説明

熱処理装置および熱処理方法

【課題】基板を水平に搬送しながら行う熱処理において、基板面内での熱処理温度のばらつきを抑制し、基板面内における配線パターンの線幅を均一化する。
【解決手段】基板Gを基板搬送路2に沿って水平に搬送する基板搬送手段20と、基板搬送路2に沿って配置され、基板Gを加熱するための第1の加熱手段4と、搬送路に沿って、かつ、第1の加熱手段の後段に配置され、基板Gを加熱するための第2の加熱手段5と、第1の加熱手段4で加熱された基板Gの温度を検出するための基板温度検出手段46と、基板温度検出手段46の検出結果に基づいて、第2の加熱手段5に対応した基板搬送手段2cにおける基板搬送速度を制御する制御部40とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置および熱処理方法に関し、特に基板を水平姿勢の状態で、水平方向に搬送しながら前記基板に熱処理を施す熱処理装置及び熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、FPD(フラットパネルディスプレイ)の製造においては、いわゆるフォトリソグラフィ工程により回路パターンを形成することが行われている。
具体的には、ガラス基板等の基板に所定の膜を成膜する。その後、処理液であるフォトレジスト(以下、レジストと呼ぶ)を塗布してレジスト膜を形成する。そして、回路パターンに対応してレジスト膜を露光する。その後、これを現像処理するものである。
【0003】
ところで近年、このフォトリソグラフィ工程では、スループット向上の目的により、基板を略水平姿勢の状態で水平方向に搬送(以下、平流し搬送と呼ぶ)しながら、その被処理面に対してレジストの塗布、乾燥、加熱、冷却処理等の各処理を施す構成が多く採用されている。
例えば、基板を加熱し、レジスト膜の乾燥や現像処理後の乾燥を行う熱処理装置は、特許文献1に開示されるように、基板を平流し搬送しながら、搬送路に沿って配置されたヒータによって加熱処理する構成を備えている。
このような平流し搬送構造を有する熱処理装置では、複数の基板を搬送路上に連続的に流しながら熱処理を行うことができるため、スループットの向上が期待できる。
【0004】
前記した平流し搬送構造を有する熱処理装置について、具体的に図5(a)、(b)を用いて説明する。図5(a)に示すように、熱処理装置60は、複数の搬送コロ61が回転可能に敷設されてなる平流しの基板搬送路62を備えている。また、この基板搬送路62に沿って熱処理空間を形成するチャンバ65が設けられている。チャンバ65には、スリット状の基板搬入口65aと基板搬出口65bとが設けられている。
基板搬送路62を搬送される基板G(G1,G2,G3,・・・)は、基板搬入口65aから連続的にチャンバ65内に搬入されて所定の熱処理が行われる。その後、前記基板Gは基板搬出口65bから搬出される。
【0005】
前記チャンバ65内には、基板G(G1,G2,G3,・・・)に対し予備加熱を行い、基板Gを所定温度まで昇温するプレヒータ部63を有する。また、基板温度を維持するための主加熱を行うメインヒータ部64を有する。そして、プレヒータ部63と、メインヒータ部64とが連続して設けられている。
前記プレヒータ部63は、各搬送コロ61の間に設けられた下部ヒータ66と、天井部に設けられた上部ヒータ67とを備えている。メインヒータ部64は、各搬送コロ61の間に設けられた下部ヒータ69と、天井部に設けられた上部ヒータ70とを備えている。
【0006】
このように構成された熱処理装置60で、プレヒータ部63は、基板Gを所定温度(例えば100℃)まで加熱するために、下部ヒータ66及び上部ヒータ67が所定の設定温度(例えば160℃)になされる。
一方、メインヒータ部64は、プレヒータ部63で加熱された基板Gの温度を維持し、熱処理を効率的に行うために、下部ヒータ69及び上部ヒータ70が所定の熱処理温度(例えば100℃)になされる。
【0007】
そして、図5(a)に示すように、1枚目の基板G1が搬入口65aからプレヒータ部63に搬入され、そこで各基板Gは所定温度(例えば100℃)まで加熱される。
更に図5(b)に示すように、プレヒータ部63において昇温された基板G1は、続けてメインヒータ部64に搬送される。メインヒータ部64で基板温度が維持されて所定の熱処理(例えば、レジスト中の溶剤を蒸発させる処理)が行われ、搬出口65bから搬出される。
