説明

熱交換ユニット及び温度調整装置

【課題】 部品点数の削減,部品コストの低減,配設スペースの省スペース化による小型化,更には組付工数の低減による生産効率の向上及び生産コストの低減を図るとともに、全体の加熱冷却能力及び加熱冷却効率を高める。
【解決手段】 第一熱交換部2c及び第二熱交換部2hに共通に用いる複数の配列したフィン3…と、第一熱交換部2cに対応し、かつ各フィン3…に貫通する複数の第一チューブ構成部4c…と、第二熱交換部2hに対応し、かつ各フィン3…に貫通する複数の第二チューブ構成部4h…とを有するとともに、少なくとも各フィン3…に接触する熱交換用流体Wの流通方向Fwにおける各フィン3…の上流側エリアZuと下流側エリアZdに、第一チューブ構成部4c…と第二チューブ構成部4h…とを混在させて配置し、フィンアンドチューブ方式により一体に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二系統の熱媒体循環回路における一方の熱媒体循環回路の熱媒体により冷却を行う第一熱交換部と他方の熱媒体循環回路の熱媒体により加熱を行う第二熱交換部を含む熱交換ユニット及び温度調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱媒体が流通循環する二系統の熱媒体循環回路における一方の熱媒体循環回路の熱媒体により冷却を行う第一熱交換部と他方の熱媒体循環回路の熱媒体により加熱を行う第二熱交換部とを含む熱交換処理部を備える温度調整装置としては、特許文献1で開示される温度調整装置が知られている。
【0003】
同温度調整装置は、圧縮機からの高温熱媒体の一部を供給する加熱器と、高温熱媒体の残余部を冷却した冷却媒体を供給する冷却器とから成る熱交換器と、高温熱媒体を加熱器側と冷却器側とに分配する三方弁と、加熱器で冷却・凝縮された熱媒体を加熱するヒートポンプ手段と、冷却器及びヒートポンプ手段で加熱された熱媒体を圧縮機に供給する供給手段と、圧縮機の回転数を制御するインバータとを具備し、加熱器側と冷却器側とに分配する高温熱媒体の分配比率を連続的に変更して、熱交換器を通過する流体を所定温度に調整するように三方弁を制御する第1制御部と、適切な分配比率となるように、圧縮機の回転数を変更する第2制御部とから成る温度調整装置において、空間ユニット内に前後して配した加熱器と冷却器に対してファンにより送風することにより外気との熱交換を行うようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−309465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1に開示される温度調整装置は、次のような解決すべき課題が存在した。
【0006】
第一に、送風により外気との熱交換を行う冷却器(蒸発器)と加熱器(凝縮器)は、それぞれ別個に構成され、かつ送風方向の前後に配設されるため、独立した二つの熱交換器をそれぞれ別々に組付ける必要がある。したがって、部品点数の増加による部品コスト及び配設スペースの拡大(大型化)を招くとともに、組付工数も増加し、生産効率の低下及び生産コストの上昇を招く。
【0007】
第二に、冷却器及び加熱器の一方の使用を100〔%〕又はそれに近い状態で運転する場合、他方はほとんど使用されない状態になるとともに、使用されない冷却器又は加熱器は無用な存在となる。したがって、各部品を有効に使用することにより、全体の加熱冷却能力及び加熱冷却効率を向上させる観点からは必ずしも十分であるとは言えず、更なる改善の余地があった。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した熱交換ユニット及び温度調整装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る熱交換ユニット1は、上述した課題を解決するため、熱媒体Kが流通循環する二系統の熱媒体循環回路Cc,Chにおける一方の熱媒体循環回路Ccの熱媒体Kにより冷却を行う第一熱交換部2cと他方の熱媒体循環回路Chの熱媒体Kにより加熱を行う第二熱交換部2hを含むフィンアンドチューブ方式により構成した熱交換ユニットであって、第一熱交換部2c及び第二熱交換部2hに共通に用いる複数の配列したフィン3…と、第一熱交換部2cに対応し、かつ各フィン3…に貫通する複数の第一チューブ構成部4c…と、第二熱交換部2hに対応し、かつ各フィン3…に貫通する複数の第二チューブ構成部4h…とを有するとともに、少なくとも各フィン3…に接触する熱交換用流体Wの流通方向Fwにおける各フィン3…の上流側エリアZuと下流側エリアZdに、第一チューブ構成部4c…と第二チューブ構成部4h…とを混在させて配置することにより一体に構成したことを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、各第一チューブ構成部4c…の端部同士及び各第二チューブ構成部4h…の端部同士は、U形接続チューブ4j…により接続できる。