説明

照明器具

【課題】ランプの放熱性を向上させるとともに前方に照射される光の減少量を抑えつつ空間の明るさ感を高めた照明器具を提供する。
【解決手段】照明器具Aは、ランプ4の光を下方に配光する反射笠2を備え、反射笠2は、細長い略矩形板状の主片2aを有し、主片2aにおいてランプ4からの光をランプ4側に戻る方向へ反射させる部位を少なくとも含む部位には透孔2fが設けられており、この透孔2fからランプ4で発生する熱が外部に放熱されるとともに、ランプ4の光が上方に照射されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、天井面に取り付けられて室内などを照明する照明器具が種々提供されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図8(a)は反射笠を用いた照明器具を示しており、器具本体101とランプ104の間に配設された反射笠102でランプ104の光を下方に配光することによって下方への照度を確保している(図8(b)参照)。
【0004】
一方、図9(a)は図8(a)に示した照明器具において、反射笠102の長手方向に沿って複数の透孔102fを設けたものであり、ランプ4の光を下方に配光しつつ透孔102fから上方にも照射することによって空間の明るさ感が高められるようになっている(図9(b)参照)。
【特許文献1】特開2003−197023号公報(段落[0002]−段落[0005]、及び、第1、2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の図9に示した照明器具では、ランプ104で発生する熱を外部に放熱するとともにランプ104の光を上方に配光するために透孔102fを設けているが、十分な放熱効果を得るためにはある程度の大きさが必要であった。そのため、透孔102fから上方に照射されるランプ104の光量が増加し、またこの透孔102fから照射される光は透孔102fがない場合には反射笠102で反射されて下方に照射される光であるため、その分下方への光の照射量が減少するという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、ランプの放熱性を向上させるとともに前方に照射される光の減少量を抑えつつ空間の明るさ感を高めた照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ランプの光を前方に配光する反射笠を備え、当該反射笠は、ランプからの光を当該ランプ側に戻る方向へ反射させる部位を少なくとも含む部位に透孔が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、反射笠に透孔を設けることによってランプで発生した熱を透孔から外部に放熱できるので、熱によるランプの光出力の低下を抑えることができ、またランプからの光をランプ側に戻る方向へ反射させる部位を少なくとも含む部位に透孔を設けることによって、透孔がない場合にはランプに戻る光を含む光が上方に照射されることになるので、透孔の大きさが従来例と同程度であれば前方に照射される光の減少量を小さくして前方への照射量を確保できるとともに、後方への光により空間の明るさ感を高めることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の照明器具Aは、図2に示すように固定ボルト13を介して天井に取り付けられ、室内(例えば、工場など)を照明するために用いられる。なお、以下の説明では特に断りがない限り、図2中の矢印a−bの方向を上下方向、矢印c−dの方向を左右方向として説明を行う。
【0010】
本実施形態の照明器具Aは、図2に示すようにランプ4と、ランプ4に点灯電力を供給する安定器11が内蔵された器具本体1と、ランプ4の光を下方に配光する反射笠2とを備えている。
【0011】
器具本体1は、図2に示すように左右方向に延出するとともに下面が開口する細長い略矩形箱状に形成されたケース本体1aを有し、ケース本体1aの左右方向両端部には、ランプ4が接続されるランプソケット8がソケット台7を介して各2個ずつ幅方向に並べて取着されている。また、各ランプソケット8の内側には下方に突出する突台部5がそれぞれ突設されており、各突台部5の底部には固定ねじ6が螺合するねじ孔5aが設けられている。なお、ケース本体1aの底面(上面)には、天井に取り付けられた2本の固定ボルト13が挿通されるねじ挿通孔(図示せず)がそれぞれ貫設され、各ねじ挿通孔に対応する固定ボルト13を挿通させた後、ねじ部にナット(図示せず)を螺合させると器具本体1が天井に取り付けられる。
【0012】
