説明

熱伝導部品及びその製造方法と冷却システム及びMRI設備

【課題】超電導磁石冷却システムで使用される熱伝導部品及び製造方法、超電導磁石冷却システム、MRI設備を提案する。その熱伝導部品に関し、原材料コスト及び重量を低減し、溶接サイクルを短縮して製造コストを低減する。
【解決手段】本熱伝導部品は、アルミニウムブロックと、環状の第1ステンレススチール伝導部材と、第1薄壁チューブと、を備え、前記アルミニウムブロックに貫通孔があり、前記第1ステンレススチール伝導部材が、端部で前記アルミニウムブロックの一端面に摩擦溶接され且つ前記アルミニウムブロックから離隔した端部に環状段差を有し、前記第1薄壁チューブの端部が、前記第1ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導磁石用の冷却システムに関し、特に、超電導磁石冷却システムで使用される熱伝導部品及びその製造方法、超電導磁石冷却システム、MRI(magnetic resonance imaging)設備に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI設備の超電導磁石冷却システムなど、超電導磁石を冷却するための一般的な超電導磁石冷却システムにおいて、超電導磁石は通常、外部真空チャンバと隣り合わせて配置されるクライオゲン(cryogen)容器中に設置される。真空チャンバとクライオゲン容器との間の間隙は、クライオゲン容器に対し効果的な断熱を提供できるように排気される。しかしながら、真空チャンバの外側とクライオゲン容器の内部との間の比較的大きな温度差のために、真空チャンバとクライオゲン容器との間には相当な熱放射が生じる。その真空チャンバとクライオゲン容器との間の熱放射量を低減するべく、通常、真空チャンバとクライオゲン容器との間には熱放射シールドが提供される。
【0003】
この他、既知のいくつかの冷却方法のいずれかにおいて、超電導磁石は、通常、液体冷却剤(液体ヘリウムなど)の沸騰、蒸発を生じさせることにより、所定の温度、すなわち運転温度に冷却される。冷却剤の消費及び蒸発速度を抑え、冷却剤の補充が必要となるまでに長時間、磁石冷却が維持されるように、一般的に、冷却剤の蒸発点以下への冷却を実行可能な冷却装置が提供される。この冷却装置は、熱放射シールドを冷却するだけでなく、蒸発した冷却剤蒸気の少なくとも一部を液化して液体状態へ戻すことができる。
【0004】
このような冷却装置は一般的に、低温を提供する低温ヘッドを使用し、該低温ヘッドによる低温を熱放射シールド及び冷却剤蒸気へ伝達する熱伝導部品が使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、超電導磁石冷却システムで使用される熱伝導部品及びその製造方法を提案し、熱伝導部品に関する原材料コスト及び製造コストを低減する。また、本発明は、超電導磁石冷却システム及びMRI設備を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、超電導磁石冷却システムで使用される熱伝導部品であって、
アルミニウムブロックと、環状の第1ステンレススチール伝導部材と、第1薄壁チューブと、を備え、
前記アルミニウムブロックに貫通孔があり、
前記第1ステンレススチール伝導部材が、端部で前記アルミニウムブロックの一端面に摩擦溶接され(friction welded)且つ前記アルミニウムブロックから離隔した端部に環状段差を有し、
前記第1薄壁チューブの端部が、前記第1ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接されている、熱伝導部品を提供する。
【0007】
選択的に、前記第1薄壁チューブの端部は、アルゴンアーク溶接により、前記第1ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接されている。
【0008】
選択的に、この熱伝導部品は、環状の第2ステンレススチール伝導部材と、第2薄壁チューブと、をさらに備え、
該第2ステンレススチール伝導部材は、端部で前記アルミニウムブロックの他端面に摩擦溶接され且つ前記アルミニウムブロックから離隔した端部に環状段差を有し、
前記第2薄壁チューブの端部は、前記第2ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接されている。
【0009】
選択的に、前記第2薄壁チューブの端部は、アルゴンアーク溶接により、前記第2ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接されている。
