説明

照明器具

【課題】従来と略同様のランプ寿命を確保しながらランプ出力を増大させることができる照明器具を提供する。
【解決手段】ガラスバルブ6内面に蛍光体層8を形成するとともに、ガラスバルブ6内に放電用ガスを封入し、ガラスバルブ6内に、電子放射性物質であるエミッタ3の被着されている少なくとも1つのコイルからなるフィラメント2を取り付けた蛍光ランプLa1と、蛍光ランプLa1を点灯させるとともに蛍光ランプLa1への供給電力を制御可能な点灯ユニット10とを備え、フィラメント2を構成する少なくとも1つのコイルの線径を65〜100μmとし、フィラメント2に被着されているエミッタの量を5〜11mgとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現状、蛍光ランプを光源とする照明器具は広く普及しており(例えば、特許文献1参照)、一般に蛍光ランプの点灯寿命は、フィラメントに被着された電子放射性物質であるエミッタ量に比例することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−297285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蛍光ランプには予め定められた定格ランプ電力が定められており、定格ランプ電力を超えて使用した場合は、フィラメントの表面温度が上昇し、エミッタの消耗が早くなって、ランプ寿命が短くなる。そのため、通常は定格ランプ電力以下で使用しており、蛍光ランプ1灯あたりの光出力は定格に比べて低く抑えられていた。
【0005】
そこで、寿命を短くすることなく、ランプ出力を増大可能な照明器具の要望があった。
【0006】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来と略同様のランプ寿命を確保しながらランプ出力を増大させることができる照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ガラスバルブ内面に蛍光体層を形成するとともに、このガラスバルブ内に放電用ガスを封入し、ガラスバルブ内に、電子放射性物質であるエミッタの被着されている少なくとも1つのコイルからなるフィラメントを取り付けた蛍光ランプと、蛍光ランプを点灯させるとともに蛍光ランプへの供給電力を制御可能な点灯ユニットとを備え、前記フィラメントを構成する少なくとも1つのコイルの線径は65〜100μmであり、フィラメントに被着されているエミッタの量は5〜11mgであることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、蛍光ランプを搭載した照明器具において、従来と略同様のランプ寿命を確保しながらランプ出力を増大させることができ、例えば、定格(100%)以上の入力電力を蛍光ランプに供給しても、十分なランプ寿命を得ることが可能となる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記点灯ユニットは、蛍光ランプへ電力を供給する点灯装置と、点灯装置への給電時間を蛍光ランプの点灯時間として計時する点灯時間タイマと、蛍光ランプの点灯時間の経過に伴う光束低下を抑制するように少なくとも点灯時間タイマにより計時された点灯時間に応じて蛍光ランプへ供給する電力を点灯装置に指示する照度補正装置とを備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、点灯時間の経過に伴う光束の低下を補正するように構成されているので、蛍光ランプの光出力を点灯開始時からランプ寿命時に亘って略一定に保つことができるのである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2において、前記照度補正装置は、蛍光ランプの点灯時間と当該点灯時間における蛍光ランプの入力電力とに応じて算出される光束維持率に基づいて、蛍光ランプへ供給する電力を前記点灯装置に指示することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、光束維持率の特性は、実際の蛍光ランプの入力電力に沿ったものとなるので、実際の光束減退に略一致し、照度補正装置は、この光束維持率に基づいて蛍光ランプへ供給する電力を指示するので、蛍光ランプから出力される光束は、点灯時間の経過及び点灯時間の経過に伴う入力電力の変化に関わらず略一定に制御され、照度補正の精度が向上する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明では、蛍光ランプを搭載した照明器具において、従来と略同様のランプ寿命を確保しながらランプ出力を増大させることができるという効果があり、例えば、定格(100%)以上の入力電力を蛍光ランプに供給しても、十分なランプ寿命を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は、実施形態1の照明器具を示す断面図であり、(b)は、実施形態1の蛍光ランプの管端部電極部分の構造を示す一部破断斜視図である。
【図2】同上のフィラメントを示す正面図である。
【図3】同上のフィラメントを示す一部断面拡大図である。
【図4】同上のランプ電流と推定コイル温度との関係を示す図である。
【図5】同上の点灯時間とエミッタ残量との関係を示す図である。
【図6】同上の蛍光ランプの部分拡大断面図である。
【図7】従来の照明器具を示す断面図である。
【図8】従来の照度分布を示す平面図である。
【図9】実施形態1の照度分布を示す平面図である。
【図10】(a)は従来の照明器具を示す側面図及びZ1−Z1’断面図であり、(b)は実施形態2の照明器具を示す側面図及びZ2−Z2’断面図である。
【図11】従来の照度分布を示す平面図である。
【図12】実施形態2の照度分布を示す平面図である。
【図13】実施形態2の別の照明器具を示す側面図及びZ3−Z3’断面図である。
