説明

熱交換器及びそのフィンのバリ除去方法

【課題】海上コンテナなどの腐食環境下でも高い防食性を実現することのできる熱交換器を低コストで提供する。
【解決手段】熱交換器(30)のフィン(31)を所定サイズに切断する際に、該フィン(31)の切断端面(31a)に発生するバリ(31c)を、回転ブラシ(50)によって除去する。この回転ブラシ(50)は、回転軸(51)の外周面上に樹脂製の植毛(52)が配設されたもので、上記フィン(31)に損傷を与えることなく、バリ(31c)のみを除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上コンテナ等に用いられる冷凍装置の冷媒回路内の熱交換器に関し、特に、フィンの腐食防止に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、海上コンテナ等に用いられてコンテナの庫内を冷却する冷凍装置が知られている。例えば特許文献1に開示されている冷凍装置は、コンテナの庫内を冷却するための冷媒回路を備えている。この冷媒回路には、圧縮機、凝縮器、膨脹弁及び蒸発器が順に接続されている。上記蒸発器は、コンテナの庫内に配置されていて、該蒸発器の近傍には庫内ファンが配設されている。上記凝縮器は、コンテナの庫外に配置されていて、該凝縮器の近傍には庫外ファンが配設されている。
【0003】
上述のような構成の冷凍装置では、例えば冷蔵運転時には、上記庫外ファン、庫内ファン及び圧縮機が運転される。そのため、該圧縮機で圧縮された冷媒は、上記凝縮器へ送られ、該凝縮器で上記庫外ファンの送風する室外空気と冷媒とが熱交換し、冷媒は室外空気へ放熱して凝縮する。その後、冷媒は上記膨張弁で減圧された後、上記蒸発器へ流入する。この蒸発器では、上記庫内ファンの送風する庫内空気と冷媒とが熱交換し、冷媒は庫内空気から吸熱して蒸発する。これにより、上記冷凍装置によってコンテナの庫内空気の冷却が行われる。なお、上記蒸発器で蒸発した冷媒は、上記圧縮機に吸入されて再び圧縮される。
【0004】
上述のように冷凍装置が海上コンテナに設けられる場合、上述のとおり、上記蒸発器はコンテナの庫内に配置される一方、上記凝縮器はコンテナの庫外に配置される。そのため、コンテナの庫外に配置される凝縮器は海水等によって腐食されやすい腐食環境下にある。この腐食環境下でも凝縮器としての性能を維持するためには、該凝縮器に強固な耐食性が要求される。
【0005】
ここで、上記凝縮器を構成する熱交換器は、例えば、複数の薄板状のフィンを積層して、それらのフィンにチューブを貫通させたものが一般的であり、そのフィンの材料もコスト等の関係からアルミなどが用いられている。
【0006】
そのため、上記海上コンテナ用の凝縮器では、フィンが海水等によって腐食しないように、該フィンの表面には、防食塗装が施されている。
【特許文献1】特開2002−327964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、海上コンテナ等の冷凍装置に用いられる熱交換器のフィンは、上述のとおり、薄板状に形成されているため、該フィンの製造段階においてフィンを所定のサイズに切断する際に、該フィンの端面にバリが発生してしまう。特に、上述のように、フィンをアルミなどの伸び率が比較的大きい材料によって構成する場合には、バリがより発生しやすくなる。
【0008】
このように、フィンの切断面にバリが発生すると、バリの程度によっては防食塗膜が当該バリの部分で途切れてしまい、フィンの防食性能にばらつきが生じる。しかも、該フィンのバリ部分には防食塗料が付着しにくいため、当該部分を完全に覆うためには多数回(例えば3回以上)の塗り作業が必要になる。すなわち、上記バリの発生によって、フィンの防食性能が低下したり、熱交換器の製造コストが増大したりするという問題が生じる。
【0009】
これに対し、上記フィンの厚みを厚くして、バリの発生を極力抑えることが考えられるが、そうすると、フィンの材料費が高くなったり加工性が悪化したりして、熱交換器の製造コストが増大するという問題が生じる。
【0010】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、海上コンテナなどの腐食環境下でも高い防食性を実現することのできる熱交換器を低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る熱交換器(30)では、複数の薄板状のフィン(31)の端面(31a)をバリ除去加工することで、バリ(31c)によって防食塗膜(34)が途切れるのを防止するとともに、該バリ(31c)を防食塗膜(34)で覆うための多数回の塗り作業を不要とした。