そして、基板G1に続き、次の基板G2が熱処理装置60に搬送され、熱処理が行われる。3枚目以降の基板G(G3、G4・・・)も同様に、熱処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−158088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図5(a)、(b)に示す平流し搬送構造の熱処理装置で熱処理を行った場合、プレヒータ部63による予備加熱後の基板温度において基板Gの前部領域及び後部領域と、中央部領域とで異なる傾向があった。
この領域によって基板温度が異なることを具体的に図6に基づいて説明する。まず、図6(a)に示すように、基板Gの前部領域GFは、前方に続く基板面(熱を吸収する面)が無いため、比較的、熱が籠もった状態のチャンバ内に搬入される。そのため、前部領域GFは、必要以上の熱量を受け、基板Gの前部領域GFは、所望温度より高い温度になる傾向があった。
【0010】
そして、チャンバ内の熱量は、前部領域GFの温度上昇に使われるので、基板Gの中央部領域がチャンバ内を通過するときには、チャンバ内の熱量は所望の量となっている。そのため、基板Gの中央部領域は所望の温度に昇温される。このように、基板Gの前部領域GFは、基板Gの中央部領域より高い温度になる傾向があった。
【0011】
一方、図6(b)に示すように、基板Gの後部領域GRにあっては、後方に続く基板面(熱を吸収する面)が無いため、基板Gの中央部領域に比べて後部領域Gは必要以上に熱を吸収することになる。そのため、基板Gの後部領域GRは、基板Gの中央部領域よりも高温になる傾向があった。
このため、プレヒータ部63で昇温された基板Gに対し、メインヒータ部64において所定の加熱処理を施す際に、基板面内の温度ばらついており、その後の配線パターン形成において、配線パターンの線幅が不均一になる虞があった。
【0012】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、基板を平流し搬送しながら熱処理を施す熱処理装置であって、基板面内における熱処理温度のばらつきを抑制し、基板面内における配線パターンの線幅をより均一化することのできる熱処理装置及び熱処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記した課題を解決するためになされた本発明に係る熱処理装置は、基板を水平に搬送しつつ基板に加熱処理を行う熱処理装置であって、基板搬送路を有し、基板を前記基板搬送路に沿って水平に搬送する基板搬送手段と、前記基板搬送路に沿って配置され、基板を加熱するための第1の加熱手段と、前記搬送路に沿って、かつ、前記第1の加熱手段の後段に配置され、基板を加熱するための第2の加熱手段と、前記第1の加熱手段で加熱された基板の温度を検出するための基板温度検出手段と、この基板温度検出手段の検出結果に基づいて、前記第2の加熱手段に対応する前記基板搬送路における前記基板搬送手段の基板搬送速度を制御する制御部とを有することを特徴とする。
【0014】
このように本発明の熱処理装置によれば、第1の加熱手段で基板を加熱した際に、基板の面内で温度がばらついても、第2の加熱手段で加熱処理を行う際に、基板温度検出手段の検出結果に基づいて基板搬送速度を制御することができ、基板の面内の温度の均一化を図ることができる。
【0015】
また、前記した課題を解決するためになされた本発明に係る熱処理方法は、基板を水平に搬送しつつ基板を加熱する熱処理方法であって、基板を水平に所定の速度で搬送しつつ、第1の温度で基板を加熱する第1の加熱工程と、前記第1の加熱工程後、加熱された基板の温度を検出する温度検出工程と、前記温度検出工程後、基板の温度の検出結果に基づいて、基板の搬送速度を変更することによって、加熱領域を通過する加熱処理時間を変更して加熱する第2の加熱工程とを有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の熱処理方法によれば、第1の加熱工程で基板の面内で温度がばらついても、その後、基板の温度の検出結果に基づいて、基板の搬送速度を変更することによって、加熱領域を通過する加熱処理時間を変更して加熱する第2の加熱工程を備えているため、基板面内の温度の均一化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板を平流し搬送しながら熱処理を行い、しかも基板面内における熱処理温度のばらつきを抑制し、基板面内における配線パターンの線幅を均一化することのできる熱処理装置及び熱処理方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明にかかる一実施形態の全体概略構成を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明にかかる一実施形態の全体概略構成を示す平面図である。
