説明

照明器具および水槽

【課題】省エネルギーであり、光源が発する熱の影響を照射対象物体に与えにくく、かつ簡易な構造で省スペース化が可能な照明器具、および、該照明器具を備える水槽を提供する。
【解決手段】照明器具1は、照射対象物体に該照射対象物体を透過する光を照射する照明器具であり、有機ELパネル2と、有機ELパネル2が装着される照明器具本体3とを備える。有機ELパネル2は、有機ELパネル2の照射面が開放された状態で、照明器具本体3に装着される。照明器具本体3は、有機ELパネル2が装着された状態において、照射対象物体から所定の距離に離隔して、有機ELパネル2を照射対象物体に保持する保持部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンスパネルを用いる照明器具、および該照明器具を備える水槽に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明器具として、有機エレクトロルミネッセンス(electroluminescent)(以下、有機EL)パネルを光源として搭載した照明器具が提案されている。有機ELパネルを構成する有機EL素子は、有機薄膜を正孔注入電極および電子注入電極で挟んだ構造をしている。電極に注入された正孔と電子とが、有機薄膜内の発光層で再結合し励起状態が生じる。再結合のエネルギーによって励起された有機分子が基底状態に戻るとき、発光が得られる。
【0003】
例えば、特許文献1には、有機ELパネルから照射される光の配光を制御するとともに、有機ELパネルからの熱を効率よく放熱することが可能な照明装置について記載されている。具体的には、構造部材の上面に有機ELパネルを搭載して構成される有機EL照明装置において、構造部材上面に放熱性を有する部材が設けられ、構造部材と放熱性を有する部材とが放熱接続されている有機EL照明装置について記載されている。
【0004】
一方、水槽用の照明器具としては、蛍光ランプ、メタルハライドランプ(Metal Halide Lamp)、LED(Light Emitting Diode)または有機ELパネル等、様々な光源を用いたものが実用化されている。例えば、特許文献2には、水槽の周壁の外側に設置し、電球を光源として用いた水槽の照明装置について記載されている。特許文献3には、光源に高輝度発光ダイオードを用いた照明装置を、水槽本体の上部等に取り付けた観賞魚用水槽について記載されている。具体的には、水槽本体の上部開口の長手方向に沿って取り付けられている、赤色、青色および緑色の光を発光する高輝度発光ダイオードを有する管状の照明装置について記載されている。
【0005】
さらに、特許文献4には、発熱を伴って発光する光源を備えた水槽について記載されている。具体的には、水槽と、発熱を伴って発光し水槽を照明する光源と、光源で発生した熱を水槽内に伝達する伝熱手段とを有する光源を備えた水槽について記載されており、光源としてはLEDまたは有機ELが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−164022号公報
【特許文献2】実開平06−068441号公報
【特許文献3】特開2003−061508号公報
【特許文献4】特開2009−064661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前述した特許文献3に記載の観賞魚用水槽においては、水槽本体の上部開口の長手方向に沿って照明装置が取り付けられているため、水槽内の手入れを行う際に邪魔になってしまう。一方、特許文献2に記載されている照明装置は、水槽の側方に吊り下げて設置するため、このような問題は発生しない。
【0008】
このような照明器具(照明装置)、すなわち照射対象物体(例えば水槽のガラス等の透光性のある部材)に該照射対象物体を透過する光を照射して使用される照明器具については、スペースをあまりとらない方が望ましい。しかし、特許文献2に記載されている照明装置は、電球を光源として用いているため、水槽の側方に大幅にスペースをとってしまう。
【0009】
