性能が低下する。同様にCRT等の画像表示装置にその画像を表示する場合にも、照射野外領域は高輝度な領域となるため照射野内の画像の読影に支障を生じる。
【0007】
そこで放射線画像記録再生システムにおいては、このような照射野外領域についての各画像データを一律に最高濃度(若しくは最低輝度)に相当する値に強制的に置換する処理が行なわれる。そしてこの処理は一般に黒化処理と呼ばれるが、この黒化処理を行なうためには、照射野輪郭を精度よく認識することが非常に重要である。
【0008】
例えば、上記照射野輪郭が画像の濃度変化が急峻に変化するエッジ線になることを利用して、画像データの変化が急峻な部分を探索することによって、照射野輪郭を求める方法がよく知られているが、このエッジ線を求める具体的な方法として、画像の所定の点(たとえば画像の中心点等)から画像端部に向かう放射状の複数の直線を設定し、これらの各直線の方向に沿った画像データに基づいて各方向ごとにデータの差分が大きいエッジ上の候補点を検出し、これらの候補点に基づいてエッジとなる線を検出する方法が提案されている(例えば、特許文献1等)。
【0009】
あるいは、これらのエッジ候補点についてハフ(Hough)変換を適用して直線を求め、この直線で囲まれる領域を照射野領域とする方法を提案したものもある(例えば、特許文献2など)。
【特許文献1】特開昭63-259538 号公報
【特許文献2】特開平10-275213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の放射状の方向に沿って得られたエッジ上の候補点に基づいて直線を検出して照射野輪郭を認識する方法や、ハフ変換を用いて直線を検出して照射野輪郭を認識する方法では、必ずしも実際の照射野輪郭に一致する直線が得られるとは限られず、被写体と直接X線照射部の境が検出される場合もあり得る。そのため、上述したように必要な画像部分が黒化処理されたり、低濃度部分が残ったりという問題が生じていた。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、従来の照射野認識処理よりも認識精度を向上させた放射線撮影画像の照射野認識装置、照射野認識方法およびそのプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の照射野判定装置は、照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像に基準点を設定する基準点設定手段と、
前記放射線撮影画像より照射野辺の候補となる直線を検出する直線検出手段と、
前記検出された直線により前記放射線撮影画像を2つの領域に分割し、前記2つの領域のうち前記基準点を含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価した評価値を算出する評価値算出手段と、
前記評価値に基づいて、前記外部領域に前記放射線が入射していると判定された場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定する判定手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
また、本願発明の照射野判定方法は、照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像に基準点を設定する基準点設定ステップと、
前記放射線撮影画像より照射野辺の候補となる直線を検出する直線検出ステップと、
前記検出された直線により前記放射線撮影画像を2つの領域に分割し、前記2つの領域のうち前記基準点を含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価した評価値を算出する評価値算出ステップと、
前記評価値に基づいて、前記外部領域に前記放射線が入射していると判定される場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定する判定ステップとを備えたことを特徴とするものである。
【0014】
また、本願発明のプログラムは、コンピュータを、
照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像に基準点を設定する基準点設定手段と、
前記放射線撮影画像より照射野辺の候補となる直線を検出する直線検出手段と
前記検出された直線により前記放射線撮影画像を2つの領域に分割し、前記2つの領域のうち前記基準点を含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価した評価値を算出する評価値算出手段と、
前記評価値に基づいて、前記外部領域に前記放射線が入射していると判定される場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定する判定手段として機能させることを特徴とするものである。
【0015】
「基準点」は、通常行われる撮影方法と照らし合わせて、放射線撮影画像の照射野内であると考えられる範囲であればよく、「基準点の設定」は、自動的に設定するものでも、観察者などが指示入力したものであってもよい。
【0016】
「放射線が入射している領域」は、被写体を透過したX線が照射された領域、あるいは、X線が直接照射された領域であり、「放射線が入射している領域」には、散乱線などによって本来X線が照射されないようにした領域に放射線が入射した領域は含まない。
【0017】
また、前記基準点は、略中心部に設定されることが望ましい。
【0018】
「略中心部」とは、中心点からある程度の広さを持った範囲をいう。照射野絞りを用いて放射線撮影を行った放射線撮影画像の「略中心部」は、通常行われる撮影方法と照らし合わせて、放射線撮影画像の照射野内であると考えられる範囲であり、「略中心部に基準点を設定する」と、放射線撮影画像の照射野内となる場所に基準点を設定することになる。
【0019】
前記評価値は、前記外部領域に存在する全画素数に対する前記外部領域に存在する直接X線照射部に該当する画素値を有す画素数の割合であり、
前記判別手段が、前記評価値が所定の基準値より高い場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定するようにしてもよい。
【0020】
前記評価値は、前記外部領域に含まれる画像に基づいて算出された値であってもよい。
【0021】
前記評価値は、前記外部領域内の中周波数帯域の画像成分の強度であり、
前記判定手段が、前記評価値が所定の基準より高い場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定するものであってもよい。
【0022】
「中周波数帯域の画像成分」には、被写体を撮影した画像部分の成分が多く含まれ、「中周波数帯域の画像成分の強度」は、中周波数帯域の画像成分のみを抽出した画像における平均画素値など、中周波数帯域の画像成分が含まれる指標となるものであればよい。
【0023】
前記評価値は、前記外部領域に含まれる画像と前記放射線撮影画像の全体に含まれる画像とに基づいて算出された値であってもよい。
【0024】
前記評価値は、前記放射線撮影画像内の全体の画素に表れる画素値の分布幅に対する
前記外部領域内の全体の画素に表れる画素値の分布幅の割合であり、
前記判別手段が、前記評価値が所定の基準値より広く分布する場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定するものであってもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像より照射野辺の候補となる直線を検出し、検出された直線により前記放射線撮影画像を2つの領域に分割し、直線の外側に対応する外部領域に放射線が入射しているか否かを評価することにより、正確に照射野外となる領域を検出することができ、適切な領域に黒化処理を施すことができる。
【0026】
また、外部領域に存在する直接X線照射部に該当する画素数の割合をみて判別するようにすれば、直接X線照射部を含んだ領域を照射野外領域と判定することがなく、判別精度を高めることができる。
【0027】
また、外部領域内の中周波数帯域の画像成分の強度をみて判別するようにすれば、被写体が撮影された部分を含んだ領域を照射野外領域と判定することがなく、判別精度を高めることができる。
【0028】
さらに、放射線撮影画像内の全体の画素値の分布幅と外部領域内の画素値の分布幅をみて判別するようにすれば、広い分布を持つX線が照射された領域を照射野外領域と判定することがなく、判別精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の放射線撮影画像の照射野認識装置の具体的な実施の形態について図面を用いて説明する。図1は本発明の照射野認識装置の一実施形態の構成を示し、図2は照射野絞りを用いた放射線撮影画像の撮影装置を示す図(図2(a)参照)および照射野絞りの開口輪郭に対応する照射野輪郭が形成された蓄積性蛍光体シートを示す図(図2(b)参照)である。
【0030】