この際、各第一チューブ構成部4c…と各第二チューブ構成部4h…は、第一チューブ構成部4c…単位及び第二チューブ構成部4h…単位で交互に配置してもよいし、任意の数量を配列させた第一チューブ構成部グループ4cg…単位及び任意の数量を配列させた第二チューブ構成部グループ4hg…単位で交互に配置してもよい。
【0011】
一方、本発明に係る温度調整装置Mは、上述した課題を解決するため、熱媒体Kが流通循環する二系統の熱媒体循環回路Cc,Chにおける一方の熱媒体循環回路Ccの熱媒体Kにより冷却を行う第一熱交換部2cと他方の熱媒体循環回路Chの熱媒体Kにより加熱を行う第二熱交換部2hを含むフィンアンドチューブ方式により構成した熱交換ユニット1を、熱交換用流体Wが流通する共通の熱交換通路R内に配設した熱交換処理部Sを備える温度調整装置であって、第一熱交換部2c及び第二熱交換部2hに共通に用いる複数の配列したフィン3…と、第一熱交換部2cに対応し、かつ各フィン3…に貫通する複数の第一チューブ構成部4c…と、第二熱交換部2hに対応し、かつ各フィン3…に貫通する複数の第二チューブ構成部4h…とを有するとともに、少なくとも熱交換用流体Wの流通方向Fwにおける各フィン3…の上流側エリアZuと下流側エリアZdに、第一チューブ構成部4c…と第二チューブ構成部4h…とを混在させて配置することにより一体に構成した熱交換ユニット1を、熱交換通路R内に配設した熱交換処理部Sを備えることを特徴とする。
【0012】
この場合、発明の好適な態様により、二系統の熱媒体循環回路Cc,Chは、圧縮機5を共通にした第一冷凍サイクルCccと第二冷凍サイクルChcにより構成することができる。また、熱交換用流体Wには、送風ファン6により送られる空気Aを適用することができる。
【発明の効果】
【0013】
このような構成を有する本発明に係る熱交換ユニット1及び温度調整装置Mによれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0014】
(1) 熱交換ユニット1は、第一熱交換部2c及び第二熱交換部2hに共通に用いる複数の配列したフィン3…と、第一熱交換部2cに対応し、かつ各フィン3…に貫通する複数の第一チューブ構成部4c…と、第二熱交換部2hに対応し、かつ各フィン3…に貫通する複数の第二チューブ構成部4h…とを有するとともに、少なくとも各フィン3…に接触する熱交換用流体Wの流通方向Fwにおける各フィン3…の上流側エリアZuと下流側エリアZdに、第一チューブ構成部4c…と第二チューブ構成部4h…とを混在させて配置することにより一体に構成したため、第一熱交換部2cと第二熱交換部2hとを含む単一部品として構成できる。これにより、部品点数の削減,部品コストの低減及び配設スペースの省スペース化による小型化を図れるとともに、加えて、組付工数の低減による生産効率の向上及び生産コストの低減に寄与できる。
【0015】
(2) 第一熱交換部2c又は第二熱交換部2hの一方の使用を100〔%〕又はそれに近い状態で運転し、他方をほとんど使用しない場合であっても、第一熱交換部2c及び第二熱交換部2hの双方に共通に用いる複数の配列したフィン3…の全体を常時使用できるため、部品の有効利用に寄与できる。これにより、全体の加熱冷却能力及び加熱冷却効率を向上させることができるとともに、一方において、全体の加熱冷却能力を同等にする場合には、フィン3…のサイズダウンを図れるため、熱交換ユニット1の更なる小型化に寄与できる。
【0016】
(3) 例えば、第一熱交換部2cを放熱器(又は冷却器)として使用し、第二熱交換部2hを吸熱器(又は加熱器)として使用するなど、第一熱交換部2cと第二熱交換部2hの使用態様によっては、フィン3…自体の熱伝導を直接利用した第一熱交換部2cと第二熱交換部2h間の熱交換により更なる冷却効率及び加熱効率の向上に寄与できる。しかも、寒冷地で使用し、第二熱交換部2cに凍結の可能性がある環境下であってもフィン3…を介した熱伝導により凍結防止を図ることができる。