一方、水槽用の光源として用いられるメタルハライドランプは、蛍光ランプと比較して非常に明るく、かつ蛍光ランプよりも小型である。しかし、光源が発する熱が大きく、照射対象物体である透光性のある部材に影響を与える可能性がある。その結果、水槽用の照明器具として用いた場合には、水温に影響を与える可能性があり、水温管理が難しいという問題がある。そのため、光源との空間を大幅に設ける必要があり、省スペース化が難しい。
【0010】
有機ELパネルは、これらの光源と比べて非常に薄く省スペース化が可能であり、かつエネルギーの光への変換効率がよく省エネルギーである。しかし、前述したメタルハライドランプと同様に、有機ELパネルが発する熱の影響も考慮して照明器具を設計しなければならない。
【0011】
特許文献4に記載の水槽は、光源で発生した熱を水槽内に伝達し水温を調節するものであり、伝熱手段にヒートパイプまたはヒートスプレッダを用いているため、放熱構造および省スペース化を目的としたものではない。特許文献1に記載の照明器具は、有機ELパネルからの熱を効率よく放熱することが可能であるが、構造部材上面に放熱性を有する部材を設け構造部材と放熱性を有する部材とを放熱接続する必要があるため、照明器具の構造が複雑となり、また、スペースをとってしまう可能性もある。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、省エネルギーであり、光源が発する熱の影響を照射対象物体に与えにくく、かつ簡易な構造で省スペース化が可能な照明器具、および、該照明器具を備える水槽の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の観点に係る照明器具は、
照射対象物体に該照射対象物体を透過する光を照射する照明器具であって、
少なくとも、有機ELパネルと、前記有機ELパネルが装着される照明器具本体とを備え、
前記有機ELパネルは、該有機ELパネルの照射面が開放された状態で、前記照明器具本体に装着され、
前記照明器具本体は、前記有機ELパネルが装着された状態において、前記照射対象物体から所定の距離に離隔して、前記有機ELパネルを前記照射対象物体に保持する保持部を備える、
ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の観点に係る水槽は、本発明の第1の観点に係る照明器具を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の照明器具および該照明器具を備える水槽によれば、省エネルギーであり、光源が発する熱の影響を照射対象物体に与えにくく、かつ簡易な構造で省スペース化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係る照明器具の構成例を示す分解斜視図である。
【図2】実施の形態1に係る照明器具の構成例を示す正面図である。
【図3】図2のA−A’線で切断した断面図である。
【図4】実施の形態1に係る照明器具の使用状況を示す断面図である。
【図5】実施の形態1の変形例に係る照明器具の構成例を示す斜視図である。
【図6】実施の形態2に係る照明器具の構成例を示す分解斜視図である。
【図7】実施の形態2に係る照明器具の使用状況において、水槽側面から照射する場合を示す断面図である。
【図8】実施の形態2に係る照明器具の使用状況において、水槽側面から上方に移動させた場合を示す断面図である。
【図9】実施の形態2に係る照明器具の使用状況において、水槽上面から照射する場合を示す断面図である。
【図10】実施の形態2の変形例に係る照明器具の構成例を示す分解斜視図である。
【図11】実施の形態3に係る照明器具の構成例を示す分解斜視図である。
【図12】実施の形態3の変形例に係る照明器具の構成例を示す分解斜視図である。
【図13】実施の形態3の変形例に係る照明器具の使用状況を示す断面図である。
【図14】実施の形態4に係る照明器具の構成例を示す正面図である。
