説明

熱交換装置及び熱交換装置を用いた太陽熱コレクタ

【課題】熱エネルギの吸収効率を大幅に高めることができ、従って熱交換効率を向上させることができる新規な熱交換装置及びこの熱交換装置を用いた太陽熱コレクタを提供する。
【解決手段】熱交換装置は、熱媒体である流体を流すための流路が軸方向に沿って内部に設けられている熱伝導性の媒体容器と、この媒体容器の少なくとも1つの外側表面に固着されて熱的に結合されており、金属線材をコイル状に連続的に巻回し扁平形状とした扁平コイルとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンクを利用した熱交換装置及びこの熱交換装置を用いた太陽熱コレクタに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽熱のエネルギを集熱して熱媒体に熱交換し、この熱媒体の熱エネルギを給湯や冷暖房、発電等に利用するシステムは広く普及している。この種のシステムにおける太陽熱コレクタとしては、内部を水等の熱媒体が循環するように配置された集熱管が一般的に用いられている(例えば、特許文献1及び2)。
【0003】
金属板上に樹脂製の壁を設けて流路を構成し、その内部に綿状に形成した多数の金属繊維を収納し、これを金属板上に焼結してなるヒートシンクを用いた太陽熱コレクタも公知である(例えば、特許文献3)。
【0004】
【特許文献1】特開平6−42823号公報
【特許文献2】特開平11−256785号公報
【特許文献3】特開平10−111026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したごとき従来の太陽熱コレクタにおいては、熱交換装置の性能に限界があったため、集熱及び熱交換性能を高めることが非常に難しかった。即ち、特許文献1及び2に記載された太陽熱コレクタの熱交換装置は、集熱管又は真空管を用いたものであって、表面積が小さいことから太陽熱をとらえる集熱性能に限界があり、また、集めた熱を伝導する熱伝導性能及びその伝導した熱を熱媒体に熱交換する熱交換性能も共に低いものであった。また、特許文献3に記載された太陽熱コレクタの熱交換装置は、ヒートシンクを利用するものであるが、ヒートシンク自体の表面積がさほど大きくないことから熱エネルギの吸収効率をさほど高めることができないものであった。
【0006】
本発明の目的は、特に熱エネルギの吸収効率を大幅に高めることができ、従って熱交換効率を向上させることができる新規な熱交換装置及びこの熱交換装置を用いた太陽熱コレクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、熱媒体である流体を流すための流路が軸方向に沿って内部に設けられている熱伝導性の媒体容器と、この媒体容器の少なくとも1つの外側表面に固着されて熱的に結合されており、金属線材をコイル状に連続的に巻回し扁平形状とした扁平コイルとを備えた熱交換装置が提供される。
【0008】
熱媒体を流す流路を内蔵する熱伝導性の媒体容器の少なくとも1つの外側表面に、金属線材をコイル状に連続的に巻回した扁平形状の扁平コイルを固着して熱的に結合したので、表面積の非常に大きい扁平コイル、即ちフィン部と熱伝導性の媒体容器とからなるヒートシンクが構成されている。媒体容器の外部にこのような表面積の非常に大きいフィン部を備えることにより、熱吸収効率が非常に高くなり、この熱が熱伝導性の媒体容器を効率よく伝導して熱媒体に伝わるので、熱交換効率も高くなる。しかも、フィン部はその扁平コイルの間を空気が流通可能であるため、自然対流によって熱空気の循環が行われることとなり、その意味からも熱交換効率がより高くなると共に、ファン等の強制対流手段を用いることなく熱交換が可能となる。さらに、本発明に係る熱交換装置は、非常に安価でかつ効率的に製造することができるため、比較的大面積の場所に設置するのに有利である。
【0009】
媒体容器の流路が、その軸断面において複数区画に分割されており互いに平行に伸長する複数の分割流路からなることが好ましい。このように、流路を複数の分割流路で構成し、熱媒体である流体を分散して流すことにより乱流が防止され、渦等のない層流を得ることができる。しかも、流体の流速を高めることが可能となる。その結果、熱交換効率がより向上する。
【0010】
扁平コイルが、媒体容器の1つの外側表面のみに固着されているか、媒体容器の複数の外側表面に固着されていることも好ましい。扁平コイルが1つのみの外側表面に固着されることにより、他の外側表面は熱伝導面として利用可能である。また、扁平コイルが複数の外側表面に固着されることにより、表面積がより大きくなることから、熱吸収効率がさらに高くなる。
