説明

熱可塑性ポリウレタン

【課題】良好な成形性を維持しつつ耐熱性、耐加水分解性の改善された熱可塑性ポリウレタンを提供すること。
【解決手段】温度90℃、相対湿度95%の雰囲気で、500時間、湿熱老化試験を行った際の破断伸度保持率が80%以上である熱可塑性ポリウレタン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐湿熱性、耐摩耗性の改善された熱可塑性ポリウレタンに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタンは、機械的特性、耐摩耗性、弾性回復性、耐油性、耐屈曲性等の諸特性にすぐれ、しかも溶融成形が可能であるため、従来の合成ゴムやプラスチックの代替材料として、パッキン、自動車用部品、ホース、ベルト、軸受、シール材等の広範な用途に用いられている。さらに、昨今の使用用途の拡大により、材料としての耐熱性や耐加水分解安定性、耐摩耗性等のさらなる向上が求められている。
【0003】
ポリマー鎖中に含まれるハードセグメントの含有割合を高めることにより熱可塑性ポリウレタンの機械的特性や耐熱性の向上を図ることは可能であるが、ハードセグメント、水素結合濃度の増大は溶融粘度の増加、成形性の低下を招き、成形品の外観不良を引き起こすことがあり、また水素結合の増加は水分に対する親和性を高め、ポリマー鎖中のウレタン結合が水分により切断されやすくなり、加水分解に対する安定性を低下させることがある。
【0004】
反応原料中のハードセグメントの比率、すなわち鎖延長剤とこれに対応するイソシアネート成分の全体に対する比率を下げた場合には、成形時の溶融粘度が低下し成形性は向上するが、機械的特性、耐熱性、耐加水分解安定性等が低下することがある。
【0005】
耐加水分解安定剤として、カルボジイミド化合物、例えば、線状のモノあるいはポリカルボジイミドの使用が提案(特許文献1から4)され、ある程度の成果が見られているが、より高い耐加水分解安定性が必要とされており、さらに耐熱性などに関しては、未だ不十分である。
かかる問題が解決され、耐熱性や耐加水分解安定性の改善された熱可塑性ポリウレタンの提案が待たれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−255752号公報
【特許文献2】特開平9−272726号公報
【特許文献3】特開平6−287442号公報
【特許文献4】特表平10−510311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、良好な成形性を維持しつつ耐熱性、耐加水分解性の改善された熱可塑性ポリウレタンおよびその製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意研究を進め、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分および鎖延長剤を反応させてポリウレタン化反応させるに際し、環状カルボジイミドを含むポリイソシアネート成分を反応させてなる熱可塑性ポリウレタンが、すぐれた耐熱性および耐加水分解安定性を有することを見出し本発明に到達した。
【0009】
すなわち本発明の課題は
(1)温度90℃、相対湿度95%の雰囲気で、500時間、湿熱老化試験を行った際の破断伸度保持率が80%以上である熱可塑性ポリウレタンによって達成される。
【0010】
さらに、本発明の他の目的は、
(2)ポリオール(A)成分、ポリイソシアネート(B)成分および鎖延長剤(C)を触媒の存在下反応させて熱可塑性ポリウレタンを製造するにあたり、ポリイソシアネート(B)成分として、カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている下記式(i)で表される環状構造を含む化合物(D)を少なくとも用いる、上記(1)記載の熱可塑性ポリウレタンの製造方法によって達成される。
【0011】
【化1】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。)
【0012】
上記発明には、以下も包含される。
(3)触媒の存在下反応させるポリイソシアネート(B)成分100重量部を基準として成分(D)が5から90重量部を占める、上記(2)に記載の熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱可塑性ポリウレタンは、耐熱性、耐加水分解性および耐磨耗性が改善され、しかも溶融成形が可能であるため、従来の合成ゴムやプラスチックの代替材料として、より広い範囲に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の熱可塑性ポリウレタンは温度90℃、相対湿度95%の雰囲気で、500時間、湿熱老化試験を行った際の破断伸度保持率が80%以上であることを特徴とする。
本発明の特性を有する熱可塑性ポリウレタンは、耐熱性、耐加水分解性および耐磨耗性にすぐれ、しかも溶融成形が可能であるため、従来の合成ゴムやプラスチックの代替材料として、より広い範囲に適用することができる。
【0015】
上記の熱可塑性ポリウレタンは、例えばポリオール(A)成分、ポリイソシアネート(B)成分および鎖延長剤(C)を触媒の存在下反応させて熱可塑性ポリウレタンを製造するにあたり、ポリイソシアネート(B)成分として、カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている下記式(i)で表される環状構造を含む化合物(D)を少なくとも用いる方法によって得ることができる。