【図15】本発明に係る照明器具の点灯回路の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付す。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る照明器具の構成例を示す分解斜視図である。照明器具1は、有機ELパネル2と、有機ELパネル2を装着する照明器具本体3とから構成される。なお、有機ELパネル2を点灯させるための点灯手段については省略する。照明器具1は、照射対象物体に該照射対象物体を透過する光を照射する照明器具であり、その照射対象物体となる部材に保持されて使用される照明器具である。すなわち、透光性の物質から構成されている部材を照射対象物体とし、例えば、ガラス等から構成される水槽に保持され、使用される。以下、水槽9(図4参照)に保持される場合を想定して説明する。
【0019】
本実施の形態1に係る照明器具本体3は、図1に示すように、略コの字状の枠部4と、掛止部材5とが一体に構成されている。掛止部材5には、凹状の引掛部6が形成されている。略コの字状の枠部4の内壁、すなわち有機ELパネル2が収容される側壁側には、内壁に沿って同じく略コの字状に、有機ELパネル2が嵌合する凹状の溝7が形成されている。略コの字状の枠部4の両端部には、凹状の引掛部6が形成された掛止部材5の一部が、枠部4の同一表面上から突出するように形成されている。照明器具本体3を構成する部材、すなわち枠部4および掛止部材5の材質は、有機ELパネル2を装着し保持できる当該技術分野において公知の材質であればよく、例えばプラスチック、木材または金属等から構成されている。
【0020】
有機ELパネル2は、図1に示すように、略コの字状の枠部4の開放された一側面から、溝7に沿って挿入され、装着される。有機ELパネル2の大きさは、照明器具本体3に収容、装着できるよう適宜調整されており、矩形状である。有機ELパネル2は、例えば、ガラス等の透明基板上に、陽極を構成する透明電極、有機材料を含む発光層および陰極を構成する金属電極が順次積層されて形成されている。なお、有機ELパネル2の電極部分の構造および有機ELパネル2の点灯手段等は図示していないが、外部からの電源によって有機ELパネル2を発光できればどのような構造でも構わない。
【0021】
例えば、電極構造を有機ELパネル2の周縁に設け、点灯回路を照明器具本体3の中に内蔵し、有機ELパネル2を照明器具本体3に装着すると、電極構造と点灯回路とが電気的に接続するように構成してもよい。または、後述するような、照明器具本体3とは別に点灯回路を有する点灯装置8(図4参照)が設置されて配線される形態でも構わない。その他、有機ELパネル2の点灯手段については、当該技術分野において公知である点灯手段のいずれでも構わない。
【0022】
透明電極および金属電極に電圧を印加することで発光層が発光し、透明電極および基板を通じて光が外部に取り出される。なお、図1に示す例では、図の手前方向(照明器具本体3の掛止部材5が突出している方向)が透明電極側であり、有機ELパネル2を照明器具本体3に装着し電気的接続を行った場合、図1の手前方向に向かって光が照射される。
【0023】
図2は、実施の形態1に係る照明器具の構成例を示す正面図である。すなわち、照明器具本体3に有機ELパネル2を装着した構成例を示す正面図である。なお、照明器具本体3の掛止部材5が突出している方向が、図の手前方向として描かれている。図3は、図2のA−A’線で切断した断面図である。図2および図3に示すように、有機ELパネル2を照明器具本体3に装着すると、有機ELパネル2が枠部4に形成された溝7に嵌合するため、安定して保持できる。
【0024】
図4は、実施の形態1に係る照明器具の使用状況を示す断面図である。図4に示す使用状況においては、点灯回路を有する点灯装置8が設置され、有機ELパネル2と配線され電気的に接続されている。図4に示すように、有機ELパネル2が装着された照明器具本体3は、二つの掛止部材5に形成された凹状の引掛部6が、照射対象物体である水槽9の側面の上端に引っ掛けられることにより、水槽9に保持される。この際、水槽9の上部は開放状態のままとなっている。照明器具1に電源を供給すると、図4に示す矢印の方向に光が照射される。
【0025】