【0011】
媒体容器が、軸断面が扁平かつ矩形の形状を有しており内部に流路が設けられた本体部と、本体部の両端にそれぞれ連結されており媒体管路に接続可能に構成された2つのヘッダ部とを備えていることも好ましい。
【0012】
扁平コイルが、媒体容器の軸方向に沿って互いに平行に複数列配列されていることも好ましい。
【0013】
扁平コイルが、媒体容器の外側表面に対して、その扁平面が実質的に垂直となるように固着されていることもより好ましい。
【0014】
媒体容器に対する扁平コイルの固着が、拡散接合によって行われていることも好ましい。
【0015】
流路内に炭素繊維が軸方向に沿って充填されていることも好ましい。これにより、炭素繊維間の間隙による毛細管現象によって流体が流路内を移動することとなり、強制循環手段が不要となる。
【0016】
本発明によれば、さらに、上述した熱交換装置を用いた太陽熱コレクタが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、表面積の非常に大きい扁平コイル、即ちフィン部と熱伝導性の媒体容器とからなるヒートシンクが構成されている。媒体容器の外部にこのような表面積の非常に大きいフィン部を備えることにより、熱吸収効率が非常に高くなり、この熱が熱伝導性の媒体容器を効率よく伝導して熱媒体に伝わるので、熱交換効率も高くなる。しかも、フィン部はその扁平コイルの間を空気が流通可能であるため、自然対流によって熱空気の循環が行われることとなり、その意味からも熱交換効率がより高くなると共に、ファン等の強制対流手段を用いることなく熱交換が可能となる。さらに、本発明に係る熱交換装置は、非常に安価でかつ効率的に製造することができるため、比較的大面積の場所に設置するのに有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の一実施形態として太陽熱温水供給システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【0019】
同図において、10は太陽熱エネルギを吸収し、熱媒体に熱交換する太陽熱コレクタ、11は太陽熱コレクタ10に接続されており、熱媒体が内部を循環する媒体管路、12は媒体管路11の途中に設けられ、熱媒体の熱を給湯すべき温水に熱交換する熱交換器、13は媒体管路11の途中に設けられ、熱媒体を強制循環させるポンプ、14は貯湯槽、15は貯湯槽14内の温水を補助的に加熱するヒータをそれぞれ示している。
【0020】
太陽熱コレクタ10は、太陽熱エネルギの吸収特性を向上させるため、その表面が黒色又はそれに準じる色に着色されている。
【0021】
太陽光が太陽熱コレクタ10に入射されることにより、その太陽熱エネルギが吸収され、この太陽熱コレクタ10の内部を流れる熱媒体である、例えば水に代表される液体、気体又は蒸気を含む流体に熱交換される。この熱媒体が媒体管路11を通って熱交換器12に印加されてそのエネルギが温水に熱交換され、給湯や暖冷房、さらには発電等に利用される。
【0022】
なお、太陽熱温水供給システムとしては、その他に種々の構成要素、例えば逆止弁、サーモスタット、ヒーターコントローラ等が実際には設けられているが、ここでは主要部のみを示すに留め、詳細な説明を省略する。
【0023】
図2は図1の太陽熱コレクタ10を構成する熱交換装置の構成例の全体を示す上面図であり、図3は図2の熱交換装置の全体を示す底面図であり、図4は図2の熱交換装置の一部を示す斜視図であり、図5は図2の熱交換装置の一部を示す上面図であり、図6は図2の熱交換装置の一部を示す側面図である。
【0024】
これらの図に示すように、本実施形態における熱交換装置は、熱伝導性の媒体容器20と、この媒体容器20の外側表面に固着され熱的に結合された扁平コイルによるフィン部21とから構成されている。
【0025】
より詳細には、媒体容器20は、本体部22と、この本体部22の両端にそれぞれ連結された第1のヘッダ部23及び第2のヘッダ部24とから構成されており、本体部22の一方の外側表面22aにフィン部21が固着されている。本体部22の他方の外側表面22bには何も固着されておらず、平坦面となっている。このように、フィン部が固着されていない本体部22の他方の外側表面22bは、支持体等に密着固定することができ、これにより、必要に応じて、その支持体に良好に熱伝導させることが可能となる。
【0026】
