説明

照明装置

【課題】 照射される領域においてグラデーションの差を低減することが可能な照明装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 照明装置1は、長尺状の第1基板2と、第1基板2の長手方向に沿って第1基板2の長手方向の辺に隣接して設けられた長尺状の第2基板3と、第1基板2上および第2基板上3に両基板の長手方向に沿って設けられた複数の半導体発光素子4と、複数の半導体発光素子4を覆うように、第1基板2および第2基板3の長手方向に沿って設けられた長尺状の透光性カバー5と、を備えている。また、透光性カバー5は、長手方向に直交する断面において、透光性カバー5の中央部5f1の周辺領域に位置する周辺部5bが中央部5f1よりも透過率が大きく形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光装置を含む照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)等の半導体発光素子を光源とする半導体発光装置および照明装置の開発が進められている(例えば、特許文献1を参照)。半導体発光装置を有する照明装置は、指向性に優れており、半導体発光装置の正面の輝度が大きくなる特徴がある。そのため、平板上に複数の半導体発光装置を実装した照明装置は、特に暗い場所では、照射された領域において、半導体発光装置から照射される光が多い領域と、照射される光が少ない領域との間で明暗が発生することによってグラデーションの差が出やすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−77942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、照射される領域においてグラデーションの差を低減することが可能な照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る照明装置は、長尺状の第1基板と、前記第1基板の長手方向の辺に沿って隣接して設けられた長尺状の第2基板と、前記第1基板上および前記第2基板上に両基板の長手方向に沿ってそれぞれ設けられた複数の発光素子と、前記複数の発光素子を覆うように、前記第1基板および前記第2基板の上に長手方向に沿って設けられた長尺状の透光性カバーとを備え、前記透光性カバーは、前記長手方向に直交する断面において、中央部の周辺領域に位置する周辺部の透過率が前記中央部の透過率よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、照射される領域においてグラデーションの差を低減することが可能な照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態に係る照明装置を斜め上方から斜め下方に見た概観斜視図である。
【図2】図1の照明装置から透光性カバーを取り外した状態を示した概観斜視図である。
【図3】図1の筐体を斜め上方から斜め下方に見た概観斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る照明装置を示しており、図1のX1−X1’に沿った断面図である。
【図5】照明装置の一部を分解した照明装置の概観斜視図である。
【図6】基板上に設けられた半導体発光素子を斜め上方から斜め下方に見た概観斜視図である。
【図7】リフレクターの一部を斜め上方から斜め下方に見た概観斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る照明装置の半導体発光素子を斜め上方から斜め下方に見た概観斜視図であって、半導体発光素子の内部を示している。
【図9】図8に示した半導体発光素子をX2−X2’に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る照明装置の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されないものである。
【0009】
<照明装置の構成>
照明装置1は、天井または壁等の室内に直接取り付けるか、あるいは、屋外にて使用するものである。そして、照明装置1から発せられる光は、室内または屋外を照らすことができる。
【0010】
