説明

照明装置

【課題】簡易な構成で照射領域外への光の漏れを少なくして所望の配光特性を得る。
【解決手段】照明装置1は、光源部10及びレンズ体20を備える。レンズ体20は、レンズ部30及びレンズ部30の周囲に延びるフランジ部40を有する。光源部10は、平面部21の周縁部の光源設置部34に配置され、周縁部側の端部12が光源設置部34の端部33より外側に超えない位置に配置される。レンズ部30の光源設置部34の入射面32と光源部10の出射面11とのなす角度θは、0°<θ≦35°である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所望の配光特性を得ることができる照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源からの光を所定方向に屈折させて、所望の配光特性を得る照明装置として、例えば下記特許文献1に開示されている照明装置が知られている。この照明装置は、光源とレンズ部とを備え、レンズ部は、光源側に位置して少なくとも一部が光源の中心に球心が位置する球面状の入射面と、この入射面を挟んで光源と反対側に位置して少なくとも一部が入射面の球心位置とは異なる位置を中心とする少なくとも1つ以上の非球面状の射出面とを有する。このように、入射面の球心と射出面の中心とを異なる位置とすることで、光源から照射された光を所望の方向に配光させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−34046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来の照明装置では、光源からの光を、球面状の入射面からレンズ部内に直進させ、非球面状の射出面において光を屈折させる構造であるため、光源からの光を一定の照射領域に配光させようとしても、光源直下にも光が照射されてしまうという問題がある。
【0005】
また、一定以上の配光特性を得ようとした場合には、その構造上レンズ部の高さや幅が大きくなってしまうので、設計自由度が低下したり照明装置の見栄えが悪くなったりしてしまうなどの問題もある。
【0006】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消し、簡易な構成で照射領域外への光の漏れを少なくして所望の配光特性を得ることができる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る照明装置は、光源と、前記光源を覆うと共に前記光源からの光を所定方向に屈折させる透過性部材からなるレンズ体とを備え、前記レンズ体は、一方の面が中心軸と直交する平面部を形成し、他方の面が前記中心軸を中心として突出する凸面部を形成するレンズ部と、このレンズ部の周囲に設けられたフランジ部とを有し、前記レンズ部の平面部の周縁部に前記光源を設置する光源設置部が設けられ、前記光源は、光の出射面が、前記レンズ部の平面部と平行になるように前記光源設置部に設置され、前記レンズ部の光源設置部は、前記光源の出射面と対向し、前記中心軸から前記周縁部側にかけて前記光源の出射面から徐々に離れるように傾斜した光の入射面を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る照明装置によれば、レンズ部の光源設置部が、光源の出射面と対向し、中心軸から周縁部側にかけて光源の出射面から徐々に離れるように傾斜した光の入射面を有するので、レンズ部の出射面で屈折する前に光源からの光が入射面で屈折する。これにより、任意に光軸をずらすことができ、レンズ部の高さや幅、或いは光の損失を抑えつつ所望の配光特性を得ることができる。また、光源直下(角度0°)の照度を抑えることもできる。
【0009】
本発明の一つの実施形態において、前記光源設置部の入射面と前記光源の出射面とのなす角度θは、0°<θ≦35°である。
【0010】
本発明の他の実施形態において、前記光源設置部は、前記平面部に対して垂直に立設して前記入射面の頂上において前記入射面と交差する端部が前記レンズ部の平面部の最外周位置に達するように配置され、前記光源は、前記光源設置部の前記端部から外側に超えない位置に配置されている。
【0011】
本発明の更に他の実施形態において、前記レンズ部は、前記平面部の周縁部に沿って形成された面取り加工部の一部を前記光源設置部の入射面とする。
【0012】
また、本発明の更に他の実施形態において、前記フランジ部は、前記端部から入射した光を前記照射方向の表面で全反射する屈折率を有する透過性部材からなる。
【0013】
本発明の更に他の実施形態において、前記レンズ体は、前記透過性部材の屈折率をnとした場合、n>√2を満たすように形成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易な構成で照射領域外への光の漏れを少なくして所望の配光特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る照明装置を示す平面図である。
【図2】図1のA−A’断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る照明装置を示す平面図である。
【図4】図3のB−B’断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る照明装置の作用について説明するための図である。
【図6】同照明装置の作用について説明するための図である。
【図7】同照明装置の作用について説明するための図である。
