説明

照明用電源および照明装置

【課題】出力電流の可変範囲を広げた照明用電源及び照明装置を提供する。
【解決手段】電源と照明負荷との間に接続され、前記電源と前記照明負荷との間の電位差が相対的に大きいときオンの状態とオフの状態とを繰り返すスイッチング動作をし、前記電源と前記照明負荷との間の電位差が相対的に小さいときオンの状態を維持する出力素子と、前記出力素子と直列に接続され、前記出力素子に流れる電流を制限する定電流素子と、を備えた照明用電源。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、照明用電源および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明装置において、照明光源は白熱電球や蛍光灯から省エネルギー・長寿命の光源、例えば発光ダイオード(Light-emitting diode:LED)への置き換えが進んでいる。また、例えば、EL(Electro-Luminescence)や有機発光ダイオード(Organic light-emitting diode:OLED)など新たな照明光源も開発されている。これらの照明光源の光出力は流れる電流値に依存するため、照明を点灯させる場合は、定電流を供給する電源回路が必要になる。また、調光させる場合は、供給する電流を制御する。
2線式調光器は、トライアックがターンオンする位相を制御するように構成され、白熱電球の調光器として普及している。そのため、LEDなどの照明光源もこの調光器で調光できることが望ましい。高効率で省電力化・小型化に適した電源として、DC−DCコンバータなどのスイッチング電源が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−119237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この調光器は、負荷となる白熱電球のフィラメントと直列接続して動作するように構成されており、スイッチング電源を接続した場合に、負荷インピーダンスが変化して誤動作する可能性がある。
本発明の実施形態は、出力電流の可変範囲を広げた照明用電源及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の照明用電源は、電源と照明負荷との間に接続され、前記電源と前記照明負荷との間の電位差が相対的に大きいときオンの状態とオフの状態とを繰り返すスイッチング動作をし、前記電源と前記照明負荷との間の電位差が相対的に小さいときオンの状態を継続する出力素子と、前記出力素子と直列に接続され、前記出力素子に流れる電流を制限する定電流素子と、を持つ。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、出力電流の可変範囲を広げた照明用電源及び照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係る照明用電源を含む照明装置を例示するブロック図である。
【図2】照明負荷に供給される出力電圧VOUTと出力電流IOUTとの関係を例示する特性図である。
【図3】出力素子の電流波形を例示する波形図である。
【図4】第2の実施形態に係る照明用電源を含む照明装置を例示する回路図である。
【図5】調光器を例示する回路図である。
【図6】照明用電源の主要な信号を表す波形図である。
【図7】第3の実施形態に係る照明用電源を含む照明装置を例示する回路図である。
【図8】第3の実施形態に係る照明用電源の主要な信号を表す波形図である。
【図9】調光位相角と出力電流IOUTとの関係を例示する特性図である。
【図10】第4の実施形態に係る照明用電源を含む照明装置を例示する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施例について図面を参照して詳細に説明する。なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る照明用電源を含む照明装置を例示するブロック図である。
図1に表したように、照明装置1は、照明負荷2と、照明負荷2に電力を供給する照明用電源3と、を備えている。
【0010】
照明負荷2は、例えばLEDなどの照明光源4を有し、照明用電源3から出力電圧VOUT、出力電流IOUTを供給されて点灯する。また、照明負荷2は、出力電圧VOUT及び出力電流IOUTの少なくともいずれかを変化させて調光することができる。なお、出力電圧VOUT、出力電流IOUTの値は、照明光源に応じて規定される。
【0011】
図2は、照明負荷に供給される出力電圧VOUTと出力電流IOUTとの関係を例示する特性図である。