照明装置1は、長尺状の第1基板2と、第1基板2の長手方向の辺に沿って、この第1基板2の長手方向の辺に隣接して設けられた長尺状の第2基板3と、第1基板2上および第2基板上3に両基板の長手方向に沿ってそれぞれ設けられた複数の発光素子4と、複数の発光素子4を覆うように、第1基板2および第2基板3の上に長手方向に沿って設けられた長尺状の透光性カバー5とを備えている。また、透光性カバー5は、長手方向に直交する断面において、透光性カバー5の中央部5f1の周辺領域に位置する周辺部5f2の透過率が中央部5f1の透過率よりも大きくなるように形成されている。
【0011】
第1基板2および第2基板3は、筐体6内に実装される。そして、筐体6が、外部に接続される。筐体6は、長尺状の基体であって内部に、第1基板2を設ける内部空間と第2基板3を設ける内部空間とが別々になるように隔壁6aが形成されている。そして、筐体6は、各内部空間に複数の部材を設けることができ、各内部空間上のそれぞれに上部が開口した開口縁が形成されている。または、筐体6は、第1基板2および第2基板3が設けられる内部空間が1つの空間として形成されてもよい。そして、筐体6は、内部空間の底部に第1基板2や第2基板3、複数の部材を設けることができる。筐体6は、例えばアルミニウム、銅またはステンレス等の金属、あるいはプラスチックまたは樹脂等から構成されている。
【0012】
筐体6は、平面視して長手方向の長さが、例えば200mm以上2000mm以下に設定されており、短手方向の長さが、例えば15mm以上50mm以下に設定されている。また、筐体6は、上下方向の長さが、例えば5mm以上50mm以下に設定されている。なお、筐体6の熱伝導率は、例えば10W/(m・K)以上500W/(m・K)以下に設定されている。
【0013】
第1基板2は、筐体6内に設けられる。第1基板2は、長尺状であって、その主面上には複数の半導体発光素子4が実装される。なお、第1基板2は、平面視して長手方向の長さが、例えば190mm以上1990mm以下に設定されており、短手方向の長さが、例えば5mm以上20mm以下に設定されている。第1基板2の上下方向の長さは、例えば0.5mm以上2mm以下に設定されている。
【0014】
このような第1基板2としては、例えば樹脂からなるプリント配線基板、あるいはフレキシブル配線基板等の樹脂基板、あるいはガラス基板、あるいはアルミ基板等の金属板等を用いることができる。第1基板2は、筐体6に対して螺子または接合材を介して固定することができる。なお、第2基板3は、第1基板2と同様の構成である。
【0015】
発光素子4は、第1基板2および第2基板3上に実装される。複数の発光素子4は、第1基板2および第2基板3の長手方向に沿って設けられている。
【0016】
発光素子4のそれぞれは、チップ実装基板41と、チップ実装基板41上に設けられた発光チップ42と、発光チップ42を取り囲む枠体43と、枠体43で囲まれる領域に設けられた封止部材44と、枠体43によって支持された、接着部材45を介して枠体43に接続される波長変換部材46とを備えている。
【0017】
発光チップ42は、例えば発光ダイオードであって、発光チップ42内のpn接合中の電子と正孔とが再結合することによって光が放出される。チップ実装基板41は、第1基板2および第2基板3上に設けられる。チップ実装基板41は、第1基板2および第2基板3上に、例えば半田または導電性接着剤を介して電気的に導通するように接合される。チップ実装基板41は、例えばアルミナ、ムライトまたはガラスセラミックス等のセラミック材料、あるいはこれらの材料のうちから複数の材料を混合した複合系材料から構成することができる。また、チップ実装基板41には、金属酸化物微粒子を分散させた高分子樹脂を用いることもできる。
【0018】
チップ実装基板41の表面が拡散面である場合は、発光チップ42から発せられる光が、チップ実装基板41の表面に照射されて拡散反射される。そして、発光チップ42が発する光を拡散反射によって多方向に放射して、発光チップ42から発せられる光が筐体6内で特定箇所に集中するのを抑制することができる。
【0019】
ここで、チップ実装基板41には、配線導体が設けられており、配線導体を介して第1基板2に電気的に接続されている。この配線導体は、例えばタングステン、モリブデン、マンガンまたは銅等の導電材料からなる。また、この配線導体は、例えばタングステン等の粉末に有機溶剤を添加して得た金属ペーストを、チップ実装基板41に所定パターンで印刷することによって形成される。
【0020】
