説明

照明灯用光透過散光フィルター

【課題】 LEDなど点光源または冷陰極菅など線状光源の光源イメージを高透過率で、散光消失させる光透過散光フィルターまたは照明カバーを得ること。
【解決手段】 LEDなど点光源または冷陰極菅など線状光源の光源イメージを、石英ガラス微粒子と光拡散剤を透光性樹脂に均一分散させて形成する光透過散光フィルターに透過させることで散光消失させ、光透過散光フィルターまたは該光透過散光フィルターを照明カバーとして一体的に形成し、該石英ガラス微粒子の粒径が平均粒径1〜30μm程度とその含有量を重量比0.01〜5%とその内部に不純物成分を酸化物換算0.01〜2質量%を含有させ、また石英ガラス微粒子の外表面に蛍光体または赤色染料等の着色剤を添着させ、さらに光拡散剤の含有を重量比0.01〜2%とし、加えて光透過散光フィルターの光源側内面にV字状または曲面形状などの所定形状で内角が70〜120°の溝部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(発光ダイオード)を多数配設した発光型モジュール照明の、その点状光源の光源イメージを散光消失させる分散光と、また電球色など照明色イメージの変更と、光源の指向性の変更と、照明カバーと組み合わせて散光させる照明灯用の光透過散光フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のLEDを利用した直菅型の蛍光灯タイプの照明器具は、消費電力低減と長寿命を実現したことで市販され、該LEDの点状光源を散光させる目的で、該照明カバーに溝を形成して、該点状光源が直菅の周方向にリング状に見えるように散光させた照明器具と、また該LEDの点状光源をそのまま透過させて明るさを追求した多数の点状光源の照明として使用する照明器具が販売されている。
【0003】
また他の例として、その点状光源の光源イメージを散光消失させる目的で、半透過の拡散剤を照明カバーに導入して散光し、乳白色蛍光灯タイプの照明器具として販売されている。
【0004】
さらに、先行技術の先願例として「導光板」があり、その例示される導光板3は外径が5〜50μmの石英粒子1を0.15〜0.25重量%と、外径が5〜25μmの炭酸カルシウム粒子2を0.01〜0.05重量%をそれぞれ散在配合し、該石英粒子1は、入射光の一部を表面で散乱反射させると共に入射光の一部を内部に導入して屈折放出し、炭酸カルシウム粒子2は、入射光の全部を表面で散乱反射せることで、該導光板3の側面の基端面から光源5の光を導入して、前面から光が外部に放出される該光の輝度ムラを押さえ、且つ輝度を向上させるとしている。(例えば、特許文献1参照)
【0005】
加えて、先願例として「照明装置」があり、該照明装置は、複数のLED211からなるLEDモジュール212から照射された光を拡散させる拡散ガイド部214とそのカバー215で構成しており、該照明装置200の両端のLEDモジュール212から光を照射させ、該光を拡散ガイド部214の凹溝218で屈折させて拡散させ、また、拡散ガイド部214を介して放出された光が、前記カバー2 1 5の内側面にコーティング形成された蛍光体で白色光として外部に導出するとしている。(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−215005号公報
【特許文献2】特開2007−149668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、市販されるLEDを利用した直菅型で蛍光灯タイプの照明器具は、LEDの点状光源の光源イメージを散光消失させる目的で、照明カバーの内面に溝を形成して、該溝部で点状光源を屈折拡散させ、LEDの点状光源の該光源イメージを散光させているが、散光率が低くギラギラとした刺激的光となり、目に対する負荷が大きく、また眩しさが残り蛍光灯のようなソフトな明かりとならず、よって眩しさの改善と目に対する負荷が小さな照明が求められていた。
【0008】
また、発光型モジュール照明の該カバーに光拡散剤を導入して散光する乳白色蛍光灯タイプの照明器具は、高拡散でソフトな明かりを得ることができる一方で、光透過率が50〜60%程度で光透過損失が大きく十分な照度が得られないところから、エネルギー効率の悪い照明となり、よって高透過でエネルギー効率が良く、且つ目に優しいソフトな明かりが得られる照明が求められていた。
【0009】
