説明

熱供給システム

【課題】消費者への熱供給を行いつつ、エネルギーロスを抑制可能な熱供給システムを提供する。
【解決手段】太陽熱を集める太陽熱集熱器1と、熱媒を貯え、太陽熱集熱器1が集めた熱を熱媒を用いて蓄える蓄熱装置2と、蓄熱装置2が貯えている熱媒をそれぞれが熱消費装置11を有する複数の消費者設備10に循環可能にさせる熱媒循環路3と、熱媒循環路3における熱媒の循環状態を調節する循環状態調節装置Cと、循環状態調節装置Cの動作を制御する運転制御装置4とを備える熱供給システムSであって、運転制御装置4は、循環状態調節装置Cの動作を制御して熱媒循環路3での熱媒の循環を開始した後、循環停止条件が満たされたと判定すると循環状態調節装置Cの動作を制御して熱媒循環路3での熱媒の循環を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱集熱器が集めた熱を複数の消費者に対して供給可能な熱供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅などに居住する複数の消費者に対して、共通の蓄熱装置に蓄えられた熱を一括して供給する熱供給システムが提案されている。特に、集合住宅に共用の太陽熱集熱器を設け、その太陽熱集熱器で集められた熱を複数の消費者設備に供給可能に構成した熱供給システムが提案されている。例えば、特許文献1に記載の熱供給システムは、太陽熱を集める太陽熱集熱器(2)と、その太陽熱集熱器(2)が集めた熱を、貯えている熱媒を用いて蓄える蓄熱装置(1)と、その蓄熱装置(1)が蓄えている熱媒を複数の消費者設備に向けて循環させる熱媒循環路(10)とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−238342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、熱媒循環路に熱媒を循環させる際に発生し得るエネルギーロスを抑制するために必要な措置が講じられていない。具体的には、この種の熱供給システムでは、熱供給システムの運用に当たって、比較的長い熱搬送が必要な熱媒循環路を循環する熱媒の温度が低い場合には、各消費者設備に対して実質的に熱供給を行うことができておらず、熱媒循環路に熱媒を循環させること自体がエネルギーロス(例えば、電動ポンプ等が消費する電気エネルギーのロス)になってしまうという点についての考慮が為されていない。特に、この熱供給システムは、日々の集熱量が変化し且つ集熱量の大きさにも制限がある太陽熱集熱器が集めた熱を蓄熱装置で蓄える構成となっているため、熱媒循環路へ一定の温度の熱媒を常時循環させることができる訳ではない。そのため、各消費者設備で熱消費が行われることで熱媒循環路を循環する熱媒の温度が低くなると、各消費者設備に対して実質的に熱供給を行えない状態となり、エネルギーロスばかりが増大してしまう。加えて、実質的に熱供給が行えない状態において熱媒供給を行うと、あたかも使用者に熱供給を受けることができると誤解させる可能性も生じて好ましくない。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、消費者への熱供給を行いつつ、エネルギーロスを抑制可能な熱供給システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る熱供給システムの特徴構成は、
太陽熱を集める太陽熱集熱器と、
熱媒を貯え、前記太陽熱集熱器が集めた熱を前記熱媒を用いて蓄える蓄熱装置と、
前記蓄熱装置が貯えている前記熱媒を、それぞれが熱消費装置を有する複数の消費者の消費者設備に循環可能にさせる熱媒循環路と、
前記熱媒循環路における前記熱媒の循環状態を調節する循環状態調節装置と、
前記循環状態調節装置の動作を制御する運転制御装置と、を備える熱供給システムであって、
