説明

熱可塑性エラストマー組成物

オイルフリーエラストマーを5〜95重量%と、結晶性ポリオレフィン系重合体20〜50重量部と弾性オレフィン系共重合体50〜80重量部とを合計100重量部含むポリオレフィン組成物を95〜5重量%とを含む熱可塑性エラストマー組成物。この熱可塑性エラストマー組成物は、架橋剤0.02〜10重量%を場合により共架橋剤と一緒に含んでいてもよく、(a)、(b)、および架橋剤の総重量は、過酸化物、ヒドロシラン、またはフェノール樹脂から選択される。本発明はさらに、この熱可塑性エラストマー組成物を含む物品、ならびにこの熱可塑性エラストマー組成物の食品包装、工業用途、消費者用途、医療用途、シール材、自動車の内装部品、および低フォギング性の例えばエアバッグやダッシュボード用途における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物に関する。さらに本発明は、該熱可塑性エラストマー組成物を含む物品に関する。本発明は、該熱可塑性エラストマー組成物の使用にも関する。
【0002】
熱可塑性エラストマー組成物は、「Handbook of Thermoplastic Elastomers(熱可塑性エラストマー便覧)、第3章、ヴァン・ノストランド・ラインホルド(Van Nostrand Reinhold)、ニューヨーク(New York)(19**)」より周知である。ここに記載されている熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性ポリオレフィン系重合体、エラストマー、およびオイルのブレンド物を含むものである。典型的には、このエラストマーは、油展された高分子量ゴムである。この種のエラストマーを使用して、機械特性および弾性が良好なエラストマー組成物を得る。熱可塑性エラストマーを製造する際は、最終組成物の流動性の改善を目的としてある程度の余分なオイルが添加されるのが通常である。周知の熱可塑性エラストマー組成物の多くは望ましい特性を有しているが、熱可塑性エラストマー組成物中に存在するオイルや他の低分子量成分の移行が起こってしまうため、この組成物は、例えば医療用、食品用、または車の内装用として必ずしも好ましいとは言えないようである。オイルの移行やブリードは問題であり、このことはEP−A−574169号明細書および特許第3261728号公報により周知である。これらの出願においてはEPDMまたはEPM系のゴム組成物が開示されており、オイルの使用を最小限にするかまたはオイルを一切使用しないかのいずれかによってオイルのブリードが抑えられている。しかしながらこの出願においては、低分子量成分の移行の減少について一切言及されていない。
【0003】
低分子量成分の移行については、米国特許第6100333A号明細書に開示されている。順次重合を行うことにより製造された加硫型ポリオレフィン組成物が、組成物の硬度を調節することを目的として伸展油に含浸されている。ポリオレフィン組成物をオイルに含浸させることにより低分子量成分のブルームの傾向が著しく低減されることが開示されている。
【0004】
しかしながら、オイルを使用することなく、例えば包装された食品、特に脂肪を含む食品中への低分子量成分の移行やブルームを低減する(もしこのようなことが起こればその食品を食用として使用することができなくなるであろう)ことが必要である。
【0005】
本発明の目的は、低分子量成分、特にエタノール中に抽出可能な低分子量成分の移行が少ない熱可塑性エラストマー組成物を提供することにある。
【0006】
この目的は、
(a)オイルフリーエラストマーを5〜95重量%と、
(b)結晶性ポリオレフィン重合体20〜50重量部と弾性オレフィン系共重合体50〜80重量部とを合計100重量部含むポリオレフィン組成物を95〜5重量%と、
を含む熱可塑性エラストマー組成物によって達成される。
【0007】
驚くべきことに、熱可塑性エラストマー組成物が成分(a)および(b)を含むことにより、エタノール中に抽出可能な低分子量成分の移行が大幅に低減されることが見出された。さらに驚くべきことには、オイルをオイルフリーエラストマーに替えても、物性と加工性とのバランスの良い熱可塑性エラストマーを依然として製造することができる。本発明によるオイルフリーエラストマー(a)は適度な量のオイルで伸展されていないエラストマーであり、非油展エラストマーとも呼ばれる。非油展エラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体(以下、EPMと称する)、エチレン−プロピレン−ジエン三元重合体(以下、EPDMと称する)、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ポリイソプレン、ブチルゴム、またはハロゲン化ブチルゴムが挙げられる。