【0017】
(4) 第一熱交換部2c及び第二熱交換部2hを含む熱交換ユニット1を一体に構成し、この熱交換ユニット1を熱交換通路R内に配設して熱交換処理部Sを構成するため、熱交換ユニット1における上述した各種作用効果を享受できる最適な温度調整装置Mを得ることができる。
【0018】
(5) 好適な態様により、各第一チューブ構成部4c…の端部同士及び各第二チューブ構成部4h…の端部同士を、U形接続チューブ4j…により接続するようにすれば、第一チューブ構成部4c…と第二チューブ構成部4h…が混在する構造であっても、フィンアンドチューブ方式による汎用的な熱交換器と同様に容易に製造することができる。
【0019】
(6) 好適な態様により、各第一チューブ構成部4c…と各第二チューブ構成部4h…は、第一チューブ構成部4c…単位及び第二チューブ構成部4h…単位で交互に配置できるとともに、或いは任意の数量を配列させた第一チューブ構成部グループ4cg…単位及び任意の数量を配列させた第二チューブ構成部グループ4hg…単位で交互に配置できるなど、用途や目的に応じた各種レイアウト形態を選択した設計が可能となる。したがって、熱交換ユニット1の設計自由度の向上、更には設計の最適化を容易に実現でき、多様性及び多機能性に優れた熱交換ユニット1を得ることができる。
【0020】
(7) 好適な態様により、二系統の熱媒体循環回路Cc,Chを、圧縮機5を共通にした第一冷凍サイクルCccと第二冷凍サイクルChcにより構成するとともに、熱交換用流体Wに、送風ファン6により送られる空気Aを適用すれば、空気Aの温度を調整するための最良な温度調整装置Mを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の好適実施形態に係る熱交換ユニットを備える温度調整装置の模式的構成図、
【図2】同温度調整装置に備える熱交換ユニットの接続例を含む全体系統図、
【図3】同温度調整装置の全体回路図、
【図4】同温度調整装置に備える熱交換ユニットの一部を示す正面図、
【図5】同温度調整装置に備える熱交換ユニットの作用説明図、
【図6】同熱交換ユニットの第一チューブ構成部と第二チューブ構成部の配置に係わる変更例を示す側面図、
【図7】同熱交換ユニットの第一チューブ構成部と第二チューブ構成部の配置に係わる他の変更例を示す側面図、
【図8】本発明の変更実施形態に係る温度調整装置の模式的構成図、
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
まず、本実施形態に係る熱交換ユニット1を備える温度調整装置Mの全体構造について、図1を参照して説明する。
【0024】
例示の温度調整装置Mは、空冷式の精密温度調整装置であり、全体を覆うハウジング11を備える。ハウジング11の内部は、上半部を空気制御処理室11uとして構成し、下半部を放熱処理室11dとして構成する。ハウジング11の正面(図1の右側面)には、上側に設けた空気吸込口11ui及び下側に設けた空気吸込口11diを有するとともに、ハウジング11の上面には、空気吹出口11ueを有し、更に、ハウジング11の背面下側には、放熱処理室11dが臨む空気吹出口11deを有する。なお、12…はハウジング11の底面に設けた複数のキャスタである。
【0025】
空気制御処理室11uには、送風ファン(例示はシロッコファン)13を配設し、この送風ファン13の吸入口13iは前通気ダクト14を介して空気吸込口11uiに連通接続するとともに、送風ファン13の吐出口13eは後通気ダクト15を介して外部に臨ませる。この後通気ダクト15は上述した空気吹出口11ueを兼用する。前通気ダクト14の内部には、正面側から吸込フィルタ(エアフィルタ)16,蒸発器(冷却器)17,凝縮器(加熱器)18を順次配設する。なお、13mは送風ファン13のファンモータを示す。また、空気制御処理室11uの内部にはケーシングに収容されたコントローラ19を備えるとともに、外部に配することにより空気吹出口11ueから吹き出す熱交換用流体W、即ち、空気Aの温度を検出する温度センサ20を備える。この温度センサ20はコントローラ19に接続する。コントローラ19は、各種制御処理等を行うコンピューティング機能を有し、少なくとも温度センサ20により空気吹出口11ueから吹き出す空気Aの温度を検出し、目標温度となるように、後述する圧縮機5を含む第一冷凍サイクルCcc及び第二冷凍サイクルChcを制御(フィードバック制御)するとともに、後述する第一調整弁43及び第二調整弁46を制御する機能を備える。