光が照射されると、それに伴い有機ELパネル2から熱も発せられる。しかし、本実施の形態1に係る照明器具1では、照明器具本体3の掛止部材5の構造により、水槽9の側面と所定の距離に離隔して、有機ELパネル2を水槽9の側面に保持するようになっており、有機ELパネル2と水槽9の壁面とが接触しないようになっている。そのため、有機ELパネル2が発する熱の影響を、水槽9のガラスおよび水槽9内の水に与えにくい。なお、所定の距離とは、有機ELパネル2が発する熱の影響を照射対象物体(例えば水槽9のガラス等)に与えにくく、かつ、有機ELパネル2が発する光が照射対象物体を透過し得る程度の離れた距離をいう。
【0026】
また、有機ELパネル2は略コの字状の枠部4に挿入され照明器具本体3に装着されるため、有機ELパネル2の照射面および上端は開放された状態において使用される。したがって、有機ELパネル2が発する熱による暖かい空気が留まることが少なく、放熱効率がよい。
【0027】
その結果、本実施の形態1に係る照明器具1によれば、光源である有機ELパネル2から発する熱の影響を照射対象物体であるガラス等からなる水槽9に与えにくく、水槽9内の水温に与える影響も小さく、水温管理を行いやすい。また、有機ELパネル2を光源として使用しているため、省エネルギーである。さらに、照明器具本体3の構造も簡易な構造で省スペース化が可能であり、かつ、水槽9の上部を開放状態にできるため、水槽9内の手入れを行う際にも邪魔にならない。
【0028】
図5は、実施の形態1の変形例に係る照明器具の構成例を示す斜視図である。実施の形態1では照明器具本体3の枠部4が略コの字状の場合について述べたが、図5に示すように、二つのL字状の枠部4から構成される構造でも構わない。この場合、枠部4の溝7も同じくL字状である。図5に示す変形例に係る照明器具1によれば、有機ELパネル2は、下端も一部開放された状態において照明器具本体3の枠部4に装着され、使用される。そのため、有機ELパネル2の放熱効率がさらによくなる。また、二つのL字状の枠部4の距離を適宜調整できるため、有機ELパネル2および水槽9の側面の大きさに合わせ、調整して使用することができる。
【0029】
以上、図1に示す実施の形態1では枠部4の溝7が略コの字状の場合、図5に示す実施の形態1の変形例では枠部4の溝7がL字状の場合について述べたが、有機ELパネル2の左右の端部のみ溝7と嵌合するよう、枠部4の有機ELパネル2の下端と接する部分には溝7が形成されていなくとも構わない。
【0030】
(実施の形態2)
本実施の形態2においては、照明器具本体3の枠部4と掛止部材5とが一体に構成されておらず、枠部4が掛止部材5に対して回動可能に保持される点において前述した実施の形態1と異なる。以下、主に実施の形態1と異なる点について特に詳細に説明する。
【0031】
図6は、実施の形態2に係る照明器具の構成例を示す分解斜視図である。照明器具1は、有機ELパネル2と、照明器具本体3とから構成されている。図6に示す通り、照明器具本体3は、略コの字状の枠部4と、凹状の引掛部6が形成されている掛止部材5と、軸部10aおよびつまみ部10bから構成されている第1の軸部材10とから構成されており、いずれも二つずつ備えている。枠部4および掛止部材5の材質については、実施の形態1と同様である。
【0032】
枠部4の内壁、すなわち有機ELパネル2が収容される側壁側には、略コの字状に凹状の溝7が形成されている。さらに、枠部4の外壁の長手方向の面には、スライド孔11が形成されている。掛止部材5には、第1の軸穴12が形成されている。図6に示すように、有機ELパネル2は、両側の側方から、枠部4、掛止部材5、第1の軸部材10の順に挟まれるような状態において、照明器具本体3に装着される。
【0033】
この際、第1の軸部材10の軸部10aが、第1の軸穴12およびスライド孔11を貫通して装着されているため、枠部4は掛止部材5に対して、図6に示すX軸を中心軸として、回動可能に保持される。さらに、スライド孔11が枠部4の外壁面の長手方向の面に設けられているため、有機ELパネル2が装着された枠部4を回動させ、かつスライド孔11に沿って移動させることができる。
【0034】
図6には詳細に示していないが、軸部10aは、第1の軸穴12およびスライド孔11を貫通し、枠部4に保持されている。例えば、枠部4の側壁には溝7が形成されているが、内部は空洞になっており、ナット等の締結部材により保持されている。