好ましくは、非油展エラストマーとしてEPMまたはEPDMを使用する。EPDMは、好ましくは、エチレンモノマー単位を50〜90重量部と、アルファ−オレフィン由来のモノマー単位を48〜30重量部と、非共役ジエン由来のモノマー単位を1〜12重量部とを含む。アルファ−オレフィンとしては、好ましくは、プロピレンを使用する。非共役ジエンとしては、好ましくは、ジシクロペンタジエン(DCPD)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、もしくはビニルノルボルネン(VNB)、またはこれらの混合物を使用する。より好ましくは、オイルフリーエラストマーとして、EPMとEPDMとの混合物を使用する。EPMとEPDMとの混合物を使用する場合は、EPM/EPDMの重量比を10/90〜90/10の間で変えてもよい。オイルフリーエラストマーの量は、熱可塑性エラストマー組成物の5〜95重量%の間、好ましくは25〜75重量%の間で変わる。しかしながら、オイルを含まないものであれば、オイルフリーエラストマーに替えて他の重合体、例えばSBS、SEBS、またはSEPSのようなスチレン系重合体を用いることも可能である。
【0008】
ポリオレフィン組成物(b)は、結晶性ポリオレフィン20〜50重量部と弾性オレフィン系共重合体50〜80重量部とを合計100重量部含む。より好ましくは、このポリオレフィン組成物は、結晶性ポリオレフィン20〜40重量部と弾性オレフィン系共重合体60〜80重量部とを合計100重量部含む。最も好ましくは、結晶性ポリオレフィン30〜40部と弾性オレフィン系共重合体60〜70部とを合計100重量部含む。
【0009】
好ましくは、このポリオレフィン組成物は、結晶性ポリオレフィンを20〜50重量部と、オレフィンがCH=CHR(式中、Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキルである)であり、適切な場合はポリエンから誘導された単位をより少ない比率で含む弾性オレフィン系共重合体を50〜80重量部とを含む。
【0010】
結晶性ポリオレフィンは、好ましくは、ポリプロピレン単独重合体ならびにエチレンおよび/または4〜10個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンを0.5〜15mol%含むプロピレン共重合体から選択され、前記プロピレン重合体は、例えば、分子量分布(MWD)が3.5を超える。
【0011】
プロピレン単独重合体は、好ましくは、キシレンへの溶解度を測定することにより求められるアイソタクチックインデックスが85を超え、より好ましくは90を超える。好ましくは、プロピレン重合体のMWDは5を超え、通常は5〜50である。プロピレン重合体のメルトインデックス(ASTM1238の条件「L」)は、通常は0.1〜50g/10分である。好ましくは、メルトインデックスは、0.1〜30である。プロピレン共重合体は、例えば、プロピレン以外のアルファ−オレフィンを2〜10mol%含む。好ましくは、このアルファ−オレフィンは、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、および4−メチル−1−ペンテンを含む群から選択される。なかでもエチレンおよび1−ブテンが特に好ましい。
【0012】
本発明のプロピレン重合体は、周知の技法に従い、アルキルアルミニウムと活性形態にあるMgClに担持された遷移金属を含む固体成分との反応生成物を含む従来のチーグラー/ナッタ型触媒の存在下に、プロピレンを、適切であればエチレンまたは他のアルファ−オレフィンの存在下に重合させることによって調製することができる。プロピレン重合体の好適な調製方法は、例えば、EP−A−395083号明細書、EP−A−553805号明細書、およびEP−A−553806号明細書に記載されている。この調製方法およびその生成物の特性に関する記載を参照により本明細書に援用する。
【0013】
弾性オレフィン系共重合体は、好ましくは、エチレンとアルファ−オレフィンCH=CHR(Rは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル)との共重合体から選択される。より好ましくは、アルファ−オレフィンは、プロピレンまたはブテンである。前記共重合体におけるエチレンから誘導された単位の含量は、好ましくは40〜70重量%、より好ましくは50〜70重量%、最も好ましくは60〜70重量%である。アルファ−オレフィンから誘導された単位の含量は、好ましくは30〜60重量%、より好ましくは30〜50重量%、最も好ましくは30〜40重量%である。
【0014】