図2においては、例えばLEDなどの点灯時の動作抵抗の小さい照明光源を有する照明負荷の特性を例示している。
照明負荷2は、出力電圧VOUTが所定電圧よりも低いときは、電流が流れず、消灯している。出力電圧VOUTが、所定電圧以上のとき、電流が流れて点灯する。
【0012】
例えば、照明光源4がLEDの場合、この所定電圧は、LEDの順方向電圧であり、照明光源4に応じて定まる。また、照明光源4は、点灯時の動作抵抗が低く、例えば定格動作点Pの近傍で出力電流IOUTが増加しても出力電圧VOUTは、変化が少ない。したがって、図2に表したような特性の照明負荷2は、出力電流IOUTを変化させることにより、照明光源4の光出力を制御して調光することができる。また、出力電圧VOUTが所定電圧よりも低下すると、照明光源4が消灯して出力電流IOUTが流れなくなるため、例えばコンデンサで平滑化して出力した場合、出力電圧VOUTの値は所定電圧以上に保持される。
【0013】
照明用電源3は、出力素子5と、出力素子5と直列に接続され出力素子5を流れる電流を制限する定電流素子6と、出力素子5を駆動する駆動素子70とを有している。
出力素子5は、照明負荷2と電源7との間に接続されている。出力素子5は、電源7の電圧VINと照明負荷2に出力する出力電圧VOUTとの電位差ΔV(=VIN−VOUT)が相対的に大きいときオンの状態とオフの状態とを繰り返すスイッチング動作をし、電源7と照明負荷2との間の電位差ΔVが相対的に小さいときオンの状態を維持する。
駆動素子70は、出力素子5の制御端子に電位を供給して、出力素子5をオンの状態またはオフの状態に制御する。
【0014】
図3は、出力素子の電流波形を例示する波形図である。
図3(a)〜(d)の順に電源7と照明負荷2との間の電位差ΔVが大きくなる場合の出力素子5の電流I5の波形を模式的に表している。
【0015】
図3(a)に表したように、電位差ΔVが相対的に小さいとき、出力素子5は、オンの状態を継続し、定電流素子6で制限されたほぼ一定の直流電流が流れる。出力素子5が一定の直流電流を出力する状態においては、照明用電源3は、シリーズレギュレータのような動作をしている。
【0016】
図3(b)に表したように、電位差ΔVが大きくなると、出力素子5はオンの状態を継続したまま、電流が振動する。また、図3(c)に表したように、電位差ΔVがさらに大きくなると、電位差ΔVに応じて、出力素子5の電流の変動幅は大きくなる。
【0017】
このように、電位差ΔVが大きくなると、出力素子5は、例えば不完全に発振しているような状態になり、出力素子5の電流は振動するようになる。しかし、電位差ΔVが所定値よりも小さいとき、出力素子5は、オフの状態にはならず、オンの状態を継続する。なお、出力素子5の振動する電流のピーク値は、定電流素子6の定電流値で制限された値になる。また、出力素子5の振動周期Tは、電流の変動幅に応じて変化する。
【0018】
そして、図3(d)に表したように、電位差ΔVが所定値以上のとき、出力素子5は、オンの状態とオフの状態とを繰り返すスイッチング動作をして、発振する。このとき、照明用電源3は、スイッチング電源として動作している。
【0019】
スイッチング電源は、出力素子5が抵抗の低いオンの状態と電流が流れないオフの状態とを繰り返すスイッチング動作をするため、低消費電力・高効率の電源である。本実施形態においては、電位差ΔVが所定値よりも大きいとスイッチング動作し、電位差ΔVが小さいと、シリーズレギュレータのような動作をする。電位差ΔVが大きい場合は、電位差ΔVと電流との積が大きく、シリーズレギュレータの動作を行うと損失が大きくなる。したがって、電位差ΔVが大きい場合に、スイッチング動作をすることは、低消費電力化に適する。また、電位差ΔVが小さい場合は、損失は小さいため、シリーズレギュレータとして動作をすることは問題ない。
【0020】
また、本実施形態においては、電位差ΔVが所定値よりも小さいときは、出力素子5はオフの状態にならずにオンの状態を継続したまま電流が振動して、電流の平均値で照明負荷2を点灯させる(図3(b)、(c))。また、電位差ΔVがさらに小さいときは、出力素子5は、オンの状態を継続したまま、直流電流を照明負荷2に出力して点灯させる(図3(a))。その結果、本実施形態においては、出力電流をゼロまで連続的に変化させることができる。また、照明装置1における照明負荷2をスムーズに消灯することができる。
【0021】
したがって、本実施形態においては、電位差ΔVに応じて、出力素子5のスイッチング動作時における最大値から、出力素子5のオンの状態を継続したまま直流電流を出力する際の最小値まで出力電流IOUTを連続的に変化させることができる。また、照明装置1における照明負荷2を連続的に0〜100%の範囲で調光することができる。
