説明

熱交換器

【課題】 高温の潤滑油や燃料油を水で冷却する場合、従来の熱交換器では油と水が伝熱壁を介して直接熱交換されるため、冷却水に海水を用いると熱交換器の伝熱壁が腐食して、油が海水に混入して、海水が油で汚染されるという問題点があった。
【解決手段】 ヒートパイプを介して熱交換をおこなう構造として、海水による伝熱壁の腐食が生じても、両流体の混合に至らず、海水を油で汚染しない高信頼性の熱交換器とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体と液体の熱交換器に関し、さらに詳細には、たとえば潤滑油や燃料油などの高温液体を淡水や海水で冷却する熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油などの高温液体を水などの低温液体で冷却する従来の熱交換器において、特許文献1に示すようなシェルアンドチューブ式あるいは特許文献2に示すようなプレート式の熱交換器がある。
【0003】
図8は従来のシェルアンドチューブ式熱交換器の構成例を示す縦断面図である。この熱交換器は、円筒状の胴体の内部に多数本の伝熱管を収納し、伝熱管の内部に1次側流体を、伝熱管の外部に2次側流体を流通して1次側流体と2次側流体との熱交換をおこなうものであり、これらの伝熱管は胴体の両端部に配置された管板に加工された穴にはめ込まれ、伝熱管と管板との隙間が拡管や溶接などでシール処理されて両流体の混合を防ぐ構造としている。
【0004】
また、図9は、従来のプレート式熱交換器の熱交換部を示す一部断面図である。この熱交換器は、多数の波形あるいは凹凸の断面を有する薄板成形板を重ね合わせて、板の周囲および流体の通路口を接合したもので、1次側流体と2次側流体は薄板の両側に隣り合って流れるようにして両流体の熱交換を行う構造のものである。このプレート式熱交換器は熱効率が高く、特に液体と液体との熱交換において各種産業で利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開平7−12485号公報
【特許文献2】 特開2001−263978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来の熱交換器はいずれも1次側流体と2次側流体が金属壁面を介して直接熱交換される構造のものであるので熱交換効率は高いが、このような熱交換器を海水などの腐食性を有する流体用の熱交換器として使用すると、熱交換面である金属壁面の腐食により、両流体間の漏れ発生につながる。特に、プレート式熱交換器では、薄板を介して両流体の熱交換が行われるため、腐食による寿命低下が大きいという問題点がある。また、これら従来の熱交換器を用いて高圧の潤滑油あるいは燃料油を海水で冷却するような場合には、海水による熱交換面の金属腐食により、油が海水側に漏出し、海洋の汚染をひき起こすという問題点がある。
【発明の目的】
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、1次側流体(たとえば高温流体)および2次側流体(たとえば低温流体)のどちらか一方あるいは両方ともが腐食性のものであっても、熱交換面の材料腐食にもとづく漏れによって両流体が混合する不具合を除去できる構造の熱交換器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の請求項1に係わる熱交換器は、複数のヒートパイプを貫通させ、これらのヒートパイプの中央部を固定する管板を設け、この管板の片面側に、ヒートパイプの一方側の外周面を覆うように設けられた第1の流通室のフランジ面を、他面側に、ヒートパイプの他方側の外周面を覆うように設けられた第2の流通室のフランジ面をそれぞれ当接させて、これら流通室のフランジ面と管板とをシールする構造として、第1の流通室および第2の流通室に導入される1次側流体と2次側流体との熱交換を行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、ヒートパイプを介して1次側流体と2次側流体との熱交換を間接的に行うように構成したので、それぞれの流体が接触する金属面(ヒートパイプの管壁)が腐食しても両流体の混合が生じることがないので、信頼性の高い熱交換器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図1に基づいて説明する。