前記運転制御装置は、前記循環状態調節装置の動作を制御して前記熱媒循環路での前記熱媒の循環を開始した後、循環停止条件が満たされたと判定すると前記循環状態調節装置の動作を制御して前記熱媒循環路での前記熱媒の循環を停止させる点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、運転制御装置は、熱媒循環路での熱媒の循環を開始した後、循環停止条件が満たされたと判定すると熱媒循環路での熱媒の循環を停止させる。つまり、熱媒循環路での熱媒の循環に要するエネルギーを削減できる。また、循環停止条件が満たされていない間は熱媒循環路での熱媒の循環が行われるため、各消費者に対して熱媒を確実に供給できる。その結果、太陽熱集熱器で集められた熱が各消費者で有効に活用されることとなる。
従って、消費者への熱供給を行いつつ、エネルギーロスを抑制可能な熱供給システムを提供できる。
【0008】
本発明に係る熱供給システムの別の特徴構成は、前記運転制御装置は、前記蓄熱装置から前記熱媒循環路へ供給されて循環される熱媒の温度が設定温度以下になったとき前記循環停止条件が満たされたと判定する点にある。
【0009】
蓄熱装置から熱媒循環路へ供給されて循環される熱媒の温度が低い場合には、各消費者設備に対して実質的に熱供給を行うことができておらず、熱媒循環路に熱媒を循環させること自体がエネルギーロスになってしまう。
ところが、本特徴構成によれば、運転制御装置は、蓄熱装置から熱媒循環路へ供給されて循環される熱媒の温度が設定温度以下になったとき、熱媒循環路での熱媒の循環を停止させる。例えば、上記設定温度を、給水温度よりも所定温度だけ高い温度に設定しておけば、熱媒の循環中に熱媒循環路へ供給されて消費者設備に流入する湯水の温度は、給水の温度よりもほぼ所定温度以上は高くなる。つまり、各消費者設備では、給水の加熱が確実に行われるという効果が発揮される。これに対して、熱媒循環路へ供給されて消費者設備に流入する湯水の温度が給水の温度より所定温度以上高くない場合(即ち、循環停止条件が満たされる場合)、各消費者設備では給水の加熱が実質的に行われなくなる。以上のように、本特徴構成では、実質的に消費者設備に対する熱供給とならないような熱媒循環が停止されて、エネルギーロスの発生が効果的に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】熱供給システムの構成を説明する図である。
【図2】太陽熱集熱器での集熱量の例を示すグラフである。
【図3】複数の消費者による単位時間(1時間)毎の合計の予測熱消費量の例を示すグラフである。
【図4】複数の消費者による単位時間(1時間)毎の合計の予測熱消費量の例を示すグラフである。
【図5】別の熱供給システムの構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の熱供給システムS1(S)の構成を説明する図である。
図1に示す熱供給システムS1は、太陽熱集熱器1と蓄熱装置2と熱媒循環路3と循環状態調節装置Cとそれら各装置の動作を制御する運転制御装置4とを備え、集合住宅などに居住する複数の消費者に対して熱を供給するシステムである。特に、本実施形態の熱供給システムS1は、太陽熱集熱器1で集められた熱を、複数の消費者によって有効に活用させることを目的としている。
【0012】
太陽熱集熱器1は、太陽熱(太陽からの熱エネルギー)を集める装置である。太陽熱集熱器1が集めた熱は蓄熱装置2に蓄えられる。太陽熱集熱器1と蓄熱装置2との間には熱媒としての水又は不凍液が循環する集熱用熱媒循環路7が設けられる。集熱用熱媒循環路7の途中に設けたポンプP2を動作させることで集熱用熱媒循環路7の内部の熱媒の循環が行われる。熱媒は、太陽熱集熱器1へと流入し、そして太陽熱集熱器1で加熱された後、太陽熱集熱器1から流出して蓄熱装置2へ至る。加えて、蓄熱装置2の内部の熱交換部2aでは、集熱用熱媒循環路7を通流する熱媒と蓄熱装置2に蓄えられている熱媒とが熱交換可能に構成されている。その結果、太陽熱集熱器1で集められた熱は蓄熱装置2に蓄えられる。