【0026】
放熱処理室11dには、前端口21iを空気吸込口11diに連通接続し、かつ後端口21eを放熱処理室11dの内部に臨ませた通気ダクト21を配設する。この通気ダクト21の内部は空気A(熱交換用流体W)が流通する熱交換通路Rとなる。そして、この通気ダクト21の内部における正面側には吸込フィルタ(エアフィルタ)22を配設するとともに、この吸込フィルタ22の後方には、本実施形態に係る熱交換ユニット1を配設する。したがって、通気ダクト21の内部が熱交換処理部Sとして構成される。また、熱交換ユニット1の後方に位置する通気ダクト21の後端口21eには送風ファン6を配設する。なお、6mは送風ファン6のファンモータ、5は放熱処理室11dの内部に配設した圧縮機をそれぞれ示す。
【0027】
次に、本実施形態に係る熱交換ユニット1の構成及び製造方法について、図1,図2及び図4を参照して説明する。
【0028】
本実施形態に係る熱交換ユニット1は、図1に示すように、第一熱交換部2c及び第二熱交換部2hを一体に構成したものであり、基本的には、第一熱交換部2c及び第二熱交換部2hに共通に用いる複数の配列したフィン3…と、第一熱交換部2cに対応し、かつ各フィン3…に貫通する複数の第一チューブ構成部4c…と、第二熱交換部2hに対応し、かつ各フィン3…に貫通する複数の第二チューブ構成部4h…とを有するとともに、少なくとも各フィン3…に接触する熱交換用流体W、即ち、送風ファン6により送風される空気(外気)Aの流通方向Fwにおける各フィン3…の上流側エリアZuと下流側エリアZdに、第一チューブ構成部4c…と第二チューブ構成部4h…とを混在させて配置し、フィンアンドチューブ方式により一体に構成する。この場合、第一熱交換部2cは、後述する第二冷凍サイクルChcにおける蒸発器(吸熱器)を構成するとともに、第二熱交換部2hは、後述する第一冷凍サイクルCccにおける凝縮器(放熱器)を構成する。
【0029】
また、各フィン3…は、図4に示すように、所定の厚さを有し、かつ図1及び図2に示すように、全体が長方形となるように形成するとともに、面内には、後述する主チューブ部材4o…(第一チューブ構成部4c…,第二チューブ構成部4h…)が貫通する多数の円形貫通孔31…を形成する。なお、各フィン3…は、アルミニウム素材等の伝熱性の良好な素材により形成する。例示の円形貫通孔31…は、図2に示すように、一枚のフィン3において、横4列、縦16段に形成するとともに、各円形貫通孔31…の隣同士の間隔は縦横同一となるように形成した。そして、フィン3…における空気Aの送風方向(流通方向)Fwの前側半分を下流側エリアZdとし、後側半分を上流側エリアZuとした。なお、下流側エリアZdと上流側エリアZuは、必ずしも半分ずつであることを要せず、任意に設定できる。
【0030】
一方、第一チューブ構成部4c…及び第二チューブ構成部4h…には、伝熱性の良好な素材により、断面が円形となる直線状(I形)に形成した主チューブ部材4oを用いる。加えて、例示の場合には、さらに、図4に示すU形の接続チューブ部材4j…を用いる。接続チューブ部材4j…は、U形に湾曲し、かつ両端に主チューブ部材4oの端部にそれぞれ接続する接続口4js,4jtを有する点を除いて、形成素材及びチューブ径等は、主チューブ部材4oと同様に形成する。
【0031】
このような部材を有する熱交換ユニット1は、次のように製造することができる。まず、使用する所要枚数のフィン3…を用意し、図4に示すように、設定した等間隔で順次セッティングする。そして、用意した所要本数の主チューブ部材4o…を、各フィン3…における円形貫通孔31…に挿通させた後、溶接等により、各フィン3…に対して主チューブ部材4o…を固定する。また、接続チューブ部材4j…を用いて主チューブ部材4o…の端部同士を接続する。例示の場合、図2に示すように、横4列及び縦16段のため、横2列及び縦8段となる四つのブロックBa,Bb,Bc,Bdに分け、各ブロックBa…における各主チューブ部材4o…の一端側では、一方の列における任意の主チューブ部材4o…の端部と他方の列における一段下の主チューブ部材4o…の端部同士間を接続チューブ部材4j…により順次接続するとともに、各ブロックBa…における各主チューブ部材4o…の他端側では一方の列における任意の主チューブ部材4o…の端部と他方の列における一段上の主チューブ部材4o…の端部同士間を接続チューブ部材4j…により順次接続する。なお、各主チューブ部材4o…と各接続チューブ部材4j…の接続部分は、溶接等により固定及びシーリングを行う。このように、各主チューブ部材4o…の端部同士を、U形接続チューブ4j…により接続するようにすれば、後述する第一チューブ構成部4c…と第二チューブ構成部4h…が混在する構造であっても、フィンアンドチューブ方式による汎用的な熱交換器と同様に容易に製造できる利点がある。