【0010】
選択的に、本熱伝導部品は、2つのアルミニウム端子を含む銅ブレイド(braid:編組線)をさらに備える。その一方の端子は、ネジ及び溶接のいずれか又は両方により前記アルミニウムブロックに接続され、他方の端子は、ネジ及び溶接のいずれか又は両方により、超電導磁石冷却システムの熱放射シールド部材へ接続される。
【0011】
本発明は、低温ヘッドを含んだ超電導磁石冷却システムもまた提供する。この超電導磁石冷却システムは、請求項1〜5のいずれか1項に係る熱伝導部品を含み、そのアルミニウムブロックの貫通孔に前記低温ヘッドが嵌め込まれている。
【0012】
選択的に、当該熱伝導部品は、熱放射シールド部材も含み、前記銅ブレイドの他方の端子が、ネジ及び溶接のいずれか又は両方により前記熱放射シールド部材へ接続されている。
【0013】
本発明は、上記の超電導磁石冷却システムを含むMRI設備もまた提供する。
【0014】
本発明は、また、超電導磁石冷却システムで使用する熱伝導部品を製造する方法を提供する。この製造方法は、
A 環状の第1ステンレススチール伝導部材の端部をアルミニウムブロックの一端面へ摩擦溶接し、
B 該アルミニウムブロックから離隔した前記第1ステンレススチール伝導部材の端部に環状段差を加工し、
C 前記アルミニウムブロックに、低温ヘッドに相応する貫通孔を加工し、
D 第1ステンレススチール薄壁チューブの端部を前記第1ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接する、ことを含む。
【0015】
前記ステップAは、環状の第2ステンレススチール伝導部材の端部を前記アルミニウムブロックの他端面へ摩擦溶接することをさらに含む。前記ステップBは、前記アルミニウムブロックから離隔した前記第2ステンレススチール伝導部材の端部に環状段差を加工することをさらに含む。前記ステップDは、第2ステンレススチール薄壁チューブの端部を前記第2ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接することをさらに含む。
【0016】
本方法は、前記環状の第1ステンレススチール伝導部材の端部を前記アルミニウムブロックの一端面と摩擦溶接するステップの前に、くさび形断面をもつ第1環状円錐形位置決め溝を前記アルミニウムブロックの一端面に加工すること、及び、前記環状の第1ステンレススチール伝導部材の端部管壁を加工してくさび形断面をもつ第1環状円錐形位置決め先端にすることをさらに含む。前記環状の第1ステンレススチール伝導部材の端部を前記アルミニウムブロックの一端面と摩擦溶接するステップは、前記第1ステンレススチール伝導部材の第1環状円錐形位置決め先端を、前記アルミニウムブロックの第1環状円錐形位置決め溝内に配置し、摩擦溶接を実施することを含む。
【0017】
選択的に、本方法は、前記環状の第2ステンレススチール伝導部材の端部を前記アルミニウムブロックの他端面と摩擦溶接するステップの前に、くさび形断面をもつ第2環状円錐形位置決め溝を前記アルミニウムブロックの他端面に加工すること、及び、前記環状の第2ステンレススチール伝導部材の端部管壁を加工してくさび形断面をもつ第2環状円錐形位置決め先端にすることをさらに含む。前記環状の第2ステンレススチール伝導部材の端部を前記アルミニウムブロックの他端面と摩擦溶接するステップは、前記第2ステンレススチール伝導部材の第2環状円錐形位置決め先端を、前記アルミニウムブロックの第2環状円錐形位置決め溝内に配置し、摩擦溶接を実施することを含む。
【0018】
選択的に、本方法は、銅ブレイドの2端にそれぞれアルミニウム端子を加圧溶接し、この銅ブレイドの一方の端子を、ネジ及び溶接のいずれか又は両方により前記アルミニウムブロックに接続し、前記銅ブレイドの他方の端子を、ネジ及び溶接のいずれか又は両方により、超電導磁石冷却システムの熱放射シールド部材へ接続することをさらに含む。
【0019】
従来の熱伝導部品で使用される銅ブロックに代わる本発明のアルミニウムブロックの使用が、熱伝導部品に関する原材料コスト及び重量の低減を可能にすることは、上記解決手段から明らかである。さらに、従来の熱伝導部品に使用される真空ロウ付けを摩擦溶接に置き換えることにより、溶接サイクルを短縮することができ、製造コストを減らすことができる。加えて、アルミニウムブロックとステンレススチール薄壁チューブとの間にステンレススチール伝導部材を追加配設したことにより、ステンレススチール薄壁チューブの変形が溶接に影響せず、良質の溶接が達成される。
【0020】
