照射野判定装置、照射野判定方法およびそのプログラム
【課題】 照射野認識処理の認識精度を向上させる。
【解決手段】 分割撮影された放射線撮影画像Pの分割パターンを設定して、放射線撮影画像Pを分割パターンに従って複数の区画に分割する。分割された各区画内の画像から照射野領域Pinを認識して、認識された各区画の照射野領域Pinと前記分割した各区画の境nとを比較して分割が適切であるか否かを判定する。
【解決手段】 分割撮影された放射線撮影画像Pの分割パターンを設定して、放射線撮影画像Pを分割パターンに従って複数の区画に分割する。分割された各区画内の画像から照射野領域Pinを認識して、認識された各区画の照射野領域Pinと前記分割した各区画の境nとを比較して分割が適切であるか否かを判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影画像の照射野を認識する照射野判定装置、照射野判定方法およびそのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、記録された放射線撮影画像を読み取って画像データを得、この画像データに適切な画像処理を施した後、処理済みの画像データに基づいて読影に適した可視像を再生することが種々の分野で行なわれている。
【0003】
ところでX線撮影において放射線撮影画像を撮影記録するに際しては、放射線の照射による生体への影響を極力小さくするためや、観察に不要な部分からの散乱光による画質性能の低下等を防止するために、放射線が被写体の必要な部分にのみ照射されるように照射域を制限する鉛などで作られた照射野絞りを使用することが多い。
【0004】
照射野絞りを用いて撮影を行なった場合、蓄積性蛍光体シート等の記録媒体には、照射野絞りの開口輪郭の内部領域(照射野領域)に被写体等の画像が記録され、開口輪郭の外側領域(照射野外領域)には放射線が到達せず未露光状態となる。つまり、この開口輪郭に対応する画像の照射野輪郭はエッジ線となる。
【0005】
そして、このように照射野領域内にのみ画像が記録された記録媒体から画像データを読み取って画像処理を行なう場合、照射野領域内の画像データについてのみ階調処理等を施すようにすれば、処理負荷の低減、処理スピードの向上を図ることができる。
【0006】
一方、照射野外領域は未露光状態であるため、医用X線フイルムのようなネガ画像においては最低濃度領域(画素値の低い領域)となるが、例えば医用X線フイルムをシャーカステンに掛けて蛍光灯の光による透過画像を観察するとき等には、このような最低濃度領域は非常に明るい領域となるため、照射野領域のうち特に照射野外領域に近い部分については照射野外領域の明るさに影響されて読影性能が低下する。同様にCRT等の画像表示装置にその画像を表示する場合にも、照射野外領域は高輝度な領域となるため照射野内の画像の読影に支障を生じる。
【0007】
そこで放射線画像記録再生システムにおいては、このような照射野外領域についての各画像データを一律に最高濃度(若しくは最低輝度)に相当する値に強制的に置換する処理が行なわれる。そしてこの処理は一般に黒化処理と呼ばれるが、この黒化処理を行なうためには、照射野輪郭を精度よく認識することが非常に重要である。
【0008】
例えば、上記照射野輪郭が画像の濃度変化が急峻に変化するエッジ線になることを利用して、画像データの変化が急峻な部分を探索することによって、照射野輪郭を求める方法がよく知られているが、このエッジ線を求める具体的な方法として、画像の所定の点(たとえば画像の中心点等)から画像端部に向かう放射状の複数の直線を設定し、これらの各直線の方向に沿った画像データに基づいて各方向ごとにデータの差分が大きいエッジ上の候補点を検出し、これらの候補点に基づいてエッジとなる線を検出する方法が提案されている(例えば、特許文献1等)。
【0009】
また、放射線撮影画像を撮影記録するに際して、いわゆる分割撮影が行われることも多く、予め決めされた所定の複数の分割区画に分割し、各区画ごとに放射線を照射して撮影が行われる。このような分割撮影時にも、照射野外絞りをもちいて撮影され各区画が分離された画像となる。このような場合には、1つだけの照射野が存在することを前提としたのでは、正確に照射野を認識することができない。そこで、例えば、4分割で分割撮影されている場合には、画像の上下方向の中央部あるいは左右方向の中央部に各区画を分割する分割線が現れることが多いことから、これらの中央部でエッジを探してこのエッジがまっすぐ直線上に並んでいるか否かによって分割撮影が行われた画像であるか否かを判定するものがある(例えば、特許文献2)。
【0010】
あるいは、分割パターンに対応した2値化マスクを予め用意し、分割撮影した画像を2値化して照射野内と照射野外とを分離し、用意されている2値化マスクと比較して、パターンが一致するか否かによって分割パターンを認識する方法も提案されている(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特開昭63-259538 号公報
【特許文献2】特開昭63-257879 号公報
【特許文献3】特開平1-212065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1では、画像の中心部に被写体が撮影されているものとして、エッジを探しているため、分割撮影が行われた場合には照射野を上手く認識することができない。そこで、分割撮影された場合には、分割撮影された各区画を認識した後に、区画毎に照射野を認識しなければならない。
【0012】
しかし、分割撮影された各区画は、必ずしも画像の上下方向の中央部あるいは左右方向の中央部で各区画が分割されるとは限らず、どちらかに偏っていたり、各区画で撮影された画像が傾いて撮影されることがあり、特許文献2、3の手法のように標準的な分割パターンに基づいて区画を認識しようとしても正確に認識することができないケースがある。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、従来の照射野認識処理よりも認識精度を向上させた放射線撮影画像の照射野認識装置、照射野認識方法およびそのプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の照射野認識装置は、照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像を入力する入力手段と、
分割撮影された放射線撮影画像の分割パターンを設定する分割パターン設定手段と、
前記入力手段により入力された放射線撮影画像を前記分割パターンに従って複数の区画に分割する分割手段と、
前記分割された各区画内の画像から照射野領域を認識する照射野認識手段と、
該照射野認識手段により認識された各区画の照射野領域と前記分割した各区画の境とを比較して分割が適切であるか否かを判定する判定手段とを備え、
該判定手段において分割が適切であると判定されるまで、前記分割パターン設定手段によりすでに設定された分割パターンとは異なる分割パターンを設定して、前記分割手段で前記放射線撮影画像を前記異なる分割パターンに従って複数の区画に分割した後、前記照射野認識手段で各区画において照射野を認識する処理を繰り返すことを特徴とするものである。
【0015】
また、本願発明の照射野認識方法は、照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像を入力する入力ステップと、
分割撮影された放射線撮影画像の分割パターンを設定する分割パターン設定ステップと、
前記入力ステップにより入力された放射線撮影画像を前記分割パターンに従って複数の区画に分割する分割ステップと、
前記分割された各区画内の画像から照射野領域を認識する照射野認識ステップと、
該照射野認識ステップにより認識された照射野領域と前記分割した複数の区画の境とを比較して分割が適切であるか否かを判定する判定ステップとを備え、
該判定ステップにおいて分割が適切であると判定されるまで、前記分割パターン設定ステップによりすでに設定された分割パターンとは異なる分割パターンを設定して、前記分割ステップで前記放射線撮影画像を前記異なる分割パターンに従って複数の区画に分割した後、前記照射野認識ステップで各区画において照射野を認識する処理を繰り返すことを特徴とするものである。
【0016】
また、本願発明のプログラムは、コンピュータを、
照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像を入力する入力手段と、
分割撮影された放射線撮影画像の分割パターンを設定する分割パターン設定手段と、
前記入力手段により入力された放射線撮影画像を前記分割パターンに従って複数の区画に分割する分割手段と、
前記分割された各区画内の画像から照射野領域を認識する照射野認識手段と、
該照射野認識手段により認識された照射野領域と前記分割した複数の区画の境とを比較して分割が適切であるか否かを判定する判定手段として機能させ、
該判定手段において分割が適切であると判定されるまで、前記分割パターン設定手段によりすでに設定された分割パターンとは異なる分割パターンを設定して、前記分割手段で前記放射線撮影画像を前記異なる分割パターンに従って複数の区画に分割した後、前記照射野認識手段で各区画において照射野を認識する処理を繰り返すように機能させることを特徴とするものである。
【0017】
「分割パターン」とは、放射線撮影画像を分割撮影する際に用いられる分割パターンであり、縦方向に2分割、横方向に2分割、縦横の両方向の4分割などの複数の分割パターンがある。
【0018】
「区画」とは、放射線撮影画像を区切って分けた1つをいい、「放射線撮影画像を複数の区画に分割する」とは、被写体を複数部分に分けて分割撮影して、複数の画像を1つの放射線撮影画像にまとめて撮影を行った際に、分割撮影時の分割パターンに合うように放射線撮影画像中の複数の画像を1つ1つの画像に分けることをいう。
【0019】
「照射野領域を認識する」とは、照射野絞りを用いて撮影をした放射線撮影画像を判別して、放射線が照射された照射野領域を見つけることを意味し、「各区画内の画像から照射野領域を認識する」とは、区画に分け放射線撮影画像の1つ1つの区画から照射野領域を認識することをいう。
【0020】
「分割が適切であるか否かを判定する」とは、放射線撮影画像を区切って分けた1つの区画が、分割撮影した時の分割と一致するか否かを判定することをいう。
【0021】
「処理を繰り返す」には、分割が適切であると判定されるまで、分割手段(分割ステップ)と照射野認識手段(照射野認識ステップ)と判定手段(判定ステップ)を繰り返す場合や、予め定められた複数の分割パターンの全てについて、分割手段と照射野認識手段と判定手段を繰り返し行って、最適な分割パターンを採用する場合や、予め定められた複数の分割パターンの全てについて分割手段と照射野認識手段を繰り返し行った後に、判定手段で判定を行い最適な分割パターンを採用するようにする場合を含む。
【0022】
また、前記照射野認識手段は、
前記区画内の画像より前記照射野領域の照射野辺の候補となる直線を検出する直線検出手段と、
前記区画に基準点を設定する基準点設定手段と、
前記検出された直線により前記区画の画像を2つの領域に分割し、前記2つの領域のうち前記基準点を含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価した評価値を算出する評価値算出手段と、
前記評価値に基づいて、前記外部領域に前記放射線が入射していると判定された場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定する照射野辺判定手段とを有し、
前記照射野辺の候補となる直線の中から前記照射野辺でないと判定された直線を除いた残りの直線に基づいて照射野領域を認識するものが好ましい。
【0023】
「基準点」は、通常行われる撮影方法と照らし合わせて、放射線撮影画像の照射野内であると考えられる範囲であればよく、「基準点の設定」は、自動的に設定するものでも、観察者などが指示入力したものであってもよい。
【0024】