【0032】
これにより、各ブロックBa…には連続した二本の熱交換チューブが構成され、一方の熱交換チューブは、複数の第一チューブ構成部4c…が接続チューブ部材4j…を介して順次接続される第一熱交換部2cの一部となる。また、他方の熱交換チューブは、複数の第二チューブ構成部4h…が接続チューブ部材4j…を介して順次接続される第二熱交換部2hの一部となる。なお、四つの各ブロックBa…は、同一構成となり、第一チューブ構成部4c…と第二チューブ構成部4h…は、側面から見た場合、図1に示すように、各第一チューブ構成部4c…単位及び各第二チューブ構成部4h…単位により横方向及び縦方向へ交互に配置されることになる。図1中、第一チューブ構成部4cを「C」で表示するとともに、第二チューブ構成部4hを「H」で表示している。
【0033】
そして、各ブロックBa…における一方の熱交換チューブにおける一方の端(下端)に位置する各第一チューブ構成部4c…は、ヘッダ41cに接続するとともに、他方の端(上端)に位置する各第一チューブ構成部4c…は、合流部42cに接続することにより第一熱交換部2cを構成する。他方、各ブロックBa…における他方の熱交換チューブにおける一方の端(下端)に位置する各第二チューブ構成部4h…は、ヘッダ41hに接続するとともに、他方の端(上端)に位置する各第二チューブ構成部4h…は、合流部42hに接続することにより第二熱交換部2hを構成する。これにより、第一熱交換部2c及び第二熱交換部2hを一体に含む本実施形態に係る熱交換ユニット1が得られる。
【0034】
このように、本実施形態に係る熱交換ユニット1は、第一熱交換部2c及び第二熱交換部2hに共通に用いる複数の配列したフィン3…と、第一熱交換部2cに対応し、かつ各フィン3…に貫通する複数の第一チューブ構成部4c…と、第二熱交換部2hに対応し、かつ各フィン3…に貫通する複数の第二チューブ構成部4h…とを有するとともに、少なくとも各フィン3…に接触する熱交換用流体Wの流通方向Fwにおける各フィン3…の上流側エリアZuと下流側エリアZdに、第一チューブ構成部4c…と第二チューブ構成部4h…とを混在させて配置することにより一体に構成したため、第一熱交換部2cと第二熱交換部2hとを含む単一部品として構成できる。これにより、部品点数の削減,部品コストの低減及び配設スペースの省スペース化による小型化を図れるとともに、加えて、組付工数の低減による生産効率の向上及び生産コストの低減に寄与できる。
【0035】
次に、このような熱交換ユニット1を備える本実施形態に係る温度調整装置Mの回路構成について、図2及び図3を参照して説明する。
【0036】
温度調整装置Mは、図2に示すように、二系統の熱媒体循環回路Cc,Ch、即ち、圧縮機5を共通にした第一冷凍サイクルCcc(熱媒体循環回路Cc)と第二冷凍サイクルChc(熱媒体循環回路Ch)備える。この場合、第一冷凍サイクルCccは冷却側となり、第二冷凍サイクルChcは加熱側となる。第一冷凍サイクルCccは、圧縮機5の吐出口→分流部P→第一調整弁(電子膨張弁)43→凝縮器(加熱器)18→電子膨張弁45→ヘッダ41c→第一熱交換部2c(第一チューブ構成部4c…)→合流部42c→合流部J→圧縮機5の吸込口の経路で冷媒(熱媒体)Kが循環する。第二冷凍サイクルChcは、圧縮機5の吐出口→分流部P→第二調整弁(電子膨張弁)46→ヘッダ41h→第二熱交換部2h(第二チューブ構成部4h…)→合流部42h→電子膨張弁47→蒸発器(冷却器)17→合流部J→圧縮機5の吸込口の経路で冷媒(熱媒)Kが循環する。図3は、温度調整装置Mをより具体化した回路で示したものであり、51,54,59は圧力ゲージ、52,56は圧力スイッチ、53,57は膨張弁、55,60はストレーナ、58はアキュムレータをそれぞれ示す。なお、図3において、図2と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にした。
【0037】