【0016】
【化2】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。)
【0017】
触媒の存在下反応させるポリイソシアネート(B)成分100重量部を基準として成分(D)が5から90重量部占めることが好ましい。
反応させるポリイソシアネート(B)成分100重量を基準として成分(D)が100重量部であるときには、成分(D)として、カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を2個以上含有する化合物を少なくとも用いることが好ましい。
【0018】
本発明の熱可塑性ポリウレタンは好ましくは末端活性水素を有する長鎖グリコールであるポリオール(A)成分、式(i)で表される環状カルボジイミド化合物を含むポリイソシアネート(B)成分および短鎖グリコールである鎖延長剤(C)を触媒の存在下反応させてなる熱可塑性ポリウレタンである。
【0019】
【化3】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。)
【0020】
本発明の環状カルボジイミド化合物は上記のように環状構造を有する。環状カルボジイミド化合物は、環状構造を複数有していてもよい。
環状構造は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている。一つの環状構造中には、1個のカルボジイミド基のみを有するが、例えば、スピロ環など、分子中に複数の環状構造を有する場合にはスピロ原子に結合するそれぞれの環状構造中に1個のカルボジイミド基を有していれば、化合物として複数のカルボジイミド基を有していてよいことはいうまでもない。
【0021】
熱可塑性ポリウレタンのポリイソシアネート成分として線状ポリカルボジイミドを使用することは、公知であるが、本発明の環状カルボジイミド化合物は、上記の環状構造を有することにより、従来の線状構造を有するカルボジイミド化合物に比較して、より温和な条件で、効率的に作用するため、本発明の式(i)で表される環状カルボジイミド化合物を含むポリイソシアネート成分により、本発明の熱可塑性ポリウレタンはより高い耐熱性、耐加水分解安定性および耐磨耗性を好適に満たすことができる。
【0022】
なお、本発明において、ポリイソシアネート(B)成分とは、ポリイソシアネート化合物成分と環状カルボジイミド化合物成分の両者の合計を意味する。
環状構造中の原子数は、好ましくは8〜50、より好ましくは10〜30、さらに好ましくは10〜20、特に好ましくは10〜15である。
【0023】
ここで、環状構造中の原子数とは、環構造を直接構成する原子の数を意味し、例えば、8員環であれば8、50員環であれば50である。環状構造中の原子数が8より小さいと、環状カルボジイミド化合物の安定性が低下して、保管、使用が困難となるばかりでなく、ウレタン結合形成反応が好適に進行しない場合があるためである。また反応性の観点からは環員数の上限値に関しては特別の制限はないが、50を超える原子数の環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より環状構造中の原子数は好ましくは、10〜30、より好ましくは10〜20、特に好ましくは10〜15の範囲が選択される。
【0024】
環状カルボジイミド化合物の分子量は、好ましくは100〜1,000である。100より低いと、環状カルボジイミド化合物について構造の安定性や揮発性が問題となる場合がある。また1,000より高いと、環状カルボジイミドの製造上、希釈系での合成が必要となったり、収率が低下したりするため、コスト面で問題となる場合がある。かかる観点より、より好ましくは100〜750であり、さらに好ましくは250〜750である。
【0025】
以下、上記式(i)で表される化合物について詳細に記載する。
式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。
この結合基の価のうち2つの価は環状構造を形成するために使用される。Qが3価あるいは4価の結合基である場合、単結合、二重結合、原子、原子団を介して、ポリマーあるいは他の環状構造と結合している。
【0026】
結合基は、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基またはこれらの組み合わせであることが好ましい。結合基として、環状構造を形成するための必要炭素数を有するものが選択される。組み合わせの例としては、アルキレン基とアリーレン基が結合した、アルキレン−アリーレン基のような構造などが挙げられる。
【0027】
結合基を構成する脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、各々ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。ヘテロ原子とは、O、N、S、Pを指す。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0028】
本発明においてハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
結合基(Q)は、下記式(i−1)、(i−2)または(i−3)で表される2〜4価の結合基であることが好ましい。
【0029】
【化4】