本体部22は、本実施形態では、その軸断面が扁平かつ矩形の形状を有しており、内部は空洞となっており、これが熱媒体をその軸方向に沿って流す流路を構成している。なお、本体部22を軸断面が扁平な矩形形状とすることなく、例えば軸断面が厚みのある矩形形状、例えば正方形に近い矩形形状、としても、その他の軸断面形状としても良いことは明らかである。
【0027】
第1のヘッダ部23は、本体部22の後述する分割流路を連結するマニフォールド部23aと、媒体管路11(図1)に螺合接続可能に構成された継手部23bとを備えている。同様に、第2のヘッダ部24は、本体部22の分割流路を連結するマニフォールド部24aと、媒体管路11に螺合接続可能に構成された継手部24bとを備えている。
【0028】
媒体容器20を構成する本体部22、第1のヘッダ部23及び第2のヘッダ部24は、熱伝導性の高い材料で構成されているが、本実施形態では、アルミニウムに5〜10%のケイ素を含有させた合金を含むクラッド板で形成されている。媒体容器20をアルミニウムのみ若しくはこれとニッケル等の合金、銅、銀、金等の金属材料、又は炭素材料等から構成しても良い。
【0029】
フィン部21は、本実施形態においては、本体部22の一方の外側表面22a上に、本体部22の軸方向に沿って互いに平行に配列されかつ外側表面22aに対して扁平面が実質的に垂直となるように固着された4列の扁平コイルから構成されている。列数は4列に限定されるものではなく、1〜3列、5列以上であっても良い。また、列状に配置されていなくとも良い。さらに、外側表面22aと扁平面とが実質的に垂直でなくとも、傾斜していれば良い。
【0030】
本体部22の一方の外側表面22aとフィン部21とは、互いに熱的に結合されている。なお、ここで熱的に結合するとは、接触部において熱伝導性を損なうことなく固着されていることをいう。本実施形態では、具体的には、拡散接合(拡散溶接)によって両者が固着されている。拡散接合を用いることにより、最小面積で両者の固着を図ることが可能となる。
【0031】
本体部22の一方の外側表面22aに、各断面が例えば凹状、U字状又は部分円形状の複数の溝を軸方向に沿って互いに平行に形成し、これら複数の溝に扁平コイルの一部をそれぞれ嵌合し、例えばハンダ又は熱伝導性接着剤等で固着することにより本体部とフィン部とを熱的に結合しても良い。ハンダ付け以外に、超音波溶接、振動溶接、フラッシュ溶接等の接合手段を用いて固着しても良い。熱伝導性接着剤の例としては、金、銀、若しくはニッケル等の金属粉、アルミナ、窒化アルミナ、窒化ケイ素、若しくはカーボン粉等を、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、若しくはウレタン樹脂等のバインダに配合したもの等がある。また、本体部22と扁平コイルとの間に熱伝導性の層を付加的に設け、この層の表面に扁平コイルを固着するようにしても良い。
【0032】
図7は図2の熱交換装置におけるフィン部の扁平コイルの構成を示す平面図である。
【0033】
同図からも分かるように、扁平コイル70は、コイル状に巻回された金属線材を、扁平に形成することによって作成されている。このとき、隣接する一巻き一巻きの巻回単位が、相互に密着するように構成する。この場合、右巻きのみ又は左巻きのみにコイル状に巻回された金属線材で構成しても良いが、本実施形態では、同図に示すように、右巻きに巻回されたコイル状の金属線材71と、左巻きに巻回されたコイル状の金属線材72とを組み合わせて構成している。
【0034】
このように組み合わせた金属線材71及び72を、加圧により扁平な形状とすることによって、扁平コイル70が得られる。この加圧により、金属線材71及び72の帯形の中心部分が内側(重ね合わせの内部側)に折り曲げられると共に、金属線材71及び72の重ね合わせの表側部分が圧潰されて中心部分に扁平な面73が形成される。
【0035】
加圧方法としては、圧延等の公知の手段を用いることが一般的である。また、一方向に送られるコイルを連続的に圧延して、長尺状の扁平コイルを得ることもできる。このとき、隣接する巻回単位71a及び72aが相互に適切に密着するように、圧延の圧力、圧延する角度等を適宜設定することが好ましい。なお、コイルを連続的に圧延すると、強度等の関係でコイルが伸びてしまい、不適当な場合がある。このような場合には、例えば、左巻きコイルと右巻きコイルとを同軸に組み合わせ(絡み合わせ)、その組み合わせた状態で圧延すると乱れがなく良好に押し潰すことができる。なお、ここでコイル状とは、円形に巻いたものに限定されるものではなく、三角形や四角形等の多角形、楕円形あるいは星形等の種々の形状を含む。
【0036】