【図14】(a)は従来の照明器具を示す側面図及びZ4−Z4’断面図であり、(b)は実施形態2の別の照明器具を示す側面図及びZ5−Z5’断面図である。
【図15】直管型の蛍光ランプの寸法を示す平面図である。
【図16】従来の照明器具から実施形態2の照明器具への交換を示す図である。
【図17】(a)は従来の照明器具を示す側面図及び断面図であり、(b)は実施形態3の照明器具を示す側面図及び断面図である。
【図18】(a)は従来の照明器具を示す側面図及び断面図であり、(b)は実施形態3の別の照明器具を示す側面図及び断面図である。
【図19】(a)は従来の照明ユニットを示す側面図及び断面図であり、(b)は実施形態54の照明ユニットを示す側面図及び断面図である。
【図20】実施形態5の照明器具の構成を示すブロック図である。
【図21】光束維持率の入力電力依存性の実験結果を示す図である。
【図22】蛍光ランプの入力電力と寿命定数との関係を示す図である。
【図23】光束維持率の入力電力依存性のシミュレーション結果を示す図である。
【図24】実施形態5の光束維持率の特性を示す図である。
【図25】同上の光束の時間特性を示す図である。
【図26】同上の蛍光ランプの制御パターンを示す図である。
【図27】実施形態6の照明器具の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(実施形態1)
図1(b)は、本発明による32W〜45Wの定格ランプ電力を有する直管形蛍光ランプLa1の管端部電極部分の構造を示すものである。2はフィラメントで、2本のリード線4、4間にピンチされ、リード線4,4は管端部の口金から突出したピン9,9に各々接続している。3はエミッタである。5はガラスステム、6は内面に保護膜7、蛍光体層8が形成されたガラスバルブであり、ガラスバルブ6の両端に当該電極部分が構成されている。そして、管内には水銀とアルゴンなどの放電用ガスが封入されている。
【0017】
図2はフィラメント2の拡大図であり、図3はフィラメント2の一部断面拡大図であり、フィラメント2は、主線2aの外周を細線2bが緩やかに巻回して構成された所謂トリプルコイルで構成され、さらにフィラメント2にはエミッタ3が被着されている。そして本実施形態の蛍光ランプLa1では、従来と略同様のランプ寿命を確保しながらランプ出力を増大させるために、従来の32W〜45Wの定格ランプ電力を有する直管形蛍光ランプ(例えば、FHF32:高周波点灯専用形、直管形、定格ランプ電力32Wや、FLR40s:ラピッドスタート形、直管形、定格ランプ電力40W等)に比べて、主線2aの線径D1を太くし、さらにエミッタ3の量を増やしている。
【0018】
まず、主線2aの線径D1について説明する。ランプ出力を増大させると、フィラメントの表面温度が上昇し、エミッタの消耗が早くなって、ランプ寿命が短くなる。したがって、ランプに大電力を入力して光出力を増大させるためには、大出力領域においてフィラメントの表面温度を抑える必要がある。ここで、従来のランプ出力を1.4〜2倍にするとランプ電流は約1.5〜3倍になり、この約1.5〜3倍のランプ電流を流すためには、フィラメント温度がフィラメント抵抗に比例する点を考慮すると、主線2aの線径D1を従来の約1.25〜1.7倍にすれば温度上昇を抑えることができる。そこで、従来の32W〜45Wの定格ランプ電力を有する直管形蛍光ランプのフィラメントは、その主線の線径が50μm以上65μm未満であることから、本実施形態の蛍光ランプLa1では、フィラメント2の主線2aの線径D1を約65〜100μmにして、フィラメント抵抗を従来よりも低減させている。
【0019】
図4は、ランプ電流とフィラメントの主線表面の推定コイル温度との関係を示しており、本実施形態の蛍光ランプLa1の温度曲線Yt1と、従来の32W〜45Wの定格ランプ電力を有する直管形蛍光ランプの温度曲線Yt2とを比較すると、本実施形態の蛍光ランプLa1は、主線2a(線径D1=約70μm)の表面温度がフィラメント電流の大きい領域で飽和しているが(温度曲線Yt1参照)、従来の蛍光ランプは、主線(線径=約50μm)の表面温度がフィラメント電流の大きい領域でも上昇を続けている(温度曲線Yt2参照)。そして、フィラメント電流の全領域に亘って本実施形態の蛍光ランプLa1のほうが主線の温度が低くなり、特にフィラメント電流が大きい領域で温度差が大きくなっている(図4において、フィラメント電流0.7Aの場合に、本実施形態の蛍光ランプLa1の推定コイル温度は約1300℃、従来の蛍光ランプの推定コイル温度は約1600℃となり、その温度差は約300℃となる)。すなわち、同一のフィラメント電流であれば、本実施形態の蛍光ランプLa1は従来よりもフィラメント温度が低く、エミッタの消耗が抑えられて長寿命となり、また、同一寿命であれば、本実施形態の蛍光ランプLa1は従来よりもランプ出力を増大させることができ、特にフィラメント電流が0.6A以上の領域でこれらの効果が顕著となる。また、フィラメント2はトリプルコイルに限定されず、例えばダブルコイル等の他の構成であってもよいが、この場合もコイルの線径は約65〜100μmに形成される。
【0020】
また、フィラメントの細線の線径D2は、32W〜45Wの定格ランプ電力を有する従来の直管形蛍光ランプで20〜25μm程度であり、本実施形態の蛍光ランプLa1では、細線2bの線径D2を従来と同様の20〜25μm、あるいは20〜25μmより大きくすればよい。
【0021】
次に、エミッタ3の量について説明する。エミッタ量は蛍光ランプの寿命を決定し、エミッタの消耗率はフィラメント2の表面温度に依存しており、具体的にはフィラメント2表面のケルビン温度(=摂氏温度+273.15[K])に比例してエミッタ3の蒸発量が増大する。図5は、ランプの点灯時間とエミッタの残量との関係を示しており、本実施形態の蛍光ランプLa1の大出力時(出力63W時)のエミッタ残量曲線Yr1と、従来の32W〜45Wの定格ランプ電力を有する直管形蛍光ランプの定格出力時のエミッタ残量曲線Yr2、従来の32W〜45Wの定格ランプ電力を有する直管形蛍光ランプの大出力時(出力63W時)のエミッタ残量曲線Yr3とを示す。
