説明

熱交換器

【課題】 オリフィスなどの絞り部が2箇所存在する循環系における熱特性を有効活用して、より一層の熱交換効率が高い熱交換器を提供する。
【解決手段】 熱交換器は、熱流体(12)を移動させる配管(11)を備えており、その配管(11)において自励振動により発生した衝突噴流(18)の衝突位置の外壁面(11A)の周上にフィン(13 A)を備えている。前記配管(11)は、その上流側に第一絞り部(14)を備え、その第一絞り部(14)の下流側に第二絞り部(15)を備える。例えば、前記第一絞り部(14)は、前記配管(11)の管径(D)の中心(C)から管壁(11B)の側に偏心させた流体出口(16)を備え、前記第二絞り部(15)は、前記配管(11)の管径(D)の中心(C)の付近に流体出口(17)を備えることによって自励振動を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱交換器に関する。より具体的には、吸熱する媒体が配管内を流れる、いわゆる流体の特性を用いて効率良く熱交換する熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
熱を発生する部位から、その熱を運び去る必要のある場所には、吸熱する媒体を用いてその熱を吸熱し、当該媒体を移動させて冷却するのが一般的である。ここで、吸熱媒体から熱を放出させる機器を熱交換器といい、エンジンなどの内燃機関やコンピュータなどの電子機器に広く用いられている。
熱交換器は、媒体として液体である水を用いるのが水冷式である。熱を持った水は、その水を保持および移動させる配管の外壁に設けられた冷却フィンによって放熱され、再び発熱部位に移動させる循環式であることが一般的である。
【0003】
さて、特許文献1では、ブレード式熱交換器が開示されている。そこには、熱交換の効率を高めるための工夫をしている。すなわち、『各種の放熱構造が形成された金属プレートの両側に、(他の)金属プレートを重着して構成される。(他の)金属プレートには、その内部に配した蛇行配管内に封入した作動液の相変化と移動現象により熱輸送を行なうプレート状ヒートパイプが用いられる』とある。
また、特許文献2に開示されているように、都市部におけるビルや家庭の冷房による廃熱を有効利用することで、トータルでエネルギの有効活用を図る技術もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−343985号公報
【特許文献2】特開2007−178043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1および特許文献2に示されているように、従来の熱交換器では、媒体は吸熱した熱を運んで他の場所で放熱して冷却されるものである。水など流体の媒体を用いる場合、熱交換効率を高めるため、すなわち放熱側の効率を高めるためには、媒体の熱伝達率を高める必要がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、熱交換効率が高い熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(第一の発明)
本願における第一の発明は、熱流体(12)を移動させる配管(11)を備えた熱交換器であって、 前記配管(11)において自励振動により発生した衝突噴流(18)の衝突位置の外壁面(11A)の周上にフィン(13 A)を備えた熱交換器に係る。
【0008】
(用語説明)
「自励振動」とは、振動とは無関係に思えるような現象によって振動が引き起こされる現象である。本願では、配管内にオリフィスなどの絞り部が2箇所存在する循環系において、その絞り部の配置により自励的に振動が発生することをいう。
【0009】
(作用)
自励振動が発生した箇所では熱流体(12)が管壁(11B)に衝突する衝突噴流(18)が生じる。その衝突噴流(18)が生じた箇所では、衝突噴流中心部(19)の局所的な熱伝達率が非常に大きくなる。発明者は、絞り部が2箇所存在する場合には自励振動が発生して、噴流衝突中心部(19)の位置が時間と伴に変化するが、円管内壁面(11B)の円周上の特定箇所に限定されることを実験により見いだした。したがって、その特定箇所に最も近い配管(11)の外壁面(11A)にフィン(13 A)を備えたので、自励振動が発生しない場合に比べて冷却効率を高められる。
【0010】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち、 前記配管(11)は、その上流側に第一絞り部(14)を備えるとともに、その第一絞り部(14)の下流側に第二絞り部(15)を備える。 前記第一絞り部(14)は、前記配管(11)の管径(D)の中心(C)から管壁(11B)の側に偏心させた流体出口(16)を備え、 前記第二絞り部(15)は、前記配管(11)の管径(D)の中心(C)の付近に流体出口(17)を備える。
換言すれば、配管(11)において積極的に自励振動を発生させ、その自励振動によって配管内面円周上に衝突噴流が生じた箇所において熱流体(12)の熱を放熱させる構造とした熱交換器である。
【0011】
(作用)
熱流体(12)は第一絞り部(14)の偏心した流体出口(16)を通過してから第二絞り部(15)の中心の流体出口(17)を通過すると、その流体出口(17)を通過した後に、熱流体(12)が管壁(11B)に衝突する衝突噴流(18)が生じて自励振動が発生する。その衝突噴流(18)が生じた箇所では、自励振動が発生しない場合に比べて冷却効率を高められる。