特に好ましい共重合体は、ポリエンから誘導された単位を0.1〜20重量%、好ましくは1〜10%含む。この種のポリエンは、トランス−1,4−ヘキサジエン、シス−1,4−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、および11−メチル−1,10−ドデカジエン;例えば、シス−1,5−シクロオクタジエン、5−メチル−1,5−シクロオクタジエン等の単環式ジオレフィン;例えば、4,5,8,9−テトラヒドロインデン、6−および/または7−メチル−4,5,8,9−テトラヒドロインデン等の二環式ジオレフィン;例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、exo−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン等のアルケニル−またはアルキリデン−ノルボルネン;例えば、ジシクロペンタジエン、トリシクロ−[6.2.1.0,7]4,9−ウンデカジエンおよびその4−メチル誘導体等の多環式ジオレフィン、1,4−ヘキサジエン、イソプレン、1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン等からなる群から選択してもよい。なかでも5−エチリデン−2−ノルボルネンが特に好ましい。エチレン弾性共重合体の結晶化度は低い方が好ましい。本発明に使用されるエチレン弾性共重合体のMWDは3未満であることが好ましく、通常は2〜3である。
【0015】
この弾性オレフィン系共重合体は、エチレンと、アルファ−オレフィンと、適切であればポリエンとの混合物を、メタロセン化合物およびアルモキサンを含む触媒系の存在下に重合させることによって有利に調製することができる。
【0016】
ポリオレフィン組成物(b)は、この2つの成分を、均質化機能(homogenizing power)の高いバンバリー(Bunbury)型のインターナルミキサーを用いて機械的に混合するなどの周知の手法を用いて調製してもよい。別法として、有利には、反応器内で順次重合を行うことによって前記の組成物を直接得てもよい。実際、この技法に従い得られた組成物は、単純な機械的混合により得られた組成物よりも良好な弾性を示す。上述のポリオレフィン組成物(b)は、好ましくは、国際公開第9635751号パンフレットに記載されている方法によって調製される。リアクターTPOとしても知られるこれらのポリオレフィン組成物は、例えば、ハイファックス(Hifax)(登録商標)の商品名で市販されている。
【0017】
しかしながら、このポリオレフィン組成物(b)を、他の重合体、例えば非晶性ポリプロピレンまたは従来技術においてプラストマーとして知られているエチレン共重合体に替えてもよい。
【0018】
(a)および(b)を含む熱可塑性エラストマー組成物は、好ましくは架橋剤0.02〜10重量%を、場合により共架橋剤と一緒に、熱可塑性エラストマー組成物の総重量が100となるように含む。
【0019】
使用可能な架橋剤は、硫黄、硫黄化合物、金属酸化物、マレイミド、フェノール樹脂、過酸化物等の、当該技術分野において一般に知られているものである。こうした加硫方式は現状の技術から周知であり、米国特許第5100947A号明細書に記載されている。シラン化合物を加硫剤として使用することも同様に可能であり、その例として挙げられるのがヒドロシランまたはビニルアルコキシシランである。少なくとも1つのオレフィン性二重結合およびケイ素に直接結合した1〜3つのアルコキシ基を有するシランで、エラストマーにラジカルグラフト(free radical grafting)させることが可能である。こうしてグラフトされたエラストマーを、HOの影響下に、または縮合反応によって架橋させる。この加硫方式は現状の技術から周知であり、EP−A−510559号明細書に記載されている。好ましくは、有機過酸化物、フェノール樹脂、またはヒドロシランを架橋剤として使用する。
【0020】
有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−(2,5−ジ−tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−2,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイドが挙げられる。
【0021】
架橋剤の量は、好ましくは、熱可塑性エラストマー組成物の総重量に対し0.02〜10重量%、より好ましくは0.4〜5重量%である。
【0022】
場合により、加硫時に共架橋剤を使用してもよい。好適な共架橋剤としては、例えば、ポリブチレン、液状1,2−ポリブタジエン、イソプレン、ブタジエン/イソプレン混合物、ジビニルベンゼン、硫黄、p−キノンジオキシム、ニトロベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリアリールシアヌレート、トリメチロールプロパン−N,N−m−フェニレンジマレイミド、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリールメタクリレート、ビニルブチレート、およびビニルステアレートが挙げられる。共架橋剤の量は、好ましくは、熱可塑性エラストマー組成物の総重量に対し0〜2.00重量%である。