このように、二系統の熱媒体循環回路Cc,Chを、圧縮機5を共通にした第一冷凍サイクルCccと第二冷凍サイクルChcにより構成し、また、熱交換用流体Wに、送風ファン6により送られる空気Aを適用するため、空気Aの温度を調整するための最良な温度調整装置Mを得ることができるとともに、第一熱交換部2c及び第二熱交換部2hを含む熱交換ユニット1を一体に構成し、この熱交換ユニット1を熱交換通路R内に配設して熱交換処理部Sを構成するため、熱交換ユニット1における各種作用効果を享受できる最適な温度調整装置Mを得ることができる。
【0038】
次に、本実施形態に係る熱交換ユニット1の機能を含む温度調整装置Mの動作について、図1〜図5を参照して説明する。
【0039】
まず、目標温度(空気吹出口11ueから吹き出す空気Aの温度)が設定されることにより、予め設定された出力条件により分流部Pの分流比率が、設定された分流比率になるように、第一冷凍サイクルCcc(冷却側)における第一調整弁43と第二冷凍サイクルChc(加熱側)における第二調整弁46の開度がセットされる。
【0040】
一方、温度調整装置Mの運転が開始すれば、温度センサ20により空気吹出口11ueから吹き出す空気Aの温度が検出され、コントローラ19に付与される。これにより、コントローラ19では、付与された空気Aの検出温度が、予め設定した目標温度となるように、圧縮機5を含む第一冷凍サイクルCcc及び第二冷凍サイクルChcをフィードバック制御する。この際、運転開始後、目標温度に達するまでは、第一調整弁43及び第二調整弁46も制御される。これにより、予め設定されたプログラムに従って分流比率が最適な分流比率になるように設定される。そして、目標温度に達した後は、第一調整弁43及び第二調整弁46は固定されるとともに、第一冷凍サイクルCcc及び第二冷凍サイクルChcに対しては通常のフィードバック制御が行われる。
【0041】
また、図1に示す空気制御処理室11uでは、送風ファン13の作動により空気(外気)Aが吸込フィルタ16を通して吸い込まれ、前通気ダクト14内を通過する際に冷却器(蒸発器)17により冷却されるとともに、加熱器(凝縮器)18により加熱される。これにより、空気Aに対する温度調整が行われる。そして、温度調整された空気Aは送風ファン13を通り、更に後通気ダクト15を通して被空調空間に供給される。
【0042】
他方、放熱処理室11dでは、送風ファン6の作動により空気Aが吸込フィルタ22を通して吸い込まれ、通気ダクト21内に配した本実施形態に係る熱交換ユニット1を通過することにより熱交換が行われる。具体的には、各フィン3…の面内に混在する第一チューブ構成部4c…により構成される第一熱交換部(蒸発器)2cによる吸熱が行われるとともに、各フィン3…の面内に混在する第二チューブ構成部4h…により構成される第二熱交換部(凝縮器)2hの放熱が行われる。そして、通気ダクト21内を通過することにより熱交換された空気Aは、空気吹出口11deから外部に排出される。
【0043】
この際、各第一チューブ構成部4c…と各第二チューブ構成部4h…は、各第一チューブ構成部4c単位及び各第二チューブ構成部4h単位で交互に配されるため、図5に示すように、各第一チューブ構成部4c…と各第二チューブ構成部4h…間は、フィン3…自体の熱伝導を直接利用した相互の熱交換が行われる。図5中、矢印Fchは、第一チューブ構成部4cによる第二チューブ構成部4hに対する冷却作用、矢印Fhcは、第二チューブ構成部4hによる第一チューブ構成部4cに対する加熱作用をイメージ的に示す。
【0044】
このように、本実施形態に係る熱交換ユニット1によれば、フィン3…自体の熱伝導を直接利用した第一熱交換部2cと第二熱交換部2h間の熱交換により更なる冷却効率及び加熱効率の向上に寄与できる。しかも、寒冷地で使用し、第二熱交換部2cに凍結の可能性がある環境下であってもフィン3…を介した熱伝導により凍結防止を図ることができる。また、第一熱交換部2c又は第二熱交換部2hの一方の使用を100〔%〕又はそれに近い状態で運転し、他方をほとんど使用しない場合であっても、第一熱交換部2c及び第二熱交換部2hの双方に共通に用いる複数の配列したフィン3…の全体を常時使用できるため、部品の有効利用に寄与できる。これにより、全体の加熱冷却能力及び加熱冷却効率を向上させることができるとともに、一方において、全体の加熱冷却能力を同等にする場合には、フィン3…のサイズダウンを図れるため、熱交換ユニット1の更なる小型化に寄与できる。
【0045】