式中、ArおよびArは各々独立に、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基であり、ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。
【0030】
芳香族基として、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基(2価)として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。
【0031】
これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。またこれらの芳香族基はヘテロ原子を含んで複素環構造を有していてもよい。ヘテロ原子として、O、N、S、Pが挙げられる。
【0032】
およびRは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、これらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせであり、ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。
【0033】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。
【0034】
これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。またこれらの脂肪族基はヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロ原子として、O、N、S、Pが挙げられる。
【0035】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。シクロアルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。シクロアルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。
【0036】
これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。また、これらの脂環族基はヘテロ原子を含んで複素環構造を有していてもよい。ヘテロ原子として、O、N、S、Pが挙げられる。
【0037】
芳香族基として、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。
【0038】
これら芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
また、これらの芳香族基はヘテロ原子を含んで複素環構造を有していてもよい。ヘテロ原子として、O、N、S、Pが挙げられる。
【0039】
およびXは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。
【0040】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。
【0041】
これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。またこれらの脂肪族基はヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロ原子として、O、N、S、Pが挙げられる。
【0042】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。
【0043】
これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。また、これらの脂環族基はヘテロ原子を含んで複素環構造を有していてもよい。ヘテロ原子として、O、N、S、Pが挙げられる。
【0044】
芳香族基として、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。
【0045】
これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。また、これらの芳香族基はヘテロ原子を含んで複素環構造を有していてもよい。ヘテロ原子として、O、N、S、Pが挙げられる。
【0046】
s、kは各々独立に、0〜10の整数、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0〜1の整数である。sおよびkが10を超えると、環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より整数は好ましくは0〜3の範囲が選択される。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。
【0047】
は、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。
【0048】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。
【0049】
これら脂肪族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。また、これらの脂肪族基はヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロ原子として、O、N、S、Pが挙げられる。
【0050】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。
【0051】
これら脂環族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリーレン基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。また、これらの脂環族基はヘテロ原子を含んで複素環構造を有していてもよい。ヘテロ原子として、O、N、S、Pが挙げられる。
【0052】
芳香族基として、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。
【0053】
これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。また、これらの芳香族基はヘテロ原子を含んで複素環構造を有していてもよい。ヘテロ原子として、O、N、S、Pが挙げられる。
【0054】
以上のように、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい。
また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
本発明の環状カルボジイミド化合物としては、例えば、以下の化合物が例示される。
【0055】
【化5】

