説明

照明器具用反射部材

【課題】高い難燃性と高い光反射率を有し、機械強度および耐光性に優れた照明器具用反射部材を提供する。
【解決手段】ポリブチレンテレフタレート樹脂(a)100重量部に対して、エチレンビステトラブロモフタルイミド(b)1〜8重量部、三酸化アンチモン(c)1〜5重量部および酸化チタン(d)15〜50重量部を含有する樹脂組成物を成形してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具用反射部材に関する。より詳しくは、高い難燃性および高い光反射率を有し、機械強度および耐光性に優れる樹脂組成物を成形してなる照明器具用反射部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、「PBT」と略すことがある。)は優れた耐熱性、成形性、耐薬品性および電気絶縁性など、エンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有することから、射出成形用を中心として、各種自動車部品、電気部品、機械部品および建設部品などの用途に使用されている。
【0003】
一方、照明器具に用いられる光反射部材としては、ガラス製のものや、樹脂成形品に金属メッキ加工や金属薄膜蒸着、金属塗装を施したものなどが使用されてきた。しかしながら、ガラス製反射部材は重くて割れやすいという課題があり、樹脂成形品に金属メッキ加工や金属薄膜を蒸着した反射部材はメッキ加工や蒸着に要する費用が高く、トータルコストが高いという課題があった。このため、後加工の必要がなく低コストで製造することができ、高い光反射率を有する反射部材が求められていた。そのような背景の中で、PBTに特定の加工酸化チタンを配合した光反射性能に優れた熱可塑性樹脂組成物およびこれを成形してなる光反射板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
照明器具の発熱に対して、昨今の安全性意識の高まりから、照明器具に用いられる部品にもより高い難燃性が求められている。また、照明器具の長寿命化が求められる中で、長時間光に晒されても高い光反射率を保持する耐光性が求められている。難燃剤を含む照明部品用熱可塑性樹脂ポリエステル樹脂組成物として、PBTに無機充填材、臭素系難燃剤、アンチモン系難燃剤および酸化防止剤を配合した樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1〜2に記載された熱可塑性樹脂組成物を成形した照明器具用反射部材は、上述した高い難燃性を満足するものではなかった。また、難燃性を改良するために、かかる熱可塑性樹脂組成物に公知の難燃剤を多量に添加すると、光反射率や耐光性が低下する。このため、従来公知の樹脂組成物から得られる成形品は、照明器具反射部材に必要な高い難燃性と光反射率、機械強度および耐光性を満足することができないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−51775号公報
【特許文献2】特開2000−198910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高い難燃性と高い光反射率を有し、機械強度および耐光性に優れた照明器具用反射部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、PBTに対して、酸化チタンおよび特定の難燃剤を含有せしめることにより、上記の目的が達成できることを見出し本発明に到達した。
【0009】
即ち、本発明は、
(1)ポリブチレンテレフタレート樹脂(a)100重量部に対して、エチレンビステトラブロモフタルイミド(b)1〜8重量部、三酸化アンチモン(c)1〜5重量部および酸化チタン(d)15〜50重量部を含有する樹脂組成物を成形してなる照明器具用反射部材、
(2)前記酸化チタン(d)の平均粒子径が0.10〜0.24μmである(1)に記載の照明器具用反射部材、
(3)前記三酸化アンチモン(c)の平均粒子径が0.1〜1.0μmである(1)または(2)に記載の照明器具用反射部材、
(4)前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(a)の0.5質量%オルトクロロフェノール溶液で測定した25℃における相対粘度が1.2〜1.8である(1)〜(3)のいずれかに記載の照明器具用反射部材、
(5)前記樹脂組成物が、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(a)100重量部に対し、さらに酸化防止剤(f)0.05〜3重量部を含有する(1)〜(4)のいずれかに記載の照明器具用反射部材、
(6)前記樹脂組成物が、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(a)100重量部に対し、さらに紫外線吸収剤(g)0.05〜5重量部を含有する(1)〜(5)のいずれかに記載の照明器具用反射部材、