さらに、発光型モジュール照明は、照明色がLED特有の白色系で、電球色など演色性の改善は、照明カバーに導入しての対応であったが、上述のごとく光透過損失が大きく照度が落ちるという欠点があり、その照度が落ちることなく電球色など演色性の改善ができる照明が求められていた。
【0010】
加えて、発光型モジュール照明器具を天井に取り付ける時は、光束を下方向に集中させ、明るさとエネルギー効率を上げ、該照明器具を壁側に取り付ける場合は、光束を壁面から広角に照らすことで壁面より前の全体を明るく、且つ目に対する光量を和らげることができる照明器具の提案が無く、高拡散で光の透過損失が少ない発光型モジュール照明器具用のフィルターまたは照明カバーなどで使用状況に合わせて、照射角度を調整できるような照明が長く待たれていた。
【0011】
さらに加えて、上述のような高拡散のソフトな光で、透過損失が少なくエネルギー効率良い、電球色など演色性の改善ができる照明を使用状況に合わせて、適宜独立したフィルターとして、また照明灯用のカバーと一体として容易に形成できる照明器具が長く待たれていた。
【0012】
また、開示される特許文献1の導光板は、該導光板3の基端面から光源5の光を導入して、前面から光が外部に放出される該光の輝度ムラを石英粒子1で押さえ、且つ輝度を向上させるもので、前面から光を均一面発光で、且つ輝度を上げるとすることから、側面からの光を均一に分散させる必要があり、よって光源5近傍と最も遠い中央付近での光量を調節して均一面発光を解決することであり、導光板3の面全体を通して光が均一に透過する構成でなく、側面からの光に対応するものであった。
【0013】
またそれは、光源5近傍と最も遠い中央付近での光量の分散で、光源5近傍では、分散を少なく、最も遠い中央付近で分散を大きくする必要があり、その側面近傍と中央近傍との分散領域の分散率の違いから、全面平均に照射される光の平均分散はできず、そのことは点状光源の該光源イメージを散光消失させると言う目的が達成できず、よって面を透過して光源イメージを散光消失させる分散光が得られるものが求められていた。
【0014】
さらに、特許文献2の照明装置は、上述の導光板と略同様に側面からの照射で、該側面のLEDモジュール212から照射された光を拡散させる拡散ガイド部214とそのカバー215で構成しており、該拡散ガイド部214の凹溝218で屈折させて拡散させ、また、拡散ガイド部214を介して放出された光が、前記カバー2 1 5の内側面にコーティング形成された蛍光体で白色光させていることから、上述と同様に光源近傍と中央付近の照度を均一にする必要があるが、凹溝218だけではその均一が図れず、よって面を透過して光源イメージを散光消失させる分散光が得られるものが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を有効に達成するために、第1の解決手段として、LEDなど点状光源または冷陰極菅など線状光源の照明灯であって、その該光源の光が光透過散光フィルターを透過することで光源イメージを散光消失できるように、石英ガラス微粒子と二酸化チタン、シリカ、カルシウム等の光拡散材を透光性樹脂に均一分散させた光透過散光フィルターとして形成したことで、
LEDの点状光源の光源イメージを散光消失させる事としている。
【0016】
また、第2の解決手段として、石英ガラス微粒子の粒径を平均粒径1〜30μm程度で、その含有量を重量比0.01〜5%とし、また二酸化チタン、シリカ、カルシウム等の光拡散材の含有を重量比0.01〜2%としたことで、
LEDの点状光源の光源イメージを細分化して散光消失させる事としている。
【0017】
また、第3の解決手段として、石英ガラス微粒子の内部で散光できるように、該石英ガラス微粒子に不純物成分のAl、TiO、Fe、Nb、ZrO、MnO及びMoO等、少なくとも一種の金属元素を含む成分を含有させ、該石英ガラス微粒子全体を100質量%としたとき各元素の酸化物換算で0.01〜2質量%としたことで、
LEDの点状光源の光源イメージを石英ガラス微粒子の内部でも散光消失させる事としている。
【0018】
また、第4の解決手段として、透光性樹脂に均一分する石英ガラス微粒子の外表面または透光性樹脂またはその双方に、赤色等の染料若しくは顔料の着色材若しくは蛍光体を含む着色材またはそれらを組み合わせた演色性改善材を、石英ガラス微粒子には添着を、透光性樹脂には分散したことで、
電球色など演色性の改善する事としている。
【0019】