【0022】
なお、図3(a)〜(c)においては、出力素子5は、オフの状態にならずにオンの状態を継続したまま電流が振動し、電位差ΔVが大きくなると電流の変動幅が大きくなる動作を例示している(図3(b)、(c))。しかし、出力素子5は、電位差ΔVが所定値以上のときオンの状態とオフの状態とを繰り返すスイッチング動作をして発振し(図3(d))、電位差ΔVが所定値よりも小さいときオンの状態を継続して直流電流を出力する動作をしてもよい(図3(a))。すなわち、出力素子5は、オフの状態とならずにオンの状態を継続したまま電流が振動する動作(図3(b)、(c))をしなくてもよい。
【0023】
なお、出力素子5及び定電流素子6は、例えば電界効果トランジスタ(FET)であり、例えば高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)である。
また、出力素子5がオフの状態のときは、例えば整流素子などで出力電流IOUTを流す構成としてもよい。
【0024】
このように、本実施形態においては、出力素子が電源と照明負荷との間の電位差が相対的に大きいと発振して発振電流を出力し、電位差が相対的に小さいと発振を停止して直流電流を出力する。その結果、出力電流の可変範囲の広げることができる。また、照明装置の調光範囲を広げることができる。
【0025】
図4は、第2の実施形態に係る照明用電源を含む照明装置を例示する回路図である。
図4に表したように、第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して、照明用電源3に調光器8、整流回路9、及び定電流回路10が追加され、出力素子及び定電流素子を有するDC−DCコンバータ11の構成が例示されている点が異なっている。また、照明装置1aは、照明負荷2と照明用電源3aとを備えている。照明負荷2については、第1の実施形態と同様である。
【0026】
照明用電源3aは、交流電源7aを位相制御する調光器8、位相制御された交流電圧を直流に変換する整流回路9、調光器8が位相制御するのに必要な定電流を流す定電流回路10、出力電圧VOUTを生成するDC−DCコンバータ11を有する。なお、交流電源7aは、例えば商用電源ある。
【0027】
調光器8は、交流電源7aに接続され、電源電圧VINを供給する一対の電源ラインの一方に直列に挿入される。このように調光器8は、電源電圧VINを供給する一対の電源ラインに直列に挿入されてもよい。
図5は、調光器を例示する回路図である。
図5に表したように、調光器8は、2線式位相制御調光器である。
調光器8は、電源ラインに直列に挿入されたトライアック12、トライアック12と並列に接続された位相回路13と、トライアック12のゲートと位相回路13との間に接続されたダイアック14と、を有する。
【0028】
トライアック12は、通常オフの状態であり、ゲートにパルス信号が入力されるとオンする。トライアック12は、交流の電源電圧VINが正極性のときと負極性のときの双方向に電流を流すことができる。
位相回路13は、可変抵抗15とコンデンサ16とで構成され、コンデンサ16の両端に位相が遅延した電圧を生成する。また、可変抵抗15の抵抗値を変化させると、時定数が変化し、遅延時間が変化する。
【0029】
ダイアック14は、位相回路13のコンデンサに充電される電圧が一定値を超えるとパルス電圧を生成し、トライアック12をオンさせる。
調光器8は、位相回路13の時定数を変化させてダイアック14がパルスを生成するタイミングを制御することにより、トライアック12がオンするタイミングを調整することができる。
【0030】
再度図4に戻ると、整流回路9は、調光器8を介して交流の電源電圧VINを入力して、直流電圧VREを出力する。整流回路9は、ダイオードブリッジで構成されている。整流回路9は、調光器8による調光度に応じて電圧が変化する直流電圧VREを出力する。なお、整流回路9は、調光器8から入力される交流電圧を整流できればよく、他の構成でもよい。また、整流回路9の入力側には、DC−DCコンバータで発生するノイズを低減するコンデンサが接続されている。
【0031】
定電流回路10は、トランジスタ17、トランジスタ17をバイアスする抵抗18とツェナーダイオード19、チョークコイル20、ダイオード21を有する。
トランジスタ17は、例えばFETであり、ノーマリオン形の素子である。トランジスタ17のドレインは、チョークコイルを介して、整流回路9の高電位端子9aに接続され、トランジスタ17のソースは、並列に接続された抵抗18とツェナーダイオード19とを介して、整流回路9の低電位端子9bに接続される。トランジスタ17のゲートは、整流回路9の低電位端子9bに接続される。また、整流回路9の高電位端子9aは、ダイオード21を介して、DC−DCコンバータ11に接続される。