【0012】
具体的には、第1の発明では、所定サイズに切断された複数の薄板状のフィン(31)を備えた熱交換器を対象としていて、上記フィン(31)は、その切断端面(31a)がバリ除去加工されているものとする。
【0013】
この構成により、フィン(31)の端面(31a)のバリ(31c)がなくなるため、該端面(31a)に防食塗料を効率良く且つ確実に塗布することが可能となる。すなわち、上述のような構成にすることで、上記バリ(31c)によって防食塗膜(34)が途切れることがなく、また、上記バリ(31c)を防食塗膜(34)で覆うために多数回の塗装作業を行う必要もなくなるため、防食性能の高い熱交換器(30)を低コストで得ることが可能となる。
【0014】
上述の構成において、上記フィン(31)の切断端面(31a)のうち少なくとも角部(31b)には、R部が形成されているものとする(第2の発明)。このように、バリ(31c)が発生して防食塗膜(34)が途切れやすいフィン(31)の切断端面(31a)の角部(31b)にR部を形成することで、該角部(31b)で防食塗膜(34)が途切れたり、該角部(31b)を防食塗膜(34)で覆うために多数回、塗布作業を行ったりする必要がなくなるため、より防食性能の高い熱交換器(30)を低コストで製造することが可能となる。
【0015】
上述のような構成は、上述のとおり、上記フィン(31)の表面に防食塗装が施されている場合に有効である(第3の発明)。すなわち、上述のとおり、フィン(31)の表面に防食塗装を施すものにおいて、上記第1及び第2の発明のような構成にすることで、熱交換器(30)の防食性能の向上を図りつつ、製造コストの低減を図ることができる。また、上記フィン(31)が銅製である場合には特に有効である(第4の発明)。銅はアルミよりも耐食性が高いが、伸び率が大きいため、フィン(31)を銅製にすると、該フィン(31)を切断加工する際に切断端面(31a)にバリ(31b)が発生しやすい。よって、このようにフィン(31)を銅製にすることで、アルミの場合よりも耐食性の向上を図ることができるとともに、上記第1及び第2の発明の構成のように切断加工時のバリ(31c)を除去することによって、熱交換器(30)の防食性能をさらに高めることができる。
【0016】
また、上述のような構成の熱交換器(30)は、海上コンテナ用冷凍装置(1)の冷媒回路(10)における凝縮器(12)として用いられるのが好ましい(第5の発明)。上記第1から第4の発明のように構成された熱交換器(30)は高い防食性能を有しているため、この熱交換器(30)を、上述のように海水等を浴びて腐食されやすい腐食環境下に配置される海上コンテナの凝縮器(12)として用いれば、該凝縮器(12)での腐食を確実に防止することができ、より効果的である。
【0017】
第6の発明は、上述のような熱交換器(30)を実現するためのバリ除去装置(50)に関するものである。具体的には、所定サイズに切断された熱交換器用フィン(31)の切断端面(31a)のバリ(31c)を除去するためのバリ除去装置を対象としていて、樹脂製の植毛(52)を有する回転ブラシ(50)によって構成されているものとする。
【0018】
この構成により、熱交換器(30)のフィン(31)のバリ(31c)は、樹脂製の植毛(52)を有する回転ブラシ(50)によって除去される。すなわち、上記回転ブラシ(50)は、柔軟性を有する樹脂製の植毛(52)を備えているため、該植毛(52)の柔軟性によって薄板状のフィン(31)が損傷を受けることなく、バリ(31c)のみを除去することが可能になる。
【0019】
したがって、上述の構成により、フィン(31)の切断端面(31a)に生じた微小なバリ(31c)を除去するのに適したバリ除去装置(50)が得られる。
【0020】
第7の発明は、上述のような熱交換器(30)を実現するためのバリ除去方法に関するものである。具体的には、所定サイズに切断された熱交換器用フィン(31)の切断端面(31a)のバリ(31c)を除去するためのバリ除去方法を対象としていて、上記バリ(31c)を樹脂製の植毛(52)を有する回転ブラシ(50)によって除去するものとする。
【0021】
