説明

熱アシスト光のモニタリングが可能な磁気記録ヘッド

【課題】スライダ基板の集積面に設けられ熱アシスト用の光を伝播させる光学系を備えたスライダと、光源ユニットとが接続されて構成される熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、光源からの光出力の常時のモニタリングとその光出力のフィードバック調整を可能にするとともに、光検出部の受光部と光源の後発光中心とを近接させて光源の光出力をより高い効率でモニタリング可能にする。
【解決手段】光源ユニット23は、スライダ22と接着する接着面2300と接着面2300と隣り合う光源設置面2302とを有するユニット基板230と、光源設置面2302に設置され熱アシスト用の光を放射する光源40と、ユニット基板230中に形成され、光源40の後発光中心4001から放射される光を受ける受光部550がユニット基板230の光源設置面2302側に位置する光検出部55とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱アシスト磁気記録に用いる光を放射する光源を備えた光源ユニットと、スライダとを接続して構成される熱アシスト磁気記録ヘッドに関する。また、このヘッドを備えたヘッドジンバルアセンブリ(HGA)に関し、さらにこのHGAを備えた磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインターネットの爆発的な普及に伴い、サーバ、情報端末等において、従来とは桁違いの大容量を有する多量のデータが保存され利用され始めており、この傾向は、今後も加速度的に高まることが予測されている。そのような状況下で、大容量ストレージとしての磁気ディスク装置に代表される磁気記録装置に対する需要は、ますます拡大し、その高記録密度化への要請も、日を追ってエスカレートしている。
【0003】
この磁気記録技術において、さらなる高記録密度を達成するためには、磁気ヘッドが磁気記録媒体により微小な記録ビットを書き込むことが不可欠となる。現在、このより微小な記録ビットを安定して形成するために、媒体面に垂直な磁化成分を記録ビットとする垂直磁気記録技術が実用化され、さらに、磁化の熱安定性がより高い磁気記録媒体を使用可能とする熱アシスト磁気記録技術の開発が精力的に進められている。
【0004】
この熱アシスト磁気記録技術においては、記録ビットを形成する磁化がより安定するように磁気異方性エネルギーKの大きな磁性材料で形成された磁気記録媒体を用いる一方で、この磁気記録媒体の書き込むべき部分を加熱することによってこの部分の異方性磁界を低下させ、その直後に書き込み磁界を印加して書き込みを行う。実際には、磁気記録媒体に近接場光等の光を照射することによって磁気記録媒体を加熱する方法が一般的である。この方法においては、十分に高い強度の光を安定的に所望の位置に供給するために、高出力の光源を磁気ヘッド内の何処に且つどのように設置するかが重要なポイントとなる。
【0005】
この光源の設置については、例えば、特許文献1は、レーザダイオードを含むレーザユニットをスライダの背面に搭載した構造を開示しており、特許文献2は、反射ミラーがレーザダイオード素子にモノリシックに集積された構造体をスライダの背面に搭載した構造を開示している。さらに、特許文献3は、半導体レーザと一体に形成されたスライダ構造を開示しており、非特許文献1は、ドライブ装置内に設けられたレーザユニットから発生する光を回折格子に照射する構成を開示している。
【0006】
さらに、本願発明者等は、光源を備えた光源ユニットを、磁気ヘッド素子を備えたスライダの媒体対向面とは反対側の端面(背面)に接続して構成される、「複合スライダ構造」の熱アシスト磁気記録ヘッドを提案している。この「複合スライダ構造」は、例えば、特許文献4及び特許文献5に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7538978号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/056073号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/213436号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/043360号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/052078号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Robert E. Rottmayer等 「Heat-Assisted Magnetic Recording」IEEE TRANSACTIONS ON MAGNETICS, Vol.42, No. 10, 第2417-2421頁 2006年発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、光源の設置に関して種々の形態が提案されているが、これらのレーザダイオードは、いずれも半導体で形成されたデバイスである。半導体デバイスの出力は、環境温度の変化に伴って変動する。特に、磁気ディスク装置の使用環境において想定される温度は、例えば−5〜60℃であることから、磁気ヘッド内に搭載された光源の光出力の変動幅は、相当に大きく見積もられねばならない。さらに、周囲の素子の発熱や光源自身の発熱による光源の温度変化も相当に大きくなるので、光源の光出力の変動幅はさらに拡大する。従って、異なる温度環境下で、一定の強度の出力光を安定的に得るためには、この光源の光出力の変動をリアルタイムで検出し、光源の光出力を一定にする工夫が必要となる。
【0010】
しかしながら、特に、熱アシスト用の光を伝播させる光学系と共に、この光をモニタリング(監視)する系を、熱アシスト用の磁気ヘッドの集積面に設置することは、集積面の面積の制約から困難である。実際、磁気ヘッド用のスライダ基板として現在フェムトスライダが主に用いられているが、この場合、集積面の面積は230μm(マイクロメートル)×700μmであり、非常に小さい。このような事情もあって、熱アシスト用の光源の光出力のモニタリングは、ほとんど工夫されてこなかったのが現状である。
【0011】
さらに、磁気ヘッドが磁気記録媒体上で浮上した状態において、磁気ヘッドに設置されたモニタリング系が、磁気ヘッドの空気抵抗を増大させヘッド周辺の気流を乱すような事態も回避されねばならない。しかしながら、その回避策もほとんど考察されることはなかったのである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明について説明する前に、本明細書において用いられる用語の定義を行う。本発明による磁気記録ヘッドのスライダ基板の集積面、又はユニット基板の光源設置面に形成された積層構造若しくは素子構造において、基準となる層又は素子から見て、基板側を「下方」とし、その反対側を「上方」とする。また、本発明による光源ユニット及び磁気記録ヘッドの実施形態において、必要に応じ、いくつかの図面中、「X、Y及びZ軸方向」を規定している。ここで、Z軸方向は、上述した「上下方向」であり、+Z側がトレーリング側に相当し、−Z側がリーディング側に相当する。また、Y軸方向をトラック幅方向とし、X軸方向をハイト方向とする。
【0013】
本発明によれば、スライダ基板の集積面に設けられた熱アシスト用の光を伝播させる光学系を備えたスライダと、光源ユニットとが接続されて構成される熱アシスト磁気記録ヘッドであって、この光源ユニットが、
スライダとの接続の際にスライダ基板に対向する接着面と、この接着面と隣り合う光源設置面とを有するユニット基板と、
光源設置面に設置されており、光学系に入射させる熱アシスト用の光を放射する光源と、
ユニット基板中に形成された、光源の出力を計測する光検出部であって、光源における熱アシスト用の光を放射する発光中心とは反対側の後発光中心から放射される光を受ける受光部が、ユニット基板の光源設置面側に位置する光検出部と
を備えており、
発光中心から放射される光が光学系に入射するように、スライダ基板の媒体対向面とは反対側の背面とユニット基板の接着面とが接着されている、熱アシスト磁気記録ヘッドが提供される。
【0014】
この本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、光検出部は、ユニット基板の接着面側から見て、光源の奥側に位置することが好ましい。また、この光検出部は、ユニット基板の一部を加工して形成された半導体フォトダイオードであることが好ましく、PIN型フォトダイオードであることがより好ましい。ここで、PIN型フォトダイオードは、p型半導体部と、n型半導体部と、これらp型半導体部とn型半導体部との間に挟まれるように設けられた不純物濃度が非常に低いイントリンシック部とを備えている。このPIN型フォトダイオードにおいては、イントリンシック部の存在によって空乏層幅が広くなり、寄生容量が小さく抑えられる。その結果、PIN型フォトダイオードは、PN接合ダイオードと比較して、より高感度でより高い応答速度を実現し得るのである。また、このように光検出部がユニット基板の一部を加工して形成された半導体フォトダイオードである場合、ユニット基板の光源設置面に、光検出部のp型半導体部に電気的に接続された電極と、光検出部のn型半導体部に電気的に接続された電極とが設けられていることが好ましい。
【0015】
さらに、この本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、光源は、端面発光型のレーザダイオードであり、この光源のp型の電極がユニット基板の光源設置面に接着されていることが好ましい。また、この場合、ユニット基板の光源設置面に、光源のp型の電極と電気的に接続された電極が設けられていることが好ましい。さらにまた、ユニット基板の接着面に、スライダとの接続のための接着層が設けられていることも好ましい。