さらに、器具本体1の左右方向略中央には、ケーブル14の各電線が接続される端子台10が収納されており、また端子台10の右側にはランプ4に点灯電力を供給する安定器11が収納されている。なお、端子台10の出力端と安定器11の入力端の間は図示しない電線により電気的に接続され、さらに安定器11の出力端と各ランプソケット8の間も図示しない電線により電気的に接続されている。而して、ケーブル14により供給された商用電源が端子台10を介して安定器11に供給され、さらにランプ4の点灯電力が安定器11から各ランプソケット8に供給されるようになっている。また、器具本体1のケース本体1aにおいて端子台10に対応する部位には電線挿通孔(図示せず)が貫設されており、ケーブル14の各電線が電線挿通孔を通して上側から端子台10に接続できるようになっている。
【0013】
ランプ4は、例えばワット数の高い直管型の蛍光ランプからなり、図2に示すように左右方向に延出する直管状の発光管4aを有し、発光管4aの左右方向両端部には一対のランプピン4cが突設された口金部4bがそれぞれ設けられている。
【0014】
反射笠2は、図2および図3に示すように左右方向に延出する略矩形板状の主片2aを有し、主片2aの幅方向両端部には斜め下方に傾斜する傾斜片2bがそれぞれ折曲形成されている。また、主片2aの左右方向両端部にはランプソケット8を配置するための切欠部2cがそれぞれ設けられ、さらに主片2aにおいて上記ねじ孔5aに対応する部位にはねじ挿通孔2dが貫設されている。なお、各切欠部2cにおいて各ランプソケット8の配置位置の間には、左右方向にそれぞれ突出する位置決め片2eが突設されており、この位置決め片2eまたは切欠部2cの幅方向における内側縁にランプソケット8を当接させることによって、器具本体1に対して反射笠2が幅方向に位置決めされるようになっている。
【0015】
また、主片2aの幅方向(図3(b)中の上下方向)両側には、横長矩形状の透孔2fがランプ4のランプ軸に沿って左右方向に複数貫設されており、各透孔2fは、主片2aにおいてランプ4からの光をランプ4側に戻る方向へ反射させる部位を少なくとも含む部位に設けられている。この透孔2fは、ランプ4で発生する熱を外部に放熱するとともに、ランプ4の光の一部を上方に配光するために設けたものであり、例えば図10に示すように反射笠2に透孔2fを設けていない場合には、ランプ4で発生した熱の一部が反射笠2の内側で滞留するため(図10中の破線n)、ランプ4の周囲温度が上昇し、その結果ランプ4の光出力が低下することになるが、本実施形態のように透孔2fを設けることによって、ランプ4で発生する熱が透孔2fから外部に放熱されるので(図1(a)中の破線a)、ランプ4の周囲温度の上昇が抑えられ、その結果ランプ4の光出力の低下を抑えることができる。また、この透孔2fからはランプ4の光の一部が上方に照射される(図1(b)中の実線b)。
【0016】
ここで、図4(a)はランプ4の光の一部を透孔2fから上方に照射させた状態を示しており、透孔2fがない場合には反射笠2の主片2aで反射されてランプ4に戻る光の一部(図4(a)中の破線c)と、透孔2fがない場合には反射笠2の主片2aで反射されて下方に照射される光の一部を透孔2fから上方に照射させている(図4(a)中の実線d、e)。すなわち、図4(a)に示す照明器具Aでは、透孔2fから上方に照射される光に、透孔2fがない場合には主片2aで反射されてランプ4に戻る光が含まれているため、透孔2fの大きさが従来例と同程度であれば下方(前方)に照射される光の減少量を小さくして下方への照射量を確保でき、さらにランプ4の光を上方に配光することによって空間の明るさ感を高めることができる。
【0017】
次に、図10に示す従来の照明器具A(透孔2fがない照明器具)と、本実施形態の照明器具Aを用いた照度シミュレーションについて説明する。図5は照明器具Aのレイアウトを示しており、横30m×縦10mの床面積を有する室内において48個の照明器具Aを所定間隔を空けて配置している。なお、各照明器具Aの取付高さは床面から3.5mに設定されており、照度の計算面高さは床面から0.7mに設定されている。
【0018】
ここで、図6(a)は従来の照明器具Aの配光曲線を、図6(b)は本実施形態の照明器具Aの配光曲線をそれぞれ示し、さらに図中の一点鎖線jおよび実線lはランプ4のランプ軸に垂直な方向における配光を、破線kおよび破線mはランプ4のランプ軸に平行な方向における配光をそれぞれ示している。ここにおいて両図を比較すると、本実施形態の照明器具Aでは、下方に照射される光の輝度をランプ軸に水平な方向および垂直な方向ともに従来例と略同じ輝度に維持しつつ、上方への配光を実現していることが分かる。
【0019】
さらに、従来の照明器具Aと、本実施形態の照明器具Aの比較結果を表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