【0022】
従来の32W〜45Wの定格ランプ電力を有する直管形蛍光ランプの場合、エミッタ量は5mg未満であり、定格出力では点灯時間が15000時間程度でエミッタが完全になくなり(エミッタ残量曲線Yr2参照)、さらに大出力(63W出力)ではエミッタの消耗が激しく、点灯時間が9000時間程度でエミッタが完全になくなった(エミッタ残量曲線Yr3参照)。
【0023】
一方、本実施形態の蛍光ランプLa1は、上記のように主線2aの線径D1を約65〜100μmにして、従来の同定格の蛍光ランプよりフィラメント抵抗を低減させたフィラメント2を用いることで、フィラメント温度を従来よりも下げることができ、エミッタ量を約5mgにした場合に、大出力(63W出力)では、エミッタが完全になくなるまで上記従来のランプより長い11000時間程度かかる。そして、従来の32W〜45Wの定格ランプ電力を有する直管形蛍光ランプと同一寿命(例えば、18000時間程度)にするために、エミッタ量を約9mgにすると、エミッタが完全になくなるまで20000時間程度かかった(エミッタ残量曲線Yr1参照)。したがって、エミッタ量を約5〜11mgとすれば、実用上従来と略同様のランプ寿命を確保しながら、ランプ出力を定格を超えて増大させることができると考えられる。なお、本実施形態ではフィラメント2にトリプルコイルを採用しており、細線2bにエミッタ3が被着することで、エミッタ3の増量が容易に実現できる。
【0024】
すなわち、本実施形態の32W〜45Wの定格ランプ電力を有する直管形蛍光ランプLa1は、上記のように、フィラメント2の主線2aの線径D1を約65〜100μmにすることで、従来の32W〜45Wの定格ランプ電力を有する直管形蛍光ランプに比べて、エミッタ3の消耗を抑制し、さらにエミッタ3の量を約5〜11mgに増加させているので、従来と略同様のランプ寿命を確保しながらランプ出力を増大させることができるのである。例えば、定格(32W〜45W)以上の入力電力(63W)を蛍光ランプLa1に供給しても、十分なランプ寿命を得ることが可能となる。
【0025】
ここで、フィラメント2の主線2aの線径D1を従来と同じ50μm以上65μm未満として、エミッタ3の量だけを従来に比べて多くした場合、図4の温度曲線Yt2に示すように、線形D1に依存しているフィラメント2の温度上昇がフィラメント電流0.6A以上の領域で著しいため、定格(32W〜45W)以上の入力電力(63W)を蛍光ランプに供給したときにエミッタ3の蒸発量が多く、従来と略同様のランプ寿命を確保することが難しい。
【0026】
また、エミッタ3の量を従来と同じ5mg未満として、フィラメント2の主線2aの線径D1だけを従来に比べて太くした場合、定格(32W〜45W)以上の入力電力(63W)を蛍光ランプに供給したときに、エミッタ3の総量が少ないため、従来と略同様のランプ寿命を確保することが難しい。
【0027】
而して、本実施形態の蛍光ランプLa1は、32W〜45Wの定格ランプ電力に対して、フィラメント2の主線2aの線径D1を約65〜100μmにして、従来の同定格の蛍光ランプよりフィラメント抵抗を低減させたフィラメント2を用いることで、フィラメント温度を従来よりも下げるとともに、エミッタ3の量を約5〜11mgと増大させることで、従来と略同様のランプ寿命を確保しながらランプ出力を増大させている。すなわち、ランプ寿命の確保と大出力とを両立しているのである。
【0028】
上記フィラメント2の主線2aの線径D1、エミッタ3の量は、蛍光ランプLa1の最大電力やランプ寿命に基づいて決められるものであり、例えば、光束維持率70%以上が確保可能なランプ寿命を、Hf蛍光ランプの一般的な寿命に相当する12000時間とした場合またはG−Hf蛍光ランプの一般的な寿命に相当する18000時間とした場合、あるいは最大電力を63Wとした場合または最大電力を63Wより大きくした場合等の各条件に応じて、線径D1:約65〜100μm、エミッタ3の量:約5〜11mgの範囲から決定される。
【0029】
また、本実施形態の蛍光ランプLa1は、図6に示すように、ガラスバルブ6と蛍光体層8との間に保護膜7を形成している。保護膜7は、例えば酸化アルミニウム(Al)等の金属酸化物からなり、ガラスバルブ6内に封入されている水銀とガラスバルブ6とが反応するのを抑制し高い光束維持率を有することができる。保護膜7は、その膜厚を1〜3μmにすることで光束維持率を改善することができる。また、この保護膜7として酸化アルミニウム以外に二酸化珪素(SiO)、酸化イットリウム(Y)、酸化チタン(TiO)、酸化セリウム(CeO)等の金属酸化物を用いることが好ましい。また、保護膜7として例えば酸化チタン(TiO)、または酸化セリウム(CeO)で形成することにより、水銀から放射される紫外線がガラスバルブ6から漏れないように、当該紫外線を遮断する機能を持たせることもできる。
【0030】
次に、従来の蛍光ランプLa101を用いた照明と、本実施形態の上記蛍光ランプLa1を用いた照明とを比較する。まず図7は、従来の照明器具100Aの外観を示しており、長尺状の筐体101aと、筐体101aの下面に設けた凹型の反射板101bと、反射板101bの凹部内に並設された1灯の従来の蛍光ランプLa101(例えば、FHF32:高周波点灯専用形、直管形、定格ランプ電力32W)とを備え、筐体101a内には蛍光ランプLa101を点灯制御する点灯ユニット110を収納し、蛍光ランプLa101はソケット101cを介して点灯ユニット110に接続している。反射板101bは、底面を筐体101aの下面に当接させた状態で、蛍光ランプLa101の後方に設けた取り付け孔(図示なし)に取付ねじ101dを挿入して、筐体101aに固定される。そして、筐体101aの短手方向の両側面に沿って鍔部101eが設けられており、鍔部101eの端部を天井面に穿設した設置孔の下面側の開口端に係止させている。