【0013】
図2は、太陽熱集熱器1での集熱量の例を示すグラフである。図2において折れ線グラフで示すのは単位時間(1時間)当たりの集熱量である。図2において棒グラフで示すのは、折れ線グラフで示した1時間あたりの集熱量を1日の中で積算した値である。図2から分かるように、日の出時刻付近から日没時刻付近までの間、太陽熱集熱器1は太陽熱を集めている。棒グラフで示す集熱量の積算値は、実質的に蓄熱装置2に蓄熱される熱量となる。
【0014】
蓄熱装置2は、水などの熱媒を用いて熱を蓄える。蓄熱装置2には、図1に示すように、貯えられている水(湯水)を蓄熱装置2の外部に通流させる熱媒循環路3が接続されている。以下の説明では、蓄熱装置2に貯えられ、蓄熱装置2から熱媒循環路3へ供給されて循環される熱媒のことを「湯水」と記載する。熱媒循環路3の途中には複数の消費者設備10が順に接続されているので、蓄熱装置2が貯えている湯水は熱媒循環路3によって複数の消費者設備10に循環供給されることになる。各消費者設備10は、例えば、集合住宅の各戸に設けられる設備に対応する。つまり、熱媒循環路3は、蓄熱装置2が貯えている湯水を、それぞれが集合住宅の各戸に設けられている複数の消費者設備10に循環させるものである。具体的には、熱媒循環路3は、蓄熱装置2から出た湯水が各消費者設備10へ流入するまでの間に流れる往路3aと、各消費者設備10から出た湯水が蓄熱装置2へ戻るまでの間に流れる復路3bとに分かれる。熱媒循環路3の往路3aには、湯水の流量を設定値に調節する定流量弁V1が設けられている。各消費者設備10は定流量弁V1より下流側の熱媒循環路3に接続されているので、各消費者設備10へ流れ込む湯水の流量は定流量弁V1によって調節される。以上のように、ポンプP1と定流量弁V1とは、熱媒循環路3における湯水の循環状態を調節する循環状態調節装置Cとして機能し、運転制御装置4の動作制御を受ける。
【0015】
蓄熱装置2に貯えられている湯水の温度は温度センサT1で測定される。温度センサT1の測定結果は、収集手段5を用いて収集し、運転制御装置4が読み出し可能に記憶手段6に記憶しておくこともできる。本実施形態では、蓄熱装置2の内部で湯水は温度成層を形成しておらず、ほぼ均一になっているものとする。従って、温度センサT1で測定される温度が、蓄熱装置2から熱媒循環路3へ供給されて循環される熱媒の温度となる。
【0016】
次に、消費者設備10の構成について説明する。
消費者設備10は、熱媒循環路3を通流する湯水と消費者設備10の内部で供給される低温の給水とが熱交換可能な熱交換器13を有している。具体的には、熱交換器13には熱媒循環路3の往路3aが引き込まれ、熱交換器13から出た部分が熱媒循環路3の復路3bとなる。消費者設備10が有する熱消費装置11には、給水が熱交換器13で加熱された後に得られる湯水が供給される。その際、必要に応じて、熱交換器13で加熱された後に得られる湯水に対してミキシングユニット14で給水が加えられた上で、或いは、熱交換器13で加熱された後の湯水に対して熱源機12で更に加熱された上で熱消費装置11に供給される。熱源機12としては、例えばガスなどの燃料を燃焼した際の燃焼熱を利用する湯沸器などを利用できる。
【0017】
消費者設備10において、熱交換器13に引き込まれる熱媒循環路3の往路3aの部分に湯水の流入温度を測定する流入温度センサTinと湯水の流量を測定する流量計Mとが設けられ、熱交換器13から引き出された熱媒循環路3の復路3bの部分に湯水の流出温度を測定する流出温度センサToutが設けられている。流入温度センサTin、流量計M及び流出温度センサToutの測定結果は、設定タイミング毎に収集手段5によって収集される。ここで、熱交換器13への湯水の流入温度及び流出温度の間の温度差と流量との積を導出すると、熱媒循環路3を通流する湯水が消費者設備10の熱交換器13で失った熱量、即ち、消費者の熱消費量となる。つまり、収集手段5が設定タイミング毎に収集する流入温度センサTin、流量計M及び流出温度センサToutの測定結果は、熱消費量に関する情報と言える。更に、運転制御装置4は、収集手段5が設定タイミング毎に収集した上記熱消費量に関する情報を記憶手段6に記憶させることができる。操作部15は、熱消費装置11の予約運転に関する設定情報(例えば、風呂湯張り時刻、湯温、湯量など)を操作入力するためのものである。