【0032】
定電流回路10は、調光器8の位相回路13を動作させる定電流を流す回路である。位相回路13と比較してインピーダンスの小さい素子を整流回路9の負荷として接続することにより、後段のDC−DCコンバータ11の入力インピーダンスの影響を抑制して、調光器8を安定に動作させることができる。
平滑コンデンサ40は、定電流回路10のダイオード21のカソードと整流回路9の低電位端子9bとの間に接続される。
【0033】
DC−DCコンバータ11は、出力素子5a、定電流素子6a、整流素子22、インダクタ23、出力素子5aを駆動する帰還巻き線(駆動素子)24、結合コンデンサ25、分割抵抗26、27、出力コンデンサ28、バイアス抵抗29を有している。
出力素子5a及び定電流素子6aは、例えば電界効果トランジスタ(FET)であり、例えば高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)であり、ノーマリオン形の素子である。
【0034】
出力素子5aのドレインは、定電流回路10を介して、整流回路9の高電位端子9aに接続される。出力素子5aのソースは、定電流素子6aのドレインに接続され、出力素子5aのゲートは、結合コンデンサ25を介して、帰還巻き線24の一端に接続される。
定電流素子6aのソースは、インダクタ23の一端と帰還巻き線24の他端とに接続され、定電流素子6aのゲートには、定電流素子6aのソース電位を分割抵抗26、27で分割した電圧が入力される。
【0035】
また、バイアス抵抗29は、出力素子5aのドレインと定電流素子6aのソースとの間に接続され、分割抵抗26,27に直流電圧を供給する。その結果、定電流素子6aのゲートには、ソースよりも低い電位が供給される。
なお、インダクタ23と帰還巻き線24とは、インダクタ23の一端から他端に増加する電流が流れるとき、出力素子5aのゲートに正極性の電圧が供給される極性で磁気結合している。
また、出力素子5aのゲートと定電流素子6aのゲートには、それぞれ保護ダイオードが接続される。
【0036】
整流素子22は、定電流素子6aのソースと整流回路9の低電位端子9bとの間に、低電位端子9bから定電流素子6aの方向を順方向として接続されている。
インダクタ23の他端は、高電位出力端子30に接続され、整流回路9の低電位端子9bは、低電位出力端子31に接続される。また、出力コンデンサ28は、高電位出力端子30と低電位出力端子31との間に接続される。
【0037】
照明負荷2は、高電位出力端子30と低電位出力端子31との間に、出力コンデンサ28と並列に接続される。
次に、照明用電源3aの動作について説明する。なお、調光器8、整流回路9、及び定電流回路10については、すでに説明したので、主にDC−DCコンバータ11の動作について説明する。
【0038】
まず、調光器8の調光度がほぼ100%に設定され、入力される交流電圧がほぼそのまま伝達される場合、すなわちDC−DCコンバータ11に最も高い直流電圧が入力される場合について説明する。
【0039】
電源電圧VINが、照明用電源3aに供給されるとき、出力素子5a及び定電流素子6aは、ノーマリオン形の素子であるため、いずれもオンしている。そして、出力素子5a、定電流素子6a、インダクタ23、出力コンデンサ28の経路で電流が流れ、出力コンデンサ28が充電される。出力コンデンサ28の両端の電圧、すなわち高電位出力端子30と低電位出力端子31との間の電圧は、照明用電源3aの出力電圧VOUTとして、照明負荷2の照明光源4に供給される。なお、出力素子5a及び定電流素子6aがオンしているため、整流素子22には、逆電圧が印加される。整流素子22には、電流は流れない。
【0040】
出力電圧VOUTが所定電圧に達すると、照明光源4に出力電流IOUTが流れ、照明光源4が点灯する。このとき、出力素子5a、定電流素子6a、インダクタ23、出力コンデンサ28及び照明光源4の経路で電流が流れる。例えば、照明光源4がLEDの場合、この所定電圧は、LEDの順方向電圧であり、照明光源4に応じて定まる。また、照明光源4が消灯した場合、出力電流IOUTが流れないため、出力コンデンサ28は、出力電圧VOUTの値を保持する。
【0041】
DC−DCコンバータ11に入力される直流電圧が、出力電圧VOUTと比較して十分に高い、すなわち入出力間の電位差ΔVが十分に大きいため、インダクタ23を流れる電流は増加していく。帰還巻き線24は、インダクタ23と磁気結合しているため、帰還巻き線24には、結合コンデンサ25側を高電位とする極性の起電力が誘起される。そのため、出力素子5aのゲートには、結合コンデンサ25を介してソースに対して正の電位が供給され、出力素子5aはオンの状態を維持する。