また、ステンレススチール伝導部材をアルミニウムブロックと摩擦溶接する前のアルミニウムブロックの環状円錐形位置決め溝及びステンレススチール伝導部材の環状円錐形位置決め先端の加工により、両者の配置が良好となり、摩擦溶接が簡便になる。
【0021】
また、本発明において、簡便でシンプルなアルゴンアーク溶接が、第1ステンレススチール薄壁チューブを第1ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接するために使用可能であり、これにより、熱伝導部品の製造工程が簡素化される。
【0022】
また、従来の銅ブレイドの銅端子をアルミニウム端子に置き換えたことにより、銅ブレイドとアルミニウムブロックとの間、及び銅ブレイドと熱放射シールド部材との間に、アルミニウム−アルミニウム接続が形成され、これらの間の接触熱抵抗を軽減して熱伝達能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】現在使用されている既知の熱伝導部品の部分的構造概略図。
【図2】本発明の実施形態に係る超電導磁石冷却システムにおいて使用される熱伝導部品を製造する方法のフローチャート。
【図3】図3a〜図3cは、アルミニウムブロックの一端面に対する環状の外側ステンレススチール伝導部材端部の摩擦溶接の構造概略図を示す。
【図4】図4a〜図4cは、図3aに示す外側ステンレススチール伝導部材のアルミニウムブロックから離隔した端部における環状段差の加工、及び図3a〜図3cに示すアルミニウムブロックの貫通孔の加工、の構造概略図を示す。
【図5】図5a〜図5cは、外側ステンレススチール薄壁チューブがアルゴンアーク溶接を使用して図4a〜図4cに示す外側ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接された構造概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の上記及びその他の特徴及び効果を当業者がより明確に理解することができるように、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1は、現在使用されている既知の熱伝導部品の部分的構造概略図を示す。図示のように、熱伝導部品は、真空チャンバ1、熱放射シールド部材2、及びクライオゲン容器3の側壁を通して、クライオゲン容器3と連絡している。この熱伝導部品は、低温ヘッドを嵌め込む先細り貫通孔を有する銅ブロック4と、銅ブロック4の両側にそれぞれ真空ロウ付けにより溶接された外側ステンレススチール薄壁チューブ5及び内側ステンレススチール薄壁チューブ6と、2つの銅端子をそれぞれ介して銅ブロック4及び熱放射シールド部材2に接続された銅ブレイド7と、を備える。低温ヘッドは、外側ステンレススチール薄壁チューブ5及び銅ブロック4の貫通孔によって熱伝導部品へ嵌め込まれる。低温ヘッドにより提供される低温は、一方で、銅ブロック4及び銅ブレイド7を通し熱放射シールド部材2へ伝達されて熱放射シールド部材2の冷却を達成し、他方で、内側ステンレススチール薄壁チューブ6及び他の部品を経てクライオゲン蒸気へ伝えられ、クライオゲン蒸気を液体状態へ戻す液化を生じさせる。
【0026】
この熱伝導部品の場合、銅ブロック4は比較的良好な熱伝導特性をもつが、非常に高価である。さらに、銅ブロック4を2つのステンレススチール薄壁チューブへ溶接する真空ロウ付けは金属を良好に結合するけれども、一般的に16時間と、かなり長時間を要し、初期準備を考慮すれば、真空ロウ付けを使用した場合の製造サイクルは、一般的に20時間以上になる。その結果、現行の熱伝導部品には比較的高い原材料及び製造コストがかかっている。
【0027】
本発明によれば、上記の銅ブロック4をアルミニウムブロックに置き換えることにより、熱伝導部品に関する原材料のコストを低減できるだけでなく、熱伝導部品の重量を減少させることも可能となる。さらに、上記の銅とステンレススチールとの間の真空ロウ付けを、アルミニウムとステンレススチールとの間の摩擦溶接に置き換えることにより、溶接サイクルが大幅に短縮され、熱伝導部品の製造コストが低減される。また、本発明の場合、アルミニウムブロックとステンレススチール薄壁チューブとの間に環状のステンレススチール伝導部材が追加配設されることにより、ステンレススチール薄壁チューブがアルミニウムブロックに直接摩擦溶接されるようにした場合に簡単に起こる変形の問題を、回避することができる。
【0028】