撮影装置で照射野絞りを用いてX線撮影を行なう場合には、まず、被写体を撮影した像が放射線撮影画像Pの中心なるように配置し、図2(a)に示すように、X線源と被写体との間に、矩形等の開口部のある照射野絞りを置いて撮影をする。この開口部の外側の部分は、X線が被写体および蓄積性蛍光体シートにX線が到達するのを防止する鉛板である。この状態でX線源から被写体にX線が照射されると、蓄積性蛍光体シートから得られた放射線撮影画像P上には、図2(b)に示すように、照射野絞りの開口部の外側に対応する領域(照射野外領域)Pout にはX線が照射されず、一方、照射野絞りの開口部より内側に対応する領域(照射野領域)Pinには被写体を透過した部分と直接X線が照射された部分が記録される。そして、照射野絞りの開口部に対応する部分は、開口部と略同一形状となり、照射野外領域Poutは高輝度なまぶしい領域となる。照射野領域Pinと照射野外領域Poutの境には、濃度が急激に変化する複数のエッジ線からなる照射野輪郭PSが形成される。照射野絞りの開口部は通常矩形であり、照射野輪郭PSは4つの直線の照射野辺で構成される。
【0031】
照射野認識装置1は、照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像Pより照射野辺の候補となる直線を検出する直線検出手段10と、放射線撮影画像Pの略中心部に基準点を設定する基準点設定手段20と、検出された直線により放射線撮影画像Pを2つの領域に分割し、2つの領域のうち基準点を含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価した評価値を算出する評価値算出手段30と、評価値に基づいて、外部領域に前記放射線が入射していると判定された場合には、この直線は照射野辺ではないものと判定する判定手段40とを備える。
【0032】
この直線検出手段10は、入力された画像データSに基づいて、上記照射野輪郭PS上の点と考えられる多数のエッジ候補点Eを検出するエッジ候補点検出手段11と、多数のエッジ候補点Eに基づいてハフ変換を利用してそれらのエッジ候補点Eによって構成されるエッジ線Lを照射野辺の候補となる線(候補線)として求める候補線検出手段12とを備えた構成である。
【0033】
エッジ候補点検出手段11は,入力された画像データSについて、図3(a)に示すように、そのデータSが表す画像Pの中心点Kを設定し、中心点Kから放射線撮影画像Pの端部にそれぞれ向う等角度間隔に、例えば、1.5度間隔に240本の放射状の直線を設定する。この放射状の直線の設定本数および間隔、放射状の直線群の中心の設定位置等は適宜変更することができる。
【0034】
これらの240本の放射状の直線にそれぞれ沿った方向において互いに隣接する画素間の画像データを比較し、その差分が最も大きい2つの画素をその線上で探索する。この探索された2つの画素間は画素値の差が大きく、エッジ上に存在する点である可能性の高いエッジ候補点Eである。このようにして各直線方向ごとにそれぞれ探索されたエッジ候補点Eを検出し、合計 240個のエッジ候補点Eを得る(図3(b)参照)。
【0035】
候補線検出手段12は、エッジ候補点検出手段11により検出された各エッジ候補点Eをつなぐ直線をハフ(Hough)変換により求める。図3(c)に示すxy座標系上で、i番目のエッジ候補点Eiの座標を(xi ,yi )( i=1,2,…,240 )としたとき、これらのxi ,yi を定数として次式(1)で表わされる曲線LSiを各エッジ候補点ごとに求める。
【0036】
ρ=xi cos θ+yi sin θ (1)
この式(1)は、XY空間において、中心座標を(xi ,yi )に固定してこの座標(xi ,yi )を通過する直線の式を表し、ρは座標(xi ,yi)を通る各直線LLとxy座標系の原点Oとの距離、θはこの直線LLとxy座標系の原点Oを垂直に結ぶ垂線とx軸がなす角度を表している。この座標(xi ,yi )を通る各直線LLは式(1)においてρ、θを徐々に変化させて得られるものであり、θρ空間(ハフ空間)では、座標(xi ,yi )を通るこれら直線LLは下式(2)に示す1本の曲線として表現される(図3(c)参照)。
【0037】
ρj =xcos θj +ysin θj (2)
各エッジ候補点についてそれぞれ同様の操作を行なうと、ハフ空間に 240本の曲線LSi ( i=1,2,…,240 )が表される。この240本の曲線LSi が交わる各交点位置(ρj ,θj )を求め、各交点位置(ρj ,θj )で交わる曲線の数をカウントする。ハフ空間上で、交差する曲線の数(カウント値)が多い交点α,βが、多くのエッジ候補点Eを通る直線を表す。
【0038】
そこで、全てのエッジ候補点Eについて上記カウントを行ない、予め設定された個数に到達するまでカウント値が上位のものから順に交点位置(ρj ,θj )を抽出し、それらを実空間に戻してXY平面上の直線を求め、この求められた複数の直線が候補線LLである。照射野の形状は、4つの直線で囲まれた矩形であることから、少なくとも4つ以上の候補線LLを抽出する。
【0039】
しかしながら、この候補線LLは、照射野の形状を構成する直線の他に被写体の外形などを表す直線である可能性もある。例えば、図4に示すように被写体の胸部から腕にかけて撮影した場合、腕の形状を構成する直線llも含んで検出する可能性がある。そこで、抽出された直線llを評価して、これらの照射野の形状を構成する直線以外の直線はキャンセルする。
【0040】
基準点設定手段20は、放射線撮影画像P上の略中心部に基準点Qを設定する。放射線撮影画像Pを撮影する際、被写体が略中心に位置するように撮影が行われる。したがって、放射線撮影画像Pの略中心部を基準点とすれば、照射野内に基準点Qを設定することになる。具体的には、放射線撮影画像Pの中心点Kを用いることができるが、照射野内にあると思われる点であれば、通常の撮影方法と照らし合わせて定められれば中心点以外の点であってもよい。あるいは、自動的に設定することが困難であれば、観察者が基準点Qを設定するようにしてもよい。
【0041】
評価値算出手段30は、図5に示すように、上記の手法で抽出された直線で放射線撮影画像Pを2つの領域に分割し、前記2つの領域のうち前記基準点Qを含まない外部領域をPoutsideとし、外部領域Poutsideが照射野外領域であるか否かを評価する。外部領域Poutsideが照射野外領域である場合は、その領域は放射線は入射していない高輝度な領域となる。そこで、被写体が撮影されている部分や直接X線照射部のような放射線が入射した領域が外部領域Poutsideに存在するか否かを評価して評価値を求める。評価値は、外部領域Poutsideに含まれる画像のみを評価して算出する手法と、外部領域Poutsideに含まれる画像と放射線撮影画像Pの全体の画像を評価して算出する手法があるが、以下に評価値を求める各手法について説明する。
【0042】
(1) ヒストグラムを用いて評価する手法
外部領域Poutsideが照射野外である場合には高輝度な白い領域となり、画素値は略一定となるため、外部領域Poutside内に含まれる画素の画素値が分布する範囲は非常に狭い。一方、放射線撮影画像Pに含まれる全ての画素の画素値が分布する範囲はかなり広い範囲になる。
【0043】
そこで、まず、放射線撮影画像Pの全体に含まれる画素値のヒストグラムHall(ここでは、濃度が高い画素の画素値を大きな値で表し、濃度が低くなるほど画素値が小さくなるものとして、以下で説明する。)と、外部領域Poutside内の画素値のヒストグラムHoutsideをそれぞれ算出し(図6参照)、ヒストグラムHall内の最大画素値と最小画素値の差Aと、ヒストグラムHoutside内の最大画素値と最小画素値の差Bを求めて、B/Aを評価値として求める。
【0044】
評価手段40は、B/Aが閾値より大きいときには外部領域Poutsideには被写体が撮影されている可能性が高いため、直線は照射野辺ではないものと判定してキャンセルするが、撮影部位によって直接X線照射部が存在する場合と存在しない場合があるため、閾値を変えるようにしたものが好ましい。
【0045】
画像中の最低濃度値(最高輝度値)を持つ画素は照射野外にあることが多く、照射野外に散乱線などの影響で濃度の高い領域が現れると、照射野外に現れる濃度値の範囲(濃度幅)も広くなる。そのため、直接X線照射部が存在するような画像では、画像全体に現れる濃度幅が大きいが、直接X線照射部が存在しないような画像で画像全体に現れる濃度幅が小さく、照射野外に現れる濃度幅が画像全体の濃度幅に対して相対的に大きくなる。そのため、直接X線照射部が存在しないような画像では閾値をあまり小さくすると、直線の外側(外部領域Poutside)が照射野外と一致して正しく検出された直線を照射野辺ではないものと判定してキャンセルする可能性が高くなる。一方、閾値を高くしすぎると、直接X線照射部が存在する画像から検出した直線の外側(外部領域Poutside)に、直接X線照射部は存在せず被写体が撮影されている場合には、外部領域Poutsideの濃度幅は画像全体の濃度幅に比べて比較的小さいため、このような照射野辺ではない直線をキャンセルすることができなくなる。
【0046】