「放射線が入射している領域」は、被写体を透過したX線が照射された領域、あるいは、X線が直接照射された領域であり、「放射線が入射している領域」には、散乱線などによって本来X線が照射されないようにした領域に放射線が入射した領域は含まない。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、分割撮影された放射線撮影画像を分割パターンに従って複数の区画に分割した後、分割された各区画内の画像から照射野領域を認識し、認識した照射野領域と区画の境とを比べて、分割が適切であるか否かを判定することにより、分割撮影時のパターンに応じて正確に照射野領域を認識することが可能になる。
【0026】
さらに、照射野領域を認識する際に、照射野領域の外側に放射線が入射しているか否かを評価するようにすれば、複数の区間内にまたがっている照射野領域を、それぞれの区間内に分かれて存在する照射野領域と間違えて認識することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の放射線撮影画像の照射野認識装置の具体的な実施の形態について図面を用いて説明する。図1は本発明の照射野認識装置の一実施形態の構成を示し、図2は照射野絞りを用いた放射線撮影画像の撮影装置を示す図(図2(a)参照)および照射野絞りの開口輪郭に対応する照射野輪郭が形成された蓄積性蛍光体シートを示す図(図2(b)参照)である。
【0028】
撮影装置で照射野絞りを用いてX線撮影を行なう場合には、まず、被写体を撮影した像が放射線撮影画像Pの中心になるように配置し、図2(a)に示すように、X線源と被写体との間に、矩形等の開口部のある照射野絞りを置いて撮影をする。この開口部の外側の部分は、X線が被写体および蓄積性蛍光体シートにX線が到達するのを防止する鉛板である。この状態でX線源から被写体にX線が照射されると、蓄積性蛍光体シートから得られた放射線撮影画像P上には、図2(b)に示すように、照射野絞りの開口部の外側に対応する領域(照射野外領域)Pout にはX線が照射されず、一方、照射野絞りの開口部より内側に対応する領域(照射野領域)Pinには被写体を透過した部分と直接X線が照射された部分が記録される。そして、照射野絞りの開口部に対応する部分は、開口部と略同一形状となり、照射野外領域Poutは高輝度なまぶしい領域となる。照射野領域Pinと照射野外領域Poutの境には、濃度が急激に変化する複数のエッジ線からなる照射野輪郭PSが形成される。照射野絞りの開口部は通常矩形であり、照射野輪郭PSは4つの直線の照射野辺で構成される。
【0029】
さらに、分割撮影を行なうと、分割された各区間毎に照射野領域が存在し、複数の照射野領域Pinが現れる。通常、分割撮影では、図3に示すように、縦方向に2分割(同図(b))、横方向に2分割(同図(c))、縦横の両方向の4分割(同図(a))で撮影される。
【0030】
そこで、本願発明の照射野認識装置1を用いて、分割撮影された放射線撮影画像Pの照射野を認識する方法について説明する。本願発明の照射野認識装置1は、図1に示すように、照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像Pを入力する入力手段10と、分割撮影された放射線撮影画像Pの分割パターンを設定する分割パターン設定手段20と、入力手段10により入力された放射線撮影画像Pを前記分割パターンに従って複数の区画に分割する分割手段30と、分割された各区画内の画像から照射野領域を認識する照射野認識手段40と、照射野認識手段により認識された各区画の照射野領域と前記分割した各区画の境とを比較して分割が適切であるか否かを判定する判定手段50とを備える。
【0031】
分割パターンは、放射線撮影画像を分割撮影する際に用いられる分割パターンであり、図3に示すような、縦方向に2分割、横方向に2分割、縦横の両方向の4分割などがあり、分割パターン設定手段20は、この中から1つ選んで設定する。
【0032】
分割手段30は、分割パターン設定手段20によって設定された分割パターンに従って、放射線撮影画像Pを複数の区画に分割する。ここでは、図3(b)に示すような縦方向に2分割の分割パターンが設定された場合について説明する。
【0033】
まず、放射線撮影画像Pから縦方向に分割する分割候補線を探索するが、本実施の形態では、1ピクセルが1.8mmに相当し、横170ピクセル、縦140ピクセルの放射線撮影画像Pを例に具体的に説明する。
【0034】
まず、画像全体のヒストグラムからX線が照射されたX線照射領域の画素値を調べると、図4に示すように、放射線撮影画像Pの全体に含まれる画素値のヒストグラム(ここでは、濃度が高い画素の画素値を大きな値で表し、濃度が低くなるほど画素値が小さくなるものとして、以下で説明する。)には3つのピークが表れる。各ピークは、直接X線照射部Dhと、被写体を撮影した領域Dmと、照射野外領域Dlに該当し、X線が照射されたX線照射領域の画素値はDmとDhである。
【0035】
そこで、図5に示すように、放射線撮影画像Pの縦方向のライン上に並んだ画素の画素値を中心のラインmから左右の両端に向けて(同図(a)の矢印)少しずつずらしながら見ていき、縦方向のライン上にX線照射領域の画素値をもつ画素が存在しない縦方向のラインを探索し、X線照射領域の画素値をもつ画素が存在しない部分、つまり、X線が照射されていない部分Dを見つける。
【0036】
次に、画像の左右の中心を通る縦方向のラインmを基準に左右に20ピクセルの範囲内を中央部Mとし、X線が照射されていない部分Dと中央部Mとの共通部分を、分割候補線が存在する範囲(図5(b)の斜線部)とする。
【0037】
この分割候補線が存在する範囲内で、縦方向のライン上に並んだ画素の画素値を平均し、平均が最小値aとなる縦方向のラインを見つけ、このラインの左右の方向に各縦方向のライン上の画素値の平均がa+7を超える縦方向のラインを探して、左右それぞれで初めてa+7を超えた縦方向のラインに挟まれる範囲の真中に存在する縦方向のラインを分割候補線nとする。
【0038】
この分割候補線nを境に、放射線撮影画像Pを2つの区画に分割する。横方向に2分割する場合や、縦横の両方向に4分割する場合も同様に分割候補線nを探索して、図6に示すように、各区画の画像Psecに分割する。
【0039】
照射野認識手段40は、図7に示すように、照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた各区画内の画像Psecより照射野辺の候補となる直線を検出する直線検出手段41と、各区画内の画像Psecの略中心部に基準点を設定する基準点設定手段44と、検出された直線により各区画内の画像Psecを2つの領域に分割し、2つの領域のうち基準点を含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価した評価値を算出する評価値算出手段45と、評価値に基づいて、外部領域に前記放射線が入射していると判定された場合には、この直線は照射野辺ではないものと判定する照射野辺判定手段46とを備える。
【0040】
また、直線検出手段41は、入力された各区画内の画像Psecに基づいて、上記照射野輪郭PS上の点と考えられる多数のエッジの候補点Eを検出する候補点検出手段42と、多数の候補点Eに基づいてハフ変換を利用してそれらの候補点Eによって構成されるエッジ線Lを照射野辺の候補となる線(候補線)として求める候補線検出手段43とをさらに備えた構成である。
【0041】
候補点検出手段42は,入力された各区画内の画像Psecついて、図8(a)に示すように、その各区画内の画像Psecの中心点Kを設定し、中心点Kから各区画内の画像Psecの端部にそれぞれ向う等角度間隔に、例えば、1.5度間隔に240本の放射状の直線を設定する。この放射状の直線の設定本数および間隔、放射状の直線群の中心の設定位置等は適宜変更することができる。
【0042】
これらの240本の放射状の直線にそれぞれ沿った方向において互いに隣接する画素間の画素値を比較し、その差分が最も大きい2つの画素をその線上で探索する。この探索された2つの画素間は画素値の差が大きく、エッジ上に存在する点である可能性の高いエッジ候補点Eである。このようにして各直線方向ごとにそれぞれ探索されたエッジ候補点Eを検出し、合計 240個のエッジ候補点Eを得る(図8(b)参照)。
【0043】
候補線検出手段43は、候補点検出手段42により検出された各エッジ候補点Eをつなぐ直線をハフ(Hough)変換により求める。図8(c)に示すxy座標系上で、i番目のエッジ候補点Eiの座標を(xi ,yi )( i=1,2,…,240 )としたとき、これらのxi ,yi を定数として次式(1)で表わされる曲線LSiを各エッジ候補点ごとに求める。
【0044】
ρ=xi cos θ+yi sin θ (1)
この式(1)は、XY空間において、中心座標を(xi ,yi )に固定してこの座標(xi ,yi )を通過する直線の式を表し、ρは座標(xi ,yi)を通る各直線LLとxy座標系の原点Oとの距離、θはこの直線LLとxy座標系の原点Oを垂直に結ぶ垂線とx軸がなす角度を表している。この座標(xi ,yi )を通る各直線LLは式(1)においてρ、θを徐々に変化させて得られるものであり、θρ空間(ハフ空間)では、座標(xi ,yi )を通るこれら直線LLは下式(2)に示す1本の曲線として表現される(図8(c)参照)。
【0045】
ρj =xcos θj +ysin θj (2)
各エッジ候補点についてそれぞれ同様の操作を行なうと、ハフ空間に 240本の曲線LSi ( i=1,2,…,240 )が表される。この240本の曲線LSi が交わる各交点位置(ρj ,θj )を求め、各交点位置(ρj ,θj )で交わる曲線の数をカウントする。ハフ空間上で、交差する曲線の数(カウント値)が多い交点α,βが、多くのエッジ候補点Eを通る直線を表す。
【0046】
そこで、全てのエッジ候補点Eについて上記カウントを行ない、予め設定された個数に到達するまでカウント値が上位のものから順に交点位置(ρj ,θj )を抽出し、それらを実空間に戻してXY平面上の直線を求め、この求められた複数の直線が候補線LLである。照射野の形状は、4つの直線で囲まれた矩形であることから、少なくとも4つ以上の候補線LLを抽出する。
【0047】
しかしながら、この候補線LLは、照射野の形状を構成する直線の他に被写体の外形などを表す直線である可能性もある。例えば、図9に示すように被写体の胸部から腕にかけて撮影した場合、腕の形状を構成する直線llも含んで検出する可能性がある。そこで、抽出された直線llを評価して、これらの照射野の形状を構成する直線以外の直線はキャンセルする。
【0048】
基準点設定手段44は、各区画内の画像Psec上の略中心部に基準点Qを設定する。各区画内の画像Psecを撮影する際、被写体が略中心に位置するように撮影が行われる。したがって、各区画内の画像Psecの略中心部を基準点とすれば、照射野内に基準点Qを設定することになる。具体的には、各区画内の画像Psecの中心点Kを用いることができるが、照射野内にあると思われる点であれば、通常の撮影方法と照らし合わせて定められれば中心点以外の点であってもよい。あるいは、自動的に設定することが困難であれば、観察者が基準点Qを設定するようにしてもよい。
【0049】
評価値算出手段45は、図10に示すように、上記の手法で抽出された直線で各区画内の画像Psecを2つの領域に分割し、前記2つの領域のうち前記基準点Qを含まない外部領域をPoutsideとし、外部領域Poutsideが照射野外領域であるか否かを評価する。外部領域Poutsideが照射野外領域である場合は、その領域は放射線が入射していない高輝度な領域となる。そこで、被写体が撮影されている部分や直接X線照射部のような放射線が入射した領域が外部領域Poutsideに存在するか否かを評価して評価値を求める。評価値は、外部領域Poutsideに含まれる画像のみを評価して算出する手法と、外部領域Poutsideに含まれる画像と各区画内の画像Psecの全体の画像を評価して算出する手法があるが、以下に評価値を求める各手法について説明する。
【0050】
(1) ヒストグラムを用いて評価する手法
外部領域Poutsideが照射野外である場合には高輝度な白い領域となり、画素値は略一定となるため、外部領域Poutside内に含まれる画素の画素値が分布する範囲は非常に狭い。一方、各区画内の画像Psecに含まれる全ての画素の画素値が分布する範囲はかなり広い範囲になる。