【0018】
運転制御装置4は、収集手段5が設定タイミング毎に収集した上記熱消費量に関する情報を記憶手段6にそのまま(即ち、流入温度センサTin、流量計M及び流出温度センサToutの測定結果のまま)記憶させておくか、或いは、上述したように消費者の熱消費量を逐次導出して、その結果を記憶手段6に記憶させておくことができる。運転制御装置4、収集手段5及び記憶手段6は、コンピュータなどの情報処理装置を用いて実現できる。
以上のように、図1に示す収集手段5は、複数の消費者における過去の熱消費量に関する情報を収集する熱消費量情報収集手段として機能する。また、図1に示す記憶手段6は、熱消費量情報収集手段が収集した熱消費量に関する情報を記憶する熱消費量情報記憶手段として機能する。尚、公知の他の手法を用いて複数の消費者における過去の熱消費量に関する情報を収集することも可能である。
【0019】
図3は、複数の消費者による単位時間(1時間)毎の合計の予測熱消費量の例を示すグラフである。上述のように、運転制御装置4は、各消費者設備10の熱交換器13への湯水の流入温度及び流出温度の間の温度差と流量との積を導出することで、各消費者の過去の熱消費量を知ることができる。従って、運転制御装置4は、設定タイミング毎に収集された過去の熱消費量に関する情報を参照して、各消費者の将来の予測熱消費量を例えば単位時間毎の値で導出でき、更に、複数の消費者による合計の予測熱消費量を例えば単位時間毎の値で導出できる。図3に示すように、時刻6時〜時刻7時の間、時刻12時〜時刻14時の間、時刻18時〜時刻23時の間にそれぞれ複数の消費者による合計の予測熱消費量が大きく現れる。このうち、時刻6時〜時刻7時の間の予測熱消費量と時刻12時〜時刻14時の間の予測熱消費量とは図中に示す設定量には満たないが、時刻18時〜時刻23時の間の予測熱消費量は全ての時間帯で設定量以上となっている。この設定量のレベルは、運転制御装置4が適宜設定可能である。例えば、この設定量は、複数の消費者による1日の合計の予測熱消費量に対して設定割合となるレベルや、熱媒循環路3に湯水を循環させたときに発生する単位時間当たりの放熱量よりも大きい所定レベル(例えば、単位時間当たりの放熱量に所定の係数をかけた値)に設定できる。このように設定すると、各消費者が1日の中で熱を大量に消費しようとしたタイミングで、蓄熱装置2から太陽熱集熱器1で集めた熱を確実に供給できる。或いは、この設定量を、熱媒循環路3に湯水を循環させたときに発生する単位時間当たりの放熱量と同程度のレベルに設定してもよい。このように設定すると、熱媒循環路3を循環中に各消費者設備10で消費されずに放熱される熱量をその循環中に実際に消費される熱量以下にでき、太陽熱集熱器1で集めた熱の各消費者設備10での有効利用を図ることができる。
【0020】
次に、運転制御装置4が行う、熱媒循環路3における熱媒(湯水)の循環状態を調節する循環状態調節装置C(ポンプP1及び定流量弁V1)の動作制御について説明する。
図2に例示したように、通常、太陽熱集熱器1は昼間(朝方〜夕方)の時間帯に太陽熱を集め、その熱が蓄熱装置2へ供給されて蓄熱される。これに対して、図3に例示したように、通常、消費者が熱を大量に消費するのは夕方から夜の時間帯である。従って、昼間の時間帯に太陽熱集熱器1で集められた熱を蓄熱装置2に蓄熱し、それと同時に蓄熱装置2から熱媒循環路3へと湯水の循環を常時行わせていると、多くの消費者が夜の時間帯に熱消費を行うまでの間、熱媒循環路3を循環通流する湯水はほとんど消費されることなく単に放熱されるだけとなる。