【0031】
一方、図1(a)は本実施形態の蛍光ランプLa1として、入力電力63Wで光束6300lmを出力する4フィート長さの直管形蛍光ランプを用い、当該蛍光ランプLa1を搭載した照明器具1Aの外観を示しており、長尺状の筐体21aと、筐体22aの下面に設けた凹型の反射板21bと、反射板21bの凹部内に配置された1灯の蛍光ランプLa1とを備え、筐体21a内には蛍光ランプLa1を点灯制御する点灯ユニット10を収納し、蛍光ランプLa1はソケット21cを介して点灯ユニット10に接続している。そして、反射板21Bの短手方向の両側面の端部を天井面に穿設した設置孔の下面側の開口端に係止させている。
【0032】
そして、図8は、従来の照明器具100Aを用いて部屋R内を照明した照度分布を示し、図9は、本実施形態の照明器具1Aを用いて部屋R内を照明した照度分布を示す。なお、部屋Rは、長さ19.2m、幅12.8mで、蛍光ランプは高さ2.7mの位置に取り付けられる。また、天井の反射率は50%、壁の反射率は30%、床の反射率は10%とする。
【0033】
まず、部屋Rの長さ方向に11列、部屋Rの幅方向に7行の計77個の従来の照明器具100Aを設置し、1灯の蛍光ランプLa101が出力する光束を4950lmとした場合の水平面照度分布(計算面高さ0.7m)は図8に示され、その平均照度は773lx、最小照度は282lx、最大照度は914lx、照度均斉度(最小照度/平均照度)は0.365、照度均斉度(最小照度/最大照度)は0.308となる。
【0034】
また、部屋Rの長さ方向に10列、部屋Rの幅方向に6行の計60個の本実施形態の照明器具1Aを設置し、1灯の蛍光ランプLa1が出力する光束を6300lmとした場合の水平面照度分布(計算面高さ0.7m)は図9に示され、その平均照度は752lx、最小照度は272lx、最大照度は887lx、照度均斉度(最小照度/平均照度)は0.362、照度均斉度(最小照度/最大照度)は0.307となる。
【0035】
上記照度分布より、77灯の従来の蛍光ランプLa101を設置して、1灯あたり4950lmの光束を出力した場合と、60灯の本実施形態の蛍光ランプLa1を設置して、1灯あたり6300lmの光束を出力させた場合とでは、部屋R内の照度分布はほぼ同じであり、照明システムを新設する場合は、従来の蛍光ランプLa101を用いた構成ではなく、本実施形態の蛍光ランプLa1を用いて1灯あたりの光出力を増加させる構成とすることで、部屋全体の照度分布やランプ寿命を従来に比べて悪化させることなく、蛍光ランプの灯数を削減することができ、低コスト化が可能となる。
【0036】
なお、本実施形態では、直管形の蛍光ランプLa1として、ランプ長4フィート、入力電力63Wで光束6300lmを出力するランプを例示しているが、他のランプ長(2フィート、8フィート等)、入力電力、光束に設定された直管形の蛍光ランプであってもよい。
【0037】
また、本発明で用いる蛍光ランプは、高周波点灯専用型、スタータ型、ラピッドスタート型のいずれであっても、32W〜45Wの定格ランプ電力に対して、フィラメント2の主線2aの線径D1を約65〜100μmにし、エミッタ3の量を約5〜11mgと増大させることで、ランプ寿命の確保と大出力とを両立させることが可能である。
【0038】
(実施形態2)
図10(a)は従来の照明器具100Bの外観を示しており、長尺状の筐体102aと、筐体102aの下面に設けた凹型の反射板102bと、反射板102bの凹部内に並設された2灯の従来の蛍光ランプLa102,La102(例えば、FLR40s:ラピッドスタート形、直管形、定格ランプ電力40W)とを備え、筐体102a内には蛍光ランプLa102を点灯制御する点灯ユニット110を収納し、蛍光ランプLa102はソケット102cを介して点灯ユニット110に接続している。反射板102bは、底面を筐体102aの下面に当接させた状態で、蛍光ランプLa102の後方に設けた取り付け孔(図示なし)に取付ねじ102dを挿入して、筐体102aに固定される。そして、筐体102aの短手方向の両側面に沿って鍔部102eが設けられており、鍔部102eの端部を天井面に穿設した設置孔の下面側の開口端に係止させている。
【0039】
一方、図10(b)は実施形態1と同様に入力電力63Wで光束6300lmを出力する直管形の蛍光ランプLa1を搭載した照明器具1Bの外観を示しており、長尺状の筐体22aと、筐体22aの下面に設けた椀形の反射板22bと、反射板22bの椀部内に配置された1灯の蛍光ランプLa1とを備え、筐体22a内には蛍光ランプLa1を点灯制御する点灯ユニット10を収納し、蛍光ランプLa1はソケット22cを介して点灯ユニット10に接続している。
【0040】
椀形の反射板22bは、底部を平面状に形成した固定部22fを設けており、この平面状の固定部22fを筐体22aの下面に当接させた状態で、蛍光ランプLa1の後方に設けた取り付け孔(図示なし)に取付ねじ22dを挿入して、筐体22aに固定される。固定部22fを平面状に形成したことで、反射板22bを筐体22aに取り付ける際の施工性がよくなっている。また、下方から見たときに取付ねじ22dが蛍光ランプLa1に遮られて見難くなるように、蛍光ランプLa1は反射板22bの固定部22fに近づけて配置されており、意匠性を高めている。さらに、反射板22bの椀部の曲率や、反射板22bと蛍光ランプLa1との距離は、器具効率やグレアカット性を考慮して設定される。そして、筐体22aの短手方向の両側面に沿って鍔部22eが設けられており、鍔部22eの端部を天井面に穿設した設置孔の下面側の開口端に係止させている。
【0041】