また、四肢を撮影した画像は、画像全体からすると被写体が撮影されている領域が比較的小さく直接X線照射部が存在することが多いため、画像全体の濃度幅が大きい。また、図7に示すように、例えば腕の周囲に直接X線照射部Rが存在し、照射野輪郭PSに沿うように広く分布することが多い。このような画像から腕の輪郭となる直線を照射野辺の候補として検出した場合には、直線の外側(外部領域Poutside)に直接X線照射部Rが存在することになる。このように四肢を撮影した画像であることが撮影者の選択した撮影メニューから判断できるときは、直線の外側(外部領域Poutside)に直接X線照射部Rが存在する可能性が高いため、閾値を高く0.9程度に設定してもよい。
【0047】
一方、聴器や腰椎などを撮影した画像は画像全体の濃度幅が小さく、B/Aを閾値で直線を評価することは難しいため、この手法による直線のキャンセルは行わないようにする。
【0048】
上述の四肢や聴器や腰椎以外を撮影した場合には、一般的に閾値は0.8程度とする。
【0049】
以上からわかるように、閾値を0.8〜0.9に設定するのが最も好ましいが、撮影する部位により直接X線照射部が存在か否かや、直接X線照射部と被写体との境に直線が現れる否かに応じて、設定する閾値を0.7〜0.9の範囲で変えるようにする。
【0050】
あるいは、外部領域Poutside内の画素値の分散σ1と、放射線撮影画像Pの全体に含まれる画素値の分散σ2を求めて、分散σ2に対して分散σ1が十分に小さくないときには外部領域Poutsideには被写体が撮影されている可能性が高いため、直線は照射野辺ではないものと判定してキャンセルするようにしてもよい。
【0051】
(2) 画素値を用いて評価する手法
また、外部領域Poutsideは放射線が照射されていない領域であるため、そこには、直接X線が照射された部分は含まれない。つまり、射野外領域には、直接X線照射部の画素値を持つ画素がほとんど含まれることがない。そこで、外部領域Poutside内の直接X線照射部の画素値を持つ画素の割合から、外部領域Poutsideが照射野外領域であるか否かの判定をする。
【0052】
直接X線照射部の画素値は、放射線を照射した量によって異なるため、直接X線照射部の画素値とそれ以外の部分の画素値とを区別する閾値を決定する手順で以下に説明する。ここでは、画像の階調を8ビット(0〜255)で表すものとする。
【0053】
(i ) まず、画像全体のヒストグラムから、最大画素値histmaxを求める。
【0054】
(ii) 直接X線照射部は高輝度な領域であり、通常少なくとも100を超えた画素値を持つ。そこで、直接X線照射部が存在する画像であるか否かをhistmaxに応じて判断する。
(ア)histmax ≦ 100 の場合には、直接X線照射部が存在しない画像であると判断して、閾値の探索を行わない。
(イ)histmax > 100 の場合には(iii)へ行き、直接X線照射部の画素値とそれ以外の領域を区別する閾値を算出する。
【0055】
(iii) 図8に示すように、画像全体のヒストグラム(Dhは直接X線照射部、Dmは被写体が撮影された部分、Dlは照射野外領域に該当する)をとると、大きく分けて3つのピークがあるが、直接X線照射部の画素値は最も高濃度側のピークをもつ部分Dhに含まれる。そこで、最も高濃度側の部分Dhと中間辺りにピークをもつ被写体が撮影された部分Dmとの境界histmax2を探索する。
まず、j=histmax-5とし、jを5ずつ減らしながら、全画素数に対する画素値jを持つ画素数の割合を計算し、始めてこの割合が0.2%を下回るjをhistmax2とする。
【0056】
(iv) histmax 〜histmax2の間の画素値を持つ画素が直接X線照射部であるが、直接X線照射部は100以下の画素値を持つことはないため、histmax2が100以下の場合にはhistmax2の探索に失敗したものと判断する。そこで、
(ア) histmax2 ≦ 100 となった場合には、経験的に直接X線照射部の画素値のほとんどが、histmax からhistmax −20の間に存在することがわかっているので、閾値Thを
Th = histmax − 20
と決定する。
(イ) histmax2 > 100 の場合には、(v)へいく。
【0057】
(v ) そこで、histmax2 > 100 の場合には閾値Th を、
Th = histmax2 −15
と決定する。しかし、直接X線照射部に現れる画素値はバラツキが少ない領域であるため、histmax−Thが45より大きくなる(つまり、直接X線照射部の画素値がかなり広い範囲にわたって分布する)ことは、通常はありえない。そこで、
(ア) histmax − Th > 45 の場合には閾値Th を、
Th = histmax − 20
と決定する。
(イ) histmax − Th ≦ 45 の場合には、(vi)へいく。
【0058】
(vi) さらに、全画素数に対するhistmax2 −15以上の画素値を持つ画素数の割合が95%以上の場合には、明確なピークが現れなかったことになる。そこで、以下のように閾値Thを決定する。
(ア) 95%以上の場合には、経験的に得られた直接X線照射部に現れる画素値の範囲から閾値Thを、
Th = histmax − 20
と決定する。
(イ) 95%未満の場合には、探索された直接X線照射部の画素値の範囲よりも少し低いところを閾値Thとし、
Th = histmax2 − 15
と決定する。
【0059】
上のようにして得られた閾値Thを越えた画素値が直接X線成分の画素値である。この画素値を用いて、外部領域Poutside内の直接X線成分の画素が全画素内に含まれる割合を評価値として求める。判定手段40は、外部領域Poutside内の全画素の0.1%以上が直接X線成分の画素値を持つ画素であれば、外部領域Poutsideに放射線が照射された領域が含まれている可能性が高いため、直線は照射野辺ではないものと判定してキャンセルする。
【0060】
(3) 中周波帯域の成分を用いて評価する手法
あるいは、外部領域Poutsideは放射線が照射されていない領域であり、そこには被写体が撮影された領域は含まれない。照射野外の領域や直接X線照射領域は低周波帯域の画像であり、ノイズ成分は高周波帯域の画像であるが、被写体が撮影されている領域は中周波数帯域の画像である。従って、中周波数帯域の画像成分のみを抽出することにより、被写体が撮影されている画像部分のみを抽出することができる。
【0061】
そこで、外部領域Poutsideから中周波数帯域の画像成分を抽出して、その画像成分の強度を求めることにより、外部領域Poutsideに被写体が含まれているか否かを評価することができる。具体的には、外部領域Poutside内の各画素(図9の点c)を中心として5×5のマスクと3×3のマスクを用いて、次式の演算で強度を求める。
【0062】
A=5×5マスク内の画素の平均 − 3×3マスク内の画素の平均 (3)
強度=(Σ|A|)/N (4)
判定手段40は、この評価値が閾値よりも大きいときは、この直線は照射野辺ではないものと判定してキャンセルする。被写体の骨や体の輪郭などの大まかな構造物は0.056〜0.093cycle/mmの周波数帯域に含まれる画像成分である。そこで、この周波数成分で構成する画像成分を抽出するためには、5×5マスクは1辺が5mm〜20mm、3×3マスクは1辺が3mm〜12mmのものを用いるのが最適であり、例えば、5×5マスクは1辺が9mmであれば、3×3マスクは1辺が5.4mmのものを用いる。また、マスクの大きさは、5×5と3×3に限られるものではなく画像の解像度に応じて適切な大きさのマスクを採用するようにしてもよい。
【0063】
(4) 信頼度の高い直線基準と交差する角度を用いて評価する手法
照射野外領域から照射野内領域の分かれ目となる線上は、画素値が急激に変化する場所でもある。そこで、照射野辺の候補となる直線の中から直線を境にして濃淡の変化が急激なものが照射野辺である可能性が高い。そこで、直線上にある各画素を中心にして3×3画素近傍の領域において以下の計算を行う。
【0064】
図10に示すように、3×3画素の領域内の中心に存在する画素(点e)を中心として、差分値Bを下式で求める。
【0065】
B=|(a-g)+(b-h)+(c-l)|+|(c-a)+(f-d)+(i-g)| (5)
この差分値Bを直線上にある全ての点について計算し、各点における差分値Bの総和ΣBを直線上にある画素の総数Nで割った指標値ΣB/Nを求めて、ΣB/Nが最も大きい直線を照射野辺である確信度が最も高い確信直線として複数の直線の中から1つ選択する。
【0066】
図11に示すように、信頼度の高い確信直線を基準にして、この直線の傾きとの違いが±α°の範囲内にある直線(平行な直線)、またはこの直線の傾きとの違いが90°±α°の範囲内にある直線(直行する直線)以外は、照射野辺ではないものと判定してキャンセルする。経験的に、α°は10°程度にすると良好な結果が得られる。
【0067】
(5) エッジらしさを用いて直線を評価する手法
照射野外領域から照射野内領域の分かれ目となる線は、上述のように濃淡が急激であり、さらに画素値の変化する方向が揃った方向を向いたエッジである。上述の指標値ΣB/Nを用いて、照射野辺である信頼度を求め、さらに、各直線のエントロピーを算出して濃淡の変化の方向が揃っているかを評価する。
【0068】
まず、エントロピーを算出するために、図12(a)のように、直線上にある各画素を中心(点O)にして5×5マスクを用いて直線上の各画素における画素値の勾配θを算出する。
【0069】
