照明装置
【課題】充分な照明強度が得られるとともに照度分布の均一性を実現できる照明装置を提供する。
【解決手段】本発明の照明装置は、複数のLEDチップが面上に配列されてなるLED光源15と、該LED光源と対向する側に凹曲面状の光入射面21a−1、21b−1を備えるとともに前記LED光源とは反対側に凸曲面状の光出射面21a−2、21b−2を備えた、1の、又は、直列に配置された複数の入射側レンズ21A、21Bと、該入射側レンズに対して前記LED光源とは反対側に配置された集光レンズ22とを具備し、前記1又は複数の入射側レンズの前記光入射面と前記光出射面のうち少なくとも一つ21a−1が粗面であることを特徴とする。
【解決手段】本発明の照明装置は、複数のLEDチップが面上に配列されてなるLED光源15と、該LED光源と対向する側に凹曲面状の光入射面21a−1、21b−1を備えるとともに前記LED光源とは反対側に凸曲面状の光出射面21a−2、21b−2を備えた、1の、又は、直列に配置された複数の入射側レンズ21A、21Bと、該入射側レンズに対して前記LED光源とは反対側に配置された集光レンズ22とを具備し、前記1又は複数の入射側レンズの前記光入射面と前記光出射面のうち少なくとも一つ21a−1が粗面であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は照明装置に係り、特に、光学レンズ等の光学部材の検査用照明として好適な照明装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光学レンズの検査時においては、光学レンズ等の光学部材に照明装置から放出される光を照射した状態で光学部材の表面の傷や汚れ等を検査することが行われている。この場合に、照明装置により照明された光学部材を撮影して得た画像に基づいて検査を行うこともある。このような検査用の照明装置としては、近年、光源としてLED(発光ダイオード)を用いたものが多く提供されるようになってきている。また、光学部材の傷や汚れを高いコントラストで検出できるようにするために、発光部分の形状を輪帯状に構成したもの(輪帯照明)、光学レンズ等の表面を粗面状にして乱反射させるなどの光拡散手段を用いるものなどが提案されている(以下の特許文献1乃至3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−10380号公報
【特許文献2】特開2008−139708号公報
【特許文献3】特開2008−108618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の検査用照明装置においては、複数の樹脂レンズ付きのLED素子を用いているために、装置が大型化する割には光強度が不十分であり、しかも、LED素子の樹脂レンズによる指向性を前提に装置を設計しなければならないという問題点がある。また、照明光の出射部のレンズ面等を粗面化して光を拡散させる場合には、照明光が出射部において散乱することで、充分な集光性を得ることができないとともに照明効率が低下するという問題点がある。
【0005】
また、樹脂レンズが付随しない複数のLEDチップを配列させた照明用の大光量のLED光源(例えば、マルチチップ方式のLED光源)を用いることも考えられるが、この場合には、光強度は十分に得られるものの、LED光源の発光パターンが投射されやすくなり、均一な照明を行うことが難しいという問題点が予想される。特に、ランプ用のLED光源の場合、単に室内等を照明する用途であれば問題は生じないものの、検査用照明として用いる場合には発光パターンが検査対象物に投射されやすくなり、均一な照度が得られないことにより正確な検査或いは判定が難しくなるという問題が考えられる。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、充分な照明強度が得られるとともにLEDの発光パターンが投射されにくい照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる実情に鑑み、本発明の照明装置は、複数のLEDチップが面上に配列されてなるLED光源と、該LED光源と対向する側に凹曲面状の光入射面を備えるとともに前記LED光源とは反対側に凸曲面状の光出射面を備えた、1の、又は、直列に配置された複数の入射側レンズと、該入射側レンズに対して前記LED光源とは反対側に配置された集光レンズとを具備し、前記1又は複数の入射側レンズの前記光入射面と前記光出射面のうち少なくとも一つが粗面であることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、LED光源の放出光は、入射側レンズの光入射面と光出射面のうち少なくとも一つが粗面であることから、入射側レンズを通過する際に散乱され、その後、入射側レンズの光出射面から出射された光が集光レンズにより集光された後に出射される。ここで、入射側レンズの光入射面が凹曲面状であることから、照明装置の光軸方向の距離を抑制しつつLED光源と光入射面との間の距離を確保しやすくなるとともに、LED光源からの放出光を広い角度範囲で取り込むことができ、しかも、入射側レンズの光学面が粗面であることでLED光源に近い場所で散乱させることができるため、照明光の出射効率を確保しつつ照度分布の均一性を得ることができる。また、入射側レンズは凹曲面状の光入射面を有するために集光度に制約を受けるが、集光レンズを別途設けることにより集光性を高めることができるため、必要な照度を容易に得ることができる。さらに、入射側レンズの粗面で光を散乱させた後に集光レンズで集光するので、照明光の出射時における効率の低下を抑制できる。
【0009】
本発明において、前記入射側レンズの前記光入射面が粗面であり、前記光出射面は平滑面であることが好ましい。これによれば、上記の効果に加えて、入射側レンズの凹曲面状の光入射面で上記放出光を散乱させることができるため、よりLED光源に近い場所で散乱させることができ、しかも光出射面が凸曲面状であるために散乱光を効率的に集光して集光レンズへ向けて出射できる。したがって、充分な散乱効果を得てより均一な照明が可能になると同時に、効率的に照射対象に光を集光することができるため照度を高めることができる。
【0010】
本発明において、複数の前記入射側レンズが直列に配列され、前記LED光源に最も近い前記入射側レンズの前記光入射面が粗面であり、前記複数の入射側レンズの他の光学面が平滑面であることが好ましい。これによれば、複数の入射側レンズを用いることによってさらに照明効率を高めることができるとともに、最も近い光入射面が粗面とされ、他の光学面が平滑面とされることで、光の効率利用と照明分布の均一化をより高次元で両立できる。
【0011】
本発明において、前記LED光源の周囲で、かつ、前記入射側レンズの前記光入射面に対向する位置に配置された光検出器と、前記光検出器により検出された光量に基づいて前記LED光源を制御駆動する制御駆動手段と、をさらに具備することが好ましい。これによれば、上記粗面で散乱された光によって高精度かつ安定的にLED光源の発光量を計測できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、充分な照明強度が効率的に得られるとともに均一な照度分布が実現できる照明装置を提供できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る実施形態の照明装置の分解斜視図。
【図2】同実施形態の照明装置を斜め前方より見た状態を示す斜視図。
【図3】同実施形態の照明装置の本体を斜め後方から見た状態を示す斜視図。
【図4】同実施形態の照明装置の縦断面図。
【図5】同実施形態のLED光源近傍の正面図。
【図6】同実施形態のLED光源近傍の断面図(a)及びLED光源の模式的断面図。
【図7】同実施形態の光学系の概略構成図。
【図8】同実施形態のLED光源側の入射側レンズによる光散乱状態を示す概略構成図。
【図9】入射側レンズに平滑な光入射面を備えた平凸レンズを用いた場合(比較例1)の照度分布を示す写真。
【図10】入射側レンズに平滑な光入射面を備えたメニスカスレンズを用いた場合(比較例2)の照度分布を示す写真。
【図11】入射側レンズに粗面化された光入射面を備えた平凸レンズを用いた場合(比較例3)の照度分布を示す写真。
【図12】入射側レンズに粗面化されたメニスカスレンズを用いた場合(実施例)の照度分布を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明に係る照明装置の実施形態の分解斜視図、図2は同実施形態を斜め前方から見た外観斜視図、図3は同実施形態の本体を斜め後方から見た斜視図、図4は同実施形態の本体の縦断面図である。なお、本実施形態の照明装置は、光学部材の検査用照明装置の他に、医療用、歯科用の照明装置としても好適である。
【0015】
この照明装置10は、図2に示すように、円筒状の本体10Aと、本体10Aを適宜の場所において支持し若しくは取り付けるための保持具10Bとを有する。本体10Aは図示例では円筒状の鏡筒状に構成されている。本体10Aは、内部に収容空間を備えた主ケース部(本体ハウジング)11と、この主ケース部11の後部開口を閉鎖する後部板12とを有する。また、主ケース部11の前部には照明ケース部13が取り付けられ、この照明ケース部13の前部に出射ケース部14が装着される。主ケース部11と照明ケース部13はネジ構造等で着脱可能に構成され、また、照明ケース部13と出射ケース部14もネジ構造等で着脱可能に構成されている。