発光チップ42は、チップ実装基板41上に実装される。発光チップ42は、チップ実装基板41上に形成される配線導体上に、例えば半田または導電性接着剤等の接着材料、あるいはボンディングワイヤ等を介して電気的に接続される。
【0021】
発光チップ42は、例えばサファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、シリコンカーバイド、シリコンまたは二ホウ化ジルコニウム等の基体に、有機金属気相成長法または分子線エピタキシャル成長法等の化学気相成長法を用いて、半導体層を成長させることによって作製される。なお、発光チップ42の厚みは、例えば30μm以上1000μm以下である。
【0022】
発光チップ42は、第1半導体層と、第1半導体層上に形成される発光層と、発光層上に形成される第2半導体層とから構成されている。これら第1半導体層、発光層および第2半導体層は、例えばIII族窒化物半導体、ガリウム燐またはガリウムヒ素等のIII−V族半導体、あるいは窒化ガリウム、窒化アルミニウムまたは窒化インジウム等のIII族窒化
物半導体などを用いることができる。なお、第1半導体層の厚みは、例えば1μm以上5μm以下である。発光層の厚みは、例えば25nm以上150nm以下である。第2半導体層の厚みは、例えば50nm以上600nm以下である。また、このように構成された発光チップ42では、例えば370nm以上420nm以下の波長範囲の励起光を発することができる。
【0023】
チップ実装基板41上には、発光素子42と間を空けて、発光素子42を取り囲むように枠状の枠体43が設けられている。枠体43は、チップ実装基板41上に例えば半田または接着剤を介して接続される。枠体43は、セラミック材料であって、例えば酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムまたは酸化イットリウム等の多孔質材料からなる。枠体43は、多孔質材料からなり、それによって枠体43の表面には微細な孔が多数
形成される。
【0024】
また、枠体43は、傾斜する内壁面が下端から上端に行くに従って外方に向かって広がるように形成されている。そして、枠体43の内壁面が、発光素子42から発せられる励起光の反射面として機能する。また、枠体43の内壁面が拡散面である場合には、発光素子42から発せられる光が、枠体43の内壁面にて拡散反射する。そして、発光素子42から発せられる光は、特定箇所に集中されず、上方に向かって進行することができる。
【0025】
また、枠体43の傾斜する内壁面は、例えばタングステン、モリブデン、銅または銀等から成る金属層と、金属層を被覆するニッケルまたは金等から成る鍍金金属層を形成してもよい。この鍍金金属層は、発光素子42の発する光を反射させる機能を有する。なお、枠体43の内壁面の傾斜角度は、チップ実装基板41の上面に対して、例えば55°以上70°以下の角度に設定されている。
【0026】
枠体43で囲まれる領域には、封止部材44が充填されている。封止部材44は、発光素子42を封止するとともに、発光素子42から発せられる光が透過する機能を備えている。封止部材44は、枠体43の内方に発光素子42を収容した状態で、枠体43で囲まれる領域であって、例えばシリコーン樹脂、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂等の透光性の絶縁樹脂、あるいは透光性の絶縁ガラスを用いることができる。
【0027】
波長変換部材46は、枠体43に支持されるとともに、発光素子42と間を空けて対向するように設けられる。また、波長変換部材46は、発光素子42を封止する封止部材44と空隙を介して枠体43に設けられる。
【0028】
波長変換部材46は、接着部材45を介して枠体43に接合されている。接着部材45は、波長変換部材46の下面の端部から波長変換部材46の側面、さらに波長変換部材46の上面の端部にかけて被着している。
【0029】
接着部材45には、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シアネート樹脂、シリコーン樹脂またはビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。また、接着部材45には、例えばポリエーテルケトン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂またはポリフェニレンエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることもできる。