【0051】
そこで、まず、各区画内の画像Psecの全体に含まれる画素値のヒストグラムHallと、外部領域Poutside内の画素値のヒストグラムHoutsideをそれぞれ算出し(図11参照)、ヒストグラムHall内の最大画素値と最小画素値の差Aと、ヒストグラムHoutside内の最大画素値と最小画素値の差Bを求めて、B/Aを評価値として求める。
【0052】
評価値算出手段45は、B/Aが閾値より大きいときには外部領域Poutsideには被写体が撮影されている可能性が高いため、直線は照射野辺ではないものと判定してキャンセルするが、撮影部位によって直接X線照射部が存在する場合と存在しない場合があるため、閾値を変えるようにしたものが好ましい。
【0053】
画像中の最低濃度値(最高輝度値)を持つ画素は照射野外にあることが多く、照射野外に散乱線などの影響で濃度の高い領域が現れると、照射野外に現れる濃度値の範囲(濃度幅)も広くなる。そのため、直接X線照射部が存在するような画像では、画像全体に現れる濃度幅が大きいが、直接X線照射部が存在しないような画像で画像全体に現れる濃度幅が小さく、照射野外に現れる濃度幅が画像全体の濃度幅に対して相対的に大きくなる。そのため、直接X線照射部が存在しないような画像では閾値をあまり小さくすると、直線の外側(外部領域Poutside)が照射野外と一致して正しく検出された直線を照射野辺ではないものと判定してキャンセルする可能性が高くなる。一方、閾値を高くしすぎると、直接X線照射部が存在する画像から検出した直線の外側(外部領域Poutside)に、直接X線照射部は存在せず被写体が撮影されている場合には、外部領域Poutsideの濃度幅は画像全体の濃度幅に比べて比較的小さいため、このような照射野辺ではない直線をキャンセルすることができなくなる。
【0054】
また、四肢を撮影した画像は、区画内の画像Psec全体からすると被写体が撮影されている領域が比較的小さく直接X線照射部が存在することが多いため、画像全体の濃度幅が大きい。また、図12に示すように、例えば腕の周囲に直接X線照射部Rが存在し、照射野輪郭PSに沿うように広く分布することが多い。このような画像から腕の輪郭となる直線を照射野辺の候補として検出した場合には、直線の外側(外部領域Poutside)に直接X線照射部Rが存在することになる。このように四肢を撮影した画像であることが撮影者の選択した撮影メニューから判断できるときは、直線の外側(外部領域Poutside)に直接X線照射部Rが存在する可能性が高いため、閾値を高く0.9程度に設定してもよい。
【0055】
一方、聴器や腰椎などを撮影した画像は画像全体の濃度幅が小さいことが多く、B/Aを閾値で直線を評価することは難しいため、この手法による直線のキャンセルは行わないようにする。
【0056】
上述の四肢や聴器や腰椎以外を撮影した場合には、一般的に閾値は0.8程度とする。
【0057】
以上からわかるように、閾値を0.8〜0.9に設定するのが最も好ましいが、撮影する部位により直接X線照射部が存在する画像が多いか少ないかや、直接X線照射部と被写体との境に直線的な構造物が多いか少ないか応じて、設定する閾値を0.7〜0.9の範囲で変えるようにする。
【0058】
あるいは、外部領域Poutside内の画素値の分散σ1と、各区画内の画像Psecの全体に含まれる画素値の分散σ2を求めて、分散σ2に対して分散σ1が十分に小さくないときには外部領域Poutsideには被写体が撮影されている可能性が高いため、直線は照射野辺ではないものと判定してキャンセルするようにしてもよい。
【0059】
(2) 画素値を用いて評価する手法
また、外部領域Poutsideは放射線が照射されていない領域であるため、そこには、直接X線が照射された部分は含まれない。つまり、照射野外領域には、直接X線照射部の画素値を持つ画素がほとんど含まれることがない。そこで、外部領域Poutside内の直接X線照射部の画素値を持つ画素の割合から、外部領域Poutsideが照射野外領域であるか否かの判定をする。
【0060】
直接X線照射部の画素値は、放射線を照射した量によって異なるため、直接X線照射部の画素値とそれ以外の部分の画素値とを区別する閾値を決定する手順を以下に説明する。ここでは、画像の階調を8ビット(0〜255)で表すものとする。
【0061】
(i ) まず、各区画内の画像Psec全体のヒストグラムから、最大画素値histmaxを求める。
【0062】
(ii) 直接X線照射部は高輝度な領域であり、通常少なくとも100を超えた画素値を持つ。そこで、直接X線照射部が存在する画像であるか否かをhistmaxに応じて判断する。
【0063】
(ア)histmax ≦ 100 の場合には、直接X線照射部が存在しない画像であると判断して、閾値の探索を行わない。
【0064】
(イ)histmax > 100 の場合には(iii)へ行き、直接X線照射部の画素値とそれ以外の領域を区別する閾値を算出する。
【0065】
(iii) 図13に示すように、画像全体のヒストグラム(Dhは直接X線照射部、Dmは被写体が撮影された領域、Dlは照射野外領域に該当する)をとると、大きく分けて3つのピークがあるが、直接X線照射部の画素値は最も高濃度側のピークをもつ部分Dhに含まれる。そこで、最も高濃度側の部分Dhと中間辺りにピークをもつ被写体が撮影された領域Dmとの境界histmax2を探索する。
【0066】
まず、j=histmax-5とし、jを5ずつ減らしながら、全画素数に対する画素値jを持つ画素数の割合を計算し、始めてこの割合が0.2%を下回るjをhistmax2とする。
【0067】
(iv) histmax 〜histmax2の間の画素値を持つ画素が直接X線照射部であるが、直接X線照射部は100以下の画素値を持つことはないため、histmax2が100以下の場合にはhistmax2の探索に失敗したものと判断する。そこで、
(ア) histmax2 ≦ 100 となった場合には、経験的に直接X線照射部の画素値のほとんどが、histmax からhistmax −20の間に存在することがわかっているので、閾値Thを
Th = histmax − 20
と決定する。
【0068】
(イ) histmax2 > 100 の場合には、(v)へいく。
【0069】
(v ) そこで、histmax2 > 100 の場合には閾値Th を、
Th = histmax2 −15
と決定する。しかし、直接X線照射部に現れる画素値はバラツキが少ない領域であるため、histmax−Thが45より大きくなる(つまり、直接X線照射部の画素値がかなり広い範囲にわたって分布する)ことは、通常はありえない。そこで、
(ア) histmax − Th > 45 の場合には閾値Th を、
Th = histmax − 20
と決定する。
【0070】
(イ) histmax − Th ≦ 45 の場合には、(vi)へいく。
【0071】
(vi) さらに、全画素数に対するhistmax2 −15以上の画素値を持つ画素数の割合が95%以上の場合には、明確なピークが現れなかったことになる。そこで、以下のように閾値Thを決定する。
【0072】
(ア) 95%以上の場合には、経験的に得られた直接X線照射部に現れる画素値の範囲から閾値Thを、
Th = histmax − 20
と決定する。
【0073】
(イ) 95%未満の場合には、探索された直接X線照射部の画素値の範囲よりも少し低いところを閾値Thとし、
Th = histmax2 − 15
と決定する。
【0074】
上のようにして得られた閾値Thを越えた画素値が直接X線成分の画素値である。この画素値を用いて、外部領域Poutside内の直接X線成分の画素が全画素内に含まれる割合を評価値として求める。照射野辺判定手段46は、外部領域Poutside内の全画素の0.1%以上が直接X線成分の画素値を持つ画素であれば、外部領域Poutsideに放射線が照射された領域が含まれている可能性が高いため、直線は照射野辺ではないものと判定してキャンセルする。
【0075】
(3) 中周波帯域の成分を用いて評価する手法
あるいは、外部領域Poutsideは放射線が照射されていない領域であり、そこには被写体が撮影された領域は含まれない。照射野外の領域や直接X線照射領域は低周波帯域の画像であり、ノイズ成分は高周波帯域の画像であるが、被写体が撮影されている領域は中周波数帯域の画像である。従って、中周波数帯域の画像成分のみを抽出することにより、被写体が撮影されている画像部分のみを抽出することができる。
【0076】
そこで、外部領域Poutsideから中周波数帯域の画像成分を抽出して、その画像成分の強度を求めることにより、外部領域Poutsideに被写体が含まれているか否かを評価することができる。具体的には、外部領域Poutside内の各画素(図14の点c)を中心として5×5のマスクと3×3のマスクを用いて、次式の演算で強度を求める。
【0077】
A=5×5マスク内の画素の平均 − 3×3マスク内の画素の平均 (3)
強度=(Σ|A|)/N (4)
照射野辺判定手段46は、この評価値が閾値よりも大きいときは、この直線は照射野辺ではないものと判定してキャンセルする。被写体の骨や体の輪郭などの大まかな構造物は0.056〜0.093cycle/mmの周波数帯域に含まれる画像成分である。そこで、この周波数成分で構成する画像成分を抽出するためには、5×5マスクは1辺が5mm〜20mm、3×3マスクは1辺が3mm〜12mmのものを用いるのが最適であり、例えば、5×5マスクは1辺が9mmであれば、3×3マスクは1辺が5.4mmのものを用いる。また、マスクの大きさは、5×5と3×3に限られるものではなく画像の解像度に応じて適切な大きさのマスクを採用するようにしてもよい。
【0078】
(4) 信頼度の高い確信直線と交差する角度を用いて評価する手法
照射野外領域から照射野内領域の分かれ目となる線上は、画素値が急激に変化する場所でもある。そこで、照射野辺の候補となる直線の中から直線を境にして濃淡の変化が急激なものが照射野辺である可能性が高い。そこで、直線上にある各画素を中心にして3×3画素近傍の領域において以下の計算を行う。
【0079】
図15に示すように、3×3画素の領域内の中心に存在する画素(点e)を中心として、差分値Bを下式で求める。
【0080】
B=|(a-g)+(b-h)+(c-l)|+|(c-a)+(f-d)+(i-g)| (5)
この差分値Bを直線上にある全ての点について計算し、各点における差分値Bの総和ΣBを直線上にある画素の総数Nで割った指標値ΣB/Nを求めて、ΣB/Nが最も大きい直線を照射野辺である信頼度が最も高い確信直線として複数の直線の中から1つ選択する。
【0081】
図16に示すように、信頼度の高い確信直線を基準にして、この直線の傾きとの違いが±α°の範囲内にある直線(平行な直線)、またはこの直線の傾きとの違いが90°±α°の範囲内にある直線(直交する直線)以外は、照射野辺ではないものと判定してキャンセルする。経験的に、α°は10°程度にすると良好な結果が得られる。
【0082】
(5) エッジらしさを用いて直線を評価する手法
照射野外領域から照射野内領域の分かれ目となる線は、上述のように濃淡が急激であり、さらに画素値の変化する方向が揃った方向を向いたエッジである。上述の指標値ΣB/Nを用いて、照射野辺である信頼度を求め、さらに、各直線のエントロピーを算出して濃淡の変化の方向が揃っているかを評価する。
【0083】
まず、エントロピーを算出するために、図17(a)のように、直線上にある各画素を中心(点O)にして5×5マスクを用いて直線上の各画素における画素値の勾配θを算出する。
【0084】
y=(a+b+c+d+e)−(l+m+n+p+q) (6)
x=(e+g+i+k+q)−(a+f+h+j+i) (7)
y≧0の場合 θ=tan−1(y/x) (8)
y<0の場合 θ=−tan−1(y/x) (9)
となる。
【0085】
この得られた勾配θを、図17b)に示す勾配方向1〜8のうちの最も近い方向のいずれかに振り分ける。
【0086】
直線上の各点における勾配θが、勾配方向1〜8のうちいずれに振り分けられたかを見てエントロピーの計算をする。直線上の点の総数Totalと、直線上の同じ勾配方向iを持つ点の数Ziから、同じ勾配方向iが生じる生起確率P(i)を求める。
