説明

照明機能を有する複合操作装置

【課題】押圧操作部材、回転操作リングとを併有する複合操作装置であって、回転操作検出のために小径のロータリエンコーダを用いながら押圧操作部材を広い面積にわたって照明する。
【解決手段】押圧操作部材30及び回転操作リング60と、固定部及び回転部を有する筒状のロータリエンコーダ20と、ロータリエンコーダ20の内側に設けられる照明用光源40と、この照明用光源40が発する光を押圧操作部材30へ導く導光体50と、回転部と回転操作リング60とを連結する連結部材とを備える。押圧操作部材30は、ロータリエンコーダ20よりも大径の被押圧部34A,34Bを有する。導光体50は、ロータリエンコーダ20の内側に固定される第1導光部51と、それよりも大径でロータリエンコーダ20と被押圧部34A,34Bとの間に位置する第2導光部52とを有するとともに、押圧操作部材30を保持する保持部56A,56Bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧操作を受ける押圧操作部材と、回転操作を受ける回転操作リングとを併有するとともに、照明機能が与えられた複合操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、押圧操作を受ける押圧操作部材と回転操作を受ける回転操作部材とを併有する複合操作装置として、図11に示すようなものが知られている(特許文献1)。
【0003】
この装置は、回路基板100上に固定される円筒状のケース102と、このケース102の外周面上に固定される円筒状のロータリエンコーダ104と、このロータリエンコーダ104に連結される回転操作リング(回転操作部材)106と、この回転操作リング106の内側に設けられる押圧操作部材108とを備える。
【0004】
前記ロータリエンコーダ104は、前記ケース102側に固定される固定部とこの固定部に対して前記回路基板100の法線方向と合致する方向の軸回りに回転する回転部とを有し、この回転部の回転量に相当する検出信号を出力する。前記回転操作リング106は、前記回転部と一体に回転するように当該回転部に連結され、その回転可能方向に回転操作を受ける。従って、この回転操作リング106の回転操作量に対応する信号が前記ロータリエンコーダ104から出力される。
【0005】
前記押圧操作部材108は、前記回転操作リング106の内側に嵌り込む形状の被押圧部108aと、この被押圧部108aから回路基板100側に延びる押圧操作部108bとを一体に有する。前記被押圧部108aは、前記回路基板100に対して接近及び離間する方向にスライド可能となるように前記ケース102に保持され、当該方向に沿って外部から指等による押圧操作を受ける。前記押圧操作部108bは、前記被押圧部108aが押圧操作を受けるのに伴い、前記回路基板100上に実装された押圧スイッチ110を押圧し、当該押圧スイッチ110から押圧検出信号を出力させる。
【0006】
さらに、この複合操作装置では、前記押圧操作部材108の被押圧部108aの適当な部位に照明対象部位である導光部112が設けられるとともに、この導光部112を照明するための手段が装備される。具体的には、前記回路基板100上に照明用のLED114が実装されるとともに、このLED114の発する光を前記導光部112に導くための導光材116が前記ケース102の内側部分に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−229779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図11に示すような複合操作装置では、限られた回路基板100上のスペースを有効に利用するために、ロータリエンコーダ104としてなるべく径の小さいものを用いることが望まれる。しかしながら、その一方で、当該ロータリエンコーダ104の内側には、押圧操作部材108をその押圧操作方向にスライド可能に保持するためのケース102が設けられ、かつ、このケース102のさらに内側に当該押圧操作部材108の押圧操作部108bや導光材116が格納される必要があることから、前記ロータリエンコーダ104の小径化には著しい制約がある。