【0030】
接着部材45の材料は、枠体43の熱膨張率と波長変換部材46の熱膨張率との間の熱膨張率の材料を選択するとよい。接着部材45の材料としてこのような材料を選択することで、枠体43と波長変換部材46とが熱膨張するときに、両者の熱膨張率の差に起因して両者が剥離しようとするのを抑制することができ、両者を良好に繋ぎ留めることができる。
【0031】
接着部材45が波長変換部材46の下面の端部にまで被着していることで、接着部材45が被着する面積を大きくして、枠体43と波長変換部材46とを強固に接続することができる。その結果、枠体43と波長変換部材46との接続強度を向上させることができ、波長変換部材46の撓みが抑制される。そして、発光素子42と波長変換部材46との間の光学距離が変動するのを効果的に抑制することができる。
【0032】
波長変換部材46は、発光素子42から発せられる励起光が内部に入射して、内部に含有される蛍光体が励起されて、光を発するものである。ここで、波長変換部材46は、例えばシリコーン樹脂、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂等の透光性樹脂、あるいは透光性ガラスから成り、その透光性樹脂中もしくは透光性ガラス中に、例えば430nm以上4
90nm以下の蛍光を発する青色蛍光体、例えば500nm以上560nm以下の蛍光を発する緑色蛍光体、例えば540nm以上600nm以下の蛍光を発する黄色蛍光体、例えば590nm以上700nm以下の蛍光を発する赤色蛍光体が含有されている。なお、蛍光体は、波長変換部材46中に均一に分散するように含有されている。なお、波長変換部材46の厚みは、例えば0.3mm以上3mm以下に設定されている。
【0033】
また、波長変換部材46の端部の厚みは一定に設定されている。波長変換部材46の厚みは、例えば0.3mm以上3mm以下に設定されている。ここで、厚みが一定とは、波長変換部材46の厚みの誤差が0.1mm以下のものを含む。波長変換部材46の厚みを一定にすることにより、波長変換部材46にて励起される光の量を一様になるように調整することができ、波長変換部材46における輝度むらを抑制することができる。
【0034】
次に、半導体発光素子4上に設けられるリフレクター7について説明する。リフレクター7は、リフレクター7の一部である爪部7aが、筐体6内であって筐体6の内壁面から突出した個所に引掛けられて、第1基板2および第2基板3上のそれぞれに位置するように設けられている。また、リフレクター7は、第1基板2または第2基板3上に位置決めされたときに、平面視して複数の半導体発光素子4のそれぞれを取り囲む複数の導光孔7hが形成されている。リフレクター7は、半導体発光素子4が発する光を反射するものであって、例えばアルミ二ウム、銅またはステンレス等の金属材料、あるいは酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムまたは酸化イットリウム等のセラミック材料から構成されている。なお、リフレクター7は、金型によって成型されたポリカーボネート樹脂から成るリフレクター7の内壁面にアルミニウムを蒸着することによって構成されてもよい。
【0035】
リフレクター7は、平面視したときに外形が長尺状であって、上下方向に貫通する複数の導光孔7hが長手方向に沿って設けられているものである。リフレクター7は、複数の導光孔7hのそれぞれが、複数の半導体発光素子4のそれぞれに対応して配置されている。各半導体発光素子4から発せられた光は、その上方に位置するリフレクターの導光孔7hを通って、透光性カバー5を介して外部に取り出される。
【0036】
リフレクター7は、半導体発光素子4を取り囲む導光孔7hの内周面が、半導体発光素子4の発する光を下方から上方に向かって反射させるように傾斜している。内周面は第1基板2または第2基板3の上面に対して、例えば30°以上80°以下の角度で傾斜して形成されている。なお、リフレクター7は、リフレクター7の上下方向の長さが例えば5mm以上50mm以下に設定されている。リフレクター7の内周面の直径は、例えば3mm以上30mm以下に設定されている。リフレクター7の熱伝導率は、例えば10W/(m・K)以上500W/(m・K)以下で設定されている。