【0087】
P(i)=Zi/Total (10)
これより、エントロピーHは、
H=−ΣP(i)ln(P(i)) (11)
となる。図18に示すように、エントロピーHを縦軸とし差分値Bを横軸としたグラフを用い、グラフ上で直線Lより上にある線は照射野辺の可能性は少ないものとしてキャンセルし、直線lより下にある線は照射野辺の可能性が高いものとして残すようにする。
【0088】
上述の各手法で評価値の算出を行う際、各区画内の画像Psecの端に並ぶ画素値はIPから読み取った画素の値ではなく記録媒体に残っていた値である可能性があるため、端から数画素分は評価値の算出に用いないようにして計算するものが好ましい。
【0089】
判定手段50は、照射野認識手段40により認識された各区画の照射野領域Pinと分割手段40で分割した各区画の境(分割候補線)とを比較して分割が適切であるか否かを判定する。そこで、以下の条件と一致するときには、分割した各区画が適切ではなかったものと判定する。ここでは、縦方向に2分割する場合について説明する。
【0090】
(1)1つの照射野領域が複数の区画にまたがっている場合
(i) 図19に示すように、分割された区画の少なくともどちらか一方で、分割候補線nと照射野輪郭PSが交差しているか判定する。
(ii) 交差している場合には、認識された照射野領域の縦方向の座標値の最大値と最小値の差b(=最大値−最小値)と、認識された照射野領域Pinを分割候補線nが重なる部分の縦方向の座標値の最大値と最小値の差a(=最大値−最小値)とで、a/b>0.5が成り立つ場合には、分割候補線nが斜めになった照射野領域Pinを横切るように設定された可能性が高いため、分割が適切でなかったものと判定する。
【0091】
(2)2つの照射野領域が複数の区画にまたがっている場合(その1)
(i) 図20に示すように、隣り合わせた分割された区画で、分割候補線nと照射野輪郭PSがお互いに交差しているか判定する。
(ii) 交差している場合は、それぞれの区画で認識された2つの照射野領域Pinを構成する照射野辺が、1つの直線上に並ぶ照射野辺の組み合わせl1pair,l2pairが2つ存在する場合には、本来1つの照射野領域Pinであるものを2つに分割した区画で認識を行ったものである可能性が高いため、分割が適切でなかったと判定する。
【0092】
(3)2つの照射野領域が複数の区画にまたがっている場合(その2)
(i) 図21に示すように、隣り合わせた分割された区画で、分割候補線nと照射野輪郭PSがお互いに重なっているか判定する。
(ii) 重なっている場合には、それぞれの区画で認識された2つの照射野領域Pinを構成する照射野辺のうち、各照射野領域の照射野辺の1つが1つの直線上に並ぶ照射野辺の組み合わせl3pairが1つ存在する場合には、本来1つの照射野領域であるものを2つに分割した区画で照射野領域の認識を行ったものである可能性が高いため、分割が適切でなかったと判定する。
【0093】
横方向に2分割した場合や縦横両方向に4分割する場合についても、上記(1)〜(3)の方法と同様に判定することができる。
【0094】
次に、照射野認識装置1の動作について、図22フローチャートに従って説明する。
【0095】
まず、入力手段10から放射線撮影画像Pを入力する(S100)。初めに、分割パターン設定手段20で、分割パターンが縦横両方向の4分割を設定し(S101)、分割手段30で放射線撮影画像Pを分割パターンに従って、縦方向の分割候補線と横方向の分割候補線を探索して、放射線撮影画像Pを4つの区画に分割する(S102)。
【0096】
そこで、照射野認識手段40で各区画内の画像Psecから照射野を認識する(S103)。照射野認識手段40は、図23に示すように、まず、基準点設定手段44により、中心点Kを自動的に基準点として設定する(S120)。次に、この中心点Kを用いて、直線検出手段41の候補点検出手段42により、上記照射野輪郭PS上の点と考えられる多数のエッジの候補点Eを検出し、候補線検出手段43でハフ変換を利用して、検出された多数の候補点Eによって構成されるエッジ線Lを照射野辺の候補となる直線(候補線)として求める(S121)。
【0097】
照射野辺の候補となる直線は、照射野辺の数より多く検出されるので、各直線を上述の評価値算出手段45を用いて評価値を算出し(S122)、算出した評価値に基づいて余分な直線をキャンセルする(S123)。
【0098】
検出された全ての直線について評価が終わるまでS122からS123を繰り返し(S124)、照射野辺の候補となる直線の中から前記照射野辺でないと判定された直線を除いた残りの直線に基づいて、各区画内の画像Psecから照射野領域Pinを認識する。
【0099】
この認識処理を繰り返して、4つの全ての区間で照射野領域Pinを認識する(P105)。判定手段50で各区画の照射野領域Pinと分割した各区画の境となる分割候補線nとを比較して分割が適切であるか否かを判定する(S106)。判定手段50から得られた判定結果より、分割が適切であれば4分割で撮影されたものとして処理を終了する。
【0100】
分割が適切でないと判断された場合には(S106)、分割パターン設定手段20で、分割パターンとして縦方向の2分割を設定し(S107)、S102〜S105の処理を再度行う。また、照射野認識手段40の認識処理で照射野が認識されなかった場合にも、分割パターンが正しくなかったものと判定して、S107に進む。
【0101】
そこで、縦方向の2分割のパターンでも上述と同様に分割パターンが適切であるか判定を行う。縦方向の2分割のパターンでも分割パターンが適切でないと判定された場合には、さらに、横方向の2分割のパターンで判定を行う。いずれの分割パターンであっても適切でない場合は、さらに、分割なしで照射野を認識する。
【0102】
さらに、図24に示すように、3分割のパターンについても判定を行うようにしてもよい。この3分割のパターンで判定を行う場合には、縦方向の3分割のパターン、横方向の2分割のパターン、縦横両方向の4分割のパターン、縦2分割のパターン、横2分割のパターン、分割なしのパターンの順に判定を行う。
【0103】
以上、詳細に説明したように、分割パターンに対応して放射線撮影画像を分割して、分割した区画ごとに照射野領域を認識して、認識された照射野領域が適切であったか否かを判定することにより、分割撮影された放射線画像より照射野領域を正確に認識することが可能になる。
【0104】
また、上記各手段をコンピュータ上に機能させるようなプログラムを記録した媒体を用いてコンピュータにインストールすることによって、照射野判定装置として動作させることができる。また、このプログラムはネットワークを介して提供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】照射野判定装置の概略構成図
【図2】照射野絞りを用いて撮影する方法を説明するための図
【図3】分割撮影の一例
【図4】放射線撮影画像全体のヒストグラムの一例(その1)
【図5】分割候補線の求め方を説明するための図
【図6】分割した区画の一例
【図7】照射野認識手段の構成図
【図8】直線の検出方法を説明するための図
【図9】照射野辺の候補となる直線を誤検出した一例
【図10】外部領域と基準点との関係を説明するための図
【図11】放射線撮影画像全体のヒストグラムと照射野外領域のヒストグラムの一例
【図12】四肢を撮影した放射線撮影画像の一例
【図13】放射線撮影画像全体のヒストグラムの一例(その2)
【図14】中周波数帯域の画像成分を抽出するためのマスクの一例
【図15】差分値の算出方法を説明するための図
【図16】確信直線と直交または平行な直線を照射野辺として検出する方法を説明するための図
【図17】画素値の勾配の求め方を説明するための図
【図18】エッジらしさを判定する方法を説明するための図
【図19】分割した区画の適正の判定を説明するための図(その1)
【図20】分割した区画の適正の判定を説明するための図(その2)
【図21】分割した区画の適正の判定を説明するための図(その3)
【図22】照射野認識装置の動作を説明するためのフローチャート
【図23】照射野認識処理の動作を説明するためのフローチャート
【図24】分割パターンの一例
【符号の説明】
【0106】
1 照射野認識装置
10 入力手段
20 分割パターン設定手段
30 分割手段
40 照射野認識手段
41 直線検出手段
42 候補点検出手段
43 候補線検出手段
44 基準点設定手段
45 評価値算出手段
46 照射野辺判定手段
50 判定手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影画像の照射野を認識する照射野判定装置、照射野判定方法およびそのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、記録された放射線撮影画像を読み取って画像データを得、この画像データに適切な画像処理を施した後、処理済みの画像データに基づいて読影に適した可視像を再生することが種々の分野で行なわれている。
【0003】
ところでX線撮影において放射線撮影画像を撮影記録するに際しては、放射線の照射による生体への影響を極力小さくするためや、観察に不要な部分からの散乱光による画質性能の低下等を防止するために、放射線が被写体の必要な部分にのみ照射されるように照射域を制限する鉛などで作られた照射野絞りを使用することが多い。
【0004】
照射野絞りを用いて撮影を行なった場合、蓄積性蛍光体シート等の記録媒体には、照射野絞りの開口輪郭の内部領域(照射野領域)に被写体等の画像が記録され、開口輪郭の外側領域(照射野外領域)には放射線が到達せず未露光状態となる。つまり、この開口輪郭に対応する画像の照射野輪郭はエッジ線となる。
【0005】
そして、このように照射野領域内にのみ画像が記録された記録媒体から画像データを読み取って画像処理を行なう場合、照射野領域内の画像データについてのみ階調処理等を施すようにすれば、処理負荷の低減、処理スピードの向上を図ることができる。
【0006】
一方、照射野外領域は未露光状態であるため、医用X線フイルムのようなネガ画像においては最低濃度領域(画素値の低い領域)となるが、例えば医用X線フイルムをシャーカステンに掛けて蛍光灯の光による透過画像を観察するとき等には、このような最低濃度領域は非常に明るい領域となるため、照射野領域のうち特に照射野外領域に近い部分については照射野外領域の明るさに影響されて読影性能が低下する。同様にCRT等の画像表示装置にその画像を表示する場合にも、照射野外領域は高輝度な領域となるため照射野内の画像の読影に支障を生じる。
【0007】
そこで放射線画像記録再生システムにおいては、このような照射野外領域についての各画像データを一律に最高濃度(若しくは最低輝度)に相当する値に強制的に置換する処理が行なわれる。そしてこの処理は一般に黒化処理と呼ばれるが、この黒化処理を行なうためには、照射野輪郭を精度よく認識することが非常に重要である。
【0008】
例えば、上記照射野輪郭が画像の濃度変化が急峻に変化するエッジ線になることを利用して、画像データの変化が急峻な部分を探索することによって、照射野輪郭を求める方法がよく知られているが、このエッジ線を求める具体的な方法として、画像の所定の点(たとえば画像の中心点等)から画像端部に向かう放射状の複数の直線を設定し、これらの各直線の方向に沿った画像データに基づいて各方向ごとにデータの差分が大きいエッジ上の候補点を検出し、これらの候補点に基づいてエッジとなる線を検出する方法が提案されている(例えば、特許文献1等)。
【0009】
また、放射線撮影画像を撮影記録するに際して、いわゆる分割撮影が行われることも多く、予め決めされた所定の複数の分割区画に分割し、各区画ごとに放射線を照射して撮影が行われる。このような分割撮影時にも、照射野外絞りをもちいて撮影され各区画が分離された画像となる。このような場合には、1つだけの照射野が存在することを前提としたのでは、正確に照射野を認識することができない。そこで、例えば、4分割で分割撮影されている場合には、画像の上下方向の中央部あるいは左右方向の中央部に各区画を分割する分割線が現れることが多いことから、これらの中央部でエッジを探してこのエッジがまっすぐ直線上に並んでいるか否かによって分割撮影が行われた画像であるか否かを判定するものがある(例えば、特許文献2)。