【0023】
加硫の際は動的加硫を行うことが好ましい。この技法に従い操作を行う場合は、本発明の組成物を、架橋剤および適切な場合は共架橋剤の存在下に、例えば140〜300℃の温度、好ましくは240〜300℃の温度、より好ましくは、結晶相の融点を超える温度で混練に付すかまたはそれ以外の剪断力を加える。
【0024】
エラストマー組成物の加硫度はゲル含量という項目で表すことができる。ゲル含量は、エラストマーの試料を有機溶剤に浸漬した際の、不溶なエラストマーの量とエラストマー総量(重量)との比率である。この方法は米国特許第5100947A号明細書に記載されている。一般的には、エラストマーの試料を室温で有機溶剤に48時間浸漬する。試料および残留物の両方を秤量した後、熱可塑性エラストマー組成物の全成分の相対量に関する知識に基づき、不溶なエラストマーの量およびエラストマーの総量を算出する。このエラストマー組成物は少なくとも一部が加硫されている。
【0025】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、例えば、補強用および非補強用充填剤、可塑剤、酸化防止剤、安定剤、帯電防止剤、ワックス、起泡剤、滑剤、顔料、難燃剤、および例えばラバー・ワールド・マガジン・ブルー・ブック(Rubber World Magazine Blue Book)に記載されている他の周知の試剤をさらに含んでいてもよい。使用可能な充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、タルク、二酸化チタン、およびカーボンが挙げられる。滑剤としては、例えば、脂肪酸、羊毛脂、膠、松脂のような天然の産物や、ファクチスのような天然の産物の改質物が挙げられる。
【0026】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物(a)、(b)は、スチレン系重合体をさらに含んでいてもよい。スチレン系重合体としては、例えば、スチレン−イソブチレン−スチレン(SIBS)、スチレン−イソブチレン(SIB)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン重合体(SEBS)、または(SBS)と略されるスチレン−ブタジエン−スチレン重合体が挙げられる。好ましくは、スチレン系重合体として、SBSまたはSEBSを使用する。スチレン系重合体の量は、熱可塑性エラストマー組成物の総重量を100として、例えば2〜50重量%、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは5〜20重量%の間で変えてもよい。
【0027】
熱可塑性エラストマー組成物の調製は、例えば従来の混合装置、例えば、バンバリーミキサー、ブランベンダーミキサー(Brabender mixer)、連続ミキサー(例えば、単軸押出機、二軸押出機等)を用いて行う。好ましくは、熱可塑性エラストマー組成物の調製は、二軸押出機を用いて行う。加硫を行う場合は、架橋剤および場合により共架橋剤の全部または一部を押出機の下流の位置で供給してもよい。熱可塑性エラストマー組成物中にスチレン系重合体が存在する場合は、架橋剤をスチレン系重合体よりも前または後に供給してもよい。好ましくは、この供給は、スチレン系重合体を注入する前に行う。また、スチレン系重合体は、オイルフリーエラストマー(a)およびポリオレフィン組成物(b)と一緒に押出機の入口から供給してもよい。また、オイルフリーエラストマー(a)、ポリオレフィン組成物(b)、および通常の添加剤をバッチ式混練機に供給して組成物を混合することによって熱可塑性エラストマー組成物を2段階工程で調製してもよく、その後に顆粒を製造してもよい。加硫を行う際には、この顆粒を例えば二軸押出機に供給してもよい。架橋剤および場合によりスチレン系重合体の全部または一部を押出機の下流の位置で供給してもよい。しかしながら、スチレン重合体をバッチ式混練機に供給するかまたは二軸押出機の入口で供給してもよい。
【0028】
驚くべきことに、本発明による熱可塑性エラストマー組成物は様々な技法を用いた重合体の加工が可能となる低い硬度を有する。この硬度は、例えば、70ショアA(Shore A)未満、好ましくは65ショアA未満である。
【0029】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、例えば、押出、成形(例えば、射出成形または吹き込み成形)、または熱成形等のあらゆる方法による物品の製造に使用することができる。物品の例としては、筆記具、様々な容器のシール材、保存瓶、食品保存容器用シールパッキン、キャップおよび蓋材のシール材、ならびに様々な容器のシール材が挙げられる。