(7)前記樹脂組成物が、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(a)100重量部に対し、さらにガラス繊維(h)1〜100重量部を含有する(1)〜(6)のいずれかに記載の照明器具用反射部材、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の照明器具用反射部材は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(a)に、エチレンビステトラブロモフタルイミド(b)、三酸化アンチモン(c)および酸化チタン(d)を含有する樹脂組成物から成形したので、高い難燃性と高い光反射率を有すると共に、機械強度および耐光性が優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】照明器具の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
【0013】
本発明におけるポリブチレンテレフタレート樹脂(a)とは、テレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体と1,4−ブタンジオールあるいはそのエステル形成性誘導体との重縮合反応によって得られる重合体である。テレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体とともに、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、シュウ酸などを共重合してもよいし、1,4−ブタンジオールあるいはそのエステル形成性誘導体とともに、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、分子量400〜6000のポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを共重合してもよい。これら共重合成分は20モル%以下とすることが好ましい。PBTの好ましい例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレン(テレフタレート/ナフタレート)などが挙げられる。なお、「/」は共重合を意味する。これらPBTは1種だけを含有してもよいし、或いは2種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0014】
また、PBTの0.5質量%オルトクロロフェノール溶液で測定した25℃における相対粘度は、樹脂組成物から得られる成形品の機械強度をより向上させるために、1.2以上が好ましく、1.4以上がより好ましい。一方、樹脂組成物の加工性を向上させるためには、1.8以下が好ましく、1.7以下がより好ましい。
【0015】
本発明に用いられるエチレンビステトラブロモフタルイミド(b)は、一般に使用される他の有機臭素系化合物に比べて化合物中の臭素含有量が非常に高く、少ない含有量で高い難燃性効果を得ることができる。このため、難燃性と機械特性を高いレベルで両立することができる。また、他の有機臭素系化合物に比べて光反射率を向上させることができ、また、長時間光に晒されても光反射率の低下が生じにくいことから、光反射率および耐光性に優れた成形品を得ることができ、照明器具用反射部材に極めて好適である。
【0016】
本発明に用いられる樹脂組成物において、エチレンビステトラブロモフタルイミド(b)の含有量は、PBT100重量部に対して、1〜8重量部である。エチレンビステトラブロモフタルイミドの含有量が1重量部より少ないと、樹脂組成物から得られる成形品の難燃性が不十分となる。好ましくは2重量部以上、より好ましくは4重量部以上である。一方、エチレンビステトラブロモフタルイミドの含有量が8重量部より多いと、樹脂組成物から得られる成形品の光反射率、耐光性および機械強度が低下する。
【0017】
本発明に用いられる三酸化アンチモン(c)は、エチレンビステトラブロモフタルイミド(b)と併用することによって、相乗的に難燃性を向上させることができるものである。
【0018】
本発明に用いられる三酸化アンチモン(c)の平均粒子径は0.1〜1.0μmが好ましい。三酸化アンチモンの平均粒子径が0.1μm以上であれば、粒子同士の凝集が起こりにくく樹脂組成物中における分散性に優れるため、難燃性をより向上させることができる。好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.3μm以上である。一方、三酸化アンチモンの平均粒子径が1.0μm以下であれば、樹脂組成物中における分散性に優れるため、難燃性をより向上させることができる。好ましくは0.5μm以下である。
【0019】
なお、本発明において、三酸化アンチモンの平均粒子径は、以下の式により算出する。
平均粒子径(μm)=6/(比重(g/cm3)×比表面積(cm2/g))×10000
比表面積は、島津製作所製、粉体比表面積測定装置SS−100型を用いて、三酸化アンチモン粉末1g当たりの比表面積値を求めることができる。なお、三酸化アンチモンの比重は5.2とする。
【0020】
本発明に用いられる樹脂組成物において、三酸化アンチモン(c)の含有量は、PBT(a)100重量部に対して、1〜5重量部である。三酸化アンチモンの含有量が1重量部より少ないと、樹脂組成物から得られる成形品の難燃性が低下する。好ましくは2重量部以上、より好ましくは2.5重量部以上である。一方、三酸化アンチモンの含有量が5重量部より多いと、樹脂組成物から得られる成形品の光反射率、耐光性および機械物性が低下する。好ましくは4重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。
【0021】