【図8】本発明の実施例に係る照明装置と比較例に係る照明装置の光の放射角度特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、この発明の実施の形態に係る照明装置を詳細に説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る照明装置を示す平面図である。図2は、図1のA−A’断面図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る照明装置1は、光を照射するLEDなどからなる光源部10と、この光源部10を覆うと共に、光源部10から照射された光を所定方向に屈折させるポリカーボネートやアクリル等の透過性部材からなるレンズ体20とを備えてなる。光源部10は、図示しない基板に実装されている。
【0018】
レンズ体20は、図2に示すように、一方の面が図中白抜き矢印で示す光の照射方向の中心軸Oと直交する平面部21を形成し、他方の面が中心軸Oを中心として突出する凸面部(出射面)39を形成するレンズ部30と、このレンズ部30の周囲に設けられたフランジ部40とを有している。また、レンズ体20は、レンズ部30の平面部21が、光源部10の光の出射面11と平行となるように形成されている。レンズ部30には、平面部21の周縁部に光源部10を設置する光源設置部34が設けられている。光源設置部34は、光源部10の出射面11と対向し、中心軸Oから周縁部にかけて光源部10の出射面11から徐々に離れるように傾斜した光の入射面32を有する。また、光源設置部34の周縁部側には、平面部21に対して垂直に立設されて入射面32の頂上において入射面32と交差する端部33が形成され、この端部33がレンズ部30の平面部21の最外周位置に達するように配置されている。
【0019】
レンズ体20は、レンズ部30及びフランジ部40が同一の透過性部材により一体成形された構成であってもよく、レンズ部30及びフランジ部40が異なる透過性部材により別体成形された構成であってもよい。別体成形された場合は、各部30,40が組み合わされてレンズ体20が構成される。
【0020】
光源部10は、出射面11が平面部21と平行となるように光源設置部34に設置され、且つ周縁部側の端部12が光源設置部34の端部33を超えない位置に配置されている。なお、図2中のO’は、光源部10の中心を示している。レンズ部30は、平面部21の周縁部に沿って形成された面取り加工部の一部を光源設置部34の入射面32としている。
【0021】
この面取り加工部は、光源設置部34の入射面32と光源部10の出射面11とのなす角度θが0°<θ≦35°となるように形成されている。光源部10の出射面11は、光源設置部34の端部33と直角に配置される。
【0022】
なお、フランジ部40は、端部33から入射した光を、照射方向の面41で全反射する屈折率を有する透過性部材により形成されていることが望ましい。
【0023】
第1の実施形態に係る照明装置1は、このように構成されることにより、光源部10の出射面11から照射された光が、レンズ部30の出射面39で屈折される前に光源設置部34の入射面32で屈折されて光軸がずれる(作用1)こととなる。これにより、従来のものよりもレンズ部30の高さや幅、或いは光の損失を抑えつつ所望の配光特性を得ることが可能となる。
【0024】
また、第1の実施形態に係る照明装置1は、光源設置部34の入射面32が、上述したようにレンズ部30に形成され、光源部10がレンズ部30の平面部21の周縁部に設けられた光源設置部34に収まるように配置され、更に端部33から入射した光がフランジ部40の面41で全反射される(作用2)ので、光源部10の直下(角度0°)での光の照度を抑えることが可能となる。
【0025】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態に係る照明装置を示す平面図である。図4は、図3のB−B’断面図である。図3及び図4に示すように、第2の実施形態に係る照明装置2は、光源部10及びレンズ体20を備える点は第1の実施形態に係る照明装置1と同様であるが、レンズ部30が、円周31に沿って上記入射面32が形成された光源設置部34を備えている点が相違している。このような構成によっても、第1の実施形態に係る照明装置1と同様の作用効果を奏することが可能である。
【0026】
[作用1の説明]
ここで、上述した実施形態に係る照明装置の上記作用1について説明する。図5及び図6は、本発明の実施形態に係る照明装置の作用について説明するための図である。なお、図5及び図6におけるX軸は上記放射方向に沿った光源部10の出射面11と平行な方向を示し、Y軸はレンズ部30の中心軸Oを示す。
【0027】
図5に示すように、光源部10から出射面11に対して垂直に出射された光が、傾斜する入射面32で屈折してレンズ部30内に入射した光線L1と、仮に傾斜する入射面32がない場合において平面部21に垂直にレンズ部30内に入射した光線L2との、レンズ部30の出射面39の点Pにおける屈折角の違いは、次のように表すことができる。なお、図5中のθ1及びθ2は、それぞれ入射面32がない場合の光線L2の入射角及び出射角を表すと共に、θ3はこの場合の光線L2のY軸とのずれ角度を表している。
【0028】
一方、図5中のθ4及びθ5は、それぞれ入射面32がある場合の光線L1の入射角及び出射角を表すと共に、θ6はこの場合の光線L1のY軸とのずれ角度を表している。また、nは空気の屈折率を、nはレンズ体20を構成する透過性部材の屈折率を、それぞれ表している。
【0029】
まず、光線L2の入射角θ2は、スネルの法則より、次式(1)により表すことができる。
【0030】
【数1】