【0010】
あるいは、分割パターンに対応した2値化マスクを予め用意し、分割撮影した画像を2値化して照射野内と照射野外とを分離し、用意されている2値化マスクと比較して、パターンが一致するか否かによって分割パターンを認識する方法も提案されている(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特開昭63-259538 号公報
【特許文献2】特開昭63-257879 号公報
【特許文献3】特開平1-212065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1では、画像の中心部に被写体が撮影されているものとして、エッジを探しているため、分割撮影が行われた場合には照射野を上手く認識することができない。そこで、分割撮影された場合には、分割撮影された各区画を認識した後に、区画毎に照射野を認識しなければならない。
【0012】
しかし、分割撮影された各区画は、必ずしも画像の上下方向の中央部あるいは左右方向の中央部で各区画が分割されるとは限らず、どちらかに偏っていたり、各区画で撮影された画像が傾いて撮影されることがあり、特許文献2、3の手法のように標準的な分割パターンに基づいて区画を認識しようとしても正確に認識することができないケースがある。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、従来の照射野認識処理よりも認識精度を向上させた放射線撮影画像の照射野認識装置、照射野認識方法およびそのプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の照射野認識装置は、照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像を入力する入力手段と、
分割撮影された放射線撮影画像の分割パターンを設定する分割パターン設定手段と、
前記入力手段により入力された放射線撮影画像を前記分割パターンに従って複数の区画に分割する分割手段と、
前記分割された各区画内の画像から照射野領域を認識する照射野認識手段と、
該照射野認識手段により認識された各区画の照射野領域と前記分割した各区画の境とを比較して分割が適切であるか否かを判定する判定手段とを備え、
該判定手段において分割が適切であると判定されるまで、前記分割パターン設定手段によりすでに設定された分割パターンとは異なる分割パターンを設定して、前記分割手段で前記放射線撮影画像を前記異なる分割パターンに従って複数の区画に分割した後、前記照射野認識手段で各区画において照射野を認識する処理を繰り返すことを特徴とするものである。
【0015】
また、本願発明の照射野認識方法は、照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像を入力する入力ステップと、
分割撮影された放射線撮影画像の分割パターンを設定する分割パターン設定ステップと、
前記入力ステップにより入力された放射線撮影画像を前記分割パターンに従って複数の区画に分割する分割ステップと、
前記分割された各区画内の画像から照射野領域を認識する照射野認識ステップと、
該照射野認識ステップにより認識された照射野領域と前記分割した複数の区画の境とを比較して分割が適切であるか否かを判定する判定ステップとを備え、
該判定ステップにおいて分割が適切であると判定されるまで、前記分割パターン設定ステップによりすでに設定された分割パターンとは異なる分割パターンを設定して、前記分割ステップで前記放射線撮影画像を前記異なる分割パターンに従って複数の区画に分割した後、前記照射野認識ステップで各区画において照射野を認識する処理を繰り返すことを特徴とするものである。
【0016】
また、本願発明のプログラムは、コンピュータを、
照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像を入力する入力手段と、
分割撮影された放射線撮影画像の分割パターンを設定する分割パターン設定手段と、
前記入力手段により入力された放射線撮影画像を前記分割パターンに従って複数の区画に分割する分割手段と、
前記分割された各区画内の画像から照射野領域を認識する照射野認識手段と、
該照射野認識手段により認識された照射野領域と前記分割した複数の区画の境とを比較して分割が適切であるか否かを判定する判定手段として機能させ、
該判定手段において分割が適切であると判定されるまで、前記分割パターン設定手段によりすでに設定された分割パターンとは異なる分割パターンを設定して、前記分割手段で前記放射線撮影画像を前記異なる分割パターンに従って複数の区画に分割した後、前記照射野認識手段で各区画において照射野を認識する処理を繰り返すように機能させることを特徴とするものである。
【0017】
「分割パターン」とは、放射線撮影画像を分割撮影する際に用いられる分割パターンであり、縦方向に2分割、横方向に2分割、縦横の両方向の4分割などの複数の分割パターンがある。
【0018】
「区画」とは、放射線撮影画像を区切って分けた1つをいい、「放射線撮影画像を複数の区画に分割する」とは、被写体を複数部分に分けて分割撮影して、複数の画像を1つの放射線撮影画像にまとめて撮影を行った際に、分割撮影時の分割パターンに合うように放射線撮影画像中の複数の画像を1つ1つの画像に分けることをいう。
【0019】
「照射野領域を認識する」とは、照射野絞りを用いて撮影をした放射線撮影画像を判別して、放射線が照射された照射野領域を見つけることを意味し、「各区画内の画像から照射野領域を認識する」とは、区画に分け放射線撮影画像の1つ1つの区画から照射野領域を認識することをいう。
【0020】
「分割が適切であるか否かを判定する」とは、放射線撮影画像を区切って分けた1つの区画が、分割撮影した時の分割と一致するか否かを判定することをいう。
【0021】
「処理を繰り返す」には、分割が適切であると判定されるまで、分割手段(分割ステップ)と照射野認識手段(照射野認識ステップ)と判定手段(判定ステップ)を繰り返す場合や、予め定められた複数の分割パターンの全てについて、分割手段と照射野認識手段と判定手段を繰り返し行って、最適な分割パターンを採用する場合や、予め定められた複数の分割パターンの全てについて分割手段と照射野認識手段を繰り返し行った後に、判定手段で判定を行い最適な分割パターンを採用するようにする場合を含む。
【0022】
また、前記照射野認識手段は、
前記区画内の画像より前記照射野領域の照射野辺の候補となる直線を検出する直線検出手段と、
前記区画に基準点を設定する基準点設定手段と、
前記検出された直線により前記区画の画像を2つの領域に分割し、前記2つの領域のうち前記基準点を含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価した評価値を算出する評価値算出手段と、
前記評価値に基づいて、前記外部領域に前記放射線が入射していると判定された場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定する照射野辺判定手段とを有し、
前記照射野辺の候補となる直線の中から前記照射野辺でないと判定された直線を除いた残りの直線に基づいて照射野領域を認識するものが好ましい。
【0023】
「基準点」は、通常行われる撮影方法と照らし合わせて、放射線撮影画像の照射野内であると考えられる範囲であればよく、「基準点の設定」は、自動的に設定するものでも、観察者などが指示入力したものであってもよい。
【0024】
「放射線が入射している領域」は、被写体を透過したX線が照射された領域、あるいは、X線が直接照射された領域であり、「放射線が入射している領域」には、散乱線などによって本来X線が照射されないようにした領域に放射線が入射した領域は含まない。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、分割撮影された放射線撮影画像を分割パターンに従って複数の区画に分割した後、分割された各区画内の画像から照射野領域を認識し、認識した照射野領域と区画の境とを比べて、分割が適切であるか否かを判定することにより、分割撮影時のパターンに応じて正確に照射野領域を認識することが可能になる。
【0026】
さらに、照射野領域を認識する際に、照射野領域の外側に放射線が入射しているか否かを評価するようにすれば、複数の区間内にまたがっている照射野領域を、それぞれの区間内に分かれて存在する照射野領域と間違えて認識することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の放射線撮影画像の照射野認識装置の具体的な実施の形態について図面を用いて説明する。図1は本発明の照射野認識装置の一実施形態の構成を示し、図2は照射野絞りを用いた放射線撮影画像の撮影装置を示す図(図2(a)参照)および照射野絞りの開口輪郭に対応する照射野輪郭が形成された蓄積性蛍光体シートを示す図(図2(b)参照)である。
【0028】
撮影装置で照射野絞りを用いてX線撮影を行なう場合には、まず、被写体を撮影した像が放射線撮影画像Pの中心になるように配置し、図2(a)に示すように、X線源と被写体との間に、矩形等の開口部のある照射野絞りを置いて撮影をする。この開口部の外側の部分は、X線が被写体および蓄積性蛍光体シートにX線が到達するのを防止する鉛板である。この状態でX線源から被写体にX線が照射されると、蓄積性蛍光体シートから得られた放射線撮影画像P上には、図2(b)に示すように、照射野絞りの開口部の外側に対応する領域(照射野外領域)Pout にはX線が照射されず、一方、照射野絞りの開口部より内側に対応する領域(照射野領域)Pinには被写体を透過した部分と直接X線が照射された部分が記録される。そして、照射野絞りの開口部に対応する部分は、開口部と略同一形状となり、照射野外領域Poutは高輝度なまぶしい領域となる。照射野領域Pinと照射野外領域Poutの境には、濃度が急激に変化する複数のエッジ線からなる照射野輪郭PSが形成される。照射野絞りの開口部は通常矩形であり、照射野輪郭PSは4つの直線の照射野辺で構成される。
【0029】
さらに、分割撮影を行なうと、分割された各区間毎に照射野領域が存在し、複数の照射野領域Pinが現れる。通常、分割撮影では、図3に示すように、縦方向に2分割(同図(b))、横方向に2分割(同図(c))、縦横の両方向の4分割(同図(a))で撮影される。
【0030】
そこで、本願発明の照射野認識装置1を用いて、分割撮影された放射線撮影画像Pの照射野を認識する方法について説明する。本願発明の照射野認識装置1は、図1に示すように、照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像Pを入力する入力手段10と、分割撮影された放射線撮影画像Pの分割パターンを設定する分割パターン設定手段20と、入力手段10により入力された放射線撮影画像Pを前記分割パターンに従って複数の区画に分割する分割手段30と、分割された各区画内の画像から照射野領域を認識する照射野認識手段40と、照射野認識手段により認識された各区画の照射野領域と前記分割した各区画の境とを比較して分割が適切であるか否かを判定する判定手段50とを備える。
【0031】
分割パターンは、放射線撮影画像を分割撮影する際に用いられる分割パターンであり、図3に示すような、縦方向に2分割、横方向に2分割、縦横の両方向の4分割などがあり、分割パターン設定手段20は、この中から1つ選んで設定する。
【0032】
分割手段30は、分割パターン設定手段20によって設定された分割パターンに従って、放射線撮影画像Pを複数の区画に分割する。ここでは、図3(b)に示すような縦方向に2分割の分割パターンが設定された場合について説明する。
【0033】
まず、放射線撮影画像Pから縦方向に分割する分割候補線を探索するが、本実施の形態では、1ピクセルが1.8mmに相当し、横170ピクセル、縦140ピクセルの放射線撮影画像Pを例に具体的に説明する。
【0034】