【0035】
図7は、実施の形態2に係る照明器具の使用状況において、水槽側面から照射する場合を示す断面図である。実施の形態1と同様、点灯装置8と有機ELパネル2とが配線により電気的に接続されており、引掛部6を水槽9の側面の上端に引っ掛けることにより、水槽9に保持される。照明器具1に電源を供給すると、図7に示す矢印の方向に光が照射される。
【0036】
図8は、実施の形態2に係る照明器具の使用状況において、水槽側面から上方に移動させた場合を示す断面図である。前述したように、有機ELパネル2が装着された枠部4は、スライド孔11に沿って移動させることができるため、図8に示すように有機ELパネル2が装着された枠部4を上方に移動させることができる。
【0037】
図9は、実施の形態2に係る照明器具の使用状況において、水槽上面から照射する場合を示す断面図である。図8に示す状態から回動させると、図9に示すように、枠部4が水槽9の上端で係止し、有機ELパネル2の光が水槽9上面から矢印の方向に照射される。
【0038】
本実施の形態2に係る照明器具1によれば、実施の形態1と同様に、光源である有機ELパネル2から発する熱の影響を照射対象物体であるガラス等からなる水槽9に与えにくく、水槽9内の水温に与える影響も小さいため、水温管理を行いやすい。また、有機ELパネル2を光源として使用しているため、省エネルギーである。さらに、照明器具本体3の構造も簡易な構造で省スペース化が可能である。
【0039】
さらに、本実施の形態2に係る照明器具1によれば、二つの略コの字状の枠部4の距離を適宜調整できるため、有機ELパネル2および水槽9の側面の大きさに合わせて使用することができる。また、枠部4は掛止部材5に対して回動可能に保持されるため、水槽9側面だけでなく水槽9上面からも照明を照射することができ、多様な雰囲気の演出によって水槽9内部を鑑賞することができる。
【0040】
図10は、実施の形態2の変形例に係る照明器具の構成例を示す分解斜視図である。図6に示す実施の形態2と比較すると、接続部材13を備える点、スライド孔11が形成されていない点、および、回動軸を二つ備える点において異なる。
【0041】
第1の軸部材10は、二つの第1の軸穴12を貫通し、掛止部材5と接続部材13とを機械的に接続している。第2の軸部材14は、二つの第2の軸穴15を貫通し、枠部4と接続部材13とを機械的に接続している。図10には詳細に示していないが、それぞれの軸部材は、例えばナット等の締結部材により保持されている。このように各部材が軸部材を介して機械的に接続されることにより、接続部材13は枠部4と掛止部材5との間を機械的に接続している。
【0042】
本変形例においては、図6に示すX軸と同様の軸を中心軸として、接続部材13が掛止部材5に対して回動可能に保持されるだけでなく、図10に示すY軸も中心軸として枠部4が接続部材13に対して回動可能に保持される。Y軸は、有機ELパネル2および枠部4の略中心を横切って通る中心軸である。このように、本変形例に係る照明器具1によれば回動軸が二つあるため、前述した実施の形態2のようにスライド孔11を設けることなく、照明器具1の有機ELパネル2の光の照射面について適宜調節することができる。
【0043】
実施の形態2またはその変形例のように、本発明に係る照明器具1において、枠部4と掛止部材5等との回動軸を設けた場合には、照明器具1の照射面について適宜調節できるよう構成することが好ましい。すなわち、側面からの照射だけでなく上面からの照射ができるよう、有機ELパネル2の向きを入れ替えることができるよう構成することが好ましい。このような構成は、有機ELパネル2の向きを入れ替え可能であれば、どのような手段・構造を用いても構わない。図6のようなスライド孔11、または、図10のような二つの回動軸を設ける方法以外には、例えば、有機ELパネル2を簡単に取り外しおよび装着可能な構成となるように照明器具1を設計してもよい。
【0044】
また、第1の軸部材10または第2の軸部材14においては、掛止部材5または枠部4と一体に形成されていても構わない。この場合、例えば、第1の軸部材10の軸部10aの部分が、引掛部6が形成されている部材から突出した構造において回動軸として機能する構成が挙げられる。
