説明

照明器具

【課題】外観品質を損なうことなく、排水不良を生じにくくできる照明器具を提供する。
【解決手段】照明器具において、光源を備え壁面に取り付けられる器具本体と、水平方向に長尺で長手方向両端が側板部で閉塞され器具本体を覆って装着される透光性のカバー26と、カバー26に形成され壁面に沿う方向の正面板部34と、正面板部下縁38に連続して壁面に向かって下り傾斜で形成される下り傾斜底板部35と、下り傾斜底板部下縁40に、カバー材の厚みtと同一若しくはそれよりも大きい曲げ半径のR曲げ部41を介して連続して壁面に沿って立ち上がる当接板部33と、カバー26の長手方向の少なくとも一端側に設けられR曲げ部41およびR曲げ部41に連続する当接板部33の一部分を除去して形成される排水孔45と、を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平方向に長尺のカバーが装着される照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
略一直線状に形成された発光部と、この発光部を収容する筒状の透明ケースとを備えて、屋外に設置される照明器具が特許文献1に開示されている。この照明器具は、透明ケースを周囲の構造物等に固定するための取付金具を備える。発光部は、発光LED素子、直管形蛍光灯、ネオン管等の発光体を直線状に配列したものである。透明ケースは、雨水等が内部に浸入しないように、例えば壁面との接合部等にパッキンを挿入する等、防水処置が施される。
【0003】
ところで、屋外に設置される照明器具では、雨水等が直接浸入しなくても、周囲の温度変化による結露によって、透明ケース内に水滴が発生する場合がある。また、当初は良好な防水性能を維持できていても、いずれ、経年変化による接合部の老化等で透明ケースの防水性能が低下して、内部に雨水等が浸入してしまう虞がある。また、発光部が発熱し易い場合には、発熱を外部に逃がす排気孔を装備する必要もある。そこで、従来の照明器具では、透明ケースの内側に浸入した水の速やかな排出と、排熱のための通気を兼ねて、透明ケースの下面に水抜き孔を設ける技術が普及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−31953号公報(請求項1、図10、段落0004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7(A)に示すように、従来の照明器具100は、壁面に横付けされたとき、少なくとも長手方向の一端側に傾いて設定されており、排水のための水抜き孔101は、透明ケース102の両端部103に設けてさえすればよかった。
しかしながら、この場合、透明ケース102が熱により膨張し、中央部104が水抜き孔101よりも下の位置になった場合、図7(B)に示すように、中央部104に溜まった水105が水抜き孔101から排水できなくなる排水不良の生じる問題があった。これに対し、図8に示すように、水抜き孔101を透明ケース下面106の両端部103や中央部104に設けると、外観品質を損なうだけでなく、虫の侵入、あるいは、埃等の異物が透明ケース102の内側に入ってしまう問題があった。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、外観品質を損なうことなく、排水不良を生じにくくできる照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の照明器具は、光源を備え壁面に取り付けられる器具本体と、水平方向に長尺で長手方向両端が側板部で閉塞され前記器具本体を覆って装着される透光性のカバーと、前記カバーに形成され前記壁面に沿う方向の正面板部と、正面板部下縁に連続して前記壁面に向かって下り傾斜で形成される下り傾斜底板部と、下り傾斜底板部下縁に、前記カバー材の厚みと同一若しくはそれよりも大きい曲げ半径のR曲げ部を介して連続して前記壁面に沿って立ち上がる当接板部と、前記カバーの長手方向の少なくとも一端側に設けられ前記R曲げ部および該R曲げ部に連続する前記当接板部の一部分を除去して形成される排水孔と、を具備するものである。
【0008】
また、本発明の照明器具は、前記カバーが、前記側板部を前記器具本体に固定されることで該器具本体に装着され、前記カバーの長手方向の中央部に、前記排水孔が形成されるものである。