特に、前記押圧操作部材108の照明対象部位の面積が大きい場合(極端には当該押圧操作部材108の被押圧部108a全体の照明が求められる場合)には、導光材116の大型化も避けられず、その分ロータリエンコーダ104の小径化の制約はさらに著しいものとなる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、押圧操作部材と、その周囲に配される回転操作リングとを併有する複合操作装置であって、前記回転操作リングの回転操作を検出するために前記押圧操作部材よりも小径のロータリエンコーダを用いながら、当該押圧操作部材を広い面積にわたって照明することが可能なものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、回路基板上に設けられ、押圧操作と回転操作を受けることが可能であるとともに照明機能を有する複合操作装置であって、前記回路基板上に固定される固定部及びこの固定部に対して特定の回転中心軸回りに回転可能な回転部を有し、その回転中心軸に沿う方向に開口する筒状をなすとともに、前記回転部の回転量に相当する信号を出力するロータリエンコーダと、このロータリエンコーダの最大外径よりも大きな外径をもつ被押圧部とこの被押圧部から前記ロータリエンコーダの内側を通って前記回路基板側に延びる押圧操作部とを有し、前記被押圧部が前記回転中心軸に沿う方向に押圧されることにより同方向に変位して前記押圧操作部が前記回路基板上の押圧検出部を押圧する押圧操作部材と、前記ロータリエンコーダの内側の領域内で前記回路基板上に設けられ、前記押圧操作部材の押圧操作部を照明するための光を発する照明用光源と、この照明用光源が発する光を前記押圧操作部材へ導く導光体と、前記押圧操作部材の押圧操作部の周囲に設けられる回転操作リングと、前記導光体の外側に位置して前記回転操作リングと前記ロータリエンコーダの回転部とをこれらが一体に回転するように連結する連結部材とを備える。そして、前記導光体は、前記ロータリエンコーダの内径よりも小さい外径を有して当該ロータリエンコーダの内側に固定される第1導光部と、前記ロータリエンコーダの内径よりも大きな外径を有するとともに前記ロータリエンコーダと前記押圧操作部材の被押圧部との間に位置して前記第1導光部とつながる第2導光部とを有するとともに、前記押圧操作部材を当該押圧操作部材がその押圧操作方向にスライド可能となるように保持する保持部と、前記第1導光部及び前記第2導光部を前記押圧操作部が貫通するのを許容する貫通孔とを有する。
【0011】
この複合操作装置によれば、前記第1導光部及び前記第2導光部をもつ導光体が、照明用光源からの光を前記押圧操作部材に伝達する導光用部材と、当該押圧操作部材をその押圧操作方向にスライド可能に保持する保持部材の双方の部材として機能することにより、回転操作検出手段として小径のロータリエンコーダを用いながら当該ロータリエンコーダよりも大きな押圧操作部材をその裏側から良好に照明することを可能にする。具体的に、前記ロータリエンコーダの内側に設けられた照明用光源からの光は、前記導光体の第1導光部に入射し、さらにこの第1導光部からそれよりも大径の第2導光部に拡がり、この第2導光部から押圧操作部材に向けて照射される。しかも、この導光体自身が前記押圧操作部材を保持する保持部を有するので、当該押圧操作部材の保持のための専用の部材を前記ロータリエンコーダの内側に設ける必要がない。つまり、前記押圧操作部材の照明及び保持のためには、前記ロータリエンコーダの内側に少なくとも前記導光体の第1導光部があればよく、それ以外の押圧操作部材の保持のための部材を加える必要がない。このことが、小径のロータリエンコーダの使用を可能にする。
【0012】
前記導光体は、前記第2導光部のうち前記第1導光部の外周面よりも外側の部分に前記保持部を有するのが、さらに好ましい。この保持部は、正面から見て前記第1導光体の配設領域の外側にあるので、当該保持部が当該第1導光体から押圧操作部材への導光に与える影響を抑えながら前記押圧操作部材の保持状態を安定させることができる。
【0013】
具体的な前記押圧操作部材の保持構造としては、前記第2導光部がこの第2導光部を前記第1導光部の外周面よりも外側の位置で前記押圧操作方向と平行な方向に貫通する保持用孔を囲む筒部を有し、前記押圧操作部材がその被押圧部から前記押圧操作方向と平行な方向に沿って回路基板側に向かって突出する被保持部を有し、この被保持部が前記筒部の内周面に対して摺動可能となるように当該筒部内に挿通されるものが、好適である。
【0014】
前記押圧操作部材は、単一でもよいし、その押圧操作方向と直交する方向に並ぶ複数の分割操作部材に分割されたものでもよい。後者の場合、前記第2導光部は、各分割操作部材を保持する保持部を複数の位置にそれぞれ有することで、これらの分割操作部材を一括して保持することができる。
【0015】
この複合操作装置は、前記回転操作リングが前記導光体の第2導光部を囲む周壁を有する場合、この周壁に照明対象部位を設定してこの部位を前記照明用光源を利用して照明することが可能である。その場合、前記第2導光部は、前記ロータリエンコーダの外周面よりもその径方向外側に突出して前記周壁に指向する径方向突出部を有すればよい。
【0016】