【0045】
本実施の形態2においては、枠部4を回動させると枠部4が水槽9の上端で係止され、有機ELパネル2の光が水槽9上面から照射される場合について述べたが、結果的に照明器具本体3が水槽9の上端で係止されれば、どのような構成を取っても構わない。例えば、枠部4の端部に長さを調節可能な引掛部6と同様の形状を有する部材を設けておけば、使用する水槽9の大きさに合わせ適宜調節することもできる。
【0046】
(実施の形態3)
本実施の形態3に係る照明器具1においては、有機ELパネル2が、水槽9の側面ではなく底面のガラス等を挟んで下側から水槽9内部に向かって照射される点において、実施の形態1と大幅に異なる。そのため、照明器具本体3の構造についても大きく異なる。以下、主に実施の形態1と異なる点について詳細に説明する。
【0047】
図11は、実施の形態3に係る照明器具の構成例を示す分解斜視図である。照明器具1は有機ELパネル2と照明器具本体3とから構成されており、有機ELパネル2については実施の形態1と同様である。図11に示すように、照明器具本体3は、矩形状で一方の主面から他方の主面に向かって貫通した矩形状の穴を有し開口しているパネル保持部材16と、パネル保持部材16の各4つの頂点付近の外側に構成されている4つの保持部材17とを備える。
【0048】
これらの材質については、有機ELパネル2および水槽9を保持できる当該技術分野において公知の材質であればよく、例えば、プラスチック、木材または金属等から形成されている。図11に示すように、有機ELパネル2を照明器具本体3に装着する際には上方から置くように挿入される。図示していないが、照明器具1を使用する際には、有機ELパネル2を装着した照明器具本体3を、水槽9の底面の下に置いて使用する。
【0049】
照明器具1の有機ELパネル2から光が照射されると、それに伴い熱も発せられる。しかし、本実施の形態3に係る照明器具1では、照明器具本体3の4つの保持部材17が、有機ELパネル2を水槽9の底面と所定の距離に離隔して、保持する。さらに、有機ELパネル2の照射面および側面も開放された状態において使用される。
【0050】
その結果、光源である有機ELパネル2から発する熱の影響を照射対象物体であるガラス等からなる水槽9に与えにくく、水槽9内の水温に与える影響も小さいため、水温管理を行いやすい。また、有機ELパネル2を光源として使用しているため、省エネルギーである。さらに、照明器具本体3の構造も簡易な構造であるため、省スペース化が可能である。
【0051】
図12は、実施の形態3の変形例に係る照明器具の構成例を示す分解斜視図である。本実施の形態3の変形例では、水槽9の底面のガラス等を挟んで下側からも照射でき、かつ、側面のガラス等を挟んで側方からも照射できる点において実施の形態3と異なる。有機ELパネル2は、図12に示すように、枠部4の側方から挿入され、枠部4の内壁に形成された溝7に嵌合することにより照明器具本体3に装着される。
【0052】
図13は、実施の形態3の変形例に係る照明器具の使用状況を示す断面図である。図13は、側面のガラス等を挟んで側方から照射する様子を示す。実施の形態1と同様、点灯装置8と有機ELパネル2とが、配線により電気的に接続されている。有機ELパネル2を挿入した照明器具本体3を、水槽9の側面に立て掛けることにより、水槽9に保持される。照明器具1に電源を供給すると、図13の矢印の方向に光が照射される。図示していないが、有機ELパネル2を挿入した照明器具本体3を、水槽9の底面の下に置き、使用することもできる。
【0053】
本変形例のいずれの使用方法においても、照明器具本体3の4つの保持部材17が、有機ELパネル2を水槽9の底面または側面と所定の距離に離隔して保持するため、前述した実施の形態3と同様の効果が得られる。さらに、本変形例における照明器具1では、底面のガラス等を挟んで下側から、または、側面のガラス等を挟んで側方から照射できるため、多様な雰囲気の演出によって水槽9内部を鑑賞することができる。
【0054】
(実施の形態4)