【0042】
FETで構成された定電流素子6aを流れる電流が上限値を超えると、定電流素子6aのドレイン・ソース間電圧は、急激に上昇する。そのため、出力素子5aのゲート・ソース間電圧がしきい値電圧よりも低くなり、出力素子5aはオフする。なお、上限値は、定電流素子6aの飽和電流値であり、分割抵抗26、27から定電流素子6aのゲートに入力される電位により規定される。なお、上記のとおり、定電流素子6aのゲート電位は、ソースに対して負電位のため、飽和電流値を適正値に制限することができる。
【0043】
インダクタ23は、整流素子22、出力コンデンサ28及び照明負荷2、インダクタ23の経路で電流を流し続ける。このとき、インダクタ23は、エネルギーを放出するため、インダクタ23の電流は、減少していく。そのため、帰還巻き線24には、結合コンデンサ25側を低電位とする極性の起電力が誘起される。出力素子5aのゲートには、結合コンデンサ25を介してソースに対して負の電位が供給され、出力素子5aはオフの状態を維持する。
【0044】
インダクタ23に蓄積されていたエネルギーがゼロになると、インダクタ23を流れる電流はゼロになる。帰還巻き線24に誘起される起電力の方向が再び反転し、結合コンデンサ25側を高電位とするような起電力が誘起される。これにより、出力素子5aのゲートにソースよりも高い電位が供給され、出力素子5aがオンする。これにより、上記の出力電圧VOUTが所定電圧に達した状態に戻る。
【0045】
以後、上記の動作を繰り返す。これにより、出力素子5aのオン及びオフへの切替が自動的に繰り返されて、照明光源4には電源電圧VINを降下した出力電圧VOUTが供給される。また、照明光源4に供給される電流は、定電流素子6aにより上限値の制限された定電流となる。そのため、照明光源4を安定に点灯させることができる。
【0046】
調光器8の調光度が100%よりも小さい値に設定され、入力される交流電圧が位相制御されて伝達される場合、すなわちDC−DCコンバータ11に高い直流電圧が入力される場合についても、出力素子5aが発振を継続できる場合は、上記と同様である。調光器8の調光度に応じて、DC−DCコンバータ11に入力される直流電圧の値が変化して、出力電流IOUTの平均値を制御することができる。したがって、調光度に応じて、照明負荷2の照明光源4を調光することができる。
【0047】
また、調光器8の調光度がさらに小さい値に設定される場合、すなわちDC−DCコンバータ11に入力される直流電圧がさらに低い場合、出力素子5aがオンしてもインダクタ23の両端の電位差が小さいため、インダクタ23を流れる電流が増加することができない。したがって、出力素子5aは、オフの状態にならず、一定の直流電流を出力する。
【0048】
図6は、照明用電源の主要な信号を表す波形図である。
図6においては、図6(a)〜(h)の順に、調光器8の調光度が小さくなる場合の、整流回路9の直流電圧VRE、照明用電源3aの出力電流IOUT、整流素子22の電圧VDの測定値を表している。
【0049】
図6(a)〜(c)に表したように、調光度が大きいとき、出力素子5aはオン状態とオフ状態とを繰り返すスイッチング動作をして発振し、整流素子22の電圧VDは、発振波形になる。なお、調光器8の調光度に応じた制御をしていないため、出力電流IOUTは、ほぼ一定になっている。
【0050】
図6(d)〜(f)に表したように、調光度が低下すると、DC−DCコンバータ11に入力される電圧のリプルのため、出力素子5aがオンの状態を継続し、オンの状態とオフの状態とを繰り返すスイッチング動作を停止する期間が生じる。出力素子5の電流I5の平均値は、調光度に応じて変化するため、出力電流IOUTの平均値は、調光度に応じて変化する。
【0051】
図6(g)、(h)に表したように、調光度がさらに低下すると、出力素子5aはオンの状態を継続し、直流電流I5が流れるため、整流素子22の電圧VDは、直流電圧になる。直流電流I5の値は、調光度に応じて変化するため、出力電流IOUTは、調光度に応じて変化する。
【0052】
このように、本実施形態においては、調光器の調光度に応じて、ノーマリオン形の出力素子がオンの状態とオフの状態とを繰り返すスイッチング動作をして発振し、またはオンの状態を継続して直流電流を出力する。その結果、出力電流を最大値からゼロまで連続的に変化させることができる。また、照明装置における照明負荷をスムーズに消灯させることができる。
【0053】
図7は、第3の実施形態に係る照明用電源を含む照明装置を例示する回路図である。