さらに、前記連結部材が前記回転操作リングの周壁の内側に位置して当該周壁を保持するリング保持壁を有し、このリング保持壁が、前記周壁の内側面に沿いながら当該内側面に近接する形状の外周面を有し、少なくともこのリング保持壁が光拡散機能をもつ材料により形成され、このリング保持壁に前記第2導光部の径方向突出部が指向するものであれば、当該連結部材すなわち前記回転操作リングとともに回転する部材を光拡散部材として利用することで当該回転操作リングの周壁のより安定した照明が実現可能になる。
【0017】
さらに、前記第2導光部は、前記径方向突出部の外周端よりも径方向内側の位置で当該径方向突出部よりも前記押圧操作部材の被押圧部側に突出する軸方向突出部を有することで、当該押圧操作部材と前記回転操作リングの周壁の双方を安定して照明できる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、押圧操作部材と、その周囲に配される回転操作リングとを併有する複合操作装置において、前記回転操作リングの回転操作を検出するために前記押圧操作部材よりも小径のロータリエンコーダを用いながら、このロータリエンコーダの内側に配される照明用光源の発する光を導光体によって前記押圧操作部材に導き、かつ、この導光体によって当該押圧操作部材を保持することにより、当該押圧操作部材を広い面積にわたって照明することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る照明機能を有する複合操作装置の分解斜視図である。
【図2】前記複合操作装置の組立斜視図である。
【図3】前記複合操作装置の導光体による2つの分割操作部材の保持を示す断面斜視図である。
【図4】前記複合操作装置における第1分割操作部材の押圧操作部が前記導光体を貫通する状態を示す断面斜視図である。
【図5】前記複合操作装置における第2分割操作部材の押圧操作部が前記導光体を貫通する状態を示す断面斜視図である。
【図6】前記導光体の正面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る複合操作装置の分解斜視図である。
【図8】前記複合操作装置の正面図である。
【図9】図8のIX−IX線断面図である。
【図10】図8のX−X線断面図である。
【図11】従来の照明機能を有する複合操作装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1の実施の形態を図1〜図6を参照しながら説明する。
【0021】
この実施の形態に係る複合操作装置は、自動車の車室内等に設けられるパネル10の裏側で回路基板12上に設けられ、当該パネル10の貫通孔14を通じて当該パネル10の表側に突出し、この表側から押圧操作及び回転操作を受けるとともに、後述の照明機能を有する。具体的に、この装置は、前記回路基板12上に設けられる回転検出用のロータリエンコーダ20と、押圧操作を受ける押圧操作部材30と、前記回路基板12上に実装される照明用光源40と、この照明用光源40の発する光を前記押圧操作部材30に導くための導光体50と、前記押圧操作部材30の外側で回転操作を受ける回転操作リング60と、この回転操作リング60と前記ロータリエンコーダ20とを連結する連結部材70(図5)とを備える。
【0022】
前記ロータリエンコーダ20は、固定部22と回転部24とを有する。固定部22は、円筒状をなし、その中心軸が前記回路基板12の法線方向と合致する姿勢で当該回路基板12上に固定される。この実施の形態に関しては、固定部22は前記回路基板12に接合される大径のフランジ部22aを有しており、このフランジ部22aがロータリエンコーダ20の最大外径に相当している。回転部24も同じく円筒状をなし、前記固定部22の径方向外側にその中心軸を回転中心軸X(図1)として当該回転中心軸X回りに回転可能に設けられる。すなわち、このロータリエンコーダ20はその回転中心軸Xに沿う方向に開口する筒状をなす。前記固定部22は、前記回転部24の回転量に相当する信号を出力し、この信号は前記回路基板12に形成された回路を通じて外部に出力される。
【0023】
前記押圧操作部材30は、この実施の形態では、上側の第1分割操作部材32Aと、下側の第2分割操作部材32Bとに分割され、ともに前記導光体50によって後述のように保持される。各分割操作部材32A,32Bは、この実施の形態では互いにほぼ同一の形状を有し、前記回転中心軸Xを中心して互いに略点対称となるように上下に配置される。
【0024】
前記第1分割操作部材32Aは、被押圧板34Aと、一対の被保持部35A,36Aと、押圧操作部38Aとを一体に有する。同様に、前記第2分割操作部材32Bは、被押圧板34Bと、一対の被保持部35B,36Bと、押圧操作部38Bとを一体に有する。
【0025】