本発明に用いられる樹脂組成物は、酸化チタン(d)を含有することにより、樹脂組成物から得られる成形品の光反射率や耐光性を向上させることができる。本発明においては公知の酸化チタンを使用することが可能であり、表面処理などが施されている酸化チタンも使用できる。また、酸化チタンの結晶形態には、ルチル型とアナターゼ型とがあるが、ルチル型酸化チタンは優れた隠蔽作用を有し、より光反射率を向上させる作用を有するため、好ましい。また、ルチル型酸化チタンの製造方法には、硫酸法と塩素法とがあるが、塩素法で製造されたものが好ましく使用される。塩素法で製造した酸化チタンは、硫酸法で製造した酸化チタンに比べて、純度が高いため白色度が優れ、光反射率をより向上させることができる。
【0022】
酸化チタンの表面処理剤としては、樹脂との分散性を良好にするためにアルミナ水和物、ケイ酸水和物などを含む処理剤が好ましく使用される。この処理剤の量は、高い光反射率を確保できる必要最低限に抑えることが好ましく、表面処理された酸化チタン中の酸化チタン含有量は96〜99重量%が好ましく、97〜98重量%がより好ましい。
【0023】
本発明に用いられる酸化チタン(d)の平均粒子径は、0.10〜0.24μmが好ましく、0.15〜0.22μmがより好ましい。酸化チタンの平均粒子径が0.10μm以上であれば、粒子同士の凝集が起こりにくく樹脂組成物中における分散性に優れるため、光反射率をより向上させることができる。また、0.24μm以下であれば、光反射率がより向上する。
【0024】
本発明に用いられる樹脂組成物において、酸化チタン(d)の含有量は、PBT(a)100重量部に対して、15〜50重量部である。酸化チタンの含有量が15重量部より少ないと、光反射率や耐光性が低下する。好ましくは20重量部以上である。一方、酸化チタンの含有量が50重量部より多いと、成形時の流動性や成形品の機械強度が低下する。好ましくは40重量部以下である。
【0025】
本発明に用いられる樹脂組成物は、さらに帯電防止剤(e)を含有してもよく、帯電防止性を与えることができる。帯電防止剤(e)としては、界面活性剤として知られているものが好ましく使用され、例えば、ラウリン酸金属塩、ステアリン酸金属塩、N−ラウリルメチルアミノ酢酸ポリエーテルエステルアミド、グリセリンモノステアレート、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、無水マレイン酸モノグリセライド、無水マレイン酸ジグリセライド、アルカンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。中でもアルカンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0026】
本発明に用いられる樹脂組成物において、帯電防止剤(e)の含有量は、PBT(a)100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましい。
【0027】
本発明に用いられる樹脂組成物は、さらに酸化防止剤(f)を含有してもよい。酸化防止剤(f)としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス(メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート等のフェノール系化合物、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート等のイオウ系化合物、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系化合物等が挙げられる。
【0028】
本発明において、酸化防止剤(f)の含有量は、PBT(a)100重量部に対して、0.05〜3重量部が好ましい。
【0029】
本発明に用いられる樹脂組成物は、さらに紫外線吸収剤(g)を含有してもよい。紫外線吸収剤(g)としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物などが挙げられる。
【0030】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタンなどが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニルベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[ 4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]などが挙げられる。また、トリアジン系化合物としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなどが挙げられる。
【0031】
本発明に用いられる樹脂組成物において、紫外線吸収剤(g)の含有量は、PBT(a)100重量部に対して0.05〜5重量部が好ましく、樹脂組成物から得られる成形品の耐光変色性をより向上させることができる。好ましくは0.05〜1重量部、更に好ましくは0.05〜0.5重量部である。
【0032】
また、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル) アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、ポリメチルプロピル3−オキシ−[4−(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル]シロキサンなどに代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も含むことができ、かかる光安定剤は上記紫外線吸収剤や各種酸化防止剤との併用において、耐候性などの点においてより良好な性能を発揮する。
