説明

熱交換器

【課題】 自動車用ラジエータ等として使用した場合に、極めて優れた放熱性能が得られる熱交換器を提供する。
【解決手段】 自動車用ラジエータ1は、内部に冷却水通路31を有するチューブ3とフィン4とが交互に積層されることにより形成されたラジエータコア2を備える。フィン4は、内面に螺旋状のリブ41を有しかつチューブ3と交差するように配列された複数のアルミニウム管40により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ラジエータ等として用いられる熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ラジエータとして、内部に冷却水通路を有するチューブとフィンとが交互に積層されることにより形成されたラジエータコアを備え、フィンがコルゲートフィンよりなるものが知られている。エンジンで温められた冷却水は、ラジエータ内のチューブを通る間に、コルゲートフィンの空隙部を流れる自然通風および/またはラジエータコアの後方に配置されたファンによる強制通風によって、冷却される。
【0003】
ところで、エンジン性能の向上等に伴い、ラジエータに対してもより高い放熱性能が求められており、そのため、コルゲートフィンとしてその表面に多数のルーバを形成したものが採用されて、放熱面積の増大による熱交換効率の向上が図られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、コルゲートフィンの表面に多数のルーバを形成すると、その空隙部が狭くなって、ここを流れる空気の流通抵抗が増大してしまうため、使用するファンの性能を高めたとしても、放熱性能の向上には限界があった。
【特許文献1】特開2003−83692号公報
【発明の開示】
【0005】
本発明の目的は、自動車用ラジエータ等として使用した場合に、極めて優れた放熱性能が得られる熱交換器を提供することにある。
【0006】
本発明による熱交換器は、内部に流体通路を有するチューブとフィンとが交互に積層されることにより形成されたコアを備えているものにおいて、フィンが、内面に螺旋状のリブを有しかつチューブと交差するように配列された複数の金属管によって形成されていることを特徴としている。
【0007】
本発明の熱交換器によれば、これを例えば自動車用ラジエータに使用した場合、フィンを構成する金属管の内部を空気が通過するため、その流通抵抗が小さい上、金属管内面の螺旋状リブによって空気が旋回流となって、放熱が促進されるため、放熱性能が大幅に向上する。
【0008】
本発明による熱交換器において、好適には、金属管内面のリブは、金属管外面に螺旋状の溝を形成することにより同溝の裏側に形成されたものである。
【0009】
金属管内面の螺旋状リブを上記のようにして形成すれば、製造が容易であり、コストも抑えられる。
リブ付き金属管の製造方法としては、断面円形の金属素管を、少なくとも1つが溝付けローラよりなる3点ローラによって軸線周りに回転させながら長さ方向に送って、該金属素管の外面に螺旋状の溝を形成することにより、同内面に螺旋状のリブを形成する工程を含んでいるものが、好適な態様として挙げられる。
但し、螺旋状リブ付き金属管の製造方法は上記のものに限られず、例えば、内面に長さ方向にのびる1条または複数条のリブが形成されるような型を用いて成形される押出管または引抜管を、成形時または後工程において、軸線周りに捩る工程を含んだ方法によっても製造可能である。
【0010】
リブ付き金属管の材料は、特に限定されないが、好適には、軽量であって加工が容易なアルミニウム(アルミニウム合金を含む)が用いられる。
【0011】
金属管は、通常、隣り合うチューブどうしの間、または、これらに加えて両端に位置するチューブとサイドプレートとの間に、1列ずつ配置され、隣接するチューブの外面または同外面とサイドプレートの外面とにろう付け等によって接合される。また、金属管は、前記の各位置に、2列またはそれより多い複数列ずつ配置される場合もある。さらに、金属管は、前記の各位置に千鳥状に配置される場合もある。
金属管は、チューブのほぼ全長に亘るように、前記の各位置に所要数ずつ配列される。なお、金属管は、通常、チューブと直交するように配列されるが、空気の流れ方向によってはチューブに対して斜めに交差するように配列されてもよい。
前記の各位置に配された隣り合う金属管どうしは、好適には、互いに当接させられて、ろう付け等によって接合される。これにより、コア全体としての強度が向上し、また、ろう付け等の接合作業を容易に行うことができる。もっとも、隣り合う金属管どうしの間に若干の隙間が生じるように配列することも可能である。
金属管内面に形成される螺旋状リブは、少なくとも1条あれば足りるが、複数条のリブを形成するようにしてもよく、それによって放熱面積の増大を図ることができる。
フィンには、通常、同一の外径を有する1種類の金属管が使用されるが、外径の異なる2種以上の金属管を組み合わせて適宜配列することによりフィンを形成するようにしてもよい。
【0012】
本発明の熱交換器は、自動車用ラジエータとして特に好適に用いられるが、それ以外の用途に使用することも勿論可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を図1〜5を参照して説明する。この実施形態は、本発明を自動車用ラジエータに適用したものである。
【0014】
図1は、ラジエータの全体を示すものである。このラジエータ(1)は、チューブ(3)とフィン(4)とを左右方向に交互に積層することにより形成されたラジエータコア(2)を備えている。各チューブ(3)の上下両端は、それぞれアッパタンク(5A)、ロアタンク(5B)に接続されている。左右両端に位置するチューブ(3)の外側にはそれぞれ所定間隔をおいてサイドプレート(6)が配置されており、同チューブ(3)とサイドプレート(6)との間にもフィン(4)が介在されている。また、図示は省略したが、ラジエータコア(2)の後面にファンが取り付けられている。
【0015】
図2に示すように、チューブ(3)は、内部に複数の冷却水通路(31)を有する偏平中空状のものであって、アルミニウム中空押出形材から形成されている。
【0016】