前記各被押圧板34A,34Bは、この実施の形態では正面視半円状をなし、前記回転中心軸Xに対して直交する姿勢で配され、指等による押圧操作を受ける。これら被押圧板34A,34Bの集合体である被押圧部全体の外径(すなわち第1分割操作部材32Aと第2分割操作部材32Bとを合せた押圧操作部材30全体で見た円形状の被押圧部の外径)は、前記ロータリエンコーダ20の最大外径(この実施の形態では前記固定部22のフランジ部の外径)よりも大きい。
【0026】
前記被保持部35A,36A(35B,36B)は、前記被押圧板34A(34B)の左右両端部からそれぞれ回路基板12側(裏側)に延び、後述のように、これら被保持部の長手方向(すなわち回転中心軸Xと平行な方向)にスライド可能となるように導光体50に保持される。
【0027】
前記押圧操作部38A(38B)は、前記両被保持部35A,36A(35B,36B)の中間の位置から同じく回路基板12側へ当該被保持部35A,36Aよりも大きな寸法で延び、後述のように前記導光体50を貫通しながら前記ロータリエンコーダ20の内側を通って前記回路基板12側に延びる。
【0028】
一方、前記回路基板12上には、各分割操作部材32A,32Bの押圧操作をそれぞれ検出するための押圧検出部である一対のラバースイッチ16A,16Bが設けられる。これらのラバースイッチ16A,16Bは、回路基板12上に設けられる図略のラバーシートの一部を構成するもので、前記各押圧操作部38A,38Bに対応する位置にそれぞれ設けられる。各ラバースイッチ16A,16Bは、回路基板12上に固定されるシート状の本体と、この本体に対して回路基板12の法線方向に相対変位可能となるように連結される可動部16a,16bとをそれぞれ備え、各可動部16a,16bの裏面に可動接点を有する。前記押圧操作部38A(38B)は、前記被押圧部34A(34B)が前記回転中心軸Xに沿う方向に押圧されることにより同方向に変位して対応するラバースイッチ16A(16B)の可動部16a(16b)を押圧し、その裏面の可動接点を回路基板12の表面上の固定接点と接触させて検出信号を発生させる。
【0029】
なお、ラバーシート16がない場合は、回路基板12上に直接、押圧検出部を構成するスイッチ素子を実装すればよい。
【0030】
前記照明用光源40は、例えばLEDからなり、前記ロータリエンコーダ20の内側の領域(より具体的にはロータリエンコーダ20の固定部22の内周面で囲まれた領域ょ内で前記回路基板12上に実装され、前記押圧操作部材30(この実施の形態では両分割操作部材32A,32B)の被押圧板34A,34Bを照明するための光を発する。
【0031】
なお、被押圧板34A,34Bの照明部位は、適宜設定可能である。例えば、当該被押圧板34A,34B全体が透明材または半透明材で構成されて照明対象部位とされてもよいし、当該被押圧部34A,34Bの一部が文字や図形といった形態で照明対象部位に設定されてもよい。
【0032】
前記導光体50は、前記照明用光源40の発する光を前記両分割操作部材32A,32Bに導く導光部材として機能すると同時に、両分割操作部材32A,32Bをその押圧操作方向(回転中心軸Xと平行な方向)にスライド可能に保持する保持部材としても機能するものである。
【0033】
この導光体50は、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂といった導光性を有する導光材により成形される。さらに好ましくは、例えば乳白色に着色される等して光拡散機能が与えられている。具体的に、この導光体50は、互いにつながる第1導光部51及び第2導光部52を有する形状に成形されている。
【0034】
前記第1導光部51は、前記ロータリエンコーダ20の内径よりも僅かに小さい外径を有する略円柱状をなし、当該ロータリエンコーダ20の内側に固定される。この実施の形態では、当該第1導光部51の外周面上に図2に示すような複数の被係止突起53が形成され、これらの被係止突起53が前記ロータリエンコーダ20の内周面に形成された複数の係止部とそれぞれ係合されることにより、当該第1導光部51が当該ロータリエンコーダ20に固定される。
【0035】
なお、本発明において「ロータリエンコーダの内側に固定される第1導光部」とは、当該第1導光部がロータリエンコーダの内側の位置する状態で固定されることを意味するものであって、必ずしも第1導光部がロータリエンコーダに直接連結される必要はない。例えば当該第1導光部は回路基板12側に連結されてもよい。
【0036】
前記第2導光部52は、前記ロータリエンコーダ20の前端よりも前記被押圧板34A,34Bに近い位置、すなわち、前記ロータリエンコーダ20と前記被押圧板34A,34Bとの間に位置し、前記ロータリエンコーダ20の内径よりも大きな外径を有する。この第2導光部52の具体的な形状については、後に詳述する。
【0037】