他方、図6及び図7には、本実施形態に係る熱交換ユニット1の変更例を示す。図1〜図5の熱交換ユニット1は、各第一チューブ構成部4c…と各第二チューブ構成部4h…を、第一チューブ構成部4c…単位及び第二チューブ構成部4h…単位で交互に配置した場合を示したが、図6及び図7の変更例は、各第一チューブ構成部4c…と各第二チューブ構成部4h…を、任意の数量を配列させた第一チューブ構成部グループ4cg…単位及び任意の数量を配列させた第二チューブ構成部グループ4hg…単位で交互に配置した場合を示す。図6は、主チューブ部材4o…を4列に配するため、1列目と3列目の全主チューブ部材4o…を第二チューブ構成部4h…に用いた第二チューブ構成部グループ4hg…とし、2列目と4列目の全主チューブ部材4o…を第一チューブ構成部4c…に用いた第一チューブ構成部グループ4cg…としたものである。この場合であっても、各フィン3…の上流側エリアZuと下流側エリアZdにそれぞれ第一チューブ構成部4c…と各第二チューブ構成部4h…が混在することになる。また、図7は、1列目と4列目の全主チューブ部材4o…を第二チューブ構成部4h…に用いた第二チューブ構成部グループ4hg…とし、2列目と3列目の全主チューブ部材4o…を第一チューブ構成部4c…に用いた第一チューブ構成部グループ4cg…としたものである。この場合であっても、各フィン3…の上流側エリアZuと下流側エリアZdにそれぞれ第一チューブ構成部4c…と各第二チューブ構成部4h…が混在することになる。
【0046】
このように、本実施形態に係る熱交換ユニット1では、各第一チューブ構成部4c…と各第二チューブ構成部4h…を、第一チューブ構成部4c…単位及び第二チューブ構成部4h…単位で交互に配置できるとともに、任意の数量を配列させた第一チューブ構成部グループ4cg…単位及び任意の数量を配列させた第二チューブ構成部グループ4hg…単位で交互に配置できるなど、用途や目的に応じた各種レイアウト形態を選択した設計が可能となる。したがって、熱交換ユニット1の設計自由度の向上、更には設計の最適化を容易に実現でき、多様性及び多機能性に優れた熱交換ユニット1を得ることができる。
【0047】
次に、本発明の変更実施形態に係る温度調整装置Mについて、図8を参照して説明する。図8に示す温度調整装置Mは、空気制御処理室11uに配設した蒸発器(冷却器)17と凝縮器(加熱器)18を、熱交換ユニット1により構成したものである。即ち、図1〜図5に示した温度調整装置Mでは、放熱処理室11dに配設した熱交換ユニット1により、第一熱交換部(蒸発器(吸熱器))2cと第二熱交換部(凝縮器(放熱器))2hを一体に構成したものであるが、図8に示す温度調整装置Mでは、図1に示す第一熱交換部2cを蒸発器17として使用し、図1に示す第二熱交換部2hを凝縮器18として使用するものである。この場合、空気制御処理室11uに用いる熱交換ユニット1も、図1に示した温度調整装置Mにおける放熱処理室11dに配設した熱交換ユニット1と同様の作用効果を享受できるとともに、特に、放熱処理室11dと空気制御処理室11uの双方に熱交換ユニット1,1を備えるため、ハウジング11の前後方向のサイズをより短くできるなど、更なる小型化に寄与できる。このように、熱交換ユニット1は、各種用途に適用できるが、冷却器を除湿用として使用するなど、他の機能が付加される場合には、必ずしも有効とは言えない場合もあるため、用途や目的に応じて使用の可否を選択する必要がある。
【0048】
以上、好適実施形態(変更実施形態)について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0049】
例えば、各第一チューブ構成部4c…の端部同士及び各第二チューブ構成部4h…の端部同士をU形接続チューブ4j…により接続した場合を示したが、必ずしもこのような接続態様に限定されるものではない。したがって、U形接続チューブ4j…を用いることなく、全部の第一チューブ構成部4c…を共通のヘッダ41cにそれぞれ接続したり、全部の第二チューブ構成部4h…を共通のヘッダ41hにそれぞれ接続してもよい。また、一部の第一チューブ構成部4c…の端部同士のみをU形接続チューブ4j…に接続したり、一部の第二チューブ構成部4h…の端部同士のみをU形接続チューブ4j…に接続してもよいし、さらに、各第一チューブ構成部4c…と各第二チューブ構成部4h…の接続態様を異ならせてもよい。一方、温度調整装置Mは、二系統の熱媒体循環回路Cc,Chとして、圧縮機5を共通にした第一冷凍サイクルCccと第二冷凍サイクルChcにより構成した場合を示したが、二系統の熱媒体循環回路Cc,Chは、必ずしも冷凍サイクルに限定されるものではない。したがって、熱媒体Kには、例示の冷媒をはじめ、各種流体が含まれる。