【0016】
さらにまた、この本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドにおいては、スライダ基板の媒体対向面とは反対側の背面上に、このスライダ基板とユニット基板との間を電気的に絶縁するための絶縁層が設けられていることが好ましい。また、この絶縁層が、光学系の受光端面を覆っており、光源からの光が光学系に入射する際の反射防止手段として機能することも好ましい。
【0017】
本発明によれば、さらにまた、サスペンションと、このサスペンションに取り付けられた、以上に述べた熱アシスト磁気記録ヘッドとを備えたヘッドジンバルアセンブリ(HGA)であって、
スライダ基板の媒体対向面とは反対側の背面の一部がサスペンションに接着されており、このサスペンションが開口を備えていて、光源ユニットが、この開口を通してサスペンションのスライダとは反対側に出ているHGAが提供される。
【0018】
この本発明によるHGAにおいて、サスペンションの1つの面に、光源ユニットの光源及び光検出部用の配線部材が設けられており、さらに、サスペンションのその他の面に、スライダの書き込みヘッド素子用の配線部材が設けられていることも好ましい。
【0019】
本発明によれば、さらにまた、以上に述べた少なくとも1つのヘッドジンバルアセンブリと、少なくとも1つの磁気記録媒体と、光検出部からのモニタ出力を用いて光源の発光動作を制御し、さらにこの少なくとも1つの磁気記録媒体に対して熱アシスト磁気記録ヘッドが行う書き込み動作を制御するための制御回路とを備えている磁気記録装置が提供される。
【0020】
さらに、本発明によれば、スライダ基板の集積面に設けられて熱アシスト用の光を伝播させる光学系を備えたスライダに、熱アシスト用の光を放射する光源とその光源が設置される光源接地面を備えたユニット基板とを有する光源ユニットが接続されて構成される熱アシスト磁気記録ヘッドにおける、光源の位置合わせ方法として、ユニット基板中の光源設置面側に形成されており光源の出力を計測する光検出部の受光部が、光源における熱アシスト用の光を放射する発光中心とは反対側の後発光中心から放射される光を受けるように位置するように、光源を光源設置面上に設置し、スライダ基板の媒体対向面とは反対側の背面が、ユニット基板の光源設置面と隣り合う接着面と対向し、光源の発光中心から放射される光が光学系に入射するように、光源ユニットをスライダに対して位置決めする方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドは、光源からの光出力の常時のモニタリングを可能とする光検出部を備えている。その結果、熱アシスト用の光を放射する光源の光出力のフィードバック調整が可能となる。また、この調整を行うことによって、光源の光出力の環境による変化及び経時変化に対応して光出力を制御し、磁気記録媒体に照射される熱アシスト用の光の強度を安定させることができる。その結果、磁気記録媒体の書き込むべき部分の適切な加熱が安定して実施可能となる。これにより、良好な熱アシスト磁気記録を実現することが可能となる。
【0022】
さらに、この光検出部は、ユニット基板中に形成されており、受光部が、光源の後発光中心から放射される光を受け得るように、ユニット基板の光源設置面側に位置している。従って、後発光中心と受光部とを十分に近接させることができるので、光源の光出力をより高い効率をもってモニタリングすることが可能となる。さらに、光源ユニットにおいてはモニタリング系がユニット基板に内包されているので、光源ユニット全体の凹凸が少なくなっている。その結果、熱アシスト磁気記録ヘッドが磁気記録媒体上で浮上した状態において、ヘッドの空気抵抗が増大しヘッド周辺の気流を大きく乱す事態が回避可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドにおける、スライダのヘッド素子部、光源ユニットのレーザダイオード、及びそれらの周辺の構成を概略的に示す、図1のA面による断面図である。
【図3】導波路、表面プラズモン発生素子及び主磁極の構成を概略的に示す斜視図である。
【図4a】本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドにおける、光源ユニットのフォトダイオード部、及びそれらの周辺の構成を概略的に示す、図1のA面による断面図である。
【図4b】本発明による光源ユニットのフォトダイオード部の他の実施形態を概略的に示す断面図である。
【図5】本発明による光源ユニットにおける光源設置面上に設けられた電極デザインの一実施形態を示す概略図である。
【図6】本発明による磁気ディスク装置の一実施形態における要部の構成を概略的に示す斜視図である。
【図7】本発明によるヘッドジンバルアセンブリ(HGA)の一実施形態における要部の構成を概略的に示す斜視図である。
【図8】本発明によるHGAの一実施形態における、フレクシャと熱アシスト磁気記録ヘッドとの接続を概略的に示す斜視図である。
【図9】図6に示した磁気ディスク装置の記録再生及び発光制御回路の回路構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、同一の要素は、同一の参照番号を用いて示されている。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
【0025】
図1は、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの一実施形態を示す斜視図である。
【0026】
図1によれば、熱アシスト磁気記録ヘッド21は、光源としてのレーザダイオード40及び光検出部としてのフォトダイオード部55を備えた光源ユニット23と、光学系31を備えたスライダ22とが、位置を合わせられ接続されることによって構成されている。
【0027】
ここで、スライダ22は、適切な浮上量を得るように加工された媒体対向面である浮上面(ABS)2200を有するスライダ基板220と、ABS2200に垂直であってABS2200と隣り合う集積面2202上に形成された、光学系31を含むヘッド素子部221とを備えている。一方、光源ユニット23は、接着面2300を有するユニット基板230と、接着面2300に垂直であって接着面2300と隣り合う光源設置面2302に設けられた光源としてのレーザダイオード40と、ユニット基板230中に形成された、レーザダイオード40の光出力を計測、監視(モニタリング)するフォトダイオード部55とを備えている。
【0028】
また、これらスライダ22と光源ユニット23とは、スライダ基板220の背面2201とユニット基板230の接着面2300とを対向させて、接着層である半田層58を間に挟む形で互いに接着されている。
【0029】
(光源ユニット)
同じく図1に示された光源ユニット23において、レーザダイオード40は、端面発光型の半導体レーザダイオードであってよい。このレーザダイオード40は、熱アシスト用のレーザ光を放射する発光中心4000と、この発光中心4000の反対側に位置する後発光中心4001とを有しており、発光中心4000がスポットサイズ変換素子43の受光端面430と対向するように、ユニット基板230の光源設置面2302に設けられている。
【0030】
一方、フォトダイオード部55は、ユニット基板230の一部を加工して形成された、ユニット基板230中に存在する半導体フォトダイオード構造部分であり、ユニット基板230の接着面2300側から見て、レーザダイオード40の奥側(+X側)に位置している。このフォトダイオード部55は、ユニット基板230の光源設置面2302側に位置していて本実施形態において光源設置面2302に面した受光部550を備えている。この受光部550は、レーザダイオード40の後発光中心4001から放射されるレーザ光を受け得る位置に設けられている。また、p電極551が、このフォトダイオード部55のp型半導体部に電気的に接続されている。さらに、後に詳しく述べるように、レーザダイオード40は、後発光中心4001により近いp電極層40i(図2)を底にして(光源設置面2302に向けて)ユニット基板230に接着されており、後発光中心4001は、レーザダイオード40がその逆向きに接着された場合に比べて、受光部550(光源設置面2302)により近い位置となっている。
【0031】
以上に述べた構成により、フォトダイオード部55は、後発光中心4001から放射されるレーザ光(モニタ光)を受光部550にて確実に受け取ることができる。このように、フォトダイオード部55を用いてこのモニタ光の出力を検出することによって、レーザダイオード40の発光中心4000から放射される熱アシスト用のレーザ光の出力をリアルタイムでモニタリングすることが可能となる。この際、レーザダイオード40の後発光中心4001とフォトダイオード部55の受光部550とを十分に近接させることができるので、レーザダイオード40の光出力をより高い効率をもってモニタリングすることが可能となるのである。
【0032】
なお、フォトダイオード部55は、調整すべき発光中心4000からのレーザ光の前出力ではなく、反対側の後発光中心4001からのレーザ光の後出力を検出する。しかしながら、通常、端面発光型のレーザダイオード40の後出力の強度と前出力の強度とは比例関係にあり、その強度比は、ダイオード内の構成のデザインによって、例えば2〜25%の範囲内の所定値に設定されている。従って、後発光中心4001からの後出力を検出することによって、発光中心4000からの前出力をモニタリングすることが可能となるのである。
【0033】