【0056】
【化6】

【0057】
【化7】

【0058】
【化8】

【0059】
【化9】

【0060】
【化10】

【0061】
【化11】

【0062】
【化12】

【0063】
【化13】

【0064】
【化14】

【0065】
【化15】

【0066】
【化16】

【0067】
【化17】

【0068】
【化18】

【0069】
かかる環状カルボジイミド化合物(D)は、単一であるいは二種以上を組合せて、本発明のポリウレタンのポリイソシアネート成分として用いることができる。
【0070】
本発明において、ポリイソシアネート(B)成分中、含有される環状カルボジイミド化合物の量は、ポリイソシアネート(B)成分を基準にして5から100重量%含有することが耐熱性、耐加水分解の観点より好ましい。
【0071】
前述の物性に関して、環状カルボジイミド化合物は多い方が好ましく、前述の基準において5重量%より少ないと、環状カルボジイミドを使用する効果が発揮されない場合がある。
【0072】
しかしながら本発明の環状カルボジイミド化合物のコストと、前述のポリウレタン物性のバランスより、好ましくは、前述の基準において5から90重量%、より好ましくは10から80重量%、さらに好ましくは20から70重量%である。
【0073】
本発明の環状カルボジイミド化合物を含むポリイソシアネート(B)成分には、ポリウレタンの耐熱性、耐加水分解性の観点から、一分子中に、”−N=C=N−”で表されるカルボジイミド基を1つ含む環構造を複数含むカルボジイミド化合物(以下、多価環状カルボジイミド化合物と略記することがある。)を含有することが好ましい。
【0074】
多価環状カルボジイミド化合物の価数(化合物中に存在するカルボジイミド基を1つ含む環構造の数)は製造コストと硬化特性の物性とのバランスより、2から4であり、より好ましくは2から3である。
【0075】
さらに、同様の観点より多価環状カルボジイミド化合物の含有量は環状カルボジイミド化合物(D)の合計重量を基準にして、1から100重量%、より好ましくは10から80重量%、さらに好ましくは20から60重量%である。
【0076】
本発明において、上記多価環状カルボジイミド化合物としては、例えば、以下の化合物が例示される。
【0077】
【化19】

【0078】
【化20】

【0079】
【化21】

【0080】
【化22】

【0081】
【化23】

【0082】
【化24】

【0083】
かかる環状カルボジイミド化合物(D)は、単一であるいは二種以上を組合せて、本発明のポリウレタンのポリイソシアネート成分として用いることができる。
本発明の環状カルボジイミド化合物および多価環状カルボジイミド化合物の製造法は特に限定はなく、従来公知の方法で、好適に製造される。
【0084】
かかる製造方法としては、アミン体からイソシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からイソチオシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からトリフェニルホスフィン体を経由して製造する方法、アミン体から尿素体を経由して製造する方法、アミン体からチオ尿素体を経由して製造する方法、カルボン酸体からイソシアネート体を経由して製造する方法、ラクタム体を誘導して製造する方法などが挙げられる。
【0085】
製造する化合物に応じて、適切な製法を採用すればよいが、例えば、(1)下記式(a−1)で表されるニトロフェノール類、下記式(a−2)で表されるニトロフェノール類および下記式(b)で表される化合物を反応させ、下記式(c)で表されるニトロ体を得る工程、
【化25】

【化26】

(2)得られたニトロ体を還元して下記式(d)で表わされるアミン体を得る工程、
【化27】

(3)得られたアミン体とトリフェニルホスフィンジブロミドを反応させ下記式(e)で表されるトリフェニルホスフィン体を得る工程、および
【化28】

(4)得られたトリフェニルホスフィン体を反応系中でイソシアネート化した後、直接脱炭酸させることによって製造したものは、本願発明に用いる環状カルボジイミド化合物として好適に用いることができる。
(上記式中、ArおよびArは各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい芳香族基である。EおよびEは各々独立に、ハロゲン原子、トルエンスルホニルオキシ基およびメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−ブロモベンゼンスルホニルオキシ基からなる群から選ばれる基である。Arは、フェニル基である。Xは、下記式(i−1)から(i−3)の結合基である。)
【0086】
【化29】