本実施の形態4に係る照明器具1においては、複数の有機ELパネル2を用いて照明器具1が構成されている点において前述した実施の形態1ないし3と異なる。なお、本実施の形態4に係る、照明器具1に複数の有機ELパネル2を用いる方法を、前述した実施の形態1ないし3、またはその変形例において述べたいずれの照明器具1に適用しても構わない。
【0055】
図14は、実施の形態4に係る照明器具の構成例を示す正面図である。図14に示すように、照明器具1は、6枚の有機ELパネル2から構成されており、有機ELパネル2に合わせ、照明器具本体3も6個を繋げたような構成をとっている。
【0056】
なお、点灯回路が1台ですむように、各有機ELパネル2および照明器具本体3は、電気的に接続されていることが好ましい。有機ELパネル2および照明器具本体3の連結方法については、図14に示すように、照明器具本体3同士が連結している構造としてもよいし、配線によって連結させた構造を持つものでも構わない。また、有機ELパネル2および照明器具本体3の数も任意であり、例えば、水槽9の大きさに適した大きさに組み立てることができるようにしても構わない。
【0057】
本実施の形態4に係る照明器具1も、前述した実施の形態1ないし3と同様に、有機ELパネル2が水槽9の側面(または底面)と所定の距離に離隔して保持され、さらに、有機ELパネル2の照射面(および上端の面)が開放された状態において使用される。その結果、光源である有機ELパネル2から発する熱の影響を照射対象物体であるガラス等からなる水槽9に与えにくく、水槽9内の水温に与える影響も小さいため、水温管理を行いやすい。また、有機ELパネル2を光源として使用しているため、省スペースかつ省エネルギーである。さらに、照明器具本体3の構造も簡易な構造である。
【0058】
また、有機ELパネル2は、大面積になると製造工程上輝度むらが大きくなるので、大面積の有機ELパネル2の作成は難しい。そのため、本実施の形態4に係る照明器具1のように、有機ELパネル2を複数並べることによって、所定の輝度を確保することができる。
【0059】
以上、前述した実施の形態1ないし4またはその変形例のいずれかでは、ガラス等から構成される水槽9を照射対象物体として用いる場合について述べた。しかし、本発明に係る照明器具1は、照射対象物体に該照射対象物体を透過する光を照射する照明器具であるため、照射対象物体が透光性のある部材から構成されるものならどのようなものでもよい。例えば、透光性セラミック、または、透光性アルミナ等から構成されている照射対象物体でも構わない。
【0060】
照射対象物体は、水槽9以外にも、例えば、ライトテーブル、ショーケースまたはライトパネル等においても同様の方法で本発明に係る照明器具1を適用することができる。また、これらの透光性の照射対象物体と照明器具1とが、一体化していても構わない。例えば、水槽9と本発明に係る照明器具1とが一体化していても構わない。
【0061】
図15は、本発明に係る照明器具の点灯回路の一例である。有機ELパネル2を点灯させるための回路は、例えば、図15に示すような定電流回路になっており、順方向電圧のばらつきの影響を受けにくくすることが好ましい。さらに、このような点灯回路において、PWM(Pulse Width Modulation)または電流調整によって調光ができるようにし、多様な雰囲気の演出を可能にしても構わない。
【0062】
以上、実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されることはなく、本発明の範囲内で種々の実施形態が可能である。
【0063】
その他、本発明の好適な変形として、以下の構成が含まれる。
【0064】
本発明の第1の観点に係る照明器具について、好ましくは、前記照明器具本体の前記保持部は、凹状の引掛部が形成された掛止部材であり、
前記照明器具本体は、少なくとも、前記掛止部材と、内壁に溝が形成された枠部とを備え、
前記有機ELパネルは、前記枠部の前記溝に嵌合することにより、前記照明器具本体に装着され、
前記有機ELパネルが装着された前記照明器具本体は、前記引掛部が前記照射対象物体の上端に引っ掛けられることにより、前記照射対象物体に保持される
ことを特徴とする。
【0065】
さらに好ましくは、前記照明器具本体の前記枠部は、略コの字状であり、