前記回転操作リング60は、前記押圧操作部材30を構成する両分割操作部材32A,32Bの被押圧板34A,34Bの周囲に設けられ、前記回転中心軸Xと同じ中心軸回りに回転操作を受ける。
【0038】
この実施の形態に係る回転操作リング60は、前側環状部62とその後ろ側の周壁64とを一体に有する。前記前側環状部62は、両被押圧板34A,34Bの外周面の近傍に位置する前端を有し、かつ、この前端から後方に向かうに従って拡径する円錐台状をなす。前記周壁64は、この前側環状部62の後端から一定の径を維持して後方に延び、前記導光体50の第2導光部52を囲む。この前記周壁64の特定部位(周壁64の一部、全部のいずれでもよい。)には、前記被押圧板34A,34Bと同様に、前記照明用光源40の発する光により照明されるべき照明対象部位が設定されている。
【0039】
前記連結部材70は、図5に示すように、前記導光体50の径方向の外側に位置しながら、前記回転操作リング60と前記ロータリエンコーダ20の回転部24とをこれらが一体に回転するように連結する形状を有する。具体的に、この実施の形態に係る連結部材70は、エンコーダ側固定壁72と、リング保持壁74と、径方向連結壁76とを一体に有する。
【0040】
エンコーダ側固定壁72は円筒状をなし、前記回転部24の外側に嵌合可能な内径をもつ。そして、その嵌合状態で当該回転部24と一体に回転するように当該回転部24に連結される。
【0041】
リング保持壁74は、同じく円筒状をなし、前記第2導光部52と前記回転操作リング60の周壁64との間に位置しながら、当該周壁64をその径方向内側から保持する。具体的に、前記周壁64の後端には図3に示すような径方向に撓み可能な形状をもつ舌片66が形成され、この舌片66にこれを厚み方向(回転操作リング60の径方向)に貫通する被係止用孔66aが形成される一方、前記リング保持壁74の外周面には前記被係止用孔66aに嵌り込んでこれを係止する係止用突起73(図1)が形成されている。この係止により、前記リング保持壁74を含む連結部材70と前記周壁64を含む回転操作リング60とが一体に回転するように相互連結される。
【0042】
なお、前記リング保持壁74の外周面と前記周壁64の内周面との間には、両者の寸法交差を吸収するための隙間が確保される。しかし、この隙間は微小であって前記両面は互いに沿いながら近接した状態に保たれる。
【0043】
次に、前記導光体50における第2導光部52の具体的な形状及びこれを利用した照明機構及び両分割操作部材32A,32Bの保持構造について説明する。
【0044】
(A)照明機構について
前記第2導光部52は、前記周壁64の照明対象部位と前記両分割操作部材34A,34Bの照明対象部位との双方に照明用光源40からの光を導くべく、径方向突出部であるフランジ部54Rと、上下一対の軸方向突出部54A,54Bとを有する。
【0045】
前記フランジ部54Rは、前記ロータリエンコーダ20の最大外径部分(この実施の形態ではフランジ部22a)の外周面よりもさらにその径方向外側に全周にわたり突出し、前記周壁64の照明対象部位に指向する。具体的に、このフランジ部54Rは、円筒状の外周面を有し、この外周面が前記連結部材70のリング保持壁74の内周面に適当な隙間をおいて全周にわたり径方向に対向するように配置される。また、第2導光部52の中央部には回路基板12側に向かって凹む向きの凹面57が形成される。この凹面57は、前記照明用光源40からの光を径方向外側に反射して前記フランジ部54Rへの誘導を促進する反射面を構成する。
【0046】
一方、当該連結部材70のリング保持壁74は、前記導光体50と同様に導光材で構成され、さらに光拡散機能を有する。この導光材により形成される部分は、リング保持壁74のみでもよいし、連結部材70全体でもよい。前者の場合、例えばリング保持壁74を構成する導光材の部分とその他の部分(遮光性を有する部分)とが互いに異なる材料で二色成形されてもよい。
【0047】
前記両軸方向突出部54A,54Bは、前記フランジ部54Rの外周端すなわちその円筒状外周面よりも径方向内側の位置(この実施の形態では前記凹面57の周縁の位置)で当該フランジ部54Rよりも前記両被押圧板34A,34B側(すなわち軸方向の前側)に突出する。この実施の形態では、前記両軸方向突出部54A,54Bは直方体状をなし、その前端面が前記各被押圧板34A,34Bの裏面に近接する。
【0048】
(B)保持構造について