実際の応用例においては、環状の外側ステンレススチール伝導部材がアルミニウムブロックと外側ステンレススチール薄壁チューブとの間に追加されるのに加えて、アルミニウムブロックと内側ステンレススチール薄壁チューブとの間にも環状の内側ステンレススチール伝導部材が追加され得る。アルミニウムブロックと外側ステンレススチール薄壁チューブとの間に環状の外側ステンレススチール伝導部材を追加するだけで、アルミニウムブロックと内側ステンレススチール薄壁チューブとの間は、真空溶接、摩擦溶接又はその他の手段で溶接することも可能である。この逆に、アルミニウムブロックと内側ステンレススチール薄壁チューブとの間に環状の内側ステンレススチール伝導部材を追加するだけで、アルミニウムブロックと外側ステンレススチール薄壁チューブとの間は、真空ロウ付け、摩擦溶接又はその他の手段で溶接することも可能である。
【0029】
本発明の目的、解決手段、効果をより明確にするため、以下に実施形態を例示して本発明を詳述する。
【0030】
図2は、本発明の実施形態に係る超電導磁石冷却システムで使用される熱伝導部品を製造する方法のフローチャートである。
【0031】
図3a〜図5cは、図2に示す製造方法に対応した加工構造を例示する。これらの図においては、アルミニウムブロックと外側ステンレススチール薄壁チューブとの間に追加配設される外側ステンレススチール伝導部材の場合を例示している。
【0032】
図2に示すように、本製造方法は、以下に示すステップを含む。
【0033】
ステップ201において、環状の第1ステンレススチール伝導部材の端部をアルミニウムブロックの一端面へ摩擦溶接する。この第1ステンレススチール伝導部材の内径は、第1ステンレススチール薄壁チューブの内径よりも小さい。且つ、第1ステンレススチール伝導部材の外径は、第1ステンレススチール薄壁チューブの外径よりも大きい。
【0034】
図3a〜図3cは、環状の外側ステンレススチール伝導部材8の端部とアルミニウムブロック9の一端面との摩擦溶接の構造概略図である。図3aは上方からの平面図、図3bは正面の断面図、図3cは図3bの一部拡大図を示す。
【0035】
好適な実施形態では、アルミニウムブロックの一端面に、くさび形断面をもつ第1環状円錐形位置決め溝が加工される。そして、環状の第1ステンレススチール伝導部材の端部管壁が加工されてくさび形断面をもつ第1環状円錐形位置決め先端とされる。次いで、第1ステンレススチール伝導部材の第1環状円錐形位置決め先端が、アルミニウムブロックの第1環状円錐形位置決め溝内に配置され、摩擦溶接が実施される。この第1環状円錐形位置決め溝の深さは、例えば2mm、3mm、又は4mmとする。
【0036】
摩擦溶接では、他の溶接でアルミニウムとステンレススチールとの間に生じる金属間化合物を回避することが可能で、両者間溶接部位のアルミニウムの強さを獲得することができる。さらに、摩擦溶接を使用した場合の溶接サイクルは、1分以下に短縮され得る。
【0037】
ステップ202において、アルミニウムブロックから離隔した第1ステンレススチール伝導部材の端部に環状段差を加工する。
【0038】
図4a〜図4cは、図3aに示す外側ステンレススチール伝導部材8のアルミニウムブロック9から離隔した端部における環状段差81の加工の構造概略図である。図4aは上方からの平面図、図4bは正面の断面図、図4cは図4bの一部拡大図を示す。
【0039】
好適な実施形態では、摩擦溶接工程でのチャッキングを容易にするために、第1ステンレススチール伝導部材は若干長く設定される。そして摩擦溶接が終了した後に、第1ステンレススチール伝導部材の余分部分が削除され、その削除後に残った端部面に環状段差が加工される。
【0040】
ステップ203において、低温ヘッドを嵌める貫通孔をアルミニウムブロックに加工する。
【0041】
図4a〜図4cは、貫通孔、すなわち図3aに示すアルミニウムブロックにおける円錐形貫通孔91の加工を示す構造概略図でもある。
【0042】
この実施形態の場合、真空溶接のときに必然であるような、摩擦溶接以前の貫通孔加工を必要としないので、アルミニウムブロックの貫通孔は、後続の当ステップにおいて加工され得る。したがって、当該貫通孔は、最適なアングル及びサイズへ直接的に加工可能で、真空溶接のときに必然である、熱処理で生じる歪みの考慮、又は、溶接完了後の貫通孔に対する二次加工が、不要である。
【0043】
ステップ204において、第1ステンレススチール薄壁チューブの端部を、第1ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接する。
【0044】