前記有機ELパネルは、略コの字状の前記枠部の開放された一側面から挿入されるよう、前記照明器具本体に装着される
ことを特徴とする。
【0066】
好ましくは、前記照明器具本体は、前記枠部を前記掛止部材に対して回動可能に保持する第1の軸部材および第1の軸保持部を備えることを特徴とする。
【0067】
または、好ましくは、前記照明器具本体は、前記掛止部材と前記枠部との間を機械的に接続する接続部材と、
前記接続部材を前記掛止部材に対して回動可能に保持する第1の軸部材および第1の軸保持部と、
前記枠部を前記接続部材に対して回動可能に保持する第2の軸部材および第2の軸保持部と、
を備えることを特徴とする。
【0068】
さらに好ましくは、前記照射対象物体は、水槽であることを特徴とする。
【符号の説明】
【0069】
1 照明器具
2 有機ELパネル
3 照明器具本体
4 枠部
5 掛止部材
6 引掛部
7 溝
8 点灯装置
9 水槽
10 第1の軸部材
10a 軸部
10b つまみ部
11 スライド孔
12 第1の軸穴
13 接続部材
14 第2の軸部材
15 第2の軸穴
16 パネル保持部材
17 保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射対象物体に該照射対象物体を透過する光を照射する照明器具であって、
少なくとも、有機ELパネルと、前記有機ELパネルが装着される照明器具本体とを備え、
前記有機ELパネルは、該有機ELパネルの照射面が開放された状態で、前記照明器具本体に装着され、
前記照明器具本体は、前記有機ELパネルが装着された状態において、前記照射対象物体から所定の距離に離隔して、前記有機ELパネルを前記照射対象物体に保持する保持部を備える、
ことを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記照明器具本体の前記保持部は、凹状の引掛部が形成された掛止部材であり、
前記照明器具本体は、少なくとも、前記掛止部材と、内壁に溝が形成された枠部とを備え、
前記有機ELパネルは、前記枠部の前記溝に嵌合することにより、前記照明器具本体に装着され、
前記有機ELパネルが装着された前記照明器具本体は、前記引掛部が前記照射対象物体の上端に引っ掛けられることにより、前記照射対象物体に保持される、
ことを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記照明器具本体の前記枠部は、略コの字状であり、
前記有機ELパネルは、略コの字状の前記枠部の開放された一側面から挿入されるよう、前記照明器具本体に装着される、
ことを特徴とする請求項2に記載の照明器具。
【請求項4】
前記照明器具本体は、前記枠部を前記掛止部材に対して回動可能に保持する第1の軸部材および第1の軸保持部を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の照明器具。
【請求項5】
前記照明器具本体は、前記掛止部材と前記枠部との間を機械的に接続する接続部材と、
前記接続部材を前記掛止部材に対して回動可能に保持する第1の軸部材および第1の軸保持部と、
前記枠部を前記接続部材に対して回動可能に保持する第2の軸部材および第2の軸保持部と、
を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の照明器具。
【請求項6】
前記照射対象物体は、水槽であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の照明器具。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の照明器具を備えることを特徴とする水槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−141992(P2011−141992A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1536(P2010−1536)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【Fターム(参考)】