また、第5の解決手段として、光透過散光フィルターとLEDモジュールを有する直菅または環状などの蛍光菅状照明灯などのカバー部とを一体的に形成して光透過散光カバーとし若しくは透明カバーの内側に光透過散光フィルターを設けたことで、
光透過散光フィルターを蛍光灯と一体の照明灯またはその照明カバーとする事としている。
【0020】
また、第6の解決手段として、照明光の照射角を変更可能なように、光透過散光フィルターまたは光透過散光カバーの光源側にV字状または曲面形状などの所定形状で、内角が略70〜120°程度の所要角度の溝部を長手方向に多数形成したことで、
照明光を広角及び狭角など照明光の照射角を変更可能する事としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上述したそれぞれの手段によって有効な効果が得られるようにしたもので、特に、LEDなど点状光源または冷陰極菅など線状光源の照明灯であって、その該光源の光が光透過散光フィルターを透過することで光源イメージを散光消失できるように、石英ガラス微粒子と二酸化チタン、シリカ、カルシウム等の光拡散材を透光性樹脂に均一分散させた光透過散光フィルターとして形成した第1の解決手段により、
光が透光性樹脂を透過するとき、その一部が石英ガラス微粒子の中を透過することで光が屈曲及び該表面で反射すると共に各石英ガラス微粒子間同士の表面で乱反射し、また二酸化チタン、シリカ、カルシウム等の光拡散材の表面で反射すると共に各光拡散材間同士の表面で乱反射することから、石英ガラス微粒子を光が透過と散光することで透過率の高い散光が得られ、また該石英ガラス微粒子の持つ透過と散光と光拡散材の持つ散光の相乗効果が得られることから、従来の光学では、相反するテーマである高透過、高拡散が達成でき、そのことによりエネルギー効率の良い透過光が得られ、且つ散光による眩しさの改善と目に対する負荷の小さいソフトな照明が得られる。
【0022】
また、その散光は、従来のような多角面レンズを使用した多角面反射ではないので、その光に微妙な陰(反射光による光の強弱でできる弱い陰影)が出ないことから照射面の照度分布が良く、よって陰影の出ない光源として、印刷仕上がりの正確な配色チェックなど検査用の照明、また汎用コピー・スキャナ用光源及び製品検査用スキャナ光源などに使用でき、さらに蛍光灯などに比較して省エネで長寿命の光源として使用できるので、コストダウンとなる。
【0023】
さらに、石英ガラス微粒子の粒径を球状としていることで、透光性樹脂に分散含有させたときの流動性が良くなり、よって成型性も良く、また石英は比熱容量が大きいため、放熱特性が良く、石英成分を含有しない場合に比べて、光透過散光フィルター及び照明カバー全体の温度をより低く保つことができ、放熱特性を向上させることができる。
【0024】
加えて、光透過散光フィルターの石英ガラス微粒子の粒径を平均粒径1〜30μm程度で、その含有量を重量比0.01〜5%とし、また二酸化チタン、シリカ、カルシウム等の光拡散材の含有を重量比0.01〜2%とした第2の解決手段により、
石英ガラス微粒子は、該微粒子の内部透過及び表面反射による無数の散光と該微粒子間同士の乱反射で、損失が小さく効率よく散光でき、また光拡散材の表面の乱反射により、透光性樹脂が薄い乳白となると共に透過する光の透過率と散光率の高い理想的な散光が得られ、エネルギー効率が良く、且つ眩しさの改善と目に対する負荷の小さい目に優しいソフトな明かりを得ることができ、最適な照明となる。
【0025】
さらに加えて、石英ガラス微粒子の内部で散光できるように、該石英ガラス微粒子に不純物成分のAl、TiO、Fe、Nb、ZrO、MnO及びMoO等、少なくとも一種の金属元素を含む成分を含有させ、該石英ガラス微粒子全体を100質量%としたとき各元素の酸化物換算で0.01〜2質量%とした第3の解決手段により、
石英ガラス微粒子の内部を透過する光が散光及び屈曲するので、石英ガラス微粒子の内部を単純に透過するだけでなく散光されることでさらに効率よく透過光も散光でき、ここから従来の乳白の半円柱照明カバーと本発明の光透過散光フィルターを比較実験すると、従来の透明の半円柱照明カバーを透過した照度を100%としたとき、従来品の照度が55%程度に対して、本発明の照度は、97%と大変良好であった。
【0026】
さらにまた、透光性樹脂に均一分する石英ガラス微粒子の外表面または透光性樹脂またはその双方に、赤色等の染料若しくは顔料の着色材若しくは蛍光体を含む着色材またはそれらを組み合わせた演色性改善材を、石英ガラス微粒子には添着を、透光性樹脂には分散した第4の解決手段により、