【0016】
図1に示すように、主ケース部11の前部には板状の支持部11aが設けられ、その周囲に前方へ突出する円筒状の周囲枠11bが設けられ、この周囲枠11bの外周面上に照明ケース部13と螺合する雄ネジ部が形成される。支持部11aの外面上にはLED光源15が取り付けられている。また、主ケース部11の内部には回路基板16が収容される。この回路基板16にはLED光源15を制御する光源制御回路及び光源駆動回路からなる制御駆動回路16aが形成される。また、回路基板16には前方へ突出する突き出し部が設けられ、この突き出し部の先端に光検出器17が実装されている。この光検出器17は、支持部11aに設けられた開口部11cを通して支持部11aの前方に露出した位置に配置される。さらに、LED光源15は支持部11aに設けられた別の開口部11dを通して回路基板16に接続される配線16bに接続される。
【0017】
回路基板16は後部板12に取り付けられ、図3に示すように、回路基板16の後部に実装された電源スイッチ18A及び光量設定スイッチ18Bが後部板12の複数の開口部を通して後方へ露出している。また、後部板12上には電源コード19Bを接続する電源コネクタ19Aも設けられている。さらに、後部板12の開口部を通して外部の電源スイッチ18C(図2参照)に接続される配線16bが導出される。
【0018】
上記制御駆動回路16aの光源制御回路は、光検出器17の検出信号に基づいてLED光源15の放出光量を検出し、この検出された放出光量に応じてLED光源15の上記光源駆動回路に対する制御信号を出力する。当該光源駆動回路は、上記の制御信号に基づいてLED光源15の駆動態様を決定する。例えば、光源駆動回路が定電流回路であれば、当該定電流回路の電流値が設定される。
【0019】
LED光源15の前方には入射側レンズ鏡筒21が配置される。この入射側レンズ鏡筒21は、上記主ケース部11の周囲枠11bの内側に嵌合される。入射側レンズ鏡筒21の内部には、図4に示すように、凸メニスカスレンズである入射側レンズ21A、21Bが直列に保持されている。入射側レンズ鏡筒21の前方には照明ケース部13を介して出射ケース部14に保持された両凸レンズである集光レンズ22が配置される。
【0020】
主ケース部11と照明ケース部13は共にアルミニウム(合金)等の金属といった熱伝動性の高い素材で形成されるとともに、その外周面には凹凸状(リング状)の放熱フィン11f、13fが一体に設けられている。また、後部板12や出射ケース部14も同様に金属で構成されることが好ましい。これは、LED光源15において生ずる熱を上記支持部11aから外周部に伝達させた後に効率的に放散させるためである。
【0021】
また、本体10Aの内部の迷光を低減するために、少なくとも、主ケース部11の上記支持部11aの外面、周囲枠11bの内面、入射側レンズ鏡筒21の内外面、照明ケース部13の内面及び出射ケース部14の内面は、黒色アルマイト処理、黒色アクリル樹脂塗装等の艶消し黒色塗装などといった反射防止処理が施されて光反射を抑制した面とされている。本実施形態では、主ケース部11、後部板12、照明ケース部13及び出射ケース部14の全表面に上記の反射防止処理が施されている。
【0022】
図4に示すように、本実施形態においては、LED光源15の光出射範囲の径よりも、入射側レンズ21Aの有効径(LED光源15から放出された光束が自由に通過できる区域の直径、以下同様。)が大きく、入射側レンズ21Aの有効径よりもLED光源15とは反対側に配置される入射側レンズ21Bの有効径が大きく構成され、さらに、入射側レンズ21Bの有効径よりも集光レンズ22の有効径が大きくなるように構成されている。照明ケース部13は、入射側レンズ鏡筒21の前部から集光レンズ22へ向けて漸次拡径する内面13aを有している。図示例の場合、内面13aは前方へ向けて広がる円錐面状に構成される。
【0023】
より具体的に述べると、内面13aは、入射側レンズ21A、21Bの有効径内から集光用レンズ22の有効径内に向かう光束を遮光しないように構成される。すなわち、図7に示すように、内面13aは、入射側レンズ21Bの有効径を示す円上から集光レンズ22の有効径を示す円上に向かう円錐面、或いは、当該円錐面の外側に沿った円錐面となっている。このため、入射側レンズ21A、21Bで集光された有効径内を通過した光束以外の迷光の少なくとも一部は内面13aによって遮断される。
【0024】
また、出射ケース部14の内部には、集光レンズ22の周囲から前方へ突出する遮光面14aが設けられている。図示例では、遮光面14aは光軸20と平行な円筒面となっている。ただし、この遮光面14aは、入射側レンズ21A、21Bから集光レンズ22へと向かう有効径内を通過した光束以外の迷光の少なくとも一部を遮断できるものであれば特に限定されない。この場合、遮光面14aは、上記の有効径内を通過して集光レンズ22から出射した光束の全てを通過させることが可能となるように構成されることがより望ましい。
【0025】
図5は主ケース部11の支持部11a上の構造を拡大して示す拡大部分平面図、図6(a)は同構造を拡大して示す断面図、図6(b)はLED光源15の拡大断面図である。
【0026】
支持部11a上にはLED光源15が密接固定されている。LED光源15は、アルミニウムやアルミニウム合金等で構成された基板151と、この基板151上に絶縁膜152を介して所定のパターンに形成された配線層153A、153Bとを有する。また、基板151上には絶縁層154を介してLEDチップ155が形成されている。基板151上においては領域15A内に複数のLEDチップ155が配置されている。これらのLEDチップ155は配線層153A、153Bの隣接する配線部分に金ワイヤ156A、156B等の導電部材を介して導電接続されている。図示例の場合、複数のLEDチップ155はいずれも配線層153Aと153Bの間に並列に接続される。
【0027】
上記配線層153Aと153Bはそれぞれ配線16bを介して上記の制御駆動回路16aに接続される。光源制御回路16a内の上記光源制御回路が光検出器17の検出信号に応じて所定の制御信号を出力したとき、上記光源駆動回路は当該制御信号に応じてLED光源15の配線層153Aと153Bの間に所定の電力(電流)を供給する。
【0028】
複数のLEDチップ155が配列されてなる上記領域15Aを含む範囲には、YAGなどの蛍光材料を分散させた透明樹脂よりなる透光性樹脂層157が形成される。透光性樹脂層157は、LEDチップ155の発光特性に応じて、照明装置の照明光として要求される照明特性(出射光強度の波長依存性や出射角依存性)を実現する。
【0029】
なお、本実施形態に用いられるLED光源15は、上記蛍光材料を用いた白色ダイオードであるが、照明光として要求される種々の照明特性が得られるものであれば、種々の蛍光体方式、例えば三色LED方式であってもよいなど、上記の形式に限定されるものではない。例えば、黄色のフィルタを光学系に設けることで白色化したものであってもよく、複数色のLEDを樹脂封止なしで配列させたものであってもよい。これらのように樹脂封止しないことで光源寿命を延ばすことができる場合がある。
【0030】
また、本実施形態のLED光源15は、多数のLEDチップを小面積内に高密度で配列させて高い輝度を実現するものであるが、複数のLEDチップが設置面(図示例では平面)上に配列されているものであれば、LEDチップの個数や輝度についても何ら限定されるものではない。ただし、LED光源15として必要な輝度を得る観点からは、LEDチップ155の配置密度は10個/cm2以上であることが好ましく、50個/cm2以上であることが望ましい。一般的には、上記配置密度は50〜150個/cm2の範囲内が好ましい。LEDチップ155の単体の平面サイズは一般的には0.2〜2.0mm角程度である。なお、本実施形態のLEDチップ155は半導体チップそのもので構成されるが、LED光源15は、当該半導体チップを封止した表面実装型のパッケージLED(0.6〜7.0mm角程度)を基板上に実装した構造であってもよい。LED光源15の表面(基板151の表面、すなわち、少なくとも上記領域15Aの発光素子以外の表面部分)は反射面とされ、LEDチップ155から放出される光や入射レンズ21Aの側から入射する光を反射するように構成される。
【0031】
図7は本実施形態の光学系の全体構成を示す図である。LED光源15の発光領域15a(上記の領域15Aとほぼ対応する平面)からは、比較的広い範囲に光が放出される。この放出角範囲(例えば、最も光強度の高い方向(光軸20上)の光強度の半分の光強度となる角度範囲、すなわち半値角)は、光軸20を中心とした約110〜120度程度の範囲である。なお、入射側レンズ21Aの有効径とLED光源15からの距離を適宜に設定することで、上記の放出角範囲内の光が全て入射側レンズ21Aの有効径内を通過するように構成することが好ましい。図示例では140度の放出角の範囲内の光が光学系の有効径内を通過できるように構成される。