さらに、このフォトダイオード部55を用いたモニタリングによって、後に図9を用いて詳述するように、熱アシスト用光源としてのレーザダイオード40の前出力をフィードバック調整することが可能となる。すなわち、このフォトダイオード部55からのモニタ出力を用いることによって、レーザダイオード40から放射された熱アシスト用レーザ光の出力のフィードバック調整が可能となる。また、この調整を行うことによって、レーザダイオード40の光出力の環境による変化及び経時変化に対応してこの光出力を調整し、磁気ディスク10(図6)に照射される熱アシスト用の近接場光62(図3)の強度を安定させることができるので、磁気ディスク10の書き込むべき部分の適切な加熱が安定して実施可能となる。
【0034】
同じく図1によれば、光源ユニット23の光源設置面2302に、フォトダイオード部55のp型半導体部に接続されたp電極551に電気的に接続された第1の引き出し電極412と、フォトダイオード部55のn型半導体部に電気的に接続された第2の引き出し電極413とが設けられている。第1の引き出し電極412は、SiO、Al等の絶縁材料から形成されており光源設置面2302上に設けられた絶縁層56によって、ユニット基板230から電気的に絶縁されている。一方、第2の引き出し電極413の一部は、絶縁層56を貫通してユニット基板230内のn型半導体部に電気的に接続されている。さらに、同じく、光源ユニット23の光源設置面2302上に設けられた絶縁層56上に、レーザダイオード40のp電極層40i(図2)と電気的に接続される光源引き出し電極410が設けられている。ここで、光源引き出し電極410は、光源電極部4100と引き出し部4101とからなり、レーザダイオード40は、光源電極部4100上に半田等を用いて接着される。さらにまた、レーザダイオード40の上面をなすn電極層40a(図2)上に同電極と電気的に接続された光源端子電極411が設けられている。
【0035】
これら第1及び第2の引き出し電極412及び413、引き出し部4101(光源引き出し電極層410)、並びに光源端子電極411は、ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)のフレクシャ201(図7)に設けられた配線部材の接続パッドに、ワイヤボンディング、ソルダー・ボール・ボンディング(SBB)等の方法によって電気的に接続される。なお、これらの電極デザインは、後に図5を用いて詳細に説明される。また、光源設置面2302上において他の形態の電極デザインも当然に可能となる。
【0036】
同じく図1において、ユニット基板230は、基板の一部を加工して半導体フォトダイオード構造を形成し、この基板の中にフォトダイオード部55を設けることができるように、Si、GaAs等の半導体材料で形成されていることが好ましい。これらの半導体材料でユニット基板230が形成されている場合、後に詳述するように、光源ユニット23とスライダ22とを半田層58で接着する際に、Nd−YAGレーザ光等の光を照射して半田層58を溶融させることが可能となる。
【0037】
同じく図1において、ユニット基板230は、スライダ基板220よりも一回り小さい大きさを有する。ただし、ユニット基板230のトラック幅方向の(Y軸方向の)幅WUNは、レーザダイオード40のトラック幅方向の(Y軸方向の)幅WLAよりも大きくなっており、光源電極部4100上にレーザダイオード40を設置しても、第1及び第2の引き出し電極412及び413、並びに引き出し部4101が、光源設置面2302上で露出して設けられるようになっている。さらに、ユニット基板230の(X軸方向の)厚みTUNは、光源電極部4100の奥側(+X側)にフォトダイオード部55を設けることができるように、レーザダイオード40の(X軸方向の)長さLLAよりも十分に大きくなっている。例えば、スライダ基板220にフェムトスライダを用いた場合、ユニット基板230として、(X軸方向の)厚みTUNが450μmであり、トラック幅方向の幅WUNが500μmであって、(Z軸方向の)長さLUNが300μmであるサイズのものを用いることができる。
【0038】
(スライダ)
同じく図1に示されたスライダ22において、集積面2202上に形成されたヘッド素子部221は、磁気ディスク10(図6)からデータを読み出すためのMR素子33と磁気ディスク10にデータを書き込むための電磁変換素子34とから構成される磁気ヘッド素子32と、レーザダイオード40の発光中心4000から放射されたレーザ光を受け、このレーザ光のスポットサイズを変換(小さく)した上でこのレーザ光を導波路35に導くスポットサイズ変換素子43と、スポットサイズが変換されたレーザ光を媒体対向面であるヘッド端面2210まで又はその近傍まで導く導波路35と、導波路35を伝播するレーザ光と結合して熱アシスト用の近接場光を発生させる表面プラズモン発生素子36と、磁気ヘッド素子32、スポットサイズ変換素子43、導波路35及び表面プラズモン発生素子36を覆うように集積面2202上に形成された保護層38とを含む。ここで、スポットサイズ変換素子43と、導波路35と、表面プラズモン発生素子36とが、ヘッド21(ヘッド素子部221)内における近接場光生成用の光学系31を構成する。なお、スポットサイズ変換素子43及び導波路35は、その周囲を保護層38で被覆されており、光の伝搬においてコアとしての機能を果たす。一方、周囲を被覆する保護層38部分は、クラッドとしての機能を果たす。
【0039】
MR素子33、電磁変換素子34、及び表面プラズモン発生素子36の一端は、媒体対向面であるヘッド端面2210に達している。ここで、このヘッド端面2210とABS2200とが、熱アシスト磁気記録ヘッド21全体の媒体対向面をなしている。実際の書き込み又は読み出し時においては、熱アシスト磁気記録ヘッド21が回転する磁気ディスク10の表面上において流体力学的に所定の浮上量をもって浮上する。この際、MR素子33及び電磁変換素子34それぞれの一端が、磁気ディスク10の磁気記録層の表面と適当なマグネティックスペーシングを介して対向することになる。この状態において、MR素子33が磁気記録層からのデータ信号磁界を感受して読み出しを行い、電磁変換素子34が磁気記録層にデータ信号磁界を印加して書き込みを行う。ここで、書き込みの際、光源ユニット23のレーザダイオード40からスポットサイズ変換素子43及び導波路35を通って伝播してきたレーザ光が、表面プラズモン発生素子36で近接場光62(図3)に変換される。この近接場光62が磁気記録層の書き込みを行う部分に照射され、この磁気記録層の部分を加熱する。この加熱によって、同部分の異方性磁界(保磁力)が書き込みを行うことが可能な値にまで低下し、この低下した部分に電磁変換素子34によって書き込み磁界が印加されることによって、熱アシスト磁気記録を行うことが可能となる。
【0040】
同じく図1によれば、スポットサイズ変換素子43は、レーザダイオード40から放射されたレーザ光を、トラック幅方向(Y軸方向)の幅WSCを有する受光端面430で受け取り、できるだけ低損失でしかもシングルモードのまま、より小さなスポット径のレーザ光に変換した上で、導波路35の受光端面352に導く光学素子である。ここで、シングルモードとは、スポットサイズ変換素子43を伝播するレーザ光のビーム断面が円形又は楕円形であって、その断面内での光強度分布が単峰性の分布、特にガウス分布で表されるモードをいう。シングルモードのレーザ光は、スポットサイズ変換素子43を伝播することによってより小さなスポット径のレーザ光に変換された場合でも、安定して所望の強度を維持する。スポットサイズ変換素子43は、本実施形態において、受光端面430から入射したレーザ光の進行方向(−X方向)に沿って、トラック幅方向(Y軸方向)の幅が幅WSCから徐々に狭くなっている下部伝播層431と、この下部伝播層431上に積層されており、同じくレーザ光の進行方向(−X方向)に沿って、トラック幅方向(Y軸方向)の幅が幅WSCから下部伝播層431と比べてより急激に小さくなっている上部伝播層432とを備えている。受光端面430から入射したレーザ光は、このような積層構造を伝播するにつれてそのスポットサイズを小さく変換させられて、導波路35の受光端面352に至る。
【0041】
なお、スポットサイズ変換素子43の受光端面430位置での幅WSCは、例えば1〜10μm程度とすることができる。また、受光端面430位置での(Z軸方向の)厚さTSCは、例えば1〜10μm程度とすることができる。また、受光端面430は、レーザダイオード40の発光中心4000を含む端面に対して所定の鋭角、例えば4°程度傾いていてもよい。これにより、受光端面430において反射したレーザ光が発光中心4000に戻ってしまう戻り光をより防止し易くなる。さらに、スポットサイズ変換素子43は、周囲を被覆する保護層38の構成材料の屈折率nOCよりも高い屈折率を有する材料から構成されており、後述する導波路35を構成する誘電材料と同一の材料で形成されることができる。この場合、これらスポットサイズ変換素子43及び導波路35は、一体に形成されていてもよい。
【0042】
また、導波路35は、本実施形態において、スポットサイズ変換素子43から放射されるレーザ光を受ける受光端面352から、ヘッド端面2210側の端面350まで、集積面2202に平行に伸長している。ここで、端面350はヘッド端面2210の一部となっていてもよく、またはヘッド端面2210から所定の距離だけ後退していてもよい。また、導波路35の一側面の端面350近傍部分は、表面プラズモン発生素子36と対向している。受光端面352から入射し導波路35を伝播するレーザ光(導波路光)は、この表面プラズモン発生素子36と対向する部分に至り、同素子36と表面プラズモンモードで結合可能となる。
【0043】
さらに、同じく図1によれば、スライダ22の保護層38の上面上に、磁気ヘッド素子32用である一対の端子電極370及び一対の端子電極371が設けられている。これら端子電極370及び371も、HGAのフレクシャ201(図7)に設けられた配線部材の接続パッドに、ワイヤボンディング、SBB等の方法によって電気的に接続される。
【0044】