【0037】
リフレクター7の導光孔7hの内周面は、半導体発光素子4から導光孔7hの出射口に向かうにつれて広がるように形成されている。導光孔7hの内周面で囲まれる領域が導光孔7hの出射口に向かうにつれて大きくなることで、リフレクター7によって半導体発光素子4の発する光を遮りにくくすることができ、半導体発光素子4の発する光の照射面積を広くすることができる。それによって、導光孔7hの下方に位置する半導体発光素子4が発する光を、導光孔7hの内周面にて反射させて、上方に向かって広がって指向性よく取り出すことができる。
【0038】
筐体6の開口縁には、光透過性の板体8が設けられている。板体8は、筐体6内を覆うものであって、半導体発光素子4を保護するものである。板体8は、筐体6に対して平面方向にスライドさせてはめ込むことができる。そして、筐体6および板体8によって、半導体発光素子4を外部から保護することができる。板体8は、平面視して第1基板2およ
び第2基板3上のそれぞれに位置するように設けられてもよく、平面視して第1基板2および第2基板3を一体的に覆うように設けられている。
【0039】
板体8は、半導体発光素子4から発せられる光が透過する材料からなり、例えば樹脂またはガラス等の光透過性材料から構成されている。そして、半導体発光素子4の発する光が、板体8を通過して外部に取り出される。なお、板体8は、矩形状の板体であって、平面視して第1基板2および第2基板3上のそれぞれに位置するように設けられる場合には、平面視して長手方向の長さが、例えば20mm以上2000mm以下であって、平面視して短手方向の長さが、例えば6mm以上23mm以下に設定されている。また、板体8は、平面視して第1基板2および第2基板3を一体的に覆うように設けられてように設けられる場合には、平面視して長手方向の長さが、例えば20mm以上2000mm以下であって、平面視して短手方向の長さが、例えば13mm以上48mm以下に設定されている。なお、板体8は、縦断面視したときの上下方向の長さが、例えば0.5mm以上3mm以下に設定されている。
【0040】
筐体6の下部には、第1基板2および第2基板3のそれぞれと電気的に接続された電気配線9を設ける配線溝Lが設けられている。配線溝Lには、電気配線9が設けられるため、半導体発光素子4と電気配線9とは筐体6の底面を間に挟んで、両者がそれぞれ異なる面に配置される。その結果、半導体発光素子4は、放射される光が電気配線9によって遮られたり、電気配線9から物理的な力が加わえられたりすることがなくなり、照明装置1を正常に作動させることができる。さらに、半導体発光素子4の発する熱が、電気配線5に直接伝わることが無いため、電気配線9の部材劣化を効果的に抑制することができる。
【0041】
次に、透光性カバー5について説明する。透光性カバー5は、筐体6上に複数の半導体発光素子4を覆うように、第1基板2および第2基板3の長手方向に沿って設けられている。透光性カバー5は、半導体発光素子4から発せられる光が透過する材料からなり、例えば樹脂またはガラス等の光透過性材料から構成されている。そして、半導体発光素子4の発する光が、透光性カバー5を通過して外部に取り出される。
【0042】
透光性カバー5は、平面視して長尺状であって、長手方向に直交する断面が上に凸に湾曲して形成されている。透光性カバー5が、上に凸に湾曲して形成されていることで、筐体6内から上方に向かって外部に取り出される光を、放射するように広がって進行させることができる。そして、透光性カバー5は、平面視したときの長手方向の長さが、例えば200mm以上2000mm以下に設定されており、短手方向の長さが、例えば15mm以上50mm以下に設定されている。また、透光性カバー5を縦断面視して、透光性カバー5で囲まれる領域における上下方向の長さは、例えば10mm以上100mm以下に設定されている。透光性カバー5の厚みは、例えば0.5mm以上2mm以下に設定されている。
【0043】
図4に示すように、照明装置1を縦断面視したときに、一対の半導体発光素子4が発する光は、各板体8を介して上方に向かって進行する。そして、各板体8から上方に向かって進行する光は、透光性カバー5の中央部5f1に集中しやすい。第1基板2および第2基板3上に複数の半導体発光素子4をライン上に並べた場合は、透光性カバー5の中央部5f1に、複数の半導体発光素子4からの光が重なり合うとともに集中する。また、半導体発光素子4は、指向性に優れており、半導体発光素子4の正面としての上方の輝度が大きくなる。そのため、平板上に複数の半導体発光素子4を実装した照明装置は、特に暗い場所では、半導体発光素子4からリフレクター7の導光孔7hの内周面で反射された光によって照射される領域や半導体発光素子4の集まっている領域と、その周囲の領域とでグラデーションの差が出やすい。