なお、各巻回単位71a及び72aが相互に接触した接触部75は、ハンダ付け、ハンダメッキ、接着剤、粘着剤等の接着手段や、振動溶接、フラッシュ溶接等の接合手段を用いて接触した線材同士が離れないように固定することで、伝熱抵抗を減少させるための熱的結合を行うことができる。接触部75が固定されることで、各巻回単位71a及び72aの相互の密着が確実に行われ、扁平コイル全体の機械的安定性が向上し、また接触部75により熱的結合がされる。
【0037】
このように製造された扁平コイル70では、金属線材71の巻回単位71a及び金属線材72の巻回単位72aが隣接しており相互に密着している。さらに、扁平コイル70には、隣接した巻回単位71a及び72aが相互に位置ずれして空隙部74及び接触部75が形成されている。具体的には、隣接する巻回単位71a及び72aが幅方向に長さm、長手方向に長さnの距離だけ位置ずれしている。幅方向の位置ずれの長さmは、金属線材71及び72の直径dに対して0.5〜2倍が好ましい。幅方向の位置ずれの長さmが金属線材71及び72の直径dに対して2倍以上の場合には、扁平コイル70の端部における金属線材の密度が低くなることがある。また、幅方向の位置ずれの長さmが金属線材71及び72の直径dの0.5倍未満の場合には、金属線材の重なりが大きく圧延等の手段により扁平に形成する際の成形性が低くなることがある。また、長手方向の位置ずれの長さnは、巻回単位71a及び72aの長手方向の直径kに対して0.3〜0.7倍が好ましく、0.4〜0.6倍が特に好ましい。
【0038】
扁平コイル70は、それぞれ異なる向きに巻回されたコイル状の金属線材71及び72が組み合わされているため、金属線材71及び72が密集して接触部75が密に形成され、熱伝導性が向上し、放熱性能も向上する。また、右巻き及び左巻きの金属線材71及び72が絡み合うため、扁平コイル70の形態が安定し、コイルを連続的に圧延する際に強度等の関係で扁平コイル70が伸びてしまうことがない。
【0039】
金属線材71及び72は、本実施形態では、アルミニウムに5〜10%のケイ素を含有させた合金で構成されている。しかしながら、その他に種々の金属材料から構成することができる。具体的には、アルミニウムのみ若しくはこれとニッケル等の合金、又は銅、銀、金等の金属材料で形成することができる。特に、アルミニウム系の材料は、熱伝導性が高くかつ低コストであるため望ましい。
【0040】
また、金属線材71及び72の構成材料として、その他に金属材料を用いることもできる。本実施形態の太陽熱コレクタ以外の用途に熱交換装置を用いる場合、腐食しやすい環境で使用されることが有り、その場合、チタン、及びその合金、ステンレス等の耐蝕性金属を用いることが好ましい。
【0041】
さらに、金属線材71及び72には、熱伝導性や耐蝕性を高めるために、必要に応じて表面処理を施すことができる。具体的には、例えば、銅めっき又は銀めっき等の表面処理がなされる。また、アルミニウム又はその合金を素材とする場合には、表面に陽極酸化皮膜処理(アルマイト処理)を施すことが好ましい。このような表面処理を施すことにより、耐蝕性が向上するとともに、巻回単位71a及び72aの相互に密着する接触部75の熱抵抗が低下し、全体の放熱性をさらに高めることができる。処理の方法としては、公知の工程を採用することができる。アルマイト処理は、具体的には、処理物を陽極として、シュウ酸や硫酸、リン酸等の液中で電解を行うことにより酸化皮膜を形成する。なお、陽極酸化皮膜処理には、いわゆる白色アルマイトと黒色アルマイトとがあるが、いずれも適用可能である。
【0042】
扁平コイル70の扁平な面の幅は、特に限定されることなく、要求される放熱性能に応じて適宜設定することができる。一般には、径が大きくなると表面積が増加し、放熱性が向上する。具体的には、製造したヒートシンクの用途によっても異なるが、数mm〜数cm程度が適当である。
【0043】
なお、扁平コイル70として、本実施形態では、それぞれ異なる向きに巻回されたコイル状の金属線材71及び72の2本用いているが、2本に限定されることなく、3本以上のコイル状の金属線材を組み合わせることで扁平コイルを構成することもできる。
【0044】
図8は図2の熱交換装置の特に本体部22の流路を説明するための斜視図である。
【0045】
同図に示すように、本体部22の内部に設けられた流路は、その軸断面において複数区画に分割されており、その軸方向に沿って互いに平行に伸長する複数の分割流路25から構成されている。本実施形態において、分割流路25は本体部22の外側表面に沿って1段配列されており、各々の軸断面が矩形形状となっている。もちろん、分割流路25を複数段としても良く、またその軸断面形状も矩形形状以外の形状としても良い。