前記第2導光部52は、前記第1導光部51の外周面よりも外側の位置に前記各分割操作部材32A,32Bを保持するための保持部を有する。具体的には、前記フランジ部54Rの外周縁に近接する領域において、前記第1分割操作部材32Aの左右の被保持部35A,36Aにそれぞれ対応する位置にそれぞれ左右の保持用筒部55A,56Aを有するとともに、前記第2分割操作部材32Bの左右の被保持部35B,36Bにそれぞれ対応する位置にそれぞれ左右の保持用筒部55B,56Bを有する。各保持用筒部55A,56A,55B,56Bは、前記フランジ部54Rを軸方向すなわち前記押圧操作方向と平行な方向に貫通する保持用孔を囲み、各保持用孔は、対応する被保持部35A,36A,35B,36Bの断面形状と合致する形状、つまり、当該被保持部35A,36A,35B,36Bが前記各保持用筒部55A,56A,55B,56Bの内周面に対して摺動可能となるように当該筒部内に挿通されるのを許容する形状を有する。
【0049】
なお、本発明に係る押圧操作部材は、単一の部材からなるもの、例えば前記両分割操作部材32A,32Bの被押圧板34A,34B同士を合体させた円形状の被押圧板を有するものでもよいし、逆に3以上の分割操作部材に分割されたものでもよい。後者の場合も、第2導光部が各分割操作部材を保持する保持部を複数の位置にそれぞれ有することで、これらの分割操作部材を一括して保持することが可能である。
【0050】
一方、前記導光体50は、前記第1導光部51及び前記第2導光部52を前記各分割操作部材32A,32Bの押圧操作部38A,38Bがそれぞれ貫通するのを許容する軸方向の貫通孔58A,58Bを有する。すなわち、前記各押圧操作部38A,38Bは、前記各貫通孔58A,58Bを通じて前記回路基板12上のラバースイッチ16A,16Bを押圧操作することが許容されている。
【0051】
次に、この複合操作装置の作用を説明する。
【0052】
1)押圧操作について
この複合操作装置では、分割操作部材32A,32Bのいずれが押圧操作されても、その押圧操作が個別に検出される。例えば第1分割操作部材32Aの被押圧板34Aが押圧されると、当該第1分割操作部材32Aの被保持部35A,36Aが第2導光部52の保持用筒部55A,56Aの内周面に対して摺動しながら、第1分割操作部材32A全体がその押圧操作方向と平行な方向にスライドし、当該第1分割操作部材32Aの押圧操作部38Aがラバースイッチ16Aの可動部16aを押圧してその裏面の可動接点を回路基板12上の固定接点に接触させることにより、押圧検出信号を出力させる。
【0053】
2)回転操作について
この複合操作装置では、前記分割操作部材32A,32Bの周囲に設けられる回転操作リング60の回転操作も検出される。具体的に、この回転操作リング60が指等により把持されて左右いずれかの方向に回転操作されると、この回転操作リング60と一体に連結部材70さらにはロータリエンコーダ20の回転部24が同方向に回転し、その回転操作方向及び回転操作量に相当する検出信号をロータリエンコーダ20が出力する。このロータリエンコーダ20は前記回転操作リング60よりもかなり小径であるが、この回転操作リング60と前記ロータリエンコーダ20の回転部24とを連結する連結部材70が当該ロータリエンコーダ20による回転操作の検出を可能にする。
【0054】
3)各操作部材の照明について
前記ロータリエンコーダ20の内側に設けられる照明用光源40の発する光(照明光)は、同じくロータリエンコーダ20の内側に設けられる第1導光部51に入射し、さらにこの第1導光部51からそれよりも大径の第2導光部52に拡がる。
【0055】
この照明光は、前記第2導光部52の軸方向突出部54A,54Rからその前端面に近接する押圧操作部材30の各分割操作部材32A,32Bの被押圧板34A,34Bに向けて照射されることにより、これらの被押圧板34A,34Bの裏側からの照明に寄与するとともに、前記第2導光部52のフランジ部54Rの外周面から前記連結部材70のリング保持壁74に入射し、このリング保持壁74内で拡散することにより、当該リング保持壁74に対してその径方向外側に近接する回転操作リング60の周壁64の照明に寄与する。特に、第2導光部52が図示の凹面57のような反射面を含む場合、この反射面は前記第1導光部51からの光を径方向外側に反射することで前記各照明の促進に寄与する。
【0056】
従って、この複合操作装置によれば、前記第1導光部51及び前記第2導光部52をもつ導光体50が、照明用光源40から発せられる光を押圧操作部材30(第1分割操作部材32A及び第2分割操作部材32B)に伝達する導光用部材と、当該押圧操作部材30をその押圧操作方向にスライド可能に保持する保持部材の双方の部材として機能することにより、回転操作検出手段として小径のロータリエンコーダ20を用いながら当該ロータリエンコーダ20よりも外径の大きな押圧操作部材30をその裏側から良好に照明することを可能にする。
【0057】