【0032】
上記の放出光は最初に入射側レンズ21Aに入射する。入射側レンズ21Aはメニスカスレンズであり、その光入射面21a−1は凹曲面状(図示例では凹球面、以下同様。)とされ、光出射面21a−2は凸曲面状(図示例では凸球面、以下同様。)とされている。光入射面21a−1が凹曲面状とされることで、上述のように広い放出角を有するLED光源15の放出光を効率的に入射側レンズ21A内に入射させることができる。また、入射側レンズ21Aは光入射面21a−1の曲率よりも光出射面21a−2の曲率の方が大きい凸メニスカスレンズとなっているため、集光能を有し、広い範囲にて入射した上記放出光をより小さな角度範囲に収束させることができる。
【0033】
入射側レンズ21Aの有効径21arは、上記発光領域15aの外径15r(光軸20を中心として最も外側に位置する部分を通る円を描いた時の直径)よりも大きく設定されている。また、発光領域15aは、入射側レンズ21A(並びに21B)の光入射面21a−1(同21b−1)の曲率中心よりも光軸20に沿った入射側レンズ21A(同21B)の側の位置に配置されている。これによって、より広い角度範囲の放出光が入射側レンズ21A(同21B)内に入射できるように構成できる。また、このように広い角度範囲の放出光が入射側レンズ21A内に入射できるように構成しても、光入射面21a−1が凹曲面状に構成されることにより、光軸20上の発光領域15aと入射側レンズ21Aとの距離を確保することができるため、後述する粗面による散乱効果と合わせて、基板151による反射によりLED光源15の放出光を充分に拡散させることができる。
【0034】
なお、本実施形態では外径15r内から放出された上記放出角範囲の光が全て光学系に入射するように構成されることが好ましい。この場合、図示例のように発光領域15aが円形ではなくても、外径15rは発光領域15aの内接円ではなく外接円(半径方向の最も外側にある点(角部)を通過する円)とすることが望ましい。これは、LED光源15から放出される光を最大限効率的に照明光として利用することができるようになる(光の利用効率を増大できる)からである。また、このようにすると光学系に発光領域15aの発光パターンを反映した光がそのまま取り込まれることとなるが、発光領域15aの発光パターン形状による照明分布への影響は粗面による照度分布の均一化によってなくすことができるため、問題は生じない。
【0035】
上記の入射側レンズ21Aを通過した光は、その後、入射側レンズ21Bを通過する。入射側レンズ21Bはメニスカスレンズであり、光入射面21b−1は凹曲面状であり、光出射面21b−2は凸曲面状である。この入射側レンズ21Bも光入射面21b−1の曲率よりも光出射面21b−2の曲率の方が大きな凸メニスカスレンズとなっているため、集光能を有し、広い範囲にて入射した上記出射光をより小さな角度範囲に収束させることができる。この入射側レンズ21Bの有効径21brは上記入射側レンズ21Aの有効径21arよりも大きく設定されている。これにより、入射側レンズ21Aの集光性が低くても、入射側レンズ21Aからのより広い角度範囲の出射光が入射側レンズ21Bに入射できるように構成でき、光の利用効率を高めることができる。
【0036】
光入射面21b−1の曲率は光入射面21a−1の曲率よりも小さい。これは、入射側レンズ21Aの集光性によりLED光源15の放出光の入射角よりも入射側レンズ21Aからの出射光の出射角が小さくなるため、入射側レンズ21Aの有効径内を通過した光を全て取り込むために要する曲率が小さくなるからである。また、このように光入射面21b−1の曲率が小さくなることによって入射側レンズ21Bの集光性を高めることも容易になる。ここで、入射側レンズ21Aの有効径内を通過した光が全て入射側レンズ21Bの有効径内を通過するように構成することが好ましく、例えば、上記放射角範囲内の光束が全て入射側レンズ21A、21Bの有効径内を通過するように構成することが望ましい。
【0037】
なお、本実施形態では、二つの入射側レンズ21Aと21Bを直列に配列させているが、単一の入射側レンズのみを設けてもよく、或いは、三以上の入射側レンズを直列に配列させても構わない。これらのレンズ群の構成は、例えば照明装置10を検査用照明として用いる場合には、LED光源15の発光輝度及び発光領域15aの大きさと、検査時に要求される照度及び照明範囲との関係によって決められる。
【0038】
上記の入射側レンズ21A、21Bの前方には集光レンズ22が配置される。集光レンズ22は集光性を有していれば特に限定されるものではないが、本実施形態では光入射面22aと22bのいずれもが凸曲面状である両凸レンズとなっている。これによって充分な集光性能を得ることができる。なお、集光レンズは、集光性を有する光学系であればよく、単一のレンズと、複数のレンズを含むレンズ群のいずれでも構成できる。集光レンズ22の有効径22rは上記入射側レンズ21Bの有効径21brよりも大きい。これにより、入射側レンズ21A、21Bの集光性が低くても、光の利用効率の低下を抑制できる。本実施形態では、入射側レンズ21Bの有効径内から出射した光の全てが集光レンズ22の有効径内を通過するように構成される。
【0039】
上記の光学系において、入射側レンズ21A、21Bの各光学面の少なくとも一つは粗面となっている。図8には、入射側レンズ21Aの光入射面21a−1を粗面とし、他の光学面を平滑面とした例について示してある。この場合、LED光源15から放出された光は最初の光学面である光入射面21a−1上で散乱し、その散乱光のうち、周囲の内面(支持部11a、周囲枠11bの内面、照明ケース13の内面等)で吸収されないもの、例えば、そのまま入射側レンズ21A内に散乱される光やLED光源15によって入射側レンズ21Aの側に反射された光など、が入射側レンズ21Bに入射され、最終的に集光レンズ22で集光されて出射される。
【0040】
上記粗面は、ガラス基材で構成された入射側レンズを例えば粒度#1000番(JIS R6001)の研摩材で研摩することで形成することができ、また、フロスト剤を用いたフロストエッチング処理などで形成することも可能である。なお、樹脂成形で入射側レンズを形成する場合には型面を粗面状とすることで上記粗面を形成することも可能である。
【0041】
上記のように入射側レンズ21A、21Bの光学面を粗面とすることで、LED光源15の放出光を集光して照射した場合でも、LED光源15の発光面15aの発光パターン形状が投射されることを防止でき、均一で高い照度が実現可能になる。このような照明態様は、光学レンズの傷、埃、焼け、泡、その他の汚れなどを検査する場合に極めて有効である。例えば、目視で上記検査を行う場合には、「目合わせ」という作業を行って判断基準を統一して検査を行うものの、照明装置の照度の大小やばらつき、発光パターンの投射などが存在すると、正確な検査を行うことができない。また、照明された光学レンズを撮影した画像を元に検査を行う場合でも、照明条件がばらついたり、発光パターンが投射されたりすると、画像処理による判定においても検査精度が低下することになる。
【0042】
本実施形態では、特に、最初の入射側レンズ21Aの光入射面21a−1を粗面とすることで、光をLED光源15の近くで散乱させることで充分な光拡散作用を得ることができるとともに、その後、入射レンズ21Aの光出射面21a−2と、入射レンズ21B及び集光レンズ22とで集光するようにしているので、高い照度で均一な照明を行うことが可能になっている。
【0043】
特に、本実施形態では、高輝度のLED光源15(図示例の場合には青色発光ダイオードからなるLEDチップ155)から放出される光を用いているため、白熱電球、蛍光灯、ハロゲンランプ等の他の光源と比べて短波長領域の光強度が高い波長分布を有する。具体的には、当該波長分布は、波長450nmのピーク強度(この強度を100%とする)と、波長560nmのより幅広のピーク(強度66%)とを有する。このため、粗面による散乱強度も高くなる特徴を有している。また、後述するようにLEDチップ155から放出される光を樹脂レンズなどの集光素子を介在させずに(必要に応じて上記の蛍光材料を分散させた透光性樹脂層157を介して)そのまま粗面で散乱させることで高い散乱度を実現できる。
【0044】
また、本実施形態では、複数のLEDチップ155を高密度で面上に配列させてなるLED光源15を用いているため、LEDチップ155毎に樹脂レンズ等を設けることができず、実際にチップ毎のレンズ構造を有していない。その結果、発光パターン形状がLEDチップ155の配列パターンに基づいて特殊な形状となっているとともに、LED光源15から放出される光の視野角(放出角範囲)は110〜120度程度と極めて広くなっている。したがって、発光パターン形状がそのまま投射されることによって照明ムラを引き起こす虞があるとともに、上記の広い範囲へ放出される光を効率的に集光しないと高い照度を得ることができない。
【0045】