【0087】
【化30】

【0088】
【化31】

【0089】
本発明の熱可塑性ポリウレタンは、末端活性水素を有する長鎖グリコール(ポリオール)と短鎖グリコール(鎖延長剤)と環状カルボジイミドを含むポリイソシアネート(B)成分との重付加反応によってなるが、その製造方法は特に限定無く、従来公知の方法が好適に適用される。たとえば、大量生産方式に適したワンショット法(ポリオール(A)成分、鎖延長剤(C)成分およびポリイソシアネート(B)成分を同時に混合攪拌する方法)あるいは反応斑が発生し難いプレポリマー法(ポリオール(A)成分とポリイソシアネート(B)成分とから形成されたプレポリマーに鎖延長剤(C)を添加し、混合攪拌する方法)等が例示される。
【0090】
末端活性水素を有する長鎖グリコールであるポリオール(A)成分としては、特に限定無く、従来公知のポリオール成分が例示される。すなわち分子量が約500〜6000、好ましくは約1000〜3000のポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系、アクリル系、シリコーン系、1,4−ポリブタジエン系、1,2−ポリブタジエン系、フェノーリック系、ひまし油系等の各種ポリオールや難燃性ポリオール等が例示される。
【0091】
ポリエステル系ポリオールとしては、一般にカプロラクトン系、アジペート系、コポリエステル系のもの等が好んで用いられ、具体的には例えば、ポリカプロラクトン、ポリカーボネートポリオール、さらにはアジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール等のポリオールとの縮合反応生成物等が例示される。
【0092】
ポリエーテル系ポリオールとしては、ポリプロピレングリコール系ポリオール、ポリエチレングリコール系グリコールまたはそれらのエチレンオキサイド変性物、アミン変性物、あるいはポリオキシテトラメチレングリコール等が例示される。これらは単独で使用することもできるが、所望により複数の剤を組合せて使用することもできる。
【0093】
これらのポリオール(A)成分は、これと鎖延長剤(C)、ポリイソシアネート(B)成分との合計を基準にして、約30〜90重量%、好ましくは約40〜70重量%の割合で用いられる。ポリオール成分がこれよりも少なく用いられると成形性が悪化し、一方これよりも多い割合で用いられると耐熱性、耐加水分解安定性や耐磨耗性が悪化することがある。
【0094】
本発明で使用することにできる、環状カルボジイミド以外のイソシアネート成分としては、特に限定無く、従来公知のポリイソシアネート類が例示できる。
具体的には例えば1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族系ジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネートが例示できる。これらは単独で使用することもできるが、所望により複数の剤を組合せて使用することもできる。
【0095】
本発明において、環状カルボジイミドを含むポリイソシアネート(B)成分は、これとポリオール(A)成分、鎖延長剤(C)との合計量を基準にして、約5〜70重量%、好ましくは約15〜40重量%の割合で用いられる。イソシアネート成分がこれよりも多く用いられると成形性が悪化し、一方これよりも少ない割合で用いられると耐熱性、耐加水分解安定性や耐圧縮永久歪特性が悪化するようになる。
【0096】
また、鎖延長剤(C)としては、特に限定無く、従来公知の剤が例示される。具体的には例えば1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,3−ブタンジオール、p−フェニレンジ(β−ヒドロキシエチル)エーテル、p−キシリレングリコール、グリセリンモノアリルエーテル、ジメチロールジヒドロピラン等のグリコール、エチレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ジエチルトルイレンジアミン等のジアミンまたは水等の少なくとも一種が用いられる。
【0097】
ポリウレタン製造触媒としては、特に限定無く、従来公知の触媒系を好適に使用することができる。具体的には例えば、錫系、鉛系、鉄系、チタン系等の有機金属化合物やアミン系化合物が例示される。さらに具体的には、例えば、オクチル酸スズ(II)、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンマーカプチド、オクテン酸鉛などが、アミン系触媒としては、たとえばトリエチルアミン、N,N‐ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’‐ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルグアニジン、ジフェニルアミン、ジナフチルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N−メチルモルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル等の非特許文献、「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治編(日刊工業新聞社)昭和62年9月25日)に記載された化合物等が例示される。
【0098】
これらの触媒は、ポリオール(A)成分、ポリイソシアネート(B)成分および鎖延長剤(C)よりなるポリウレタン原料の合計量100重量部当り0.5〜10重量部、好ましくは1〜3重量部の割合で用いられる。これよりも少ない使用割合では、耐熱性、耐加水分解安定性および耐磨耗特性の改善効果がみられず、一方これよりも多い割合で使用すると、発泡したりあるいは強度、伸び等の機械的特性が低下するようになる。
【0099】
以上の各成分を用いてのポリウレタン化反応は、ワンショット法またはプレポリマー法で行われる。ワンショット法では各成分と同時に、またプレポリマー法ではプレポリマー生成段階で、それぞれウレタン化触媒が添加され、プレポリマー法ではその後鎖延長剤を添加して反応せしめる。
【0100】
各成分が混合攪拌されてポリウレタン化反応が進行するが、反応生成物は加熱熟成、粉砕、造粒され、粉砕物または造粒物は射出成形機、押出機、注型機等を用いてシート状等の所望形状の成形品に成形され、好ましくは約80〜150℃で約5〜24時間程度二次架橋(アニール)される。
上記各成分以外にも、本発明の主旨に反しない範囲において、所望によりさらに充填剤、金属酸化物、金属水酸化物、滑剤等を必要に応じて適宜配合して用いることができる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に記載するが、本発明はこれにより何等限定を受けるものではない。
なお、本発明における各値は以下の操作で準備した試料を用いた。
(試料調整)
熱可塑性ポリウレタンを粉砕後、射出成形機によりノズル部温度230℃、シリンダ部温度180℃の成形条件下で成形し、シート状成形品(150×150×2mm)を得、これを120℃で12時間オーブン架橋した後、以下の測定を行った。
(常温物性)
硬さ(JIS‐A)、破断伸度(%)及び破断強度(MPa)を、ASTM−D412−83に準拠して測定した。
(耐熱性)
成形試料を、120℃、240時間、高温槽で処理した後、硬さ(JIS‐A)、破断伸度(%)及び破断強度(MPa)の保持率(%)を求めた。
(耐磨耗性)
JISK7218の記載に準拠し、鈴木式磨耗試験機により、出光興産(株)性「ダフニーハイドロウリックフルイド」#46油中、荷重588.4N(60kgf)、周速667mm/秒、時間10分で測定した。
(耐加水分解安定性)
温度90℃、相対湿度95%の雰囲気で、500時間、湿熱老化試験を行い破断伸度の保持率を求めた。
【0102】
[製造例]環状カルボジイミド化合物の合成
環状カルボジイミド化合物として以下の化合物C1、C2を合成し、使用した。
[製造例1]カルボジイミド化合物(C1)の合成:
o−ニトロフェノール(0.11mol)と1,2−ジブロモエタン(0.05mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)200mlを攪拌装置および加熱装置を設置した反応装置にN雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物A(ニトロ体)を得た。
【0103】
次に中間生成物A(0.1mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(1g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)200mlを、攪拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなったら反応を終了した。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去して中間生成物B(アミン体)が得た。
【0104】
次に攪拌装置および加熱装置、滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2−ジクロロエタン150mlを仕込み攪拌した。そこに中間生成物B(0.05mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2−ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下した。滴下終了後、70℃で5時間反応させる。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2−ジクロロエタンを減圧により除去し、中間生成物C(トリフェニルホスフィン体)が得られた。
【0105】
次に、攪拌装置および滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、ジ−tert−ブチルジカーボネート(0.11mol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(0.055mol)、ジクロロメタン150mlを仕込み攪拌した。そこに、25℃で中間生成物C(0.05mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下させた。滴下後、12時間反応させた。その後、ジクロロメタンを除去し得られた固形物を精製することで、下記構造式にて示されるカルボジイミド化合物(C1)を得た(MW=252)。構造はNMR,IRにより確認した。カルボジイミド化合物(C1)は一分子中に”−N=C=N−”で表されるカルボジイミド基をひとつ含む環構造(員数11)を1つ有している。
【0106】
【化32】