【0033】
本発明に用いられる樹脂組成物はガラス繊維(h)を含有してもよく、樹脂組成物から得られる成形品の機械強度をより向上させることができる。ガラス繊維としては、公知のガラス繊維を使用することができ、樹脂との親和性、接着性を高めるために適当な表面処理剤による処理が施されたガラス繊維を含有してもよい。
【0034】
上記表面処理剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、チタネート系カップリング剤などが挙げられる。機械的特性を向上させる観点から、特にシランカップリング剤(例えばアミノシラン、エポキシシラン)が好適に用いられる。
【0035】
本発明に用いられる樹脂組成物において、ガラス繊維(h)の含有量は、PBT(a)100重量部に対して1〜100重量部が好ましく、樹脂組成物から得られる成形品の剛性および機械強度をより向上させることができる。好ましくは10〜80重量部、更に好ましくは20〜70重量部である。
【0036】
本発明に用いられる樹脂組成物は、PBTの結晶核剤(例えば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸バリウム、モンタン酸エステルの部分ナトリウム塩あるいはバリウム塩などの有機カルボン酸金属塩、アイオノマー、タルクなど)、結晶化促進剤(例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジベンゾエート、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノート)などのポリアルキレングリコール誘導体や安息香酸エステル、ポリラクトン類、N−置換トルエンスルホアミドなど)などを含有することができる。
【0037】
本発明に用いられる樹脂組成物は、更に必要に応じて他の各種添加剤(例えば、モンタン酸ワックス、ポリエチレンワックス、シリコンオイルなどの離型剤、熱安定剤、顔料、染料など)、他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂など)、熱硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂など)、他の充填材(例えば、ワラステナイト、炭素繊維、チタン酸カリウム等のウイスカおよび有機繊維等、タルク、カオリン、マイカ、クレー、シリカ、セリサイト、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、ガラスパウダー、扁平ガラス繊維など)などを含有することができる。充填材は、樹脂との親和性、接着性を高めるために適当な表面処理剤が施されたものでもよい。
【0038】
本発明に用いられる樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものでないが、例えば、(1)PBT、エチレンビステトラブロモフタルイミドおよび三酸化アンチモン、酸化チタン、必要に応じてガラス繊維、その他添加剤を配合し、スクリュー式押出し機によって混練する一括ブレンド方法、(2)スクリュー式押出機にまずPBTを供給して溶融し、他の供給口よりエチレンビステトラブロモフタルイミドおよび三酸化アンチモン、酸化チタン、必要に応じてガラス繊維およびその他添加剤を供給して混練する分割ブレンド方法などが挙げられ、特に分割ブレンド方法を好適に用いることができる。得られる樹脂組成物は、成形用樹脂組成物として、0.5mm〜10mmの長さを有するペレットとすることが好ましい。
【0039】
照明器具用反射部材は、前記樹脂組成物を任意の形状に賦形したもので、照明器具光源の出射光を効率よく、かつ照射光が所望とする配光を得られるものであれば、特に限定されるものではない。
【0040】
照明器具用反射部材は、1個の光源に対して各1個ずつ形成してもよく、また複数の光源を有する照明器具では、複数の反射部材をそれぞれ設けてもよく、また1個の反射部材としてもよい。
【0041】
また、反射部材を所定の形状に賦形する成形方法としては、一般的に熱可塑性樹脂の成形で用いられる成形方法であれば何ら限定されるものではなく、例えば射出成形、圧縮成形、真空成形、圧空成形などがある。
【0042】
また、任意の形状に賦形した照明器具用反射部材に、アンダーコート層と、光反射層、光反射層上に形成されるトップコート層を形成し、反射部材とすることも可能である。
【0043】
光反射層を構成する材料はAg又はAg基合金、Al基合金などがあげられるが、特に限定されるものではない。
【0044】
また、アンダーコート層、トップコート層は、スプレー法やディップ法などにより被対象物にコーティングした後、赤外線や熱風、紫外線や電子線などの照射により硬化させて形成することができるものであれば特に限定されるものではない。
【0045】
本照明器具に用いられる光源は特に限定されるものではなく、蛍光灯、水銀灯、高輝度放電灯、冷陰極管、LED等を用いることができる。また、LEDを光源として使用する場合、赤色光、緑色光、青色光を発光するLED素子をまとめて1つの光源としてもよく、各発光色を有するLED素子を個別に配置してもよい。なお、LED素子の発光色は一例であって、かかる発光色に限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明の効果を更に詳細に説明する。本発明の骨子は以下の実施例のみに限定されるものではない。各特性の測定方法は以下の通りである。