まず、画像全体のヒストグラムからX線が照射されたX線照射領域の画素値を調べると、図4に示すように、放射線撮影画像Pの全体に含まれる画素値のヒストグラム(ここでは、濃度が高い画素の画素値を大きな値で表し、濃度が低くなるほど画素値が小さくなるものとして、以下で説明する。)には3つのピークが表れる。各ピークは、直接X線照射部Dhと、被写体を撮影した領域Dmと、照射野外領域Dlに該当し、X線が照射されたX線照射領域の画素値はDmとDhである。
【0035】
そこで、図5に示すように、放射線撮影画像Pの縦方向のライン上に並んだ画素の画素値を中心のラインmから左右の両端に向けて(同図(a)の矢印)少しずつずらしながら見ていき、縦方向のライン上にX線照射領域の画素値をもつ画素が存在しない縦方向のラインを探索し、X線照射領域の画素値をもつ画素が存在しない部分、つまり、X線が照射されていない部分Dを見つける。
【0036】
次に、画像の左右の中心を通る縦方向のラインmを基準に左右に20ピクセルの範囲内を中央部Mとし、X線が照射されていない部分Dと中央部Mとの共通部分を、分割候補線が存在する範囲(図5(b)の斜線部)とする。
【0037】
この分割候補線が存在する範囲内で、縦方向のライン上に並んだ画素の画素値を平均し、平均が最小値aとなる縦方向のラインを見つけ、このラインの左右の方向に各縦方向のライン上の画素値の平均がa+7を超える縦方向のラインを探して、左右それぞれで初めてa+7を超えた縦方向のラインに挟まれる範囲の真中に存在する縦方向のラインを分割候補線nとする。
【0038】
この分割候補線nを境に、放射線撮影画像Pを2つの区画に分割する。横方向に2分割する場合や、縦横の両方向に4分割する場合も同様に分割候補線nを探索して、図6に示すように、各区画の画像Psecに分割する。
【0039】
照射野認識手段40は、図7に示すように、照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた各区画内の画像Psecより照射野辺の候補となる直線を検出する直線検出手段41と、各区画内の画像Psecの略中心部に基準点を設定する基準点設定手段44と、検出された直線により各区画内の画像Psecを2つの領域に分割し、2つの領域のうち基準点を含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価した評価値を算出する評価値算出手段45と、評価値に基づいて、外部領域に前記放射線が入射していると判定された場合には、この直線は照射野辺ではないものと判定する照射野辺判定手段46とを備える。
【0040】
また、直線検出手段41は、入力された各区画内の画像Psecに基づいて、上記照射野輪郭PS上の点と考えられる多数のエッジの候補点Eを検出する候補点検出手段42と、多数の候補点Eに基づいてハフ変換を利用してそれらの候補点Eによって構成されるエッジ線Lを照射野辺の候補となる線(候補線)として求める候補線検出手段43とをさらに備えた構成である。
【0041】
候補点検出手段42は,入力された各区画内の画像Psecついて、図8(a)に示すように、その各区画内の画像Psecの中心点Kを設定し、中心点Kから各区画内の画像Psecの端部にそれぞれ向う等角度間隔に、例えば、1.5度間隔に240本の放射状の直線を設定する。この放射状の直線の設定本数および間隔、放射状の直線群の中心の設定位置等は適宜変更することができる。
【0042】
これらの240本の放射状の直線にそれぞれ沿った方向において互いに隣接する画素間の画素値を比較し、その差分が最も大きい2つの画素をその線上で探索する。この探索された2つの画素間は画素値の差が大きく、エッジ上に存在する点である可能性の高いエッジ候補点Eである。このようにして各直線方向ごとにそれぞれ探索されたエッジ候補点Eを検出し、合計 240個のエッジ候補点Eを得る(図8(b)参照)。
【0043】
候補線検出手段43は、候補点検出手段42により検出された各エッジ候補点Eをつなぐ直線をハフ(Hough)変換により求める。図8(c)に示すxy座標系上で、i番目のエッジ候補点Eiの座標を(xi ,yi )( i=1,2,…,240 )としたとき、これらのxi ,yi を定数として次式(1)で表わされる曲線LSiを各エッジ候補点ごとに求める。
【0044】
ρ=xi cos θ+yi sin θ (1)
この式(1)は、XY空間において、中心座標を(xi ,yi )に固定してこの座標(xi ,yi )を通過する直線の式を表し、ρは座標(xi ,yi)を通る各直線LLとxy座標系の原点Oとの距離、θはこの直線LLとxy座標系の原点Oを垂直に結ぶ垂線とx軸がなす角度を表している。この座標(xi ,yi )を通る各直線LLは式(1)においてρ、θを徐々に変化させて得られるものであり、θρ空間(ハフ空間)では、座標(xi ,yi )を通るこれら直線LLは下式(2)に示す1本の曲線として表現される(図8(c)参照)。
【0045】
ρj =xcos θj +ysin θj (2)
各エッジ候補点についてそれぞれ同様の操作を行なうと、ハフ空間に 240本の曲線LSi ( i=1,2,…,240 )が表される。この240本の曲線LSi が交わる各交点位置(ρj ,θj )を求め、各交点位置(ρj ,θj )で交わる曲線の数をカウントする。ハフ空間上で、交差する曲線の数(カウント値)が多い交点α,βが、多くのエッジ候補点Eを通る直線を表す。
【0046】
そこで、全てのエッジ候補点Eについて上記カウントを行ない、予め設定された個数に到達するまでカウント値が上位のものから順に交点位置(ρj ,θj )を抽出し、それらを実空間に戻してXY平面上の直線を求め、この求められた複数の直線が候補線LLである。照射野の形状は、4つの直線で囲まれた矩形であることから、少なくとも4つ以上の候補線LLを抽出する。
【0047】
しかしながら、この候補線LLは、照射野の形状を構成する直線の他に被写体の外形などを表す直線である可能性もある。例えば、図9に示すように被写体の胸部から腕にかけて撮影した場合、腕の形状を構成する直線llも含んで検出する可能性がある。そこで、抽出された直線llを評価して、これらの照射野の形状を構成する直線以外の直線はキャンセルする。
【0048】
基準点設定手段44は、各区画内の画像Psec上の略中心部に基準点Qを設定する。各区画内の画像Psecを撮影する際、被写体が略中心に位置するように撮影が行われる。したがって、各区画内の画像Psecの略中心部を基準点とすれば、照射野内に基準点Qを設定することになる。具体的には、各区画内の画像Psecの中心点Kを用いることができるが、照射野内にあると思われる点であれば、通常の撮影方法と照らし合わせて定められれば中心点以外の点であってもよい。あるいは、自動的に設定することが困難であれば、観察者が基準点Qを設定するようにしてもよい。
【0049】
評価値算出手段45は、図10に示すように、上記の手法で抽出された直線で各区画内の画像Psecを2つの領域に分割し、前記2つの領域のうち前記基準点Qを含まない外部領域をPoutsideとし、外部領域Poutsideが照射野外領域であるか否かを評価する。外部領域Poutsideが照射野外領域である場合は、その領域は放射線が入射していない高輝度な領域となる。そこで、被写体が撮影されている部分や直接X線照射部のような放射線が入射した領域が外部領域Poutsideに存在するか否かを評価して評価値を求める。評価値は、外部領域Poutsideに含まれる画像のみを評価して算出する手法と、外部領域Poutsideに含まれる画像と各区画内の画像Psecの全体の画像を評価して算出する手法があるが、以下に評価値を求める各手法について説明する。
【0050】
(1) ヒストグラムを用いて評価する手法
外部領域Poutsideが照射野外である場合には高輝度な白い領域となり、画素値は略一定となるため、外部領域Poutside内に含まれる画素の画素値が分布する範囲は非常に狭い。一方、各区画内の画像Psecに含まれる全ての画素の画素値が分布する範囲はかなり広い範囲になる。
【0051】
そこで、まず、各区画内の画像Psecの全体に含まれる画素値のヒストグラムHallと、外部領域Poutside内の画素値のヒストグラムHoutsideをそれぞれ算出し(図11参照)、ヒストグラムHall内の最大画素値と最小画素値の差Aと、ヒストグラムHoutside内の最大画素値と最小画素値の差Bを求めて、B/Aを評価値として求める。
【0052】
評価値算出手段45は、B/Aが閾値より大きいときには外部領域Poutsideには被写体が撮影されている可能性が高いため、直線は照射野辺ではないものと判定してキャンセルするが、撮影部位によって直接X線照射部が存在する場合と存在しない場合があるため、閾値を変えるようにしたものが好ましい。
【0053】
画像中の最低濃度値(最高輝度値)を持つ画素は照射野外にあることが多く、照射野外に散乱線などの影響で濃度の高い領域が現れると、照射野外に現れる濃度値の範囲(濃度幅)も広くなる。そのため、直接X線照射部が存在するような画像では、画像全体に現れる濃度幅が大きいが、直接X線照射部が存在しないような画像で画像全体に現れる濃度幅が小さく、照射野外に現れる濃度幅が画像全体の濃度幅に対して相対的に大きくなる。そのため、直接X線照射部が存在しないような画像では閾値をあまり小さくすると、直線の外側(外部領域Poutside)が照射野外と一致して正しく検出された直線を照射野辺ではないものと判定してキャンセルする可能性が高くなる。一方、閾値を高くしすぎると、直接X線照射部が存在する画像から検出した直線の外側(外部領域Poutside)に、直接X線照射部は存在せず被写体が撮影されている場合には、外部領域Poutsideの濃度幅は画像全体の濃度幅に比べて比較的小さいため、このような照射野辺ではない直線をキャンセルすることができなくなる。
【0054】
また、四肢を撮影した画像は、区画内の画像Psec全体からすると被写体が撮影されている領域が比較的小さく直接X線照射部が存在することが多いため、画像全体の濃度幅が大きい。また、図12に示すように、例えば腕の周囲に直接X線照射部Rが存在し、照射野輪郭PSに沿うように広く分布することが多い。このような画像から腕の輪郭となる直線を照射野辺の候補として検出した場合には、直線の外側(外部領域Poutside)に直接X線照射部Rが存在することになる。このように四肢を撮影した画像であることが撮影者の選択した撮影メニューから判断できるときは、直線の外側(外部領域Poutside)に直接X線照射部Rが存在する可能性が高いため、閾値を高く0.9程度に設定してもよい。
【0055】
一方、聴器や腰椎などを撮影した画像は画像全体の濃度幅が小さいことが多く、B/Aを閾値で直線を評価することは難しいため、この手法による直線のキャンセルは行わないようにする。
【0056】
上述の四肢や聴器や腰椎以外を撮影した場合には、一般的に閾値は0.8程度とする。
【0057】
以上からわかるように、閾値を0.8〜0.9に設定するのが最も好ましいが、撮影する部位により直接X線照射部が存在する画像が多いか少ないかや、直接X線照射部と被写体との境に直線的な構造物が多いか少ないか応じて、設定する閾値を0.7〜0.9の範囲で変えるようにする。
【0058】
あるいは、外部領域Poutside内の画素値の分散σ1と、各区画内の画像Psecの全体に含まれる画素値の分散σ2を求めて、分散σ2に対して分散σ1が十分に小さくないときには外部領域Poutsideには被写体が撮影されている可能性が高いため、直線は照射野辺ではないものと判定してキャンセルするようにしてもよい。
【0059】
(2) 画素値を用いて評価する手法
また、外部領域Poutsideは放射線が照射されていない領域であるため、そこには、直接X線が照射された部分は含まれない。つまり、照射野外領域には、直接X線照射部の画素値を持つ画素がほとんど含まれることがない。そこで、外部領域Poutside内の直接X線照射部の画素値を持つ画素の割合から、外部領域Poutsideが照射野外領域であるか否かの判定をする。
【0060】
直接X線照射部の画素値は、放射線を照射した量によって異なるため、直接X線照射部の画素値とそれ以外の部分の画素値とを区別する閾値を決定する手順を以下に説明する。ここでは、画像の階調を8ビット(0〜255)で表すものとする。
【0061】
(i ) まず、各区画内の画像Psec全体のヒストグラムから、最大画素値histmaxを求める。
