説明

照明装置

【課題】簡単な回路構成で所望の光量を得るとともに有機EL素子の長寿命化も図る。
【解決手段】各発光部21,…を構成する有機EL素子1の個数nをVs/2Vd以上の自然数とすれば、n≧Vs/2Vdとなるように有機EL素子1の個数nを設定することで発光部21,…に印加される逆方向電圧Vrを順方向電圧Vd以下とすることができる。その結果、降圧回路や極性反転回路などを使わずに複数個の有機EL素子1を発光させて簡単な回路構成で所望の光量を得ることができ、しかも、交流電源電圧の極性に応じて順方向電圧Vd以下の逆方向電圧Vrを自動的に有機EL素子1に印加して有機EL素子1の長寿命化が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子を光源とする照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、放電灯に比較して低い電圧(例えば、数V〜数十V程度)で駆動可能であるために点灯装置が安価に構成できることなどから有機EL(エレクトロルミネセンス)素子を光源とする照明装置の開発が盛んに行われている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
図6は特許文献1に開示されている点灯装置(照明装置)を示す回路図である。この従来装置は、商用交流電源ACをダイオードブリッジDBで全波整流するとともに平滑コンデンサC0で平滑することによって得た直流電圧を極性反転回路INVで極性反転することで有機EL素子に順方向の電圧と逆方向の電圧とを交互に印加して点灯するものである。極性反転回路INVは、バイポーラトランジスタからなるスイッチング素子Tr1,Tr2,Tr3,Tr4を2つずつ直列接続するとともに平滑コンデンサC0の両端に互いに並列に接続したブリッジ回路からなり、スイッチング素子Tr1とTr2の接続点とスイッチング素子Tr3とTr4の接続点の間に有機EL素子1が接続される。ここで、スイッチング素子Tr3には検出抵抗Rが直列に接続されており、有機EL素子1に流れる電流を検出抵抗Rの両端電圧として検出し、低域通過フィルタLPFを介してスイッチング素子Trn(n=1,2,3,4)を駆動制御する制御手段CNTに検出電圧が入力されている。制御手段CNTは、スイッチング素子Tr1とTr3をオンすると同時にスイッチング素子Tr2とTr4をオフする期間と、スイッチング素子Tr1とTr3をオフすると同時にスイッチング素子Tr2とTr4をオンする期間とを周期的に切り換えることで有機EL素子に間欠的に順方向電圧を印加して点灯し、さらに、外部から与えられる調光信号に基づいて有機EL素子1に流れる電流の目標値を設定し、実際に有機EL素子1に流れる電流(検出電圧)を目標値に一致させるように順方向電圧の印加期間を変化させることで有機EL素子1の輝度を調整、すなわち調光している。なお、本従来例では有機EL素子1に対して逆方向に電圧を印加しているが、一般に逆極性の電圧を印加することで有機EL素子の寿命が長くなることが知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−78828号公報
【特許文献2】特許第3432986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、商用交流電源の電源電圧(ピーク値は約141V)に比べて有機EL素子の駆動電圧は一桁低いレベルであるから、多数の有機EL素子を直列に接続することでトータルの駆動電圧を電源電圧相当とすれば、降圧回路を使わずに商用交流電源で有機EL素子を発光させることも可能である。しかしながら、有機EL素子の個数が駆動電圧と電源電圧との関係のみで決まってしまい、有機EL素子から放射されるトータルの光量については何ら考慮されておらず、照明装置として必要な光量が得られるとは限らない。
【0005】
このように有機EL素子を光源とする照明装置においては、商用交流電源を使用する際に降圧回路や逆極性の電圧を印加する回路が必要になることで回路構成が複雑化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、簡単な回路構成で所望の光量を得ることができるとともに有機EL素子の長寿命化も図れる照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、それぞれn個(nは自然数)の有機EL素子が順方向に直列接続されてなる4つの発光部を備え、各々2つの発光部が順方向に接続された2つの直列回路が互いに並列接続され、一方の直列回路における発光部の接続点と他方の直列回路における発光部の接続点との間に交流電源が接続されてなり、発光部を構成する有機EL素子の順方向電圧をVd、交流電源電圧のピーク値をVsとしたときにn≧Vs/2Vdとなるように発光部が構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、上記目的を達成するために、それぞれn個(nは自然数)の有機EL素子が順方向に直列接続されてなる2つの発光部を備え、各々1つの発光部と整流素子が順方向に接続された2つの直列回路が互いに並列接続され、一方の直列回路における発光部と整流素子の接続点と他方の直列回路における発光部と整流素子の接続点との間に交流電源が接続されてなり、発光部を構成する有機EL素子の順方向電圧をVd、交流電源電圧のピーク値をVsとしたときにn≧Vs/2Vdとなるように発光部が構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、限流要素とスイッチ要素の直列回路が2つの直列回路と並列に接続され、スイッチ要素をオン・オフして発光部の光出力を調整する調光手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1及び2の発明によれば、降圧回路や極性反転回路などを使わずに複数個の有機EL素子を発光させ、簡単な回路構成で所望の光量を得ることができるとともに有機EL素子の長寿命化も図れるという効果がある。
【0011】
請求項3の発明によれば、発光部への供給電力を調整して調光することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施形態1)