【0021】
〔循環開始タイミング〕
本実施形態の熱供給システムS1において、運転制御装置4は、湯水の循環開始タイミングになると循環状態調節装置Cの動作を制御して熱媒循環路3に湯水を循環させ、循環開始タイミング以前では循環状態調節装置Cの動作を制御して熱媒循環路3に湯水を循環させない(即ち、循環停止させる)ような動作制御を行う。この循環開始タイミングは、複数の消費者による合計の熱消費量が設定量以上に増加するタイミングに対応する。つまり、熱媒循環路3での湯水循環を開始させる循環開始タイミングは、複数の消費者における過去の熱消費量に関する情報を参照して導出される、複数の消費者による合計の予測熱消費量が設定量以上に増加するタイミングに決定される。このように、複数の消費者における過去の熱消費量に関する情報を参照することで、実際に複数の消費者の熱消費量が大きくなるタイミングを正確に把握できることとなる。
図3に示した例では、複数の消費者による合計の予測熱消費量が設定量以上に増加するのは、時刻18時になるタイミングである。そこで、運転制御装置4は、時刻18時になると循環状態調節装置Cの動作を制御して熱媒循環路3での湯水循環を開始させる。
【0022】
〔循環停止タイミング〕
運転制御装置4は、熱媒循環路3での湯水循環を停止させる循環停止タイミングか否かの判定も行う。なぜならば、例えば蓄熱装置2から熱媒循環路3へ供給されて循環される熱媒の温度が設定温度以下の低い温度である場合には、各消費者設備10に対して実質的に熱供給を行うことができておらず、熱媒循環路3に熱媒を循環させること自体がエネルギーロスになってしまうからである。具体的には、運転制御装置4は、循環状態調節装置C(ポンプP1及び定流量弁V1)の動作を制御して熱媒循環路3での湯水の循環を開始した後、所定の循環停止条件が満たされたと判定(循環停止タイミングであると判定)すると循環状態調節装置Cの動作を制御して熱媒循環路3での湯水の循環を停止させる。
【0023】
本実施形態において、上記循環停止条件は、蓄熱装置2から熱媒循環路3へ供給されて循環される熱媒の温度が設定温度以下になったことである。つまり、運転制御装置4は、温度センサT1によって測定される、蓄熱装置2から熱媒循環路3へ供給されて循環される熱媒の温度が設定温度以下になったとき上記循環停止条件が満たされたと判定する。そして、運転制御装置4は、循環状態調節装置Cの動作を制御して熱媒循環路3での湯水の循環を停止させる。
【0024】
この設定温度は、例えば、給水温度よりも所定温度だけ高い温度に設定しておくことができる。そのような設定をしておけば、熱媒循環路3へ供給されて消費者設備10の熱交換器13に流入する湯水の温度は、熱交換器13に流入する給水の温度よりもほぼ所定温度以上は高くなる。つまり、熱交換器13では、給水の加熱が確実に行われるという効果が発揮される。これに対して、熱媒循環路3へ供給されて消費者設備10の熱交換器13に流入する湯水の温度が、熱交換器13に流入する給水の温度より所定温度以上高くない場合(即ち、循環停止条件が満たされる場合)、熱交換器13では熱媒循環路3を通流する湯水による給水の加熱が実質的に行われなくなる。このように、運転制御装置4が、実質的に消費者設備に対する熱供給とならないような熱媒循環を停止可能であることで、エネルギーロスの発生が効果的に抑制される。
【0025】
この例において、温度センサT1の測定結果は、収集手段5を用いて収集された情報が利用される。ここで、通常の場合、循環開始タイミングでの蓄熱装置2から熱媒循環路3に供給されて循環する湯水の温度は、循環停止タイミングでの蓄熱装置2から熱媒循環路3に供給されて循環する湯水の温度よりも高い。例えば、循環開始タイミングにおいて蓄熱装置2の全体の湯水の温度が約60℃である場合、その湯水を熱媒循環路3に供給して循環させると、各消費者設備10の熱交換器13で熱が奪われ、その後、熱媒循環路3の復路3bを通って再び蓄熱装置2に帰還する湯水の温度は約20℃程度にまで低下していることもある。このように、循環開始タイミングで熱媒循環路3での湯水循環を開始させた後は、時間経過とともに蓄熱装置2から熱媒循環路3に供給されて循環する湯水の温度は低下傾向となる。