【0046】
このように、流路を複数の分割流路25で構成し、熱媒体である流体を分散して流すことにより乱流が防止され、渦等のない層流を得ることができ、また、流体の流速を高めることが可能となる。さらに、流体と流路の壁面との間の相境界に形成され、熱伝導を妨げる可能性がある境膜を薄くすることができる。このように、層流が得られること、流速が高められること及び境膜が薄くなることの相乗的な結果として、熱交換効率をより向上させることができる。
【0047】
以上述べたように、本実施形態によれば、本体部22の一方の外側表面22aにのみ、扁平コイルからなるフィン部21が熱的に結合されており、本体部22の内部には熱媒体の流路が形成されている。媒体容器20の外部にこのような表面積の非常に大きいフィン部21を備えることにより、熱吸収効率が非常に高くなり、この熱が熱伝導性の媒体容器20を効率よく伝導して熱媒体に伝わるので、熱交換効率も高くなる。しかも、フィン部21はその扁平コイルの間を空気が流通可能であるため、自然対流によって熱空気の循環が行われることとなり、その意味からも熱交換効率がより高くなると共に、ファン等の強制対流手段を用いることなく熱交換が可能となる。さらに、本実施形態に係る熱交換装置は、非常に安価でかつ効率的に製造することができるため、比較的大面積の場所に設置するのに有利である。さらに、より特定的には、本実施形態においては、流路が複数の分割流路25で構成し、熱媒体である流体を分散して流しているので、熱媒体の乱流が防止され、渦等のない層流を得ることができ、また、流体の流速を高めることが可能となる。その結果、熱交換効率をより一層向上させることができる。その結果、熱エネルギの吸収効率を大幅に高めることができ、熱交換効率を大きく向上させることができる。
【0048】
図9は本発明の他の実施形態において太陽熱コレクタを構成する熱交換装置の一部を概略的に示す斜視図であり、図10は図9の熱交換装置の一部を示す側面図である。
【0049】
これらの図からも明らかのように、本実施形態は、図1〜図8の実施形態において、本体部の他方の外側表面にもフィン部を固着した構成を有するものである。従って、図1〜図8に示した構成要素と同様の構成要素については、同じ参照番号を使用する。
【0050】
即ち、本実施形態における熱交換装置は、熱伝導性の媒体容器20と、この媒体容器20の外側表面に固着され熱的に結合された扁平コイルによるフィン部21及び26とから構成されている。
【0051】
より詳細には、媒体容器20は、本体部22と、この本体部22の両端にそれぞれ連結された第1のヘッダ部23及び第2のヘッダ部24とから構成されており、本体部22の一方の外側表面22aにフィン部21が固着されている。本体部22の他方の外側表面22bにはフィン部26が固着されている。
【0052】
本体部22は、本実施形態では、その軸断面が扁平かつ矩形の形状を有しており、内部は空洞となっており、これが熱媒体をその軸方向に沿って流す流路を構成している。なお、本体部22を軸断面が扁平な矩形形状とすることなく、例えば軸断面が厚みのある矩形形状、例えば正方形に近い矩形形状、としても良いことは明らかである。
【0053】
第1のヘッダ部23は、本体部22の後述する分割流路を連結するマニフォールド部23aと、媒体管路11(図1)に螺合接続可能に構成された継手部23bとを備えている。同様に、第2のヘッダ部24は、本体部22の分割流路を連結するマニフォールド部24aと、媒体管路11に螺合接続可能に構成された継手部24bとを備えている。
【0054】
媒体容器20を構成する本体部22、第1のヘッダ部23及び第2のヘッダ部24は、熱伝導性の高い材料で構成されているが、本実施形態では、アルミニウムに5〜10%のケイ素を含有させた合金を含むクラッド板で形成されている。アルミニウムのみ若しくはこれとニッケル等の合金、銅、銀、金等の金属材料、又は炭素材料等から構成しても良い。
【0055】
フィン部21は、本実施形態においては、本体部22の一方の外側表面22a上に、本体部22の軸方向に沿って互いに平行に配列されかつ外側表面22aに対して扁平面が実質的に垂直となるように固着された4列の扁平コイルから構成されている。また、フィン部26は、本実施形態においては、本体部22の他方の外側表面22b上に、本体部22の軸方向に沿って互いに平行に配列されかつ外側表面22bに対して扁平面が実質的に垂直となるように固着された4列の扁平コイルから構成されている。
【0056】
列数は4列に限定されるものではなく、1〜3列、5列以上であっても良い。また、列状に配置されていなくとも良い。さらに、外側表面22a又は22bと扁平面とが実質的に垂直でなくとも、傾斜していれば良い。