また、スライダ基板220は、例えば、(X軸方向の)厚みTSLが230μmであり、トラック幅方向の(Y軸方向の)幅WSLが700μmであり、(Z軸方向の)長さLSLが850μmである、いわゆるフェムトスライダとすることができる。フェムトスライダは、高記録密度に対応可能な薄膜磁気ヘッドの基板として一般的に使用されており、現在使用されているスライダの中で最も小さいサイズの規格を有する。なお、スライダ基板220は、アルチック(Al−TiC)、SiO等のセラミック材料で形成可能である。
【0045】
(熱アシスト磁気記録ヘッド)
以上に説明したように、熱アシスト磁気記録ヘッド21は、スライダ22と光源ユニット23とを接続した構成になっている。従って、スライダ22及び光源ユニット23を、それぞれ個別に製造した上で組み合わせることによって、ヘッド21を製造することができる。その結果、例えば、前もって光源ユニット23の特性評価を行って、良品のみをヘッドの製造に使用すれば、ヘッド製造工程でのヘッド21自体の製造歩留まりが、光源ユニット23の不良品率によって深刻な影響を受ける事態が回避される。ここで、光源ユニット23の特性評価に大きく影響する事項として、レーザダイオード40及びフォトダイオード部55の各々の動作特性だけではなく、レーザダイオード40とフォトダイオード55部との位置関係も挙げられる。このように、製造歩留まりに大きな影響を及ぼし得る事項を製造工程の上流でチェックし、光源ユニット23を選別することによって、ヘッド21自体の製造歩留まりの低下を回避することができる。なお、フォトダイオード部55は、ユニット基板230内に作り込まれるため、個別のフォトダイオードチップをユニット基板230に搭載する必要がない。従って、フォトダイオード部55を設ける際の機械的なストレスが回避される。
【0046】
また、光源ユニット23は、スライダ22のABS2200とは反対側の背面2201に接着されるので、常に、レーザダイオード40及びフォトダイオード部55をABS2200から遠ざけた位置に設置することが可能となる。その結果、レーザダイオード40及びフォトダイオード部55に対して動作中に機械的な衝撃が直接及ぶ事態を回避することができる。さらに、スライダ22においてABS2200と集積面2202とが垂直であるので、従来の薄膜磁気ヘッド製造工程と親和性が良い。また、熱アシスト磁気記録ヘッド21内に、光ピックアップレンズ等の非常に高い精度を要する光学部品、さらには光ファイバ等の接続に特別な構造を要する光学部品を設ける必要がないので、製造工数を低減することができ、低コスト化が可能となるのである。
【0047】
さらにまた、光源ユニット23においてモニタリング系がユニット基板230に内包されているので、ユニット基板230にフォトダイオードチップを搭載した場合に比べて光源ユニット全体の凹凸が少ない。その結果、熱アシスト磁気記録ヘッド21が磁気ディスク10上で浮上した状態において、ヘッド21の空気抵抗が増大しヘッド21周辺の気流が大きく乱される事態が回避可能となる。
【0048】
図2は、熱アシスト磁気記録ヘッド21における、スライダ22のヘッド素子部221、光源ユニット23のレーザダイオード40、及びそれらの周辺の構成を概略的に示す、図1のA面による断面図である。
【0049】
(レーザダイオード)
図2によれば、レーザダイオード40は端面発光型である。このレーザダイオード40として、例えば、InP系、GaAs系、GaN系等の、通信用、光学系ディスクストレージ用又は材料分析用等として通常用いられているものが使用可能である。また、放射されるレーザ光の波長λは、例えば375nm〜1.7μmの範囲内の値に設定可能である。この図2に示したレーザダイオード40は、上面にあたる光源端子電極411側から、n電極層40aと、n−GaAs基板40bと、n−InGaAlPクラッド層40cと、第1のInGaAlPガイド層40dと、多重量子井戸(InGaP/InGaAlP)等からなる活性層40eと、第2のInGaAlPガイド層40fと、p−InGaAlPクラッド層40gと、p電極下地層40hと、p電極層40iとが順次積層された構造を有する。さらに、このレーザダイオード40の多層構造の劈開面の前後には、全反射による発振を励起するための反射層510及び511が形成されている。ここで、反射層510の活性層40eの位置に発光中心4000が存在し、反射層511の活性層40eの位置に後発光中心4001が存在する。
【0050】
なお当然に、レーザダイオード40の構成は以上に述べたものに限定されるものではない。しかしながら、いずれにしてもレーザダイオード40の設置においては、p電極層40iを底面として光源引き出し電極410の光源電極部4100に接着させることが好ましい。一般に、端面発光型のレーザダイオードでは、活性層40e(発光中心4000、後発光中心4001)は、積層方向(Z軸方向)において、n電極層40aよりもp電極層40iにより近い位置にある。従って、p電極層40iを底面とすることによって、後発光中心4001と光源設置面2302との(Z軸方向での)距離を、より小さい値に設定することができる。これにより、光源設置面2302とほぼ同一面内にあるフォトダイオード部55の受光部550に、後発光中心4001を中心として放射されたレーザ光(モニタ光)を十分に入射させ得るように、受光部550の位置を設計することが容易となる。
【0051】
その結果、このような受光部550を備えたフォトダイオード部55を用いてこのモニタ光の出力を検出することによって、レーザダイオード40の発光中心4000から放射される熱アシスト用のレーザ光の出力をリアルタイムでモニタリングすることが可能となる。さらに、レーザダイオード40の後発光中心4001と受光部550とを十分に近接させることができるので、レーザダイオード40の後発光中心4001からの出力を高い効率をもってモニタリングすることが可能となる。なお、動作時の発熱量が最も多い活性層40eにより近いp電極層40iを底面としてレーザダイオード40を設置することによって、ユニット基板230を光源のヒートシンクとしてより有効に機能させることもできるのである。
【0052】
同じく図2によれば、光源引き出し電極410及び光源端子電極411を介して、レーザダイオード40のp電極層40i及びn電極層40a間に所定の電圧を印加すると、レーザダイオード40が発振し、発光中心4000及び後発光中心4001からレーザ光が放射されるのである。このレーザダイオード40の駆動においては、磁気ディスク装置内の電源が使用可能である。磁気ディスク装置は、通常、例えば2〜5V程度の電源を備えており、レーザ発振動作には十分の電圧を有している。実際、レーザダイオード40の消費電力が例えば百mW前後であっても、この磁気ディスク装置内の電源で十分に賄うことができる。なお、レーザダイオード40の幅WLA(図1)は、例えば150〜250μmであってもよい。また、レーザダイオード40の長さLLAは、反射層510及び511間の距離である共振器長に概ね相当するものであるが、例えば300μmである。この長さLLAは、十分な出力を得るために300μm以上であることが好ましい。また、レーザダイオード40の高さTLAは、例えば60〜200μmであってもよい。
【0053】
同じく図2において、レーザダイオード40のp電極層40iとユニット基板230の光源電極部4100(光源引き出し電極410)との接着は、例えば鉛フリー半田の1つであるAuSn合金等による半田付けによって実施可能である。さらに、スライダ22と光源ユニット23とは、スライダ基板220の背面2201とユニット基板230の接着面2300とを対向させて、接着層である半田層58を間に挟む形で互いに接着されている。ここで、ユニット基板230がSi、GaAs等の半導体材料で形成されている場合、光源ユニット23とスライダ22とを半田層58で接着する際に、Nd−YAGレーザ光を照射して半田層58を溶融させることが可能となる。
【0054】
実際、Nd−YAGレーザ光は、1064nm(ナノメートル)の波長を有しているが、Si(透過率:67%)、GaAs(透過率:66%)等の半導体材料で形成されたユニット基板230を、透過率50%以上で透過する。従って、半田層58を間に挟んだ光源ユニット23及びスライダ22に対し、Nd−YAGレーザ光を光源ユニット23を介して半田層58に照射して半田層58を溶融させ、光源ユニット23とスライダ22とを接着することができるのである。
【0055】
また、半田層58は、ユニット基板230を透過したレーザ光によって溶融され固化された材料で形成されていることが好ましい。半田層58は、融点が400℃未満である、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Ge(ゲルマニウム)、Al(アルミニウム)及びMg(マグネシウム)からなる群から選択された1つの元素を含む合金で形成されていることが好ましい。この半田層58の厚さは、例えば0.05〜5.0μm(マイクロメートル)程度とすることができる。
【0056】
(光源ユニットとスライダとの絶縁手段)
同じく図2に示すように、スライダ基板220の背面2201上及びヘッド素子部221の端面2211上に、スライダ基板220とユニット基板230との間を電気的に絶縁するための絶縁膜57が設けられていることが好ましい。これにより、ユニット基板230とスライダ基板220との間の電気的な絶縁が確保される。ここで、スライダ基板220は、通常、グラウンドに接地されている。一方、ユニット基板230本体は、当然にフォトダイオード部55のn型半導体部と同電位となるが、このn型半導体部(に電気的に接続された第2の引き出し電極413)は、通常グラウンドに接地して使用され得ない。従って、この場合、スライダ基板220とユニット基板230との絶縁は不可欠となる。
【0057】