【0009】
さらに、本発明の照明器具は、前記排水孔が、前記カバーの長手方向の両端側に亘って連続して形成されているものである。
【0010】
さらに、本発明の照明器具は、前記カバーと前記壁面との間をシールするパッキン材が前記カバーと前記壁面との間に設けられ、前記排水孔が前記カバーと前記パッキン材との間に開口するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る照明器具によれば、外観品質を損なうことなく、排水不良を生じにくくできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施形態の照明器具の斜視図
【図2】図1に示した照明器具の分解斜視図
【図3】(A)はパッキン材を備えた照明器具を背面側から見た斜視図、(B)は(A)の端部における要部拡大図、(C)は(A)の中央部における要部拡大図
【図4】(A)は図2に示したカバーの長手方向に直交する方向の断面図、(B)は(A)のD部拡大図
【図5】図2に示したカバーが膨張した場合の排水状況を表す背面図
【図6】排水孔が長手方向に連続して形成された変形例に係る照明器具の斜視図
【図7】(A)は従来の照明器具における透明ケースの背面図、(B)は透明ケースが膨張した場合の排水状況を表す背面図
【図8】従来の照明器具の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は本発明に係る実施形態の照明器具の斜視図、図2は図1に示した照明器具の分解斜視図である。
本実施形態に係る照明器具10は、板金材等によって長尺に形成された器具本体11が壁面12に固定される。器具本体11の壁面12への固定は、例えば壁面12に植設したボルト13を器具本体11の取付孔14に挿通し、ボルト13の挿通先端側に座金15を挿入してナット16を螺合されることで行われる。器具本体11には光源駆動装置17が取り付けられる。光源駆動装置17には壁面12より導出された電源配線18が接続される。壁面12より導出された電源配線18は、器具本体11の電源線引込み孔19から器具本体内へ引き込まれる。電源配線18と電源線引込み孔19との間はシール材20によって水密シールされてもよい。
【0014】
器具本体11の長手方向の両端にはソケット支持ブラケット21が設けられる。ソケット支持ブラケット21の先端にはソケット22が設けられる。ソケット22は、不図示の器具内配線によって光源駆動装置17と電気的に接続されている。
【0015】
一対のソケット22の間には略一直線状の光源23が装着される。光源23は、発光LED素子、直管形蛍光灯、ネオン管等の発光体を直線状に配列したものとできる。本実施形態では光源23を直管形蛍光灯24としている。
【0016】
ソケット支持ブラケット21の基端側には雌ねじ部25が設けられている。この雌ねじ部25にはカバー26を貫通した摘みねじ27が螺合される。カバー26は、透光性を有する材料からなる。透光性を有する材料としては、例えば、ポリカーボネートやアクリル等の樹脂材料を用いることができる。また、光は100%に近く透過することが好ましいが、混色、色むら等の対策として半透明、あるいは、不透明(例えば、光透過性が70%程度以上の乳白色のもの等)であってもよい。
【0017】
図3は(A)はパッキン材28を備えた照明器具10を背面側から見た斜視図、(B)は(A)の端部29における要部拡大図、(C)は(A)の中央部30における要部拡大図である。
図3(A)に示すように、このカバー26は、水平方向に長尺で長手方向両端が側面視で台形状の側板部31で閉塞されて、器具本体11を覆って装着される。カバー26の壁面12に対面する背面は、矩形状の取付開口部32となる。取付開口部32を挟む上下には、壁面12に対面する後述の当接板部33(図4参照)が形成される。この当接板部33と壁面12との間、および側板部31と壁面12との間には、矩形状のパッキン材28が装着されてもよい。
【0018】
図4は(A)は図2に示したカバー26の長手方向に直交する方向の断面図、(B)は(A)のD部拡大図である。