【0062】
(ii) 直接X線照射部は高輝度な領域であり、通常少なくとも100を超えた画素値を持つ。そこで、直接X線照射部が存在する画像であるか否かをhistmaxに応じて判断する。
【0063】
(ア)histmax ≦ 100 の場合には、直接X線照射部が存在しない画像であると判断して、閾値の探索を行わない。
【0064】
(イ)histmax > 100 の場合には(iii)へ行き、直接X線照射部の画素値とそれ以外の領域を区別する閾値を算出する。
【0065】
(iii) 図13に示すように、画像全体のヒストグラム(Dhは直接X線照射部、Dmは被写体が撮影された領域、Dlは照射野外領域に該当する)をとると、大きく分けて3つのピークがあるが、直接X線照射部の画素値は最も高濃度側のピークをもつ部分Dhに含まれる。そこで、最も高濃度側の部分Dhと中間辺りにピークをもつ被写体が撮影された領域Dmとの境界histmax2を探索する。
【0066】
まず、j=histmax-5とし、jを5ずつ減らしながら、全画素数に対する画素値jを持つ画素数の割合を計算し、始めてこの割合が0.2%を下回るjをhistmax2とする。
【0067】
(iv) histmax 〜histmax2の間の画素値を持つ画素が直接X線照射部であるが、直接X線照射部は100以下の画素値を持つことはないため、histmax2が100以下の場合にはhistmax2の探索に失敗したものと判断する。そこで、
(ア) histmax2 ≦ 100 となった場合には、経験的に直接X線照射部の画素値のほとんどが、histmax からhistmax −20の間に存在することがわかっているので、閾値Thを
Th = histmax − 20
と決定する。
【0068】
(イ) histmax2 > 100 の場合には、(v)へいく。
【0069】
(v ) そこで、histmax2 > 100 の場合には閾値Th を、
Th = histmax2 −15
と決定する。しかし、直接X線照射部に現れる画素値はバラツキが少ない領域であるため、histmax−Thが45より大きくなる(つまり、直接X線照射部の画素値がかなり広い範囲にわたって分布する)ことは、通常はありえない。そこで、
(ア) histmax − Th > 45 の場合には閾値Th を、
Th = histmax − 20
と決定する。
【0070】
(イ) histmax − Th ≦ 45 の場合には、(vi)へいく。
【0071】
(vi) さらに、全画素数に対するhistmax2 −15以上の画素値を持つ画素数の割合が95%以上の場合には、明確なピークが現れなかったことになる。そこで、以下のように閾値Thを決定する。
【0072】
(ア) 95%以上の場合には、経験的に得られた直接X線照射部に現れる画素値の範囲から閾値Thを、
Th = histmax − 20
と決定する。
【0073】
(イ) 95%未満の場合には、探索された直接X線照射部の画素値の範囲よりも少し低いところを閾値Thとし、
Th = histmax2 − 15
と決定する。
【0074】
上のようにして得られた閾値Thを越えた画素値が直接X線成分の画素値である。この画素値を用いて、外部領域Poutside内の直接X線成分の画素が全画素内に含まれる割合を評価値として求める。照射野辺判定手段46は、外部領域Poutside内の全画素の0.1%以上が直接X線成分の画素値を持つ画素であれば、外部領域Poutsideに放射線が照射された領域が含まれている可能性が高いため、直線は照射野辺ではないものと判定してキャンセルする。
【0075】
(3) 中周波帯域の成分を用いて評価する手法
あるいは、外部領域Poutsideは放射線が照射されていない領域であり、そこには被写体が撮影された領域は含まれない。照射野外の領域や直接X線照射領域は低周波帯域の画像であり、ノイズ成分は高周波帯域の画像であるが、被写体が撮影されている領域は中周波数帯域の画像である。従って、中周波数帯域の画像成分のみを抽出することにより、被写体が撮影されている画像部分のみを抽出することができる。
【0076】
そこで、外部領域Poutsideから中周波数帯域の画像成分を抽出して、その画像成分の強度を求めることにより、外部領域Poutsideに被写体が含まれているか否かを評価することができる。具体的には、外部領域Poutside内の各画素(図14の点c)を中心として5×5のマスクと3×3のマスクを用いて、次式の演算で強度を求める。
【0077】
A=5×5マスク内の画素の平均 − 3×3マスク内の画素の平均 (3)
強度=(Σ|A|)/N (4)
照射野辺判定手段46は、この評価値が閾値よりも大きいときは、この直線は照射野辺ではないものと判定してキャンセルする。被写体の骨や体の輪郭などの大まかな構造物は0.056〜0.093cycle/mmの周波数帯域に含まれる画像成分である。そこで、この周波数成分で構成する画像成分を抽出するためには、5×5マスクは1辺が5mm〜20mm、3×3マスクは1辺が3mm〜12mmのものを用いるのが最適であり、例えば、5×5マスクは1辺が9mmであれば、3×3マスクは1辺が5.4mmのものを用いる。また、マスクの大きさは、5×5と3×3に限られるものではなく画像の解像度に応じて適切な大きさのマスクを採用するようにしてもよい。
【0078】
(4) 信頼度の高い確信直線と交差する角度を用いて評価する手法
照射野外領域から照射野内領域の分かれ目となる線上は、画素値が急激に変化する場所でもある。そこで、照射野辺の候補となる直線の中から直線を境にして濃淡の変化が急激なものが照射野辺である可能性が高い。そこで、直線上にある各画素を中心にして3×3画素近傍の領域において以下の計算を行う。
【0079】
図15に示すように、3×3画素の領域内の中心に存在する画素(点e)を中心として、差分値Bを下式で求める。
【0080】
B=|(a-g)+(b-h)+(c-l)|+|(c-a)+(f-d)+(i-g)| (5)
この差分値Bを直線上にある全ての点について計算し、各点における差分値Bの総和ΣBを直線上にある画素の総数Nで割った指標値ΣB/Nを求めて、ΣB/Nが最も大きい直線を照射野辺である信頼度が最も高い確信直線として複数の直線の中から1つ選択する。
【0081】
図16に示すように、信頼度の高い確信直線を基準にして、この直線の傾きとの違いが±α°の範囲内にある直線(平行な直線)、またはこの直線の傾きとの違いが90°±α°の範囲内にある直線(直交する直線)以外は、照射野辺ではないものと判定してキャンセルする。経験的に、α°は10°程度にすると良好な結果が得られる。
【0082】
(5) エッジらしさを用いて直線を評価する手法
照射野外領域から照射野内領域の分かれ目となる線は、上述のように濃淡が急激であり、さらに画素値の変化する方向が揃った方向を向いたエッジである。上述の指標値ΣB/Nを用いて、照射野辺である信頼度を求め、さらに、各直線のエントロピーを算出して濃淡の変化の方向が揃っているかを評価する。
【0083】
まず、エントロピーを算出するために、図17(a)のように、直線上にある各画素を中心(点O)にして5×5マスクを用いて直線上の各画素における画素値の勾配θを算出する。
【0084】
y=(a+b+c+d+e)−(l+m+n+p+q) (6)
x=(e+g+i+k+q)−(a+f+h+j+i) (7)
y≧0の場合 θ=tan−1(y/x) (8)
y<0の場合 θ=−tan−1(y/x) (9)
となる。
【0085】
この得られた勾配θを、図17b)に示す勾配方向1〜8のうちの最も近い方向のいずれかに振り分ける。
【0086】
直線上の各点における勾配θが、勾配方向1〜8のうちいずれに振り分けられたかを見てエントロピーの計算をする。直線上の点の総数Totalと、直線上の同じ勾配方向iを持つ点の数Ziから、同じ勾配方向iが生じる生起確率P(i)を求める。
【0087】
P(i)=Zi/Total (10)
これより、エントロピーHは、
H=−ΣP(i)ln(P(i)) (11)
となる。図18に示すように、エントロピーHを縦軸とし差分値Bを横軸としたグラフを用い、グラフ上で直線Lより上にある線は照射野辺の可能性は少ないものとしてキャンセルし、直線lより下にある線は照射野辺の可能性が高いものとして残すようにする。
【0088】
上述の各手法で評価値の算出を行う際、各区画内の画像Psecの端に並ぶ画素値はIPから読み取った画素の値ではなく記録媒体に残っていた値である可能性があるため、端から数画素分は評価値の算出に用いないようにして計算するものが好ましい。
【0089】
判定手段50は、照射野認識手段40により認識された各区画の照射野領域Pinと分割手段40で分割した各区画の境(分割候補線)とを比較して分割が適切であるか否かを判定する。そこで、以下の条件と一致するときには、分割した各区画が適切ではなかったものと判定する。ここでは、縦方向に2分割する場合について説明する。
【0090】
(1)1つの照射野領域が複数の区画にまたがっている場合
(i) 図19に示すように、分割された区画の少なくともどちらか一方で、分割候補線nと照射野輪郭PSが交差しているか判定する。
(ii) 交差している場合には、認識された照射野領域の縦方向の座標値の最大値と最小値の差b(=最大値−最小値)と、認識された照射野領域Pinを分割候補線nが重なる部分の縦方向の座標値の最大値と最小値の差a(=最大値−最小値)とで、a/b>0.5が成り立つ場合には、分割候補線nが斜めになった照射野領域Pinを横切るように設定された可能性が高いため、分割が適切でなかったものと判定する。
【0091】
(2)2つの照射野領域が複数の区画にまたがっている場合(その1)
(i) 図20に示すように、隣り合わせた分割された区画で、分割候補線nと照射野輪郭PSがお互いに交差しているか判定する。
(ii) 交差している場合は、それぞれの区画で認識された2つの照射野領域Pinを構成する照射野辺が、1つの直線上に並ぶ照射野辺の組み合わせl1pair,l2pairが2つ存在する場合には、本来1つの照射野領域Pinであるものを2つに分割した区画で認識を行ったものである可能性が高いため、分割が適切でなかったと判定する。
【0092】
(3)2つの照射野領域が複数の区画にまたがっている場合(その2)
(i) 図21に示すように、隣り合わせた分割された区画で、分割候補線nと照射野輪郭PSがお互いに重なっているか判定する。
(ii) 重なっている場合には、それぞれの区画で認識された2つの照射野領域Pinを構成する照射野辺のうち、各照射野領域の照射野辺の1つが1つの直線上に並ぶ照射野辺の組み合わせl3pairが1つ存在する場合には、本来1つの照射野領域であるものを2つに分割した区画で照射野領域の認識を行ったものである可能性が高いため、分割が適切でなかったと判定する。
【0093】
横方向に2分割した場合や縦横両方向に4分割する場合についても、上記(1)〜(3)の方法と同様に判定することができる。
【0094】
次に、照射野認識装置1の動作について、図22フローチャートに従って説明する。
【0095】
まず、入力手段10から放射線撮影画像Pを入力する(S100)。初めに、分割パターン設定手段20で、分割パターンが縦横両方向の4分割を設定し(S101)、分割手段30で放射線撮影画像Pを分割パターンに従って、縦方向の分割候補線と横方向の分割候補線を探索して、放射線撮影画像Pを4つの区画に分割する(S102)。
【0096】
そこで、照射野認識手段40で各区画内の画像Psecから照射野を認識する(S103)。照射野認識手段40は、図23に示すように、まず、基準点設定手段44により、中心点Kを自動的に基準点として設定する(S120)。次に、この中心点Kを用いて、直線検出手段41の候補点検出手段42により、上記照射野輪郭PS上の点と考えられる多数のエッジの候補点Eを検出し、候補線検出手段43でハフ変換を利用して、検出された多数の候補点Eによって構成されるエッジ線Lを照射野辺の候補となる直線(候補線)として求める(S121)。
【0097】
照射野辺の候補となる直線は、照射野辺の数より多く検出されるので、各直線を上述の評価値算出手段45を用いて評価値を算出し(S122)、算出した評価値に基づいて余分な直線をキャンセルする(S123)。