図5a〜図5cは、外側ステンレススチール薄壁チューブ5が図4a〜図4cに示す外側ステンレススチール伝導部材8の環状段差に溶接されたところの構造概略図である。図5aは上方からの平面図、図5bは正面の断面図、図5cは図5bの一部拡大図を示す。
【0045】
好適な実施形態では、本溶接は、アルゴンアーク溶接又はその他の溶接手段を使用して実施可能であり、すみ肉溶接も使用され得る。本実施形態でアルゴンアーク溶接を使用する場合は、溶接手段がシンプルで簡易である。
【0046】
第1ステンレススチール薄壁チューブは、外側ステンレススチール薄壁チューブ又は内側ステンレススチール薄壁チューブであり得る。これに応じて、第1ステンレススチール伝導部材は、外側ステンレススチール伝導部材又は内側ステンレススチール伝導部材であり得る。
【0047】
さらに、ステップ201は、環状の第2ステンレススチール伝導部材をアルミニウムブロックの他端面へ摩擦溶接することをさらに含み得る。ステップ202は、その第2ステンレススチール伝導部材のアルミニウムブロックから離隔した端部に環状段差を加工することをさらに含み得る。ステップ204は、その第2ステンレススチール伝導部材の環状段差に第2ステンレススチール薄壁チューブの端部を溶接することをさらに含み得る。
【0048】
第2ステンレススチール伝導部材及び第2ステンレススチール薄壁チューブに関する具体的工程は、上述した第1ステンレススチール伝導部材及び第1ステンレススチール薄壁チューブに関する具体的工程と同様であり、詳細を繰り返し説明する必要はない。
【0049】
第1ステンレススチール薄壁チューブが外側ステンレススチール薄壁チューブである場合、第2ステンレススチール薄壁チューブは内側ステンレススチール薄壁チューブであり、その逆の場合も同様である。これに対応して、第1ステンレススチール伝導部材が外側ステンレススチール伝導部材である場合、第2ステンレススチール伝導部材は内側ステンレススチール伝導部材であり、その逆の場合も同様である。
【0050】
超電導磁石冷却システム内の熱放射シールド部材は一般的にアルミニウム材である。一方、図1に示す例における銅ブレイドの2端子は銅材であるから、該銅ブレイドの端子が熱放射シールド部材に接続されるときには両者間の接触熱抵抗がかなり高くなり、両者間の熱伝達能力に影響する。
【0051】
本発明の場合、銅ブレイドと熱放射シールド部材との間の熱抵抗を低減するために、銅ブレイドの2端子をアルミニウム端子へ変更する配慮が加えられる。すなわち、図2に示す製造方法は、銅ブレイドの2端子にそれぞれアルミニウム端子を加圧溶接し、該銅ブレイドの一方の端子をネジ及び溶接のいずれか又は両方によりアルミニウムブロックへ接続し、該銅ブレイドの他方の端子を、ネジ及び溶接のいずれか又は両方により、超電導磁石冷却システムの熱放射シールド部材へ接続すること、をさらに含み得る。その溶接手段は、アルゴンアーク溶接であり得る。これにより、銅ブレイドの2端子とアルミニウムブロック及び熱放射シールド部材との間の接続は両方ともAl−Al接続となり、接触熱抵抗が低下してこれらの間の熱伝達能力が向上する。
【0052】
同様にして、本発明の実施形態によれば、アルミニウムブロックと、環状の第1ステンレススチール伝導部材と、第1薄壁チューブと、を備えた、超電導磁石冷却システムにおいて使用される熱伝導部品も提供される。
【0053】
そのアルミニウムブロックには低温ヘッドを嵌める貫通孔が形成される。
【0054】
その第1ステンレススチール伝導部材は、一端部がアルミニウムブロックの一端面へ摩擦溶接され且つ該アルミニウムブロックから離隔した端部に環状段差を有する。
【0055】
その第1薄壁チューブの端部は、第1ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接される。この第1薄壁チューブの端部を第1ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接するために、アルゴンアーク溶接が使用され得る。
【0056】
上記の製造方法におけるのと同様に、該熱伝導部品は、環状の第2ステンレススチール伝導部材と、第2薄壁チューブと、をさらに備え得る。
【0057】
その第2ステンレススチール伝導部材は、一端部がアルミニウムブロックの他端面へ摩擦溶接され且つ該アルミニウムブロックから離隔した端部に環状段差を有する。
【0058】
その第2薄壁チューブの端部は、第2ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接される。同様に、この第2薄壁チューブの端部を第2ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接するために、アルゴンアーク溶接が使用され得る。