図4(A)に示すように、カバー26の長手方向に直交する方向の断面形状は、正面板部34と、下り傾斜底板部35と、天板部36と、当接板部33と、係止縁部37と、によって形成される。正面板部34は、壁面12に沿う方向の正面板となる。下り傾斜底板部35は、正面板部下縁38に連続して壁面12に向かって下り傾斜で形成される。天板部36は、正面板部上縁39に連続して壁面12に向かって上り傾斜で形成される。当接板部33は、下り傾斜底板部下縁40に、カバー材の厚みと同一若しくはそれよりも大きい曲げ半径のR曲げ部41を介して連続して壁面12に沿って立ち上がる。また、天板部上縁42には当接板部33を上下反転させた形状の上部当接板部43が連続して形成される。係止縁部37は、先端の係止片44が器具本体11に設けられる不図示の係止部に係止され、カバー26を器具本体11に装着する。
【0019】
図3(B)に示すように、カバー26の長手方向の少なくとも一端側には排水孔45が設けられている。本実施形態では、排水孔45は、カバー26の長手方向両端に設けられている。排水孔45は、図4(B)に示すように、R曲げ部41およびR曲げ部41に連続する当接板部33の一部分を除去して形成される。R曲げ部41の半径はカバー材の厚みtと同一若しくはそれよりも大きいので、R中心46は当接板部33の背面またはそれよりも内側となる。R曲げ部41が除去されることで、下り傾斜底板部下縁40の若干部分47も除去されることになる。これにより、下り傾斜底板部35を流下する水48は、障害物に当たることなく円滑に外部へと排出される。
【0020】
なお、R曲げ部41の半径がカバー材の厚みtよりも小さい構造、あるいは、R曲げ部41の半径がカバー材の厚みtよりも大きくてもR曲げ部41が全て除去されない構造等では、下り傾斜底板部下縁40に立上り部が存在し易く、円滑な排水の障害となる。
【0021】
また、本実施形態の照明器具10では、カバー26が、側板部31を器具本体11に固定されることで器具本体11に装着される。従って、光源23の発熱により長手方向に熱膨張しようとするカバー26は、両端の伸長が規制されることで、内部応力によって上下幅が拡幅するように変形する(図5参照)。照明器具10では、カバー26の長手方向の中央部30に、図3(C)に示す排水孔45が形成される。すなわち、照明器具10では、合計3箇所の排水孔45が設けられている。
【0022】
照明器具10では、カバー26と壁面12との間をシールするパッキン材28がカバー26と壁面12との間に設けられている。排水孔45は、カバー26とパッキン材28との間に開口する。パッキン材28は弾性変形容易なため、当接板部33に押しつけられることで、排水孔45内に膨出する。この場合においても、照明器具10では、排水孔45が下り傾斜底板部下縁40の若干部分47(図4参照)を除去して形成されているので、パッキン材28の膨出によっても排水孔45が完全に塞がれることがない。
【0023】
次に、上記構成を有する照明器具10の作用を説明する。
照明器具10では、雨水が浸入したり、結露によって水48がカバー内に入ると、正面板部34の内面に付着した水48は、正面板部下縁38に流下し、下り傾斜底板部35に伝わり、下り傾斜底板部下縁40に流下する。また、正面板部34の上方に連続する天板部36や光源23に付着した水48は、下り傾斜底板部35に落下し、下り傾斜底板部下縁40に流下する。さらに、器具本体11で結露した水48はR曲げ部41の内面に流下する。カバー下部の内側では、当接板部33と下り傾斜底板部35とによって挟まれた隅部が図4に示すV字排水溝49となる。
【0024】
上記構成によってV字排水溝49には、延在方向の両端側に排水孔45が設けられる。従って、カバー26は、一端側が僅かな下り勾配となるように取り付けれることで、内部に侵入、あるいは、発生した全ての水48がV字排水溝49を流下して排水孔45からカバー26の外部へ排出される。また、照明器具10では、排水孔45がR曲げ部41に穿設されている。R曲げ部41は、下り傾斜底板部35の延長表面50よりも上方に湾曲するので、下り傾斜底板部下縁40の奥まった位置で隠れる。これにより、下り傾斜底板部35の底板表面51に穿設される従来排水孔に比べて、目に触れにくくなる。
【0025】
図5は図2に示したカバー26が膨張した場合の排水状況を表す背面図である。