すなわち、前記導光体50は、前記ロータリエンコーダ20の内側に設けられる第1導光部51と、この第1導光部51よりも前側の位置で各分割操作部材32A,32Bの被押圧板34A,34Bと回転操作リング60の周壁64とにそれぞれ指向する形状の第2導光部52とを有することにより、当該被押圧板34A,34Bおよび当該周壁64の安定した照明に寄与することができる。その一方、この導光体50自身が前記各分割操作部材32A,32を保持する保持部(保持用筒部55A,56A,55B,56B)を有することで、例えば前記図11に示した従来の複合操作装置のケース102のような押圧操作部材保持専用の部材が前記ロータリエンコーダ20の内側に設けられる必要がなくなる。つまり、ロータリエンコーダ20の内側に導光体50の第1導光部51以外の部材を敢えて装填する必要がないため、当該ロータリエンコーダ20に小径のものを用いながら、回転操作リング60の回転検出と分割操作部材32A,32Bの押圧操作の双方を同時実現することができる。
【0058】
さらに、この第1の実施の形態では、ロータリエンコーダ20の回転部24と回転操作リング60の周壁64とを連結するための連結部材70が、当該周壁64をその径方向内側から支持するリング保持壁74を有し、少なくともこのリング保持壁74が光拡散機能を有する導光材により構成されるため、当該連結部材70の利用により周壁64のさらなる安定した照明を行うことが可能である。すなわち、このリング保持壁74は、前記周壁64に沿いながらその内周面に近接する形状を有するとともに、当該周壁64と一体に回転するものであるから、このリング保持壁74に光拡散機能を与えて当該リング保持壁74に照明用光源40からの光を導くことが、周壁64の特定部位(一部または全部)の安定した照明を可能にする。
【0059】
ただし、本発明は必ずしも回転操作リングの周壁が照明対象であるものに限られない。また当該周壁が照明対象であっても、当該周壁と第2導光部の径方向突出部(図1〜図6ではフランジ部54R)との間に連結部材のリング保持壁が介在するものに限られず、例えば当該周壁に直接、前記第2導光部の径方向突出部が対向するものであってもよい。その例を第2の実施の形態として図7〜図10に示す。
【0060】
この第2の実施の形態に係る複合操作装置は、前記第1の実施の形態と同様、ロータリエンコーダ20、押圧操作部材30(第1分割操作部材32A及び第2分割操作部材32B)、照明用光源40、導光体50、回転操作リング60、及び連結部材70を有する。そして、回転操作リング60は周壁64を有し、この周壁64の前端側部分及び前側環状部62にまたがって照明対象部位68が設定される一方、連結部材70はエンコーダ側固定壁72、リング保持壁74、及び径方向連結壁76を有する。
【0061】
しかし、リング保持壁74の軸方向寸法は短く、当該リング保持壁74が前記周壁64に対向する部位は当該周壁64の後端部のみであり、前記照明対象部位68に対しては導光体50の径方向突出部であるフランジ部54Rの外周部分が直接的に近接している。この外周部分には、前記照明対象部位68に対して斜め前方の向きに照明光を照射するための傾斜面54sが形成されている。
【0062】
このように、本発明に係る導光体の第2導光部の形状は、照明対象部位の位置及び面積に応じて適宜設定されればよい。いずれの場合も、この導光体は、ロータリエンコーダの内側の照明用光源から前記照明対象部位へ照明光を導く導光材料として機能するのと同時に、押圧操作部材をその押圧操作方向にスライド可能に保持する保持部材として機能することで、回転操作リングの回転操作の検出のために小型のロータリエンコーダを用いながら大径の押圧操作部材の照明を行うことを可能にする。
【0063】
また、本発明に係る「押圧操作部」は、導光体により保持される被保持部を兼ねることができる。具体的に、図7〜図10に示す押圧操作部38A,38Bは、導光体50側に設けられた貫通孔に挿通されるのに加え、この貫通孔を囲む導光体50の内周面と摺動可能となるように当該貫通孔内に嵌合されることで、導光体50にスライド可能に保持される機能を併せもつ。
【符号の説明】
【0064】
X 回転中心軸
12 回路基板
16A,16B ラバースイッチ(押圧検出部)
20 ロータリエンコーダ
22 固定部
22a フランジ部
24 回転部
30 押圧操作部材
32A 第1分割操作部材
32B 第2分割操作部材
34A,34B 被押圧板
35A,35B,36A,36B 被保持部
38A,38B 押圧操作部
40 照明用光源
50 導光体
51 第1導光部
52 第2導光部
54A,54B 軸方向突出部
54R フランジ部(径方向突出部)
54s 傾斜面
55A,55B,56A,56B 保持用筒部
57 凹面(反射面)
58A,58B 貫通孔
60 回転操作リング
64 周壁
68 照明対象部位
70 連結部材
72 エンコーダ側固定壁
74 リング保持壁