【0030】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、食品の包装、工業用途、消費者用途(consumer application)、食品消費者用途(food consumer application)、医療用途、自動車内装部品のシール材(seals auto interior parts)、ならびに低フォギング性の例えばエアバッグやダッシュボード用途に使用してもよい。
【0031】
以下に示す例は、例示を目的としたものであって、本発明自体を限定するものではない。
【0032】
以下に示す試験方法を用いて熱可塑性エラストマー組成物の様々な特性を分析した。
・ASTM D−2240に準拠した硬度
・ASTM D−3835に準拠した、206 1/s、220Cにおける見かけの剪断粘度 ISO815に準拠した圧縮永久ひずみ
・EC2002−72に準拠した抽出可能成分の移行
【0033】
移行試験に関しては、以下に説明する手順に従いエタノール抽出可能成分の量を測定する。
−エタノール(リクロソルブ(Lichrosolv)、>99.9%)950mlを脱塩水50mlに加えて混合することによって調製した95%エタノールを抽出液として使用した。
ガラス製品はすべて使用前に全体を抽出液で洗浄した。
−試料を小片に裁断した。
−抽出前に、試料をティッシュおよびエタノールできれいにしてゴミその他の汚染物質を取り除いた。
−100mlのショットフラスコ(Schott flask)全体を抽出液で洗浄した後、乾燥させた。
−試料約1dm2(1dm2=12.68g)をショットフラスコに装入した。
−1dm2当たり約100mlの抽出液をフラスコに加えた。
−試料を40℃で240h時間抽出した。
−アルミニウム皿で抽出液を50℃で蒸発乾固させた。フラスコを抽出液20mlで3回流し、これも同様に蒸発させた。アルミニウム皿は、使用前に全体を抽出液で洗浄し、乾燥させた後に秤量した。
−残留物を秤量した。
−実験を7回実施した。
−ブランク実験(試料を用いないこと以外は同じ)も実施した。結果をブランク値に対し較正した。
【0034】
実施例1
EPM(ML(1+4)100℃が51)21.53重量%と、ハイファックス7334XEP(登録商標)75.35重量%および添加剤0.43重量%とを、40mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融温度260℃で混合する。押出機の下流でトリゴノックス(Trigonox)101E30(登録商標)2.69重量%を注入する。この組成物の特性および結果を表1に示す。
【0035】
実施例2
EPM(ML(1+4)100℃が51)14.40重量%、EPDM(ML(1+4)100℃が55)14.40重量%、ハイファックス7334XEP(登録商標)67.21重量%、および添加剤0.38重量%を、40mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融温度260℃で混合する。押出機の下流でトリゴノックス101E30(登録商標)3.60重量%を注入する。この組成物の特性および結果を表に示す。
【0036】
実施例3
EPM(ML(1+4)100℃が51)17.91重量%、EPDM(ML(1+4)100℃が55)8.96重量%、ハイファックス7334XEP(登録商標)62.70重量%、添加剤0.35重量%、およびSEBS6.72重量%を、40mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融温度260℃で混合する。押出機の下流でトリゴノックス101E30(登録商標)3.36重量%を注入する。この組成物の特性および結果を表1に示す。
【0037】
実施例4
EPM(ML(1+4)100℃が51)14.40重量%、EPDM(ML(1+4)100℃が55)14.40重量%、ハイファックス7334XEP(登録商標)70.81重量%、および添加剤0.38重量%を、40mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融温度260℃で混合する。この組成物の特性および結果を表1に示す。
【0038】
実施例5
EPM(ML(1+4)100℃が51)14.40重量%、EPDM(ML(1+4)100℃が55)14.40重量%、ハイファックス7334XEP(登録商標)62.21重量%、および添加剤0.35重量%を、40mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融温度260℃で混合する。押出機の下流でトリゴノックス101E30(登録商標)3.36重量%およびライコン(Ricon)154D(登録商標)5重量%を注入する。この組成物の特性および結果を表1に示す。