この方法により、熱交換器(30)のフィン(31)の切断端面(31a)のバリ(31c)を除去することができるので、上述の各発明のように、該熱交換器(30)の防食性能を高めつつ、製造コストの低減を図れる。また、上述の方法では、樹脂製の植毛(52)を有する回転ブラシ(50)を用いてフィン(31)のバリ(31c)を除去するため、該フィン(31)に損傷を与えることなく、簡単な方法で確実にバリ(31c)を除去することができる。
【0022】
また、上述の方法において、上記回転ブラシ(50)を、上記フィン(31)の切断端面(31a)に形成されたバリ(31c)を起こすように回転させながら該バリ(31c)に接触させて、バリ除去を行うのが好ましい(第8の発明)。
【0023】
これにより、上記回転ブラシ(50)は、バリ(31c)を起こすように回転しながら該バリ(31c)に接触するため、該バリ(31c)に上記回転ブラシ(50)の植毛(52)を確実に接触させて、該バリ(31c)を根元部分からより確実且つ効率良く除去することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上より、第1の発明に係る熱交換器(30)によれば、薄板状のフィン(31)の切断端面(31c)はバリ除去加工されているため、例えば該フィン(31)の表面に防食塗料を塗布する場合、該フィン(31)の切断端面(31a)のバリ(31c)によって防食塗膜(34)が途切れるのを防止できるとともに、該切断端面(31a)に防食塗料を塗布する回数を減らすことができる。したがって、防食性能が高く且つ低コストな熱交換器(30)を得ることができる。
【0025】
また、第2の発明によれば、上記フィン(31)の切断端面(31a)のうち少なくとも角部(31b)にはR部が形成されているため、該角部(31b)で防食塗膜(34)が途切れたり、所定の防食性能を得るために防食塗料を何回も塗布したりする必要がなくなる。よって、上述の構成により、防食性能が高く且つ低コストな熱交換器(30)をより確実に得ることができる。
【0026】
特に、第3の発明のように上記フィン(31)の表面に防食塗装が施されている場合や、第4の発明のように上記フィン(31)が銅製である場合に、上記第1及び第2の発明のような構成にすればより効果的である。
【0027】
また、第5の発明によれば、上述のような構成の熱交換器(30)を、海上コンテナ用の冷凍装置(1)の冷媒回路(10)における凝縮器(12)として用いることで、海水等を浴びて腐食しやすい腐食環境下でも腐食を防止することができる。しかも、上述のように、バリ(31c)のない分、防食塗装の回数を減らすことができるため、防食性能の高い凝縮器(12)を低コストで得ることができる。
【0028】
第6の発明によれば、樹脂製の植毛(52)を有する回転ブラシ(50)によってバリ除去装置を構成したため、薄板状のフィン(31)に損傷を与えることなく、バリ(31c)のみを効率良く且つ確実に除去することができる。
【0029】
第7の発明によれば、バリ除去方法として、所定のサイズに切断されたフィン(31)のバリを樹脂製の植毛(52)を有する回転ブラシ(50)によって除去するようにしたため、上記フィン(31)の切断端面(31a)のバリ(31c)を効率良く且つ確実に除去することができ、上記第1から第5の発明のような効果を奏する熱交換器(30)を容易に得ることができる。
【0030】
また、第8の発明によれば、上記回転ブラシ(50)は、上記バリ(31c)を起こすように回転しながら該バリ(31c)に接触してバリ(31c)を除去するため、より効率良く且つ確実にバリ(31c)を除去することができ、防食性能がより高く且つ低コストな熱交換器(30)を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0032】
本発明の実施形態に係る熱交換器(12)を備えた冷凍装置(1)は、海上輸送等に用いられるコンテナの庫内を冷却するためのものである。この冷凍装置(1)は、図1に示すように、冷媒が循環して蒸気圧縮冷凍サイクルを行う冷媒回路(10)を備えている。
【0033】
−冷媒回路の構成−
上記冷媒回路(10)には、主な構成機器として、圧縮機(11)、凝縮器(12)、受液器(13)、電子膨脹弁(14)及び蒸発器(15)が順に接続されている。
【0034】
上記圧縮機(11)は、例えばスクロール型の圧縮機であり、内部で冷媒を圧縮して高圧の状態で吐出するように構成されている。上記凝縮器(12)及び蒸発器(15)は、詳しくは後述するように、複数の薄板のフィン(31,31,…)を積層し、それらのフィン(31,31,…)に複数のチューブ(32,32,…)を貫通させてなるクロスフィンコイル式の熱交換器(30)によって構成されている(図2参照)。