【0057】
本体部22の一方の外側表面22a及びフィン部21、並びに本体部22の他方の外側表面22b及びフィン部26は、互いに熱的に結合されている。本実施形態では、具体的には、拡散接合(拡散溶接)によって両者が固着されている。拡散接合を用いることにより、最小面積で両者の固着を図ることが可能となる。
【0058】
本体部22の一方の外側表面22a及び他方の外側表面22bに、各断面が例えば凹状、U字状又は部分円形状の複数の溝を軸方向に沿って互いに平行に形成し、これら複数の溝に扁平コイルの一部をそれぞれ嵌合し、例えばハンダ又は熱伝導性接着剤等で固着することにより本体部とフィン部とを熱的に結合しても良い。ハンダ付け以外に、超音波溶接、振動溶接、フラッシュ溶接等の接合手段を用いて固着しても良い。熱伝導性接着剤の例としては、金、銀、若しくはニッケル等の金属粉、アルミナ、窒化アルミナ、窒化ケイ素、若しくはカーボン粉等を、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、若しくはウレタン樹脂等のバインダに配合したもの等がある。また、本体部22と扁平コイルとの間に熱伝導性の層を付加的に設け、この層の表面に扁平コイルを固着するようにしても良い。
【0059】
扁平コイルの構成については、図1〜図8の実施形態において、図7を参照して説明した通りである。
【0060】
図11は図9の熱交換装置の特に本体部22の流路を説明するための斜視図である。
【0061】
同図に示すように、本体部22の内部に設けられた流路は、その軸断面において複数区画に分割されており、その軸方向に沿って互いに平行に伸長する複数の分割流路25から構成されている。本実施形態において、分割流路25は本体部22の外側表面に沿って1段配列されており、各々の軸断面が矩形形状となっている。もちろん、分割流路25を複数段としても良く、またその軸断面形状も矩形形状以外の形状としても良い。
【0062】
このように、流路を複数の分割流路25で構成し、熱媒体である流体を分散して流すことにより乱流が防止され、渦等のない層流を得ることができ、また、流体の流速を高めることが可能となる。その結果、熱交換効率をより向上させることができる。
【0063】
以上述べたように、本実施形態によれば、本体部22の一方の外側表面22aに扁平コイルからなるフィン部21が熱的に結合されており、本体部22の他方の外側表面22bに扁平コイルからなるフィン部26が熱的に結合されており、本体部22の内部には熱媒体の流路が形成されている。媒体容器20の外部にこのような表面積の非常に大きいフィン部21及び26を備えることにより、熱吸収効率が非常に高くなり、この熱が熱伝導性の媒体容器20を効率よく伝導して熱媒体に伝わるので、熱交換効率も高くなる。しかも、フィン部21及び26はその扁平コイルの間を空気が流通可能であるため、自然対流によって熱空気の循環が行われることとなり、その意味からも熱交換効率がより高くなると共に、ファン等の強制対流手段を用いることなく熱交換が可能となる。さらに、本実施形態に係る熱交換装置は、非常に安価でかつ効率的に製造することができるため、比較的大面積の場所に設置するのに有利である。さらに、より特定的には、本実施形態においては、流路が複数の分割流路25で構成し、熱媒体である流体を分散して流しているので、熱媒体の乱流が防止され、渦等のない層流を得ることができ、また、流体の流速を高めることが可能となる。その結果、熱交換効率をより一層向上させることができる。その結果、熱エネルギの吸収効率を大幅に高めることができ、熱交換効率を大きく向上させることができる。
【0064】
図12は本発明のさらに他の実施形態において太陽熱コレクタを構成する熱交換装置の特に本体部の流路を説明するための断面図である。
【0065】
同図から分かるように、本実施形態においては、本体部22の内部の分割流路25内に、多数の炭素繊維27が軸方向に沿って密に充填されている。これにより、炭素繊維27間の間隙による毛細管現象によって流体が分割流路25内を移動することとなり、ポンプ等の強制循環手段が不要となる。
【0066】
なお、本実施形態は、本体部における流路の内部が異なっているのみであり、その他の構成、作用効果及び変更態様は、図1〜図8の実施形態又は図9〜図11の実施形態の場合と同様である。
【0067】
以上述べた実施形態は、全て、太陽熱温水供給システムの太陽熱コレクタに関するものであるが、本発明の熱交換装置は、太陽熱コレクタ以外の熱交換を必要とする種々の用途に適用できることは言うまでもない。