また、この絶縁膜57は、ヘッド素子部221内の光学系31(スポットサイズ変換素子43)の受光端面430を覆っていてもよく、レーザダイオード40からのレーザ光が光学系31に入射する際の反射防止手段として機能することも好ましい。これにより、受光端面430からの戻り光によるレーザダイオード40の発振障害が回避される。なお、絶縁層57は、例えば、TaO及びSiOといった互いに異なる屈折率を有する2種の誘電膜を、各膜厚をレーザ光の波長に基づいて制御しながら交互に積層させて形成した多層膜とすることができる。
【0058】
(ヘッド素子部)
同じく図2によれば、ヘッド素子部221は、MR素子33、電磁変換素子34、及び光学系31を備えている。
【0059】
このうち、MR素子33は、MR積層体332と、対となってMR積層体332及び絶縁層381を挟む位置に配置されており軟磁性材料から形成された下部シールド層330及び上部シールド層334とを含み、集積面2202上に形成されたAl(アルミナ)等の絶縁材料からなる下地層380上に形成されている。MR積層体332は、MR効果を利用して信号磁界を感受する感磁部であり、例えば、面内通電型巨大磁気抵抗(CIP-GMR)積層体、垂直通電型巨大磁気抵抗(CPP-GMR)積層体、又はトンネル磁気抵抗(TMR)積層体とすることができる。なお、MR積層体332がCPP−GMR積層体又はTMR積層体である場合、上下部シールド層334及び330は、磁気シールドとしてだけではなく電極としての役割も果たす。
【0060】
また、電磁変換素子34は、垂直磁気記録用であって、上部ヨーク層340と、主磁極3400と、書き込みコイル層343と、コイル絶縁層344と、下部ヨーク層345と、下部シールド3450とを備えている。
【0061】
上部ヨーク層340は、コイル絶縁層344を覆うように形成されており、主磁極3400は、Al(アルミナ)等の絶縁材料からなる絶縁層385上に形成されている。これら上部ヨーク層340及び主磁極3400は、互いに磁気的に接続されており、書き込みコイル層343に書き込み電流を印加することによって発生した磁束を、書き込みがなされる磁気ディスク10(図6)の磁気記録層(垂直磁化層)まで収束させながら導くための導磁路となっている。このうち、主磁極3400は、ヘッド端面2210に達しておりトラック幅方向の小さな幅W(図3)を有する第1の主磁極部3400aと、この第1の主磁極部3400a上であって第1の主磁極部3400aの後方(+X側)に位置している第2の主磁極部3400bとを有している。第1の主磁極部3400aのヘッド端面2210上における端面3400e(図3)の形状は、例えば、長方形、正方形又は台形である。ここで、上述した幅Wは、この主磁極3400の端面3400eにおけるトラック幅方向(Y軸方向)の辺の長さであり、書き込み磁界のトラック幅方向(Y軸方向)における分布の幅を規定する。幅Wは、例えば0.05〜0.5μm程度とすることができる。主磁極3400は、上部ヨーク層340よりも高い飽和磁束密度を有する軟磁性材料から形成されていることが好ましく、例えば、Feが主成分である鉄系合金材料である、FeNi、FeCo、FeCoNi、FeN又はFeZrN等の軟磁性材料から形成される。第1の主磁極部3400aの厚さは、例えば、0.1〜0.8μmである。
【0062】
書き込みコイル層343は、絶縁層385上に形成されたAl(アルミナ)等の絶縁材料からなる絶縁層3421上において、1ターンの間に少なくとも下部ヨーク層345と上部ヨーク層340との間を通過するように形成されており、バックコンタクト部3402を中心として巻回するスパイラル構造を有している。この書き込みコイル層343は、例えばCu(銅)等の導電材料から形成されている。ここで、例えば加熱キュアされたフォトレジスト等の絶縁材料からなる書き込みコイル絶縁層344が、書き込みコイル層343を覆っており、書き込みコイル層343と上部ヨーク層340との間を電気的に絶縁している。書き込みコイル層343は、本実施形態において1層であるが、2層以上でもよく、又はヘリカルコイルでもよい。さらに、巻き数も図2での数に限定されるものではなく、例えば、2〜7ターンに設定され得る。
【0063】
なお、バックコンタクト部3402には、X軸方向に伸長した貫通孔が設けられており、この貫通孔の中を、導波路35及び導波路35を被覆する絶縁層が通り抜けている。この貫通孔内においては、バックコンタクト部3402の内壁と導波路35とが所定の距離、例えば少なくとも1μm離隔している。これにより、バックコンタクト部3402による導波路光の吸収が防止される。
【0064】
下部ヨーク層345は、Al(アルミナ)等の絶縁材料からなる絶縁層383上に形成されており、磁気ディスク10の磁気記録層(垂直磁化層)の下に設けられた軟磁性裏打ち層から戻ってきた磁束を導く導磁路としての役割を果たす。下部ヨーク層345は軟磁性材料から形成されており、その厚さは、例えば、0.5〜5μm程度である。また、下部シールド3450は、下部ヨーク層345と磁気的に接続されていてヘッド端面2210に達した導磁路の一部である。下部シールド3450は、表面プラズモン発生素子36を介して主磁極3400と対向しており、主磁極3400から発して広がった磁束を取り込む役割を果たす。この下部シールド3450は、主磁極3400よりも格段に大きなトラック幅方向の幅を有している。このような下部シールド3450を設けることによって、下部シールド3450の端部と第1の主磁極部3400aとの間において磁界勾配がより急峻になる。この結果、信号出力のジッタが小さくなって読み出し時のエラーレートが低減可能となる。なお、下部シールド3450は、高飽和磁束密度を有する、NiFe(パーマロイ)又は主磁極3400と同様の鉄系合金材料等から形成されることが好ましい。
【0065】
同じく図2によれば、光学系31は、スポットサイズ変換素子43、導波路35、及び表面プラズモン発生素子36を備えている。
【0066】
このうちのスポットサイズ変換素子43によってスポットサイズを変換(小さく)されたレーザ光53aは、導波路35の受光端面352に入射し導波路35中を伝播する。導波路35は、受光端面352から、バックコンタクト部3402に設けられたX軸方向の貫通孔の中を通って、ヘッド端面2210側の端面350まで伸長している。さらに、表面プラズモン発生素子36は、導波路35を伝播してきたレーザ光(導波路光)を近接場光に変換する近接場光発生素子である。導波路35のヘッド端面2210側の部分及び表面プラズモン発生素子36は、下部シールド3450(下部ヨーク層345)と主磁極3400(上部ヨーク層340)との間に設けられている。また、導波路35のヘッド端面2210側の上面(側面)の一部と表面プラズモン発生素子36の(伝播エッジ360(図3)を含む)下面の一部とは、所定の間隔をもって対向しており、これら一部に挟まれた部分は、導波路35の屈折率よりも低い屈折率を有する緩衝部50となっている。緩衝部50は、導波路35を伝播するレーザ光(導波路光)を、表面プラズモンモードで表面プラズモン発生素子36に結合させる役割を果たす。以上に述べた導波路35、緩衝部50及び表面プラズモン発生素子36については、後に図3を用いて詳細に説明を行う。
【0067】
さらに、同じく図2に示すように、MR素子33と電磁変換素子34(下部ヨーク層345)との間に、絶縁層382及び383に挟まれた素子間シールド層39が設けられていることも好ましい。この素子間シールド層39は、軟磁性材料で形成されることができ、電磁変換素子34より発生する磁界からMR素子33をシールドする役割を果たす。なお、以上に述べた絶縁層381、382、383、384、385及び386が、保護層38を構成することになる。
【0068】
図3は、導波路35、表面プラズモン発生素子36及び主磁極3400の構成を概略的に示す斜視図である。同図においては、書き込み磁界及び近接場光が磁気記録媒体に向かって放射される位置を含むヘッド端面2210が、左側に位置している。
【0069】
図3によれば、近接場光発生用のレーザ光(導波路光)53bを端面350に向かって伝播させるための導波路35と、導波路光53bによって励起される表面プラズモンが伝播するエッジである伝播エッジ360を備えた表面プラズモン発生素子36とが設けられている。表面プラズモン発生素子36は、さらに、励起された表面プラズモンが行き着く先である、ヘッド端面2210に達した近接場光発生端面36aを備えている。伝播エッジ360は、この近接場光発生端面36aまで伸長している。また、導波路35の側面354の一部分と、表面プラズモン発生素子36の伝播エッジ360を含む下面362の一部との間に挟まれた部分が、緩衝部50となっている。すなわち、伝播エッジ360は、緩衝部50に覆われている。この緩衝部50は、導波路光53bを表面プラズモンモードで表面プラズモン発生素子36に結合させる役割を果たす。また、伝播エッジ360は、導波路光53bによって励起される表面プラズモンを近接場光発生端面36aまで伝播させる役割を果たす。ここで、導波路35の側面とは、導波路35を取り囲む端面のうち、ヘッド端面2210側の端面350及びその反対側の受光端面352以外の端面を指すものとする。この側面は、コアに相当する導波路35において伝播する導波路光53bが全反射し得る面となる。なお、本実施形態において、一部が緩衝部50に接面した導波路35の側面354は、導波路35の上面となっている。また、緩衝部50は、保護層38(図2)の一部であってもよいし、保護層38とは別に設けられた新たな層であってもよい。
【0070】