76 径方向連結壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上に設けられ、押圧操作と回転操作を受けることが可能であるとともに照明機能を有する複合操作装置であって、
前記回路基板上に固定される固定部及びこの固定部に対して特定の回転中心軸回りに回転可能な回転部を有し、その回転中心軸に沿う方向に開口する筒状をなすとともに、前記回転部の回転量に相当する信号を出力するロータリエンコーダと、
このロータリエンコーダの最大外径よりも大きな外径をもつ被押圧部とこの被押圧部から前記ロータリエンコーダの内側を通って前記回路基板側に延びる押圧操作部とを有し、前記被押圧部が前記回転中心軸に沿う方向に押圧されることにより同方向に変位して前記押圧操作部が前記回路基板上の押圧検出部を押圧する押圧操作部材と、
前記ロータリエンコーダの内側の領域内で前記回路基板上に設けられ、前記押圧操作部材の押圧操作部を照明するための光を発する照明用光源と、
この照明用光源が発する光を前記押圧操作部材へ導く導光体と、
前記押圧操作部材の押圧操作部の周囲に設けられる回転操作リングと、
前記導光体の外側に位置して前記回転操作リングと前記ロータリエンコーダの回転部とをこれらが一体に回転するように連結する連結部材とを備え、
前記導光体は、前記ロータリエンコーダの内径よりも小さい外径を有して当該ロータリエンコーダの内側に固定される第1導光部と、前記ロータリエンコーダの内径よりも大きな外径を有するとともに前記ロータリエンコーダと前記押圧操作部材の被押圧部との間に位置して前記第1導光部とつながる第2導光部とを有するとともに、前記押圧操作部材を当該押圧操作部材がその押圧操作方向にスライド可能となるように保持する保持部と、前記第1導光部及び前記第2導光部を前記押圧操作部が貫通するのを許容する貫通孔とを有することを特徴とする照明機能を有する複合操作装置。
【請求項2】
請求項1記載の照明機能を有する複合操作装置において、
前記導光体は、前記第2導光部のうち前記第1導光部の外周面よりも外側の部分に前記保持部を有することを特徴とする照明機能を有する複合操作装置。
【請求項3】
請求項2記載の照明機能を有する複合操作装置において、
前記第2導光部は、この第2導光部を前記第1導光部の外周面よりも外側の位置で前記押圧操作方向と平行な方向に貫通する保持用孔を囲む筒部を有し、前記押圧操作部材は、その被押圧部から前記押圧操作方向と平行な方向に沿って回路基板側に向かって突出する被保持部を有し、この被保持部が前記筒部の内周面に対して摺動可能となるように当該筒部内に挿通されることを特徴とする照明機能を有する複合操作装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の照明機能を有する複合操作装置において、
前記押圧操作部材は、その押圧操作方向と直交する方向に並ぶ複数の分割操作部材に分割され、前記第2導光部は、各分割操作部材を保持する保持部を複数の位置にそれぞれ有することを特徴とする照明機能を有する複合操作装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の照明機能を有する複合操作装置において、
前記回転操作リングは、前記導光体の第2導光部を囲む周壁を有し、この周壁に前記照明用光源により照明される照明対象部位が設定され、前記第2導光部は、前記ロータリエンコーダの外周面よりもその径方向外側に突出して前記周壁に指向する径方向突出部を有することを特徴とする照明機能を有する複合操作装置。
【請求項6】
請求項5記載の照明機能を有する複合操作装置において、
前記連結部材は、前記回転操作リングの周壁の内側に位置して当該周壁を保持するリング保持壁を有し、このリング保持壁は、前記周壁の内側面に沿いながら当該内側面に近接する形状の外周面を有し、少なくともこのリング保持壁が光拡散機能をもつ材料により形成され、このリング保持壁に前記第2導光部の径方向突出部が指向することを特徴とする照明機能を有する複合操作装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の照明機能を有する複合操作装置において、
前記第2導光部は、前記径方向突出部の外周端よりも径方向内側の位置で当該径方向突出部よりも前記押圧操作部材の被押圧部側に突出する軸方向突出部をさらに有することを特徴とする照明機能を有する複合操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−124190(P2011−124190A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283340(P2009−283340)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】