本実施形態では、LED光源15に隣接する凹曲面状の光入射面21a−1を備えた入射側レンズ21Aを配置することで、LED光源から広い角度範囲で放出された放出光を有効に取り込むことができるとともに、凸曲面状の光出射面21a−2により集光して出射させることができる。したがって、広い放出角範囲を有するLED光源15の放出光を効率的に取り込むとともに効率的に集光することが可能になる。
【0046】
また、本実施形態ではさらにもう一つの入射側レンズ21Bを設け、この入射側レンズ21BについてもLED光源15の側に凹曲面状の光入射面21b−1を備えることで、入射側レンズ21Aから出射された光を広範囲に取り込むことができ、なおかつ、凸曲面状の光出射面21b−2により集光して出射させることができる。したがって、コンパクトな光学系でLED光源15の放出光を効率的に取り込むとともに効率的に集光することができる。
【0047】
本実施形態では、上記入射側レンズ21A、21Bに対してLED光源15とは反対側にさらに集光レンズ22を配置しているので、入射側レンズ21A、21Bから出射した光をさらに集光することができるため、検査工程に適した高い照度を実現することができる。なお、この集光レンズ22としては、図示例のような両凸レンズに限らず、平凸レンズや凸メニスカスレンズなど、結果として集光性を呈するレンズであれば如何なるものであっても構わない。例えば、本実施形態において集光レンズ22を除去して構成した場合には、入射側レンズ21Aを本発明に係る入射側レンズとして、入射側レンズ21Bを本発明に係る集光レンズとして用いた本件発明の実施例の装置構成として把握することができる。
【0048】
本実施形態では、入射側レンズ21A、21Bのいずれかの光学面を粗面とすることにより、集光レンズ22による最終的な集光前にLED光源15の放出光を散乱させることで、LED光源15の発光パターンを消失させることができる。これによって、LED光源15の放出光を集光して高い照度を実現しても、LED光源15の発光パターンが結像するといったことがなくなるため、検査工程において有害な発光パターンに起因する照度のばらつきや波長の分散を防止することができる。
【0049】
特に、本実施形態では、入射側レンズ21A、21Bの光入射面21a−1、21b−1を粗面とすることで、光出射面21a−2、21b−2による集光前にLED光源15の放出光を散乱させることができるため、効率的な集光を妨げにくいという利点がある。この利点は、本実施形態のように複数の入射側レンズ21A、21Bを用いる場合においてLED光源15に隣接する(に最も近い)入射側レンズ21Aの光入射面21a−1を粗面にすることによってさらに強化される。
【0050】
また、本実施形態においては、粗面として形成された入射側レンズ21A、21Bの凹曲面状の光入射面21a−1、21b−1がLED光源15側に向いていることにより、LED光源15の側に向かう散乱光が外側(光軸20より離れる側)に散乱しにくくなるので、このような散乱光がLED光源15若しくはその周囲において反射されて再度入射側レンズ21A、21Bの側に戻ることで照明成分として用いることが可能になるため、さらに効率的な照明が実現できるという効果もある。この利点も、本実施形態のように複数の入射側レンズ21A、21Bを用いる場合においてLED光源15に隣接する(に最も近い)入射側レンズ21Aの光入射面21a−1を粗面にすることによってさらに強化される。
【0051】
本実施形態では、上述のようにLED光源15の周囲に配置された光検出器17でLED光源15の放出光量を検出している。この場合、凹曲面状の光入射面21a−1が粗面であることにより、LED光源15の光が当該光入射面21a−1で散乱されてなる散乱光が光検出器17で主体的に検出されることとなるため、光検出器17の検出光量がLED光源15内の複数のLEDチップ155間のばらつきや経時変化の差による影響を受けにくくなることから、検出光量の高精度化や安定化を図ることができる。この利点も、本実施形態のように複数の入射側レンズ21A、21Bを用いる場合においてLED光源15に隣接する(に最も近い)入射側レンズ21Aの光入射面21a−1を粗面にすることによって検出光量が増大することでさらに強化される。
【0052】
図9乃至図12には、実施例と比較例の照明態様を示す写真を示す。ここで、本実施形態の構成を有する実施例の各レンズはいずれも光学ガラスBK7の球面レンズを用い、各光学面について、LED光源15の発光領域15aの発光面(上記有効径としての口径9.000mm)又は隣接する光学面からの光軸20上の距離と曲率半径をそれぞれ示すと次のとおりである。口径23.000mmの入射レンズ21Aにおいて、光入射面21a−1と上記発光面との距離は6.000mm、光入射面21a−1の曲率半径が−15.000mm、光出射面21a−2と上記光入射面21a−1との距離は5.000mm、光出射面21a−2の曲率半径が−12.000mm、口径32.000mmの入射レンズ21Bにおいて、光入射面21b−1と上記光出射面21a−2との距離は1.000mm、光入射面21b−1の曲率半径が−40.000mm、光出射面12b−2と上記光入射面21b−1との距離は9.000mm、光出射面21b−1の曲率半径が−17.000mm、口径50.000mmの集光レンズ22において、光入射面22aと上記光出射面21b−2との距離は8.950mm、光入射面22aの曲率半径が81.130mm、光出射面22bと上記光入射面22aとの距離は11.000mm、光出射面22bの曲率半径が−81.313mmである。なお、この光学系の焦点距離は1000.000mmとした。
【0053】
一方、上記実施例の光入射面21a−1を平坦な平滑面に変更した、平凸レンズの入射側レンズを用いた場合を比較例1とし、実施例の光入射面21a−1を凹曲面状のままで平滑面に変更した場合を比較例2とし、実施例の光入射面21a−1を粗面であるが平坦面に変更した、平凸レンズを用いた場合を比較例3として、それぞれ実施例と共に照度及び照度分布を調べた。他の光学面は実施例と同じである。ここで、図9は比較例1、図10は比較例2、図11は比較例3、図12は実施例の照明パターンを撮影した写真であり、それぞれ、装置前端から300mmの距離に設置した灰色に塗装した被照明板(金属板)に照射した照明スポットを暗室内で撮影したものである。なお、各写真の上部中央に見られる輝点は被照明板からの直接反射光が写りこんだものである。
【0054】
また、以下の表1には、それぞれ装置前端からの距離において最も照度の高い部分(照明範囲の中央部)を照度計で計測した照度データと、照度分布の均一性(発光パターンの消失度合)の程度及び光の照明効率の程度をそれぞれ4段階で評価した結果を示す。なお、表中の例えば80.00kLは8万ルクスを示す。また、備考欄には光入射面21a−1の光学面の態様(凹曲面状か平坦か、平滑面か粗面か)を示した。
【0055】
【表1】
【0056】
上記の結果、図9乃至図12に示すように、実施例(図12)では発光パターンが完全に消失しているのに対して、比較例1〜3(図9〜図11)はいずれも発光パターンが残存しており、特に、比較例1及び2では発光パターンの形状もはっきりと反映されている。また、実施例、比較例1及び2では照明の全光束量が高いのに対し、比較例3では照度が低下し光束量も少なくなっている。なお、実施例の中心部の照度データは比較例1及び2と比べると低いが、これは照明範囲が広いとともに照度分布が均一であるためである。実施例の照度若しくは光効率(照明範囲に照射される全光束の強度、或いは、LED光源の放出光から照明光を得る際の光の利用効率若しくは割合)は比較例1より高く比較例2と同様に良好である。
【0057】
尚、本発明の照明装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
10…照明装置、10A…本体、10B…保持具、11…主ケース部、12…後部板、13…照明ケース部、14…出射ケース部、11a…支持部、11b…周囲枠、15…LED光源、155…LEDチップ、15a…発光領域、16…回路基板、16a…制御駆動回路、17…光検出器、20…光軸、21…入射側レンズ鏡筒、21A、21B…入射側レンズ、22…集光レンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は照明装置に係り、特に、光学レンズ等の光学部材の検査用照明として好適な照明装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光学レンズの検査時においては、光学レンズ等の光学部材に照明装置から放出される光を照射した状態で光学部材の表面の傷や汚れ等を検査することが行われている。この場合に、照明装置により照明された光学部材を撮影して得た画像に基づいて検査を行うこともある。このような検査用の照明装置としては、近年、光源としてLED(発光ダイオード)を用いたものが多く提供されるようになってきている。また、光学部材の傷や汚れを高いコントラストで検出できるようにするために、発光部分の形状を輪帯状に構成したもの(輪帯照明)、光学レンズ等の表面を粗面状にして乱反射させるなどの光拡散手段を用いるものなどが提案されている(以下の特許文献1乃至3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−10380号公報