上記照明器具1Bは、蛍光ランプLa1を1灯のみ備えるので、蛍光ランプLa102を2灯備えた従来の照明器具100Bに比べて、蛍光ランプの灯数を半減することができ、低コスト化が可能となる。また、蛍光ランプLa1は実施形態1と同様に構成されており、点灯ユニット10がランプ出力を増大させた場合でも従来と略同様のランプ寿命を確保でき、例えば、定格(100%)以上の入力電力を蛍光ランプLa1に供給しても、十分なランプ寿命を得ることが可能となる。
【0042】
そして、従来の蛍光ランプLa102を2灯設けた上記照明器具100Bを、部屋Rの長さ方向に9列、部屋Rの幅方向に6行の計54個(108灯の蛍光ランプLa102)設置し、1灯の蛍光ランプLa102が出力する光束を3000lmとした場合の水平面照度分布(計算面高さ0.7m)は図11に示され、その平均照度は754lx、最小照度は185lx、最大照度は998lx、照度均斉度(最小照度/平均照度)は0.245、照度均斉度(最小照度/最大照度)は0.185となる。
【0043】
また、本実施形態の蛍光ランプLa1を1灯設けた上記照明器具1Bを、部屋Rの長さ方向に9列、部屋Rの幅方向に6行の計54個(54灯の蛍光ランプLa1)設置し、1灯の蛍光ランプLa1が出力する光束を6300lmとした場合の水平面照度分布(計算面高さ0.7m)は図12に示され、その平均照度は783lx、最小照度は187lx、最大照度は1034lx、照度均斉度(最小照度/平均照度)は0.238、照度均斉度(最小照度/最大照度)は0.180となる。
【0044】
上記照度分布より、108灯の従来の蛍光ランプLa102を設置して、1灯あたり3000lmの光束を出力した場合と、54灯の本実施形態の蛍光ランプLa1を設置して、1灯あたり6300lmの光束を出力させた場合とでは、部屋R内の照度分布はほぼ同じであり、既設の照明器具100Bを蛍光ランプLa1を搭載した照明器具1Bに交換して、1灯あたりの光出力を増加させる構成とすることで、部屋全体の照度分布やランプ寿命を従来に比べて悪化させることなく、蛍光ランプの灯数を削減することができ、コスト低減を図ることができる。
【0045】
また、図13に示すように、反射板22bの椀部の曲率や、反射板22bと蛍光ランプLa1との距離を上記照明器具1Bと異なる設定にして、器具の幅を照明器具1Bの略半分とした照明器具1Cを用いても、上記照明器具1Bと同様の効果を得ることができ、さらには設置スペースの縮小化を図ることができる。
【0046】
さらに、図14(a)に示すように反射板を兼ねた筐体102hを備えて、従来の蛍光ランプLa102を2灯搭載可能な照明器具100Dを、図14(b)に示すような反射板を省略した筐体22hを備えて、実施形態1の蛍光ランプLa1を1灯搭載可能な照明器具1Dに交換しても、部屋全体の照度分布やランプ寿命を従来に比べて悪化させることなく、蛍光ランプの灯数を削減することができ、コスト低減及び設置スペースの縮小化を図ることができる。
【0047】
次に、直管型の蛍光ランプLa1の寸法について説明する。従来、直管型の蛍光ランプの各寸法はJIS C7617−2に規定され、口金の各寸法はJIS C7709−1に規定されている。例えば、従来の蛍光ランプLa102としてFLR40sを用いた場合、図15に示すように、口金面間距離X1[標準値1198.0mm、最大値1199.4mm]、口金面から反対側のピン先端までの距離X2[最小値1204.1mm、最大値1206.5mm]、ランプ全長X3[最大値1213.6mm]、管径[32.5±1.5mm]、口金のピン長さX4[最小値6.60mm、完成ランプでの最大値7.62mm]に規定されている。そして、この蛍光ランプLa102を装着する従来の照明器具100Bのソケット102c間の距離は、蛍光ランプLa102の管端部に設けたピン9がソケット102c,102cに挿入可能な長さに設定されている。
【0048】
一方、本発明の直管型の蛍光ランプLa1は、従来の蛍光ランプLa102(FLR40s)に比べてランプ全長を短くできる。この短くする寸法X5は、従来の蛍光ランプLa102のピン長さX4を2倍した値より大きくしており、例えばX4≒8mmであれば、X5≒20mmに設定する。而して、蛍光ランプLa1のランプ全長X6は、蛍光ランプLa102を装着する従来の照明器具100Bのソケット102c間の距離よりも短くなり、蛍光ランプLa1の一端のピン9を照明器具100Bの一方のソケット102cに挿入した状態では、蛍光ランプLa1の他端のピン9を照明器具100Bの他方のソケット102cに挿入することはできず、本発明の蛍光ランプLa1を従来の照明器具100Bに誤装着することを確実に防止できる。
【0049】
また、従来の蛍光ランプLa102の口金面間距離X1は、本発明の蛍光ランプLa1を装着する照明器具1Bのソケット22c間の距離よりも長くなるので、従来の蛍光ランプLa102を本発明の照明器具1Bに装着することも不可能となり、従来の蛍光ランプLa102を、本発明の蛍光ランプLa1と同様の大出力で点灯させることを防止して、安全性を確保できる。
【0050】
なお、ランプ全長を短くすると光束は低下するが、本発明の蛍光ランプLa1は、フィラメント2の主線2aの線径D1を約65〜100μmに増大させて、フィラメント温度の上昇およびエミッタ3の消耗を従来に比べて抑制し、さらにエミッタ3の量を約5〜11mgに増加させることによって、従来に比べて大出力が可能となっており、ランプ全長を短くしたことによる光束低下を補償した上で、ランプ寿命の確保と大出力とを両立させている。
【0051】
さらに、蛍光ランプLa1は、従来の蛍光ランプLa102に比べてランプ全長が短いので、本実施形態の照明器具1Bの全長も従来の照明器具100Bより短くできる(図16参照)。したがって、既設の照明器具100Bを本発明の照明器具1Bに交換すれば、天井面の照明器具間の空きスペースSが広くなり、この空きスペースSに、補助光源、人感センサ等の各種センサ、パネル,ルーバ等のオプション取付部材OPを設置でき、従来の照明システムに付加機能を追加したリニューアルが可能となる。
【0052】
(実施形態3)