図7に表したように、第3の実施形態は、第2の実施形態と比較して、DC−DCコンバータ11における定電流素子6aのゲート電位を生成する構成が異なっている。すなわち、照明用電源3bは、抵抗52、53、56、コンデンサ54、ダイオード58が追加されている。調光器8、整流回路9、定電流回路10a、DC−DCコンバータ11の構成については、第2の実施形態と同様である。
【0054】
抵抗52、53は、定電流回路10のダイオード21のアノードと整流回路9の低電位端子9bとの間に、直列に接続されている。また、コンデンサ54は、抵抗53と並列に接続される。抵抗53の電圧は、ダイオード58、抵抗56を介して、分割抵抗26、27の接続点に供給される。抵抗52とコンデンサ54とは、ローパスフィルタまたは積分回路を構成し、抵抗53には、整流回路9の直流電圧VREを平滑化した電圧が生成される。
【0055】
抵抗53の電圧は、調光器8の調光度に応じて変化するため、定電流素子6aのゲート電位を、調光度に応じて変化させることができる。
【0056】
図8は、第3の実施形態に係る照明用電源の主要な信号を表す波形図である。
図8においては、図8(a)〜(h)の順に、調光器8の調光度が大きくなる場合の、整流回路9の直流電圧VRE、照明用電源3bの出力電流IOUT、整流素子22の電圧VDの測定値を表している。
【0057】
図8(a)に表したように、調光度が0%、すなわち調光位相角が180度のとき、整流回路9の直流電圧VREがゼロのため、出力電流IOUTは流れない。
図8(b)、(c)に表したように、調光度が大きくなる、すなわち調光位相角が小さくなると、整流回路9の直流電圧VREが高くなり、出力素子5aはオンの状態を継続したまま電流I5が振動する動作になり、整流素子22の電圧VDは、振動する。調光度に応じて、電流I5の変動幅が大きくなり、整流素子22の電圧VDの変動幅が大きくなる。そのため、出力電流IOUTは、調光度が大きくなると、大きくなる。なお、出力素子5aがオフの状態にならないため、整流素子22の電圧VDは、ゼロにならない。
【0058】
図8(d)〜(h)に表したように、調光度がさらに大きくなると、出力素子5aは、オンの状態とオフの状態とを繰り返すスイッチング動作をして、発振する。整流素子22の電圧の変動幅が大きくなり、ほぼゼロまで低下する。出力電流IOUTは、調光度が大きくなると、大きくなる。
【0059】
このように、本具体例においては、出力素子5aは、調光度に応じて、オンの状態を継続してオフの状態にならないで振動する状態と、オン状態とオフ状態とを繰り返すスイッチング動作をして発振する状態との間を連続的に遷移する。その結果、発振電流I5の振幅は、調光度に応じて連続的に変化し、出力電流IOUTは、調光度に応じて連続的に変化する。
【0060】
図9は、調光位相角と出力電流IOUTとの関係を例示する特性図である。
図9に表したように、本具体例においては、出力電流IOUTは、調光位相角(調光度)に応じて、ゼロまで連続的に制御することができる。
このように、本実施形態においては、調光器の調光度に応じて、出力素子の状態が連続的に遷移する。その結果、出力電流の連続的に変化させることができ、また調光器の調光度の可変範囲を広げることができる。また、照明装置を連続的に調光でき、また調光範囲を広げることができる。
【0061】
図10は、第4の実施形態に係る照明用電源を含む照明装置を例示する回路図である。
図10に表したように、第4の実施形態は、第3の実施形態と比較して、定電流回路10とDC−DCコンバータ11の構成が異なっている。すなわち、照明用電源3cは、調光器8、整流回路9、定電流回路10a、DC−DCコンバータ11aを有している。調光器8及び整流回路9については、第3の実施形態と同様である。また、照明装置1cは、照明負荷2と照明用電源3cとを備えている。照明負荷2については、第1の実施形態と同様である。
【0062】
定電流回路10aは、第2の実施形態における定電流回路10と比較して、トランジスタ17がノーマリオフ形の素子である点と、定電流を流すためのバイアス回路の構成が異なっている。すなわち、定電流回路10aは、トランジスタ17a、トランジスタ17aをバイアスする抵抗18、32とツェナーダイオード19、チョークコイル20、ダイオード21を有する。
【0063】
トランジスタ17aは、例えばFETであり、ノーマリオフ形の素子である。トランジスタ17aのドレインは、チョークコイル20を介して、整流回路9の高電位端子9aに接続され、トランジスタ17aのソースは、抵抗18を介して、整流回路9の低電位端子9bに接続される。トランジスタ17aのゲートは、バイアス抵抗32を介してダイオード21のカソードに接続され、また、ツェナーダイオード19を介して整流回路9の低電位端子9bに接続される。また、整流回路9の高電位端子9aは、ダイオード21のアノードに接続され、ダイオード21のカソードは、DC−DCコンバータ11aに接続される。また、ダイオード21のカソードと整流回路9の低電位端子9bとの間には、平滑コンデンサ40が接続される。