y=(a+b+c+d+e)−(l+m+n+p+q) (6)
x=(e+g+i+k+q)−(a+f+h+j+i) (7)
y≧0の場合 θ=tan−1(y/x) (8)
y<0の場合 θ=−tan−1(y/x) (9)
となる。
【0070】
この得られた勾配θを、図12(b)に示す勾配方向1〜8のうちの最も近い方向のいずれかに振り分ける。
【0071】
直線上の各点における勾配θが、勾配方向1〜8のうちいずれに振り分けられたかを見てエントロピーの計算をする。直線上の点の総数Totalと、直線上の同じ勾配方向iを持つ点の数Ziから、同じ勾配方向iが生じる生起確率P(i)を求める。
【0072】
P(i)=Zi/Total (10)
これより、エントロピーHは、
H=−ΣP(i)ln(P(i)) (11)
となる。図13に示すように、エントロピーHを縦軸とし差分値Bを横軸としたグラフを用い、グラフ上で直線Lより上にある線は照射野辺の可能性は少ないものとしてキャンセルし、直線lより下にある線は照射野辺の可能性が高いものとして残すようにする。
【0073】
上述の各手法で評価値の算出を行う際、放射線撮影画像の端に並ぶ画素値はIPから読み取った画素の値ではなく記録媒体に残っていた値である可能性があるため、端から数画素分は評価値の算出に用いないようにして計算するものが好ましい。
【0074】
ここで、照射野認識装置1の動作について、図14のフローチャートに従って、説明する。
【0075】
まず、基準点設定手段20により、中心点Kを自動的に基準点として設定する(S100)。次に、この中心点Kを用いて、直線検出手段10のエッジ候補点検出手段11により、上記照射野輪郭PS上の点と考えられる多数のエッジ候補点Eを検出し、候補線検出手段12でハフ変換を利用して、検出された多数のエッジ候補点Eによって構成されるエッジ線Lを照射野辺の候補となる直線(候補線)として求める(S101)。
【0076】
照射野辺の候補となる直線は、照射野辺の数より多く検出されるので、各直線を上述の評価手段40を用いて評価値を算出し(S102)、算出した評価値に基づいて余分な直線をキャンセルする(S103)。
【0077】
検出された全ての直線について評価が終わるまでS102からS103を繰り返す(S104)。
【0078】
以上、詳細に説明したように、各手法を用いて検出された直線が照射野の輪郭を構成する直線であるか否かを正確に判定して正しく照射野を認識することができる。
【0079】
また、上述の各手法を個別に用いるのではなくいくつかを組み合わせて評価することによって、より正確な判定を行うことが可能になる。
【0080】
また、上記各手段をコンピュータ上に機能させるようなプログラムを記録した媒体を用いてコンピュータにインストールすることによって、照射野判定装置として動作させることができる。また、このプログラムはネットワークを介して提供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】照射野判定装置の概略構成図
【図2】照射野絞りを用いて撮影する方法を説明するための図
【図3】直線の検出方法を説明するための図
【図4】照射野辺の候補となる直線を誤検出した一例
【図5】外部領域と基準点との関係を説明するための図
【図6】放射線撮影画像全体のヒストグラムと照射野外領域のヒストグラムの一例
【図7】四肢を撮影した放射線撮影画像の一例
【図8】放射線撮影画像全体のヒストグラムの一例
【図9】中周波数帯域の画像成分を抽出するためにマスクの一例
【図10】差分値の算出方法を説明するための図
【図11】直行する直線から照射野辺を検出する方法を説明するための図
【図12】画素値の勾配の求め方を説明するための図
【図13】エッジらしさを判定する方法を説明するための図
【図14】照射野認識装置の動作を説明するためのフローチャート
【符号の説明】
【0082】
1 照射野認識装置
10 直線検出手段
11 エッジ候補点検出手段
12 候補線検出手段
20 基準点設定手段
30 評価値算出手段
40 判定手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影画像の照射野を認識する照射野判定装置、照射野判定方法およびそのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、記録された放射線撮影画像を読み取って画像データを得、この画像データに適切な画像処理を施した後、処理済みの画像データに基づいて読影に適した可視像を再生することが種々の分野で行なわれている。
【0003】
ところでX線撮影において放射線撮影画像を撮影記録するに際しては、放射線の照射による生体への影響を極力小さくするためや、観察に不要な部分からの散乱光による画質性能の低下等を防止するために、放射線が被写体の必要な部分にのみ照射されるように照射域を制限する鉛などで作られた照射野絞りを使用することが多い。
【0004】
照射野絞りを用いて撮影を行なった場合、蓄積性蛍光体シート等の記録媒体には、照射野絞りの開口輪郭の内部領域(照射野領域)に被写体等の画像が記録され、開口輪郭の外側領域(照射野外領域)には放射線が到達せず未露光状態となる。つまり、この開口輪郭に対応する画像の照射野輪郭はエッジ線となる。
【0005】
そして、このように照射野領域内にのみ画像が記録された記録媒体から画像データを読み取って画像処理を行なう場合、照射野領域内の画像データについてのみ階調処理等を施すようにすれば、処理負荷の低減、処理スピードの向上を図ることができる。
【0006】
一方、照射野外領域は未露光状態であるため、医用X線フイルムのようなネガ画像においては最低濃度領域(画素値の低い領域)となるが、例えば医用X線フイルムをシャーカステンに掛けて蛍光灯の光による透過画像を観察するとき等には、このような最低濃度領域は非常に明るい領域となるため、照射野領域のうち特に照射野外領域に近い部分については照射野外領域の明るさに影響されて読影性能が低下する。同様にCRT等の画像表示装置にその画像を表示する場合にも、照射野外領域は高輝度な領域となるため照射野内の画像の読影に支障を生じる。
【0007】
そこで放射線画像記録再生システムにおいては、このような照射野外領域についての各画像データを一律に最高濃度(若しくは最低輝度)に相当する値に強制的に置換する処理が行なわれる。そしてこの処理は一般に黒化処理と呼ばれるが、この黒化処理を行なうためには、照射野輪郭を精度よく認識することが非常に重要である。
【0008】
例えば、上記照射野輪郭が画像の濃度変化が急峻に変化するエッジ線になることを利用して、画像データの変化が急峻な部分を探索することによって、照射野輪郭を求める方法がよく知られているが、このエッジ線を求める具体的な方法として、画像の所定の点(たとえば画像の中心点等)から画像端部に向かう放射状の複数の直線を設定し、これらの各直線の方向に沿った画像データに基づいて各方向ごとにデータの差分が大きいエッジ上の候補点を検出し、これらの候補点に基づいてエッジとなる線を検出する方法が提案されている(例えば、特許文献1等)。
【0009】
あるいは、これらのエッジ候補点についてハフ(Hough)変換を適用して直線を求め、この直線で囲まれる領域を照射野領域とする方法を提案したものもある(例えば、特許文献2など)。
【特許文献1】特開昭63-259538 号公報
【特許文献2】特開平10-275213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の放射状の方向に沿って得られたエッジ上の候補点に基づいて直線を検出して照射野輪郭を認識する方法や、ハフ変換を用いて直線を検出して照射野輪郭を認識する方法では、必ずしも実際の照射野輪郭に一致する直線が得られるとは限られず、被写体と直接X線照射部の境が検出される場合もあり得る。そのため、上述したように必要な画像部分が黒化処理されたり、低濃度部分が残ったりという問題が生じていた。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、従来の照射野認識処理よりも認識精度を向上させた放射線撮影画像の照射野認識装置、照射野認識方法およびそのプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の照射野判定装置は、照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像に基準点を設定する基準点設定手段と、
前記放射線撮影画像より照射野辺の候補となる直線を検出する直線検出手段と、
前記検出された直線により前記放射線撮影画像を2つの領域に分割し、前記2つの領域のうち前記基準点を含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価した評価値を算出する評価値算出手段と、
前記評価値に基づいて、前記外部領域に前記放射線が入射していると判定された場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定する判定手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
また、本願発明の照射野判定方法は、照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像に基準点を設定する基準点設定ステップと、