石英ガラス微粒子の外表面にLEDの白色系の光が照射されると、該光が着色石英ガラス微粒子の表面反射及び透過によって、該微粒子表面の赤色系染料等の着色材で、赤色系の電球色光が得られ、また緑色系の着色材と合わせることで、高価な三波長のLEDを用いることなく、演色性をさらに向上させることができ、また該微粒子表面に蛍光体を添着することで、該微粒子表面の蛍光体が光を受けると、励起発光して演色性の改善ができ、それぞれの演色性改善材により、使用場所に適した演色性の改善が可能となり、使用場所に適した照明が比較的安価に得られることから、部屋の利用形態に合わせて電球色または白色とし、また店舗などでは肉、野菜など食品の自然色若しくは見た目の配色がより自然色に改善できるよう演色し、さらに印刷、塗装の配色検査などに使用する照明に合わせて演色性の改善ができる。
【0027】
さらに加えて、光透過散光フィルターとLEDモジュールを有する直菅または環状などの蛍光菅状照明灯などのカバー部とを一体的に形成して光透過散光カバーとし若しくは透明カバーの内側に光透過散光フィルターを設けた第5の解決手段により、
従来の蛍光菅の代わりとしてそのまま蛍光菅の器具に取り付け使用できることで、従来の蛍光菅のように散光された、目に優しいソフトな明かりを得る照明灯とすることができ、そしてそれはLED特有の長寿命でエネルギー効率が良い省エネと言う特性が得られ、さらに従来の透明カバーの内側に光透過散光フィルターを設けることで、高透過、高散光の照明光が得られ、適宜各照明器具に対応することができる最適な照明に変更して使用できる。
【0028】
加えてまた、照明光の照射角を変更可能なように、光透過散光フィルターまたは光透過散光カバーの光源側にV字状または曲面形状などの所定形状で、内角が略70〜120°程度の所要角度の溝部を長手方向に多数形成した第6の解決手段により、
照明器具の使用場所に合わせて、天井取付け用の照明器具は、光束を下方向に集中させて明るく照らし、壁面取付け用の照明器具は、光束を壁面から広角に照らすことで壁面より前面の全体を照らす照明として照射角度を調整できることから、部屋の使用状況に合わせた照度及びエネルギー効率の良い照明が得られる。
よって、これらのことから本発明は、実用上著大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】 本発明の光透過散光フィルター1の要部で、不純物を含有する石英ガラス微粒子3と光拡散材4の分散イメージを表わした想像図である。
【図2】 本発明の他の光透過散光フィルター1の要部で、演色性改善材6を添着した石英ガラス微粒子3と光拡散材4の分散イメージを表わした想像図である。
【図3】 石英ガラス微粒子3の不純物成分5と演色性改善材6の添着イメージを表わした想像図である。
【図4】 他の石英ガラス微粒子3の不純物成分5と演色性改善材6の添着イメージを表わした想像図である。
【図5】 その他の石英ガラス微粒子3の不純物成分5と演色性改善材6の添着イメージを表わした想像図である。
【図6】 本発明の実施例の光透過散光フィルター1の使用状態を表わす斜視図である。
【図7】 本発明の他の光透過散光フィルター1aの要部で、不純物成分5を含有する石英ガラス微粒子3と光拡散材4の光束の散光イメージを表わした想像図である。
【図8】 本発明の他の実施例の照明菅12の一部を略した部分断面の斜視図である。
【図9】 照明菅12aの光束の照射角の狭角イメージを表わした断面図である。
【図10】 照明菅12bの光束の照射角の広角イメージを表わした断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
石英ガラス微粒子と光拡散材を透光性樹脂に均一分散させた光透過散光フィルターに、LEDなど点状光源または冷陰極菅など線状光源の光を透過させることで、その光源イメージを散光消失する光透過散光フィルターまたは該光透過散光フィルターを照明カバーとして一体的に形成し、該石英ガラス微粒子の粒径を平均粒径1〜30μm程度とその含有量を重量比0.01〜5%と、その内部に不純物成分を酸化物換算0.01〜2質量%を含有させ、また石英ガラス微粒子の外表面に蛍光体または赤色染料等の着色材の演色性改善材を添着させ、さらに透光性樹脂に分散含有される光拡散材の該含有を重量比0.01〜2%とし、加えて光透過散光フィルターの光源側にV字状または曲面形状などの所定形状で、内角が70〜120°の溝部を形成することで照らす照射角度を狭角及び広角に調整し、このようにしたことからLEDなど点状光源または冷陰極菅など線状光源の光源イメージを高透過率で、散光消失させると共に電球色など演色性の改善することで、使用場所及び使用目的にそれぞれ適宜対応させた照明が得られる光透過散光フィルターまたは照明カバーを実現した。