【0064】
トランジスタ17aは、バイアス抵抗32とツェナーダイオード19でバイアスされ、調光器8の位相回路13を動作させる定電流を流す。したがって、定電流回路10と同様に、定電流回路10aは、位相回路13と比較してインピーダンスの小さい素子を整流回路9の負荷として接続することにより、後段のDC−DCコンバータ11の入力インピーダンスの影響を抑制して、調光器8を安定に動作させることができる。
【0065】
DC−DCコンバータ11aは、第2の実施形態におけるDC−DCコンバータ11と比較して、出力素子5a及び定電流素子6aがともにノーマリオフ形の素子である点が異なり、またその結果、インダクタ23などの位置などの構成が異なっている。
DC−DCコンバータ11aは、出力素子5b、定電流素子6b、整流素子22、インダクタ23、出力素子5bを駆動する帰還巻き線(駆動素子)24、結合コンデンサ25、出力コンデンサ28、バイアス抵抗29、抵抗33〜37を有している。
出力素子5b及び定電流素子6bは、例えば電界効果トランジスタ(FET)であり、例えば高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)である。
【0066】
出力素子5bのドレインは、逆方向の整流素子22を介して、定電流回路10aのダイオード21のカソードに接続される。出力素子5bのソースは、定電流素子6bに接続され、出力素子5bのゲートは、帰還巻き線24の一端に接続される。帰還巻き線24の他端は、結合コンデンサ25を介して、整流回路9の低電位端子9bに接続される。
また、バイアス抵抗29は、ダイオード21のカソードと出力素子5bのゲートとの間に接続され、抵抗33は、出力素子5bのゲートと整流回路9の低電位端子9bとの間に接続される。また、出力素子5bのゲートには、保護ダイオードが接続される。
【0067】
定電流素子6bは、カレントミラーで構成され、出力側トランジスタのドレインは、出力素子5bのソースに接続され、ソースは、抵抗34を介して、整流回路9の低電位端子9bに接続され、ゲートは、基準側トランジスタのゲート及びドレインに接続される。基準側トランジスタのソースは、抵抗35を介して、整流回路9の低電位端子9bに接続され、ドレイン及びゲートは、抵抗36、37を介して、ダイオード21のアノードに接続される。また、抵抗37は、コンデンサ54を介して、整流回路9の低電位端子9bに接続される。抵抗37とコンデンサ54とは、ローパスフィルタまたは積分回路を構成する。また、コンデンサ54と並列に、抵抗56を介してツェナーダイオード58が接続される。
抵抗36を介して、定電流素子6bの基準側トランジスタには、調光度に応じて変化する電流が流される。したがって、定電流素子6bの出力側トランジスタには、調光度に応じて変化する電流が流れる。
【0068】
インダクタ23は、出力素子5bのドレインと低電位出力端子31との間に接続される。なお、インダクタ23と帰還巻き線24とは、インダクタ23の一端から他端に増加する電流が流れるとき、出力素子5bのゲートに正極性の電圧が供給される極性で磁気結合している。
【0069】
出力コンデンサ28は、高電位出力端子30と低電位出力端子31との間に接続される。また、高電位出力端子30は、定電流回路10aのダイオード21のカソードに接続される。
【0070】
照明負荷2は、高電位出力端子30と低電位出力端子31との間に、出力コンデンサ28と並列に接続される。
DC−DCコンバータ11aの動作は、DC−DCコンバータ11と比較して、出力素子5aと定電流素子6aが低電位側に、整流素子22と出力コンデンサ28と照明負荷2とが高電位側に、それぞれ移動した点と、出力素子5a及び定電流素子6aをノーマリオフ形の素子に替えた点以外は、同様である。
【0071】
したがって、本実施形態においては、調光器の調光度に応じて、ノーマリオフ形の出力素子がオンの状態とオフの状態とを繰り返すスイッチング動作をして発振し、またはオンの状態を継続したまま出力電流を出力する。すなわち、第3の実施形態における出力素子と同様に、調光器の調光度に応じて動作状態が連続的に遷移する。その結果、第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0072】