本実施形態の照明器具Aでは、ランプ4で発生する熱を透孔2fから外部に放熱させ、ランプ4の周囲温度の上昇を抑えることによって光出力の低下を抑制しており、その結果透孔2fを設けていない従来例に比べて器具効率が2%上昇している。また、従来例に比べて下方効率は低下しているが上述のように器具効率が上昇しているため、従来例と略同じ平均照度を確保することができる。なお、従来例と同程度の下方照度を確保するためには下方効率(下方に照射される光の割合)に対する上方効率(上方に照射される光の割合)の割合(以下、上下比率という。)を5%以上15%以下に設定するのが望ましく、本実施形態では上下比率を14.29%に設定することによって、従来例と略同じ平均照度を確保している。
【0022】
また、図7(a)は従来の照明器具Aのシミュレーションによる点灯状態を、図7(b)は本実施形態の照明器具Aのシミュレーションによる点灯状態をそれぞれ示しており、本実施形態の照明器具Aでは透孔2fから上方に照射された光が天井面を照らしている状態が見受けられる。ここで、図中のFeuとは照明空間を観察したときに当該空間に対して感じられる明るさの総合評価である明るさ感覚指標の単位であり、この明るさ感覚指標は照明認識視空間の概念における色モード境界輝度に基づいて算出され、この値が大きいほど照明空間の明るさ感が高くなり、明るく感じられる(詳細については特開2007−171055号公報参照)。したがって本実施形態の照明器具Aを用いた場合には、明るさ感覚指標の値が従来例のFeu 11.8からFeu 13.4に増加しているから、従来例に比べて空間の明るさ感が高くなっており、同じ空間であっても従来例よりも明るく感じられる。なお、図中のUGRは不快グレアの基準となるグレア指標であり、本実施形態の照明器具Aは、このUGRが従来例と略同じ状態において明るさ感覚指標の値がFeu 11.8からFeu 13.4に増加している。
【0023】
次に、本実施形態の照明器具Aに用いられる反射笠2のバリエーションについて説明する。図4(a)に示す反射笠2では主片2aに透孔2fを設けているが、図4(b)では主片2aと傾斜片2bとの間に形成された傾斜片2gにおいて、ランプ4からの光をランプ4側に戻る方向へ反射させる部位にのみ透孔2fが設けられている。したがって、この反射笠2では、透孔2fがない場合には反射笠2で反射されてランプ4に向かう光(図4(b)中の実線g)のみが透孔2fから上方に照射されるので、下方に照射される光は減少せず、その結果従来例と略同じ平均照度を確保しつつ空間の明るさ感を高めることができる。
【0024】
また、図4(c)に示す反射笠2では、主片2aにおけるランプ4の直上位置において、ランプ4からの光をランプ4側に戻る方向へ反射させる部位にのみ透孔2fが設けられている。したがって、この反射笠2では図4(b)に示す反射笠2と同様に、透孔2fがない場合には反射笠2で反射されてランプ4に向かう光(図4(c)中の実線i)のみが透孔2fから上方に照射されるので、下方に照射される光は減少せず、その結果従来例と略同じ平均照度を確保しつつ空間の明るさ感を高めることができる。
【0025】
なお、透孔2fを設ける位置は本実施形態に限定されるものではなく、ランプ4からの光をランプ4側に戻る方向へ反射させる部位を少なくとも含む位置であればよい。また、透孔2fの形状についても本実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態の照明器具を示し、(a)はランプの放熱状態を説明する説明図、(b)は光の照射状態を説明する説明図である。
【図2】同上の分解斜視図である。
【図3】同上を示し、(a)は側面図、(b)は一部破断せる上面図である。
【図4】(a)〜(c)は同上のバリエーションを示し、光の照射状態を説明する説明図である。
【図5】同上の照度分布シミュレーション結果である。
【図6】(a)は従来例の照明器具の配光曲線図、(b)は本実施形態の照明器具の配光曲線図である。
【図7】(a)は従来例の照明器具の点灯状態を示すシミュレーション結果、(b)は本実施形態の照明器具の点灯状態を示すシミュレーション結果である。
【図8】(a)は従来例の照明器具の分解斜視図を示し、(b)は同上の配光特性を示すシミュレーション結果である。
【図9】(a)は従来例の別の照明器具の分解斜視図を示し、(b)は同上の配光特性を示すシミュレーション結果である。
【図10】従来例のさらに別の照明器具を示し、ランプ熱の滞留状態を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0027】
2 反射笠
2f 透孔
4 ランプ
A 照明器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプの光を前方に配光する反射笠を備え、当該反射笠は、前記ランプからの光を当該ランプ側に戻る方向へ反射させる部位を少なくとも含む部位に透孔が設けられたことを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図7】
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