【0107】
[製造例2]カルボジイミド化合物(C2)の合成:
o−ニトロフェノール(0.11mol)とペンタエリトリチルテトラブロミド(0.025mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド200mlを攪拌装置および加熱装置を設置した反応装置にN雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物D(ニトロ体)を得た。
【0108】
次に中間生成物D(0.1mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(2g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)400mlを、攪拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなったら反応を終了した。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去すると中間生成物E(アミン体)が得られた。
【0109】
次に攪拌装置および加熱装置、滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2−ジクロロエタン150mlを仕込み攪拌させた。そこに中間生成物E(0.025mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2−ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下した。滴下終了後、70℃で5時間反応させる。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2−ジクロロエタンを減圧により除去し、中間生成物F(トリフェニルホスフィン体)が得られた。
【0110】
次に、攪拌装置および滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、ジ−tert−ブチルジカーボネート(0.11mol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(0.055mol)、ジクロロメタン150mlを仕込み攪拌した。そこに、25℃で中間生成物F(0.025mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下させた。滴下後、12時間反応させた。その後、ジクロロメタンを除去し得られた固形物を、精製することで、下記構造式にて表されるカルボジイミド化合物(C2)を得た(MW=516)。構造はNMR、IRにより確認した。カルボジイミド化合物(C2)は、一分子中に”−N=C=N−”で表されるカルボジイミド基を含む環構造(員数12)を二つ有し、各々の環構造中にはカルボジイミド基は1つのみ含んで形成されている。
【0111】
【化33】