本実施形態は、図1に示すようにそれぞれn個(nは自然数)の有機EL素子1が順方向に直列接続されてなる4つの発光部21〜24を備え、2つの発光部21,22が順方向に接続された直列回路と、残り2つの発光部23,24が順方向に接続された直列回路とが互いに並列接続され、一方の直列回路における発光部21,22の接続点と他方の直列回路における発光部23,24の接続点との間に商用の交流電源ACが接続され、さらに、2つの直列回路と並列に限流要素3が接続された構成を有するものである。但し、直列回路における有機EL素子1の順方向電圧Vdの合計が交流電源ACの電源電圧Vsよりも十分に高い場合には限流要素3を設けなくてもよい。
【0013】
本実施形態において、交流電源ACの電源電圧(以下、交流電源電圧と呼ぶ。)が図示した極性であるときは、交流電源AC→発光部21→限流要素3→発光部24→交流電源ACの経路で電流が流れて2つの発光部21,24の有機EL素子1が発光する。このとき、交流電源ACと2つの発光部21,23からなる閉ループに着目すると、1つの有機EL素子1の順方向電圧をVd、1つの有機EL素子1の逆方向電圧をVr、交流電源電圧のピーク値をVsとすると
Vs=n×Vd+n×Vr
の関係が成立する。ここで、有機EL素子1に印加可能な逆方向電圧Vrは順方向電圧Vdとほぼ等しいので、上記式のVrをVdに置き換えて逆方向電圧が順方向電圧以下となる条件を求めると
Vs≦2n×Vd
となり、さらに、この不等式を変形すると
n≧Vs/2Vd (1)
の関係が得られる。
【0014】
すなわち、発光部23を構成する有機EL素子1の個数nをVs/2Vd以上の自然数とすれば、発光部23に印加される逆方向電圧Vrを順方向電圧Vd以下とすることができる。この条件は他の全ての発光部21,22,24にも共通であるから、結局、有機EL素子1の個数nが上記(1)の不等式を満たすように4つの発光部21〜24を構成すれば、降圧回路や極性反転回路などを使わずに複数個の有機EL素子1を発光させて簡単な回路構成で所望の光量を得ることができ、しかも、交流電源電圧の極性に応じて順方向電圧Vd以下の逆方向電圧Vrを自動的に有機EL素子1に印加して有機EL素子1の長寿命化が図れるという利点がある。
【0015】
なお、図2に示すように直列回路を構成する一方の発光部(例えば、発光部21と23)の代わりに整流素子(ダイオードD1,D3)を接続しても構わない。この場合も、有機EL素子1の個数nが上記(1)の不等式を満たすように2つの発光部22,24を構成すれば、降圧回路や極性反転回路などを使わずに複数個の有機EL素子1を発光させて簡単な回路構成で所望の光量を得ることができるとともに、交流電源電圧の極性に応じて順方向電圧Vd以下の逆方向電圧Vrを自動的に有機EL素子1に印加して有機EL素子1の長寿命化が図れ、しかも、配線が簡略化できるという利点がある。
【0016】
(実施形態2)
本実施形態は、図3に示すように限流要素3と直列にMOSFETからなるスイッチ要素Q1が接続され、スイッチ要素Q1をオン・オフして発光部21〜24の光出力を調整(調光)する調光制御回路4を備えた点に特徴がある。但し、基本的な構成は実施形態1と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0017】
調光制御回路4は、図4に示すように交流電源電圧を検出し、ピーク値を中心としてスイッチ要素Q1のオン期間Tonを変化させることで発光部21〜24を調光する。あるいは、図5に示すように交流電源電圧のゼロクロス点を検出し、スイッチ要素Q1をオンする位相を変化させることで発光部21〜24を調光することも可能である。なお、図2に示した回路構成においても同様にスイッチ要素Q1と調光制御回路4を設けることで調光可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態1を示す回路図である。
【図2】同上の他の構成を示す回路図である。
【図3】本発明の実施形態2を示す回路図である。
【図4】同上の動作説明図である。
【図5】同上の動作説明図である。
【図6】従来例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0019】
AC 交流電源
1 有機EL素子
1〜24 発光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれn個(nは自然数)の有機EL素子が順方向に直列接続されてなる4つの発光部を備え、各々2つの発光部が順方向に接続された2つの直列回路が互いに並列接続され、一方の直列回路における発光部の接続点と他方の直列回路における発光部の接続点との間に交流電源が接続されてなり、発光部を構成する有機EL素子の順方向電圧をVd、交流電源電圧のピーク値をVsとしたときにn≧Vs/2Vdとなるように発光部が構成されていることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
それぞれn個(nは自然数)の有機EL素子が順方向に直列接続されてなる2つの発光部を備え、各々1つの発光部と整流素子が順方向に接続された2つの直列回路が互いに並列接続され、一方の直列回路における発光部と整流素子の接続点と他方の直列回路における発光部と整流素子の接続点との間に交流電源が接続されてなり、発光部を構成する有機EL素子の順方向電圧をVd、交流電源電圧のピーク値をVsとしたときにn≧Vs/2Vdとなるように発光部が構成されていることを特徴とする照明装置。
【請求項3】
限流要素とスイッチ要素の直列回路が2つの直列回路と並列に接続され、スイッチ要素をオン・オフして発光部の光出力を調整する調光手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−122983(P2007−122983A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311975(P2005−311975)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】