【実施例】
【0031】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、図1において、1は光透過散光フィルターで、該光透過散光フィルター1は、母材を透明の透光性樹脂2とし、該透光性樹脂2に球状の石英ガラス微粒子3と光拡散材4を均一分散させている。
【0032】
そこで、図1に示す石英ガラス微粒子3は、石英を主成分とする球状の微粒子とし、その内部に不純物成分5を含有させ、該不純物成分5は、Al、Ti、Fe、Nb、Zr、Mn及びMoで、より具体的にはAl、TiO、Fe、Nb、ZrO、MnO及びMoO等が挙げられ、実施例としてアルミナ(Al)5a、二酸化チタン(TiO)5b、酸化鉄(Fe)5cを不純物成分5として含有させている。
【0033】
また、石英ガラス微粒子3内に含有される不純物成分5の割合は特に限定されないが透光効率等から見たとき、石英ガラス微粒子3の全体を100質量%として、各元素の酸化物換算で0.01〜2質量%で、好ましくは0.04〜0.15質量%程度であり、この範囲では透光性と光分散性とを最も効率よく得ることができる。
【0034】
尚、上記不純物成分5の酸化物換算は、AlはAl、TiはTiO、FeはFe2O3、NbはNb、ZrはZrO、MnはMnO、MoはMoOとして換算するもので、また上記含有量は、石英ガラス微粒子3内に複数種の上記元素が含有される場合にはそれらの酸化物換算による合計量である。
【0035】
さらに、石英ガラス微粒子3の大きさ及び形状等は特に限定されないが、平均粒径(最大長さ)は1〜30μmで、より好ましくは4〜5μm程度が好ましく、この範囲では、十分な透光性を確保しつつ、且つ十分な光分散性を得ることができる。
【0036】
加えて、石英ガラス微粒子3の形状は特に限定されないが、上述球状であることで透光性樹脂2に分散含有したときの流動性がよいため、成型作業性がよいという利点があり、また該石英ガラス微粒子3は、300〜950nmの波長の光に対して50%以上(より好ましくは60%)の透光率を有することが好ましい。
【0037】
加えてまた、透光性樹脂2に対する石英ガラス微粒子3の含有量は、特に限定されないが、透光性樹脂2の全体を100質量%とした場合に、0.01〜5質量%(より好ましくは0.01〜0.045質量%)とすることが好ましい。
【0038】
また、上記光拡散材4は、二酸化チタン(TiO)を0.01〜2%重量比で透光性樹脂2に添加することで、該透光性樹脂2自体が白色化して光を散光させ、また該二酸化チタンの他にアルミナ、シリカ、カルシウム等が使用可能である。
【0039】
なお、光拡散材4の二酸化チタン、アルミナ、シリカ、カルシウム等は、使用する透光性樹脂2によって各対応して選ばれ、一例としてアクリル樹脂の成型温度250〜270℃の場合、カルシウム、シリカではその熱に対して変性しないが、ポリカ樹脂の成型温度350〜370℃では、カルシウム、シリカが、その熱により焼けて茶色に変性し、その温度帯での使用は二酸化チタンが最適となり、各その使用する透光性樹脂2によって各対応して選ばれる。
【0040】
而して、光透過散光フィルター1の演色性を改善するため(可視光赤色領域、可視光緑色領域の光を補う)、演色性改善材6を透光性樹脂2内に含有させる事で改善し、またその演色性を改善は、特に好ましくは図2に示すように、石英ガラス微粒子3の表面に演色性改善材6を添着し、該演色性改善材6は、各種染料(直接染料)または顔料を用い、このうち赤色系光が得られる染料(赤色染料)としては、ダイアミン・スカーレット及びアリザリンレッドS等が挙げられ、また緑色系光が得られる染料(緑色染料)としては、オキザミングリーン及びメチルグリーン等が挙げられる。
【0041】
そして該演色性改善材6は、石英ガラス微粒子3の表面に電球色光へ演色する着色剤として赤色染料が添着された赤色系粒子6aが有効で、また緑色染料が添着された緑色系粒子6bとの混合により、三波長LED特性に近づけることが可能で、さらに蛍光体の蛍光粒子6cを添着させることでさらに他の演色性の改善を適宜用途に合わせて使用する。
【0042】