【0031】
よって、Y軸との光軸ずれのずれ角度θ3は、次式(2)のようになる。
【0032】
【数2】

【0033】
一方、光線L1の入射角θ4は、スネルの法則より、次式(3)により表すことができる。
【0034】
【数3】

【0035】
よって、Y軸との光軸ずれのずれ角度θ6は、次式(4)のようになる。
【0036】
【数4】

【0037】
ここで、傾斜する入射面32の有無のずれ角度θ3,θ6を比較すると、次式(5)のようになり、
【0038】
【数5】

【0039】
下記条件式(6)より、
【0040】
【数6】

【0041】
次式(7)となる。
【0042】
【数7】

【0043】
従って、傾斜する入射面32がある方が、ない場合に比べて光軸ずれが大きいこととなる。なお、レンズ部30から出射される光線は、次のように近似値で導くことができる。まず、図6に示すように、aはレンズ部30の出射面39の曲線を表し、bは光源部10の出射面11を通りレンズ部30の中心軸Oに平行な直線を表している。
【0044】
また、cは入射面32の直線を表し、dは直線bと直線cの交点を表し、eは交点dにおける直線cの垂線を表している。ここで、直線bと垂線eの成す入射角fはθ1であり、直線bの屈折角gはθ2であるので、nを空気の屈折率、nをレンズ体20を構成する透過性部材の屈折率とすると、屈折角gは次式(8)で表すことができる。
【0045】
【数8】

【0046】
また、hは垂線eを交点dを中心として時計回りにθ2回転させた直線を表し、iは直線hと曲線aとの交点を表している。jは交点iにおける曲線aの接線を表し、kは交点iにおける接線jの垂線を表している。ここで、垂線kと直線hの成す入射角lはθ3であり、直線hの屈折角mはθ4であるので、nを空気の屈折率、nをレンズ体20を構成する透過性部材の屈折率とすると、屈折角mは次式(9)で表すことができる。
【0047】
【数9】

【0048】
なお、nは垂線kを交点iを中心として時計回りにθ4回転させた直線(出射される光線)を表している。
【0049】
[作用2の説明]
次に、上述した実施形態に係る照明装置の上記作用2について説明する。図7は、本発明の実施形態に係る照明装置の作用について説明するための図である。図7に示すように、レンズ部30に形成される面取り加工部の形状としては、直角三角形状断面となる形状が望ましい。
【0050】
この場合、光源部10の出射面11を直角三角形の隣辺、レンズ部30の入射面32を斜辺及び光源設置部34の端部33を対辺とすると、端部33はレンズ部30の中心軸Oと平行で、且つレンズ部30の円周31の範囲内に収まるように形成される。なお、図7においては、説明の便宜上光源部10の端部12がレンズ部30の光源設置部34の端部33と中心軸O方向に一致するように示している。
【0051】
また、フランジ部40を構成する透過性部材の屈折率nは、光源部10からの光を照射方向の面41で全反射するように設定されることが望ましいため、上記のように透過性部材以外の空気の屈折率をnとした場合、次のように求められる。すなわち、光源部10からの光を入射角γで面41において全反射するためには、次式(10)を満たさなければならない。
【0052】
【数10】