【0068】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態として太陽熱温水供給システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1の太陽熱コレクタを構成する熱交換装置の構成例の全体を示す上面図である。
【図3】図2の熱交換装置の全体を示す底面図である。
【図4】図2の熱交換装置の一部を示す斜視図である。
【図5】図2の熱交換装置の一部を示す上面図である。
【図6】図2の熱交換装置の一部を示す側面図である。
【図7】図2の熱交換装置におけるフィン部の扁平コイルの構成を示す平面図である。
【図8】図2の熱交換装置の特に本体部の流路を説明するための斜視図である。
【図9】本発明の他の実施形態において太陽熱コレクタを構成する熱交換装置の一部を概略的に示す斜視図である。
【図10】図9の熱交換装置の一部を示す側面図である。
【図11】図9の熱交換装置の特に本体部の流路を説明するための斜視図である。
【図12】本発明のさらに他の実施形態において太陽熱コレクタを構成する熱交換装置の特に本体部の流路を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0070】
10 太陽熱コレクタ
11 媒体管路
12 熱交換器
13 ポンプ
14 貯湯槽
15 ヒータ
20 媒体容器
21、26 フィン部
22 本体部
22a 一方の外側表面
22b 他方の外側表面
23 第1のヘッダ部
23a、24a マニフォールド部
23b、24b 継手部
24 第2のヘッダ部
25 分割流路
27 炭素繊維
70 扁平コイル
71、72 金属線材
71a、72a 巻回単位
73 扁平な面
74 空隙部
75 接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体である流体を流すための流路が軸方向に沿って内部に設けられている熱伝導性の媒体容器と、該媒体容器の少なくとも1つの外側表面に固着されて熱的に結合されており、金属線材をコイル状に連続的に巻回し扁平形状とした扁平コイルとを備えたことを特徴とする熱交換装置。
【請求項2】
前記媒体容器の前記流路が、その軸断面において複数区画に分割されており互いに平行に伸長する複数の分割流路からなることを特徴とする請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項3】
前記扁平コイルが、前記媒体容器の1つの外側表面のみに固着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換装置。
【請求項4】
前記扁平コイルが、前記媒体容器の複数の外側表面に固着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換装置。
【請求項5】
前記媒体容器が、軸断面が扁平かつ矩形の形状を有しており内部に前記流路が設けられた本体部と、該本体部の両端にそれぞれ連結されており媒体管路に接続可能に構成された2つのヘッダ部とを備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項6】
前記扁平コイルが、前記媒体容器の軸方向に沿って互いに平行に複数列配列されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項7】
前記扁平コイルが、前記媒体容器の外側表面に対して、その扁平面が実質的に垂直となるように固着されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項8】
前記媒体容器に対する前記扁平コイルの固着が、拡散接合によって行われていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項9】
前記流路内に炭素繊維が軸方向に沿って充填されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の熱交換装置を用いたことを特徴とする太陽熱コレクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−25472(P2010−25472A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188983(P2008−188983)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(501195670)株式会社事業創造研究所 (12)