以上、具体例を参照しつつ実施形態について説明したが、それらに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0073】
例えば、出力素子5、5a、5b及び定電流素子6、6a、6bはGaN系HEMTには限定されない。例えば、半導体基板に炭化珪素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)やダイヤモンドのようなワイドバンドギャップを有する半導体(ワイドバンドギャップ半導体)を用いて形成した半導体素子でもよい。ここで、ワイドバンドギャップ半導体とは、バンドギャップが約1.4eVのヒ化ガリウム(GaAs)よりもバンドギャップの広い半導体をいう。例えば、バンドギャップが1.5eV以上の半導体、リン化ガリウム(GaP、バンドギャップ約2.3eV)、窒化ガリウム(GaN、バンドギャップ約3.4eV)、ダイアモンド(C、バンドギャップ約5.27eV)、窒化アルミニウム(AlN、バンドギャップ約5.9eV)、炭化ケイ素(SiC)などが含まれる。このようなワイドバンドギャップ半導体素子は、耐圧を等しくする場合、シリコン半導体素子よりも小さくできるために寄生容量が小さく、高速動作が可能なため、スイッチング周期を短くすることができ、巻線部品やコンデンサなどの小形化が可能となる。
【0074】
また、照明光源4はLEDに限らず、ELやOLEDなどでもよく、照明負荷2には、複数個の照明光源4が直列又は並列に接続されていてもよい。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態および実施例を説明したが、これらの実施形態または実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態または実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態または実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1、1a、1b…照明装置、 2…照明負荷、 3、3a、3b…照明用電源、 4…照明光源、 5、5a、5b…出力素子、 6、6a、6b…定電流素子、 7…電源、 7a…交流電源、 8…調光器、 9…整流回路、 9a…高電位端子、 9b…低電位端子、 10、10a…定電流回路、 11、11a…DC−DCコンバータ、 12…トライアック、 13…位相回路、 14…ダイアック、 15…可変抵抗、 16…コンデンサ、 17、17a…トランジスタ、 18、33〜37…抵抗、 19…ツェナーダイオード、 20…チョークコイル、 21…ダイオード、 22…整流素子、 23…インダクタ、 24…帰還巻き線、 25…結合コンデンサ、 26、27…分割抵抗、 28…出力コンデンサ、 29、32…バイアス抵抗、 30…高電位出力端子、 31…低電位出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と照明負荷との間に接続され、前記電源と前記照明負荷との間の電位差が相対的に大きいときオンの状態とオフの状態とを繰り返すスイッチング動作をし、前記電源と前記照明負荷との間の電位差が相対的に小さいときオンの状態を継続する出力素子と、
前記出力素子と直列に接続され、前記出力素子に流れる電流を制限する定電流素子と、
を備えた照明用電源。
【請求項2】
前記電源と前記照明負荷との間の電位差が大きくなると、前記出力素子に流れる電流は、変動幅が大きくなるように振動する請求項1記載の照明用電源。
【請求項3】
前記電源と前記照明負荷との間の電位差が相対的に小さいとき前記出力素子はオンの状態を継続して直流電流を出力する請求項1または2に記載の照明用電源。
【請求項4】
交流電圧を導通させるタイミングを制御する位相制御回路をさらに備えた請求項1〜3のいずれか1つに記載の照明用電源。
【請求項5】
前記出力素子は、ノーマリオン形の素子である請求項1〜4のいずれか1つに記載の照明用電源。
【請求項6】
前記出力素子は、出力電圧を供給されてオンの状態にバイアスされたノーマリオフ形の素子である請求項1〜4のいずれか1つに記載の照明用電源。
【請求項7】
照明負荷と、
前記照明負荷に電力を供給する請求項1〜6のいずれか1つに記載の照明用電源と、
を備えた照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−98114(P2013−98114A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242165(P2011−242165)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】