【0012】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち、 前記配管(11)は、その上流側に第一絞り部(21)を備え、その第一絞り部(21)の下流側に第二絞り部(22)を備え、 前記第一絞り部(21)は、前記配管(11)の管径(D)の中心(C)の付近に流体出口(17)を備え、 前記第二絞り部(22)は、前記配管(11)の管径(D)の中心(C)から管壁(11B)の側に偏心させた流体出口(16)を備えることによって自励振動を発生させることができる。
【0013】
(作用)
熱流体(12)は第一絞り部(21)の中心の流体出口(17)を通過してから第二絞り部(22)の偏心した流体出口(16)を通過すると、その流体出口(16)を通過した後に、熱流体(12)が管壁(11B)に衝突する衝突噴流(18)が生じて自励振動が発生する。その衝突噴流(18)が生じた箇所の局所的な噴流衝突中心部(19)の点では熱伝達率が非常に大きくなる熱特性がある。自励振動により噴流衝突中心部(19)が円管内壁面(11B)を線上に移動する。したがって、自励振動が発生しない場合に比べて冷却効率を高めることができる。
【0014】
(第一の発明のバリエーション3)
第一の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち、 前記第一絞り部(14),(21)と第二絞り部(15),(22)との間の距離(S)は、配管(11)の内径をDmmで、nを整数とすると、 S=D×n≦D×10
である。
【0015】
(作用)
距離(S)を規定することで、自励振動を発生し易くでき、冷却効率の高い熱交換器の設計が可能となる。
【0016】
(第一の発明のバリエーション4)
第一の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち、 前記第一絞り部(14),(21)及び第二絞り部(15),(22)の流体出口(16),(17)の直径dは、配管(11)の内径をDmmとすると、 d=D/2
である。
【0017】
(作用)
流体出口(16),(17)の直径dを規定することで、自励振動を発生し易くでき、冷却効率の高い熱交換器の設計が可能となる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1から請求項5に記載の発明によれば、オリフィスなどの絞り部が2箇所存在する循環系における熱特性を有効活用して、熱交換効率が高い熱交換器を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態の熱交換器を示す部分的な斜視図である。
【図2】図1の配管の長手方向に垂直な縦断面図である。
【図3】本発明の第一実施形態の熱交換器において、衝突噴流で自励振動が発生する状態を示す概略説明図であり、(a)はある時刻T1における状態を示し、(b)はある時刻T2における状態を示す。
【図4】本発明の第二実施形態の熱交換器を示す部分的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。説明に使用する図面は、図1から図4である。
【0021】
(第一の実施形態)
図1および図2を参照させながら、第一の実施形態に係る熱交換器10を説明する。
この熱交換器10は、配管11内に吸熱媒体を流して、所謂、熱流体12を形成し、その熱流体12の熱が配管11のある場所で放熱し、その放熱により冷却されて冷却媒体が形成される。
なお、媒体としては、水、油などの液体、あるいは蒸気などの気体がある。
【0022】
第一の実施形態の主要部をなす構造について説明すると、上記の配管11において熱流体12の熱が放熱する場所で積極的に自励振動を発生せしめる構造とし、その自励振動が発生する場所の外壁面11Aには、放熱するためのフィン13が設けられている。本実施形態では多数の円板状のフィン13が等間隔に並列されているが、自励振動により発生した衝突噴流18の衝突位置の外壁面11Aの周上へフィン13Aが特別に設置されていれば、補助的な各フィン13の形状、大きさ、数、各フィン13間の間隔などは特に限定されない。なお,図2においては点線で囲まれた部分は補助的なフィンを表す。
【0023】
なお、本実施形態における自励振動とは、オリフィスなどの絞り部が2箇所存在する循環系において、その絞り部の配置によって自励的に振動が発生することをいう。
【0024】
上記の配管11において熱流体12の熱が放熱する場所で積極的に自励振動を発生するために、その配管11内に、その上流側に第一絞り部14を設け、その第一絞り部14の下流側に第二絞り部15を設ける。しかも、前記第一絞り部14は、前記配管11の管径Dの中心Cから管壁11Bの側に偏心させた流体出口16(以下、「偏心流体出口」という)を備えている。また、前記第二絞り部15は、前記配管11の管径Dにおける中心Cの付近に流体出口17(以下、「中心流体出口」という)を備えている。
【0025】
配管11の内径(管径)をD(mm)としたとき、前記第一絞り部14と第二絞り部15との間の距離Sは、nを整数とすると、
S=D×n≦D×10
であることが、自励振動を発生し易くできるという点で望ましい。すなわち、距離Sは、D、2D,3D,4D、・・・・・、10D(mm)のいずれかになる。
【0026】
前記第一絞り部14及び第二絞り部15の各流体出口16、17の直径dは、配管11の管径D(mm)の1/2(d=D/2)であることが、自励振動を発生し易くできるという点で望ましい。しかし、それに限定されるものではない。
【0027】