前記放射線撮影画像より照射野辺の候補となる直線を検出する直線検出ステップと、
前記検出された直線により前記放射線撮影画像を2つの領域に分割し、前記2つの領域のうち前記基準点を含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価した評価値を算出する評価値算出ステップと、
前記評価値に基づいて、前記外部領域に前記放射線が入射していると判定される場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定する判定ステップとを備えたことを特徴とするものである。
【0014】
また、本願発明のプログラムは、コンピュータを、
照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像に基準点を設定する基準点設定手段と、
前記放射線撮影画像より照射野辺の候補となる直線を検出する直線検出手段と
前記検出された直線により前記放射線撮影画像を2つの領域に分割し、前記2つの領域のうち前記基準点を含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価した評価値を算出する評価値算出手段と、
前記評価値に基づいて、前記外部領域に前記放射線が入射していると判定される場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定する判定手段として機能させることを特徴とするものである。
【0015】
「基準点」は、通常行われる撮影方法と照らし合わせて、放射線撮影画像の照射野内であると考えられる範囲であればよく、「基準点の設定」は、自動的に設定するものでも、観察者などが指示入力したものであってもよい。
【0016】
「放射線が入射している領域」は、被写体を透過したX線が照射された領域、あるいは、X線が直接照射された領域であり、「放射線が入射している領域」には、散乱線などによって本来X線が照射されないようにした領域に放射線が入射した領域は含まない。
【0017】
また、前記基準点は、略中心部に設定されることが望ましい。
【0018】
「略中心部」とは、中心点からある程度の広さを持った範囲をいう。照射野絞りを用いて放射線撮影を行った放射線撮影画像の「略中心部」は、通常行われる撮影方法と照らし合わせて、放射線撮影画像の照射野内であると考えられる範囲であり、「略中心部に基準点を設定する」と、放射線撮影画像の照射野内となる場所に基準点を設定することになる。
【0019】
前記評価値は、前記外部領域に存在する全画素数に対する前記外部領域に存在する直接X線照射部に該当する画素値を有す画素数の割合であり、
前記判別手段が、前記評価値が所定の基準値より高い場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定するようにしてもよい。
【0020】
前記評価値は、前記外部領域に含まれる画像に基づいて算出された値であってもよい。
【0021】
前記評価値は、前記外部領域内の中周波数帯域の画像成分の強度であり、
前記判定手段が、前記評価値が所定の基準より高い場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定するものであってもよい。
【0022】
「中周波数帯域の画像成分」には、被写体を撮影した画像部分の成分が多く含まれ、「中周波数帯域の画像成分の強度」は、中周波数帯域の画像成分のみを抽出した画像における平均画素値など、中周波数帯域の画像成分が含まれる指標となるものであればよい。
【0023】
前記評価値は、前記外部領域に含まれる画像と前記放射線撮影画像の全体に含まれる画像とに基づいて算出された値であってもよい。
【0024】
前記評価値は、前記放射線撮影画像内の全体の画素に表れる画素値の分布幅に対する
前記外部領域内の全体の画素に表れる画素値の分布幅の割合であり、
前記判別手段が、前記評価値が所定の基準値より広く分布する場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定するものであってもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像より照射野辺の候補となる直線を検出し、検出された直線により前記放射線撮影画像を2つの領域に分割し、直線の外側に対応する外部領域に放射線が入射しているか否かを評価することにより、正確に照射野外となる領域を検出することができ、適切な領域に黒化処理を施すことができる。
【0026】
また、外部領域に存在する直接X線照射部に該当する画素数の割合をみて判別するようにすれば、直接X線照射部を含んだ領域を照射野外領域と判定することがなく、判別精度を高めることができる。
【0027】
また、外部領域内の中周波数帯域の画像成分の強度をみて判別するようにすれば、被写体が撮影された部分を含んだ領域を照射野外領域と判定することがなく、判別精度を高めることができる。
【0028】
さらに、放射線撮影画像内の全体の画素値の分布幅と外部領域内の画素値の分布幅をみて判別するようにすれば、広い分布を持つX線が照射された領域を照射野外領域と判定することがなく、判別精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の放射線撮影画像の照射野認識装置の具体的な実施の形態について図面を用いて説明する。図1は本発明の照射野認識装置の一実施形態の構成を示し、図2は照射野絞りを用いた放射線撮影画像の撮影装置を示す図(図2(a)参照)および照射野絞りの開口輪郭に対応する照射野輪郭が形成された蓄積性蛍光体シートを示す図(図2(b)参照)である。
【0030】
撮影装置で照射野絞りを用いてX線撮影を行なう場合には、まず、被写体を撮影した像が放射線撮影画像Pの中心なるように配置し、図2(a)に示すように、X線源と被写体との間に、矩形等の開口部のある照射野絞りを置いて撮影をする。この開口部の外側の部分は、X線が被写体および蓄積性蛍光体シートにX線が到達するのを防止する鉛板である。この状態でX線源から被写体にX線が照射されると、蓄積性蛍光体シートから得られた放射線撮影画像P上には、図2(b)に示すように、照射野絞りの開口部の外側に対応する領域(照射野外領域)Pout にはX線が照射されず、一方、照射野絞りの開口部より内側に対応する領域(照射野領域)Pinには被写体を透過した部分と直接X線が照射された部分が記録される。そして、照射野絞りの開口部に対応する部分は、開口部と略同一形状となり、照射野外領域Poutは高輝度なまぶしい領域となる。照射野領域Pinと照射野外領域Poutの境には、濃度が急激に変化する複数のエッジ線からなる照射野輪郭PSが形成される。照射野絞りの開口部は通常矩形であり、照射野輪郭PSは4つの直線の照射野辺で構成される。
【0031】
照射野認識装置1は、照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像Pより照射野辺の候補となる直線を検出する直線検出手段10と、放射線撮影画像Pの略中心部に基準点を設定する基準点設定手段20と、検出された直線により放射線撮影画像Pを2つの領域に分割し、2つの領域のうち基準点を含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価した評価値を算出する評価値算出手段30と、評価値に基づいて、外部領域に前記放射線が入射していると判定された場合には、この直線は照射野辺ではないものと判定する判定手段40とを備える。
【0032】
この直線検出手段10は、入力された画像データSに基づいて、上記照射野輪郭PS上の点と考えられる多数のエッジ候補点Eを検出するエッジ候補点検出手段11と、多数のエッジ候補点Eに基づいてハフ変換を利用してそれらのエッジ候補点Eによって構成されるエッジ線Lを照射野辺の候補となる線(候補線)として求める候補線検出手段12とを備えた構成である。
【0033】
エッジ候補点検出手段11は,入力された画像データSについて、図3(a)に示すように、そのデータSが表す画像Pの中心点Kを設定し、中心点Kから放射線撮影画像Pの端部にそれぞれ向う等角度間隔に、例えば、1.5度間隔に240本の放射状の直線を設定する。この放射状の直線の設定本数および間隔、放射状の直線群の中心の設定位置等は適宜変更することができる。
【0034】
これらの240本の放射状の直線にそれぞれ沿った方向において互いに隣接する画素間の画像データを比較し、その差分が最も大きい2つの画素をその線上で探索する。この探索された2つの画素間は画素値の差が大きく、エッジ上に存在する点である可能性の高いエッジ候補点Eである。このようにして各直線方向ごとにそれぞれ探索されたエッジ候補点Eを検出し、合計 240個のエッジ候補点Eを得る(図3(b)参照)。
【0035】
候補線検出手段12は、エッジ候補点検出手段11により検出された各エッジ候補点Eをつなぐ直線をハフ(Hough)変換により求める。図3(c)に示すxy座標系上で、i番目のエッジ候補点Eiの座標を(xi ,yi )( i=1,2,…,240 )としたとき、これらのxi ,yi を定数として次式(1)で表わされる曲線LSiを各エッジ候補点ごとに求める。
【0036】