より具体的に、緩衝部50の近傍まで進行した導波路光53bは、屈折率nWGを有する導波路35と、屈折率nBFを有する緩衝部50と、金属材料からなる表面プラズモン発生素子36との光学的構成と結びついて、表面プラズモン発生素子36の伝播エッジ360に表面プラズモンモードを誘起する。すなわち、表面プラズモンモードで表面プラズモン発生素子36に結合する。この表面プラズモンモードの誘起は、緩衝部50の屈折率nBFを導波路35の屈折率nWGよりも小さく(nBF<nWG)設定することによって可能となる。実際には、コアである導波路35と緩衝部50との光学的な界面条件から、緩衝部50内にエバネッセント光が励起される。次いで、このエバネッセント光と、表面プラズモン発生素子36の金属表面(伝播エッジ360)に励起される電荷のゆらぎとが結合する形で表面プラズモンモードが誘起され、表面プラズモン60が励起される。ここで、伝播エッジ360は、表面プラズモン発生素子36の傾斜した下面362において導波路35に最も近い位置にあり、また角部であって電場が集中しやすいので、表面プラズモン60が励起されやすい。また、伝播エッジ360の角は、表面プラズモン60が伝播エッジ360から離脱して光利用効率が低下する現象を防止するために丸められていることが好ましい。
【0071】
なお、図1〜3に示されるような光源及び光学系において、レーザダイオード40の発光中心4000から放射されるレーザ光は、電場の振動方向がZ軸方向であるTMモードの偏光を有することが好ましい。この場合、導波路光53bも電場の振動方向がZ軸方向、すなわち導波路35の積層面に垂直な方向である直線偏光を有することになる。このような偏光状態を設定することによって、導波路35を伝播する導波路光53bが、表面プラズモンモードで表面プラズモン発生素子36に結合可能となる。
【0072】
同じく図3によれば、表面プラズモン発生素子36は、本実施形態において、ヘッド端面2210の近傍で近接場光発生端面36aに向かってハイト方向(Z軸方向)に先細となる形状となっている。また、表面プラズモン発生素子36は、本実施形態において、三角形状のYZ面による断面を有しており、特に近接場光発生端面36aは、本実施形態において、伝播エッジ360の端をリーディング側(−Z側)の頂点とする二等辺三角形の形状を有する。ここで、伝播エッジ360を伝播する表面プラズモン60は、伝播エッジ360の行き着く先である頂点360aを有する近接場光発生端面36aに至る。その結果、この近接場光発生端面36aに表面プラズモン60、すなわち電場が集中する。これにより、近接場光発生端面36aから近接場光62が発生する。この近接場光62が磁気ディスク10(図6)の磁気記録層に向けて照射され、磁気ディスク10の表面に達し、磁気ディスク10の磁気記録層部分を加熱する。これにより、その部分の異方性磁界(保磁力)が書き込みを行うことが可能な値にまで低下する。その直後、この部分に、主磁極3400から発生する書き込み磁界63を印加して書き込みを行う。以上、熱アシスト磁気記録を行うことが可能となる。
【0073】
また、導波路35の側面、すなわち上面354、下面353、及びトラック幅方向(Y軸方向)の両側面351は、緩衝部50と接面した部分を除いて、保護層38(図3)、すなわち絶縁層384及び385(図5)と接面している。ここで、導波路35がコアとして働く一方、保護層38がクラッドとしての機能を果たすように、導波路35は、保護層38の構成材料の屈折率nOCよりも高い屈折率nWGを有する、例えばスパッタリング法等を用いて形成された材料から構成されている。例えば、レーザ光の波長λが600nmであって、保護層38が、Al(n=1.63)から形成されている場合、導波路35は、SiO(n=1.7〜1.85)、Ta(n=2.16)等から形成されていてもよい。また、本実施形態において、導波路35のYZ面による断面は長方形又は台形である。ここで、この導波路35のヘッド端面2210側の端面350の近傍部分におけるトラック幅方向(Y軸方向)の幅WWGは、例えば0.3〜0.7μm程度とすることができ、導波路35の(Z軸方向の)厚さTWGは、例えば0.3〜0.7μm程度とすることができる。
【0074】
さらに、緩衝部50は、導波路35の屈折率nWGよりも低い屈折率nBFを有する誘電材料で形成されている。例えば、レーザ光の波長λが600nmであって、導波路35が、例えばTa(n=2.16)から形成されている場合、緩衝部50は、SiO(n=1.46)又はAl(n=1.63)から形成されていてもよい。また、導波路35の側面354と伝播エッジ360とに挟まれた部分である緩衝部50の(X軸方向の)長さLBFは、0.5〜5μmであることが好ましく、レーザ光53bの波長よりも大きいことが好ましい。また、緩衝部50の(Z軸方向の)厚さTBFは、10〜200nmであることが好ましい。
【0075】
さらにまた、表面プラズモン発生素子36は、金属等の導電材料、例えばAg、Au、Pd、Pt、Rh、Ir、Ru、Cu若しくはAl、又はこれら元素のうちの複数の合金、特にAgを主成分とする合金から形成されていることが好ましい。また、表面プラズモン発生素子36の上面361におけるトラック幅方向(Y軸方向)の幅WNFは、レーザ光53bの波長よりも十分に小さく、例えば約10〜100nmとすることができ、(Z軸方向の)厚さTNF1も、レーザ光53bの波長よりも十分に小さく、例えば約10〜100nmとすることができ、(X軸方向の)長さ(高さ)HNFは、例えば約0.8〜6.0μmとすることができる。
【0076】
なお、ヘッド素子部221に設けられた熱アシスト用の光を発生させるための光学系は、以上に述べたものに限定されるものではない。例えば、別の形状、構造を有するプラズモン発生素子若しくは近接場光発生素子を用いた光学系、又は金属片からなるプラズモン・アンテナを導波路端に配した光学系を用いることも可能である。
【0077】
図4aは、熱アシスト磁気記録ヘッド21における、光源ユニット23のフォトダイオード部55、及びそれらの周辺の構成を概略的に示す、図1のA面による断面図である。また、図4bは、光源ユニット23のフォトダイオード部55の他の実施形態を概略的に示す断面図である。
【0078】
図4aに示すように、フォトダイオード部55は、ユニット基板230の一部を加工して形成された、ユニット基板230中に存在する半導体フォトダイオード構造部分であり、ユニット基板230の接着面2300側から見て、レーザダイオード40の奥側(+X側)に位置している。
【0079】
フォトダイオード部55は、本実施形態においてPIN型フォトダイオード構造を有していて、p型半導体部55aと、不純物濃度が高いn型半導体部55dと、p型半導体部55aとn型半導体部55dとの間に挟まれるように設けられた不純物濃度が非常に低いイントリンシック部55cとを備えている。p型半導体部55aは、光源設置面2302近くに設けられていて、p型半導体部55aの上面が光源設置面2302と同一面内にあり、受光部550をなす。このp型半導体部55aには、p電極551が電気的に接続されている。また、n型半導体部55dの端部も、光源設置面2302に達している。このn型半導体部55dには、第2の引き出し電極413が電気的に接続されている。なお、変更態様として、フォトダイオード部55は、p型半導体部とn型半導体部とのPN接合を含むPN接合ダイオード構造を有するものであってもよい。
【0080】
しかしながら、本実施形態のPIN型フォトダイオード構造においては、イントリンシック部55cの存在によって空乏層幅が広くなり、寄生容量が小さく抑えられる。その結果、このPIN型フォトダイオード構造は、PN接合ダイオード構造よりも、高感度でより高い応答速度を実現し得るのである。図4aにおいて、フォトダイオード部55に逆バイアスを印加、すなわち、例えばp電極551をグラウンドに接地した上で第2の引き出し電極413にプラス電圧を印加すると、イントリンシック部55cの存在によって広い領域の空乏層55bが発生する。ここで、レーザダイオード40の後発光中心4001からのレーザ光(モニタ光)が受光部550を介して、この空乏層55bが生じているフォトダイオード部55内に入ると、光電効果が生じて、その光量に応じた電子及び正孔の対が発生する。このうち電子はn型半導体部55dに、正孔はp型半導体部55aに流入する。その結果、電極551及び413の間に、入光量に応じた光起電力が生じる。この光起電力を測定するか、又は電極551及び413の間に負荷を接続し、流れる電流を測定するかによって、フォトダイオード部55からのモニタ出力を得ることができる。
【0081】
フォトダイオード部55は、ユニット基板230にフォトダイオードチップを埋め込んで形成することも可能であるが、シリコンウエハにフォトリソグラフィ法及びイオン注入法等を用いてフォトダイオード構造を形成する従来の技術を応用して、ユニット基板230の一部を加工して形成されることが好ましい。この形成方法では、チップの埋め込みに比べて、形成部材点数が減少し、より低コストであって、さらに搭載時の機械的ストレスの問題からも解放される。ここで、フォトダイオード部55の(X軸方向の)長さLPHは、例えば50〜150μm程度とし、(Z軸方向の)深さDPHは、例えば例えば5〜50μm程度とし、(Y軸方向の)幅WPH(図1)は、例えば50〜150μm程度とすることができる。
【0082】
なお、図4bに示すように、ユニット基板230′としてn+型のSi又はGaAs基板を用い、この基板にイントリンシック部55c′及びp型半導体部55a′を形成して、ユニット基板230全体をフォトダイオード部55とすることもできる。
【0083】
図4aに戻って、フォトダイオード部55がレーザダイオード40からのモニタ光を確実に効率良く検出するために、レーザダイオード40の後発光中心4001と受光部550の受光部中心5500との相対的な位置関係が適切に決められている。ここで、後発光中心4001から放射されるレーザ光の広がり角(放射角)θPHは、例えば5〜22°(度)程度であるが、この放射角を有する放射レーザ光の円錐内に、少なくとも受光部中心5500が収まることが好ましい。このような位置関係を実現するために、ユニット基板230の光源設置面2302と後発光中心4001との(Z軸方向での)距離DREを、例えば8μmとし、後発光中心4001と受光部中心5500との(X軸方向での)距離DLPを、例えば45μmとすることができる。
【0084】
図5は、光源ユニット23における光源設置面2302上に設けられた電極デザインの一実施形態を示す概略図である。
【0085】