【0098】
検出された全ての直線について評価が終わるまでS122からS123を繰り返し(S124)、照射野辺の候補となる直線の中から前記照射野辺でないと判定された直線を除いた残りの直線に基づいて、各区画内の画像Psecから照射野領域Pinを認識する。
【0099】
この認識処理を繰り返して、4つの全ての区間で照射野領域Pinを認識する(P105)。判定手段50で各区画の照射野領域Pinと分割した各区画の境となる分割候補線nとを比較して分割が適切であるか否かを判定する(S106)。判定手段50から得られた判定結果より、分割が適切であれば4分割で撮影されたものとして処理を終了する。
【0100】
分割が適切でないと判断された場合には(S106)、分割パターン設定手段20で、分割パターンとして縦方向の2分割を設定し(S107)、S102〜S105の処理を再度行う。また、照射野認識手段40の認識処理で照射野が認識されなかった場合にも、分割パターンが正しくなかったものと判定して、S107に進む。
【0101】
そこで、縦方向の2分割のパターンでも上述と同様に分割パターンが適切であるか判定を行う。縦方向の2分割のパターンでも分割パターンが適切でないと判定された場合には、さらに、横方向の2分割のパターンで判定を行う。いずれの分割パターンであっても適切でない場合は、さらに、分割なしで照射野を認識する。
【0102】
さらに、図24に示すように、3分割のパターンについても判定を行うようにしてもよい。この3分割のパターンで判定を行う場合には、縦方向の3分割のパターン、横方向の2分割のパターン、縦横両方向の4分割のパターン、縦2分割のパターン、横2分割のパターン、分割なしのパターンの順に判定を行う。
【0103】
以上、詳細に説明したように、分割パターンに対応して放射線撮影画像を分割して、分割した区画ごとに照射野領域を認識して、認識された照射野領域が適切であったか否かを判定することにより、分割撮影された放射線画像より照射野領域を正確に認識することが可能になる。
【0104】
また、上記各手段をコンピュータ上に機能させるようなプログラムを記録した媒体を用いてコンピュータにインストールすることによって、照射野判定装置として動作させることができる。また、このプログラムはネットワークを介して提供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】照射野判定装置の概略構成図
【図2】照射野絞りを用いて撮影する方法を説明するための図
【図3】分割撮影の一例
【図4】放射線撮影画像全体のヒストグラムの一例(その1)
【図5】分割候補線の求め方を説明するための図
【図6】分割した区画の一例
【図7】照射野認識手段の構成図
【図8】直線の検出方法を説明するための図
【図9】照射野辺の候補となる直線を誤検出した一例
【図10】外部領域と基準点との関係を説明するための図
【図11】放射線撮影画像全体のヒストグラムと照射野外領域のヒストグラムの一例
【図12】四肢を撮影した放射線撮影画像の一例
【図13】放射線撮影画像全体のヒストグラムの一例(その2)
【図14】中周波数帯域の画像成分を抽出するためのマスクの一例
【図15】差分値の算出方法を説明するための図
【図16】確信直線と直交または平行な直線を照射野辺として検出する方法を説明するための図
【図17】画素値の勾配の求め方を説明するための図
【図18】エッジらしさを判定する方法を説明するための図
【図19】分割した区画の適正の判定を説明するための図(その1)
【図20】分割した区画の適正の判定を説明するための図(その2)
【図21】分割した区画の適正の判定を説明するための図(その3)
【図22】照射野認識装置の動作を説明するためのフローチャート
【図23】照射野認識処理の動作を説明するためのフローチャート
【図24】分割パターンの一例
【符号の説明】
【0106】
1 照射野認識装置
10 入力手段
20 分割パターン設定手段
30 分割手段
40 照射野認識手段
41 直線検出手段
42 候補点検出手段
43 候補線検出手段
44 基準点設定手段
45 評価値算出手段
46 照射野辺判定手段
50 判定手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像を入力する入力手段と、
分割撮影された放射線撮影画像の分割パターンを設定する分割パターン設定手段と、
前記入力手段により入力された放射線撮影画像を前記分割パターンに従って複数の区画に分割する分割手段と、
前記分割された各区画内の画像から照射野領域を認識する照射野認識手段と、
該照射野認識手段により認識された各区画の照射野領域と前記分割した各区画の境とを比較して分割が適切であるか否かを判定する判定手段とを備え、
該判定手段において分割が適切であると判定されるまで、前記分割パターン設定手段によりすでに設定された分割パターンとは異なる分割パターンを設定して、前記分割手段で前記放射線撮影画像を前記異なる分割パターンに従って複数の区画に分割した後、前記照射野認識手段で各区画において照射野を認識する処理を繰り返すことを特徴とする照射野認識装置。
【請求項2】
前記照射野認識手段が、
前記区画内の画像より前記照射野領域の照射野辺の候補となる直線を検出する直線検出手段と、
前記区画に基準点を設定する基準点設定手段と、
前記検出された直線により前記区画の画像を2つの領域に分割し、前記2つの領域のうち前記基準点を含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価した評価値を算出する評価値算出手段と、
前記評価値に基づいて、前記外部領域に前記放射線が入射していると判定された場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定する照射野辺判定手段とを有し、
前記照射野辺の候補となる直線の中から前記照射野辺でないと判定された直線を除いた残りの直線に基づいて照射野領域を認識するものであることを特徴とする照射野認識装置。
【請求項3】
照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像を入力する入力ステップと、
分割撮影された放射線撮影画像の分割パターンを設定する分割パターン設定ステップと、
前記入力ステップにより入力された放射線撮影画像を前記分割パターンに従って複数の区画に分割する分割ステップと、
前記分割された各区画内の画像から照射野領域を認識する照射野認識ステップと、
該照射野認識ステップにより認識された照射野領域と前記分割した複数の区画の境とを比較して分割が適切であるか否かを判定する判定ステップとを備え、
該判定ステップにおいて分割が適切であると判定されるまで、前記分割パターン設定ステップによりすでに設定された分割パターンとは異なる分割パターンを設定して、前記分割ステップで前記放射線撮影画像を前記異なる分割パターンに従って複数の区画に分割した後、前記照射野認識ステップで各区画において照射野を認識する処理を繰り返すことを特徴とする照射野認識方法。
【請求項4】
コンピュータを、
照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像を入力する入力手段と、
分割撮影された放射線撮影画像の分割パターンを設定する分割パターン設定手段と、
前記入力手段により入力された放射線撮影画像を前記分割パターンに従って複数の区画に分割する分割手段と、
前記分割された各区画内の画像から照射野領域を認識する照射野認識手段と、
該照射野認識手段により認識された照射野領域と前記分割した複数の区画の境とを比較して分割が適切であるか否かを判定する判定手段として機能させ、
該判定手段において分割が適切であると判定されるまで、前記分割パターン設定手段によりすでに設定された分割パターンとは異なる分割パターンを設定して、前記分割手段で前記放射線撮影画像を前記異なる分割パターンに従って複数の区画に分割した後、前記照射野認識手段で各区画において照射野を認識する処理を繰り返すように機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像を入力する入力手段と、
分割撮影された放射線撮影画像の分割パターンを設定する分割パターン設定手段と、
前記入力手段により入力された放射線撮影画像を前記分割パターンに従って複数の区画に分割する分割手段と、
前記分割された各区画内の画像から照射野領域を認識する照射野認識手段と、
該照射野認識手段により認識された各区画の照射野領域と前記分割した各区画の境とを比較して分割が適切であるか否かを判定する判定手段とを備え、
該判定手段において分割が適切であると判定されるまで、前記分割パターン設定手段によりすでに設定された分割パターンとは異なる分割パターンを設定して、前記分割手段で前記放射線撮影画像を前記異なる分割パターンに従って複数の区画に分割した後、前記照射野認識手段で各区画において照射野を認識する処理を繰り返すことを特徴とする照射野認識装置。
【請求項2】
前記照射野認識手段が、
前記区画内の画像より前記照射野領域の照射野辺の候補となる直線を検出する直線検出手段と、
前記区画に基準点を設定する基準点設定手段と、
前記検出された直線により前記区画の画像を2つの領域に分割し、前記2つの領域のうち前記基準点を含まない外部領域に放射線が入射しているか否かを評価した評価値を算出する評価値算出手段と、
前記評価値に基づいて、前記外部領域に前記放射線が入射していると判定された場合には、前記直線は照射野辺ではないものと判定する照射野辺判定手段とを有し、
前記照射野辺の候補となる直線の中から前記照射野辺でないと判定された直線を除いた残りの直線に基づいて照射野領域を認識するものであることを特徴とする照射野認識装置。
【請求項3】
照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像を入力する入力ステップと、
分割撮影された放射線撮影画像の分割パターンを設定する分割パターン設定ステップと、
前記入力ステップにより入力された放射線撮影画像を前記分割パターンに従って複数の区画に分割する分割ステップと、
前記分割された各区画内の画像から照射野領域を認識する照射野認識ステップと、
該照射野認識ステップにより認識された照射野領域と前記分割した複数の区画の境とを比較して分割が適切であるか否かを判定する判定ステップとを備え、
該判定ステップにおいて分割が適切であると判定されるまで、前記分割パターン設定ステップによりすでに設定された分割パターンとは異なる分割パターンを設定して、前記分割ステップで前記放射線撮影画像を前記異なる分割パターンに従って複数の区画に分割した後、前記照射野認識ステップで各区画において照射野を認識する処理を繰り返すことを特徴とする照射野認識方法。
【請求項4】
コンピュータを、
照射野絞りを用いて被写体を撮影して得られた放射線撮影画像を入力する入力手段と、
分割撮影された放射線撮影画像の分割パターンを設定する分割パターン設定手段と、
前記入力手段により入力された放射線撮影画像を前記分割パターンに従って複数の区画に分割する分割手段と、
前記分割された各区画内の画像から照射野領域を認識する照射野認識手段と、
該照射野認識手段により認識された照射野領域と前記分割した複数の区画の境とを比較して分割が適切であるか否かを判定する判定手段として機能させ、
該判定手段において分割が適切であると判定されるまで、前記分割パターン設定手段によりすでに設定された分割パターンとは異なる分割パターンを設定して、前記分割手段で前記放射線撮影画像を前記異なる分割パターンに従って複数の区画に分割した後、前記照射野認識手段で各区画において照射野を認識する処理を繰り返すように機能させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2006−288467(P2006−288467A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109783(P2005−109783)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
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