【0047】
(1)難燃性
照明器具用反射部材の難燃性を、簡易的に後述する試験片により評価した。各実施例および比較例で得られた樹脂組成物のペレットから、東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度260℃、金型温度80℃の条件で難燃性評価用試験片の射出成形を行った。試験片の厚みは1/16インチ(約1.59mm)とした。得られた試験片について、UL94垂直試験に定められている評価基準に従い、難燃性を評価した。難燃性はV−0>V−1>V−2の順に難燃性が低下しランク付けされる。
【0048】
(2)引張強さ
照明器具用反射部材の引張強さを、簡易的に後述する試験片により評価した。各実施例および比較例で得られた樹脂組成物のペレットからタイプA試験片を5個ずつ作製し、ISO527に従って状態調節後、引張強さを測定した。引張速度は、破断伸度10%以下の場合5mm/分、破断伸度10%をこえる場合50mm/分とし、「引張強さ」としては、破断伸度10%以下の場合破断強さ、破断伸度10%を超える場合は降伏強さを求めた。5個の試験片について上記測定を行い、その平均値を求めた。
【0049】
(3)光反射率
照明器具用反射部材の光反射率を、簡易的に後述する試験片により評価した。各実施例および比較例で得られたポリエステル樹脂組成物のペレットから、東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度260℃、金型温度80℃の条件で反射率評価用試験片の射出成形を行った。試験片の形状は80mm×80mm×2mmtの角板とした。得られた試験片を島津製作所製自記分光光度計UV−3150により、波長λ=555nmの全光線反射率を測定した。
【0050】
(4)耐光性
照明器具用反射部材の耐光性を、簡易的に前記(3)に記載の試験片により評価した。前記(3)に記載の方法で得られた反射率評価用試験片を、120℃に保持した恒温槽内に、400W水銀灯を点灯させた状態で設置した。90日経過後、島津製作所製自記分光光度計UV−3150により、波長λ=555nmの全光線反射率を測定し、前記(3)で求めた全光線反射率との差を求めた。
【0051】
実施例中で使用した成分は次のとおりである。
【0052】
PBT
<a−1>“トレコン(登録商標)”1100S(商品名、東レ(株)製PBT)。0.5質量%のオルトクロロフェノール溶液を25℃で測定したときの相対粘度が1.45。
<a−2>“トレコン(登録商標)”1200S(商品名、東レ(株)製PBT)。0.5質量%のオルトクロロフェノール溶液を25℃で測定したときの相対粘度が1.60。
<a−3>“トレコン(登録商標)”1050S(商品名、東レ(株)製PBT)。0.5質量%のオルトクロロフェノール溶液を25℃で測定したときの相対粘度が1.37。
【0053】
難燃剤
<b−1>BT93W(商品名、アルベマール(株)製エチレンビステトラブロモフタルイミド)。
<b−2>FG8500(商品名、帝人化成(株)製テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー)。
【0054】
三酸化アンチモン
<c−1>PATOX−MF(商品名、日本精鉱(株)製三酸化アンチモン、平均粒子径0.3μm)。
<c−2>PATOX−M(商品名、日本精鉱(株)製三酸化アンチモン、平均粒子径0.5μm)。
<c−3>PATOX−U(商品名、日本精鉱(株)製三酸化アンチモン、平均粒子径0.02μm)。
<c−4>PATOX−SUF(商品名、日本精鉱(株)製三酸化アンチモン、平均粒子径11μm)。
【0055】
なお、上記三酸化アンチモンの平均粒子径は、以下の式により算出した。
平均粒子径(μm)=6/(比重(g/cm3)×比表面積(cm2/g))×10000
比表面積は、島津製作所製、粉体比表面積測定装置SS−100型を用いて、三酸化アンチモン粉末1g当たりの比表面積値を求めた。なお、三酸化アンチモンの比重は5.2g/cm3で計算した。
【0056】
酸化チタン
<d−1>酸化チタン(石原産業(株)製“タイペーク”(登録商標)CR63)
平均粒子径0.21μmであり、塩素法により製造したルチル型酸化チタンに、アルミナ水和物およびケイ酸水和物の2種類のみを処理剤として使用した。ルチル型酸化チタンの含有量は97重量%。
<d−2>酸化チタン(石原産業(株)製“タイペーク”(登録商標)CR60)
平均粒子径0.21μmであり、塩素法により製造したルチル型酸化チタンに、アルミナ水和物のみを処理剤として使用した。ルチル型酸化チタン含有量は95重量%。
<d−3>酸化チタン(石原産業(株)製“タイペーク”(登録商標)CR50−2)
平均粒子径0.25μmであり、塩素法により製造したルチル型酸化チタンに、アルミナ水和物のみを処理剤として使用した。酸化チタン含有量は95重量% 。
【0057】
ガラス繊維
<h−1>CS3J948(商品名、日東紡績(株)製、繊維径10μmのチョップドストランド状ガラス繊維)。
【0058】
実施例1〜31、比較例1〜7
表1〜6に記載する組成に従って、各成分全てを2軸押出機の元込め部から供給し、シリンダ温度250℃に設定したスクリュー径57mmφの2軸押出機で溶融混練を行い、ペレット状の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を用いて、前記(1)〜(4)記載の方法により、難燃性、引張強度、光反射率、耐光性を測定した。