【0035】
上記凝縮器(12)は、コンテナの庫外に配置されていて、チューブ(32)内を上記圧縮機(11)から吐出された高圧のガス冷媒が流れるように構成されている。そして、上記凝縮器(12)の近傍には該凝縮器(12)に庫外空気を送風する凝縮器ファン(21)が配設されている。これにより、この凝縮器ファン(21)によって送風される庫外空気と上記凝縮器(12)内を流れる冷媒との間で熱交換が行われる。
【0036】
一方、上記蒸発器(15)は、コンテナの庫内に配置されていて、チューブ(32)内を冷媒が流れるように構成されている。そして、上記蒸発器(15)の近傍にも該蒸発器(15)に庫内空気を送風する蒸発器ファン(22)が配設されている。これにより、この蒸発器ファン(22)によって送風される庫内空気と上記蒸発器(15)内を流れる冷媒との間で熱交換が行われる。
【0037】
上記受液器(13)は、円筒状の密閉容器であり、その内部の底部に上記冷媒回路(10)での余剰分の液冷媒を貯留できるように構成されている。上記電子膨脹弁(14)は、弁の開度が調節可能に構成されている。この電子膨脹弁(14)の開度は、上記蒸発器(15)の過熱度、及び上記冷媒回路(10)の高圧側の冷媒圧力に応じて調節される。
【0038】
−運転動作−
上述のような冷媒回路(10)を有する冷凍装置(1)は、コンテナ内の貯蔵物を冷蔵するための冷蔵運転や、コンテナ内の貯蔵物を冷凍するための冷凍運転が可能なように構成されている。以下で、上記冷凍装置(1)の冷蔵運転について説明する。
【0039】
冷蔵運転の開始時には、凝縮器ファン(21)が所定風量で運転されるとともに、蒸発器ファン(22)が大風量で運転される。さらに、電子膨脹弁(14)は、蒸発器(15)の過熱度に応じて弁の開度が調節される。
【0040】
圧縮機(11)が運転されると、該圧縮機(11)で圧縮された冷媒は、凝縮器(12)へ流入する。この凝縮器(12)では、冷媒が室外空気へ放熱して凝縮する。その後、冷媒は、受液器(13)を経由して電子膨脹弁(14)を通過し、減圧されてから蒸発器(15)へ流入する。この蒸発器(15)では、冷媒が庫内空気から吸熱して蒸発する。その結果、コンテナの庫内の冷却が行われる。上記蒸発器(15)で蒸発した冷媒は、圧縮機(11)に吸入され、再び圧縮機(11)で圧縮される。
【0041】
−熱交換器−
上記凝縮器(12)及び蒸発器(15)を構成する熱交換器(30)は、図2に示すように、複数の薄板のフィン(31,31,…)を厚み方向に積層し、銅製のチューブ(32,32,…)を複数、貫通させることによって構成されている。ここで、上記熱交換器(30)は、薄板のフィン材料(33)に、上記チューブ(32)が挿通する貫通孔(図示省略)を複数設けるとともに、該フィン材料(33)を上記フィン(31)の大きさに裁断して(図3参照)、該フィン(31)を厚み方向に積層した後、それらの貫通孔に上記チューブ(32,32,…)を挿通させることによって得られる。
【0042】
このように、薄板のフィン材料(33)から所定サイズのフィン(31)を複数枚、切り出す場合、図3に示すような切断装置(40)を用いるのが一般的であるが、切断治具の上刃(41)と下刃(42)との刃先の間に隙間δが存在するため、上記フィン材料(33)を切断する際に、必ずバリ(31c)が発生してしまう。そうすると、上記フィン(31)の切断端面(31a)には、突起部としてのバリ(31c)が残ることになる。
【0043】
ここで、本実施形態に係る冷凍装置(1)は、上述のとおり、海上輸送用のコンテナに設けられているため、特にコンテナの庫外に配置される凝縮器(12)は海水等を浴びやすく、腐食しやすい環境下にある。そのため、上記凝縮器(12)を構成する熱交換器(30)のフィン(31,31,…)の表面に防食塗装を施すのが一般的である。
【0044】
ところが、このような防食塗装の施されるフィン(31,31,…)に上述のようなバリ(31c)が残っていると、図4(a)に示すように、そのバリ(31c)の部分では防食塗膜(34)が途切れやすくなるとともに、該バリ(31c)の部分を防食塗膜(34)で完全に覆うためには防食塗料を何回も重ね塗りする必要がある。そうすると、上記バリ(31c)における防食塗膜(34)の途切れによって熱交換器(30)の防食性能が低下するとともに、上記フィン(31)への防食塗装によって熱交換器(30)の製造コストが増大するという問題が生じる可能性がある。
【0045】