ρ=xi cos θ+yi sin θ (1)
この式(1)は、XY空間において、中心座標を(xi ,yi )に固定してこの座標(xi ,yi )を通過する直線の式を表し、ρは座標(xi ,yi)を通る各直線LLとxy座標系の原点Oとの距離、θはこの直線LLとxy座標系の原点Oを垂直に結ぶ垂線とx軸がなす角度を表している。この座標(xi ,yi )を通る各直線LLは式(1)においてρ、θを徐々に変化させて得られるものであり、θρ空間(ハフ空間)では、座標(xi ,yi )を通るこれら直線LLは下式(2)に示す1本の曲線として表現される(図3(c)参照)。
【0037】
ρj =xcos θj +ysin θj (2)
各エッジ候補点についてそれぞれ同様の操作を行なうと、ハフ空間に 240本の曲線LSi ( i=1,2,…,240 )が表される。この240本の曲線LSi が交わる各交点位置(ρj ,θj )を求め、各交点位置(ρj ,θj )で交わる曲線の数をカウントする。ハフ空間上で、交差する曲線の数(カウント値)が多い交点α,βが、多くのエッジ候補点Eを通る直線を表す。
【0038】
そこで、全てのエッジ候補点Eについて上記カウントを行ない、予め設定された個数に到達するまでカウント値が上位のものから順に交点位置(ρj ,θj )を抽出し、それらを実空間に戻してXY平面上の直線を求め、この求められた複数の直線が候補線LLである。照射野の形状は、4つの直線で囲まれた矩形であることから、少なくとも4つ以上の候補線LLを抽出する。
【0039】
しかしながら、この候補線LLは、照射野の形状を構成する直線の他に被写体の外形などを表す直線である可能性もある。例えば、図4に示すように被写体の胸部から腕にかけて撮影した場合、腕の形状を構成する直線llも含んで検出する可能性がある。そこで、抽出された直線llを評価して、これらの照射野の形状を構成する直線以外の直線はキャンセルする。
【0040】
基準点設定手段20は、放射線撮影画像P上の略中心部に基準点Qを設定する。放射線撮影画像Pを撮影する際、被写体が略中心に位置するように撮影が行われる。したがって、放射線撮影画像Pの略中心部を基準点とすれば、照射野内に基準点Qを設定することになる。具体的には、放射線撮影画像Pの中心点Kを用いることができるが、照射野内にあると思われる点であれば、通常の撮影方法と照らし合わせて定められれば中心点以外の点であってもよい。あるいは、自動的に設定することが困難であれば、観察者が基準点Qを設定するようにしてもよい。
【0041】
評価値算出手段30は、図5に示すように、上記の手法で抽出された直線で放射線撮影画像Pを2つの領域に分割し、前記2つの領域のうち前記基準点Qを含まない外部領域をPoutsideとし、外部領域Poutsideが照射野外領域であるか否かを評価する。外部領域Poutsideが照射野外領域である場合は、その領域は放射線は入射していない高輝度な領域となる。そこで、被写体が撮影されている部分や直接X線照射部のような放射線が入射した領域が外部領域Poutsideに存在するか否かを評価して評価値を求める。評価値は、外部領域Poutsideに含まれる画像のみを評価して算出する手法と、外部領域Poutsideに含まれる画像と放射線撮影画像Pの全体の画像を評価して算出する手法があるが、以下に評価値を求める各手法について説明する。
【0042】
(1) ヒストグラムを用いて評価する手法
外部領域Poutsideが照射野外である場合には高輝度な白い領域となり、画素値は略一定となるため、外部領域Poutside内に含まれる画素の画素値が分布する範囲は非常に狭い。一方、放射線撮影画像Pに含まれる全ての画素の画素値が分布する範囲はかなり広い範囲になる。
【0043】
そこで、まず、放射線撮影画像Pの全体に含まれる画素値のヒストグラムHall(ここでは、濃度が高い画素の画素値を大きな値で表し、濃度が低くなるほど画素値が小さくなるものとして、以下で説明する。)と、外部領域Poutside内の画素値のヒストグラムHoutsideをそれぞれ算出し(図6参照)、ヒストグラムHall内の最大画素値と最小画素値の差Aと、ヒストグラムHoutside内の最大画素値と最小画素値の差Bを求めて、B/Aを評価値として求める。
【0044】
評価手段40は、B/Aが閾値より大きいときには外部領域Poutsideには被写体が撮影されている可能性が高いため、直線は照射野辺ではないものと判定してキャンセルするが、撮影部位によって直接X線照射部が存在する場合と存在しない場合があるため、閾値を変えるようにしたものが好ましい。
【0045】
画像中の最低濃度値(最高輝度値)を持つ画素は照射野外にあることが多く、照射野外に散乱線などの影響で濃度の高い領域が現れると、照射野外に現れる濃度値の範囲(濃度幅)も広くなる。そのため、直接X線照射部が存在するような画像では、画像全体に現れる濃度幅が大きいが、直接X線照射部が存在しないような画像で画像全体に現れる濃度幅が小さく、照射野外に現れる濃度幅が画像全体の濃度幅に対して相対的に大きくなる。そのため、直接X線照射部が存在しないような画像では閾値をあまり小さくすると、直線の外側(外部領域Poutside)が照射野外と一致して正しく検出された直線を照射野辺ではないものと判定してキャンセルする可能性が高くなる。一方、閾値を高くしすぎると、直接X線照射部が存在する画像から検出した直線の外側(外部領域Poutside)に、直接X線照射部は存在せず被写体が撮影されている場合には、外部領域Poutsideの濃度幅は画像全体の濃度幅に比べて比較的小さいため、このような照射野辺ではない直線をキャンセルすることができなくなる。
【0046】
また、四肢を撮影した画像は、画像全体からすると被写体が撮影されている領域が比較的小さく直接X線照射部が存在することが多いため、画像全体の濃度幅が大きい。また、図7に示すように、例えば腕の周囲に直接X線照射部Rが存在し、照射野輪郭PSに沿うように広く分布することが多い。このような画像から腕の輪郭となる直線を照射野辺の候補として検出した場合には、直線の外側(外部領域Poutside)に直接X線照射部Rが存在することになる。このように四肢を撮影した画像であることが撮影者の選択した撮影メニューから判断できるときは、直線の外側(外部領域Poutside)に直接X線照射部Rが存在する可能性が高いため、閾値を高く0.9程度に設定してもよい。
【0047】
一方、聴器や腰椎などを撮影した画像は画像全体の濃度幅が小さく、B/Aを閾値で直線を評価することは難しいため、この手法による直線のキャンセルは行わないようにする。
【0048】
上述の四肢や聴器や腰椎以外を撮影した場合には、一般的に閾値は0.8程度とする。
【0049】
以上からわかるように、閾値を0.8〜0.9に設定するのが最も好ましいが、撮影する部位により直接X線照射部が存在か否かや、直接X線照射部と被写体との境に直線が現れる否かに応じて、設定する閾値を0.7〜0.9の範囲で変えるようにする。
【0050】
あるいは、外部領域Poutside内の画素値の分散σ1と、放射線撮影画像Pの全体に含まれる画素値の分散σ2を求めて、分散σ2に対して分散σ1が十分に小さくないときには外部領域Poutsideには被写体が撮影されている可能性が高いため、直線は照射野辺ではないものと判定してキャンセルするようにしてもよい。
【0051】
(2) 画素値を用いて評価する手法
また、外部領域Poutsideは放射線が照射されていない領域であるため、そこには、直接X線が照射された部分は含まれない。つまり、射野外領域には、直接X線照射部の画素値を持つ画素がほとんど含まれることがない。そこで、外部領域Poutside内の直接X線照射部の画素値を持つ画素の割合から、外部領域Poutsideが照射野外領域であるか否かの判定をする。
【0052】
直接X線照射部の画素値は、放射線を照射した量によって異なるため、直接X線照射部の画素値とそれ以外の部分の画素値とを区別する閾値を決定する手順で以下に説明する。ここでは、画像の階調を8ビット(0〜255)で表すものとする。
【0053】
(i ) まず、画像全体のヒストグラムから、最大画素値histmaxを求める。
【0054】
(ii) 直接X線照射部は高輝度な領域であり、通常少なくとも100を超えた画素値を持つ。そこで、直接X線照射部が存在する画像であるか否かをhistmaxに応じて判断する。
(ア)histmax ≦ 100 の場合には、直接X線照射部が存在しない画像であると判断して、閾値の探索を行わない。
(イ)histmax > 100 の場合には(iii)へ行き、直接X線照射部の画素値とそれ以外の領域を区別する閾値を算出する。
【0055】
(iii) 図8に示すように、画像全体のヒストグラム(Dhは直接X線照射部、Dmは被写体が撮影された部分、Dlは照射野外領域に該当する)をとると、大きく分けて3つのピークがあるが、直接X線照射部の画素値は最も高濃度側のピークをもつ部分Dhに含まれる。そこで、最も高濃度側の部分Dhと中間辺りにピークをもつ被写体が撮影された部分Dmとの境界histmax2を探索する。
まず、j=histmax-5とし、jを5ずつ減らしながら、全画素数に対する画素値jを持つ画素数の割合を計算し、始めてこの割合が0.2%を下回るjをhistmax2とする。
【0056】