【0044】
透光性カバー5は、平面視して透光性カバー5の中央部5f1と重なる個所には、第1基板2を設ける内部空間と第2基板3を設ける内部空間を遮る筐体6の一部である隔壁6aが位置しており、複数の半導体発光素子4が配置されていない。透光性カバー5の中央部5f1と重なる領域に半導体発光素子4を配置しないことで、光が集まりやすい個所から外部に取り出される光量を抑えることで、グラデーションの差を抑制することができる。
【0045】
透光性カバー5は、透光性カバー5の中央部5f1の周辺領域に位置する周辺部5f2が、中央部5f1よりも透過率が大きく設定されている。中央部5f1は、平面視して透光性カバー5の中心から5mm以上50mm以下の範囲をいう。周辺部5f2は、中央部5f1を除いた領域である。なお、中央部5f1の透過率は、例えば50%以上90%以下に設定されている。周辺部5f2の透過率は、例えば90%以上99%以下に設定されている。なお、透過率は、ISO13468−1を翻訳したJIS K7361−1の方
法を用いて、透明カバー5からなる試験片の平行入射光束に対する全透過光束の割合を算出することで測定することができる。
【0046】
透光性カバー5は、周辺部5f2の透過率が中央部5f1の透過率よりも大きくすることで、透光性カバー5を介して外部に出る光のうち、周辺部5f2を中央部5f1よりも外部に光を出やすくすることができる。その結果、照明装置1から外部に出た光によって照らし出される領域においては、照射領域の中央部と照射領域の周辺部との間でグラデーションの差を低減することができ、照度のムラを抑制することができるとともに視認性に優れた光の環境を創り出すことができる。
【0047】
透光性カバー5は、筐体6の上部に対して接合材10を介して接続されている。接合材10は、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂またはシリコーン樹脂等の材料からなる。接合材10は、熱伝導率が透光性カバー5よりも小さい材料を選択することで、筐体6から接合材10を介して透光性カバー5に伝わる熱量を低減することができ、透光性カバー5が熱変形するのを抑制することができるとともに、熱によって透光性カバー5の透過率が低下するのを抑制することができる。その結果、半導体発光素子4に対する透光性カバー5の配置場所をずれにくくすることができ、透光性カバー5から外部の所望する方向に光を放射することができるとともに、長期間にわたって照明装置1を正常に作動させることができる。
【0048】
ここで、中央部5f1の透過率を周辺部5f2の透過率よりも小さくする方法としては、中央部5f1の屈折率を周辺部5f2の屈折率よりも大きくすることで実現することができる。中央部5f1を構成する材料を例えばエポキシ樹脂とし、周辺部5f2を構成する材料を例えばシリコーン樹脂とすることで、中央部5f1の屈折率が1.51となり、周辺部5f2の屈折率が1.41となる。なお、中央部5f1の屈折率は、例えば1.45以上1.55以下に設定されている。周辺部5f2の屈折率は、例えば1.4以上1.5以下に設定されている。ここで、中央部5f1の屈折率を周辺部5f2の屈折率よりも大きくすることで、筐体6内から上方に向かって外部に取り出される光は、中央部5f1から周辺部5f2に向かって進行させやすくすることができる。その結果、平面視したときに、中央部5f1の透過率を周辺部5f2の透過率よりも小さくすることができる。
【0049】
また、中央部5f1の透過率を周辺部5f2の透過率よりも小さくする方法としては、中央部5f1に透過光を拡散させるための拡散材を含有させることで、中央部5f1の透明度を周辺部5f2の透明度よりも低くすることで実現することができる。中央部5f1に周辺部5f2よりも多く拡散材を含有させることで、中央部5f1の吸光度を周辺部5f2の吸光度よりも大きくし、中央部5f1が周辺部5f2よりも光を吸収しやすくすることで、周辺部5f2の透過率を中央部5f1の透過率よりも大きくすることができる。