図5によれば、光源設置面2302上に、SiO、Al等の絶縁材料から形成された絶縁層56が設けられており、この絶縁層56上に、フォトダイオード部55用の2つの電極としての第1の引き出し電極412及び第2の引き出し電極413と、レーザダイオード40用の1つの電極としての光源引きだし電極410とが設けられている。ここで、第1の引きだし電極412は、フォトダイオード部55のp電極551と電気的に接続されており、第2の引き出し電極413の一部は、絶縁層56を貫通してフォトダイオード部55のn型半導体部55dと電気的に接続されている。また、光源引きだし電極410は、光源電極部4100及び引き出し部4101からなる。さらに、レーザダイオード40(のn電極層40a)上に、レーザダイオード40用の他の電極としての光源端子電極411が設けられている。
【0086】
これら第1及び第2の引き出し電極412及び413、並びに光源引き出し電極410は、例えば厚さ10nm程度のTa、Ti等からなる下地層と、この下地層上に形成された例えば厚さ1〜5μm程度のAu、Cu、Al、又はこれらの元素の少なくとも1つを含む合金等の導電材料からなる導電層とから構成されることができる。また、これらの引き出し電極は、例えばAuSn合金等の半田材料を、蒸着法等を用いて光源設置面2302上の絶縁層56上に積層することによって形成することも可能である。さらに、光源端子電極411は、レーザダイオード40のn電極層40a(図2)上に形成された、例えば厚さ1〜5μm程度のAu、Cu、Al、又はこれらの元素の少なくとも1つを含む合金等の導電層とすることができる。
【0087】
これら第1及び第2の引き出し電極412及び413、並びに引き出し部4101及び光源端子電極411は、いずれも接着面2300の近傍まで伸張した又は近傍に位置するパターンとなっている。これにより、後に図8を用いて説明するようにヘッド21とフレクシャ201とを接合してHGAを構成する際、これらの電極とフレクシャ201の配線部材の接続パッドとの電気的な接続が容易となるのである。
【0088】
図6は、本発明による磁気ディスク装置の一実施形態における要部の構成を概略的に示す斜視図である。
【0089】
図6に示した磁気記録装置としての磁気ディスク装置は、スピンドルモータ11の回転軸の回りを回転する、磁気記録媒体としての複数の磁気ディスク10と、複数の駆動アーム14が設けられたアセンブリキャリッジ装置12と、各駆動アーム14の先端部に取り付けられており熱アシスト磁気記録ヘッド21を備えたHGA17と、熱アシスト磁気記録ヘッド21の書き込み及び読み出し動作を制御し、さらに、ヘッド21に備えられたフォトダイオード部55からのモニタ出力を用いて、レーザダイオード40の発光動作を制御するための記録再生及び発光制御回路13とを備えている。
【0090】
磁気ディスク10は、本実施形態において、垂直磁気記録用であり、例えば、ディスク基板に、軟磁性裏打ち層、中間層及び磁気記録層(垂直磁化層)が順次積層された構造を含んでいる。アセンブリキャリッジ装置12は、熱アシスト磁気記録ヘッド21を、磁気ディスク10の磁気記録層に形成されており記録ビットが並ぶトラック上に位置決めするための装置である。同装置内において、駆動アーム14は、ピボットベアリング軸16に沿った方向にスタックされており、ボイスコイルモータ(VCM)15によってこの軸16を中心にして角揺動可能となっている。なお、本発明に係る磁気ディスク装置の構造は、以上に述べた構造に限定されるものではない。磁気ディスク10、駆動アーム14、HGA17及びヘッド21は、単数であってもよい。
【0091】
図7は、本発明によるHGA17の一実施形態における要部の構成を概略的に示す斜視図である。同図においては、HGA17の磁気ディスク10表面に対向する側が上になって表示されている。
【0092】
図7によれば、HGA17において、サスペンション20は、ロードビーム200と、このロードビーム200に固着されており弾性を有するフレクシャ201と、ロードビーム200の基部に設けられたベースプレート202と、フレクシャ201の磁気ディスク10に対向する面上に設けられた配線部材2030と、フレクシャ201の磁気ディスク10とは反対側の面上に設けられた配線部材2031とを備えている。配線部材2030及び2031の各々は、リード導体及びその両端に電気的に接続された接続パッドを備えている。熱アシスト磁気記録ヘッド21は、各磁気ディスク10の表面に対して所定の間隔(浮上量)をもって対向するように、サスペンション20の先端部であってフレクシャ201に固着されている。
【0093】
このフレクシャ201には、開口2010が設けられており、熱アシスト磁気記録ヘッド21は、その一部である光源ユニット23がこの開口2010を通してフレクシャ201の反対側に出るように接着されている。また、配線部材2030の一端(接続パッド)は、スライダ22の端子電極370及び371にワイヤボンディング、SBB等の方法によって電気的に接続されている。さらに、配線部材2031の一端(接続パッド)は、光源ユニット23の第1及び第2の引き出し電極412及び413、引き出し部4101(光源引き出し電極層410)、並びに光源端子電極411に同じくワイヤボンディング、SBB等の方法によって電気的に接続されている。これらの電気的接続に関しては、次に図8を用いて説明する。なお、サスペンション20の構造も、以上に述べた構造に限定されるものではない。図示されていないが、サスペンション20の途中にヘッド駆動用ICチップが装着されていてもよい。
【0094】
図8は、本発明によるHGA17の一実施形態における、フレクシャ201と熱アシスト磁気記録ヘッド21との接続を概略的に示す斜視図である。同図においては、ヘッド21の磁気ディスク10表面に対向するABS2200が下側になって表示されている。
【0095】
図8によれば、熱アシスト磁気記録ヘッド21の背面2201とフレクシャ201とが、開口2010を通して光源ユニット23がフレクシャ201の反対側に突き出るように、接着されている。フレクシャ201は、ステンレス鋼等で形成された基板201aと、ポリイミド等で形成されており基板201aを被覆する被覆層201b及び201cとを備えている。また、被覆層201b上に、Cu等の導電材料から形成された配線部材2030が設けられており、さらに被覆層201c上に、同じくCu等の導電材料から形成された配線部材2031が設けられている。
【0096】
配線部材2030の接続パッド2030a〜2030dは、MR素子33及び電磁変換素子34用の端子電極370及び371に、ワイヤボンディング、SBB等の方法によって電気的に接続されている。これにより、配線部材2030を介して、MR素子33及び電磁変換素子34を動作させることができる。また、配線部材2031の接続パッド2031a〜2031dは、レーザダイオード40用の引き出し部4101及び光源端子電極411とフォトダイオード部55用の第1及び第2の引き出し電極412及び413とに、ワイヤボンディング、SBB等の方法によって電気的に接続されている。これにより、配線部材2031を介して、レーザダイオード40及びフォトダイオード部55を動作させることができる。
【0097】
図9は、図6に示した磁気ディスク装置の記録再生及び発光制御回路13の回路構成を示すブロック図である。
【0098】
図9において、90は制御LSI、91は、制御LSI90から記録データを受け取るライトゲート、92はライト回路、93は、レーザダイオード40に供給する動作電流値の制御用テーブル等を格納するROM、95は、MR効果素子33へセンス電流を供給する定電流回路、96は、MR効果素子33の出力電圧を増幅する増幅器、97は、制御LSI90に対して再生データを出力する復調回路、98は温度検出器、99は、レーザダイオード40の制御回路をそれぞれ示している。
【0099】
制御LSI90から出力される記録データは、ライトゲート91に供給される。ライトゲート91は、制御LSI90から出力される記録制御信号が書き込み動作を指示するときのみ、記録データをライト回路92へ供給する。ライト回路92は、この記録データに従って書き込みコイル層343に書き込み電流を流し、主磁極3400から発生する書き込み磁界により磁気ディスク10上に書き込みを行う。また、制御LSI90から出力される再生制御信号が読み出し動作を指示するときのみ、定電流回路95からMR積層体332に定電流が流れる。このMR効果素子33により再生された信号は増幅器96で増幅された後、復調回路97で復調され、得られた再生データが制御LSI90に出力される。
【0100】
レーザ制御回路99は、制御LSI90から出力されるレーザON/OFF信号及びレーザ光出力制御信号を受け取る。このレーザON/OFF信号がオン動作指示である場合、発振しきい値以上の動作電流がレーザダイオード40に印加される。これによりレーザダイオード40が発光し、発光中心4000から放射されたレーザ光が、スポットサイズ変換素子43及び導波路35を伝播して、表面プラズモンモードで表面プラズモン発生素子36に結合する。これにより、表面プラズモン発生素子36の端から近接場光が発生し、磁気ディスク10の磁気記録層に照射され、磁気記録層を加熱する。
【0101】
この際の動作電流値は、レーザ光出力制御信号が指示する強度のレーザ光を、レーザダイオード40が発光中心4000から放射するような値に制御される。具体的には、フォトダイオード部55が、レーザダイオード40の後発光中心4001からの出力を計測、監視し、モニタ出力(計測値)をレーザ制御回路99に送信する。レーザ制御回路99は、この計測値を用いてフィードバック調整を行い、レーザ光出力制御信号が指示する強度のレーザ光をレーザダイオード40が発光中心4000から放射するように、レーザダイオード40に印加する動作電流を調整する。
【0102】