【0112】
[実施例1]
ポリカプロラクトロジオール(分子量約2000、OH価56.1)100重量部を110℃で溶融させた後、その温度を保ちながら減圧下で45分間乾燥させた。その後、120℃に予熱された反応器にこれを仕込み、攪拌しながら環状カルボジイミドC1/環状カルボジイミドC2/トリジンジイソシアネートの混合物(30/40/30wt比)52.8重量部を加えて30分間反応させた。次いで、形成されたプレポリマーに、攪拌しながらウレタン化反応触媒塩基(エアープロダクツジャパン(株)製「DABCO」):0.1重量部を加えて60秒間攪拌した。次いで、1,4−ブタンジオール12.25重量部を加え、60秒間攪拌した後、反応混合物を熱板上に注いで硬化させ、硬化物を100℃に予熱したオーブンに入れ、15時間放置した。その後冷却して、熱可塑性ポリウレタンを得た。
得られた熱可塑性ポリウレタンを粉砕後、射出成形機によりノズル部温度230℃、シリンダ部温度180℃の成形条件下で成形し、シート状成形品(150×150×2mm)を得、これを125℃で12時間オーブン架橋して、各種測定を行った。結果を表1に記載する。
【0113】
[実施例2]
実施例1において、環状カルボジイミドC1/環状カルボジイミドC2/トリジンジイソシアネートの混合物(30/40/30wt比)を、環状カルボジイミドC1/環状カルボジイミドC2/トリジンジイソシアネートの混合物(30/20/50wt比)に替え、そのほかは同一の条件で、熱可塑性ポリウレタンを得た。得られた熱可塑性ポリウレタンを実施例1と同様にして各種測定を行った。結果を表1に記載する。
【0114】
[比較例1]
実施例1において、環状カルボジイミドC1/環状カルボジイミドC2/トリジンジイソシアネートの混合物(30/40/30wt比)を、トリジンジイソシアネートに替えその他の条件は同一にして、熱可塑性ポリウレタンを得た。得られた熱可塑性ポリウレタンを実施例1と同様にして各種測定を行った。結果を表1に記載する。
【0115】
[比較例2]
比較例2において、プレポリマーに触媒と共に加水分解防止剤としてのポリカルボジイミド(エラストグランGmbH製、「ELASTOSTAB」H−01):1重量部を加え、その他の条件は同一にして熱可塑性ポリウレタンを得た。得られた熱可塑性ポリウレタンを実施例1と同様にして各種測定を行った。結果を表1に記載する。
【0116】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明のポリウレタンは耐加水分解安定性、耐熱性、耐磨耗性にすぐれ、より信頼性の要される用途に好適に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度90℃、相対湿度95%の雰囲気で、500時間、湿熱老化試験を行った際の破断伸度保持率が80%以上である熱可塑性ポリウレタン。
【請求項2】
ポリオール(A)成分、ポリイソシアネート(B)成分および鎖延長剤(C)を触媒の存在下反応させて熱可塑性ポリウレタンを製造するにあたり、ポリイソシアネート(B)成分として、カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている下記式(i)で表される環状構造を含む化合物(D)を少なくとも用いる、請求項1記載の熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【化1】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。)
【請求項3】
触媒の存在下反応させるポリイソシアネート(B)成分100重量を基準として成分(D)を5から90重量部使用する、請求項2に記載の熱可塑性ポリウレタンの製造方法。

【公開番号】特開2011−246550(P2011−246550A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119326(P2010−119326)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】