【0026】
以上のように、特定の時間帯にのみ熱媒循環路3に湯水を循環させる、即ち、熱媒循環路3に湯水を循環させない時間帯を設けることで、主に熱媒循環路3で発生し得る湯水の放熱を抑制できる。また、湯水の循環開始タイミングになると熱媒循環路3に湯水を循環させることで、各消費者設備10に対して湯水を確実に供給できる。特に、上記循環開始タイミングを、複数の消費者による合計の熱消費量が設定量以上に増加するタイミングに対応させたことで、複数の消費者による合計の熱消費量が設定量以上に増加したときには、蓄熱装置2から消費者設備10へ熱を確実に供給できる。加えて、湯水の循環停止タイミングになると熱媒循環路3での湯水の循環を停止されることで、実質的に消費者設備に対する熱供給とならないような熱媒循環を停止させることができる。
【0027】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態において、熱媒循環路3での湯水循環を開始させる循環開始タイミングを別の手法で決定してもよい。例えば、運転制御装置4は、記憶手段6が記憶している複数の消費者における熱消費装置11の予約運転に関する設定情報(例えば、風呂湯張り時刻、湯温、湯量など)を参照して、複数の消費者における熱消費装置11の予約運転が実行された場合の複数の消費者による合計の予測熱消費量を導出し、その合計の予測熱消費量が設定量以上に増加するタイミングを、熱媒循環路3での湯水循環を開始させる循環開始タイミングとして決定してもよい。
【0028】
具体的には、操作部15を用いて消費者自身によって入力された、熱消費装置11の予約運転に関する上記設定情報は、設定タイミング毎に収集手段5によって収集される。熱消費装置11の予約運転に関する設定情報が、風呂湯張り時刻、湯温、湯量である場合、設定湯温及び給水温度の間の温度差と設定湯量との積を導出することで、消費者が入浴時に消費する予測熱消費量を決定できる。加えて、風呂湯張り時刻も設定されているので、その時刻に上記予測熱消費量が発生すると決定できる。
【0029】
運転制御装置4は、収集手段5が設定タイミング毎に収集した上記熱消費装置11の予約運転に関する設定情報を記憶手段6にそのまま(例えば、風呂湯張り時刻、湯温、湯量のまま)記憶させておくか、或いは、上述したように消費者の予測熱消費量を逐次導出して、その結果(予測熱消費量及びその発生時刻の組み合わせ)を記憶手段6に記憶させておくことができる。
以上のように、第2実施形態では、図1に示した収集手段5は、複数の消費者における熱消費装置11の予約運転に関する設定情報を収集する設定情報収集手段として機能する。また、図1に示した記憶手段6は、設定情報収集手段が収集した設定情報を記憶する設定情報記憶手段として機能する。
【0030】
図4は、複数の消費者による単位時間(1時間)毎の合計の予測熱消費量の例を示すグラフである。上述のように、運転制御装置4は、各消費者自身が入力した熱消費装置11の予約運転に関する設定情報を参照して、各消費者の予測熱消費イベント(予測熱消費量及びその発生時刻)を決定できる。従って、運転制御装置4は、各消費者自身が入力した将来の予測熱消費量を例えば単位時間毎の値で導出でき、更に、複数の消費者による合計の予測熱消費量を例えば単位時間毎の値で導出できる。図4に示すように、例えば入浴が行われる時刻18時〜時刻22時の間にそれぞれ複数の消費者による合計の予測熱消費量が大きく現れる。そして、時刻18時〜時刻22時の間の予測熱消費量は全ての時間帯で設定量以上となっている。
【0031】