【0059】
ステンレススチールの第1薄壁チューブは外側ステンレススチール薄壁チューブ又は内側ステンレススチール薄壁チューブであり得る。これに対応して、第1ステンレススチール伝導部材は外側ステンレススチール伝導部材又は内側ステンレススチール伝導部材であり得る。
【0060】
さらに、ステンレススチールの第1薄壁チューブが外側ステンレススチール薄壁チューブである場合、ステンレススチールの第2薄壁チューブは内側ステンレススチール薄壁チューブであり、この逆の場合も同様である。これに対応して、第1ステンレススチール伝導部材が外側ステンレススチール伝導部材である場合、第2ステンレススチール伝導部材は内側ステンレススチール伝導部材であり、この逆の場合も同様である。
【0061】
本発明に係るこの熱伝導部品は、2つのアルミニウム端子を有する銅ブレイドをさらに含み得る。該銅ブレイドの一方の端子は、ネジ及び溶接のいずれか又は両方によりアルミニウムブロックに接続され、他方の端子は、ネジ及び溶接のいずれか又は両方により、超電導磁石冷却システムの熱放射シールド部材に接続される。
【0062】
本発明に係る超電導磁石冷却システムは、低温ヘッドと、上述の熱伝導部品と、を含み、そのアルミニウムブロックの貫通孔に低温ヘッドが嵌め込まれる。
【0063】
この超電導磁石冷却システムは、熱放射シールド部材も含み得る。銅ブレイドの前記他方の端子は、ネジ及び溶接のいずれか又は両方により熱放射シールド部材に接続される。
【0064】
本発明に係るMRI設備は、上述の超電導磁石冷却システムを含む。
【0065】
本発明において、超電導磁石冷却システムで使用される熱伝導部品及びその製造方法、超電導磁石冷却システム、MRI設備が開示される。その熱伝導部品は、アルミニウムブロックと、環状の第1ステンレススチール伝導部材と、第1薄壁チューブと、を備え、前記アルミニウムブロックに貫通孔があり、前記第1ステンレススチール伝導部材が、端部で前記アルミニウムブロックの一端面に摩擦溶接され且つ該アルミニウムブロックから離隔した端部に環状段差を有し、前記第1薄壁チューブの端部が、前記第1ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接されている。本発明によれば、原材料コスト及び熱伝導部品の重量を低減することができ、また、溶接サイクルを短縮して製造コストを低減することもできる。
【0066】
以上の実施形態は、本発明の好適な形態を例示しただけであり、本発明を限定する目的をもつものではなく、本発明の思想及び原理から逸脱することなく行われるすべての修正、同等物の代用、改良が特許請求の範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0067】
1 真空チャンバ
2 熱放射シールド部材
3 クライオゲン容器
4 銅ブロック
5 外側ステンレススチール薄壁チューブ
6 内側ステンレススチール薄壁チューブ
7 銅ブレイド
8 第1ステンレススチール伝導部材
9 アルミニウムブロック
81 環状段差
91 貫通孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導磁石冷却システムで使用される熱伝導部品であって、
アルミニウムブロックと、環状の第1ステンレススチール伝導部材と、第1薄壁チューブと、を備え、
前記アルミニウムブロックに貫通孔があり、
前記第1ステンレススチール伝導部材が、端部で前記アルミニウムブロックの一端面に摩擦溶接され且つ前記アルミニウムブロックから離隔した端部に環状段差を有し、
前記第1薄壁チューブの端部が、前記第1ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接されている、熱伝導部品。
【請求項2】
前記第1薄壁チューブの端部は、アルゴンアーク溶接により、前記第1ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接されている、請求項1に記載の熱伝導部品。
【請求項3】
環状の第2ステンレススチール伝導部材と、第2薄壁チューブと、をさらに備え、
前記第2ステンレススチール伝導部材が、端部で前記アルミニウムブロックの他端面に摩擦溶接され且つ前記アルミニウムブロックから離隔した端部に環状段差を有し、
前記第2薄壁チューブの端部が、前記第2ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接されている、請求項1又は請求項2に記載の熱伝導部品。