図1〜4に示すように、フィン(4)は、内面に螺旋状のリブ(41)を有しかつチューブ(3)と直交するように配列された複数のアルミニウム管(40)よりなる。
アルミニウム管(40)内面のリブ(41)は、アルミニウム管(40)外面に螺旋状の溝(42)を形成することにより同溝(42)の裏側に形成されたものであって、アルミニウム管(40)の全長に亘っている。
アルミニウム管(40)の長さは、チューブ(3)の前後方向の幅とほぼ等しくなされている(図2、3参照)。また、アルミニウム管(40)の外径は、隣り合うチューブ(3)間の距離とほぼ等しくなされており、チューブ(3)の厚みと比べるとその約2倍となっている(図2参照)。
具体的には、例えば、外径約2〜12mm、厚み約0.1〜0.8mmであって、外径の約5〜30%の高さの螺旋状リブ(41)を内面に有するアルミニウム管(40)が、フィン(4)として使用される。また、アルミニウム管(40)の長さは、例えば、トラックの場合には約110mmとなされ、乗用車の場合には約40mmとなされる。
上下に隣り合うアルミニウム管(40)どうしは、互いに当接させられて、ろう付けにより接合されている(図3参照)。また、各アルミニウム管(40)は、隣り合う2つのチューブ(3)の表面、または、端に位置するチューブ(3)とサイドプレート(6)の表面に当接させられて、ろう付けにより接合されている。
【0017】
アッパタンク(5A)およびロアタンク(5B)は、それぞれ、アルミニウム製タンク本体(51)と、タンク本体(51)にこれの開口を塞ぐように接合されかつチューブ挿通孔(図示略)を有するアルミニウム製コアプレート(52)とで構成されている。アッパタンク(5A)に、冷却水を導入するアッパホース(図示略)が接続され、ロアタンク(5B)に、冷却水を排出させるロアホース(図示略)が形接続される。アッパタンク(5A)の頂部には、ラジエータキャップ(53)が設けられている。
【0018】
サイドプレート(6)も、アルミニウム製であって、その両縁部が左右方向外方に向かって折り曲げられることにより断面コ字形に形成されている。
【0019】
図5には、フィン(4)を構成するリブ(41)付きアルミニウム管(40)の製造方法の一例が示されている。
この方法は、断面円形のアルミニウム素管(40A)を、1つが溝付けローラ(71X)よりなる3点ローラ(71,71,71X)によって軸線周りに回転させながら長さ方向に送って、アルミニウム素管(40A)の外面に螺旋状の溝(42)を形成することにより、同内面に螺旋状のリブ(41)を形成する工程を含んでいるものである。
こうして得られたリブ(41)付きアルミニウム管(40)は、所定長さずつ切断されて、フィン(4)として用いられる。
上記の方法によれば、リブ(41)付きアルミニウム管(40)の製造が容易であって大量生産が可能であり、コストを抑えることができる。
【0020】
上記のラジエータ(1)は、例えば、チューブ(3)、フィン(4)(=リブ(41)付き金属管(40))、タンク本体(51)、コアプレート(52)、サイドプレート(6)等の構成部品の互いに当接する面のうち少なくともいずれか一方に予めろう材層を形成しておき、これらの構成部品を治具で拘束しながら炉中で加熱して一括ろう付けすることにより製造されている。
【0021】
上記のラジエータ(1)にあっては、エンジンで温められた冷却水がアッパタンク(5A)に導入され、ここから各チューブ(3)の冷却水通路(31)を下向きに流れた後、ロアタンク(5B)を経てエンジンに戻されるようになっている。
ここで、冷却水は、チューブ(3)の冷却水通路を流れる間に、フィン(4)の空隙部、即ち、各金属管(40)の内部を流れる自然通風および/またはファンによる強制通風によって冷却される。この際、金属管(40)の内部は、流通抵抗が小さいため、単位時間当たりの空気の流通量が極めて大きい。しかも、金属管(40)の内面には螺旋状のリブ(41)が形成されているため、このリブ(41)の存在により金属管(40)内部を流れる空気が旋回流となり、それによってチューブ(3)内を流れる冷却水からの放熱が促進される。
従って、上記のラジエータ(1)によれば、コルゲートフィンを備えた従来のラジエータと比べて、放熱性能が飛躍的に向上し、ひいては自動車自体の性能の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態を示すものであって、自動車用ラジエータの全体正面図である。
【図2】ラジエータコアの一部を拡大して示す水平断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿うラジエータコアの垂直断面図である。
【図4】フィンを構成するリブ付きアルミニウム管の斜視図である。
【図5】リブ付きアルミニウム管の製造方法を示したものであって、(a)は側面図、(b)は(a)のb−b線に沿う拡大垂直断面図である。
【符号の説明】
【0023】
(1):ラジエータ(熱交換器)
(2):ラジエータコア(コア)
(3):チューブ
(31):冷却水通路(流体通路)
(4):フィン
(40):アルミニウム管(金属管)
(41):螺旋状のリブ
(42):螺旋状の溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体通路を有するチューブとフィンとが交互に積層されることにより形成されたコアを備えている熱交換器において、
フィンが、内面に螺旋状のリブを有しかつチューブと交差するように配列された複数の金属管によって形成されていることを特徴とする、熱交換器。
【請求項2】
金属管内面のリブが、金属管外面に螺旋状の溝を形成することにより同溝の裏側に形成されたものであることを特徴とする、請求項1記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−138994(P2008−138994A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328318(P2006−328318)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(591194399)関西パイプ工業株式会社 (9)