上述したように、運転制御装置4は、記憶手段(設定情報記憶手段)6が記憶している複数の消費者における上記設定情報を参照して、複数の消費者における熱消費装置11の予約運転が実行された場合の複数の消費者による合計の予測熱消費量を導出し、その合計の予測熱消費量が設定量以上に増加するタイミングを、熱媒循環路3での湯水循環を開始させる循環開始タイミングとして決定する。具体的には、図4に示した例では、運転制御装置4は、予測熱消費量が設定量以上となる時刻18時を循環開始タイミングと決定して、その時刻18時になると循環状態調節装置C(ポンプP1及び定流量弁V1)の動作を制御して熱媒循環路3に湯水を循環させる。
【0032】
このように、複数の消費者における熱消費装置11の予約運転に関する設定情報とは、各消費者が熱消費機器をどのように運転するのかの意思表示であるので、複数の消費者における熱消費装置11の予約運転に関する設定情報を参照することで、実際に複数の消費者の熱消費量が大きくなるタイミングを正確に把握できる。その結果、各消費者が熱を大量に消費しようとしたタイミングで、蓄熱装置2から太陽熱集熱器1で集めた熱を確実に供給できる。
【0033】
<2>
上記実施形態において、太陽熱集熱器1が集めた熱以外の熱を蓄熱装置2で蓄えるように改変してもよい。例えば、図5は、別の熱供給システムS2(S)の構成を説明する図である。図5に示す熱供給システムS2は、熱源装置として、熱と電気とを併せて発生する熱電併給装置20を備え、その熱電併給装置20が発生した熱が蓄熱装置2に蓄えられるように構成されている。具体的には、図5に記載の熱供給システムS2では、熱媒循環路3の途中に三方弁8を設けることで、熱媒循環路3から熱媒路21を分岐させている。熱媒路21には熱電併給装置20が接続されることで、蓄熱装置2から熱電併給装置20へ湯水が供給可能となっている。また、それとは別に熱電併給装置20と蓄熱装置2とを接続する熱媒路22を設けることで、熱電併給装置20で加熱された湯水が蓄熱装置2へと帰還するようになっている。蓄熱装置2に貯留されている湯水が熱電併給装置20へと流入し、その後、蓄熱装置2へと帰還する際の湯水の流れは、熱媒路22に設けられているポンプP3によって形成される。熱電併給装置20としては、燃料電池や、原動機と発電機とを組み合わせた装置などを採用できる。また、熱源装置として、熱電併給装置20ではなくヒートポンプ装置やガスボイラーなどを設けてもよい。或いは、1台の熱源装置ではなく、複数の熱源装置(熱電併給装置20、ヒートポンプ装置、ガスボイラーなどの組み合わせ)を併設してもよい。
以上のように、熱供給システムS2が、太陽熱集熱器1が集めた熱以外の熱を蓄熱装置2で蓄えることで、蓄熱装置2の蓄熱量を大きく確保できる。その結果、より規模の大きい集合住宅にも対応可能な熱供給システムとなる。
【0034】
更に、太陽熱集熱器1で集めた熱を蓄熱装置2に予め蓄えておき、各消費者の予測熱消費量の合計から見て不足する分の熱を上記熱電併給装置20のような他の装置から集めるように構成してもよい。即ち、例えば、時刻16時までに太陽熱集熱器1から蓄熱装置2に集められた熱量を、温度センサT1で測定される温度と蓄熱装置2に貯えられている湯水量とから導出し、その熱量が各消費者の予測熱消費量の合計から見て不足する場合には熱電併給装置20を運転させて蓄熱装置2に熱を追加で蓄えるような運転形態も可能である。この場合、例えば、時刻18時の循環開始タイミングの時点において、蓄熱装置2での蓄熱量を各消費者の予測熱消費量の合計から見て不足しないようにできる。この場合、運転制御装置4が、熱電併給装置20の運転状態を参照して熱電併給装置20から蓄熱装置2に集めた熱量を導出することで、蓄熱装置2に蓄えられている熱を、太陽熱集熱器1で集めた熱と熱電併給装置20を運転させて集めた熱とで見かけ上区別することもできる。そして、見かけ上、太陽熱集熱器1で集めた熱が、熱電併給装置20を運転させて集めた熱よりも優先して各消費者設備10で消費されると設定することもできる。
【0035】