特に、上述のように、熱交換器(30)を海上輸送用のコンテナに用いる場合、熱交換器(30)のフィン(31,31,…)の材質としては、アルミよりも腐食しにくい銅の方が好ましいが、銅はアルミよりも伸び率が大きいため、上記図3の切断装置(40)で切断すると、アルミの場合よりもフィン(31)の切断端面(31a)にバリが生じやすくなる。
【0046】
これに対し、本発明では、上記フィン(31,31,…)の切断の際に形成されるバリ(31c)を、防食塗装の前に除去した。具体的には、図5に示すように、上記フィン(31)の切断端面(31a)に形成されているバリ(31c)を、回転ブラシ(50)によって取り除くことで、該フィン(31)の切断端面(31a)をバリ(31c)のない滑らかな面にする。すなわち、上記フィン(31)の切断端面(31a)のうち、少なくとも上記バリ(31c)が発生している角部(31b)を、上記回転ブラシ(50)によって研削し、該角部(31b)にR部や面取り部を形成する。
【0047】
上記回転ブラシ(50)は、上記図5に模式的に示すように、回転軸(51)の外周面上に樹脂製(例えばナイロンなど)の植毛(52,52,…)が複数、配設されたもので、該植毛(52,52,…)には多数の砥粒(図示省略)が含まれている。そして、この回転ブラシ(50)の回転軸(51)を回転させて、植毛(52,52,…)を上記フィン(31)のバリ(31c)に当てることで、該バリ(31c)を植毛(52,52,…)内の砥粒によって研削することができる。
【0048】
ここで、上記回転ブラシ(50)は、その植毛(52,52,…)が樹脂製なので、上記フィン(31)に接触させても、該フィン(31)を曲げたりすることなく、該フィン(31)の切断端面(31a)に沿って変形する柔軟性を有している。これにより、上記フィン(31)の損傷を防止しつつ、該フィン(31)のバリ(31c)のみを取り除くことが可能となる。
【0049】
また、上記回転ブラシ(50)は、上記図5に示すように、その回転方向と移動方向とが同じ方向であり、且つ、該回転ブラシ(50)の植毛(52,52,…)が上記フィン(31)のバリ(31c)を掻き上げるように該フィン(31)に対して近づくよう構成されている。これにより、上記フィン(31)のバリ(31c)は、上記回転ブラシ(50)の植毛(52,52,…)によって掻き上げられて、根元から効率良く且つ確実に除去される。
【0050】
なお、上記回転ブラシ(50)は、例えば、植毛(52)の直径が約1mmで長さが約15〜50mm、回転数が約5000rpmであるのが好ましい。
【0051】
上述のように、上記フィン(31)の切断端面(31a)におけるバリ(31c)を取り除くことによって、上記フィン(31)全体にほぼ均一に防食塗装を施すことが可能となる(図4(b)参照)。すなわち、従来のようにバリ(31c)で防食塗膜(34)が途切れることなく、しかも、該バリ(31c)を防食塗膜(34)で覆うための防食塗料の重ね塗りも不要になる。
【0052】
−実施形態の効果−
以上より、熱交換器(30)のフィン(31)を形成する際に、該フィン(31)の切断端面(31a)に形成されるバリ(31c)を、回転ブラシ(50)によって除去するようにしたため、例えば上記熱交換器(30)が海上輸送用のコンテナの庫外などに搭載される凝縮器(12)として用いられる場合、上記フィン(31)の表面に施される防食塗装がバリによって途切れるのを防止することができる。したがって、上述のような構成にすることで、上記熱交換器(30)の防食性能を向上することができる。
【0053】
しかも、上述のように、上記フィン(31)の切断端面(31a)のバリ(31c)を取り除くことによって、該バリ(31c)を防食塗膜(34)で完全に覆うように防食塗料を何度も重ね塗りする必要がなくなるので、上記熱交換器(30)の製造コストの低減を図れる。
【0054】
また、上記フィン(31)のバリ(31c)を除去する装置として、樹脂製の植毛(52)を有する回転ブラシ(50)を用いることで、上記フィン(31)を変形させたり傷つけたりすることなく、確実且つ容易にバリ(31c)を除去することができる。
【0055】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0056】