【0039】
比較実験A
オイル100phr、ポリプロピレン14.08重量%、およびタルク5.87重量%を含む油展EPDM62.32重量%を、40mmの同方向回転二軸押出機を用いて混合する。下流でトリゴノックス101E30(登録商標)0.94重量%および共架橋剤0.32重量%を注入する。特性および結果を表2に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
表1の実施例1から、エタノール抽出可能成分の移行が著しく低減されたことが明らかである。
【0043】
実施例2からは、2種の異なるオイルフリーエラストマーおよびポリオレフィン組成物を含む加硫された熱可塑性エラストマー組成物によりエタノール抽出可能成分の移行がより一層低下する結果となることが明らかである。実施例3からは、SEBSを添加することによって抽出可能成分の移行がわずかに増加することがわかる。実施例4からは、非架橋の熱可塑性エラストマー組成物でも同様にエタノール抽出可能成分の移行が少ないことが明らかである。実施例5から推論できるのは、熱可塑性エラストマー組成物を共架橋剤の存在下に架橋した場合にエタノール抽出可能成分の移行が非常に低水準になることである。
【0044】
表2からは、上述の成分を含む加硫された熱可塑性エラストマーにより、抽出可能成分の移行が増加することが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)オイルフリーエラストマーを5〜95重量%と、
(b)結晶性ポリオレフィン系重合体20〜50重量部と弾性オレフィン系共重合体50〜80重量部とを合計100重量部含むポリオレフィン組成物を95〜5重量%と、
を含む熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
架橋剤0.02〜10重量%を、場合により共架橋剤と一緒に、(a)、(b)、および前記架橋剤の総重量が100となるように含む、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記架橋剤が、過酸化物、ヒドロシラン、またはフェノール樹脂から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
前記オイルフリーエラストマー(a)が、EPM、EPDM、またはEPMとEPDMとの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
前記ポリオレフィン組成物(b)が、結晶性ポリオレフィン系重合体としてのポリプロピレン単独重合体またはプロピレン共重合体と、弾性オレフィン系共重合体としての式CH=CHR(式中、Rは、炭素原子1〜10個を有するアルキル)を有するオレフィンとのエチレン共重合体とを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
前記組成物が、スチレン系重合体を、前記熱可塑性エラストマー組成物の総重量が100となるように含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】
前記組成物が、スチレン系重合体2〜50重量%を、前記熱可塑性エラストマー組成物の総重量が100となるように含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項8】
前記スチレン系重合体が、SBS、SEBS、またはSEPSから選択されることを特徴とする、請求項6〜7のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項9】
前記共架橋剤が、1,2−ポリブタジエンであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を含む物品。
【請求項11】
請求項1〜9に記載の熱可塑性エラストマー組成物の、食品包装、工業用途、消費者用途、医療用途、シール材、自動車の内装部品、ならびに低フォギング性の例えばエアバッグおよびダッシュボード用途における使用。

【公表番号】特表2007−518863(P2007−518863A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550977(P2006−550977)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000039
【国際公開番号】WO2005/068547
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】