また、演色性改善材6を蛍光体とした蛍光粒子6cは、光を受けた該蛍光体が励起発光することでさらに他の演色性の改善を適宜用途に合わせて使用する。
なお、上述染料または顔料または蛍光体は、透光性樹脂2の材質または演色性の要求条件、使用環境などにより適宜変更して使用される。
【0043】
さらに、その石英ガラス微粒子3の表面に演色性改善材6を添着することに於いて、図3に示すように、石英ガラス微粒子3の表面に演色性改善材6を静電的に添着させた形態を示し、また、図4は、添着材7を介して、石英ガラス微粒子3の表面に演色性改善材6を添着させた形態を示し、さらに図5は、石英ガラス微粒子3の表面に演色性改善材6を添着材7でコーティングして添着させた形態を示している。
なお、これら添着する形態を使用条件等に合わせ適宜変更し、また演色性改善材6は一種のみを用いてもよく二種以上を併用しても好ましい。
【0044】
而して、光透過散光フィルター1を使用する実施例として、図6に示すように、冷陰極菅など線状光源8の透明の照明カバー9に使用し、該照明カバー9と線状光源5との間に光透過散光フィルター1を配置することで、該線状光源8から発する複数の光が光透過散光フィルター1を透過することで散光され、複数光源イメージを消失させてその照明カバー9を透して見たとき、一つの光源として見える。
【0045】
なお、ここで示す線状光源8は、複数の陰極菅など線状光源8または複数の蛍光灯を配列した状態を想定しているが、図示では一本及び二本の想像図形として示し、また該線状光源8の配置数により照明カバー9の形状を図示の略トンネル状から該配置数の形状に合わせ適宜変更して形成されが、変更した図形の図示は省略した。
【0046】
また、光透過散光フィルター1の他の実施例として、図7に示すように、不純物成分5が含有される石英ガラス微粒子3及び光拡散材4を含有する該光透過散光フィルター1aの光源側にV字状で内角が70〜120°(図中、矢視A)の溝部10を長手方向に多数凹凸状に形成し、照明光の使用用途に合った照射角が得られるように、該溝部10のその用途角度に合わせて光を屈折変更可能としている。
【0047】
その照射角度を調整できることから、照明器具の使用用途とその場所に合わせ、例えば天井取付け用の照明器具の場合は、光束を下方向に集中させて下を中心に明るく照らし、また壁面取付け用の照明器具の場合は、光束を壁面から広角に照らすことで壁面より前面の全体を照らす照明として調整でき、より広角又はより狭角(指向性)の視野角で照射することで、使用用途とその場所に合わせて、効率が良く、適正な照明を得ることができる。
【0048】
なお、V字状の溝部10を曲面形状などの所定形状に変更して形成しても良く、また上記内角の70〜120°を使用状況に合わせ、該角度に関わりなく適宜変更しても良いが図示は省略した。
【0049】
而して、図8に示す光透過散光フィルター1と照明カバー9を一体として形成した光透過散光カバー1aの実施例において、直菅型蛍光菅タイプの照明菅12のカバーとして使用し、該照明菅12は、その両端に電源供給するソケット部13を設けると共に内部に基盤14と該基盤14にLED15,15,…を二列に配列して設けられ、該LED15,15,…の正面側に光透過散光カバー1aを、背面側には放熱板16をそれぞれ配設して一体の筒状のカバーとして形成し、そしてLED15,15,…から発する熱を該一体のカバー内から該放熱板16を介して外部に放熱できるように設けられている。
【0050】
そして、図8に示すLED15,15,…が二列に配列された該点状光源を、該光透過散光カバー1aで散光することで、該点状光源の点々と連なる光源イメージを消失させ、該光透過散光カバー1a全体が、従来の蛍光菅のように明るく光り、従来の蛍光菅に代えて照明灯として、LED特有の省電力、長寿命でさらに透過率の高い照明菅として使用する。
【0051】
また、図9で示す他の実施例の照明菅12aのように光透過散光カバー1aaは、上記光透過散光フィルター1と同様で、LED15,15,…の点状光源を散光すると共に光束イメージを矢印で示すように、例えば、小さい所要角度70°程度で形成した溝部10a(70°)により、光を広角に屈折させて照射角を広く拡散させ、光透過散光カバー1aaの外表面から照明光を照射するようにして、壁面灯などに使用して明かりを壁面から全体に拡散させて全体を明るく照らすようにしている。
【0052】