【特許文献2】特開2008−139708号公報
【特許文献3】特開2008−108618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の検査用照明装置においては、複数の樹脂レンズ付きのLED素子を用いているために、装置が大型化する割には光強度が不十分であり、しかも、LED素子の樹脂レンズによる指向性を前提に装置を設計しなければならないという問題点がある。また、照明光の出射部のレンズ面等を粗面化して光を拡散させる場合には、照明光が出射部において散乱することで、充分な集光性を得ることができないとともに照明効率が低下するという問題点がある。
【0005】
また、樹脂レンズが付随しない複数のLEDチップを配列させた照明用の大光量のLED光源(例えば、マルチチップ方式のLED光源)を用いることも考えられるが、この場合には、光強度は十分に得られるものの、LED光源の発光パターンが投射されやすくなり、均一な照明を行うことが難しいという問題点が予想される。特に、ランプ用のLED光源の場合、単に室内等を照明する用途であれば問題は生じないものの、検査用照明として用いる場合には発光パターンが検査対象物に投射されやすくなり、均一な照度が得られないことにより正確な検査或いは判定が難しくなるという問題が考えられる。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、充分な照明強度が得られるとともにLEDの発光パターンが投射されにくい照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる実情に鑑み、本発明の照明装置は、複数のLEDチップが面上に配列されてなるLED光源と、該LED光源と対向する側に凹曲面状の光入射面を備えるとともに前記LED光源とは反対側に凸曲面状の光出射面を備えた、1の、又は、直列に配置された複数の入射側レンズと、該入射側レンズに対して前記LED光源とは反対側に配置された集光レンズとを具備し、前記1又は複数の入射側レンズの前記光入射面と前記光出射面のうち少なくとも一つが粗面であることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、LED光源の放出光は、入射側レンズの光入射面と光出射面のうち少なくとも一つが粗面であることから、入射側レンズを通過する際に散乱され、その後、入射側レンズの光出射面から出射された光が集光レンズにより集光された後に出射される。ここで、入射側レンズの光入射面が凹曲面状であることから、照明装置の光軸方向の距離を抑制しつつLED光源と光入射面との間の距離を確保しやすくなるとともに、LED光源からの放出光を広い角度範囲で取り込むことができ、しかも、入射側レンズの光学面が粗面であることでLED光源に近い場所で散乱させることができるため、照明光の出射効率を確保しつつ照度分布の均一性を得ることができる。また、入射側レンズは凹曲面状の光入射面を有するために集光度に制約を受けるが、集光レンズを別途設けることにより集光性を高めることができるため、必要な照度を容易に得ることができる。さらに、入射側レンズの粗面で光を散乱させた後に集光レンズで集光するので、照明光の出射時における効率の低下を抑制できる。
【0009】
本発明において、前記入射側レンズの前記光入射面が粗面であり、前記光出射面は平滑面であることが好ましい。これによれば、上記の効果に加えて、入射側レンズの凹曲面状の光入射面で上記放出光を散乱させることができるため、よりLED光源に近い場所で散乱させることができ、しかも光出射面が凸曲面状であるために散乱光を効率的に集光して集光レンズへ向けて出射できる。したがって、充分な散乱効果を得てより均一な照明が可能になると同時に、効率的に照射対象に光を集光することができるため照度を高めることができる。
【0010】
本発明において、複数の前記入射側レンズが直列に配列され、前記LED光源に最も近い前記入射側レンズの前記光入射面が粗面であり、前記複数の入射側レンズの他の光学面が平滑面であることが好ましい。これによれば、複数の入射側レンズを用いることによってさらに照明効率を高めることができるとともに、最も近い光入射面が粗面とされ、他の光学面が平滑面とされることで、光の効率利用と照明分布の均一化をより高次元で両立できる。
【0011】
本発明において、前記LED光源の周囲で、かつ、前記入射側レンズの前記光入射面に対向する位置に配置された光検出器と、前記光検出器により検出された光量に基づいて前記LED光源を制御駆動する制御駆動手段と、をさらに具備することが好ましい。これによれば、上記粗面で散乱された光によって高精度かつ安定的にLED光源の発光量を計測できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、充分な照明強度が効率的に得られるとともに均一な照度分布が実現できる照明装置を提供できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る実施形態の照明装置の分解斜視図。
【図2】同実施形態の照明装置を斜め前方より見た状態を示す斜視図。
【図3】同実施形態の照明装置の本体を斜め後方から見た状態を示す斜視図。
【図4】同実施形態の照明装置の縦断面図。
【図5】同実施形態のLED光源近傍の正面図。
【図6】同実施形態のLED光源近傍の断面図(a)及びLED光源の模式的断面図。
【図7】同実施形態の光学系の概略構成図。
【図8】同実施形態のLED光源側の入射側レンズによる光散乱状態を示す概略構成図。
【図9】入射側レンズに平滑な光入射面を備えた平凸レンズを用いた場合(比較例1)の照度分布を示す写真。
【図10】入射側レンズに平滑な光入射面を備えたメニスカスレンズを用いた場合(比較例2)の照度分布を示す写真。
【図11】入射側レンズに粗面化された光入射面を備えた平凸レンズを用いた場合(比較例3)の照度分布を示す写真。
【図12】入射側レンズに粗面化されたメニスカスレンズを用いた場合(実施例)の照度分布を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明に係る照明装置の実施形態の分解斜視図、図2は同実施形態を斜め前方から見た外観斜視図、図3は同実施形態の本体を斜め後方から見た斜視図、図4は同実施形態の本体の縦断面図である。なお、本実施形態の照明装置は、光学部材の検査用照明装置の他に、医療用、歯科用の照明装置としても好適である。
【0015】
この照明装置10は、図2に示すように、円筒状の本体10Aと、本体10Aを適宜の場所において支持し若しくは取り付けるための保持具10Bとを有する。本体10Aは図示例では円筒状の鏡筒状に構成されている。本体10Aは、内部に収容空間を備えた主ケース部(本体ハウジング)11と、この主ケース部11の後部開口を閉鎖する後部板12とを有する。また、主ケース部11の前部には照明ケース部13が取り付けられ、この照明ケース部13の前部に出射ケース部14が装着される。主ケース部11と照明ケース部13はネジ構造等で着脱可能に構成され、また、照明ケース部13と出射ケース部14もネジ構造等で着脱可能に構成されている。
【0016】
図1に示すように、主ケース部11の前部には板状の支持部11aが設けられ、その周囲に前方へ突出する円筒状の周囲枠11bが設けられ、この周囲枠11bの外周面上に照明ケース部13と螺合する雄ネジ部が形成される。支持部11aの外面上にはLED光源15が取り付けられている。また、主ケース部11の内部には回路基板16が収容される。この回路基板16にはLED光源15を制御する光源制御回路及び光源駆動回路からなる制御駆動回路16aが形成される。また、回路基板16には前方へ突出する突き出し部が設けられ、この突き出し部の先端に光検出器17が実装されている。この光検出器17は、支持部11aに設けられた開口部11cを通して支持部11aの前方に露出した位置に配置される。さらに、LED光源15は支持部11aに設けられた別の開口部11dを通して回路基板16に接続される配線16bに接続される。
【0017】
回路基板16は後部板12に取り付けられ、図3に示すように、回路基板16の後部に実装された電源スイッチ18A及び光量設定スイッチ18Bが後部板12の複数の開口部を通して後方へ露出している。また、後部板12上には電源コード19Bを接続する電源コネクタ19Aも設けられている。さらに、後部板12の開口部を通して外部の電源スイッチ18C(図2参照)に接続される配線16bが導出される。
【0018】
上記制御駆動回路16aの光源制御回路は、光検出器17の検出信号に基づいてLED光源15の放出光量を検出し、この検出された放出光量に応じてLED光源15の上記光源駆動回路に対する制御信号を出力する。当該光源駆動回路は、上記の制御信号に基づいてLED光源15の駆動態様を決定する。例えば、光源駆動回路が定電流回路であれば、当該定電流回路の電流値が設定される。
【0019】
LED光源15の前方には入射側レンズ鏡筒21が配置される。この入射側レンズ鏡筒21は、上記主ケース部11の周囲枠11bの内側に嵌合される。入射側レンズ鏡筒21の内部には、図4に示すように、凸メニスカスレンズである入射側レンズ21A、21Bが直列に保持されている。入射側レンズ鏡筒21の前方には照明ケース部13を介して出射ケース部14に保持された両凸レンズである集光レンズ22が配置される。