また、照明器具10では、長尺のカバー26が、両端の側板部31によって、剛体である器具本体11に固定される。カバー26は、熱膨張によって長手方向に伸びると、両端の側板部31が固定されていることで、下り傾斜底板部35の中央部30が内部応力によって下方へ撓む。これにより、V字排水溝49の水48は中央部30へ流下し、中央部30に設けられた排水孔45からカバー26の外部へ排出される。
【0026】
また、照明器具10では、壁面12とカバー26との水密性を確保するために、壁面12とカバー26との間にパッキン材28が挟まれる。壁面12と上部当接板部43との間、壁面12と側板部31との間、壁面12と当接板部33との間は、パッキン材28によってシールされる。この際、当接板部33に当接したパッキン材28は、排水孔45の位置で当接板部33と非接触となる。つまり、排水孔45は、パッキン材28と下り傾斜底板部35とに包囲された開口空間となって残る。これにより、パッキン材28を用いて、壁面12とカバー26との水密性を高めた場合であっても、排水孔45を確保して排水不良を生じにくくできる。
【0027】
図6は排水孔45が長手方向に連続して形成された変形例に係る照明器具52の斜視図である。
なお、図6に示す照明器具52では、上記の排水孔45が、カバー26の長手方向の両端側に亘って連続するスリット状排水孔53として形成されている。この場合、スリット状排水孔53によって下り傾斜底板部下縁40と分断された当接板部33および係止縁部37(図4参照)は、側板部31に両端が接続される。また、スリット状排水孔53は、当接板部33および係止縁部37が下り傾斜底板部下縁40と分断されないように、所定間隔で不図示の連結部を設けてもよい。
【0028】
スリット状排水孔53を設けた照明器具52では、カバー26が水平に取り付けられていても、V字排水溝49の溝底全てが排水孔45となる。このため、下り傾斜底板部下縁40に流下した水48は、全てがスリット状排水孔53から排出され、水48がV字排水溝49に残留することがない。
【0029】
従って、本実施形態に係る照明器具10、照明器具52によれば、外観品質を損なうことなく、排水不良を生じにくくできる。
【符号の説明】
【0030】
10、52 照明器具
11 器具本体
12 壁面
23 光源
26 カバー
28 パッキン材
30 中央部
31 側板部
33 当接板部
34 正面板部
35 下り傾斜底板部
38 正面板部下縁
40 下り傾斜底板部下縁
41 R曲げ部
45 排水孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を備え壁面に取り付けられる器具本体と、
水平方向に長尺で長手方向両端が側板部で閉塞され前記器具本体を覆って装着される透光性のカバーと、
前記カバーに形成され前記壁面に沿う方向の正面板部と、
正面板部下縁に連続して前記壁面に向かって下り傾斜で形成される下り傾斜底板部と、
下り傾斜底板部下縁に、前記カバー材の厚みと同一若しくはそれよりも大きい曲げ半径のR曲げ部を介して連続して前記壁面に沿って立ち上がる当接板部と、
前記カバーの長手方向の少なくとも一端側に設けられ前記R曲げ部および該R曲げ部に連続する前記当接板部の一部分を除去して形成される排水孔と、を具備する照明器具。
【請求項2】
請求項1に記載の照明器具において、
前記カバーが、前記側板部を前記器具本体に固定されることで該器具本体に装着され、
前記カバーの長手方向の中央部に、前記排水孔が形成される照明器具。
【請求項3】
請求項1に記載の照明器具において、
前記排水孔が、前記カバーの長手方向の両端側に亘って連続して形成されている照明器具。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載の照明器具において、
前記カバーと前記壁面との間をシールするパッキン材が前記カバーと前記壁面との間に設けられ、
前記排水孔が前記カバーと前記パッキン材との間に開口する照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−252786(P2012−252786A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122299(P2011−122299)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】