(iv) histmax 〜histmax2の間の画素値を持つ画素が直接X線照射部であるが、直接X線照射部は100以下の画素値を持つことはないため、histmax2が100以下の場合にはhistmax2の探索に失敗したものと判断する。そこで、
(ア) histmax2 ≦ 100 となった場合には、経験的に直接X線照射部の画素値のほとんどが、histmax からhistmax −20の間に存在することがわかっているので、閾値Thを
Th = histmax − 20
と決定する。
(イ) histmax2 > 100 の場合には、(v)へいく。
【0057】
(v ) そこで、histmax2 > 100 の場合には閾値Th を、
Th = histmax2 −15
と決定する。しかし、直接X線照射部に現れる画素値はバラツキが少ない領域であるため、histmax−Thが45より大きくなる(つまり、直接X線照射部の画素値がかなり広い範囲にわたって分布する)ことは、通常はありえない。そこで、
(ア) histmax − Th > 45 の場合には閾値Th を、
Th = histmax − 20
と決定する。
(イ) histmax − Th ≦ 45 の場合には、(vi)へいく。
【0058】
(vi) さらに、全画素数に対するhistmax2 −15以上の画素値を持つ画素数の割合が95%以上の場合には、明確なピークが現れなかったことになる。そこで、以下のように閾値Thを決定する。
(ア) 95%以上の場合には、経験的に得られた直接X線照射部に現れる画素値の範囲から閾値Thを、
Th = histmax − 20
と決定する。
(イ) 95%未満の場合には、探索された直接X線照射部の画素値の範囲よりも少し低いところを閾値Thとし、
Th = histmax2 − 15
と決定する。
【0059】
上のようにして得られた閾値Thを越えた画素値が直接X線成分の画素値である。この画素値を用いて、外部領域Poutside内の直接X線成分の画素が全画素内に含まれる割合を評価値として求める。判定手段40は、外部領域Poutside内の全画素の0.1%以上が直接X線成分の画素値を持つ画素であれば、外部領域Poutsideに放射線が照射された領域が含まれている可能性が高いため、直線は照射野辺ではないものと判定してキャンセルする。
【0060】
(3) 中周波帯域の成分を用いて評価する手法
あるいは、外部領域Poutsideは放射線が照射されていない領域であり、そこには被写体が撮影された領域は含まれない。照射野外の領域や直接X線照射領域は低周波帯域の画像であり、ノイズ成分は高周波帯域の画像であるが、被写体が撮影されている領域は中周波数帯域の画像である。従って、中周波数帯域の画像成分のみを抽出することにより、被写体が撮影されている画像部分のみを抽出することができる。
【0061】
そこで、外部領域Poutsideから中周波数帯域の画像成分を抽出して、その画像成分の強度を求めることにより、外部領域Poutsideに被写体が含まれているか否かを評価することができる。具体的には、外部領域Poutside内の各画素(図9の点c)を中心として5×5のマスクと3×3のマスクを用いて、次式の演算で強度を求める。
【0062】
A=5×5マスク内の画素の平均 − 3×3マスク内の画素の平均 (3)
強度=(Σ|A|)/N (4)
判定手段40は、この評価値が閾値よりも大きいときは、この直線は照射野辺ではないものと判定してキャンセルする。被写体の骨や体の輪郭などの大まかな構造物は0.056〜0.093cycle/mmの周波数帯域に含まれる画像成分である。そこで、この周波数成分で構成する画像成分を抽出するためには、5×5マスクは1辺が5mm〜20mm、3×3マスクは1辺が3mm〜12mmのものを用いるのが最適であり、例えば、5×5マスクは1辺が9mmであれば、3×3マスクは1辺が5.4mmのものを用いる。また、マスクの大きさは、5×5と3×3に限られるものではなく画像の解像度に応じて適切な大きさのマスクを採用するようにしてもよい。
【0063】
(4) 信頼度の高い直線基準と交差する角度を用いて評価する手法
照射野外領域から照射野内領域の分かれ目となる線上は、画素値が急激に変化する場所でもある。そこで、照射野辺の候補となる直線の中から直線を境にして濃淡の変化が急激なものが照射野辺である可能性が高い。そこで、直線上にある各画素を中心にして3×3画素近傍の領域において以下の計算を行う。
【0064】
図10に示すように、3×3画素の領域内の中心に存在する画素(点e)を中心として、差分値Bを下式で求める。
【0065】
B=|(a-g)+(b-h)+(c-l)|+|(c-a)+(f-d)+(i-g)| (5)
この差分値Bを直線上にある全ての点について計算し、各点における差分値Bの総和ΣBを直線上にある画素の総数Nで割った指標値ΣB/Nを求めて、ΣB/Nが最も大きい直線を照射野辺である確信度が最も高い確信直線として複数の直線の中から1つ選択する。
【0066】
図11に示すように、信頼度の高い確信直線を基準にして、この直線の傾きとの違いが±α°の範囲内にある直線(平行な直線)、またはこの直線の傾きとの違いが90°±α°の範囲内にある直線(直行する直線)以外は、照射野辺ではないものと判定してキャンセルする。経験的に、α°は10°程度にすると良好な結果が得られる。
【0067】
(5) エッジらしさを用いて直線を評価する手法
照射野外領域から照射野内領域の分かれ目となる線は、上述のように濃淡が急激であり、さらに画素値の変化する方向が揃った方向を向いたエッジである。上述の指標値ΣB/Nを用いて、照射野辺である信頼度を求め、さらに、各直線のエントロピーを算出して濃淡の変化の方向が揃っているかを評価する。
【0068】
まず、エントロピーを算出するために、図12(a)のように、直線上にある各画素を中心(点O)にして5×5マスクを用いて直線上の各画素における画素値の勾配θを算出する。
【0069】
y=(a+b+c+d+e)−(l+m+n+p+q) (6)
x=(e+g+i+k+q)−(a+f+h+j+i) (7)
y≧0の場合 θ=tan−1(y/x) (8)
y<0の場合 θ=−tan−1(y/x) (9)
となる。
【0070】
この得られた勾配θを、図12(b)に示す勾配方向1〜8のうちの最も近い方向のいずれかに振り分ける。
【0071】
直線上の各点における勾配θが、勾配方向1〜8のうちいずれに振り分けられたかを見てエントロピーの計算をする。直線上の点の総数Totalと、直線上の同じ勾配方向iを持つ点の数Ziから、同じ勾配方向iが生じる生起確率P(i)を求める。
【0072】
P(i)=Zi/Total (10)
これより、エントロピーHは、
H=−ΣP(i)ln(P(i)) (11)
となる。図13に示すように、エントロピーHを縦軸とし差分値Bを横軸としたグラフを用い、グラフ上で直線Lより上にある線は照射野辺の可能性は少ないものとしてキャンセルし、直線lより下にある線は照射野辺の可能性が高いものとして残すようにする。
【0073】
上述の各手法で評価値の算出を行う際、放射線撮影画像の端に並ぶ画素値はIPから読み取った画素の値ではなく記録媒体に残っていた値である可能性があるため、端から数画素分は評価値の算出に用いないようにして計算するものが好ましい。
【0074】
ここで、照射野認識装置1の動作について、図14のフローチャートに従って、説明する。
【0075】
まず、基準点設定手段20により、中心点Kを自動的に基準点として設定する(S100)。次に、この中心点Kを用いて、直線検出手段10のエッジ候補点検出手段11により、上記照射野輪郭PS上の点と考えられる多数のエッジ候補点Eを検出し、候補線検出手段12でハフ変換を利用して、検出された多数のエッジ候補点Eによって構成されるエッジ線Lを照射野辺の候補となる直線(候補線)として求める(S101)。
【0076】
照射野辺の候補となる直線は、照射野辺の数より多く検出されるので、各直線を上述の評価手段40を用いて評価値を算出し(S102)、算出した評価値に基づいて余分な直線をキャンセルする(S103)。
【0077】
検出された全ての直線について評価が終わるまでS102からS103を繰り返す(S104)。
【0078】
以上、詳細に説明したように、各手法を用いて検出された直線が照射野の輪郭を構成する直線であるか否かを正確に判定して正しく照射野を認識することができる。
【0079】
また、上述の各手法を個別に用いるのではなくいくつかを組み合わせて評価することによって、より正確な判定を行うことが可能になる。
【0080】
また、上記各手段をコンピュータ上に機能させるようなプログラムを記録した媒体を用いてコンピュータにインストールすることによって、照射野判定装置として動作させることができる。また、このプログラムはネットワークを介して提供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】照射野判定装置の概略構成図
【図2】照射野絞りを用いて撮影する方法を説明するための図
【図3】直線の検出方法を説明するための図
【図4】照射野辺の候補となる直線を誤検出した一例
【図5】外部領域と基準点との関係を説明するための図
【図6】放射線撮影画像全体のヒストグラムと照射野外領域のヒストグラムの一例
【図7】四肢を撮影した放射線撮影画像の一例