【請求項4】
前記第2薄壁チューブの端部は、アルゴンアーク溶接により、前記第2ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接されている、請求項3に記載の熱伝導部品。
【請求項5】
2つのアルミニウム端子を含む銅ブレイドをさらに備え、
前記銅ブレイドの一方の端子が、ネジ及び溶接のいずれか又は両方により、前記アルミニウムブロックに接続され、
前記銅ブレイドの他方の端子が、ネジ及び溶接のいずれか又は両方により、超電導磁石冷却システムの熱放射シールド部材へ接続される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱伝導部品。
【請求項6】
低温ヘッドと、請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱伝導部品と、を含み、
前記アルミニウムブロックの貫通孔に前記低温ヘッドが嵌め込まれている、超電導磁石冷却システム。
【請求項7】
熱放射シールド部材をさらに含み、
前記銅ブレイドの他方の端子が、ネジ及び溶接のいずれか又は両方により、前記熱放射シールド部材へ接続されている、請求項6に記載の超電導磁石冷却システム。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の超電導磁石冷却システムを含む、MRI設備。
【請求項9】
超電導磁石冷却システムで使用する熱伝導部品の製造方法であって、
A 環状の第1ステンレススチール伝導部材の端部をアルミニウムブロックの一端面へ摩擦溶接し、
B 該アルミニウムブロックから離隔した前記第1ステンレススチール伝導部材の端部に環状段差を加工し、
C 前記アルミニウムブロックに、低温ヘッドに相応する貫通孔を加工し、
D 第1ステンレススチール薄壁チューブの端部を前記第1ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接する、
ことを含む製造方法。
【請求項10】
前記ステップAは、環状の第2ステンレススチール伝導部材の端部を前記アルミニウムブロックの他端面へ摩擦溶接することをさらに含み、
前記ステップBは、前記アルミニウムブロックから離隔した前記第2ステンレススチール伝導部材の端部に環状段差を加工することをさらに含み、
前記ステップCは、第2ステンレススチール薄壁チューブの端部を前記第2ステンレススチール伝導部材の環状段差に溶接することをさらに含む、
請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
くさび形断面をもつ第1環状円錐形位置決め溝を前記アルミニウムブロックの一端面に加工すること、
前記環状の第1ステンレススチール伝導部材の端部管壁を加工してくさび形断面をもつ第1環状円錐形位置決め先端にすること、
前記第1ステンレススチール伝導部材の第1環状円錐形位置決め先端を、前記アルミニウムブロックの第1環状円錐形位置決め溝内に配置し、前記摩擦溶接を実施すること、
をさらに含む請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
くさび形断面をもつ第2環状円錐形位置決め溝を前記アルミニウムブロックの他端面に加工すること、
前記環状の第2ステンレススチール伝導部材の端部管壁を加工してくさび形断面をもつ第2環状円錐形位置決め先端にすること、
前記第2ステンレススチール伝導部材の第2環状円錐形位置決め先端を、前記アルミニウムブロックの第2環状円錐形位置決め溝内に配置し、前記摩擦溶接を実施すること、
をさらに含む請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
銅ブレイドの2端にそれぞれアルミニウム端子を加圧溶接し、
前記銅ブレイドの一方の端子を、ネジ及び溶接のいずれか又は両方により、前記アルミニウムブロックに接続し、
前記銅ブレイドの他方の端子を、ネジ及び溶接のいずれか又は両方により、超電導磁石冷却システムの熱放射シールド部材へ接続する、
ことをさらに含む請求項9〜12のいずれか1項に記載の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−98549(P2013−98549A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−230892(P2012−230892)
【出願日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】