上記実施形態では、フィン(31)のバリ(31c)を除去する方法として、回転ブラシ(50)を用いているが、この限りではなく、該フィン(31)に損傷を与えない方法であれば、どのような装置を用いてバリ除去を行ってもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、回転ブラシ(50)によってフィン(31)のバリ(31c)を除去する場合、該バリ(31c)を起こすように回転ブラシ(50)を回転させて植毛(52)をバリ(31c)に接触させているが、この限りではなく、逆に、回転ブラシ(50)をバリ(31c)を寝かせる方向に回転させたり、移動させたりしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、フィン(31)の材質を銅としているが、この限りではなく、例えば、従来と同じアルミなど、熱交換器のフィンとして利用できるような材質であればどのような材質であってもよい。
【0059】
さらに、上記実施形態では、上述の構成を海上輸送用コンテナの冷凍装置(1)における凝縮器(12)に適用しているが、この限りではなく、その他の用途の熱交換器に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明は、海上コンテナ等に用いられる冷凍装置の熱交換器における防食対策に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態に係る熱交換器を備えた冷凍装置の概略構成を示す配管系統図である。
【図2】熱交換器の概略構成を示す斜視図である。
【図3】熱交換器のフィンの切断工程を概略的に示す説明図である。
【図4】(a)バリのある状態、(b)バリのない状態のフィンの端面を示す部分拡大図である。
【図5】フィン端面のバリ除去工程の様子を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1 冷凍装置
10 冷媒回路
11 圧縮機
12 凝縮器
13 受液器
14 電子膨脹弁
15 蒸発器
21 凝縮器ファン
22 蒸発器ファン
30 熱交換器
31 フィン
31a 切断端面
31b 角部
31c バリ
32 チューブ
33 フィン材料
34 防食塗膜
40 切断装置
41 上刃
42 下刃
50 回転ブラシ(バリ除去装置)
51 回転軸
52 植毛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定サイズに切断された複数の薄板状のフィン(31)を備えた熱交換器であって、
上記フィン(31)は、その切断端面(31a)がバリ除去加工されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
請求項1において、
上記フィン(31)の切断端面(31a)のうち少なくとも角部(31b)には、R部が形成されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記フィン(31)の表面には、防食塗装が施されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つにおいて、
上記フィン(31)は、銅製であることを特徴とする熱交換器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つにおいて、
海上コンテナ用冷凍装置(1)の冷媒回路(10)における凝縮器(12)として用いられることを特徴とする熱交換器。
【請求項6】
所定サイズに切断された熱交換器用フィン(31)の切断端面(31a)のバリ(31c)を除去するためのバリ除去装置であって、
樹脂製の植毛(52)を有する回転ブラシ(50)によって構成されていることを特徴とするバリ除去装置。
【請求項7】
所定サイズに切断された熱交換器用フィン(31)の切断端面(31a)のバリ(31c)を除去するためのバリ除去方法であって、
上記バリ(31c)を樹脂製の植毛(52)を有する回転ブラシ(50)によって除去することを特徴とするバリ除去方法。
【請求項8】
請求項7において、
上記回転ブラシ(50)を、上記フィン(31)の切断端面(31a)に形成されたバリ(31c)を起こすように回転させながら該バリ(31c)に接触させて、バリ除去を行うことを特徴とするバリ除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−241115(P2008−241115A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81725(P2007−81725)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)