図1において、1aおよび1bはそれぞれの一端側にフランジ4aおよび4bを備えた外容器、2aおよび2bは流体の入口管、3aおよび3bは流体の出口管である。上記の外容器1aおよび1bはそれぞれにガスケット5aおよび5bを介して管板6にボルト、ナットなどの固定手段(図示せず)により固定され、それぞれの外容器1aおよび1bと管板6との間に、1次側流体および2次側流体の流通路が形成されている。20はヒートパイプであり、管板6を貫通し、管板6に隙間無く一体的に固定され、管板6を境としてヒートパイプ20の片方が1次側流体11に、他方が2次側流体12の流通路に配置されている。ヒートパイプ20と管板6との接合は、例えば図2に示すように、ヒートパイプ化の前にパイプの内径側から矢印のように管板6との接合部を部分的に拡管するなどによりおこなうことができる。熱交換器としてのヒートパイプ20は通常複数本で構成されるが、図では簡単化のため、単一管のもので示している。ヒートパイプ20の外部には、1次側流体11および2次側流体12がリターン回路を形成するように、邪魔板30aおよび30bが配置されている。22はヒートパイプ20の内部に充填されている作動液、23は作動液の蒸気、24は凝縮液である。
【0011】
次に動作について説明する。上記のように構成された実施の形態1における熱交換器において、1次側流体11が高温流体、2次側流体12が低温流体とした場合について動作の説明を行う。高温流体11は入口管2aから下部流通路に導入され、邪魔板30aにより、ヒートパイプ20の外部に形成されたリターン回路を通過して、出口管3aから熱交換器の外部に流出する。一方、低温流体12は入口管2bから上部流通路に導入され、同様に邪魔板30bにより形成されたリターン回路を通過して、出口管3bから外部に流出する。
【0012】
ヒートパイプ20は管の内部を真空排気して、所定量の作動液22を封入したものであり、ヒートパイプの下部側が高温流体11により加熱されると、ヒートパイプ内部の作動液22が蒸発し、高温流体11から熱を奪い、蒸気23となって上部側に移動し、この上部側で低温流体12により冷却されると、蒸気23は疑縮液化し、凝縮潜熱を低温流体12に放出して低温流体12を加熱する。凝縮液化した作動液24は重力により元の加熱部に還流し、同様の作用を繰り返しながら、高温流体の保有する熱が低温流体に移動し、両流体間の熱交換が行われる。このように、高温流体と低温流体はヒートパイプを介して間接的に熱交換されるので、高温流体あるいは低温流体のどちらか一方あるいは両方ともが腐食性のものであって、使用中にヒートパイプに腐食による損傷が生じても、双方の流体の混合には至らない信頼性の高い熱交換器が得られる。
【0013】
また、図8に示されるような従来のシェルアンドチューブ式熱交換器においては、一方側の流体は管外を、他方側の流体は管内を流れるが、管内を流れる流体は一様流れとなるため、流体と管壁間の熱伝達を大きく設定することができない。しかしながら、上記のように構成されたヒートパイプ式熱交換器では、邪魔板30aおよび30bを設けることにより、1次側流体11および、2次側流体12がともにヒートパイプ20の外面に衝突して流れが撹乱されるので、流体と管壁間の熱伝達を管内流の場合に比べて大きく向上させることができる。したがって、邪魔板3の配置設計により、従来のシェルアンドチューブ式熱交換器と同等の熱交換性能のものを得ることができる。
【0014】
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1では、ヒートパイプ20の管壁が単一材料の場合について述べたが、図3に示すように、ヒートパイプ20の外部に耐食性の高い外管21を設けた二重管としてもよい。このようにすると、内管には作動液との適合性の高い材料を用い、外管には熱交換の対象となる流体に対して耐食性の高いものを用いて、熱交換性能を確保しながら耐食性を高め、腐食による両流体の混合を一層防止することができる。たとえば、常温から200℃程度までは熱特性が良好な水を作動液とすることで高性能のヒートパイプが得られるが、この場合、内管には水との適合性が良好な銅管を、外管には外部流体との耐食性を有するステンレス管などの耐食材料を使用する構造とすることができる。
【0015】
実施の形態3.