実施形態1,2では、定格ランプ電力32W〜45Wを有する直管形の蛍光ランプについて説明したが、蛍光ランプの形状は直管形に限らず、環形蛍光ランプ、二重環形蛍光ランプ、コンパクト形蛍光ランプ、スクエア形蛍光ランプ等の他の形状であっても同様に、定格ランプ電力32W〜45Wに対してフィラメントの主線の線径を約70μm、エミッタ量を約9mgにすることで、従来の同定格の蛍光ランプと同様のランプ寿命を確保しながらランプ出力を増大させることができる。
【0053】
例えば、二重環形蛍光ランプを用いた照明器具の場合、図17(a)に示すように、円筒状の筐体103a内に設けた仕切板103bの下面側に、従来の32W〜45Wの定格ランプ電力を有する二重環形の蛍光ランプLa103(例えば、FHD40:高周波点灯専用形、二重環形、定格ランプ電力40W)を2灯搭載した照明器具100Eを、図17(b)に示すような円筒状の筐体23a内に設けた仕切板23bの下面側に本実施形態の二重環形の蛍光ランプLa2(定格ランプ電力:32W〜45W、フィラメントの主線の線径:約70μm、エミッタ量:約9mg)を1灯搭載した照明器具1Eに交換しても、1灯あたりの光出力を増加させることで、部屋全体の照度分布やランプ寿命を従来に比べて悪化させることなく、蛍光ランプの灯数を削減することができ、コスト低減及び設置スペースの縮小化を図ることができる。
【0054】
なお、照明器具100Eにおいて、仕切板103bの上面側に配置された点灯ユニット110が蛍光ランプLa103を点灯制御し、筐体103aの下面開口には蓋体103cが覆設されている。また、照明器具1Eにおいて、仕切板23bの上面側に配置された点灯ユニット10が蛍光ランプLa2を点灯制御し、筐体23aの下面開口には蓋体23cが覆設されている。
【0055】
また、スクエア形蛍光ランプを用いた照明器具の場合、図18(a)に示すような函状の筐体104a内に従来の32W〜45Wの定格ランプ電力を有する二重スクエア形の蛍光ランプLa104を1灯搭載した照明器具100Fを、図18(b)に示すような函状の筐体24a内に本実施形態のスクエア形の蛍光ランプLa3(定格ランプ電力:32W〜45W、フィラメントの主線の線径:約70μm、エミッタ量:約9mg)を1灯搭載した照明器具1Fに交換しても、1灯あたりの光出力を増加させることで、部屋全体の照度分布やランプ寿命を従来に比べて悪化させることなく、蛍光ランプを二重から一重に変更でき、コストが低減される。
【0056】
(実施形態54)
図19(a)は、従来の照明ユニットU100を示しており、照明ユニットU100は、函型のケースK100内に従来の32W〜45Wの定格ランプ電力を有するコンパクト形の蛍光ランプLa105(例えば、FPL36:コンパクト形、定格ランプ電力36W)を1灯備えた照明器具100Gを4つ並設し、計4灯の蛍光ランプLa105を備えている。
【0057】
図19(b)は、本実施形態の照明ユニットU1を示しており、照明ユニットU1は、函型のケースK1内に本実施形態のコンパクト形の蛍光ランプLa4(定格ランプ電力:32W〜45W、フィラメントの主線の線径:約70μm、エミッタ量:約9mg)を1灯備えた照明器具1Gを2つ並設し、計2灯の蛍光ランプLa4を備えている。そして、ケースK1の寸法は、ケースK100と同一に形成されており、天井面等に既に設置されている従来の照明ユニットU100を取り外した後に、本実施形態の照明ユニットU1を容易に取り付けることができる。
【0058】
したがって、既設の照明ユニットU100を照明ユニットU1に交換して1灯あたりの光出力を増加させることで、部屋全体の照度分布やランプ寿命を従来に比べて悪化させることなく、蛍光ランプの灯数を削減することができ、コスト低減を図ることができる。
【0059】
(実施形態5)
本実施形態における照明器具1は、図20に示すように、点灯装置11、点灯時間検出部12、点灯時間タイマ13、照度補正装置14、補正データ記憶部15からなる点灯ユニット10と、蛍光ランプLa1とを備え、蛍光ランプLa1は調光制御が可能な点灯装置11の出力によって点灯する。
【0060】
点灯時間検出部12は、商用電源のような電源ACと点灯装置11との間に設けられて、点灯装置11に通電されているか否かを検出し、点灯時間タイマ13は、点灯時間検出部12により検出された通電期間を計時する。つまり、通電期間を蛍光ランプLa1の点灯期間とみなして点灯時間タイマ13により蛍光ランプLa1の点灯時間を計時する。
【0061】
ところで、ランプの光束は点灯時間の経過に伴って低下し、またランプを装着している灯具やランプが時間の経過に伴って汚れることによっても光量は低下するから、このような点灯時間の経過に伴う光量低下を抑制するために照明器具1には照度補正装置14が設けられている。ここで、蛍光ランプLa1の光束の低下は蛍光体の劣化などが原因になる。照度補正装置14は基本的には蛍光ランプLa1の点灯時間の経過に伴う光束の低下を補正するように構成されているものであって、蛍光ランプLa1の交換直後には蛍光ランプLa1を、ある出力で点灯させておき、蛍光ランプLa1の点灯時間が経過するのに伴って、点灯装置11を介して蛍光ランプLa1への供給電力を増加させるものである。つまり、蛍光ランプLa1の点灯時間の経過に伴って点灯装置11の出力を増加させるのである。したがって、蛍光ランプLa1の光束が点灯時間の経過に伴って低下するのに対して、点灯時間の経過に伴って蛍光ランプLa1への供給電力(蛍光ランプLa1の入力電力)を増加させることで、蛍光ランプLa1の光出力を略一定に保つことができるのである。
【0062】
さらに、本実施形態では、蛍光ランプLa1が実施形態1と同様に構成されており、従来と略同様のランプ寿命を確保しながらランプ出力を増大させることができる。
【0063】
以下、本実施形態の照度補正装置14の動作について説明する。
【0064】