中央部5f1を構成する材料を例えば拡散材が含有されたエポキシ樹脂とし、周辺部5f2を構成する材料を例えば中央部5f1より含有率が小さいエポキシ樹脂とすることで、中央部5f1の透過率が85%となり、周辺部5f2の透過率が95%となる。なお、中央部5f1の透過率は、例えば50%以上90%以下に設定されている。周辺部5f2の透過率は、例えば90%以上98%以下に設定されている。なお、拡散材としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸バリウムまたは炭酸カルシウム等からなる。
【0050】
本実施形態によれば、透光性カバー5の周辺部5f2の透過率を中央部5f1の透過率よりも大きくすることで、照射領域における中央部と周辺部との境界に発生しやすいグラデーションの差を低減することができ、照射領域のグラデーションをより自然にすることが可能な照明装置1を提供することができる。
【0051】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。筐体6は、内部空間が1つの空間として形成される場合には、一体的に形成された第1基板2および第2基板3が底面に設置固定されてもよい。そして、一体的に形成された第1基板2および第2基板3は、上面に複数列に実装された半導体発光素子4のそれぞれを取り囲むように、それぞれの導光孔7hが一体的に成形されたリフレクター7が設置固定される。その結果、第1基板2と第2基板3とを筐体6に設置固定する工程や、第1基板2と第2基板3のそれぞれにリフレクター7を設置固定する工程が省かれ、製造リードタイムを短縮するとともに製造コストを抑制することができる。また、中央部5f1は、半導体発光素子4の発光面に対して平行に形成されてもよい。その結果、半導体発光素子4の発光面から放射される光は、中央部5f1の上面で外側方向に屈折され、照射領域における中央部と周辺部との境界に発生しやすいグラデーションの差を低減することができ、照射領域のグラデーションをより自然にすることが可能な照明装置1を提供することができる。なお、板体8は、筐体6に設置固定しなくてもよく、照明装置1を正常に作動させることができ、照明装置1の製造コストを抑制することができる。また、透明カバー5は、長手方向の端部に形成された鍔部が筐体6内周面の長手方向に沿って形成された溝に挿入され、筐体6に設置固定されてもよく、接合材10の経年劣化による接合強度の劣化に伴って発生する透明カバー5の剥がれが抑制され、照明装置1を長期間にわたって正常に作動させることができる。
【0052】
<照明装置の製造方法>
ここで、図1に示す照明装置の製造方法を説明する。まず、複数の半導体発光素子4を準備する。チップ実装基板41および枠体43が、例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合には、酸化アルミニウムの原料粉末に、有機バインダー、可塑剤または溶剤等を添加混合して混合物を得る。
【0053】
チップ実装基板41は、混合物がシート状のセラミックグリーンシートに成形され、枠体43は、型枠内に混合物が充填されて乾燥され、焼結前のチップ実装基板41および枠体43が取り出される。
【0054】
また、タングステンまたはモリブデン等の高融点金属粉末を準備し、この粉末に有機バインダー、可塑剤または溶剤等を添加混合して金属ペーストを得る。そして、取り出したチップ実装基板41となるセラミックグリーンシートに所定パターンで印刷し、複数のセラミックグリーンシートを積層するとともに焼成され、所定の形状に切断される。また、枠体43は、所望の温度で焼結されることによって形成される。
【0055】
次に、チップ実装基板41上の配線パターンに発光素子42を半田を介して電気的に実装した後、発光素子42を取り囲むように枠体43を基板上にアクリル樹脂等の接着剤を介して接着する。そして、枠体43で囲まれた領域に、例えばシリコーン樹脂を充填して
、このシリコーン樹脂を硬化させることで、封止部材44を形成する。
【0056】
次に、波長変換部材46を準備する。波長変換部材46は、未硬化の樹脂に蛍光体を混合して、例えばドクターブレード法、ダイコーター法、押し出し法、スピンコート法またはディップ法等のシート成形技術を用いて作製することができる。また、例えば波長変換部材46は、未硬化の波長変換部材46を型枠に充填し、硬化して取り出すことによって、得ることができる。
【0057】