【0053】
ここで、空気の屈折率を1とし、入射角γをβで表すと、次式(11)となり、
【0054】
【数11】

【0055】
また、βは入射角αの屈折角なので、αで表すと、次式(12)となる。
【0056】
【数12】

【0057】
ここで、屈折角βが最大になるのは、入射角α=90°のときなので、次式(13)のように表すことができ、
【0058】
【数13】

【0059】
これを次式(14)及び(15)のように変形すれば、
【0060】
【数14】

【0061】
【数15】

【0062】
次式(16)のように透過性部材の屈折率nを求めることができる。
【0063】
【数16】

【0064】
本実施形態に係る照明装置は、上記のようにフランジ部40の透過性部材の屈折率nを設定することにより、レンズ部30の光源設置部34の端部33に入射した光は、すべて面41で全反射させることが可能となる。また、光源部10がレンズ部30の円周31の範囲内に収まる位置、すなわち端部33よりも中心軸O側に配置されるので、端部33よりも中心軸Oの放射方向外側に光源部10の出射面11から照射された光が出ることはない。従って、面取り加工部を形成していないものよりも光源部10の直下の(角度0°以下)の光を抑えることが可能となる。
【実施例】
【0065】
次に、本実施形態に係る照明装置の具体的な光(光束)の放射角度特性について、比較例を参照しながら説明する。図8は、本発明の実施例に係る照明装置と比較例に係る照明装置の光の放射角度特性を示す図である。図8の縦軸は照度(ルクス)を表し、横軸はずれ角度を表している。比較例の照明装置及び実施例の照明装置共に、上記のような光源部10及びレンズ体20を備えて構成したが、比較例の照明装置にはレンズ部30に面取り加工部を形成せずに光源部10を配置した。
【0066】
実施例の照明装置のレンズ部30における面取り加工部は、上記のような直角三角形状断面を構成するように行い、レンズ部30の光源設置部34の入射面32と光源部10の出射面11とのなす角度θを22°に設定した。また、比較例及び実施例の照明装置共に、レンズ部30の中心軸Oと光源部10の中心O’との距離を3mmとし、中心軸OをY軸及びフランジ部40の面41をX軸と設定した。
【0067】
レンズ部30は、上記Y軸とX軸との交点を0としたとき、次式(17)を満たす二次曲線で構成されることとした。
【0068】
【数17】

【0069】
また、比較例及び実施例の照明装置共に、光源部10として表面実装タイプのLEDを用い、レンズ体20を構成する透過性部材として、屈折率n=1.49の材料を用いた。図8に示すように、実施例の照明装置では、比較例の照明装置に比べて、光源部10の直下(角度0°以下)での照度が低く、角度35°付近では最大の照度を測定することができた。これにより、光の放射角度特性が優れていることが判明した。
【符号の説明】
【0070】
1,2 照明装置
10 光源部
11 出射面
12 端部
20 レンズ体
21 平面部
30 レンズ部
31 円周
32 入射面
33 端部
34 光源設置部
39 凸面部(出射面)
40 フランジ部
41 面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源を覆うと共に前記光源からの光を所定方向に屈折させる透過性部材からなるレンズ体とを備え、
前記レンズ体は、一方の面が中心軸と直交する平面部を形成し、他方の面が前記中心軸を中心として突出する凸面部を形成するレンズ部と、このレンズ部の周囲に設けられたフランジ部とを有し、前記レンズ部の平面部の周縁部に前記光源を設置する光源設置部が設けられ、
前記光源は、光の出射面が、前記レンズ部の平面部と平行になるように前記光源設置部に設置され、
前記レンズ部の光源設置部は、前記光源の出射面と対向し、前記中心軸から前記周縁部側にかけて前記光源の出射面から徐々に離れるように傾斜した光の入射面を有する
ことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記光源設置部の入射面と前記光源の出射面とのなす角度θは、0°<θ≦35°であることを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
前記光源設置部は、前記平面部に対して垂直に立設して前記入射面と交差する端部が前記レンズ部の平面部の最外周位置に達するように配置され、
前記光源は、前記光源設置部の前記端部から外側に超えない位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の照明装置。
【請求項4】
前記レンズ部は、前記平面部の周縁部に沿って形成された面取り加工部の一部を前記光源設置部の入射面とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の照明装置。
【請求項5】
前記フランジ部は、前記端部から入射した光を前記照射方向の表面で全反射する屈折率を有する透過性部材からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の照明装置。
【請求項6】
前記レンズ体は、前記透過性部材の屈折率をnとした場合、
>√2
を満たすように形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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