蛍光ランプの光束は点灯時間の経過に伴って減退するが、この光束減退の程度が、経過時間に伴って初期の値のどの程度に維持されているかを示す割合を光束維持率という。そして、蛍光ランプにFHF32(高周波点灯専用形、直管形、定格ランプ電力32W)を用いた場合の光束維持率の変化を入力電力毎に実験で求め、図21は、蛍光ランプ(FHF32)の入力電力を32W,45W,63Wとして実験で求めた各光束維持率曲線をY32e,Y45e,Y63eで示しており、入力電力が大きいほど、点灯時間の経過に伴う光束維持率の低下度合は大きくなる。すなわち、蛍光ランプの光束維持率は入力電力に依存していることが分かる。
【0065】
また、[数1]に示すLehmannの式(J.Electrochem.Soc. SOLID-STATE SCIENCE ANDTECHNOLOGY 130巻、2号(1983)、426〜431頁、Willi Lehmann)による解析から、図22,[数2]に示すように蛍光ランプの寿命定数τと蛍光ランプの入力電力pとはほぼ相関関係を有すると認められ、蛍光ランプの入力電力pが大きくなるに伴い、蛍光ランプの寿命定数τは短くなる。
【0066】
【数1】

【0067】
ここで、Iは光度(光源からあらゆる方向に向かう光束の単位立体角当たりの割合)、tは点灯時間、τは蛍光ランプの寿命定数である。
【0068】
【数2】

【0069】
次に、図23は蛍光ランプにFHF32を用いて、蛍光ランプ(FHF32)の入力電力を32W,45W,50W,60Wとしたときの各光束維持率曲線Y32s,Y45s,Y50s,Y60sをシミュレーションで求めた結果を示しており、入力電力が大きいほど、点灯時間の経過に伴う光束維持率の低下度合は大きくなる。すなわち、同一の蛍光ランプであっても入力電力によって光束維持率曲線は異なり、入力電力が小さいほど光束維持率の低下度合は小さくなる。
【0070】
従来、蛍光ランプにFHF32を用いた場合は、入力電力を32Wとした場合の光束維持率Y32sに基づき、点灯時間の経過に伴って蛍光ランプの入力電力を増加させていた。しかし、実際に蛍光ランプへ供給される電力は、照度補正のため点灯時間の経過に伴って増加するのに対して、光束維持率Y32sは、入力電力を32W一定にした場合の特性であり、従来の光束維持率曲線は入力電力の変化に対応しておらず、実際の光束減退と光束維持率の特性とが一致しないものであった。
【0071】
そこで、本実施形態における照度補正装置14は、図24に示す光束維持率曲線Yaに基づいて蛍光ランプLa1へ供給する電力を指示して照度補正を行った。例えばこの光束維持率曲線Yaは、点灯時間0〜T1(2000時間)までは入力電力32W時の光束維持率曲線Y32s、点灯時間T1〜T2(7000時間)までは入力電力45W時の光束維持率曲線Y45s、点灯時間T2〜T3(12000時間)までは入力電力50W時の光束維持率曲線Y50s、点灯時間T3〜は入力電力60W時の光束維持率曲線Y60sで構成されている。すなわち、点灯時間の経過に伴って、蛍光ランプの入力電力を32W → 45W → 50W → 60Wの順に増加させるのであるが、入力電力が変更される度に当該入力電力に対応した光束維持率曲線Y32s,Y45s,Y50s,Y60sに基づいて次の入力電力の変更タイミングを決定しており、これら各入力電力に対応した複数の光束維持率曲線Y32s,Y45s,Y50s,Y60sを連続させて光束維持率曲線Yaを生成している。
【0072】
而して、光束維持率曲線Yaの特性は、実際の蛍光ランプの入力電力に沿ったものとなるので、実際の光束減退に略一致し、照度補正装置14は、この光束維持率曲線Yaに基づいて蛍光ランプLa1へ供給する電力を指示するので、蛍光ランプLa1から出力される光束は、点灯時間の経過及び点灯時間の経過に伴う入力電力の変化に関わらず略一定に制御され、照度補正の精度が向上する。このように、点灯時間に対する入力電力の変更は光束維持率曲線Yaに基づいて任意に行うことができる。
【0073】
次に、上記光束維持率曲線Yaの算出方法について説明する。
【0074】
まず、Lehmann近似によって光束維持率Dは[数3]で表される。
【0075】
【数3】

【0076】
定数、tは点灯時間、τは蛍光ランプの寿命定数、pは蛍光ランプの入力電力である。
【0077】
また、上記[数3]における光束維持率Dの初期値Dは、[数4]に表すように点灯時間t=100h(時間)のときに1となるように設定される。
【0078】
【数4】

【0079】
ここで、Cはt=100h時における定数、pはt=100h時における入力電力である。
【0080】
そして、点灯時間tが時間tのときの光束維持率Dは、[数5]で表される。
【0081】
【数5】

【0082】
ここで、Cはt=t時における定数、pはt=t時における入力電力である(但し、k=0、1、2、...n−1、n、n+1、...)。
【0083】
上記[数5]では、蛍光ランプLa1の入力電力がpのときに次の時間tn+1における光束維持率D(tn+1)を表している。すなわち、入力電力をpからpn+1に変更した場合の点灯時間tn+1における光束維持率が[数5]で表されており、光束維持率を予測することができる。したがって、点灯時間の途中で入力電力を変更した場合でも図24に示す光束維持率曲線Yaを導出することができる。
【0084】
そして、蛍光ランプLa1が出力する光束φと蛍光ランプLa1の入力電力pとの関係は、[数6]で表されるので、ある点灯時間tに光束φを出力させる入力電力pは決定される。
【0085】
【数6】

【0086】
そして、図25は、1灯の蛍光ランプが出力する最大光束を6300lm、保守率を70%とした場合に上記照度補正を行った場合の光束の時間特性であり、実施形態1と同様の構成を備えて32W〜45Wの定格ランプ電力を有する本発明の蛍光ランプLa1を用いた場合の特性Yk1、32W〜45Wの定格ランプ電力を有する従来の蛍光ランプを用いた場合の特性Yk2を各々示す。
【0087】