【0020】
主ケース部11と照明ケース部13は共にアルミニウム(合金)等の金属といった熱伝動性の高い素材で形成されるとともに、その外周面には凹凸状(リング状)の放熱フィン11f、13fが一体に設けられている。また、後部板12や出射ケース部14も同様に金属で構成されることが好ましい。これは、LED光源15において生ずる熱を上記支持部11aから外周部に伝達させた後に効率的に放散させるためである。
【0021】
また、本体10Aの内部の迷光を低減するために、少なくとも、主ケース部11の上記支持部11aの外面、周囲枠11bの内面、入射側レンズ鏡筒21の内外面、照明ケース部13の内面及び出射ケース部14の内面は、黒色アルマイト処理、黒色アクリル樹脂塗装等の艶消し黒色塗装などといった反射防止処理が施されて光反射を抑制した面とされている。本実施形態では、主ケース部11、後部板12、照明ケース部13及び出射ケース部14の全表面に上記の反射防止処理が施されている。
【0022】
図4に示すように、本実施形態においては、LED光源15の光出射範囲の径よりも、入射側レンズ21Aの有効径(LED光源15から放出された光束が自由に通過できる区域の直径、以下同様。)が大きく、入射側レンズ21Aの有効径よりもLED光源15とは反対側に配置される入射側レンズ21Bの有効径が大きく構成され、さらに、入射側レンズ21Bの有効径よりも集光レンズ22の有効径が大きくなるように構成されている。照明ケース部13は、入射側レンズ鏡筒21の前部から集光レンズ22へ向けて漸次拡径する内面13aを有している。図示例の場合、内面13aは前方へ向けて広がる円錐面状に構成される。
【0023】
より具体的に述べると、内面13aは、入射側レンズ21A、21Bの有効径内から集光用レンズ22の有効径内に向かう光束を遮光しないように構成される。すなわち、図7に示すように、内面13aは、入射側レンズ21Bの有効径を示す円上から集光レンズ22の有効径を示す円上に向かう円錐面、或いは、当該円錐面の外側に沿った円錐面となっている。このため、入射側レンズ21A、21Bで集光された有効径内を通過した光束以外の迷光の少なくとも一部は内面13aによって遮断される。
【0024】
また、出射ケース部14の内部には、集光レンズ22の周囲から前方へ突出する遮光面14aが設けられている。図示例では、遮光面14aは光軸20と平行な円筒面となっている。ただし、この遮光面14aは、入射側レンズ21A、21Bから集光レンズ22へと向かう有効径内を通過した光束以外の迷光の少なくとも一部を遮断できるものであれば特に限定されない。この場合、遮光面14aは、上記の有効径内を通過して集光レンズ22から出射した光束の全てを通過させることが可能となるように構成されることがより望ましい。
【0025】
図5は主ケース部11の支持部11a上の構造を拡大して示す拡大部分平面図、図6(a)は同構造を拡大して示す断面図、図6(b)はLED光源15の拡大断面図である。
【0026】
支持部11a上にはLED光源15が密接固定されている。LED光源15は、アルミニウムやアルミニウム合金等で構成された基板151と、この基板151上に絶縁膜152を介して所定のパターンに形成された配線層153A、153Bとを有する。また、基板151上には絶縁層154を介してLEDチップ155が形成されている。基板151上においては領域15A内に複数のLEDチップ155が配置されている。これらのLEDチップ155は配線層153A、153Bの隣接する配線部分に金ワイヤ156A、156B等の導電部材を介して導電接続されている。図示例の場合、複数のLEDチップ155はいずれも配線層153Aと153Bの間に並列に接続される。
【0027】
上記配線層153Aと153Bはそれぞれ配線16bを介して上記の制御駆動回路16aに接続される。光源制御回路16a内の上記光源制御回路が光検出器17の検出信号に応じて所定の制御信号を出力したとき、上記光源駆動回路は当該制御信号に応じてLED光源15の配線層153Aと153Bの間に所定の電力(電流)を供給する。
【0028】
複数のLEDチップ155が配列されてなる上記領域15Aを含む範囲には、YAGなどの蛍光材料を分散させた透明樹脂よりなる透光性樹脂層157が形成される。透光性樹脂層157は、LEDチップ155の発光特性に応じて、照明装置の照明光として要求される照明特性(出射光強度の波長依存性や出射角依存性)を実現する。
【0029】
なお、本実施形態に用いられるLED光源15は、上記蛍光材料を用いた白色ダイオードであるが、照明光として要求される種々の照明特性が得られるものであれば、種々の蛍光体方式、例えば三色LED方式であってもよいなど、上記の形式に限定されるものではない。例えば、黄色のフィルタを光学系に設けることで白色化したものであってもよく、複数色のLEDを樹脂封止なしで配列させたものであってもよい。これらのように樹脂封止しないことで光源寿命を延ばすことができる場合がある。
【0030】
また、本実施形態のLED光源15は、多数のLEDチップを小面積内に高密度で配列させて高い輝度を実現するものであるが、複数のLEDチップが設置面(図示例では平面)上に配列されているものであれば、LEDチップの個数や輝度についても何ら限定されるものではない。ただし、LED光源15として必要な輝度を得る観点からは、LEDチップ155の配置密度は10個/cm2以上であることが好ましく、50個/cm2以上であることが望ましい。一般的には、上記配置密度は50〜150個/cm2の範囲内が好ましい。LEDチップ155の単体の平面サイズは一般的には0.2〜2.0mm角程度である。なお、本実施形態のLEDチップ155は半導体チップそのもので構成されるが、LED光源15は、当該半導体チップを封止した表面実装型のパッケージLED(0.6〜7.0mm角程度)を基板上に実装した構造であってもよい。LED光源15の表面(基板151の表面、すなわち、少なくとも上記領域15Aの発光素子以外の表面部分)は反射面とされ、LEDチップ155から放出される光や入射レンズ21Aの側から入射する光を反射するように構成される。
【0031】
図7は本実施形態の光学系の全体構成を示す図である。LED光源15の発光領域15a(上記の領域15Aとほぼ対応する平面)からは、比較的広い範囲に光が放出される。この放出角範囲(例えば、最も光強度の高い方向(光軸20上)の光強度の半分の光強度となる角度範囲、すなわち半値角)は、光軸20を中心とした約110〜120度程度の範囲である。なお、入射側レンズ21Aの有効径とLED光源15からの距離を適宜に設定することで、上記の放出角範囲内の光が全て入射側レンズ21Aの有効径内を通過するように構成することが好ましい。図示例では140度の放出角の範囲内の光が光学系の有効径内を通過できるように構成される。
【0032】
上記の放出光は最初に入射側レンズ21Aに入射する。入射側レンズ21Aはメニスカスレンズであり、その光入射面21a−1は凹曲面状(図示例では凹球面、以下同様。)とされ、光出射面21a−2は凸曲面状(図示例では凸球面、以下同様。)とされている。光入射面21a−1が凹曲面状とされることで、上述のように広い放出角を有するLED光源15の放出光を効率的に入射側レンズ21A内に入射させることができる。また、入射側レンズ21Aは光入射面21a−1の曲率よりも光出射面21a−2の曲率の方が大きい凸メニスカスレンズとなっているため、集光能を有し、広い範囲にて入射した上記放出光をより小さな角度範囲に収束させることができる。
【0033】
入射側レンズ21Aの有効径21arは、上記発光領域15aの外径15r(光軸20を中心として最も外側に位置する部分を通る円を描いた時の直径)よりも大きく設定されている。また、発光領域15aは、入射側レンズ21A(並びに21B)の光入射面21a−1(同21b−1)の曲率中心よりも光軸20に沿った入射側レンズ21A(同21B)の側の位置に配置されている。これによって、より広い角度範囲の放出光が入射側レンズ21A(同21B)内に入射できるように構成できる。また、このように広い角度範囲の放出光が入射側レンズ21A内に入射できるように構成しても、光入射面21a−1が凹曲面状に構成されることにより、光軸20上の発光領域15aと入射側レンズ21Aとの距離を確保することができるため、後述する粗面による散乱効果と合わせて、基板151による反射によりLED光源15の放出光を充分に拡散させることができる。
【0034】
なお、本実施形態では外径15r内から放出された上記放出角範囲の光が全て光学系に入射するように構成されることが好ましい。この場合、図示例のように発光領域15aが円形ではなくても、外径15rは発光領域15aの内接円ではなく外接円(半径方向の最も外側にある点(角部)を通過する円)とすることが望ましい。これは、LED光源15から放出される光を最大限効率的に照明光として利用することができるようになる(光の利用効率を増大できる)からである。また、このようにすると光学系に発光領域15aの発光パターンを反映した光がそのまま取り込まれることとなるが、発光領域15aの発光パターン形状による照明分布への影響は粗面による照度分布の均一化によってなくすことができるため、問題は生じない。