上記構成により、図3(a)に示すように、配管11の上流側から冷媒としての例えば吸熱した水が熱流体12として流れてくると、その熱流体12は第一絞り部14の偏心流体出口16を通過してから第二絞り部15の中心流体出口17を通過する。すると、その第二絞り部15の中心流体出口17を通過した後に、熱流体12が管壁11Bに衝突する衝突噴流18が生じて自励振動が発生する。しかも、その衝突噴流18が生じた箇所では衝突噴流中心部19の局所的な熱伝達率が非常に大きくなるという熱特性がある。換言すれば、衝突噴流18が生じた熱流体12の熱が管壁11Bに伝達する効率が非常に高くなる。
【0028】
すなわち、第一絞り部14と第二絞り部15のように絞り部が2箇所存在する場合には自励振動が発生して、噴流衝突中心部19の位置が時間と伴に変化するが、その噴流衝突中心部19の位置は円管内壁面11Bの円周上の特定箇所に限定されることを実験により見いだした。
なお、図3(a)はある時刻T1で起きる衝突噴流18の噴流衝突中心部19の位置を示し、図3(b)はある時刻T2で起きる衝突噴流18の噴流衝突中心部19の位置を示す。
【0029】
衝突噴流18が生じた箇所の配管11の外壁面11Aに多数のフィン13が設けられているとしても、噴流衝突中心部19の位置の特定箇所の外壁面11Aにフィン13Aを特別に設けることにより、その特定箇所の外壁面11Aに伝達した熱はフィン13Aから効率良く放熱される。
さらに加えて、配管11に伝達した熱は他の多数の補助的なフィン13からも効率良く放熱される。結果的に、自励振動が発生しない配管11と比較して、熱交換の効率が高い放熱配管を得ることができる。
以上のように、オリフィスなどの絞り部が2箇所存在する循環系における熱特性を有効活用して、より一層の熱交換効率が高い熱交換器10を提供することができる。
【0030】
(第二の実施形態)
次に、第二の実施形態に係る熱交換器20について説明する。前述した第一の実施形態の熱交換器10と異なる部分のみを説明し、第一の実施形態と同様の部材は同符号を付して詳細な説明は省略する。
【0031】
図4に示すように、配管11において熱流体12の熱が放熱する場所で積極的に自励振動を発生するために、その配管11内に、その上流側に第一絞り部21を設け、その第一絞り部21の下流側に第二絞り部22を設ける。
【0032】
第一の実施形態と異なる点は、第二の実施形態の第一絞り部21は中心流体出口17を備えており、前記第二絞り部22は偏心流体出口16を備えていることにある。つまり、第一の実施形態と第二の実施形態では逆の流体出口の形態となる。その他の形態は、第一の実施形態と同様である。
【0033】
配管11の上流側から熱流体12として流れてくると、その熱流体12は第一絞り部21の中心流体出口17を通過してから第二絞り部22の偏心流体出口16を通過する。すると、その第二絞り部22の偏心流体出口16を通過した後に、熱流体12が管壁11Bに衝突する衝突噴流18が生じて自励振動が発生することになる。その自励振動により噴流衝突中心部19が円管内壁面11Bを線上に移動する。その衝突噴流18の熱特性による作用、効果は、前述した第一の実施形態と同様である。すなわち、自励振動が発生しない場合に比べて冷却効率を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、自動車のラジエータやパソコンの冷却、あるいはその他の様々な機器等の幅広い分野の熱交換器として用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
10 熱交換器(第一の実施形態) 11 配管
11A 外壁面 11B 管壁
12 熱流体 13 フィン
13A フィン 14 第一絞り部
15 第二絞り部 16 偏心流体出口
17 中心流体出口 18 衝突噴流
19 衝突噴流中心部
20 熱交換器(第二の実施形態) 21 第一絞り部
22 第二絞り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱流体を移動させる配管を備えた熱交換器であって、
前記配管において自励振動により発生した衝突噴流の衝突位置の外壁面周上にフィンを備えた熱交換器。
【請求項2】
前記配管は、その上流側に第一絞り部を備え、その第一絞り部の下流側に第二絞り部を備え、
前記第一絞り部は、前記配管の管径の中心から管壁側に偏心させた流体出口を備え、
前記第二絞り部は、前記配管の管径の中心付近に流体出口を備えることによって自励振動を発生させることとした請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記配管は、その上流側に第一絞り部を備え、その第一絞り部の下流側に第二絞り部を備え、
前記第一絞り部は、前記配管の管径の中心付近に流体出口を備え、
前記第二絞り部は、前記配管の管径の中心から管壁側に偏心させた流体出口を備えることによって自励振動を発生させることとした請求項1に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記第一絞り部と第二絞り部との間の距離Sは、配管の内径をDmmで、nを整数とすると、
S=D×n≦D×10
である請求項2または請求項3のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項5】
前記第一絞り部及び第二絞り部の流体出口の直径dは、配管の内径をDmmとすると、
d=D/2
である請求項2から請求項4のいずれかに記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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