【図3】図3は、本発明の熱処理装置の動作の流れを示すフロー図である。
【図4】図4は、本発明における基板の領域の分割の説明図である。
【図5】図5(a)、(b)は、従来の熱処理装置の課題を説明するための断面図である。
【図6】図6(a)、(b)は、従来の熱処理装置の課題を説明するための断面図の一部である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の熱処理装置にかかる実施形態を、図1〜図4に基づいて説明する。尚、図1は、加熱処理ユニット1の全体の概略構成を示す断面図、図2は、加熱処理ユニット1の(平面方向の断面を示す)平面図である。また、この実施形態にあっては、熱処理装置を、FPDの製造に用いられる矩形状の基板であるガラス基板(以下、基板Gと呼ぶ)に対し加熱処理する加熱処理ユニットに適用した場合を例にとって説明する。
【0020】
この加熱処理ユニット1は、図1、図2に示すように、回転可能に敷設された複数のコロ20によって基板GをX方向に向かって搬送する基板搬送路2を具備する。この基板搬送路2に沿って、上流側から順に(X方向に向かって)、基板搬入部3と、予備加熱を行うプレヒータ部4と、主加熱を行うメインヒータ部5と、基板搬出部6とが配置されている。
【0021】
基板搬送路2は、図2に示すようにY方向に延びる円柱状のコロ20(基板搬送手段)を複数有し、それら複数のコロ20は、X方向に所定の間隔をあけて、それぞれ回転可能に配置されている。また、複数のコロ20によって基板搬入部3から基板搬出部6にかけて形成された基板搬送路2は、基板搬送方向に沿って複数のエリアに区切られている。
【0022】
具体的には、図1、図2に示すように、基板搬入部3に設けられた複数のコロ20により第1の搬送部2aが形成される。
また、プレヒータ部4からメインヒータ部5内の中央領域にかけて設けられたコロ20により第2の搬送部2bが形成される。
また、メインヒータ部5内の中央領域から基板搬出部6にかけて設けられたコロ20により第3の搬送部2cが形成されている。
【0023】
前記第1の搬送部2a〜第3の搬送部2cは、それぞれ駆動系が独立して設けられている。
即ち、図2に示すように、第1の搬送部2aにおける複数のコロ20は、その回転軸21の回転がベルト22aによって連動可能に設けられ、1つの回転軸21がモータ等のコロ駆動装置10aに接続されている。
【0024】
また、第2の搬送部2bにおける複数のコロ20は、その回転軸21の回転がベルト22bによって連動可能に設けられ、1つの回転軸21がモータ等のコロ駆動装置10bに接続されている。
【0025】
また、第3の搬送部2cにおける複数のコロ20は、その回転軸21の回転がベルト22cによって連動可能に設けられ、1つの回転軸21がモータ等のコロ駆動装置10cに接続されている。
【0026】
尚、各コロ20は、その周面が基板Gの全幅にわたって接するように設けられ、加熱された基板Gの熱が伝達しにくいように、外周面部が樹脂等の熱伝導率の低い材料、例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)で形成されている。また、コロ20の回転軸21は、アルミニウム、ステンレス、セラミック等の高強度かつ低熱伝導率の材料で形成されている。
【0027】
また、加熱処理ユニット1は所定の熱処理空間を形成するためのチャンバ8を備える。チャンバ8は、基板搬送路2の周りを覆う薄型の箱状に形成され、このチャンバ8内において、コロ搬送される基板Gに対しプレヒータ部4による予備加熱とメインヒータ部5による主加熱とが連続して行われる。
尚、本実施形態においては、チャンバ8は、プレヒータ部4の熱処理空間を形成する第1のチャンバ8Aと、この第1のチャンバ8Aの後端から連続形成され、メインヒータ部5の熱処理空間を形成する第2のチャンバ8Bとからなるものとする。
【0028】
図1に示すようにチャンバ8の前部側壁には、Y方向に延びるスリット状の搬入口51が設けられている。この搬入口51を基板搬送路2上の基板Gが通過し、チャンバ8内に搬入されるように構成されている。