【図8】放射線撮影画像全体のヒストグラムの一例
【図9】中周波数帯域の画像成分を抽出するためにマスクの一例
【図10】差分値の算出方法を説明するための図
【図11】直行する直線から照射野辺を検出する方法を説明するための図
【図12】画素値の勾配の求め方を説明するための図
【図13】エッジらしさを判定する方法を説明するための図
【図14】照射野認識装置の動作を説明するためのフローチャート
【符号の説明】
【0082】
1 照射野認識装置
10 直線検出手段
11 エッジ候補点検出手段
12 候補線検出手段
20 基準点設定手段
30 評価値算出手段
40 判定手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像に基準点を設定する基準点設定手段と、
前記放射線撮影画像より照射野辺の候補となる直線を検出する直線検出手段と、
前記検出された直線により前記放射線撮影画像を2つの領域に分割し、前記2つの領域のうち前記基準点を含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価した評価値を算出する評価値算出手段と、
前記評価値に基づいて、前記外部領域に前記放射線が入射していると判定された場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定する判定手段とを備えたことを特徴とする照射野判定装置。
【請求項2】
前記基準点が、略中心部に設定されることを特徴とする請求項1記載の照射野判定装置。
【請求項3】
前記評価値は、前記外部領域に存在する全画素数に対する前記外部領域に存在する直接X線照射部に該当する画素値を有す画素数の割合であり、
前記判別手段が、前記評価値が所定の基準値より高い場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定することを特徴とする請求項1または2記載の照射野判定装置。
【請求項4】
前記評価値は、前記外部領域に含まれる画像に基づいて算出された値であることを特徴とする請求項1または2記載の照射野判定装置。
【請求項5】
前記評価値は、前記外部領域内の中周波数帯域の画像成分の強度であり、
前記判定手段が、前記評価値が所定の基準より高い場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定することを特徴とする請求項4記載の照射野判定装置。
【請求項6】
前記評価値は、前記外部領域に含まれる画像と前記放射線撮影画像の全体に含まれる画像とに基づいて算出された値であることを特徴とする請求項1または2記載の照射野判定装置。
【請求項7】
前記評価値は、前記放射線撮影画像内の全体の画素に表れる画素値の分布幅に対する
前記外部領域内の全体の画素に表れる画素値の分布幅の割合であり、
前記判別手段が、前記評価値が所定の基準値より広く分布する場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定することを特徴とする請求項6記載の照射野判定装置。
【請求項8】
照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像に基準点を設定する基準点設定ステップと、
前記放射線撮影画像より照射野辺の候補となる直線を検出する直線検出ステップと、
前記検出された直線により前記放射線撮影画像を2つの領域に分割し、前記2つの領域のうち前記基準点を含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価した評価値を算出する評価値算出ステップと、
前記評価値に基づいて、前記外部領域に前記放射線が入射していると判定される場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定する判定ステップとを備えたことを特徴とする照射野判定方法。
【請求項9】
コンピュータを、
照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像に基準点を設定する基準点設定手段と、
前記放射線撮影画像より照射野辺の候補となる直線を検出する直線検出手段と、
前記検出された直線により前記放射線撮影画像を2つの領域に分割し、前記2つの領域のうち前記基準点を含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価した評価値を算出する評価値算出手段と、
前記評価値に基づいて、前記外部領域に前記放射線が入射していると判定される場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定する判定手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像に基準点を設定する基準点設定手段と、
前記放射線撮影画像より照射野辺の候補となる直線を検出する直線検出手段と、
前記検出された直線により前記放射線撮影画像を2つの領域に分割し、前記2つの領域のうち前記基準点を含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価した評価値を算出する評価値算出手段と、
前記評価値に基づいて、前記外部領域に前記放射線が入射していると判定された場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定する判定手段とを備えたことを特徴とする照射野判定装置。
【請求項2】
前記基準点が、略中心部に設定されることを特徴とする請求項1記載の照射野判定装置。
【請求項3】
前記評価値は、前記外部領域に存在する全画素数に対する前記外部領域に存在する直接X線照射部に該当する画素値を有す画素数の割合であり、
前記判別手段が、前記評価値が所定の基準値より高い場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定することを特徴とする請求項1または2記載の照射野判定装置。
【請求項4】
前記評価値は、前記外部領域に含まれる画像に基づいて算出された値であることを特徴とする請求項1または2記載の照射野判定装置。
【請求項5】
前記評価値は、前記外部領域内の中周波数帯域の画像成分の強度であり、
前記判定手段が、前記評価値が所定の基準より高い場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定することを特徴とする請求項4記載の照射野判定装置。
【請求項6】
前記評価値は、前記外部領域に含まれる画像と前記放射線撮影画像の全体に含まれる画像とに基づいて算出された値であることを特徴とする請求項1または2記載の照射野判定装置。
【請求項7】
前記評価値は、前記放射線撮影画像内の全体の画素に表れる画素値の分布幅に対する
前記外部領域内の全体の画素に表れる画素値の分布幅の割合であり、
前記判別手段が、前記評価値が所定の基準値より広く分布する場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定することを特徴とする請求項6記載の照射野判定装置。
【請求項8】
照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像に基準点を設定する基準点設定ステップと、
前記放射線撮影画像より照射野辺の候補となる直線を検出する直線検出ステップと、
前記検出された直線により前記放射線撮影画像を2つの領域に分割し、前記2つの領域のうち前記基準点を含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価した評価値を算出する評価値算出ステップと、
前記評価値に基づいて、前記外部領域に前記放射線が入射していると判定される場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定する判定ステップとを備えたことを特徴とする照射野判定方法。
【請求項9】
コンピュータを、
照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像に基準点を設定する基準点設定手段と、
前記放射線撮影画像より照射野辺の候補となる直線を検出する直線検出手段と、
前記検出された直線により前記放射線撮影画像を2つの領域に分割し、前記2つの領域のうち前記基準点を含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価した評価値を算出する評価値算出手段と、
前記評価値に基づいて、前記外部領域に前記放射線が入射していると判定される場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定する判定手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−254934(P2006−254934A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72298(P2005−72298)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
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