なお、上記実施の形態2では、外管21をヒートパイプ20の全長にわたり被覆したものについて示したが、図4に示すように、1次側流体と2次側流体のどちらか一方に腐食性がある場合は、腐食性流体側のみに耐食性を有する外管21を設けるようにしてもよい。このようにすることで腐食性の無い流体側はヒートパイプと流体が直接接触するので外管の被覆による伝熱性能の低下が無く、高効率および低コストで耐食性を維持できる熱交換器が得られる。
【0016】
実施の形態4
また上記実施の形態3では、ヒートパイプ20の中央に一枚の管板6を固定したものについて説明したが、図5に示すように、1次側流体および2次側流体の流通路をそれぞれ形成する管板6aおよび6bを、スペーサ7等により一定の空間を保たせて設置するようにしてもよい、このようにすると、ヒートパイプ20と管板6aあるいは6bとの接合部において腐食等による流体の漏出が生じても、漏出した液は上記空間の内部にとどまり、排出管8から速やかに外部に流出させることができるので、両流体の混合の可能性を一層低下することができ、極めて信頼性の高い熱交換器が得られる。
【0017】
実施の形態5.
また上記実施の形態4では、ヒートパイプ20の中央部に管板6aおよび6bを一体的に固定したものについて説明したが、図6および図7に示すように、管板6aおよび6bとシール板10aおよび10bとの間にそれぞれOリング9aおよび9bを配置し、シール板10aおよび10bを管板6aおよび6bにそれぞれボルトなどの固定手段(図示せず)で固定してヒートパイプ20の外周面でそれぞれの流通路をシールする構造としてもよい。このようにすると、管板6aおよび6bとヒートパイプ20との間に所定量の間隔を設けて設置することが出来、ヒートパイプを分解して、ヒートパイプ表面の付着物の除去、腐食時の交換などのメンテナンスが可能な熱交換器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 この発明の実施の形態1を示す縦断面図である。
【図2】 この発明の実施の形態1の中央部の詳細を示す縦断面図である。
【図3】 この発明の実施の形態2を示す縦断面図である。
【図4】 この発明の実施の形態3を示す縦断面図である。
【図5】 この発明の実施の形態4を示す縦断面図である。
【図6】 この発明の実施の形態5を示す縦断面図である。
【図7】 この発明の実施の形態5の中央部の詳細を示す縦断面図である。
【図8】 従来のシェルアンドチューブ式熱交換器を示す縦断面図である。
【図9】 従来のプレート式熱交換器の熱交換部を示す平面図および断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 外容器
2 入口管
3 出口管
4 フランジ
5 ガスケット
6 管板
7 スペーサ
8 排出管
9 Oリング
10 シール板
11 1次側流体
12 2次側流体
20 ヒートパイプ
21 ヒートパイプ外管
22 作動液
23 蒸気
24 凝縮液
30 邪魔板
図中の添え字aおよびbは、それぞれ1次側流体および2次側流体に関するものであることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の流体が流通される第1の流通室と、第2の流体が流通される第2の流通室と、第1および第2の流通室のそれぞれのフランジ面に当接して第1の流体と第2の流体を仕切る管板と、当該管板を貫通して一端側が第1の流通室の内部に、他端側が第2の流通室の内部に延伸して配置された複数本のヒートパイプを有し、第1の流体と第2の流体との熱交換をおこなう熱交換器において、前記ヒートパイプの外周面を前記管板に配置された貫通孔に一体的に接合して第1の流体と第2の流体とをシールすることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
ヒートパイプの管壁が、材質の異なる内部管と外部管で構成された2重管構造であることを特徴とする特許請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
ヒートパイプの一方側の管壁が、材質の異なる内部管と外部管で構成されたことを特徴とする特許請求項1に記載の熱交換器。
【請求項4】
第1の流通室の一面側に当接する第1の管板と、第2の流通室の一側面に当接する第2の管板を備え、第1の管板と第2の管板との間に空間を設けたことを特徴とする特許請求項1から3に記載の熱交換器。
【請求項5】
第1の管板と第2の管板の間に、管板とヒートパイプの外周面とをシールするシール部材およびシール板とを備えたことを特徴とする特許請求項4に記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【公開番号】特開2013−68400(P2013−68400A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225319(P2011−225319)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(504315428)土山産業株式会社 (3)
【出願人】(592085964)山科精器株式会社 (8)