そして、準備した波長変換部材46を枠体43上に、例えば樹脂からなる接着部材45を介して接着することで、半導体発光素子4を作製することができる。
【0058】
さらに、長尺状の第1基板2および第2基板3を準備する。第1基板2および第2基板3には、例えばプリント配線基板を用いることができる。そして、第1基板2および第2基板3に複数の半導体発光素子4を半田を介して電気的に実装することができる。
【0059】
次に、筐体6、リフレクター7および透光性カバー5を準備する。筐体6は、アルミニウムからなり、例えば、金型成形によって所望の形状に一体的に形成される。
【0060】
リフレクター7は、例えば、ポリカーボネートからなり、押出成形法によって所望の形状に成形されている。また、リフレクター7には、例えばアルミニウム材料を用いて導光孔7hの内周面に蒸着膜を形成することで、リフレクター7の表面を光が反射しやすい反射面にすることができる。
【0061】
透光性カバー5は、中央部5f1が炭酸カルシウムから成る拡散材が含有されたアクリル樹脂によって金型成形する。そして、周辺部5f2が拡散材が含有されないアクリル樹脂によって金型成形した後に、中央部5f1と周辺部5f2を透明なアクリル樹脂からなる接着材で接着することで所望の形状に作製することができる。
【0062】
そして、半導体発光素子4を実装した第1基板2および第2基板3を筐体6内に実装し、各基板上にリフレクター7を設ける。さらに、リフレクター7上に板体8を設け、さらに筐体6上に透光性カバー5を接合材10を介して接着することで、照明装置1を作製することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 照明装置
2 第1基板
3 第2基板
4 半導体発光素子
41 チップ実装基板
42 発光素子
43 枠体
44 封止部材
45 接着部材
46波長変換部材
5 透光性カバー
5f1 中央部
5f2 周辺部
6 筐体
6a 隔壁
7 リフレクター
7a 爪部
7h 導光孔
8 板体
9 電気配線
10 接合材
L 配線溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の第1基板と、
前記第1基板の長手方向の辺に沿って隣接して設けられた長尺状の第2基板と、
前記第1基板上および前記第2基板上に両基板の長手方向に沿ってそれぞれ設けられた複数の発光素子と、
前記複数の発光素子を覆うように、前記第1基板および前記第2基板の上に長手方向に沿って設けられた長尺状の透光性カバーとを備え、
前記透光性カバーは、前記長手方向に直交する断面において、中央部の周辺領域に位置する周辺部の透過率が前記中央部の透過率よりも大きいことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置であって、
前記複数の発光素子は、平面視して前記透光性カバーの前記中央部と重なる個所には配置されていないことを特徴とする照明装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の照明装置であって、
前記透光性カバーは、前記長手方向に直交する断面において、上に凸に湾曲していることを特徴とする照明装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の照明装置であって、
前記第1基板および前記第2基板の上には、前記複数の発光素子のそれぞれを取り囲む複数の導光孔を有するリフレクターが設けられていることを特徴とする照明装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の照明装置であって、
前記透光性カバーは、前記中央部の屈折率が前記周辺部の屈折率よりも大きいことを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の照明装置であって、
前記透光性カバーは、前記中央部に、透過光を拡散させるための拡散材を含有していることを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−89433(P2013−89433A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228442(P2011−228442)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】