また、一方の熱媒体循環回路Ccと他方の熱媒体循環回路Chに用いる熱媒体Kは同一であってもよいし異なっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る熱交換ユニットは、例示の温度調整装置をはじめ、二系統の熱媒体と熱交換用流体との熱交換を行う各種温度調整装置に利用できる。また、温度調整装置は、空気に対する温度調整をはじめ、ガス,水,溶液等の各種流体の温度を調整する各種冷熱機器に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1:熱交換ユニット,2c:第一熱交換部,,2h:第二熱交換部,3…:フィン,4c…:第一チューブ構成部,4h…:第二チューブ構成部,4cg…:第一チューブ構成部グループ,4hg…:第二チューブ構成部グループ,5:圧縮機,6:送風ファン,M:温度調整装置,K:熱媒体,Cc:一方の熱媒体循環回路,Ch:他方の熱媒体循環回路,Ccc:第一冷凍サイクル,Chc:第二冷凍サイクル,W:熱交換用流体,A:空気,Zu:フィンの上流側エリア,Zd:フィンの下流側エリア,R:熱交換通路,S:熱交換処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体が流通循環する二系統の熱媒体循環回路における一方の熱媒体循環回路の熱媒体により冷却を行う第一熱交換部と他方の熱媒体循環回路の熱媒体により加熱を行う第二熱交換部を含むフィンアンドチューブ方式により構成した熱交換ユニットであって、前記第一熱交換部及び前記第二熱交換部に共通に用いる複数の配列したフィンと、前記第一熱交換部に対応し、かつ前記各フィンに貫通する複数の第一チューブ構成部と、前記第二熱交換部に対応し、かつ前記各フィンに貫通する複数の第二チューブ構成部とを有するとともに、少なくとも前記各フィンに接触する熱交換用流体の流通方向における前記各フィンの上流側エリアと下流側エリアに、前記第一チューブ構成部と前記第二チューブ構成部とを混在させて配置することにより一体に構成したことを特徴とする熱交換ユニット。
【請求項2】
前記各第一チューブ構成部の端部同士及び前記各第二チューブ構成部の端部同士は、U形接続チューブにより接続することを特徴とする請求項1記載の熱交換ユニット。
【請求項3】
前記各第一チューブ構成部と前記各第二チューブ構成部は、第一チューブ構成部単位及び第二チューブ構成部単位で交互に配置することを特徴とする請求項1又は2記載の熱交換ユニット。
【請求項4】
前記各第一チューブ構成部と前記各第二チューブ構成部は、任意の数量を配列させた第一チューブ構成部グループ単位及び任意の数量を配列させた第二チューブ構成部グループ単位で交互に配置することを特徴とする請求項1又は2記載の熱交換ユニット。
【請求項5】
熱媒体が流通循環する二系統の熱媒体循環回路における一方の熱媒体循環回路の熱媒体により冷却を行う第一熱交換部と他方の熱媒体循環回路の熱媒体により加熱を行う第二熱交換部を含むフィンアンドチューブ方式により構成した熱交換ユニットを、熱交換用流体が流通する共通の熱交換通路内に配設した熱交換処理部を備える温度調整装置であって、前記第一熱交換部及び前記第二熱交換部に共通に用いる複数の配列したフィンと、前記第一熱交換部に対応し、かつ前記各フィンに貫通する複数の第一チューブ構成部と、前記第二熱交換部に対応し、かつ前記各フィンに貫通する複数の第二チューブ構成部とを有するとともに、少なくとも前記熱交換用流体の流通方向における前記各フィンの上流側エリアと下流側エリアに、前記第一チューブ構成部と前記第二チューブ構成部とを混在させて配置することにより一体に構成した熱交換ユニットを、前記熱交換通路内に配設した熱交換処理部を備えることを特徴とする温度調整装置。
【請求項6】
前記二系統の熱媒体循環回路は、圧縮機を共通にした第一冷凍サイクルと第二冷凍サイクルにより構成することを特徴とする請求項5記載の温度調整装置。
【請求項7】
前記熱交換用流体は、送風ファンにより送られる空気であることを特徴とする請求項5又は6記載の温度調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−47578(P2013−47578A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185650(P2011−185650)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】