このフィードバック調整に際しては、レーザダイオード40の発光中心4000から放射されるレーザ光の強度と、後発光中心4001から放射されるレーザ光を受けたフォトダイオード部55からのモニタ出力との関係を予め決定しておく。通常、端面発光型のレーザダイオード40の後発光中心4001からの光出力と発光中心4000からの光出力との強度比は、ダイオード内の構成のデザインによって、例えば2〜25%の範囲内の所定値に設定されている。従って、後発光中心4001からの光出力の強度とフォトダイオード部55のモニタ出力との関係が分かれば、発光中心4000からの光出力の強度とフォトダイオード部55からのモニタ出力との関係を得ることができるのである。
【0103】
また、制御LSI90は、記録再生動作とのタイミングに応じてレーザON/OFF信号を発生させ、温度検出器98によって測定された磁気ディスクの磁気記録層の温度等を考慮し、ROM93内の制御テーブルに基づいて、レーザ光出力制御信号の値を決定する。ここで、制御テーブルは、発振しきい値及び光出力−動作電流特性の温度依存性のみならず、動作電流値と熱アシスト作用を受けた磁気記録層の温度上昇分との関係、及び磁気記録層の異方性磁界(保磁力)の温度依存性についてのデータも含んでいてもよい。このように、記録/再生動作制御信号系とは独立して、レーザON/OFF信号及びレーザ光出力制御信号系を設けることによって、単純に記録動作に連動したレーザダイオード40への通電のみならず、より多様な通電モードを実現することができる。
【0104】
なお、記録再生及び発光制御回路13の回路構成は、図9に示したものに限定されるものでないことは明らかである。記録制御信号及び再生制御信号以外の信号で書き込み動作及び読み出し動作を特定してもよい。
【0105】
以上述べたように、本発明による光源ユニット23は、レーザダイオード40からの光出力の常時のモニタリングを可能とするフォトダイオード部55を備えている。その結果、熱アシスト用の光を放射するレーザダイオード40の光出力のフィードバック調整が可能となる。また、この調整を行うことによって、レーザダイオード40の光出力の環境による変化及び経時変化に対応して光出力を制御し、磁気記録媒体に照射される熱アシスト用の光の強度を安定させることができる。その結果、磁気記録媒体の書き込むべき部分の適切な加熱が安定して実施可能となる。これにより、良好な熱アシスト磁気記録を実現することが可能となる。
【0106】
さらに、このフォトダイオード部55は、ユニット基板230中に形成されており、受光部550が、レーザダイオード40の後発光中心4001から放射されるレーザ光を受け得るように、ユニット基板230の光源設置面2302側に位置している。従って、後発光中心4001と受光部550とを十分に近接させることができるので、レーザダイオード40の光出力をより高い効率をもってモニタリングすることが可能となる。さらに、光源ユニット23においてはモニタリング系がユニット基板230に内包されているので、光源ユニット23全体の凹凸が少なくなっている。その結果、熱アシスト磁気記録ヘッド21が磁気ディスク10上で浮上した状態において、ヘッド21の空気抵抗が増大しヘッド21周辺の気流を大きく乱す事態が回避可能となる。
【0107】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0108】
10 磁気ディスク
17 HGA
20 サスペンション
21 熱アシスト磁気記録ヘッド
22 スライダ
23 光源ユニット
31 光学系
32 磁気ヘッド素子
33 MR素子
34 電磁変換素子
35 導波路
36 表面プラズモン発生素子
36a 近接場光発生端面
40 レーザダイオード
53b レーザ光(導波路光)
55 フォトダイオード部
60 表面プラズモン
62 近接場光
90 制御LSI
220 スライダ基板
221 ヘッド素子部
230,230′ ユニット基板
332 MR積層体
550 受光部
2200 浮上面(ABS)
2300 接着面
2302 光源設置面
4000 発光中心
4001 後発光中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライダ基板の集積面に設けられた熱アシスト用の光を伝播させる光学系を備えたスライダと、光源ユニットとが接続されて構成される熱アシスト磁気記録ヘッドであって、
該光源ユニットが、
前記スライダとの接続の際に前記スライダ基板に対向する接着面と、該接着面と隣り合う光源設置面とを有するユニット基板と、
前記光源設置面に設置されており、前記光学系に入射させる熱アシスト用の光を放射する光源と、
前記ユニット基板中に形成された、前記光源の出力を計測する光検出部であって、該光源における熱アシスト用の光を放射する発光中心とは反対側の後発光中心から放射される光を受ける受光部が、該ユニット基板の光源設置面側に位置する光検出部と
を備えており、
前記発光中心から放射される光が前記光学系に入射するように、前記スライダ基板の媒体対向面とは反対側の背面と前記ユニット基板の接着面とが接着されている、熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項2】
前記光検出部は、前記ユニット基板の接着面側から見て、前記光源の奥側に位置する、請求項1に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項3】
前記光検出部は、前記ユニット基板の一部を加工して形成された半導体フォトダイオードである、請求項1または2に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項4】
前記光検出部は、前記ユニット基板の一部を加工して形成されたPIN型フォトダイオードである、請求項3に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項5】
前記ユニット基板の光源設置面に、前記光検出部のp型半導体部に電気的に接続された電極と、該光検出部のn型半導体部に電気的に接続された電極とが設けられている、請求項3に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項6】
前記光源は、端面発光型のレーザダイオードであり、該光源のp型の電極が前記ユニット基板の光源設置面に接着されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項7】
前記ユニット基板の光源設置面に、前記光源のp型の電極と電気的に接続された電極が設けられている、請求項6に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項8】
前記ユニット基板の接着面に、前記スライダとの接続のための接着層が設けられている、請求項1から7のいずれか1項に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項9】
前記スライダ基板の媒体対向面とは反対側の背面上に、該スライダ基板と前記ユニット基板との間を電気的に絶縁するための絶縁層が設けられている、請求項1から8のいずれか1項に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項10】
前記絶縁層が、前記光学系の受光端面を覆っており、前記光源からの光が該光学系に入射する際の反射防止手段として機能する、請求項9に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項11】
サスペンションと、該サスペンションに取り付けられた請求項1から10のいずれか1項に記載の熱アシスト磁気記録ヘッドとを備えたヘッドジンバルアセンブリであって、
前記スライダ基板の媒体対向面とは反対側の背面の一部が前記サスペンションに接着されており、該サスペンションが開口を備えていて、前記光源ユニットが、該開口を通して該サスペンションの前記スライダとは反対側に出ている、ヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項12】
前記サスペンションの1つの面に、前記光源ユニットの光源及び光検出部用の配線部材が設けられており、該サスペンションのその他の面に、前記スライダの書き込みヘッド素子用の配線部材が設けられている、請求項11に記載のヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項13】
請求項11または12に記載の少なくとも1つのヘッドジンバルアセンブリと、少なくとも1つの磁気記録媒体と、前記光検出部からのモニタ出力を用いて前記光源の発光動作を制御し、さらに該少なくとも1つの磁気記録媒体に対して前記熱アシスト磁気記録ヘッドが行う書き込み動作を制御するための制御回路とを備えている磁気記録装置。
【請求項14】
スライダ基板の集積面に設けられて熱アシスト用の光を伝播させる光学系を備えたスライダに、前記熱アシスト用の光を放射する光源と該光源が設置される光源接地面を備えたユニット基板とを有する光源ユニットが接続されて構成される熱アシスト磁気記録ヘッドにおける、光源の位置合わせ方法であって、
前記ユニット基板中の前記光源設置面側に形成されており前記光源の出力を計測する光検出部の受光部が、前記光源における熱アシスト用の光を放射する発光中心とは反対側の後発光中心から放射される光を受けるように位置するように、前記光源を前記光源設置面上に設置し、
前記スライダ基板の媒体対向面とは反対側の背面が、前記ユニット基板の前記光源設置面と隣り合う接着面と対向し、前記光源の前記発光中心から放射される光が前記光学系に入射するように、前記光源ユニットを前記スライダに対して位置決めする
熱アシスト磁気記録ヘッドにおける光源の位置合わせ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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