また、チャンバ8の後部側壁には、基板搬送路2上の基板Gが通過可能なY方向に延びるスリット状の搬出口52が設けられている。即ち、この搬出口52を基板搬送路2上の基板Gが通過し、チャンバ8から搬出されるように構成されている。
【0029】
また、図1に示すように、チャンバ8の上下左右の壁部は、空間をあけて設けられた内壁12と外壁13を備えた二重構造を有し、内壁12と外壁13との間の空間14が、チャンバ8内外を断熱する空気断熱層として機能する。なお、外壁13の内側面には、断熱材15が設けられている。また、図2に示すように、チャンバ8において、Y方向に対向する側壁には、軸受け22が設けられ、その軸受け22によって、基板搬送路2のコロ20がそれぞれに回転可能に支持されている。
【0030】
また、図1に示すようにチャンバ8において、搬入口51付近の上壁部には排気口25が設けられ、下壁部には排気口26が設けられ、それぞれ排気量可変な排気装置31,32に接続されている。
さらに、チャンバ8の搬出口52付近の上壁部には排気口27が設けられ、下壁部には排気口28が設けられ、それぞれ排気量可変な排気装置33、34に接続されている。
即ち、前記排気装置31〜34が稼働することにより排気口25〜28を介してチャンバ8内の排気が行われ、チャンバ内温度をより安定化させる構成となされている。
【0031】
また、図1に示すようにプレヒータ部4は、第1の加熱手段として、基板搬送路2に沿ってチャンバ8内に配列された、複数の下部面状ヒータ17及び上部面状ヒータ18を備える。これら下部面状ヒータ17及び上部面状ヒータ18は、それぞれに駆動電流が供給されることにより発熱する構成となされている。
下部面状ヒータ17は、それぞれ短冊状のプレートからなり、各プレートは下方から基板Gを加熱するよう隣り合うコロ部材20の間に敷設されている。
また、上部面状ヒータ18は、それぞれ短冊状のプレートからなり、図1に示すように上方から基板Gを加熱するようチャンバ8の天井部に敷設されている。
また、下部面状ヒータ17と上部面状ヒータ18には、ヒータ電源36により駆動電流が供給され、ヒータ電源36は、コンピュータからなる制御部40(制御手段)によって制御される。
【0032】
一方、メインヒータ部5は、第2の加熱手段として、基板搬送路2に沿ってチャンバ8内に設けられた短冊状のプレートからなる下部面状ヒータ23と上部面状ヒータ24とを備える。このうち、下部面状ヒータ23は、基板Gの下方から加熱するよう隣り合うコロ部材20の間に敷設され、上部面状ヒータ24は、基板Gの上方から加熱するようチャンバ8の天井部に敷設されている。前記下部面状ヒータ23と上部面状ヒータ24には、ヒータ電源39により駆動電流が供給され、ヒータ電源39は制御部40によって制御されるよう構成されている。
【0033】
また、この加熱処理ユニット1にあっては、メインヒータ部5の所定位置に、基板搬送路2を搬送される基板Gを検出するための基板検出センサ45(基板検出手段)が設けられ、その検出信号を制御部40に出力するようになされている。この基板検出センサ45は、例えばメインヒータ部5の中央領域に設けられている。
【0034】
また、チャンバ8内においてプレヒータ部4の後端領域には、このプレヒータ部4で加熱処理される基板Gに対し、例えば赤外線照射により非接触に基板温度の検出を行う基板温度検出センサ46(基板温度検出手段)が設けられ、その検出信号を制御部40に出力するようになされている。即ち、制御部40は、基板温度検出センサ46の出力に基づき、プレヒータ部4によって加熱された基板Gの温度を取得することができる。また、制御部40には、制御に必要なデータを記憶させておく記憶部80が接続されている。
【0035】
続いて、このように構成された加熱処理ユニット1による一連の熱処理工程について、更に図3を用いて説明する。尚、図3は、加熱処理ユニット1における基板搬送制御の流れを示すフロー図である。
【0036】
まずは、以下に述べる準備工程を行う(図3のS1)。ヒータ電源36からの駆動電流の供給により、プレヒータ部4の下部面状ヒータ17及び上部面状ヒータ18の温度が予備加熱温度(例えば160℃)に設定される。また、ヒータ電源39からの駆動電流の供給により、メインヒータ部5の下部面状ヒータ23及び上部面状ヒータ24の温度が、プレヒータ部4において加熱された基板Gの温度を維持するための熱処理温度(例えば100℃)に設定される。なお、熱処理温度(100℃)とは、基板Gがこの温度に到達し、基板Gに熱処理を行うための温度である。ここで、下部面状ヒータ17及び上部面状ヒータ18の温度を予備加熱温度(160℃)に設定するのは、なるべく短い予備加熱時間で基板Gの温度を熱処理温度(100℃)に近づけるためである。