【0035】
上記の入射側レンズ21Aを通過した光は、その後、入射側レンズ21Bを通過する。入射側レンズ21Bはメニスカスレンズであり、光入射面21b−1は凹曲面状であり、光出射面21b−2は凸曲面状である。この入射側レンズ21Bも光入射面21b−1の曲率よりも光出射面21b−2の曲率の方が大きな凸メニスカスレンズとなっているため、集光能を有し、広い範囲にて入射した上記出射光をより小さな角度範囲に収束させることができる。この入射側レンズ21Bの有効径21brは上記入射側レンズ21Aの有効径21arよりも大きく設定されている。これにより、入射側レンズ21Aの集光性が低くても、入射側レンズ21Aからのより広い角度範囲の出射光が入射側レンズ21Bに入射できるように構成でき、光の利用効率を高めることができる。
【0036】
光入射面21b−1の曲率は光入射面21a−1の曲率よりも小さい。これは、入射側レンズ21Aの集光性によりLED光源15の放出光の入射角よりも入射側レンズ21Aからの出射光の出射角が小さくなるため、入射側レンズ21Aの有効径内を通過した光を全て取り込むために要する曲率が小さくなるからである。また、このように光入射面21b−1の曲率が小さくなることによって入射側レンズ21Bの集光性を高めることも容易になる。ここで、入射側レンズ21Aの有効径内を通過した光が全て入射側レンズ21Bの有効径内を通過するように構成することが好ましく、例えば、上記放射角範囲内の光束が全て入射側レンズ21A、21Bの有効径内を通過するように構成することが望ましい。
【0037】
なお、本実施形態では、二つの入射側レンズ21Aと21Bを直列に配列させているが、単一の入射側レンズのみを設けてもよく、或いは、三以上の入射側レンズを直列に配列させても構わない。これらのレンズ群の構成は、例えば照明装置10を検査用照明として用いる場合には、LED光源15の発光輝度及び発光領域15aの大きさと、検査時に要求される照度及び照明範囲との関係によって決められる。
【0038】
上記の入射側レンズ21A、21Bの前方には集光レンズ22が配置される。集光レンズ22は集光性を有していれば特に限定されるものではないが、本実施形態では光入射面22aと22bのいずれもが凸曲面状である両凸レンズとなっている。これによって充分な集光性能を得ることができる。なお、集光レンズは、集光性を有する光学系であればよく、単一のレンズと、複数のレンズを含むレンズ群のいずれでも構成できる。集光レンズ22の有効径22rは上記入射側レンズ21Bの有効径21brよりも大きい。これにより、入射側レンズ21A、21Bの集光性が低くても、光の利用効率の低下を抑制できる。本実施形態では、入射側レンズ21Bの有効径内から出射した光の全てが集光レンズ22の有効径内を通過するように構成される。
【0039】
上記の光学系において、入射側レンズ21A、21Bの各光学面の少なくとも一つは粗面となっている。図8には、入射側レンズ21Aの光入射面21a−1を粗面とし、他の光学面を平滑面とした例について示してある。この場合、LED光源15から放出された光は最初の光学面である光入射面21a−1上で散乱し、その散乱光のうち、周囲の内面(支持部11a、周囲枠11bの内面、照明ケース13の内面等)で吸収されないもの、例えば、そのまま入射側レンズ21A内に散乱される光やLED光源15によって入射側レンズ21Aの側に反射された光など、が入射側レンズ21Bに入射され、最終的に集光レンズ22で集光されて出射される。
【0040】
上記粗面は、ガラス基材で構成された入射側レンズを例えば粒度#1000番(JIS R6001)の研摩材で研摩することで形成することができ、また、フロスト剤を用いたフロストエッチング処理などで形成することも可能である。なお、樹脂成形で入射側レンズを形成する場合には型面を粗面状とすることで上記粗面を形成することも可能である。
【0041】
上記のように入射側レンズ21A、21Bの光学面を粗面とすることで、LED光源15の放出光を集光して照射した場合でも、LED光源15の発光面15aの発光パターン形状が投射されることを防止でき、均一で高い照度が実現可能になる。このような照明態様は、光学レンズの傷、埃、焼け、泡、その他の汚れなどを検査する場合に極めて有効である。例えば、目視で上記検査を行う場合には、「目合わせ」という作業を行って判断基準を統一して検査を行うものの、照明装置の照度の大小やばらつき、発光パターンの投射などが存在すると、正確な検査を行うことができない。また、照明された光学レンズを撮影した画像を元に検査を行う場合でも、照明条件がばらついたり、発光パターンが投射されたりすると、画像処理による判定においても検査精度が低下することになる。
【0042】
本実施形態では、特に、最初の入射側レンズ21Aの光入射面21a−1を粗面とすることで、光をLED光源15の近くで散乱させることで充分な光拡散作用を得ることができるとともに、その後、入射レンズ21Aの光出射面21a−2と、入射レンズ21B及び集光レンズ22とで集光するようにしているので、高い照度で均一な照明を行うことが可能になっている。
【0043】
特に、本実施形態では、高輝度のLED光源15(図示例の場合には青色発光ダイオードからなるLEDチップ155)から放出される光を用いているため、白熱電球、蛍光灯、ハロゲンランプ等の他の光源と比べて短波長領域の光強度が高い波長分布を有する。具体的には、当該波長分布は、波長450nmのピーク強度(この強度を100%とする)と、波長560nmのより幅広のピーク(強度66%)とを有する。このため、粗面による散乱強度も高くなる特徴を有している。また、後述するようにLEDチップ155から放出される光を樹脂レンズなどの集光素子を介在させずに(必要に応じて上記の蛍光材料を分散させた透光性樹脂層157を介して)そのまま粗面で散乱させることで高い散乱度を実現できる。
【0044】
また、本実施形態では、複数のLEDチップ155を高密度で面上に配列させてなるLED光源15を用いているため、LEDチップ155毎に樹脂レンズ等を設けることができず、実際にチップ毎のレンズ構造を有していない。その結果、発光パターン形状がLEDチップ155の配列パターンに基づいて特殊な形状となっているとともに、LED光源15から放出される光の視野角(放出角範囲)は110〜120度程度と極めて広くなっている。したがって、発光パターン形状がそのまま投射されることによって照明ムラを引き起こす虞があるとともに、上記の広い範囲へ放出される光を効率的に集光しないと高い照度を得ることができない。
【0045】
本実施形態では、LED光源15に隣接する凹曲面状の光入射面21a−1を備えた入射側レンズ21Aを配置することで、LED光源から広い角度範囲で放出された放出光を有効に取り込むことができるとともに、凸曲面状の光出射面21a−2により集光して出射させることができる。したがって、広い放出角範囲を有するLED光源15の放出光を効率的に取り込むとともに効率的に集光することが可能になる。
【0046】
また、本実施形態ではさらにもう一つの入射側レンズ21Bを設け、この入射側レンズ21BについてもLED光源15の側に凹曲面状の光入射面21b−1を備えることで、入射側レンズ21Aから出射された光を広範囲に取り込むことができ、なおかつ、凸曲面状の光出射面21b−2により集光して出射させることができる。したがって、コンパクトな光学系でLED光源15の放出光を効率的に取り込むとともに効率的に集光することができる。
【0047】
本実施形態では、上記入射側レンズ21A、21Bに対してLED光源15とは反対側にさらに集光レンズ22を配置しているので、入射側レンズ21A、21Bから出射した光をさらに集光することができるため、検査工程に適した高い照度を実現することができる。なお、この集光レンズ22としては、図示例のような両凸レンズに限らず、平凸レンズや凸メニスカスレンズなど、結果として集光性を呈するレンズであれば如何なるものであっても構わない。例えば、本実施形態において集光レンズ22を除去して構成した場合には、入射側レンズ21Aを本発明に係る入射側レンズとして、入射側レンズ21Bを本発明に係る集光レンズとして用いた本件発明の実施例の装置構成として把握することができる。
【0048】
本実施形態では、入射側レンズ21A、21Bのいずれかの光学面を粗面とすることにより、集光レンズ22による最終的な集光前にLED光源15の放出光を散乱させることで、LED光源15の発光パターンを消失させることができる。これによって、LED光源15の放出光を集光して高い照度を実現しても、LED光源15の発光パターンが結像するといったことがなくなるため、検査工程において有害な発光パターンに起因する照度のばらつきや波長の分散を防止することができる。
【0049】
特に、本実施形態では、入射側レンズ21A、21Bの光入射面21a−1、21b−1を粗面とすることで、光出射面21a−2、21b−2による集光前にLED光源15の放出光を散乱させることができるため、効率的な集光を妨げにくいという利点がある。この利点は、本実施形態のように複数の入射側レンズ21A、21Bを用いる場合においてLED光源15に隣接する(に最も近い)入射側レンズ21Aの光入射面21a−1を粗面にすることによってさらに強化される。