さらに、図10のその他の実施例の照明菅12bのように光透過散光カバー1abは、上述した図9の溝部10aとは逆の広角に屈曲させる溝部10bを形成したもので、例えば、大きい所要角度120°程度で形成した該溝部10b(120°)で、光を狭角に屈折させて照射角を狭く集束させて、光透過散光カバー1aの外表面から照明光を照射するようにして、天井灯などに使用して明かりを集中させて所定方向を明るく照らすようにしている。
【0053】
なお、上記所要角度の例えば70°から120°程度としているが、この範囲にかかわらず必要に応じて変更しても好ましいが、特に図示は省略した。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の照明灯用光透過散光フィルターまたは照明灯のカバー部は、家電製品の照明器具、スキャニング用光源(汎用コピー・スキャナ用光源及び製品検査用スキャナ光源)部品、移動体(自動車、鉄道、船舶、航空機など)照明用部品などとして利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 光透過散光フィルター
2 透光性樹脂
3 石英ガラス微粒子
4 光拡散材
5 不純物成分
5a アルミナ(Al
5b 二酸化チタン(TiO
5c 酸化鉄(Fe
6 演色性改善材
6a 赤色系粒子
6b 緑色系粒子
6c 蛍光粒子
7 添着材
8 線状光源
9 照明カバー
10 溝部
11 光透過散光カバー
12 照明菅
15 LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDなど点状光源または冷陰極菅など線状光源の照明灯であって、その該光源の光が光透過散光フィルターを透過することで光源イメージを散光消失できるように、石英ガラス微粒子と二酸化チタン、シリカ、カルシウム等の光拡散材を透光性樹脂に均一分散させた光透過散光フィルターとして形成したことを特徴とする照明灯用光透過散光フィルター。
【請求項2】
光透過散光フィルターの石英ガラス微粒子の粒径を平均粒径1〜30μm程度で、その含有量を重量比0.01〜5%とし、また二酸化チタン、シリカ、カルシウム等の光拡散材の含有を重量比0.01〜2%としたことを特徴とする請求項1記載の照明灯用光透過散光フィルター。
【請求項3】
石英ガラス微粒子の内部で散光できるように、該石英ガラス微粒子に不純物成分のAl、TiO、Fe、Nb、ZrO、MnO及びMoO等、少なくとも一種の金属元素を含む成分を含有させ、該石英ガラス微粒子全体を100質量%としたとき各元素の酸化物換算で0.01〜2質量%としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の照明灯用光透過散光フィルター。
【請求項4】
透光性樹脂に均一分する石英ガラス微粒子の外表面または透光性樹脂またはその双方に、赤色等の染料若しくは顔料の着色材若しくは蛍光体を含む着色材またはそれらを組み合わせた演色性改善材を、石英ガラス微粒子には添着を、透光性樹脂には分散したことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載した照明灯用光透過散光フィルター。
【請求項5】
光透過散光フィルターとLEDモジュールを有する直菅または環状などの蛍光菅状照明灯などのカバー部とを一体的に形成して光透過散光カバーとし若しくは透明カバーの内側に光透過散光フィルターを設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載した照明灯用光透過散光フィルター。
【請求項6】
照明光の照射角を変更可能なように、光透過散光フィルターまたは光透過散光カバーの光源側にV字状または曲面形状などの所定形状で、内角が略70〜120°程度の所要角度の溝部を長手方向に多数形成したことを特徴とする請求項5に記載した照明灯用光透過散光フィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−192415(P2010−192415A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60216(P2009−60216)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【特許番号】特許第4379750号(P4379750)
【特許公報発行日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(598089591)株式会社東穂 (14)
【出願人】(509071828)
【Fターム(参考)】