【0037】
このヒータ温度の設定により、チャンバ8内の雰囲気はプレヒータ部4がメインヒータ部5よりも所定温度高い状態となされる。即ち、基板Gは、高温(160℃)の雰囲気となされたプレヒータ部4を通過することにより、その基板温度が所定の熱処理温度(例えば100℃)まで昇温され、メインヒータ部5を通過する間、基板温度が維持される構成となされている。
また、基板温度検出センサ46で検出された温度に対応する基板搬送速度のデータを、記憶部80に予め記憶させておく。なお、基板の温度に対応する基板搬送速度のデータは、実験などで予め求めておく。
【0038】
前記のように基板搬入前においてチャンバ8内の雰囲気温度が調整された後、第1の搬送部2a〜第3の搬送部2cは通常の基板搬送速度(例えば50mm/sec)に設定される。
【0039】
上記の準備工程が終了したら、基板Gは、プレヒータ部4に搬入され、予備加熱処理が行われる。なお、プレヒータ部4内においては、基板Gは、等速度で搬送される(図3のS2)。そして、基板Gが基板温度検出センサ46上を通過する際に、基板Gの温度を連続的に、または断続的に検出し、検出結果を制御部40に伝える(図3のS3)。
【0040】
続いて、基板Gは、メインヒータ部5に搬入され、加熱処理が行われる。そして、基板Gの先端を基板検出センサ45が検出したら(図3のS4)、制御部40からの指令により第3の搬送部2cにおける基板搬送速度を制御する(図3のS5)。
この際に、基板温度検出センサ46による温度検出結果に基づいて、第3の搬送部2cにおける基板搬送速度を変更する。
【0041】
具体的には、基板Gにおいて、温度検出結果が所定の温度(例えば100℃)より高い領域は、メインヒータ部5から早く搬出されるように制御し、所定の温度より低い領域は、メインヒータ部5に留まる時間が長くなるように制御される。
【0042】
そして、温度検出結果に対応する基板搬送速度を記憶部80から読み出し、第3の搬送部2cにおける基板搬送速度を制御する。このように、第3の搬送部2cにおける基板搬送速度を制御することにより、メインヒータ部5から搬出される基板Gの温度を基板Gの面内で均一にすることができる。
【0043】
例えば、図4に示すように、基板Gの進行方向と直交する方向に基板上の領域を複数に分割し、この分割したそれぞれの領域(E1、E2、E3、・・・En)がメインヒータ部5内に留まる時間を、それぞれの領域(E1、E2、E3、・・・En)毎に制御するのである。なお、メインヒータ部5内に留まる時間を制御するには、メインヒータ部5内での基板の搬送速度を制御すればよい。上述したような制御を行うことにより、基板Gの面内での温度分布を均一化することができる。このようにして、1枚目の基板Gの熱処理が終了する(図3のS6)
【0044】
なお、上述の実施形態では、1枚目の基板Gが搬送されながら、熱処理を行う例を示した。通常は、1枚目の基板Gに続いて、2枚目以降の基板Gが処理される。所定の枚数の基板Gの熱処理が終了するまで(図3のS7)、1枚目の基板Gに続いて、所定の間隔で2枚目以降の基板Gが基板搬入部3の基板搬送路2を搬送される(図3のS2)。このようにして、所定の枚数(例えば15枚)の基板Gが、基板搬入部3の基板搬送路2を所定の間隔で搬送され、加熱処理される。
【0045】
なお、上記の実施の形態では、プレヒータ部4の後端に基板温度検出センサ46を配置した。これは、この位置が基板Gにおける面内での温度のばらつきが一番大きくなると予測されるからである。しかし、基板温度検出センサ46の位置は、この位置に限られず、プレヒータ部4から、メインヒータ部5の中央付近までのどこか他の位置に配置してもよい。
【0046】
また、基板温度検出センサ46の形状を、基板Gの搬送方向と直交する方向(Y方向)に長い形状としてもよい。このようにすれば、基板GのY方向の短冊状の領域の温度をさらに精度良く検出することができる。
【0047】
また、上述の実施の形態では、プレヒータ部4からメインヒータ部5内の中央領域にかけて設けられたコロ20により第2の搬送部2bが形成され、メインヒータ部5内の中央領域から基板搬出部6にかけて設けられたコロ20により第3の搬送部2cが形成されていた。そこで、他の実施形態として、プレヒータ部4だけに設けられたコロ20で形成される領域を第2の搬送部2bとし、メインヒータ部5と基板搬出部6とに設けられたコロ20で形成される領域を第3の搬送部2cとしてもよい。