まず、従来の蛍光ランプは、特性Yk2に示すように、上記光束維持率曲線Yaに基づく照度補正によって光束を4410lm一定に制御しても、エミッタの消耗が早いために、光束4410lmを維持可能な点灯時間は12000時間程度が限界であり、12000時間を超えた時点から光束は徐々に低下する。
【0088】
一方、蛍光ランプLa1は、フィラメント2の主線2aの線径D1を約65〜100μmに増大させて、フィラメント温度の上昇およびエミッタ3の消耗を従来に比べて抑制し、さらにエミッタ3の量を約5〜11mgに増加させており、特性Yk1に示すように、上記光束維持率曲線Yaに基づく照度補正によって光束を4410lm一定に制御した場合、光束4410lmを維持可能な点灯時間は12000時間を越えて18000時間以上にまで達し、長寿命化を実現している。
【0089】
本実施形態では、上記光束維持率曲線Yaを[数5]に基づき点灯開始から寿命時に亘って予め算出して、光束維持率曲線Yaに基づく蛍光ランプLa1の補正データ(所定の点灯時間毎の光束維持率、入力電力)を補正データ記憶部15に予め格納しており、照度補正装置14は、補正データ記憶部15内の補正データに沿って、点灯時間の経過に伴い蛍光ランプLa1へ供給する電力を指示している。したがって、光束維持率を予め算出して、光束維持率曲線に基づく補正データを予め生成しておくので、照明器具1に光束維持率の算出手段を設ける必要がなく、光源の点灯制御の構成を簡略化することができる。なお、本実施形態において保守率は70%とする。
【0090】
また、上記図24に示す例では蛍光ランプLa1の入力電力を4段階に変更しているが、さらに細かく多段階に変更してもよい。図26は、補正データに基づく光束維持率曲線Yb、及び蛍光ランプLa1の入力電力パターンYpを示しており、点灯時間の経過に伴って入力電力パターンYpを細かく階段状に増加させるのであるが、入力電力が変更される度に当該入力電力に対応した光束維持率曲線に基づいて次の入力電力の変更タイミングを決定しており、これら各入力電力に対応した複数の光束維持率曲線を連続させて光束維持率曲線Ybを生成している。
【0091】
そして、蛍光ランプLa1が実施形態1と同様に構成されているので、蛍光ランプLa1へ供給する電力を定格値(100%)以上に増加させることが可能であり、照明システムとして蛍光ランプLa1の灯数を従来に比べて削減することができる。
【0092】
また、本実施形態では実施形態1で説明した蛍光ランプLa1を使用したが、蛍光ランプLa1と同様に、定格ランプ電力:32W〜45W、フィラメントの主線の線径:約65〜100μm、エミッタ量:約5〜11mgの蛍光ランプであればよい。あるいは、上記蛍光ランプLa2〜La4であってもよい。
【0093】
(実施形態6)
本実施形態の照明器具1は、図27に示すように、実施形態5の補正データ記憶部15の代わりに補正データ演算部16を設けたものであり、補正データ演算部16は、蛍光ランプの点灯制御中に、現時点における点灯時間t、蛍光ランプの入力電力p、光束維持率Dn−1(t)を[数5]に適用して、次の時間tn+1における光束維持率D(tn+1)を逐次算出する。そして、照度補正装置14は、この算出された光束維持率D(tn+1)に基づいて次の時間tn+1に蛍光ランプLa1へ供給する電力を指示している。したがって、補正データを予め格納する必要がなく、各照明器具1の使用状態に応じた照度補正を行うことができる。
【0094】
なお、光束維持率D(tn+1)を逐次算出する補正データ演算部16を用いれば、各照明器具1の使用状態に応じて、点灯時間の経過に伴って蛍光ランプの入力電力を増加させるだけでなく、減少させることもできる。
【符号の説明】
【0095】
La1 蛍光ランプ
2 フィラメント
3 エミッタ
6 ガラスバルブ
10 点灯ユニット
11 点灯装置
13 点灯時間タイマ
14 照度補正装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスバルブ内面に蛍光体層を形成するとともに、このガラスバルブ内に放電用ガスを封入し、ガラスバルブ内に、電子放射性物質であるエミッタの被着されている少なくとも1つのコイルからなるフィラメントを取り付けた蛍光ランプと、蛍光ランプを点灯させるとともに蛍光ランプへの供給電力を制御可能な点灯ユニットとを備え、
前記フィラメントを構成する少なくとも1つのコイルの線径は65〜100μmであり、フィラメントに被着されているエミッタの量は5〜11mgであることを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記点灯ユニットは、蛍光ランプへ電力を供給する点灯装置と、点灯装置への給電時間を蛍光ランプの点灯時間として計時する点灯時間タイマと、蛍光ランプの点灯時間の経過に伴う光束低下を抑制するように少なくとも点灯時間タイマにより計時された点灯時間に応じて蛍光ランプへ供給する電力を点灯装置に指示する照度補正装置とを備えることを特徴とする請求項1記載の照明器具。
【請求項3】
前記照度補正装置は、蛍光ランプの点灯時間と当該点灯時間における蛍光ランプの入力電力とに応じて算出される光束維持率に基づいて、蛍光ランプへ供給する電力を前記点灯装置に指示することを特徴とする請求項2記載の照明器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2010−40531(P2010−40531A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220081(P2009−220081)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【分割の表示】特願2007−220987(P2007−220987)の分割
【原出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】