【0050】
また、本実施形態においては、粗面として形成された入射側レンズ21A、21Bの凹曲面状の光入射面21a−1、21b−1がLED光源15側に向いていることにより、LED光源15の側に向かう散乱光が外側(光軸20より離れる側)に散乱しにくくなるので、このような散乱光がLED光源15若しくはその周囲において反射されて再度入射側レンズ21A、21Bの側に戻ることで照明成分として用いることが可能になるため、さらに効率的な照明が実現できるという効果もある。この利点も、本実施形態のように複数の入射側レンズ21A、21Bを用いる場合においてLED光源15に隣接する(に最も近い)入射側レンズ21Aの光入射面21a−1を粗面にすることによってさらに強化される。
【0051】
本実施形態では、上述のようにLED光源15の周囲に配置された光検出器17でLED光源15の放出光量を検出している。この場合、凹曲面状の光入射面21a−1が粗面であることにより、LED光源15の光が当該光入射面21a−1で散乱されてなる散乱光が光検出器17で主体的に検出されることとなるため、光検出器17の検出光量がLED光源15内の複数のLEDチップ155間のばらつきや経時変化の差による影響を受けにくくなることから、検出光量の高精度化や安定化を図ることができる。この利点も、本実施形態のように複数の入射側レンズ21A、21Bを用いる場合においてLED光源15に隣接する(に最も近い)入射側レンズ21Aの光入射面21a−1を粗面にすることによって検出光量が増大することでさらに強化される。
【0052】
図9乃至図12には、実施例と比較例の照明態様を示す写真を示す。ここで、本実施形態の構成を有する実施例の各レンズはいずれも光学ガラスBK7の球面レンズを用い、各光学面について、LED光源15の発光領域15aの発光面(上記有効径としての口径9.000mm)又は隣接する光学面からの光軸20上の距離と曲率半径をそれぞれ示すと次のとおりである。口径23.000mmの入射レンズ21Aにおいて、光入射面21a−1と上記発光面との距離は6.000mm、光入射面21a−1の曲率半径が−15.000mm、光出射面21a−2と上記光入射面21a−1との距離は5.000mm、光出射面21a−2の曲率半径が−12.000mm、口径32.000mmの入射レンズ21Bにおいて、光入射面21b−1と上記光出射面21a−2との距離は1.000mm、光入射面21b−1の曲率半径が−40.000mm、光出射面12b−2と上記光入射面21b−1との距離は9.000mm、光出射面21b−1の曲率半径が−17.000mm、口径50.000mmの集光レンズ22において、光入射面22aと上記光出射面21b−2との距離は8.950mm、光入射面22aの曲率半径が81.130mm、光出射面22bと上記光入射面22aとの距離は11.000mm、光出射面22bの曲率半径が−81.313mmである。なお、この光学系の焦点距離は1000.000mmとした。
【0053】
一方、上記実施例の光入射面21a−1を平坦な平滑面に変更した、平凸レンズの入射側レンズを用いた場合を比較例1とし、実施例の光入射面21a−1を凹曲面状のままで平滑面に変更した場合を比較例2とし、実施例の光入射面21a−1を粗面であるが平坦面に変更した、平凸レンズを用いた場合を比較例3として、それぞれ実施例と共に照度及び照度分布を調べた。他の光学面は実施例と同じである。ここで、図9は比較例1、図10は比較例2、図11は比較例3、図12は実施例の照明パターンを撮影した写真であり、それぞれ、装置前端から300mmの距離に設置した灰色に塗装した被照明板(金属板)に照射した照明スポットを暗室内で撮影したものである。なお、各写真の上部中央に見られる輝点は被照明板からの直接反射光が写りこんだものである。
【0054】
また、以下の表1には、それぞれ装置前端からの距離において最も照度の高い部分(照明範囲の中央部)を照度計で計測した照度データと、照度分布の均一性(発光パターンの消失度合)の程度及び光の照明効率の程度をそれぞれ4段階で評価した結果を示す。なお、表中の例えば80.00kLは8万ルクスを示す。また、備考欄には光入射面21a−1の光学面の態様(凹曲面状か平坦か、平滑面か粗面か)を示した。
【0055】
【表1】
【0056】
上記の結果、図9乃至図12に示すように、実施例(図12)では発光パターンが完全に消失しているのに対して、比較例1〜3(図9〜図11)はいずれも発光パターンが残存しており、特に、比較例1及び2では発光パターンの形状もはっきりと反映されている。また、実施例、比較例1及び2では照明の全光束量が高いのに対し、比較例3では照度が低下し光束量も少なくなっている。なお、実施例の中心部の照度データは比較例1及び2と比べると低いが、これは照明範囲が広いとともに照度分布が均一であるためである。実施例の照度若しくは光効率(照明範囲に照射される全光束の強度、或いは、LED光源の放出光から照明光を得る際の光の利用効率若しくは割合)は比較例1より高く比較例2と同様に良好である。
【0057】
尚、本発明の照明装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
10…照明装置、10A…本体、10B…保持具、11…主ケース部、12…後部板、13…照明ケース部、14…出射ケース部、11a…支持部、11b…周囲枠、15…LED光源、155…LEDチップ、15a…発光領域、16…回路基板、16a…制御駆動回路、17…光検出器、20…光軸、21…入射側レンズ鏡筒、21A、21B…入射側レンズ、22…集光レンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDチップが面上に配列されてなるLED光源と、
該LED光源と対向する側に凹曲面状の光入射面を備えるとともに前記LED光源とは反対側に凸曲面状の光出射面を備えた、1の、又は、直列に配置された複数の入射側レンズと、
該入射側レンズに対して前記LED光源とは反対側に配置された集光レンズとを具備し、
前記1の又は複数の入射側レンズの前記光入射面と前記光出射面のうち少なくとも一つが粗面であることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記入射側レンズの前記光入射面が粗面であり、前記光出射面は平滑面であることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
複数の前記入射側レンズが直列に配列され、前記LED光源に最も近い前記入射側レンズの前記光入射面が粗面であり、前記複数の入射側レンズの他の光学面は平滑面であることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記LED光源の周囲で、かつ、前記入射側レンズの前記光入射面に対向する位置に配置された光検出器と、
前記光検出器により検出された光量に基づいて前記LED光源を制御駆動する制御駆動手段と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項1】
複数のLEDチップが面上に配列されてなるLED光源と、
該LED光源と対向する側に凹曲面状の光入射面を備えるとともに前記LED光源とは反対側に凸曲面状の光出射面を備えた、1の、又は、直列に配置された複数の入射側レンズと、
該入射側レンズに対して前記LED光源とは反対側に配置された集光レンズとを具備し、
前記1の又は複数の入射側レンズの前記光入射面と前記光出射面のうち少なくとも一つが粗面であることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記入射側レンズの前記光入射面が粗面であり、前記光出射面は平滑面であることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
複数の前記入射側レンズが直列に配列され、前記LED光源に最も近い前記入射側レンズの前記光入射面が粗面であり、前記複数の入射側レンズの他の光学面は平滑面であることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記LED光源の周囲で、かつ、前記入射側レンズの前記光入射面に対向する位置に配置された光検出器と、
前記光検出器により検出された光量に基づいて前記LED光源を制御駆動する制御駆動手段と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−59584(P2012−59584A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202644(P2010−202644)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(596101299)株式会社永田製作所 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(596101299)株式会社永田製作所 (4)
【Fターム(参考)】
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