【0048】
また、他の実施形態として、第3の搬送部2cをメインヒータ部5と基板搬出部6とに分割してもよい。その場合、メインヒータ部5に対応する搬送部と、基板搬出部6に対応する搬送部とを、各々個別に基板搬送速度を制御できる構成としてもよい。
【0049】
また、他の実施形態として、プレヒータ部4だけに設けられたコロ20で形成される領域を第2の搬送部2bとし、メインヒータ部5に対応する基板搬送部を第3の搬送部2cとし、更に第3の搬送部2cを複数の領域に分割し、その分割された領域毎に基板搬送速度を制御できる構成としてもよい。
【0050】
また、上記した実施の形態を部分的に組み合わせて実施してもよく、そうすることにより、さらに基板Gの加熱処理終了時における基板面内温度分布が向上する可能性がある。
【0051】
以上の実施を行うことにより、プレヒータ部4で生じた基板Gの面内での温度のばらつきを、その後段に位置するメインヒータ部5に基板Gが留まる時間を制御(基板の搬送速度を制御)して、基板面内での温度のばらつきを低減することができる。
【0052】
また、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、上述の実施の形態は、FPDの基板を加熱処理する例であったが、本発明は、基板がFPDの基板以外の半導体ウェハ、フォトマスク用のマスクレチクルなどの他の基板である場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 加熱処理ユニット(熱処理装置)
2 基板搬送路
2b 第2の搬送部
2c 第3の搬送部
4 プレヒータ部
5 メインヒータ部
8 チャンバ
8A 第1のチャンバ
8B 第2のチャンバ
17 下部面状ヒータ
18 上部面状ヒータ
20 コロ(基板搬送手段)
23 下部面状ヒータ
24 上部面状ヒータ
40 制御部(制御手段)
45 基板検出センサ(基板検出手段)
46 基板温度検出センサ(基板温度検出手段)
G 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に搬送しつつ基板に加熱処理を行う熱処理装置であって、
基板搬送路を有し、基板を前記基板搬送路に沿って水平に搬送する基板搬送手段と、
前記基板搬送路に沿って配置され、基板を加熱するための第1の加熱手段と、
前記搬送路に沿って、かつ、前記第1の加熱手段の後段に配置され、基板を加熱するための第2の加熱手段と、
前記第1の加熱手段で加熱された基板の温度を検出するための基板温度検出手段と、
この基板温度検出手段の検出結果に基づいて、前記第2の加熱手段に対応する前記基板搬送路における前記基板搬送手段の基板搬送速度を制御する制御部と、
を有することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記第1の加熱手段の設定温度が、前記第2の加熱手段の設定温度よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記基板温度検出手段で温度を検出した基板が、前記基板搬送路の所定の位置に達したことを検出する基板検出手段を有し、
前記基板検出手段は、前記第2の加熱手段に対応する前記基板搬送路の所定の位置より前段に配置され、
前記基板検出手段が基板を検出した際に、前記制御部に基板の検出が伝えられ、前記制御部が前記第2の加熱手段に対応する前記基板搬送手段の基板搬送速度を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
基板を水平に搬送しつつ基板を加熱する熱処理方法であって、
基板を水平に所定の速度で搬送しつつ、第1の温度で基板を加熱する第1の加熱工程と、
前記第1の加熱工程後、加熱された基板の温度を検出する温度検出工程と、
前記温度検出工程後、基板の温度の検出結果に基づいて、基板の搬送速度を変更することによって、加熱領域を通過する加熱処理時間を変更して加熱する第2の加熱工程と、
を有することを特徴とする熱処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−98300(P2013−98300A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238797(P2011−238797)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】