【0059】
また、得られた熱可塑性ポリエステル樹脂組成物から、射出成形方法により照明器具用反射部材を形成した。射出成形機は日精樹脂工業製ES5000−50E、金型はパナソニック電工製HB171反射鏡金型を用いた。成形条件は、金型温度80℃、シリンダ温度260℃、ノズル温度240℃とした。得られた照明器具用反射部材を用いて、以下の方法により、器具効率および耐光試験後の器具効率を測定した。
【0060】
器具効率
図1に示す構成からなる照明器具を使用して、器具効率を評価した。
【0061】
図1において、照明器具1は、光源3(42ワットの電球型蛍光灯)の外周に照明器具用反射部材2を有している。
【0062】
器具効率の評価は、暗室内で、(1)上記光源3のみ、(2)照明器具1をそれぞれ点灯させ全光束値(1m)を測定することにより、下記式から器具効率(%)を求めた。
器具効率(%)={(2)の全光束値÷(1)の全光束値}×100
【0063】
耐光試験後の器具効率
照明器具1を構成する照明器具用反射部材2を、120℃に保持した恒温槽内に静置し、400W水銀灯を点灯させた状態で設置し90日間の耐光試験を行った。その後、上記の方法により器具効率を評価した。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
【表5】

【0069】
【表6】

【0070】
表1〜5の実施例1〜31の評価結果から明らかなように、PBT(a−1〜a−3)100重量部に対して、エチレンビステトラブロモフタルイミド(b−1)1〜8重量部、三酸化アンチモン(c−1〜c−4)1〜5重量部および酸化チタン(d−1〜d−3)15〜50重量部を含有することにより、照明器具用反射部材は、高い難燃性と機械強度、光反射率、耐光性を両立する。
【0071】
比較例1は、難燃剤種が異なることから、難燃性が満足できる結果ではなかった。
【0072】
比較例2は、難燃剤含有量が少ないことから難燃性が満足できなかった。
【0073】
比較例3は、難燃剤含有量が多いことから光反射率、耐光性および機械強度が低下する結果であった。
【0074】
比較例4は、三酸化アンチモンの含有量が少ないことから難燃性が満足できなかった。
【0075】
比較例5は、三酸化アンチモンの含有量が多いことから、耐光性および機械強度が満足できなかった。
【0076】
比較例6は、酸化チタン含有量が少ないことから、光反射率および耐光性が満足できなかった。
【0077】
比較例7は、酸化チタン含有量が多いことから、機械強度が低下する結果であった。
【0078】
比較例8は、難燃剤種が異なり、難燃性を満足するように添加量を多くすると共に、酸化チタン含有量を多くしたが、光反射率および機械特性が低下する結果であった。
【符号の説明】
【0079】
1 照明器具
2 照明器具用反射部材
3 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(a)100重量部に対して、エチレンビステトラブロモフタルイミド(b)1〜8重量部、三酸化アンチモン(c)1〜5重量部および酸化チタン(d)15〜50重量部を含有する樹脂組成物を成形してなる照明器具用反射部材。
【請求項2】
前記酸化チタン(d)の平均粒子径が0.10〜0.24μmである請求項1に記載の照明器具用反射部材。
【請求項3】
前記三酸化アンチモン(c)の平均粒子径が0.1〜1.0μmである請求項1または2に記載の照明器具用反射部材。
【請求項4】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(a)の0.5質量%オルトクロロフェノール溶液で測定した25℃における相対粘度が1.2〜1.8である請求項1〜3のいずれかに記載の照明器具用反射部材。
【請求項5】
前記樹脂組成物が、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(a)100重量部に対し、さらに酸化防止剤(f)0.05〜3重量部を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の照明器具用反射部材。
【請求項6】
前記樹脂組成物が、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(a)100重量部に対し、さらに紫外線吸収剤(g)0.05〜5重量部を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の照明器具用反射部材。
【請求項7】
前記樹脂組成物が、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(a)100重量部に対し、さらにガラス繊維(h)1〜100重量部を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の照明器具用反射部材。

【図1】
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【公開番号】特開2012−41511(P2012−41511A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186663(P2010−186663)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】