尚、図5に示した例において、熱電併給装置20に流入する湯水を、熱媒循環路3の途中の三方弁8から分岐させる構成ではなく、熱媒循環路3とは別に、蓄熱装置2と熱電併給装置20との間で湯水を循環させる循環路を独立して設ける構成に改変してもよい。また、蓄熱装置2の内部に追加の熱交換器を設け、且つ、熱電併給装置20と蓄熱装置2の内部の上記追加の熱交換器との間で熱媒を循環させることで、その熱媒と蓄熱装置2に貯えられている湯水との熱交換(即ち、蓄熱装置2に貯えられている湯水の加熱)を行わせるような改変も可能である。
【0036】
<3>
上記実施形態において、様々な種類の太陽熱集熱器1や蓄熱装置2を用いることができる。例えば、図1では、太陽熱集熱器1として強制循環型の平板型集熱器を想定した図を描いているが、現在用いられている様々な種類の太陽熱集熱器1を本発明の熱供給システムSで利用できる。また、図1では、蓄熱装置2として開放式の貯水タンクを想定した図を描いているが、密閉式の貯水タンクを用いてもよい。そして、蓄熱装置2の内部で温度成層が形成されるように湯水を貯めてもよい。その場合、蓄熱装置2に貯えられている高温部分の湯水が熱媒循環路3へ供給され、且つ、温度センサT1は、その蓄熱装置2から熱媒循環路3に供給される湯水の温度を測定できる位置に設けておくことが好ましい。
【0037】
<4>
上記実施形態では、図3及び図4に例示したように、循環開始タイミングを決定する際に参照する、複数の消費者による合計の予測熱消費量を1時間単位で管理した例を説明したが、その時間単位は適宜変更可能である。例えば、10分単位や30分単位などで複数の消費者による合計の予測熱消費量を管理し、循環開始タイミングであるかどうかをその時間単位で判定してもよい。
【0038】
<5>
上記実施形態では、運転制御装置4が、上記循環開始タイミングになると循環状態調節装置Cの動作を制御して熱媒循環路3に湯水を循環させる例を説明したが、上記循環開始タイミングになっても熱媒循環路3に湯水を循環させないような条件を追加してもよい。例えば、運転制御装置4が、温度センサT1によって測定される、蓄熱装置2に蓄えられている湯水の温度が所定温度未満であれば、上記循環開始タイミングになっても循環状態調節装置Cの動作を制御して熱媒循環路3に湯水を循環させないような制御を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、太陽熱集熱器が集めた熱を複数の消費者に対して供給可能な熱供給システムに利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 太陽熱集熱器
2 蓄熱装置
3 熱媒循環路
4 運転制御装置
10 消費者設備
11 熱消費装置
C 循環状態調節装置
S 熱供給システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽熱を集める太陽熱集熱器と、
熱媒を貯え、前記太陽熱集熱器が集めた熱を前記熱媒を用いて蓄える蓄熱装置と、
前記蓄熱装置が貯えている前記熱媒を、それぞれが熱消費装置を有する複数の消費者の消費者設備に循環可能にさせる熱媒循環路と、
前記熱媒循環路における前記熱媒の循環状態を調節する循環状態調節装置と、
前記循環状態調節装置の動作を制御する運転制御装置と、を備える熱供給システムであって、
前記運転制御装置は、前記循環状態調節装置の動作を制御して前記熱媒循環路での前記熱媒の循環を開始した後、循環停止条件が満たされたと判定すると前記循環状態調節装置の動作を制御して前記熱媒循環路での前記熱媒の循環を停止させる熱供給システム。
【請求項2】
前記運転制御装置は、前記蓄熱装置から前記熱媒循環路へ供給されて循環される熱媒の温度が設定温度以下になったとき前記循環停止条件が満たされたと判定する請求項1に記載の熱供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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